10/10/01      食品に関するリスクコミュニケーション            「健康食品と上手くつきあう方法」       開催日時: 平成22年10月1日(金)13:00〜17:30       場  所: 星陵会館 ホール ○司会 本日は皆様、お忙しい中御参加いただきありがとうございます。  ただいまから、食品に関するリスクコミュニケーション「健康食品と上手くつきあう 方法」を開催いたします。  私は本日司会を務めます厚生労働省医薬食品局食品安全部企画情報課の大井と申しま す。よろしくお願いいたします。  まずは開会のあいさつとして、厚生労働省大臣官房参事官の木村から、ごあいさつ申 し上げます。 ○木村参事官 皆様こんにちは。本日は皆様方、非常に何かとお忙しい中、健康食品に 関する意見交換会に御参画賜りまして、誠にありがとうございます。私は先ほど御紹介 にあずかりました、厚生労働省の大臣官房参事官を務めております木村と申します。ど うぞよろしくお願い申し上げます。  この意見交換会は、厚生労働省と消費者庁の合同の開催ということで、今回開催させ ていただいております。私は両省庁の代表ということで、冒頭にごあいさつをさせてい ただきたいと思ってございます。  さて、皆様方には申すまでもないことでございますけれども、現在、国民の健康志向 というものが非常に高まってきてございます。そのようなことで、今さまざまな健康食 品と称するものが、流通販売されているわけでございますけれども、それに伴って健康 食品を利用する消費者の方々から、疑問あるいは不安といった声も聞かれるようになっ てきおります。  そのため、今回の開催におきましては、いわゆる民間の方々でリスクコミュニケータ ーと言われている方々やあるいは行政でこの分野に携わっている方々を対象といたしま して、消費者の方々に、健康食品の正しい知識をアドバイスするお立場の方々に特にお 集まりいただきまして、健康食品の安全性あるいは表示制度について、私どもの行政の 担当者から説明をさせていただくことに加えまして、消費者の方々が注意すべき点に関 するさまざまなこれまでの内容も踏まえまして、本日、国立健康・栄養研究所の情報セ ンターのセンター長であられる梅垣センター長、それから鈴鹿医療科学大学の長村先生 に、それぞれ「健康食品の利用について」、あるいは「消費者への情報提供のポイント について」といった課題で、専門家の方々に御説明をいただくという企画をさせていた だいているところでございます。  本日後半では、皆様方と一緒になって意見交換会というような場も設けていきたいと 考えております。事前に皆様方から御質問等もいただいているところでございますけれ ども、この場におきましても改めて御質問等あれば、どうか御遠慮なく大いに御質問等 をしていただければと思っておりますので、何とぞその点よろしくお願い申し上げまし て、まずは簡単でございますが、本日の開会のあいさつにかえさせていただきます。  本日は、何とぞよろしくお願い申し上げます。 ○司会 それでは、講演の前に配付資料の確認をさせていただきます。  皆様のお手元の封筒にある資料を御確認ください。まず議事次第が1枚入っておりま す。そのほか講演の資料として資料1「健康食品の安全確保について」  2「健康食品の制度と現状について」  3「健康食品の利用について」  4「消費者への情報提供のポイントについて」の4冊子入っております。  そのほかに、パンフレットとアンケートが入っております。もし不足の方がございま したら、挙手いただきますよう、お願いします。  アンケートにつきましては、今後の参考にさせていただきたいと思っておりますので、 お帰りの際には、出口付近の回収ボックスの方に御記入の上、投函いただきますようお 願いいたします。  続きまして、簡単に本日の進行について、説明いたします。  初めに行政担当者として、厚生労働省食品安全部基準審査課新開発食品保健対策室、 健康食品安全対策専門官の松井より、「健康食品の安全確保について」説明し、次に消 費者庁食品表示課衛生調査官の芳賀より、「健康食品の制度と現状について」御説明し ます。  その後、10分程度の休憩を挟みまして、独立行政法人国立健康・栄養研究所情報セ ンター長の梅垣様から「健康食品の利用について」、鈴鹿医療科学大学教授長村先生か ら「消費者への情報提供のポイント」について、御講演いただきます。  その後、10分程度の休憩を挟みまして、質疑応答及び会場とのパネルディスカッシ ョンを行い、終了はほぼ5時半を予定しております。  なお、恐れ入りますが、会の進行に支障を来たすおそれがありますので、携帯電話を お持ちの方は、電源をお切りになるか、マナーモードとしていただきますよう御協力を お願いいたします。  それでは、講演に入りたいと思います。  まず、厚生労働省食品安全部基準審査課新開発食品保健対策室健康食品安全対策専門 官の松井から、「健康食品の安全確保について」御説明させていただきます。 ○松井専門官 本日はお忙しい中、たくさんお集まりいただきまして、ありがとうござ います。私は厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課新開発食品保健対策室で、健 康食品の安全性の関係のことを担当させていただいております松井と申します。どうぞ よろしくお願いいたします。  それでは、お話の方を始めさせていただければと思います。  実際にスライドに入る前に、お手元にある資料が若干投影されるものと異なっている かもしれませんけれども、異なっている部分につきましては、基本的には厚生労働局の ホームページに掲載されている、もしくは公的なホームページに掲載されているものに なりますので、その際もしこの資料が欲しいという御意見がございましたら、後ほどお 伝えいただければホームページのどこに載っているというのをお伝えできると思います ので、よろしくお願いいたします。  話しを始めさせていただくのですが、実は私は電車通勤をしているのですが、今朝電 車でラジオを聞きながら乗っていたんです。そうしますと、とあるFMラジオ局だった のですが、「脅威のダイエットサプリメント1か月で42キロの減量に成功」という、 そういうのが流れているのです。ここにいらしている皆様であれば、42キロの減量っ てどういうことだとぱっとわかっていただけると思うのですが、一般の方々がそういっ たことがわかるかどうかというのが、ひとつあるのです。ですからそこをちゃんと伝え ていただくためにも、皆様にはこういった機会を御利用いただければと思っております。  内容をお話しますと、体重90キロの女性が、42キロ1か月でダイエットできた。私 の体重は90までは行かないですけれど、それに近いものがあります。私が42キロ減る と体重が半分ぐらいになっちゃうわけです。一般にそんなことがあり得るのかと。 虚偽誇大とは別にしまして、確かに実際にいらっしゃるのかもしれない。そこはともか くとして、そういったことがすべての方に起こり得るはずがないという考え方というも のが、必要なのではないか。また逆に私に言わせていただきますと、それは何か変な薬 が入っているのじゃないのと、心配になってしまうようなこともあります。その辺ちょ っと調べてみようかとも思ってはいるのですけれど、そういった本当のことを見抜く力 というものを、消費者の方に伝えていただけるようお願いできればと思っております。  それでは、お話を進めさせていただきたいと思います。  私たちが飲食に供するものの法律上の分類ということです。まず、法律以前の問題と して、私たちが口にするもの、口に入れるもの、触れるものというと器具・容器も入る のですが、基本的には医薬品と食品という形になっております。  これを大きく分けますと、「医薬品(医薬部外品を含む)」という形ですが、まず、 医薬品というものに分類されます。残りの部分が「食品(いわゆる健康食品を含む)」 という形になってくるのですが、この食品を細かく見てみますと、まず法律上、保健機 能食品というカテゴリーといわゆる健康食品を含む食品というものに分類できるかと思 います。  保健機能食品の中には、後ほど説明をさせていただきますが、特定保健用食品、いわ ゆる特保マークがついているものです。万歳をしているマークがついているものになり ますが、こちらと栄養機能食品というものに分かれることになっています。  まず、医薬品の部分が法律上、どうなっているのかというのを見ますと、薬事法の第 2条のところで、「この法律で『医薬品』とは、次の各号に掲げるものをいう」という ことで3つございます。「日本薬局方に収められている物」「人又は動物の疾病の診断、 治療又は予防に使用されることが目的とされている物であって、器具機械でないもの」。 3つ目として、「人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされて いる物であって」云々となっているわけです。ですから、疾病の診断、治療または予防 に使われるものは、基本的には医薬品ですよとなっているわけです。ここは十分押さえ ていただく必要があるのかと。  次に、先ほどの表に戻りまして、保健機能食品というものがどうなっているか。保健 機能食品に関しましては、昨年9月までは厚生労働省の方で行っていたわけなのですが、 消費者庁ができました関係で、現在は消費者庁の方で審査許可等をなされているものに なります。後ほど細かく説明いただけるかと思いますが、私の方でざっと説明させてい ただきますと、まず食品の定義、食品は食品衛生法第4条の中で、「食品とは、すべて の飲食物をいう。ただし、薬事法に規定する医薬品及び医薬部外品は、これを含まな い」ということになっております。