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別添2

公衆浴場における衛生等管理要領

I 総則

第1 目的
 この要領は、公衆浴場における施設、設備、水質の衛生的管理、従業者の健康管理、その他入浴者の衛生及び風紀に必要な措置により公衆浴場における衛生等の向上及び確保を 図ることを目的とする。
第2 適用の範囲及び用語の定義
この要領は、公衆浴場及び浴場業を営む者について適用する。
この要領において用いる用語は、次のとおり定義する。
(1) 「一般公衆浴場」とは、温湯等を使用し、同時に多数人を入浴させる公衆浴場であって、その利用の目的及び形態が地域住民の日常生活において保健衛生上必要なものとして利用される入浴施設をいう。
(2) 「その他の公衆浴場」とは、一般公衆浴場以外の公衆浴場をいい、以下に分類される。
1) 温湯等を使用し、同時に多数人を入浴させるものであって、保養又は休養のための施設を有するもの
2) 温湯等を使用し、同時に多数人を入浴させるものであって、スポーツ施設に付帯するもの
3) 温湯等を使用し、同時に多数人を入浴させるものであって、工場、事業場等が、その従業員の福利厚生のために設置するもの
4) 蒸気、熱気等を使用し、同時に多数人を入浴させることができるもの
5) 蒸気、熱気等を使用し、個室を設けるもの
6) その他のもの
(3) 「原湯」とは、浴槽の湯を再利用せずに浴槽に直接注入される温水をいう。
(4) 「原水」とは、原湯の原料に用いる水及び浴槽の水の温度を調整する目的で、浴槽の水を再利用せずに浴槽に直接注入される水をいう。
(5) 「上り用湯」とは、洗い場及びシャワーに備え付けられた湯栓から供給される温水をいう。
(6) 「上り用水」とは、洗い場及びシャワーに備え付けられた水栓から供給される水をいう。
(7) 「浴槽水」とは、浴槽内の湯水をいう。

第3 特に留意すべき事項
 近年の入浴施設では、湯水の節約を行うため、ろ過器を中心とする設備、湯水を再利用するため一時的に貯留する槽(タンク)及びそれらの設備をつなぐ配管を伴い、複雑な循環系を構成することが多くなっている。また、温泉水を利用する設備、湯を豊富にみせるための演出や露天風呂、ジャグジーや打たせ湯の設置など様々な工夫により、入浴者を楽しませる設備が付帯されるようになってきた。これまでのレジオネラ症の発生事例を踏まえると、これら設備の衛生管理、構造設備上の措置を十分行う必要がある。
 浴槽水を汚染する微生物は、入浴者の体表に付着したり、土ぼこり及び露天風呂等から侵入する。温泉水等を利用する施設で一時的に湯を貯留する設備を設けると、それが微生物に汚染されやすい。これらの設備は、土ぼこりが入りにくくし、清掃や消毒を十分行うことが必要である。
 また、浴槽水は、入浴者から各種の有機質が常に補給され、これらを栄養源として、ろ過器、浴槽や配管の内壁等に定着して微生物が定着・増殖する。しかも、その菌体表面に生産された生物膜によって、外界からの不利な条件(塩素剤等の殺菌剤)から保護されているため、浴槽水を消毒するだけではレジオネラ属菌等の微生物の繁殖は防げない。そのため、浴槽水の消毒のみならず常にその支持体となっている生物膜の発生を防止し、生物膜の形成を認めたならば直ちにそれを除去することが必要である。
 ジャグジーや打たせ湯等は、エアロゾルを発生させ、レジオネラ属菌感染の原因ともなりやすいので、連日使用している浴槽水でジャグジー等の使用を控えたり、打たせ湯等で再利用された浴槽水の使用を控える等、汚染された湯水によるレジオネラ属菌の感染の機会を減らすことが必要である。

