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支えて 支えられて 介護保険は1周年
介護保険物語秋田県
介護保険制度は、家族の支えが
あってこそ生きる制度です
相場ノフさんとその家族(秋田市在住)     
自宅で介護されたい         
 
相場ノフさん(97歳)が介護保険制度を利用しはじめたのは、昨年の9月。きっかけは、昨年5月に遊びに行った次男の家での骨折だったといいます。半身の自由がきかなくなるほどの重症をおったノフさんは、4ヶ月入院していた前橋市から、同居している三男・進さんの住む秋田市へと転院。しばらくは寝たきり生活が続きましたが、病院の勧めもあり、週末のみ自宅で生活を送るリハビリを取り入れることにしました。ところが、1回目の帰宅後、ノフさんは病院に戻ることをかたくなに拒否したのです。「やっぱり自宅にいたい」と。
  でも、受診しないわけにはいかないし、かといって家族の手も常に空いているとは限らない…。かかりつけの内科医に相談したところ、訪問看護ステーションの存在やケアマネジャーを紹介され、相場さんご一家は介護保険制度のドアにたどりつきました。9月、さっそく市の社会福祉協議会に介護保険の申請手続きを行い、受けた認定は「要介護度2」。こうして、ご一家の“介護保険生活”が始まったのです。

相場ノフさんとその家族

生活スタイルを考慮したケアプラン  
 
ノフさんが現在受けているサービスは、在宅型の2種類。水曜日の訪問看護と、金曜日の訪問入浴介護(このほか電動ベッドと車椅子の用具貸与も利用)。手足を動かすリハビリを中心に、生活全般にわたる介助を受けています。訪問看護婦の佐竹恵子さんが「こんにちは」と顔をのぞかせると、得意の酒屋唄を歌ったり、昔話をしてご機嫌なノフさん。「友だちが増えたようで嬉しい」とニコニコ。佐竹さんは、ノフさんの足が痛む時や寒い時季には、無理に手足の運動をさせずに歌で楽しませてくれたり、ケア内容や曜日の変更にも応じてくれます。お嫁さんの知子さんも「高齢ですので、慣れるまで時間はかかったけれど、家に来てくれるのはとても安心。私も義母も色々な面で助けてもらっています。それに、医師と看護婦さんの連絡が密できめ細やか。義母の弟も同じように介護保険にお世話になっていますが、違うケースでも、誰に相談しても、きっちり対処してくれくれるのが頼もしいですね」。
  ケアプランは、ノフさんの症状とご一家のライフスタイル、疲労度などを考慮して作られるもので、とても柔軟な性質を備えています。「次にどうやって暮らしていきましょうか?」というケアマネジャーの提案を受け、ノフさん本人の気持ちをくみ取りながら、その都度相談して決めているそうです。

介護を他人事ととらえない      
 介護保険制度を上手に取り入れてきた相場さんご一家。改めて、「家族が介護することの大切さ」を考える機会にもなったそうです。佐竹さんの言葉が象徴的でした。「私たちは一時おじゃまするだけで、家族のつけたし。これは、ご家族の協力が前提にあってこそ生きる制度なんです」。介護保険制度を利用している安心感から、介護しようとする士気が下がってしまう家庭も残念ながらあるとか。この制度は、介護を人任せにするためのものではありません。知子さんも、「ありがたい制度だけれど、全部、国に頼りきりになってしまうのはいけないと思います」ときっぱり。介護保険制度を利用する家族の意識をどうやって整えていくかが、これからの課題の1つとなりそうです。それにはまず、私たち一人一人が、介護を他人事ととらえない心を持つことが大切ではないでしょうか。
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