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脂質異常症の治療法


治療の基本は食事療法と薬物療法


治療の基本は食事療法と薬物療法
 心臓の冠動脈の病気などの明らかな動脈硬化の病気がない場合には、脂質異常症の治療は生活習慣の改善と薬物療法が基本です。
 生活習慣の改善は、血中脂質を下げるだけでなく、動脈硬化が進むのを防ぐのが目的です。だから、動脈硬化を促進するほかの要素、高血圧耐糖能異常肥満なども改善できるよう生活を改善します。
 そのおもな内容は、1.禁煙 2.食生活の是正 3.適正体重の維持 4.運動の増加です。
 なかでも特に重要なのが食事(食事療法)で、これは適正体重の維持とも深く関わってきます。
 食事療法は、表のように2つの段階をおって進められます。第1段階は適正な食事にすること、第2段階は、病気のタイプに応じてよりくわしく、制限が厳しくなるんですね。
 第1段階を行っても血液中の脂質が目標値に達しない場合に、第2段階へと移ります。
脂質異常症における食事療法の基本
第1段階(総摂取エネルギー、栄養素配分およびコレステロール摂取量の適正化)
1)総摂取エネルギーの適正化
  適正エネルギー摂取量=標準体重×25〜30(kcal)
*標準体重=[身長(m)]× [身長(m)]×22
2)栄養素配分の適正化
 
炭水化物:60%
たんぱく質:15〜20%(獣鳥肉より魚肉・大豆たんぱくを多くする)
脂肪:20〜25%(獣鳥性脂肪を少なくし、植物性・魚肉性脂肪を多くする)
コレステロール:1日300mg以下
食物繊維:25g以上
アルコール:25g以下(他の合併症を考慮して指導する)
その他:ビタミン(C、E、B6、B12、葉酸など)やポリフェノールの含量が多い野菜・果物などの食品を多くとる(ただし、果物は単糖類の含量も多いので摂取量は1日80〜100kcal以内が望ましい)。
  第1段階で血清脂質が目標値とならない場合は第2段階へ進む。
第2段階(病型別食事療法と適正な脂肪酸摂取)
1)高LDL-C血症(高コレステロール血症)が持続する場合
 

脂質制限の強化:脂肪由来エネルギーを総摂取エネルギーの20%以下

コレステロール摂取量の制限:1日200mg以下
飽和脂肪酸/一価不飽和脂肪酸/多価不飽和脂肪酸の摂取比率:3/4/3程度
2)高トリグリセライド血症が持続する場合
  アルコール:禁酒

炭水化物の制限:炭水化物由来エネルギーを総摂取エネルギーの50%以下

単糖類:可能なかぎり制限、できれば1日80〜100kcal以内の果物を除き調味料のみでの使用とする。

3) 高コレステロール血症と高トリグリセライド血症がともに持続する場合
  1)と2)で示した食事療法を併用する。
4)高カイロミクロン血症の場合
  脂肪の制限:15%以下

           (日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版』より)
*単糖類:最も簡単な基本構成単位でできている糖類。果糖、ブドウ糖、ガラクトースなど。


 下の表に、脂質異常症の代表的な3つのタイプそれぞれに適した食事のポイントをかかげます。
食事のポイント コレステロール
のみ高い
中性脂肪
のみ高い
両方とも
高い
エネルギー量の制限
コレステロールを
多く含む食品の制限
食物繊維の摂取をふやす
P/S比を上げる*
甘い食品(糖分)の制限
アルコール類の制限(医師と相談)
P/S比は、血中コレステロールを低下させる作用がある多価不飽和脂肪酸(P)と、増加させる作用がある飽和脂肪酸(S)の摂取比率。 
 

たばこはやめて運動量を増やし、適正体重の維持を
 食事以外にも改善すべき生活習慣はあります。まず、たばこ。たばこは、動脈硬化だけでなく、がん、呼吸器疾患などのためにもやめるべきです。
 次に運動量を増やすこと。これは、動脈硬化性の病気が潜んでいないかどうかを十分に調べた後に、指導されます。一人ひとりに適した運動を毎日の生活にとり入れるよう心がけたいものですね。
 また、いわゆるスポーツや運動だけでなく、日常生活で身体活動を増やすための工夫がとても重要なんですよ。
 どんな運動をどのくらいしたらよいのかについては、有酸素運動を中心に、1日30分以上、週3回以上をめざします。
 さらに、適正体重の維持も大切です。太りすぎると、内臓に脂肪がたまって血液中の脂質代謝の異常や耐糖能異常などが起こり、動脈硬化を促進しますから、適正体重を維持することは、脂質異常症の治療、動脈硬化の予防のためにも、たいへん重要なポイントの一つなんです。
適正体重かどうかは、BMI(body mass index:体格指数)で評価します。

BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

 BMI22がもっとも病気になる確率が低く、理想的です。BMI25以上だと肥満で、他の合併する病気がないか、検査されます。
 BMIが正常でも、内臓に脂肪がたまりやすい「上半身肥満」は要注意! ウエストが男性で85cm以上、女性で90cm以上あると、内臓に脂肪がたまっている疑いがあります。できればCTスキャンで内臓脂肪面積を測ってみることが望まれますね。
 体重を適正範囲に戻し、内臓蓄積を減らすと、たくさんの危険因子をもった「マルチプルリスクファクター症候群」の人にたいへん効果的であることが立証されているんですよ。


