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支えて 支えられて 介護保険は1周年
介護保険物語群馬県
夫と散歩しながら丹誠込めた
麦畑の成長を見るのが楽しみ
富澤静枝さんとその家族(前橋市在住)     
 前橋市の近郊で農業を営む富澤静枝さん(80)の日課は、ご主人の兼雄さん(85)に助けられて、近所を散歩することだ。兼雄さんは、パーキンソン氏病で体の不自由な静枝さんが乗る車椅子をゆっくり押しながら、何十年も家族で毎日働きに出ていた田畑の様子を二人で眺める。「今は麦の季節なんですよ。ここの地粉で作ったうどんは、おいしいから」と静枝さんは育っていく麦の穂をいとおしそうに眺める。 渋川市から前橋の富澤家に嫁に来た静枝さんは、家族と一緒に一生懸命働いてきた。30年ほど前までは養蚕が盛んで、蚕の季節には寝る間もないほど働いた。その後、麦と米に転じ、あたりには家が増えたが、田畑や神社の様子、隣近所とのつきあいは変わらない。家族とふるさとに囲まれて静枝さんの毎日は充実している。

パーキンソン氏病で体が不自由に    
 
静枝さんがが体の不調を感じだしたのは、7、8年前。手足が震え体を動かすのがだんだん大変になってきた。病院での診断はパーキンソン氏病。この病気は、大脳の線条体などの病変で運動が困難になる。今も通院と投薬による治療を続けている。

富澤静枝さんとその家族

 静枝さんは体のふるえから、ものにつかまって歩くようになり、次第に一人で立ったり座ったりができなくなった。介助者に立たせてもらって歩く時は足摺をするようにゆっくり歩を進める。
  体が不自由になって静枝さんが一番悩んだのが、働けなくなったこと。結婚してからずっと兼雄さんと毎日出ていた田畑に行けなくなったのが、とても辛かった。「前は雨で仕事ができないときも、気になってたんぼを見に行くんです。家にじっとしていると、もったいなくてね。外で体を動かしていると気が休まるんですよ」と静枝さんは話す。


デイサービスが元気のもと      

 
現在、静枝さんは要介護4に認定されている。週2回近くのデイケアセンターに行き、健康チェック、入浴、作業療法、レクリエーションなどを行っている。家庭内で介護をしている静枝さんの長男の嫁の俊子さんは、「おばあちゃんは、デイサービスから帰ってくると、どんなことをしたとか、何を食べたとか、いろいろ話してくれるんです。作業療法で作ったちぎり絵のカレンダーもすてきですしね。何より刺激があるのがいいみたいです。気持ちに張りが出てきましたね」と語る。
  センターでは、季節ごとにリンゴ狩り、七夕、忘年会などを行っている。昨年、静枝さんが仲間と作った七夕飾りは、前橋市内の商店街に飾られ賞を受けた。来年はもっといいものを作ろうね、と話し合っている。
  静枝さんも若い頃、おばあちゃんが脳出血で倒れ、3年ほど寝たきりの病人を介護したことがある。「あのころはセンターもなかったし、仕事が忙しかったから世話をするのも大変でしたよ。たんぼ仕事の合間に3回、ご飯とおしめを取り替えるだけで精一杯。今みたいに、バスで遠くにリンゴ狩りに行けるなんて、考えられませんでした」と静枝さんは回想する。
  麦の刈り入れが終わると、田植えの準備が始まる。兼雄さんと実った麦畑を見ながら、静枝さんは今年の作付けのことを考えている。

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