更にこの中で水色の部分、保健機能食品がどうなっ ているかといいますと、実は意外と歴史が浅くて、2001年4月から。特定保健用食品 は、もっと前からあったのですけれども、保健機能食品という定義づけがされたのは 2001年4月からとなっています。  内容としましては、「従来、多種多様に販売されていた『いわゆる健康食品等』のう ち、一定の条件を満たした食品を『保健機能食品』と称することを認める制度」という ことになっております。  これは2つありまして、「許可等の必要性や食品の目的、機能等の違いによって『特 定保健用食品』と『栄養機能食品』の2つ」に分かれております。  まず、皆さんから見て左側、「特定保健用食品とは」ということで説明をさせていた だきます。特定保健用食品は、身体の生理学的機能云々とあるんですが、早い話が、 「特定の保健の目的で摂取するものに対し、その摂取により当該保健の目的が期待でき る旨の表示をする食品」。ここはあくまでも表示する食品ということなので、現在は消 費者庁さんの方で行っているものです。  もう一つ、保健機能食品の中で、栄養機能食品と違うところは、個別に許可(承認) を得ているものになります。ですから、同じ製品群であっても、例えばガムで、実際に あるかどうかわかりませんが、ミントの味のガムとイチゴ味のガムがあったとすると、 これは別々の登録になります。ですから、別々の審査を受けて登録を受けるということ になります。  ただ、関与成分が問題になってきますから、ガムなどの場合は、虫歯になりにくいと いうことがメインですので、関与成分は同じということになるので、審査を一部簡略化 させるところがあるにせよ、個別の商品に対する登録だと思っていただければと思いま す。  次に、水色の部分、右側の栄養機能食品についてですが、「栄養機能食品とは」につ らつらと書いてあるのですが、「現在のところ、ビタミン類12種類とミネラル類5種 類」のみということで、基本的には栄養成分、「高齢化や食生活の乱れ等により、通常 の食生活を行うことが難しく、1日に必要な栄養成分を摂取できない場合等に」摂取す る食品となっております。これは、基本的には、日本国民の栄養の摂取状況を勘案して、 不足する可能性がある。もしくは不足しているビタミンとミネラル。こういったものに ついて実施するものでして、特定栄養食品との大きな違いは、「国に対し個別の許可申 請や届出等を行う必要がない自己認証制度」。自己認証というのが、正しい言葉かどう かわからないんですが、規格基準というものが定まっていまして、こういった規格値に 入っているものであれば、こういった表示をしていいですよということが定められてい るものになります。  最後、一番端にある食品、いわゆる健康食品を含むということになっているんですが、 ここがどのような分類になっているのかというところなのですが、実は御存じのとおり、 健康食品とはということなのですが、健康食品については法律上の定義はございません。 ここにありますのは、平成19年7月から平成20年7月までに開催されました「健康食 品の安全性確保に関する検討会」の中で用いられた文言になるのですが、「『健康食 品』については法律上の定義はなく、広く健康の保持増進に資する食品として販売利用 されるもの全般を指していると考えられる」。私どももこのように考えているわけでし て、食品全体の中で、健康によいと称して販売される食品と考えられるもの。例えば納 豆、ヨーグルト、こういったものがあるかと思います。  次に、「通常の食事以外に摂取する食品と考えられるもの」は何があるかと考えると、 冒頭に話をさせていただきましたダイエット用食品などは、食事とは全く関係ないわけ でして、ああいったものが入ってくるのかなと。  最後に、健康食品、錠剤・カプセル等、医薬品様の形態をとっているもの。これはい わゆる外国でいくとサプリメントと呼ばれているものです。マルチビタミン、カルシウ ム剤という形で現在、種々販売されております。この間、私も100円ショップに行って みたら、100円ショップにまで売っていて、ちょっとびっくりしてしまったところです。 健康食品が100円ショップにも並ぶ時代になったかと、何とも考えさせられるところが あったわけです。  こういった中で私たちの中で健康食品の安全性確保をどう行っていくかというのがご ざいます。まず健康食品の安全性確保について一番大事なものとして、「新開発食品」 の販売禁止というものがございます。この「新開発食品」の販売禁止についてというこ とですが、大きく3つございます。  まず左の2つです。一番左、「一般に飲食に供されることがなかった物」、一番身近 なものでいくと、松の皮を御存じですか。ピクノジェノ−ルとかいろいろありますが、 松の木の皮を抽出して、そこから健康成分を取り出したというのもございます。昔から 考えれば、そんなものを食べるはずがないと思っていたものであったり、諸外国から輸 入されるものの中にはある種の泥、泥をそのまま食べるというものがございます。ちょ っと想像がつかないようなものなんですが、そういったものがあったり、また特殊な化 学物から合成したものとかいろいろ出てきている。そういったものがある。  そういったものでなくても、2番目のところに移るのですけれども、今まで食べられ ていたものであっても、「濃縮等した成分を錠剤化、カプセル化する等により、通常の 食品の一般的な摂取方法とは著しく異なる方法により摂取される食品」。こういったも のにつきましては、人の健康を損なうおそれがない旨の確証がない限り、販売してはな らないということになっておりまして、もしそういったもので危険性が考えられた場合 には、食品安全委員会及び厚生労働省にございます薬事食品衛生審議会の意見を聞いて、 食品として販売することを禁止することができるということになっております。  この販売禁止についてですが、食品衛生法第7条で定められているわけですけれども、 現在のところ、一品だけ販売禁止になっているものがございます。これは、アマメシバ というものでして、サラダの彩りとかそういった感じで東南アジアで食べられているも のだったのですが、それを乾燥させて摂取するということで、まさにここに当たってく るわけなもですが、そういったものを食べた方がお亡くなりになっている状況がござい ます。それで厚生労働省の方では、急遽、販売の禁止ということをかけまして、ただこ れがまたちょっと困ったことに、因果関係は明らかなのだけれども、原因物質は特定で きないというちょっと不思議な状況になってしまっていたんですが、アマメシバを大量 摂取することによって、健康被害が発生するのは間違いないだろうということで販売を 禁止している唯一のものになります。  そのほかにも右のところになるのですが、一般に飲食に供されてきた食品と同様の食 品であるが、その食品によるものと疑われる健康被害が発生した場合。こういったもの については、同じように食品安全委員会、医薬・食品衛生審議会の意見を聞いて、食品 として販売することを禁止することができるという形になっているものでございます。  次に厚生労働省の方で、健康食品の安全性確保の取組みとしてどのようなものを行っ ているのかということを、説明させていただきたいと思います。  私どもで現在行っている主なものになるのですが、健康食品の安全性確保に関する検 討会報告書の概要というのがありますが、先ほど申しましたとおり、平成19年から20 年まで1年間かけて、検討会を実施いたしまして、報告書をまとめさせていただきまし た。  まず、前提のところ、一番上の四角になるのですが、「国民の健康に対する関心の高 まり等を背景として、これまで一般に飲食に供されることのなかったものや、特殊な形 態のもの等、さまざまな食品が『健康食品』として流通する中で、消費者により安全性 の高い製品が供給されるためには、以下のような製造段階から販売段階、健康被害情報 の収集・処理にわたる幅広い取組が必要」というふうにされておりまして、3つの大き な柱が組み立てられております。  一つが製造段階における具体的な方策、一つが健康被害情報の収集及び処理体制の強 化、一つが消費者に対する普及啓発ということになっています。この中を細かく見てい きますと、まず、製造段階における危害発生の防止ということでございます。実は平成 20年に、報告書が取りまとまったというお話をさせていただいたんですが、その以前 から厚生労働省ではガイドラインというものを出させていただいていました。これは平 成17年2月に出させていただいているものになるんですけれども、2つのガイドライ ンを出しています。  一つがGMPガイドラインというもので、もう一つが原材料の安全性自己点検ガイド ラインというもので、2つ出させていただいております。メーカーさんに対するもので して、まずGMPガイドラインにつきましては、基本的な考え方はとしまして、「原料 の受け入れから最終製品の出荷に至るすべての工程について、一定の製品を製造するた めに必要な様々なチェックを設け、それを守って製造するというもの」でございます。  具体的にいきますと、まずGMPによる安全性の確保、一番わかりやすいのは、原料 の入荷から始まって、製品を出荷してそこで終わってもいけない。最終的には苦情処理、 回収処理、これはあってはならないものなのですけれども、実際にもし問題が起きた場 合には苦情処理、回収処理を行わなければいけないということも含めて、原料を入れる 段階から最後の段階まで、一貫した製品の安全管理を行ってくださいということを推し 進めているものでございます。  