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支えて 支えられて 介護保険は1周年
介護保険物語福岡県
新世紀最初の日、立ち上がれた。
いつか、夫婦水入らずで温泉へ。
中村一雄さんと奥さま稔子さん(大野城市在住) 
 昭和五年生まれの中村一雄さん(70歳)は中学校の元教師。定年退職後の生活のあいだに体をこわし、その後も体調がすぐれませんでした。そのうえ持病のぜんそくが悪化して入院したのが昨年の春。
 「結局、半年入院して10月に退院しました。ぜんそくは回復しましたが、全身の筋力が極度に弱ってしまって、帰宅はしたものの意欲がわかずほとんど寝たきりの状態になってしまいました」と話す一雄さん。
 これからどうしよう、途方にくれていた二人に、寝たきりの家族をかかえる隣人が介護保険の利用をすすめてくれました。
 「それまで介護保険のことはぜんぜん知りませんでした。でも役所の人が親切にいろいろと教えてくれて、申請してひと月後に要介護2の認定を受けました」と稔子さん(72歳)。
 「介護認定にあたっては、ケアマネジャーがぜんそくで入院したときの主治医に症状を確認してくれました。また、家に何度も連絡をくれ、細やかに制度の説明や対応をしてもらって心強かったです」と一雄さん。



中村一雄さんと奥さま稔子さん

支えてくれる人たちがいるという安心感 
 一雄さんの介護保険のケアプランの内容は、少しでも筋力をつけることを目的に、週2回の訪問リハビリと介護用ベッドと歩行器のレンタル(注)。それでもサービスを受け始めた当初は、これで本当に夫は回復するのか不安だったという稔子さん。
 「私たちには子どもがいないので体が動かなくなったときのことを考えると不安で、夜眠れないときもありました」
 ケアマネジャーと話し合い、ケアプランが決まって訪問リハビリが始まる中で、
 「私たちは二人っきりじゃない、私たちを支えてくれる人たちがいるのだと思えるようになるとだんだん希望がわいてきました」と振り返る中村さん夫妻。
 「介護用ベッドがきて夫のトイレの世話などもずいぶん楽になりました」と明るい笑顔で語る稔子さん。


2001年元旦に自力で立てた喜び   

 リハビリは、筋力をつけるために一雄さんの全身を手で押して力を加えたり、一雄さん自身もできる限り足や手の指を動かすという運動の積み重ねから始まりました。
 稔子さんも一雄さんの足全体を毎日欠かさず30分間ほどマッサージしました。
 リハビリ生活が1カ月過ぎて迎えた2001年元旦、ついに一雄さんは自力で立ち上がることができました。ますますやる気を出した一雄さんは、歩行器を使った歩行練習にも意欲的に取り組みました。その結果、立ち上がって約ひと月後には部屋の中を歩けるようになるまで回復しました。

介護保険制度のありがたみを実感    
 「夫の入院以来ずっと休んでいたお茶とお花のおけいこを再開する余裕もできました。そのうち二人でゆっくり旅行できたら」と稔子さん。以前のような心の不安はすっかり消えました。
 「今回、介護保険制度があって本当に助かりました。今年の10月から私たちも本来の保険料を払うことになりますが、若い人にあまり負担をかけたくないから不満はありません。目下の目標は散歩できるようになること。そして世話をかけている妻をいつか温泉につれていきたい」と目を輝かせる一雄さんの夢がかなう日は、そう遠くなさそうです。

(注)介護保険では、介護用ベッドなどの福祉用具の貸与のほか、腰掛け便座などの特定福祉用具の購入や、廊下などの段差解消や手すりの設置などの住宅改修を受けられます。

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