II 施設設備

第1 一般公衆浴場
施設全般
(1) 施設の周囲は、清掃及び排水が容易にできる構造であること。
(2) ねずみ、衛生害虫等の侵入を防止するため、外部に開放する排水口、窓等に金網を設ける等必要に応じて防除設備を設けること。
(3) 施設内の採光、照明及び換気が十分行うことができる構造設備であること。
下足場
 はきものを安全に保管することができる設備を入浴者数に応じて設けること。
脱衣室
(1) 男女を区別し、その境界には隔壁を設けて、相互に、かつ、屋外から見通しのできない構造であること。
(2) 脱衣室の床面積(洗濯機、乾燥機、自動販売機等の面積を除く。)は、男女それぞれその入浴者数に応じ、次により算出される面積以上であることが望ましいこと。
毎時最大浴場利用人員×20/60×1.1平方メートル×1.5
(注) 毎時最大浴場利用人員……おおむね、平均人員の2倍
20……着脱衣、休憩等に要する時間(分)
1.1平方メートル……入浴者1人当たりの衣服の着脱等に要する面積
1.5……脱衣箱、通路、洗面化粧等に要する面積
(3) 床面は、耐水性の材料を用いること。
(4) 入浴者の衣類その他の携帯品を安全に保管できる設備を入浴者数に応じて設けること。
なお、脱衣箱(かご)の数は、次により算出される数以上であることが望ましいこと。
毎時最大浴場利用人員×50/60
(注) 50……浴場利用時間(分)
(5) 開放できる窓又は換気設備等を有すること。
(6) 洗面設備を設けること。
(7) 洗濯機、乾燥機、自動販売機等を設置する場合は、脱衣室の機能に支障を来さない場所とすること。
(8) 洗濯機を設置する場合には、専用の排水口を設けること。
なお、ドライクリーニング用洗濯機を備えないこと。
また、乾燥機を設置する場合には、水蒸気、燃焼ガス等を屋外に排出できる構造であること。
浴室
(1) 男女を区別し、その境界には隔壁を設け、相互に、かつ、屋外から見通しのできない構造であること。
(2) 浴室の床面、周壁(床面から1m以上)及び浴槽は、耐水性の材料を用いること。
(3) 浴室の床面は、流し湯が停滞しないよう適当な勾配(おおむね100分の1.5以上)を設け、かつ、隙間がなく、清掃が容易に行える構造であること。
また、すべりにくい材質又は構造とすることが望ましいこと。
(4) 浴室の天井は、適当な勾配を設ける等して、水滴が落下しないようにすること。
また、浴室には、湯気抜き、換気扇等を設けること。
(5) 洗い場の面積は、男女それぞれその入浴者数に応じ、次により算出される面積以上であることが望ましいこと。
毎時最大浴場利用人員×20/60×1.1平方メートル×1.5
(注) 20……洗い場使用時間(分)
1.1平方メートル……入浴者1人当たりの洗い場使用面積
1.5……通路等に要する面積の係数
(6) 洗い場には、入浴者数に応じた十分な数の給水(湯)栓、洗い桶及び腰掛を備えること。
なお、給水(湯)栓は、男女それぞれその入浴者数に応じ、次により算出される数(組)以上であることが望ましいこと。
毎時最大浴場利用人員×20/60
(注) 20……洗い場使用時間(分)
(7) 給水(湯)栓は他の組の中心点との距離がおおむね70cm以上であること。
なお、90cm程度の間隔が望ましいこと。
(8) 洗い場の排水溝は、危害を防止し、かつ、排水等に支障のない構造であること。
(9) 浴槽内面積の合計は、男女それぞれその入浴者数に応じ、次により算出される面積以上であることが望ましいこと。
毎時最大浴場利用人員×10/60×0.7平方メートル×1.2
(注) 10……浴槽使用時間(分)
0.7平方メートル……入浴者1人当たりの浴槽使用面積
1.2……浴槽内の踏段、注(湯水)口等に要する面積の係数
(10) 浴槽は、洗い水等の流入を防止するため上縁が洗い場の床面よりおおむね5cm以上(15cm以上が望ましいこと。)の適当な高さを有すること。
また、必要に応じて手すり及び内側に踏段を設ける等、高齢者、小児等に配慮したものであることが望ましいこと。
(11) 浴槽は、熱湯及び熱交換器が入浴者に直接接触しない構造であること。
ただし、給湯栓等により熱湯を補給する構造のものにあっては、その付近のよく見やすい場所に熱湯に注意すべき旨の表示をすること。
(12) ろ過器を設置する場合にあっては、以下の構造設備上の措置を講じること
1) ろ過器は、1時間当たり浴槽の容量以上のろ過能力を有し、かつ、逆洗浄等の適切な方法でろ過器内のごみ、汚泥等を排出することができる構造であるとともに、ろ過器に毛髪等が混入しないようろ過器の前に集毛器を設けること。
2) 浴槽における原水又は原湯の注入口は、湯水を浴槽とろ過器との間で循環させるための配管(以下「循環配管」という。)に接続せず、浴槽水面上部から浴槽に落とし込む構造とすること。
3) 循環してろ過された湯水が浴槽の底部に近い部分から補給される構造とし、当該湯水の誤飲又はエアロゾルの発生を防止すること。