GMPというのは適正製造規範ガイドラインということで、私たちが出させていただ いているのですが、まず製造会社さんから販売店に至るまで、各事業所が販売する同一 の食品について常に同一の品質を確保するとともに、一貫した製造管理をしてください と。  まず、GMPとは何ぞやという話なのですけれども、これはGood Manufacturing Practiceということで、全世界的にGMPという呼び方をしています。品質のよい優 れた製品を製造するために、原料の受入れから最終製品の包装、出荷に至る全工程につ いて広な要件をまとめたものということになっています。製品の品質は最終製品、要す るにでき上がったものだけ試験をすればいいということでは確保できませんということ で、設計されたとおりの品質のよい製品を常に供給するためには、最終製品だけでなく、 原料、包装及び表示による資材、必要があれば製品の中間段階にあるものまでチェック をする必要があるのではないかというふうな考え方に基づいているものになります。  これは食品の方で行われています、HACCPの考え方とも非常に似ているんですが、 若干違うところもございます。医薬品の方はGMPが義務付けられております。ですが、 食品にはGMPという考え方は導入されていませんが、健康食品というものは食品と医 薬品の中間というと怒られてしまうのでしょうけれど、非常に近い形のものがございま すので、医薬品と同じような考え方をして製造の管理をしていくべきではないかという ことで入ってきているものになります。  GMPの基本的要件、基本的要件というよりも満たすべき要件と考えていただいた方 がよろしいかと思うのですが、まず大きなものとして3つございます。各製造工程にお ける人為的な誤りの防止、2つ目が人為的な誤り以外の要因による製品そのものの汚染 及び品質の低下。3つ目としまして、全製造工程を通じて一定の品質の確保ということ です。  この3つだけではないのですが、少なくともこの3つは満たした上で、計画を進めて いかなければならないというふうなものになっております。実際に要件を具体化するた めどのようなことをするかということで、管理面としましては、こちらの方を一般的に はソフトというふうな言い方をしているかと思うのですが、管理組織、会社としての組 織の構築ですとか作業工程の管理、作業管理、製造管理、品質管理というものを行う。  ここは企業さんにとっては頭の痛いところかもしれないのですが、ハード、設備です。 構造設備の面での整備というものが必要になってくる。  ただ、これはお金をかければいいということではなくって、あるものをいかにうまく 回すのかというのも、一つのテクニックになってくるかと思いますので、十分に御考慮 いただければと思います。  先ほどお見せしたスライドに戻らせていただきますと、原材料の安全性自己点検ガイ ドラインというものがございます。まず健康食品は、幾ら製造管理をしっかりしていて も、問題が発生する可能性がある。というのは、入ってくる原材料をしっかりチェック していなければ元の木阿弥なのではないかということで、まず健康食品について原材料 の安全性を確保するにはどうすればいいかということで、「『健康食品』を含む食品の 製造事業者は、製造する食品の原材料の安全性の確保に必要な措置を講ずるよう努める べきものとされている」。これは、食品衛生法第3条になっています。これは健康食品 だけでなく、食品一般に言えることになるのですが、努力義務ということにはなってお りますが、ここはやっていただくべきところかと考えております。  また、特に健康食品のように、「錠剤・カプセル状等の形態の食品については、過剰 摂取による健康被害のおそれがある」。要するにどんどん食べられるということです。 普通の食品であれば、御飯茶碗一杯食べる。それを1日に3杯食べなさいといってもと ても食べれるものではないのですが、健康食品の場合はカプセル状ですので、一度に2 倍でも3倍でもとろうと思えば簡単にとれる。  健康食品をとられている方の中には、後ほどお話があるかと思うのですが、昨日飲み 忘れたと、じゃあ今日飲んでしまえばいいやということで、1日3錠と書かれていると ころを6錠飲むと。3日間飲み忘れたから、じゃ3×3だから9錠飲んでしまえとか、 そういうむちゃなことをされる方がいらっしゃる。  人の体は不思議なもので、とったものがそのまま吸収されるわけではなくて、必ず余 った分は外に出ていくのですが、中にはたくさんとることによって、毒性を起こすもの もある。ビタミン類もそうなのですが、定められた量をとれば、非常に健康にはいいの ですが、それを越えて使った場合には、健康被害が発生することもあるということでご ざいまして、そういった原材料でどの程度の量を食べたときに健康被害が発生するのか。 そういった情報も収集する必要があるということで、健康食品の製造に使用される起源 原料につきましては、まず、文献検索で安全性の確認をとる。また、毒性情報などを収 集する。まず文献上で収集していただいて、その次のステップとして、食経験に基づい て安全性を確保できない場合、文献等は問題ないのだけれども、安全性が確保できない とか、科学的な文献がないといった場合、原材料等を用いた毒性試験を行う必要がある のではないかということで、先ほどの、これは自己点検フローチャート、非常に見づら いのですが、これはもともとA4縦のものを強引に画面に収めてしまったのでこんなこ とになっているのですが、ステップ1からステップ8まであって、フローチャートにな っていまして、原材料レベルでチェックするべきこと、最終製品レベルでチェックする べきことまで細かく分かれて出ております。  これは実際もう少し細かいものが出ておりますので、これはまた後ほど別途御紹介さ せていただければと思います。  平成17年にガイドラインを出させていただいて、その後どうなったかということで 検討会の中で、先ほど申しました原材料と製造工程管理による安全性の確保というのは 必要なのだけれど、更にもう一歩踏み込みまして、実際に原材料の安全性確保及び製造 工程管理による安全性の確保を実行するために、第三者認証制度というものをつくって はどうかということで提案がございました。内容としましては、「原材料の安全性確保 や製造工程管理(GMP)による安全性の確保において一定の水準に達したものになっ ているかについて、事業者以外の第三者によって客観的な立場から確認されることが実 効性の確保を図る上では極めて重要」であるということがなされました。  私どもの方で検討会の報告書を受けまして、業界団体さんが主導になっているのです が、認証協議会というものを立ち上げております。正式な名前は健康食品認証制度協議 会という名前になっておりまして、事業者の方が立ち上げているということで、ちょっ と不安ではないかということで、学識経験者の方にも入っていただきまして、学識経験 者の方が半分、あと事業者の方が半分。また事業者といっても原材料メーカーさん、販 売者さん、実際の製造メーカーさんとか委託販売業者さん、そういった方に入っていた だいて協議会をつくっております。  厚生労働省はここには入っておりませんが、会議には出席させていただきまして、オ ブザーバーという立場で参加させていただいております。  認証協議会の主な業務としましては、まず認証機関を認証するというのがございます。 認証機関が健康食品の安全性の確認がされていますというマークを発給することになる んですが、その認証機関が適当なことをやっていないがどうかというのをチェックする ということです。ここ自体が直接認証マークを発給することはありません。ここが認証 した認証機関が、各製品、個別の製品に対して、認証マークを発給するということにな っています。  認証協議会は、認証機関が適切に運営されているということを監督するとともに、認 証機関は、認証協議会に対して報告をする義務がある。認証機関はマークを発給するこ とになります。認証機関が発給するマークというのは、認証協議会が認めたもので、右 下にあるこの白い丸にSがデザインされているものになります。このマークを発給する ことになります。  認証機関は現在のところ、一機関だけです。今後どんどん増やしていこうという話を しているところなのですが、現在、一機関ですが、この丸のマーク自体は認証機関が幾 つできても必ず一つのマーク。この下に丸々協会とあります。今は認証機関は実際のと ころ、日本健康・栄養食品協会というところが、一つだけなっておりまして、マークの 下に日本健康・栄養食品協会というのが入って食品に添付されるという形になります。  ただ、現在は実は認証が始まったばかりで、認証された食品というのは、市場には流 通していません。年内には市場に流通し始めるのではないかというふうに、私の方では 思っておりますが、実際のところ、細かいところまではまだ確認がとれておりません。  次に、「健康被害発生未然防止のための体制整備・被害発生時の拡大防止のための対 応手順」というところでございます。  「平成14年10月、健康食品・無承認無許可医薬品治による健康被害発生の未然防止 のための体制整備及び健康被害発生時の被害拡大防止のための対応手順」というものを 取りまとめました「健康食品・無承認無許可医薬品健康被害防止対応要領」というもの を策定しております。これは基本的な心得として書いてあるのですけれども、「健康被 害発生の未然防止及び拡大防止のため、食品担当部局と医薬品担当部局の密接な連携に よる迅速な対応」となっておりまして、この健康被害対応要領というのは、基本的に食 中毒が発生したような場合は、まず皆様方からお近くの保健所に御相談いただいて、保 健所から厚生労働省の方に情報が集約されるということになっています。  ところが食中毒の場合は、医薬品の観点はないのです。