運動療法指針
運動強度 最大酸素摂取量の約50%
量・頻度

1日30分以上(できれば毎日)、週180分以上

種類 速歩、社交ダンス、水泳、サイクリングなど
*運動強度
1)運動時の脈拍から推定する方法
  1. カルボーネン式(運動時の心拍数)
    心拍数(脈拍/分)=((220−年齢)−安静時心拍数)×運動強度+安静時心拍数
  2. 簡易法(運動強度50%のとき)
    心拍数(脈拍/分)=138−(年齢/2)
2)自覚的な感じから推定する方法
ボルグ・スケール(主観的運動強度)で11〜13(楽である〜ややきつい)
最大酸素摂取量:持続的運動能力の指標
(日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版』より)
薬を飲み始める条件
 どうしても生活習慣が改善できな人や、生活習慣を改善しても血中脂質の数字が高いまま下がらないときには、動脈硬化、さらに心筋梗塞や脳梗塞へと進む危険性がどんどん高くなりますから、薬物療法も行うことになります。
 また、家族性高コレステロール血症の場合には、いきなり薬物療法からはじめます。
 一般の脂質異常症の場合は、食事療法を3〜6カ月ぐらい続けてもコレステロール値や中性脂肪値が下がらない場合に、薬物療法に入ります。薬物療法を始めるかどうかの判断は、症状や今までの治療の実践程度によって、医師が行います。薬がイヤだと思っても、医師から「薬を始めましょう」といわれたら素直に飲み始めましょう。
 また、薬を飲み始めるとそれに頼ってしまう人がいますが、それではいけません。生活習慣の改善や食事療法、運動療法等を行うことの効果は、コレステロールの合成や処理のシステムを調節し、正しい状態に戻そうというものなんです。だからそれらは薬を始めても、基本として続ける必要があるんですよ。
薬を飲んでいるからと安心せずに、根気よく自己管理を続けて、長い時間をかけてじっくりつき合う覚悟が大事なんですね。

●脂質異常症の薬
  LDLコレステロール HDLコレステロール

トリグリセライ

おもな働き
HMG-CoA還元
酵素阻害薬
  肝臓でLDL-コレステロールが合成されるのを抑える
プロブコール     コレステロールが酸化し、血管に付着するのを防ぐ
陰イオン
交換樹脂
    腸の中でコレステロールと胆汁酸の吸収を抑える
ニコチン酸
誘導体
脂肪酸が集まって中性脂肪になるのを防ぐ
フィブラート
系薬
中性脂肪の合成を抑制する
イコサペント酸
エチル
    血小板の働きを抑制して固まるのを防ぐ
 


質問コーナー
トラ
Q1 薬で脂質異常症を根本から治すことはできるの?
   
フクロウ博士
脂質異常症を根本的に治すのは、かなり難しいんです。【基本編】でも話したように、脂質異常症は生活習慣病ですから、生活習慣そのものを健全なものにしなければ、治りません。薬だけで治すことは不可能です。
反対に、軽度のうちに自己管理をしっかりし続ければ、数値を基準値内に保ち続けることも不可能ではないんですね。また、薬を飲むようになっても、根気よく生活改善を続け、検査の数値が基準値内となって薬をやめることができ、さらに、その数字を保ち続ける生活がすっかり身につけば、ある意味では治ったともいえるでしょう。
だけど、基礎として脂質異常症になりやすい体質があるので、油断して以前の食生活や運動不足の生活にもどれば、また脂質異常症になる可能性は高いんです。「いつまでも治らないのか」などと考えるよりは、高血圧や糖尿病と同じように、ちょっと節制しながら一生つき合っていけばいいと、少し気軽に考えたほうがいいのではないでしょうか。
クマ
Q2 食事は、予防と治療ではどう違うのかな?
   
フクロウ博士
勧められるもの、控えた方がいいものの原則は変わらないですね。一番の違いは、予防のときはそれらを心がけていればいいという程度だけど、治療の場合には1日にこのくらいときちんと数字があげられ、それを実践しなければならないということ。すでに異常値になっているものを治していくのですから、当然その厳しさは違います。とくに第2段階に入ると、何をどのくらいという量の制限がより厳しくなりますね。
食べることが好きで、食事制限されるなんてイヤだという人こそ、自主的に予防を心がけることが大事だってことですね。
オオカミ
Q3 運動は、自分の好きなようにしていいのかい?
   
フクロウ博士
運動はからだにいいものと思われがちだけど、やりすぎたら健康によくないんです。まして脂質異常症だとわかったら、どんな運動を、どのくらいやればよいかも主治医の指導を受けながら行うことが大事。
とくに、今までほとんど運動をしていなかった人が、一念発起して急に運動を始めるときには、注意しないと危険です。運動をしていなかった時期が長いほど、筋肉や関節、骨などが自分で感じるよりずっと衰えていると考えたほうがいいでしょう。まずはリハビリ期間と心得て、ゆっくり、短時間歩くことから始めるなど、焦らず、体力を回復していってください。




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