4) 浴槽水の消毒に用いる塩素系薬剤の注入又は投入口は、浴槽水がろ過器内に入る直前に設置されていること。
(13) 打たせ湯及びシャワーは、循環している浴槽水を用いる構造でないこと。
(14) 浴槽に気泡発生装置、ジェット噴射装置等微小な水粒を発生させる設備(以下「気泡発生装置等」という。)を設置する場合には、空気取入口から土ぼこりが入らないような構造であること。
(15) 内湯と露天風呂の間は、配管等を通じて、露天風呂の湯が内湯に混じることのない構造であること。
(16) オーバーフロー回収槽(以下「回収槽」という。)内の水を浴用に供する構造になっていないこと。ただし、これにより難い場合には、回収槽は、地下埋設を避け、内部の清掃が容易に行える位置又は構造になっているとともに、レジオネラ属菌が繁殖しないように、回収槽内の水が消毒できる設備が設けられていること。
(17) 浴槽には、入浴者が容易に見える位置に温度計を備えること。
(18) 使用済みのカミソリ等を廃棄するための容器を備えること。
(19) シャワー設備を設ける場合は、適当な温度の湯を十分に供給でき、湯の温度を調節できるものであること。
また、立位で使用するシャワー設備を設ける場合は、シャワー水が浴槽及び入浴者にかからないよう、十分な距離を設け、又はカーテン等を備えること。
飲料水供給設備
浴室、脱衣室の入浴者の利用しやすい場所に1か所以上の飲料水を供給する設備を設けること。
給水、給湯設備
(1) 水道水以外の水を原水、原湯、上り用水及び上り用湯として使用する場合は、「公衆浴場における水質基準等に関する指針」に適合していることを確認したものであること。
(2) 原湯を貯留する貯湯槽(以下「貯湯槽」という。)の温度を、通常の使用状態において、湯の補給口、底部等に至るまで60℃以上に保ち、かつ、最大使用時においても55℃以上に保つ能力を有する加温装置を設置すること。それにより難い場合には、レジオネラ属菌が繁殖しないように貯湯槽水の消毒設備が備えられていること。
(3) 放熱管及び給配湯は、露出せず、直接身体に接触させない設備とすること。
便所
(1) 男女それぞれの脱衣室等入浴者が利用しやすい場所にそれぞれ便所を設けること。
また、高齢者、小児等に配慮した便器を設けることが望ましいこと。
(2) 窓又は換気設備等を有すること。
(3) 流水式手洗い設備が備えられていること。
排水設備
(1) 浴場の汚水を屋外の下水溝、排水ます等に遅滞なく排水できる排水溝等を設けること。
(2) 排水溝、排水管及びこれに付属する排水ますは、コンクリート等の不浸透性材料を用い、臭気の発散、汚水の漏出を防ぐために必要な設備とすること。
(3) 排水溝及び排水ますは、衛生害虫等が発生せず、かつ、ねずみが侵入しにくい構造であること。
休息室
必要に応じ、休息のための場所を設けること。
10 その他の入浴設備を設ける場合
(1)サウナ室又はサウナ設備(蒸気又は熱気のもの)を設ける場合
1) サウナ室は、男女を区別し、床面、内壁及び天井は、耐熱性の材料を用いて築造すること。
2) サウナ室の床面は、排水が容易に行えるようおおむね100分の1.5以上の適当な勾配を付け、隙間がなく、清掃が容易に行える構造であること。
また、室内には、掃除の際に使用される水が完全に屋外に排出できるよう排水口を設けること。
3) サウナ室又はサウナ設備の蒸気又は熱気の放出口、放熱パイプは、直接入浴者の身体に接触しない構造であること。
また、入浴者が接触するおそれのあるところに金属部分がある場合は、断熱材で覆う等の安全措置を講ずること。
4) サウナ室は、換気を適切に行うため、給気口は室内の最も低い床面に近接する適当な位置に設け、排気口は天井に近接する適当な位置に設けること。
5) サウナ室又はサウナ設備の適温を保つため、温度調節設備を備えること。
6) サウナ室又はサウナ設備には、サウナの利用基準温度を表示し、温度計を適当な位置に設置し、必要に応じて湿度計を設置すること。
7) サウナ室の室内を容易に見通すことができる窓を適当な位置に設けること。
また、入浴者の安全のため、室内には、非常用ブザー等を入浴者の見やすい場所に設けること。
(2)露天風呂を設ける場合
1) 4浴室(1)、(2)及び(10)〜(17)に準じた構造とすること。
2) 屋外に設けられる浴槽の浴槽内面積及び浴槽に付帯する通路等の面積は、男女それぞれその入浴者数に応じ、十分な面積であること。
3) 屋外には洗い場を設けないこと。
4) 浴槽に付帯する通路等には脱衣室、浴室等の屋内の保温されている部分から直接出入りできる構造であること。
(3)電気浴器を設ける場合
電気用品取締法に基づく型式承認を受けたものであること。
11 付帯施設
娯楽室、マッサージ室、アスレチック室等を設ける場合は、入浴施設と明確に区分すること。