あくまでも食品だけの観点に なるのですが、この健康食品の対応要領というのは医薬品部局も入ってきます。ですか ら、医薬品部局の方に入った情報も私どもの方に参りますし、食品部局から入ったもの も当然私たちに来るということで、食品部局と医薬品部局が連携をして情報の収集に努 めていきましょうということになっております。  健康食品で健康被害が発生した場合に、どこに行くかということで御質問があるかも しれないのですけれど、まず基本的には、最初は、疑われるのであれば、今飲んでいる 健康食品をやめていただくというのがまず第一。次に保健所さんに相談に行っていただ く。自治体、都道府県庁さんでも構いませんが、まず保健所さん、お近くの行政機関に 行っていただく。お近くの行政機関さんと御相談の上、必要な医療を受けていただく。 お医者さんに受診していただいて、問題があるかないかというのを判断していただくと いう形になります。  保健所さんにかかっていただきますと、対応要領に従って私どもの方に情報が自動的 に来る仕組みになっておりますので、まず何かおかしいと感じた際には、必ず保健所さ んの方に御相談に行くようにしてください。  まれに、保健所さんに相談に行く前にとりあえずちょっと病院に行ってみようかとい うことで、病院にかかられる場合もあるかと思います。私どもの方は、そういったこと でお医者さんの方にも、健康食品でこういった健康被害が発生する可能性がありますと いうことをお伝えする必要があるのではないかということで、昨年度パンフレットをつ くりました。お手元に参考にお配りさせていただいております。こちらのパンフレット、 これは厚労省のホームページに掲載しておりますが、基本的にお医者さん向けにつくっ たものなので、一般の消費者向けではないので、ちょっと取扱いには御留意いただきた いところなのですが、ホームページに載っているものですので、だれでも見ることがで きます。  これをつくるに当たって厚生労働省と併せて日本医師会、あと国立健康・栄養研究所、 後ほど御講演をいただく梅垣先生のところになるのですが、御協力いただきまして作成 しているもので、日本全国に医師会関係者が17万人ぐらいいるのですが、その方々に すべて配布させていただいております。私どもではとても送れないので、実際には医師 会さんに送っていただいたのですけれども、このようなものです。目次を見ていただく とわかるのですが、健康食品にはどんなものがあるかということから始まりまして、利 用状況、利用目的、情報源、あと健康食品の問題点、健康食品の被害の未然防止と拡大 防止のためにどのようにしたらいいかということをやっております。最後に日本医師会 さんの方が、実は健康食品の情報収集のデータベースというものを、医師会さんのホー ムページの中につくっておりまして、そこで健康被害の情報収集を行っている。  ですから、お医者さんが何かもし問題だと思ったらその情報システムを通じて、医師 会さんから私どもの方に連絡をいただくような形になっております。お医者さんにかか られて問題だと考えられた場合には、お医者さんが保健所に行くか、もしくは医師会さ んのシステムを使って登録されるかというのはあるのですけれども、その場合も必ず私 どもの手元に被害情報が来るような形になっております。  消費者に対する普及啓発ということでやっているものとしまして、こちらはまず健康 食品の製造事業者による安全性に関する情報。こちらは事業者さんに行っていただくし かなくて、ここは私どもは事業者さんの講演会なんかに呼ばれるごとに、必ず情報提供 をしてくださいねということを言っているのですが、そのほかに健康食品一般に関する 知識の普及啓発ということで行っております。「『健康食品』に含まれる成分の特徴、 その必要性、主要目的、摂取方法等について正しく情報提供できるよう、アドバイザリ ースタッフの養成課程や活動のあり方に関し一定の水準を確保できるよう取組を進め る」ということになっております。皆様方のようなリスクコミュニケーター、アドバイ ザリースタッフですね。こういった方を育成していくのも、一つの手立てではないかと 考えているところです。  アドバイザリースタッフとはということです。これが実は非常に古くて、平成14年 2月に、当時、厚生労働省の医薬食品局食品保健部長、今の食品安全部長になるんです が、の通知で、「保健機能食品等に係るアドバイザリースタッフの養成に関する基本的 な考え方」という通知を出させていただいております。これは実は平成14年につくっ たのはよかったのですが、その後、厚生労働省の方でちょっとフォローアップが十分に できていないところがございまして、先ほど申しました健康食品の安全性検討会の中で、 もう少しアドバイザリースタッフの手当てをして、消費者の方に情報提供をするべきで はないかということで、お話がございまして、行っているものでございます。  まず、アドバイザリースタッフが取得すべき知識ということで、全部これは厚生労働 省のホームページに載っておりますので、後ほど見ていただければと思います。1番か ら10番まで細かく設定されております。また、アドバイザリースタッフの養成方法と いうことで、養成対象、実施主体についてということで、お示しさせていただいている わけですが、養成方法もあります。これが実際アドバイザリースタッフと考えられる組 織が、今、厚生労働省の方で厚生労働科学研究の事業として行っているんですが、大体 20前後あるのかなと。  ところが、その中を細かく見ていきますと、名前だけがアドバイザリースタッフとな っていたり、サプリメント何とかとなっているだけで、私どもが出させていただいてい るガイドラインにのっとっていると思われるのは、4つか5つか、その程度しかないと いうことです。逆にそのような状況では、消費者の方に伝わらないばかりか、アドバイ ザリースタッフって怪しいものなんじゃないのということを言われかねないということ もございまして、現在、私ども厚生労働省の方で、先ほど申し上げました厚生労働科学 研究費を用いて、各育成団体の取得すべき知識としてどのようなものをやっているのか。 養成対象をどのような状況で行っていて、実施主体としてはどのような方々なのか。養 成に関する留意事項というのをしっかり守っていただいているのかというのをチェック させていただいておりまして、それにのっとった形で、今後アドバイザリースタッフの 育成というものを進めていければと思っているところです。  先ほどとスライドが前後してちょろちょろして申し訳ないのですが、今年の8月に健 康食品の表示に関する検討会というものが取りまとめられました。これは消費者庁さん の方で行われていたものですが、昨年から行われているものでございまして、御存じの とおり、とある健康食品、特定保健用食品の中に有害物質が混入しているおそれがある。 混入じゃないですね。不純物として生成する可能性がある。生成されることがわかりま して、それが人の健康に影響を及ぼす可能性があるのではないかということで、特定保 健用食品としての許可の自主的な返納という形になっておりますが、そういった事件が ございました。  それを機に、健康食品の表示を含めて、健康食品について、どういったふうに取締り とか、消費者教育をしていくのかというのが議題に上っています。非常に見づらくなっ てしまって申し訳ないのですが、これは消費者庁さんのホームページに載っているので、 論点整理の一番下のところに、健康食品の表示の効果的な規制や適切な情報提供の仕組 みについて、消費者委員会の方で引き続き検討するべきものとして定められています。 字がつぶれてしまって非常に申し訳ございません。もう少しきれいに見えるつもりだっ たのですが。  今後、消費者庁ではなく消費者委員会の方で、積極的に議論をしていくべきものとし てアドバイザリースタッフのところに言及されております。ここは見えにくくなってし まっております。下線部のところを読ませていただきますと、「消費者に対して適切な アドバイスができる専門家の養成や科学的な知見に基づく情報を集約支援する体制の整 備等について引き続き議論する必要がある」ということで、これから厚生労働省でなく てというよりも、消費者委員会の方でも、こういったアドバイザリースタッフの養成と いうのを考えていこう。それに当たっては厚生労働省と協力してということがございま すので、私どもとしては、そういった動きと連動して実施していければというふうに考 えているところでございます。  ざっと概要をお話しさせていただいたところですが、実際に健康食品等の情報を皆様 方が入手する場合にどうするかということがございます。厚生労働省のホームページも 一部載せさせていただいてはいるのですが、厚生労働省のホームページは、実際の健康 被害が発生したものがほとんどなっておりません。各素材の情報というのは、余り載っ ていないところがあります。  それで、独立行政法人ではありますが、国立健康・栄養研究所と協力しまして、国立 健康・栄養研究所のホームページの中に、各健康食品の安全性等の客観的な情報が入手 できるシステムということで、情報提供のためのシステムを構築させていただいており まして、情報提供させていただいております。  大きくは4つの部門がありまして、一つは健康食品の利用に関する基礎的な知識の情 報のページ、あと緑色のところにあります健康食品の安全情報、被害関連情報、これは 厚生労働省の方ですと、行政区分上、健康食品と医薬品とに分かれていて、ダイエット 用食品に医薬品が入っていたなんていう場合は、食品の部局ではなく、無承認・無許可 医薬品という形になってしまいますので、医薬品の部局に行かないと確認できないとい うことで、2つに分かれてしまっている形になっていますが、こちらの健康・栄養研究 所のホームページであれば、一つのところで統合して出ておりますので、皆様方からす ると非常に見やすいところではないかと思っております。  