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○ 新型特別養護老人ホーム(全室個室・ユニット化)

1 趣旨

 特別養護老人ホームにおける4人部屋主体の居住環境を抜本的に改善し、入居者の尊厳を重視したケアを実現するため、個室・ユニットケアを特徴とする「居住福祉型の介護施設」としての特別養護老人ホーム(以下「新型特養」という。)の積極的な整備を進める。その趣旨は、以下のとおり。

○ 介護保険制度は、個人の自立した日常生活を支援するため、質の高いサービスを提供するものであり、「生活の場」である特別養護老人ホームにおいては、これまでの集団処遇型のケアから個人の自立を尊重したケアへの転換が求められている。

○ このため、今後整備する特別養護老人ホームについては、全室個室・ユニットケアを原則としていくこととする。

※ ユニットケアとは、施設の居室をいくつかのグループに分けて、それぞれをひとつの生活単位とし、少人数の家庭的な雰囲気の中でケアを行うもの。

<「個室・ユニットケア」の意義>

(1) 入居者は個性とプライバシーが確保された生活空間を持つことができる。

(2) 個室の近くに交流できる空間を設けることにより、他の入居者と良好な人間関係が築け、相互の交流が進む。

(3) 自分の生活空間ができ、少人数の入居者が交流できる空間もあることで、入居者のストレスが減る(痴呆性高齢者の徘徊などが少なくなる例も多い)。

(4) 家族が周囲に気兼ねなく入居者を訪問できるようになり、家族関係が深まることにもつながる。

(5) インフルエンザ等の感染症の防止に効果がある。

2 概要

(1)多様な生活空間の確保など居住環境を重視した構造とする

○ 個人的空間から公共的空間まで多様な生活空間を重層的に確保する。

○ 個室の近くに共用スペースを設け、ユニットケアを実現する。

※ 内装(壁、間仕切りなど)についても、色彩や素材(例:木材の使用)などにおいて、高齢者の精神的なゆとりと安らぎへのきめ細やかな配慮が望まれる。(注:華美なエントランスホール等を想定しているものではない。)

<望ましい多様な生活空間の確保例>

個人スペース 個人的空間
(個室)
入居者個人の所有物を持ち込み、管理する空間 ユニット
(生活単位)
準個人的空間 個室の近くにあって、少数の入居者が食事や談話に利用する空間
公共スペース 準公共的空間 多数の入居者を対象に、リハビリテーション等のプログラムなどが行われる空間  
公共的空間 地域住民にも開かれ、入居者と地域の交流が可能な空間  

(2)全室個室とする

○ 個室の広さは、原則8畳(約13.2平方メートル)以上とする(収納スペース、洗面設備スペースを含む。トイレの面積を除く。)。

※ ただし、特別の事情がある場合は、弾力的に取扱う。

○ 入居者が個室内に家具等を持ち込めるようにする。夫婦などが2人部屋として利用できる構造とすることは可。

※ したがって、全ての居室が完全な間仕切りであることを義務付けるものではなく、居室の一部については、施設の実情に応じて、居室と居室の間を可動式のパーテションで仕切るなどの工夫は可能とする。

○ トイレについては、分散し、できるだけ居室に近いところに設置する。

※ 一律に設置割合を規制することはしない。

(3)ユニットケアとする

○ 10人前後をユニット(生活単位)とするユニットケアを原則とする。

※ 1ユニットの人数については、一律に上限を設けることはしないが、ユニットケアの趣旨を踏まえた適切な配慮が求められる。

○ 簡単な調理、食事、談話などを通じて交流が図られるよう、ユニットごとに共用スペースを設ける。

※ ユニット内の共用スペースについては、詳細な面積や設備の配置を一律に規定することはしないが、ユニットケアの趣旨を踏まえたハード・ソフト両面での適切な配慮が求められる。

※ ユニット間の区画に関しては、施設全体の効率的な運営に配慮する必要があることから、一律の規制を設けることはしない。

※ ユニット毎に浴室を設置するか否かについては、設置者の考え方を尊重する。

(4)設備基準の見直し

○ 静養室及び面会室については、全室個室・ユニット化することにより対応が可能なため、必置要件から外す方向である。

○ 廊下幅については、新型特養の場合、待避スペースとしてのアルコープなど設ける場合には、片廊下1.8mを1.5mに、中廊下を2.7mを1.8mに緩和する方向である。
(ただし、手すりの内側から測るものとする。)

3 施設整備費の補助

(1)施設整備費の補助の導入時期

 平成14年度から新型特養に対する施設整備費補助を導入するものとする。
なお、設置準備の状況を勘案して、数年間は新型と従来型の両者を選択 できるものとする。

(2)補助対象

 新型特養に対する施設整備費補助においては、施設内の公共スペース部分及び事務室等の管理部分について助成対象とする。

(3)既存施設の取扱い

 既存施設の改築等を行う場合は、新型特養に対する評価の状況も踏まえつつ、上記の考え方に準じた取扱いとする。

※ 既存施設の新型特養への移行時期については、当面、一律の期限を設ける予定はない。

4 利用者費用負担等の考え方

○ 新型特養の入居者は、居住環境が抜本的に改善されることから、従来の介護・食事に係る利用者負担のほか、ホテルコストに係る費用を負担することを基本とする。(平成15年度から)

○ 負担するホテルコストは、個人スペースに係る建築費用・光熱水費等に相当する額とする。なお、各施設における算定ルールを明確にするとともに、利用者への説明と同意の手続きを義務づけるものとする。

※ 居室の広さ、ユニット内のトイレの設置数や浴室の有無等は、ホテルコストの金額に影響する。
○ 低所得者の個室利用が阻害されないよう、低所得者についてはホテルコストの負担軽減を行うこととし、具体的には新型特養に対応した介護報酬体系を設ける中で、その配慮を検討する。

5 個室・ユニットケア型施設の運営に当たっての留意事項

○ 個室・ユニット型の居住環境を整備することは、ケアの質を高める手段の一つであり、このようなハード面での配慮を生かしながら入居者との関わり方ができる資質を備えたスタッフが提供するケアなどソフト面での創意工夫が極めて重要であること。

○ 各入居者の個性と入居者の小集団で形成される各ユニットの個性、それに対応する各職員の個性、リーダーの個性、施設管理者の施設運営理念が複雑に絡み合う中で、従来の集団処遇的な手法とは異なったケアが求められるので、新たな施設環境にふさわしいサービスを提供する観点から、職員の研修・育成が重要になると考えられること。

○ 入居者の態様によりユニットごとの生活支援の内容が異なってくることになるが、必ずしもユニット内ですべて自己完結する訳ではないので、ユニット間の連携・協力やユニットの自主性を尊重しつつ施設全体に目配りできる総合リーダーの役割が極めて重要であること。

※(別添図)省略


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