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支えて 支えられて 介護保険は1周年
介護保険物語福井県
「お母さん、張りが出てきたね」
周りも引き込む、いっぱいの笑顔
久保花子さんとその家族(福井市在住)     
 久保花子さんは、大正4年生まれの86歳。部屋には花子さんが手がけた油絵や人形がいっぱいです。卵の殻を貼り合わせてつくった絵は、亡きご主人と10年前に出かけた四国巡礼の様子を描いたものです。30年前に大病を患い、一時はもう長くないと感じたという花子さんですが、現在は生き生きと毎日を過ごし、デイサービスでも笑顔の中心です。なぜ私だけが病気になったのだろうとくよくよするより、病気も私を育ててくれるものだから病気と仲良く生きていこう、今を大切に生きようと心に決めています。周りの人も元気にするほどの花子さんの笑顔は、そんな前向きな気持ちの表れです。

突然、段差が上がれなくなって   
 
 「一昨年の5月、突然、玄関の段差が上がれなくなり、手に力も入らなくなったんです」。花子さんは、介護保険制度が施行されて、要介護1の認定を受けました。息子さん夫婦やお孫さんは仕事や学校があり、日中は花子さん一人でした。だから、日中ずっと付き添ってくれるわけではないヘルパーより、日帰りで施設を利用できるデイサービスを提案されました。

久保花子さんとその家族

 「最初は、人がたくさんいるところへ行くのが心配で。主人が亡くなり、足も悪くなってからは、あまり外に出なくなっていましたから…」。多くの人と一緒に過ごすのがちょっとおっくうだったのです。しかし、実際行ってみると印象はがらりと変わりました。

「明るくなったね」。人気の中心に  

 「おふろが大きくて気持ちがいいの。入る時もちゃんと人が支えてくれて安心だし、体までふいてもらえます。みんなと一緒におしゃべりしたり、ゲームをしたり、周りはみんないい人ばかりで、とても楽しいんです」。自由で温かい施設の雰囲気が、花子さんはすっかり気に入りました。現在は週3回のデイサービスのほかに、週1回のホームヘルプサービスを受けています。
 「デイサービス利用を始めて、お母さんは明るくなった。というより、心に張りが出てきたみたい」とは、お嫁さんの美貴子さん。最近は新しく習字も始めたそうで、とにかく前向き。「生き生きしている久保さんと一緒にいると元気が出るから、ぜひ同じ日に通いたい、と利用日を指定する人もいるんです」。デイサービスを勧めたケアマネジャーの内田さんが語るように、花子さんは人気の中心です。

家族との温かい交流が元気の素    
 久保さん宅では、介護保険制度を利用して花子さんの部屋のトイレを改修しました。「孫たちがトイレを利用しに、毎日部屋に来るんですよ。一番上の孫は、毎晩必ずストーブの燃料を補給してくれるの」。家族とのふれあいは、花子さんにとって何よりの楽しみ。「デイサービスでもらったお菓子を、3人の孫たちにあげるのよ。みんなとっても喜ぶんですよ」と、やさしく目を細めます。
 介護保険では、65歳以上の人からも保険料が徴収されますが、花子さんは「年寄りがたくさん増えて、介護が必要な方も多くなっています。若い人ばかりにしわ寄せがいくわけにもいかないでしょう。多少の支払いは仕方がない。たくさんは困りますけれどね」と、ユーモアを交えながら明るく話します。体がちょっと不自由でも、温かい家族に支えられて、幸せな日々です。

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