水色のところで話題の食品成分の科学情報ということで、各種文献情報ですとか、健 康の利用に関する基礎知識のところにもあるんですが、一部解釈ですとかそういったこ とも行っていただいているものから成るものです。  一番皆さんが御利用いただいているのは、こちらの方かと思いますが、ピンク色のと ころです。健康食品の素材情報データベースということです。基本情報としまして、2 つの階層に分かれていまして、一度クリックしますと出てくるのは、基本情報のところ だけなんですが、名称、概要、成分の特性、品質、安全性・有効性レベルの総合情報と いうもので簡単に書かせていただいています。  2つ目で詳細情報ということで、これは専門家向けということで、皆様方のように、 ある程度健康食品は何ぞやということを御理解いただいた上での方が、見ていただくよ うなものになってくるかと思います。上記(1)の情報に加えまして、重要成分の分析法、 動物・試験管内での実験による有効性・安全性レベルの評価情報、参考文献を加えた内 容ということになっております。  現在、評価を加えたものは非常に少なくなっているのですが、どういった文献が発表 されていますよというのが、ここに網羅されていますですから、皆様方の方でこのホー ムページを見ていただいて、この健康食品素材にこういった情報があるということを把 握していただいて、各実際の消費者の方には、こういった健康食品の摂取した場合には、 こういった健康被害が発生する可能性がありますということをお伝えいただければと思 っております。  非常に雑多でばらばらと右へ行き、左へ行き、非常にわかりづらいお話になってしま ったかと思いますが、健康食品の安全性確保についてということでお話をさせていただ きました。  以上で私のお話を終わらせていただきたいと思います。何か御質問等ございましたら、 後ほどのパネルディスカッションの際で結構でございますので、いただけるか。もしく はアンケート用紙が入っておりますので、そちらの方に御記入いただければと思います。  本日はどうも御静聴ありがとうございました。 ○司会 ありがとうございました。続きまして、消費者庁食品表示課衛生調査官の芳賀 より、「健康食品の制度と現状について」御説明いたします。 ○芳賀衛生調査官 本日はこのような機会にたくさんお集まりいただき、ありがとうご ざいます。消費者庁食品表示課で衛生調査官をしております芳賀と申します。よろしく お願いいたします。  本日ですが健康食品の制度の中でも、消費者庁が所管しておりますのは、食品の表示 の制度になります。その中で私が担当している業務が、健康増進法に基づく食品表示の 制度ということで、いわゆる機能性表示に関するところ、それから栄養表示に関すると ころ、虚偽誇大広告の取締りということで、制度設計、制度の運用、それから取締りと いう3つを担当させていただいております。  消費者庁の組織ですが、昨年9月1日に設置されまして、定員が217名ということで、 非常に小さな役所でございますが、食品表示に関しては、こちらの食品表示課というと ころで担当しております。  消費者庁設置の1つの目的、大きな柱にもなっていたところですけれども、食品表示 制度の一元化ということが挙がっておりまして、食品表示課はまさにこの食品表示制度 の一元化に係る仕事をしております。具体的には食品衛生法に規定されている食品表示、 JAS法による食品表示、それから本日お話しさせていただきます健康増進法に基づく 食品の表示ということです。  これは食品表示の実際の表示例で見ますと、義務表示となっている一括表示欄に、何 をどのように書く必要があるかという規制に関しては、食品衛生法及びJAS法により 規制されております。  本日私がお話しさせていただく健康増進法による表示というのは、例えば栄養表示に 関しては、表示をしようとする場合には、ルールを守ってくださいというような、任意 制度になっております。これ以外に本日健康食品の表示に係る機能性の表示に関しては、 国の定めに合致したものについては、機能性の表示ができるということになっています。  食品表示の一元化に向けて、消費者庁では、平成22年3月31日に閣議決定がされま した消費者基本計画に基づき、具体的施策を展開しておりまして、この資料はちょうど 設置された平成22年4月22日のものですので、若干この辺が現在変わっておりますけ れども、大体消費者基本計画で閣議決定された内容を、こちらを見ていただければわか ると思います。  今日お話しさせていただきます、先ほど松井専門官からもお話を出していただいた、 健康食品の表示に関する検討、その中でいろいろな制度の見直しを行っていること、そ れから、後半少し今日お話しさせていただきます栄養表示の制度等、すべて食品表示の 一元的な法体系のあり方の検討というところに、やがて集約されるものとなっておりま す。  現在の段階としては、ここに集約される食品表示の制度に関して、個々に課題がある ものに関しては、よりよき制度設計、それから制度の運用を目指して順次検討を進めて いるという段階にございます。  その中で、先ほど松井専門官からお話しいただきましたが、特に特保等に関しまして は、昨年の11月来、制度に関していろいろな課題の御指摘をいただいたところで、早 急に対応が必要ということで、11月から本年の8月27日に論点整理をまとめるまで、 計12回健康食品の表示に関する検討会を進めてまいりました。  検討会で行ってきているのは、論点を整理するというのがメインの内容でして、この 論点整理に基づき、今後、制度設計、制度の運用に関しての課題解決、それから今後の 方針を決めていくという流れになっております。  この概要のスライドは、消費者庁のホームページに論点整理の詳しい報告書版と併せ て掲載されていますので、必要に応じてダウンロードしていただければと思うんですけ れども、検討された項目の主なものは、まず健康食品等の表示の現状の把握、課題の整 理、これにつきましては国際的な動向も十分踏まえての課題の整理を行いました。  実際の現在運用されている制度として、特定保健用食品と健康増進法に基づく特別用 途食品の表示制度のあり方について、それから、実際の取締りの話になりますけれども、 表示の適正化を図るための表示基準や執行のあり方についてということを主な検討項目 として、全12回議論をいただきました。  その結果、今後の取組みとして、まず消費者庁が早急に対応すべき方策というのが、 まず特保の表示許可制度に関すること。それから健康食品の表示広告規制に関すること ということで、2つの論点で整理されています。こちらで現在、消費者庁担当レベルで、 どんどん作業を進めている段階なんですけれども、ここに関するものは、法律改正を伴 わない、例えばこちらの特保の表示許可制度の内容であれば、通知改正レベルです。現 在までの運用の中でより今回論点整理で御指摘いただいた課題を解決すべく、どのよう な取扱いをしていくべきか。  それから健康食品等に関する表示等の取締りに関しては、より効果的な執行を目指す ためには、どのような方策を講じたらいいのかということで、論点が整理されておりま す。これに関しては、取組みの優先順位付けを行いながら、できるところから順次進め ているところです。  ですので、今後いろいろな動きが出てくると思います。  もう一つ、法律改正等を伴うような制度設計のレベルのものに関しては、更に検討が 必要な制度的課題として、消費者委員会さんにおいて、更に議論をお願いしているとい うことで、こちらの論点整理の報告書を公表させていただきました8月27日に、消費 者委員会さんの方にも消費者庁の方から論点整理の内容について、報告させていただい ているところです。  内容によっては、消費者庁が業務レベルで行う取組み、消費者委員会で議論いただく 取組みの中には、かぶる部分もあるんですけれども、こういったことを両者で検討を進 めながら、よりよい制度の拡充、運用ということを目指している状況にあります。  こうした取組みの中で、制度をより拡充することと取締りの強化というのは表裏一体 ですので、これら2つを常にバランスをとりながら進めていく。更にこういう制度設計 の根拠となる機能性の表示に関しては特にサイエンス論理に基づく、きちんとした根拠 に基づく制度設計。国際的な整合性にも配慮しつつ、最終的には消費者の皆様にとって 有益な制度、それから制度の運用となるよう目指していくところでございます。  この後は、まずお話の前半は、今般の健康食品の表示に関する論点整理の報告書で整 理させていただいている流れに沿って、現在、特保制度を初め、いわゆる健康食品の表 示に係る制度の課題、論点整理で御指摘いただいている今後の検討、改善の方向性につ いて、御説明させていただきます。  健康食品の定義に関しては、先ほど松井専門官からいろいろお話しいただいたところ なので簡単にお話ししますが、特に制度化されているものというのが、こちらにお示し したとおり、特別用途食品とそれから栄養機能食品です。特別用途食品というのは、実 は特保というのも、健康増進法上は、特別用途食品第26条に基づいてそこに入るんで すけれども、もう一つ食品衛生法でも保健機能食品制度というのを設けていまして、特 保と栄養機能食品は、食品衛生法上は保健機能食品ということで、二重の規制の内容に なっています。  これらの制度に当てはまるもの以外は、保健の機能や栄養成分の機能の表示が、制度 上できないということになっております。これは食品と整理されているものにおいてと いうことになります。  