第2 その他の公衆浴場
その他の公衆浴場にあっては、前記第1を準用する。
なお、公衆浴場の利用目的、利用形態等により、これにより難い場合であ
って、公衆衛生上及び風紀上支障がないと認められるときは、一部適用を除
外することができるものとする。

III 衛生管理

第1一般公衆浴場

施設全般の管理
(1) 施設整備は、次表により清掃及び消毒し、清潔で衛生的に保つこと。
なお、消毒には材質等に応じ、適切な消毒剤を用いることとし、河川及び湖沼に排水する場合には、環境保全のための必要な処理を行うこと。
場所 清掃及び消毒
脱衣室内の人が直接接触するところ〈床、壁、脱衣箱、体重計等〉 毎日清掃
1月に1回以上消毒
浴室内の人が直接接触するところ(床、壁、洗いおけ、腰掛、シャワー用カーテン等) 毎日清掃
1月に1回以上消毒
浴槽 毎日完全に換水して浴槽を清掃すること。ただし、これにより難い場合にあ
っても、1週間に1回以上完全に換水して浴槽を清掃
ろ過器及び循環配管 1週間に1回以上、ろ過器を十分に逆洗浄して汚れを排出するとともに、ろ過器及び循環配管について、適切な消毒方法で生物膜を除去(注)※1※2
集毛器 毎日清掃
貯湯槽 生物膜の状況を監視し、必要に応じて清掃及び消毒(注)※3
調整箱(洗い場の湯栓、シャワーへ湯を送る箱) 適宜清掃及び消毒
浴室内の排水口 適宜清掃し、汚水を適切に排水する
空気調和装置(フィルター等)、換気扇 適宜清掃
飲用水を供給する受水槽、高置水槽 1年に1回以上清掃(注)※4
その他の給水、給湯設備 必要に応じて清掃、消毒
便所 毎日清掃し、防臭に努める1月に1回以上消毒
排水設備(排水溝、排水管、汚水ます、温水器(排湯熱交換器)等) 適宜清掃し、防臭に努め、常に流通を良好に保ち、1月に1回以上消毒
その他の施設(娯楽室、マッサージ室、アスレチック室等) 毎日清掃
6月に1回以上消毒
施設の周囲 毎日清掃

(注) ※1 消毒方法は、循環配管及び浴槽の材質、腐食状況、生物膜の状況等を考慮して適切な方法を選択すること。消毒方法の留意点は、「循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアル」等を参考にすること。
※2 上記措置に加えて、年に1回程度は循環配管内の生物膜の状況を点検し、生物膜がある場合には、その除去を行うことが望ましい。
※3 作業従事者はエアロゾルを吸引しないようにマスク等を着用すること。
また、貯湯槽の底部は汚れが堆積しやすく低温になりやすいので、定期的に貯湯槽の底部の滞留水を排水すること。
※4 貯水槽の清掃は「中央管理方式の空気調和設備等の維持管理及び清掃等に係る技術上の基準」(昭和57年11月16日厚生省告示第194号)の第2に準じて行うこととし、専門の業者に行わせることが望ましいこと。

