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支えて 支えられて 介護保険は1周年
介護保険物語愛媛県
やっぱり家が一番居心地いいよな
これからも、二人で生きていこう
佐々木キヌエさんとその家族(松山市在住)   
 佐々木豊さん(75)が作った妻キヌエさん(76)のケアプラン表はカラフルだ。朝食と昼食時の訪問介護(滞在型)は緑、夕方と夜の訪問介護(巡回型)はオレンジ、週3回のデイケアは水色、というふうに1日、1週間、1ヵ月の予定がひと目でわかるようになっている。これは、介護保険が始まる前から訪問看護のスタッフであったケアマネジャーと相談しながら作ったもの。「妻と二人、できるだけ自宅で過ごしたい」。そんな思いから介護保険に関して勉強し、自分たちの生活に最適のサービスを利用するようにした。その知識は、ケアプラン作りのプロにも「サービス内容から介護報酬計算まで、本当によく研究している」と驚かれたほどだ。
 キヌエさんは数年前、脳梗塞(こうそく)で倒れた。現在は要介護5と判定され、多少痴ほうの症状もある。介護サービスが始まるまでは、ほとんど豊さん一人で、入退院を繰り返す妻の世話や家事をしてきた。しかし、豊さん自身も体が丈夫でなく「要支援」の身。夫婦が共倒れすることなく、安心して自宅で暮らすために、介護保険は願ってもない制度だった。

佐々木キヌエさんとその家族


試行錯誤繰り返したケアプラン作り  

 ケアプランは、いわば介護サービスの時間割のようなもの。何をどう組み合わせるかは、利用者の心身状態や生活で大きく変わる。実際、現在のプランに決まるまでは、試行錯誤を繰り返し、相談しながら何度も変えた。その一つがショートステイ。以前は利用していなかったが、豊さんの体と心の負担を少しでも減らすように、月に2回組み込むことをアドバイスされた。「最初は、家に帰りたがる妻と離れることに罪悪感がありました。でも、このサービスを使わなかったら、私が倒れたかもしれません」。訪問看護は週に1回利用しているだけだが、24時間連絡対応も可能だ(緊急時訪問看護加算)。「正月に妻が倒れたんです。でも、看護婦さんが駆けつけてくれた時は、本当に心強かった」。また、「妻の体の機能は最大限に生かしたい」と、ゆっくりでも自分で食事をさせたり、寝たきりにならないようにイスに座らせたりしている。月に1回の訪問リハビリでは、専門家がアドバイスしてくれる。
 「介護保険制度のおかげで、肉体的にも精神的にも随分楽になりました」と話す豊さん。キヌエさんも、話し相手になってくれるヘルパーや看護婦の来訪を楽しみにしているという。「今後もいろいろなサービスができるでしょうが、その時の自分たちの生活に合ったものを適宜取り入れたいですね」と期待を込める。

いつまでも安心して幸せな時間を   
  豊さんがキヌエさんの口元に、みずみずしいミカンを運ぶ。「おいしいか」という問いかけに満面の笑みで答える妻。キヌエさんは、豊さん手作りの食事が一番好きだ。他人が作ったものは、あまり食欲がわかないらしく「ショートステイ先でもあまり食べないらしいんですよ」と豊さんは苦笑する。住み慣れた自宅。50年以上連れ添った夫のそばで、夫のぬくもりを感じる時。キヌエさんにとって一番安心できる幸せな時間なのかもしれない。
 「以前は妻を連れて、よくドライブしたものです。また、いっしょに桜を見に行きたいですね」。桜前線はすぐそこだ。

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