食薬区分に関しましては、食品衛生法で食品の定義が、薬事法で医薬品の定義が、更 に46通知と呼ばれている通知の中で医薬品の範囲に関してということで、基準が記載 されております。  機能性の表示が認められている、例えば特別用途食品というのは、この通知の中で、 ちょっと見づらくて済みません。一番下になります。ただし、ということで1がいわゆ る明らか食品を指しています。2として健康増進法第26条の規定に基づき許可を受け た表示内容を表示する特別用途食品ということで、原則としてなんですけれども、通常 人が医薬品としての目的を有するものであると認識しないものと判断して差し支えない。 ですので、必ず対象にはならないと言っているわけではないんですけれども、この中で 消費者庁に健康増進法の制度が移管されて、以前、厚労省に制度があったときと何が変 わったかということの一つに、特別用途食品の表示に関しては薬事法の抵触のおそれが ないかどうかというのを、事前に厚生労働省に協議するというふうに、法令上なってお ります。例えば消費者庁が特保の表示許可を最終的に決めるときには、事前に必ず薬事 法の担当部局、厚生労働省の方に事前協議をして、問題ないというお返事をいただいて、 最終的な表示許可を決めているという手順になっています。  こういった機能性食品の検討、それから制度化の歴史というのは、昭和50年代、60 年代の初めに、文科省の研究が単緒となっているとされていますけれども、この時代、 世界的に食品の機能性で特に3次機能に関していうのは、どうも検討を始めた段階とし ては日本が早かったようですけれども、その後、機能性食品に関していろいろ制度化が なされ、特保ができ、栄養表示制度が施行され、更に特保の拡充や食品安全委員会の発 足、厚生労働省での制度の検討を経て、消費者庁に制度が移管され、今般、検討がまた なされているという状況にあります。  この中でひとつこれまでの歴史で大きなターニングポイントが、この平成13年のと ころかと思うんですけれども、規制緩和等の流れもあり、錠剤・カプセル等の形状が食 品として認められたという制度のターニングポイントというのが、平成13年というこ とになっています。  健康食品の市場規模というのは、いろいろ新聞を見させていただいても、景気が低迷 する中で伸びているというデータ、これ以外のデータでもそういうデータが多いようで すけれども、販売形態に関しては、特に通販やインターネット販売等が大きな割合を占 めていて伸びている。健康食品に関する相談も、消費生活センター等には寄せられてい るということで、こういった中、制度設計されて運用されている一方で、取締りの対象 となるような表示のいわゆる健康食品も非常に多くて、取り締っても取り締っても出て くる状態です。そうした中で虚偽誇大広告の表示の禁止というのは、健康増進法の32 条の2に基づき行われているんですが、それ以外に機能性の表示等に関しては、食品衛 生法においても規制しており、機能性表示に関してはっきり書かれています。。  今回検討会でも、大分話題になっていたんですが、食品衛生法においては、特定保健 用食品及び栄養機能食品以外の食品には、栄養成分の機能及び特定の保健の目的が期待 できる旨の表示をしてはならないということで、非常にはっきり書かれているんですが、 これらを運用する際の下につく細かい規定ですとか、取組みというのが、これまでそう 充実してはいなかったということを検討会でも御指摘を受けておりまして、今後ひとつ 課題になってくるかと思います。  消費者庁には景品表示法を担当している表示対策課というのもございまして、現在健 康増進法第32条の2虚偽誇大広告の禁止に関する取締まり案件をいろいろ検討すると きには、消費者庁が動くような事案に関しては、景品表示法の担当と情報交換をしなが ら運用することがあります。  更に厚生労働省が所管しているような薬事法による取締りということで、実際は対象 事案に対して、どの法律で表示違反を問うのかということに関して、いろんな法律の運 用の可能性を連携をとりながら進め、これに関しては、現状そう十分ではないという御 意見をたくさんいただいておりまして、効果的な執行を更に進めるようにということで、 検討会でも、大分時間を割いて議論がなされたところです。  ここから先は、論点整理にまとめさせていただきました内容に、制度の改正ポイント、 それから、どういったことが課題として整理されていたのかということの流れに従って、 お話しさせていただきます。  まず、前半は特保の制度に関してなんですけれども、表示許可手続きの透明化に関し て、より進めるようにということが求められています。  特保は、現在この4つの表示許可区分があるんですけれども、一番上のシンプル特保 がいわゆるフルコース特保です。一番、表示許可に必要な書類や手続きが、制度のすべ てが関わるようなもの。それ以外に規格基準ですとか疾病リスク低減、条件付きといっ た区分もあります。これらの区分に関しては、平成17年2月より、今後の制度のあり 方に関する検討会の提言を踏まえて、新たな特保制度ということで、後から追加されて いる区分になっています。  規格基準に関しては、これまでの個別の特保の許可実績を踏まえて規格基準を設ける。 疾病リスク低減に関しては、世界的に見ても、関与成分の疾病リスク低減効果が、医学 的、栄養学的にも確立されているもの。その中で国として許可基準を設けているのは、 カルシウムと骨粗しょう症等に関して。それから葉酸と神経管閉鎖障害などに関してと いう、2つのカテゴリーになっています。  これらに関して検討会の中では、審査に関して特保としての表示許可を受ける際に申 請資料を出していただくんですけれども、その中で有効性、安全性に関して、一定の要 件を満たす必要があります。その要件を満たすための、医学・栄養学に基づく根拠資料 の提出に関して、例えば試験デザインをより明確にすることだとか、現行通知で運用さ れている内容をよりクリアに、しかも基準等についてもっとはっきり、しかも質を高め てという御指摘をいただいていますので、これに関しては通知改正のレベルになるかと 思うんですけれども、より審査の透明化、それから基準の具体化というのを図る方向で、 現在、報告を受けて検討が始められているところです。  消費者庁に移管された後の特保の表示許可の手続きの流れというのは、こちらの図に 示すとおりになっているんですけれども、これまで薬事食品衛生審議会に諮問していた 部分が、消費者委員会の新開発食品評価調査会、それから部会の方に諮問しておりまし て、安全性に関しては従前のとおり、食品安全委員会に諮問しています。  先ほどお話しした、厚生労働省の医薬食品局に医薬品の表示に抵触しないかの確認と いう作業が、法令事項として入っております。  最後に、許可試験を行い、消費者庁長官の許可、これは長官に権限が委任されていて、 基本的に法令上は内閣総理大臣。それで長官に権限が委任ということになっております ので、消費者庁許可として、特保の表示許可を出させていただいています。  これらの審査のプロセスにおいて、より審査の透明性を確保するようにということが、 検討会では求められておりまして、現在、消費者庁が特保の申請を受けてから許可する までの流れの中で公表している資料というのが、それぞれの段階であるんですけれども、 この公表資料の内容を更に整理しつつ、いろんな機関に諮問を聞く段階がありますので、 そこでの資料の効率化ですとか、表示許可に関するプロセスが、よりわかりやすいよう な情報公開の方法等、そういったことも検討すべきという御指摘を受けておりますので、 現在の公表事項、公表の方法に関しても検討を進めていく状態にあります。  次に、許可を受けた後の話なんですけれども、今回の検討会の一つのきっかけにもな った特保品で生じた事案の課題でもあったんですけれど、許可を受けた後、現在の制度 設計ですと、許可を出した後、例えば更新制にもなっていませんし、許可を出したらそ こまでなんです。あとは事業者さんにお任せしているんですけれども、もともと許可書 の中に、実は特保の許可を出しますという許可書の下に、なお書きなんですけれど、 「なお、当該食品の保健の効果または安全性につき新たな知見を入手した際には、遅滞 なく消費者庁食品表示課まで報告すること」。これが、厚生労働省のときは、厚生労働 省云々、新開発食品対策室までとなって、実際この文言がずっと書かれていたんですけ れども、私の知る限り、こういったことをきちんと報告してきた事案というのはほとん どなく、有効性に関する論文が一本増えましたというプラスの話は1つありました。安 全性に関しての資料というのは、企業さんが自主的にきちんと報告してきたというのが、 事実上ほとんどない状況。これに関しては検討会でも、御報告させていただき、許可後 の科学的知見の報告について、論点整理の方でも整理されています。  現在はどのような形で、どのようなスパンでそういった事案が生じたときに報告をし てもらうのかというのを、検討していくことになろうかと思います。  これらに関しては、特保の表示許可に関しての表示を許可する際の法律の条文、許可 の取消しに関しての要件、それから府令や通知の中には、申請書に書くべき内容等細か く定められているんですが、こういった中の隙間でうまく運用できないような事案に対 して、法律改正も含めて検討する必要があるのかという部分に関しては、消費者委員会 の方で、今後御議論をいただくということになっています。  それから、特保はもともと表示の制度ですので、どのように表示するかというのが肝 になるんですけれども、それに関しても論点が整理されています。