(2)施設の内外におけるねずみ、衛生害虫等の生息状態について、次表により点検し、適切な防除措置を講じ、清潔で衛生的に保つこと。
場所 点検回数
脱衣室、浴室、便所、排水設備 1月に1回以上
その他の設備 6月に1回以上
換気、温度
脱衣室及び浴室は、脱衣又は入浴に支障のない温度に保ち、かつ、換気を十分に行うこと。
 なお、空気中の炭酸ガス濃度は1500ppm以下、一酸化炭素濃度は10ppm以下であること。
採光、照明
 施設内の各場所は、十分な照度があり、おおむね次の範囲の照度であることが望ましいこと。
場所 照度(ルクス) 測定地点
浴室 150〜300 床面
脱衣所、便所 150〜300 床面
受付 300〜700 作業面
下足場 300〜700 床面
廊下 75〜150 床面
脱衣室の管理
(1) 床面は、常に適度な乾燥が保たれていること。
(2) 足ふきマット及びベビー用シーツは、消毒等を行ったものと適宜取り替え、衛生的に保つこと。
なお、消毒には、材質等に応じ、適切な消毒剤を用いること。
(3) 脱衣室の給水栓には、飲用適又は飲用不適の旨をその付近の見やすい場所に表示すること。
(4) 洗濯機及び乾燥機については、利用者の見やすい場所に使用方法、禁止事項等を表示し、1月に1回以上保守点検し、事故防止に留意すること。
(5) 脱衣室等の入浴者の見やすい場所に、浴槽内に入る前には身体を洗うこと等、公衆衛生に害を及ぼすおそれのある行為をさせないよう注意喚起すること。
浴室の管理
(1) 浴室は、湯気抜きを常に適切に行うとともに、給水(湯)栓等が、常に使用できるよう毎日保守点検すること。
(2) 浴槽水は適温に保つこと。
(3) 水道法(昭和32年法律第177号)第3条第9項に規定する給水装置により供給される水(以下「水道水」という。)以外の水を使用した原水、原湯、上り用水及び上り用湯並びに浴槽水は、「公衆浴場における水質基準等に関する指針」に適合するよう水質を管理すること。
(4) 浴槽水は、常に満杯状態に保ち、かつ、十分にろ過した湯水又は原湯を供給することにより溢水させ、清浄に保つこと。
(5) 浴槽水の消毒に当たっては、塩素系薬剤を使用し、浴槽水中の遊離残留塩素濃度を頻繁に測定して、通常0.2ないしは0.4mg/L程度を保ち、かつ、遊離残留塩素濃度は最大1.0mg/Lを超えないよう努めること。また、当該測定結果は検査の日から3年間保管すること。
 ただし、原水若しくは原湯の性質その他の条件により塩素系薬剤が使用できない場 合、原水若しくは原湯のpHが高く塩素系薬剤の効果が減弱する場合、又はオゾン殺 菌等他の消毒方法を使用する場合であって、併せて適切な衛生措置を行うのであれば、この限りではない。

(注) ※1 温泉水等を使用し、塩素系薬剤を使用する場合には、温泉水等に含まれる成分と塩素系薬剤との相互作用の有無などについて、事前に十分な調査を行うこと。
※2 塩素系薬剤が使用できない場合とは、低pHの泉質のため有毒な塩素ガスを発生する場合、有機質を多く含む泉質のため消毒剤の投入が困難な場合、又は循環配管を使用しない浴槽で、浴槽の容量に比して原湯若しくは原水の流量が多く遊離残留塩素の維持が困難な場合などを指す。この場合、浴槽水を毎日完全に換水し、浴槽、ろ過器及び循環配管を十分清掃・消毒を行うこと等により、生物膜の生成を防止すること。
※3 高pHの泉質に塩素系薬剤だけを用いて消毒をする場合には、レジオネラ属菌の検査により殺菌効果を検証し、遊離残留塩素濃度を維持して接触時間を長くするか、必要に応じて遊離残留塩素濃度をやや高く設定すること(例えば0.5〜1.0mg/Lなど)で十分な消毒に配慮をすること。
※4 オゾン殺菌、紫外線殺菌、銀イオン殺菌、光触媒などの消毒方法を採用する場合には、塩素消毒を併用する等適切な衛生措置を行うこと。また、オゾン殺菌等他の消毒方法を用いる場合には、レジオネラ属菌の検査を行い、あらかじめ検証しておくこと。
※5 オゾン殺菌による場合は、高濃度のオゾンが人体に有害であるため、活性炭などによる廃オゾンの処理を行い、浴槽水中にオゾンを含んだ気泡が存在しないようにすること。
※6 紫外線殺菌による場合は、透過率、浴槽水の温度、照射比等を考慮して、十分な照射量であること。また、紫外線はランプのガラス管が汚れると効力が落ちるため、常時ガラス面の清浄を保つよう管理すること。