特保と表示許可を受 けた場合には、許可を受けた表示のほかに栄養成分表示、それから1日当たりの摂取目 安量、摂取を進める上での注意事項等、それからバランスのとれた食生活の普及啓発を 図る文言などということで、細かく表示すべき事項が定められているんですけれども、 こういったことの表示が、当然許可文言を超えた表示をしてはいけませんし、許可時に はこういった表示をパッケージを含めて見て、表示許可の業務を行っているんですけれ ど、いろんな保健の用途の表示許可件数が増えてきていますが、ひとつ検討会の中で話 題になっていて、報告書にも書いてあるんですけれども、同じ例えばお茶のようなもの でも、関与成分と明らかになった科学的根拠というのは、全部違うんです。特保は個々 の食品に関しての有効性と安全性を審査するものですので、同じお茶であってもどの関 与成分に対して何の有効性を試験した結果、明らかとなった科学研的根拠は何なのか。 その結果、表示許可を受けた表示内容はどういった文言なのかというのは、似たような 機能性を持つ成分で、似たようなお茶でも一品一品全部違います。  ですのでA社のお茶はここまで書けるけれども、B社のお茶はここまで書けないとい う感じで、例えば体脂肪に関してとかコレステロールに関しての許可表示ででも、一つ 一つ明らかとなった科学的根拠の違いによって許可表示の内容が変わってきます。例え ばいろいろ消費者の方から御相談や御質問を受けたときは、アドバイザリーの方々につ いては、そもそもどういった成分に対して、どういう表示許可を受けているのかという のを見ていただいて、同じお茶でもいろいろ違うんだというところを御説明いただけれ ばと思います。  それが1日摂取目安量にも反映しています。どういった確認をしたかによって、例え ば1日1本というふうなことなのか。毎食食事のときにという摂取の方法になっている のか、そういったこともすべて違いますので、関与成分、明らかになった科学的根拠、 その結果、許可を受けた表示内容と1日摂取目安量というのは、すべて組合せが違う。 ここで違うというのが、特保の特徴になります。  一方、特保が許可を与えているのは、容器包装及び添付文書なんです。ところが、最 近行政指導もさせていただいていますが、広告でその特保品を売るときに表示の許可を 超えた広告をしている場合は、虚偽誇大広告等の取締りの対象になりますので、特保品 であっても行政指導、悪質な場合は勧告等の対象になり得ます。ですので、表示許可を 越える広告をしている場合は違反となります。これに関しての課題も結構検討会で指摘 されておりますので、今後、特保の広告ガイドライン等を作成していきますというふう に整理されていますので、こういった作業も今後、消費者庁で進めていく予定です。  もう一つ、そもそも虚偽誇大広告、32条の2のガイドラインというのは以前出てい るんですけれども、この運用に関してもっと具体的にわかりやすいものをという声が非 常に多うございますので、32条の2のいわゆる虚偽誇大広告の取締りに関するガイド ラインに関しても、消費者庁で今後作成する予定となっています。ですので、ガイドラ インは最低でも2つは、広告規制等に関して、今後、発出される予定でございます。  こういった広告規制を効果的に執行するにはどうすべきかというのも、検討会の論点 整理で提案されておりますので、この点に関して少しお話をしたいと思います。  一つは取締り体制の強化ですけれども、現在消費者庁と、それから消費者庁は地方部 局を持ちませんので、厚生労働省時代に権限を委任している地方厚生局との関係をその まま虚偽誇大広告の規制に関しては、消費者庁と地方厚生局という関係で動いています。 更に都道府県等に実際に業務をしてもらっているという状態なんですけれども、この体 制の強化を図るべきということが出ています。  虚偽誇大広告等の取締りの措置の経緯というのは、平成15年以降、いろいろされて きているんですけれど、今般、消費者庁に移管後、検討会での議論を経て新たなガイド ラインをまずつくっていく。もう一つ、そのガイドラインの中で判断基準をより明確に して都道府県、地方厚生局、国とでより効果的な運用執行ができる体制をつくっていく べきというふうに、提案が検討会でなされております。今それに向って動き始めている ところです。  インターネット広告に関しては、広域にわたるということで、主に消費者庁が定期的 にネット監視業務を行っているんですけれど、今後、今まで行っていた回数や件数より も多く消費者庁でやる方向で予算の要求もしておりますし、既に運用を始めております ので、これまで以上に定期的にかつ広範囲にインターネット広告の監視指導は行ってい く予定です。  これは先般、消費者庁が行ったネット監視での指導事例の例を挙げております。検討 会でも報告しておりますので、参考に見ていただければと思います。  こういった情報をできる範囲において、積極的に外に出していこうというのが、消費 者庁としての姿勢でございますので、こういったこともガイドラインに反映させながら、 広告監視指導のガイドラインを、今後作成していくということになります。  ネット監視に関しては、そのページで直接的に違法となるような表現はしていなくて も、それと特定の製品が結び付いていたり、リンクが張られていて、興味を持った方が クリックすると買えるように、それから更に突っ込んだ成分の説明になっていたり、こ ういった場合は、健康増進法上の行政指導の対象になり得ますので、こういったことを 消費者庁ではネット監視業務でしています。リンクを張る部分についてもです。  よく表示の妥当性を主張するときに言われるのが、特許を取っていますからというの がよく出るんですけれども、特許取得と科学的根拠というのはすべてイコールではあり ませんので、これは既に出されている通知でも述べておりますので、特許とは何ぞや、 それから特許がすべて成分の効果についての科学的なレベルも含めて保証するものでは ないですので、特許を取っているから違反として指導されないだろうということはまず ありません。十分な科学的根拠というのは、サイエンス論理に基づく別の視点で総合的 に判断していますので、御注意いただければと思います。  虚偽誇大広告に関しての今後の方向性は、特に消費者庁では景品表示法と密に連携を とりながら取締りを行っていますので、法律の建付け上は景品表示法の方が、排除命令 等の可能な範囲が広いようです。  その中で、健康増進法に特化した部分、それから景品表示法で判断すべき部分という のをうまくすみ分けしながら、疑義案件の取締りに関しての取組みをしていく。消費者 庁になり、よりその体制が強まったというふうに御理解いただければよろしいかと思い ます。  一方、検討会では薬事法の取締りとも現在連携しているんですけれども、より強化す るようにという御指摘をいただいておりますので、これに関しても、厚生労働省の薬事 の取締りの担当課と食品表示課との連携を深めながら、今後、効果的な執行を進めてい くという方向にあります。  また、薬事法と健康増進法では、取締りの得意分野といいますか、もともと規制して いる法の建付けや規制の範囲、目的というのが違いますので、それらを十分に勘案しな がら、適切な取締り体制、効果的な執行を進めていくということでございます。  健康食品に関しては、表示に限らず、消費者庁の業務で少し整理をしてみました。被 害者救済や財産被害、健康被害、販売方法に至るまで、消費者庁のそれぞれの課で担当 している業務が幅広く健康食品には関わっておりますので、何かありましたら、消費者 庁の中ではこのように動いているということです。  私が本日御説明させていただいているのは、この表示の中でも特に健康増進法という ことですけれども、厚生労働省と連携をとりながら、健康被害等に関しての対応等も進 められています。  こういった中で、今後の対応方策の提案の中に効果的な執行を確保するために関係部 局、団体との連携をより促進するようにということが求められております。その中で、 薬事法との連携の強化は、先ほどのとおりですが、これ以外に事業者さん方の組織する 団体や広告を掲載するメディアの組織するようなところ、そういった掲載する側の機関 等も含めた、自主的な取組みへの助言支援というのを積極的に行うということで、現在 もいろいろ依頼があれば、そういったところの研修会には出向かせていただいているん ですけれども、より業界においては中立性の高いガイドラインの策定を求める。それか ら、広告掲載での審査の参考にできるようなモデル条項等を策定してもらうとか、メデ ィアの自主的な規制、こういったことの取組みを国としては、積極的に支援させていた だく必要があると整理されていますし、今後ひとつ積極的に取り組むことになるかと思 います。国だけが積極的に行ってもなかなか継続性や深さ、広さともに難しい点がある ので、事業者等への働きかけも積極的に行うという方向性です。  取締りの強化だけでは片手落ちですので、併せて制度の拡充というのも検討すべきと いうことで、特にこの報告書の中では、一定の機能性表示を認める仕組みの研究を進め るべきということで、こちらで整理された内容は、ここに記載しましたように、新たな 成分に係る保健の機能の表示を認める可能性があるのかどうかについて、引き続き研究 を進めるべきということで、ポイントは特定の食品、何とか食品はいいから許可される とか、リストに上るとかそういう話ではなくて、例えば既に海外で十分な科学的根拠を 持って制度化されているようなものに関して、日本で制度化されていないようなものと いうのは、制度設計も含めて、制度に組み込む必要性があるのかとか、十分な可能性が あるのかとか、そういう成分レベルでの話になりますので、何か特定の食品等にフォー カスして研究を進めるということではございません。