(6) 循環式浴槽の浴槽水を塩素系薬剤によって消毒する場合は、当該薬剤はろ過器の直前に投入すること。
(7) 消毒装置の維持管理を適切に行うこと。
(注) ※1 薬液タンクの薬剤の量を確認し、補給を怠らないようにすること。
※2 注入弁のノズルが詰まっていたり、空気をかんだりして送液が停止していないか等、送液ポンプが正常に作動し薬液の注入が行われていることを毎日確認すること。
※3 注入弁は定期的に清掃を行い、目詰まりを起こさないようにすること。
(8) 回収槽の水を浴用に供しないこと。ただし、これにより難い場合にあっては、回収槽の壁面の清掃及び消毒を頻繁に行うとともに、レジオネラ属菌が繁殖しないように、別途、回収槽の水を塩素系薬剤等で消毒すること。
(9) 浴槽に気泡発生装置等を設置している場合は、連日使用している浴槽水を使用しないこと。
(10) 打たせ湯及びシャワーには、循環している浴槽水を使用しないこと。
(11) その他、「循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアル」等を参考にして、適切に管理すること。

飲用水供給設備の管理
(1) 飲用水を供給する設備については、飲用適の旨をその付近の見やすい場所に表示すること。
(2) 水道法の適用を受けない飲用水及び水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とする受水槽(以下、「小規模受水槽」)から供給を受ける飲用水について次の表による水質検査を「水質基準に関する省令(平成4年厚生省令第69号)」の基準に従い行い、その結果を検査の日から3年間保管するとともに、基準を超える汚染が判明した場合は、保健所に通報し、その指示に従うこと。また、これら飲用水の消毒は、遊離残留塩素が0.1mg/L以上になるように管理すること。
 ただし、「温泉法」(昭和23年法律第125号)第12条に基づき、都道府県知事が飲用の許可を与えている温泉については、適用しない。

(水道法の適用を受けない飲用水)
検査対象 検査回数
色、濁り、臭い、味 1日に1回以上
水質基準に関する省令(平成4年厚生省令第69号)の表の上欄に掲げる事項のうち、一般細菌、大腸菌群、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素、塩素イオン、有機物等(過マンガン酸カリウム消費量)、pH値、味、臭気、色度及び濁度並びにトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン等に代表される有機溶剤のうち周辺の水質検査結果等から判断して必要となる事項 1年に1回以上
(注)飲用水に異常を認めたときは、臨時に水道法第4条に係る検査項目のうち、必要な検査を行うこと。

(小規模受水槽)
検査対象 検査回数
色、濁り、臭い、味 1日に1回以上
(注)飲用水に異常を認めたときは、臨時に水道法第4条に係る検査項目のうち、必要な検査を行うこと。

給水、給湯設備の管理
(1) 貯湯槽の温度を、通常の使用状態において湯の補給口、底部等に至るまで60℃以上に保ち、かつ、最大使用時においても55℃以上に保つようにすること。ただし、これにより難い場合には、レジオネラ属菌が繁殖しないように貯湯槽内の湯水の消毒を行うこと。
(2) 給水、給湯設備は、1年に1回以上保守点検し、必要に応じて被覆その他の補修等を行うこと。
 また、小規模受水槽については、簡易専用水道に準じて管理状況について保健所等の検査を受けることが望ましいこと。
その他の設備の管理
(1)サウナ室又はサウナ設備(蒸気又は熱気のもの)を設ける場合
1) 毎日清掃・洗浄し、1月に1回以上消毒及びねずみ、衛生害虫等の点検を行うとともに、必要に応じて防除措置を講じ、清潔で衛生的に保つこと。
2) 換気を十分に行うこと。
3) 見やすい場所に入浴上の注意を掲示し、使用中は、入浴者の安全に注意すること。
4) 1月に1回以上保守点検するとともに、室内の温度及び湿度について定期的に測定し、その記録を作成し、これを3年以上保存すること。
(2)露天風呂を設ける場合
1) 浴槽に付帯する通路等は毎日清掃し、1月に1回以上消毒及びねずみ、衛生害虫等の点検を行うとともに、必要に応じて防除措置を講じ、清潔で衛生的に保つこと。
2) 浴槽及び浴槽に付帯する通路等は、十分に照度があること。
3) その他、5浴室(2)〜(11)に準じて適切に管理すること。
(3)電気浴器を設ける場合
1) 1月に1回以上保守点検するとともに、絶縁抵抗、接地抵抗等について定期的に検査を受け、その記録を作成し、これを3年以上保存すること。
2) 見やすい場所に入浴上の注意を掲示し、使用中は、入浴者の安全に注意すること。
入浴者に対する制限
(1) おおむね10歳以上の男女を混浴させないこと。
(2) 入浴を通じて人から人に感染させるおそれのある感染症にかかっている者、下痢症状のある者及び泥酔者等で他の入浴者の入浴に支障を与えるおそれのある者を入浴させないこと。
(3) 浴槽に入る前に石ケン等を用いて身体をよく洗うとともに、出る際にもシャワー等で身体を洗い流すよう入浴者に衛生上の注意を喚起すること。
(4) 浴槽内で身体を洗うこと、浴室で洗濯をすること等、公衆衛生に害を及ぼすおそれのある行為をさせないこと。
10従業者の衛生管理
(1) 衣服は、常に清潔に保つこと。
(2) 結核若しくは「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(平成10年法律第114号)により就業が制限される感染症にかかっている者又はその疑いのある者は、当該感染症をまん延させるおそれがなくなるまでの期間業務に従事させないこと。
(3) 従業者は、1年に1回以上健康診断を受けることが望ましいこと。
11その他
(1) 脱衣室等の入浴者の見やすい場所に、浴槽内に入る前には身体を洗うこと等、公衆衛生に害を及ぼすおそれのある行為をさせないよう注意喚起する他、入浴料金、営業時間、入浴者の心得、その他必要な事項を掲示すること。
(2) 入浴施設内において、物品販売等を行う場合には、相互汚染のないよう衛生的に保つこと。
(3) 入浴者の衣類、貴重品等の盗難防止を図ること。
(4) 入浴者にタオルを貸与する場合は、新しいもの、又は消毒したもの(「クリーニング所における衛生管理要領(昭和57年3月31日環指第48号)」第4消毒に規定される消毒方法及び消毒効果を有する洗濯方法に従って処理されたもの)とすること。
(5) 入浴者に、くし、ヘアブラシを貸与する場合は、新しいもの、又は消毒したもの(材質等に応じ、逆性石ケン液、紫外線消毒器等を使用して処理されたもの。)とすること。
(6) 入浴者にカミソリを貸与する場合は、新しいもののみとすること。
(7) 使用済みのカミソリを放置させないこと。
(8) 入浴者に洗面道具を保管する箱を貸与するときは、不衛生にならないよう注意させるとともに、定期的に当該箱内を清掃及び消毒すること。
(9) 善良な風俗の保持に努めなければならないこと。

第2 その他の公衆浴場
 その他の公衆浴場にあっては、前記第1を準用する。
 なお、公衆浴場の利用目的利用形態等により、これにより難い場合であって、公衆衛生上及び風紀上支障がないと認められるときは、一部適用を除外することができるものとする。

IV 自主管理体制

営業者は、本要領に基づき、自主管理マニュアル及びその点検表を作成し、従業者に周知徹底すること。
営業者は、自主管理を効果的に行うため、自らが責任者となり又は従業者のうちから責任者を定めること。
責任者は、責任をもって衛生等の管理に努めること。
施設利用者中にレジオネラ症又はその疑いのある患者が発生した場合は、次の点に注意し、直ちに保健所に通報し、その指示に従うこと。
(1) 浴槽、ろ過器等施設の現状を保持すること。
(2) 浴槽の使用を中止すること。
(3) 独自の判断で浴槽内等への消毒剤の投入を行わないこと。


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