これは来年度の概算予算要求とい うことで、消費者庁の方から予算要求を出している事業です。  ここでの検討のかぎは、十分な科学的知見に基づきということになりますので、WH O等も含めて世界的により確実な根拠、コンビンシングといわれている根拠レベルのも のに当たる、例えば成分というのはどういったものがあるのかということも含めて、研 究をされていく事業という予定にしております。  国際レベルで確実な根拠レベルというのは、例えば一つの論文で効果があったからそ れは効果があるということではなくて、複数の質の高い研究の結果、得られた見解とい うことになりますので、科学的根拠レベルとしての求められる高さは、このようなこと も考慮される必要があると思われます。 こういった具体的な作業以外に、先ほどお話 ししている法令改正等に踏み込むような課題に関しては、消費者委員会での更なる議論 ということで、具体的には報告書の中で挙げているのは、特保の表示許可制度で今回い ろいろ問題があったときに、制度設計上の課題が指摘されている、例えば再許可の手続 き、表示許可の取消しに関しての細かい取扱いも含めてです。表示許可の一時停止とい うのが必要なのか。それから、そもそも表示許可というのは、更新制にする必要がある のかなど、表示許可制度に伴う検証の可能性がある項目に関して、議論を求めています。  取締り等に関してもなんですけれども、効果的な規制や消費者の皆様への適切な情報 提供の仕組みに関しても、幅広く議論を求めているところです。  取消しに関しては、そもそも検討会を始めるきっかけとなった事案でも、非常に課題 ということで指摘を受けていますので、こういったことに関して、更に消費者委員会で 議論をいただくということです。  それから取締りの件もです。  あとは、新たな制度設計の可能性というときに検討会で話題になっていたのは、例え ば規格基準型を広げられないでしょうかという話と、栄養機能食品の今、認められてい る成分以外に項目を増やせませんかという話と、両方出ていたんですけれども、それぞ れの制度の設計の背景というのがございますので、それになじむものであればというこ とになろうかと思います。例えば特保の規格基準型というのは、許可実績ベースですの で、許可実績が積み重ねられていないのに、急に規格基準にはならないんです。その中 で特に例えば薬理作用を示すようなもの、いわゆる薬と作用機序が重ならないようなも のは、検討の余地があるのではないかという御指摘をいただいていますので、すべての ものを規格基準の可能性ということにはならないかもしれません。  それから栄養機能食品に関しては、先ほど松井専門官のお話にもありましたが、不足 を補うものですので、例えば日本人の摂取量がそもそも明らかになっていないのでよく わからないものに対して、機能性が認められるから、栄養機能食品の成分として追加す べきという論理が、この制度になじむのかという話はありますので、いろんな可能性を 探りながら、十分な科学的根拠を持って、なお日本のこれまでの制度設計、それから周 辺の制度の体系になじむもので新たな制度の可能性があれば、それは前向きに検証して いくということです。  こういったいろいろ表示規制がある中で、消費者の方に十分な情報が伝わりつつ、情 報を受け取る消費者の方もきちんと情報を読み解く目、判断する力が備わってという、 それぞれの立場でのレベルアップというのが必要になりますので、先ほど来お話が出て いるアドバイザリースタッフ等制度、それから消費者の方とそれから食品をつなぐ間に 入る専門スタッフの方々のお仕事というのは、ますます重要になるということで、検討 会でも論点整理の中で触れられています。  こうした主に特保と機能性食品の表示の制度というのは、消費者庁が所管している健 康増進法の食品表示の制度の中で、ここの部分なんです。これは食品に関しての、いわ ゆる機能性になるんですけれども、そもそもその食品の基本的な栄養素の含有量による、 その食品の特性というのがございますので、そういったことが一人一人の健康づくりの 食生活において基本となる情報ということで、対象を限らず利用していただく表示制度 ということで、栄養表示基準の制度がございます。  これらに関しては、コーデックス委員会等国際的な動向を含め、日本もそこに積極的 に意見を出しながら、WHOが中心となって行っている世界の健康づくりの戦略の流れ の中で、日本人の健康課題に合わせた、それから国際的にもハーモナイゼーションでき る栄養表示制度の設計、運用というのが求められていますので、そういった業務も非常 に機能性食品だけでなく、基礎的な制度として大事です。  栄養表示基準制度は、現在、任意の制度で、販売に供する食品に栄養成分や熱量に関 する表示をしようとするときは、定められている基準に従ってくださいということにな っているので、栄養表示をしたいと思わなければ運用していただく必要はないんですけ れども、実際、今たくさんの食品に栄養表示がされており、少しでもその食品の特徴を わかりやすく、しかもストレートに消費者の方に伝えたいという、いろんなバリエーシ ョンの表示がありまして、担当官としては、正直、本当に事業者さんが考えるいろんな アイディアに対しての判断というのが、地方自治体の方々も含めて、非常に日々頭をひ ねりつつ頑張って対応していただいていることと思うんですけれども、こういったこと に関しては、今、実は世界的にコーデックス委員会等で非常に各国の関心が高くて、栄 養表示は今後どうあるべきかというのは、国際的な大きなテーマになっています。  当然日本も、平成8年に制度が設計されて以来、大分経っていますので、こういう強 調表示の基準等も含めて、いろいろ今後の方向性を模索する時期に来ているかと思いま す。  栄養表示基準制度の検討に関しては、今日のお話の冒頭にお示しした表示の一元化法 に向けた検討の中でも、ひとつ栄養表示制度に関する検討というのがはっきり出ており ますので、今後、よりよきを目指し、いろいろ動きが出てくるかもしれません。  現制度の運用において、例えば消費者庁に移管されてからいろんな運用をしていただ いている中で、消費者の方の誤認が多かった事例としてカロリーハーフの表示がありま した。例えばカロリーを控えるときに、甘さのもとになっているものを、ショ糖のよう なものから、別の余りエネルギーにならないようなものに変えると、結局重さも軽くな ったりするんですね。そうすると、比較するときにグラム比較をしてカロリーが半分に なったとするのか、例えばスティックタイプのコーヒーとかココアのようなものは、 200mlにつくった一杯分当たりでカロリーが半分になっているのかとか、そういった比 較表示の対象が何なのかとか、何がどう半分になっているのかということが、必ずしも 同じような表示がなされていなくて、消費者の方の誤認を受けやすい。それから都道府 県等からの疑義の照会も多かったので、現制度上において、消費者庁として解釈通知を できるだけわかりやすく出させていただいたという経緯がございます。  こういった通知に関しては、今後も現制度の運用上課題が多ければ、順次必要に応じ て作成して出していって、できるだけ表示というのを消費者の方に誤認を与えず、冷静 にきちんと判断ができるような表示になるように進めていきたいと思っています。  栄養機能食品に関しては、これまでも言われてきた課題なんですけれども、例えばビ タミンCの栄養機能食品の該当しかないのに、その近くにほかのいろんな機能性の成分 を書いて、そこに表示されている成分すべてが栄養機能食品であるかの誤認を受けるよ うな事例も相変わらず多いですので、こういったことに関しても、いろいろ検討を進め ている段階です。  それから、御質問が多いので、ひとつ最後にスライドを入れているんですけれども、 栄養表示等の表示基準値、いわゆるNRVsというのを定めているんですけれども、こ れに関して日本人の食事摂取基準の2005年版をもとに、現在は通知を発出したものを 運用してもらっているんですけれども、2010年版に日本人の食事摂取基準が変わって、 いつ変わるんですかというお問い合わせが多いんですけれども、こういったそもそもN RVsとは何ぞやという考えに立ったときに、2010年版での変更を直ちに表示基準値 に反映する必要があるのかどうかというのを、学術的な検証を目下行っております。  事業者の方々は、包材を変えるのが大変なのでいつ変わるんだというのを非常に御心 配のようなんですけれども、通常こういったものを変えるときは、経過措置期間という のをとりますので、いろいろ話が出てから対応していただく外ないと思うんですけれど も、現在検証しております。直ちに変える必要があるほど、日本人の食事摂取基準の 2010年版での変更が影響があるのかということです。  これに関しては、コーデックスの2つの部会でも検討されているところですので、そ ういった動向も見ながら、制度の設計を今検討しているところです。  最後になりますけれども、消費者庁は、名前のとおり、消費者のための役所でござい まして、健康や栄養に関する表示に関しても、消費者の方を主役にどうあるべきかとい うのをいろんな角度から検証して制度の設計、運用というのより強く行っていく方向性 にありますので、いろんな方々からの御意見をいただきつつ、それぞれの立場で表示を 育てていけるような環境をつくりつつ、進めてまいりたいと思いますので、今後とも御 支援、御協力をよろしくお願いいたします。 ○司会 ありがとうございました。それではここで休憩に入りたいんですけれども、少 し時間が過ぎていますので、休憩はこの後50分までということで、全体的なスケジュ ールを5分遅らせていただきます。50分になりましたら再開しますので、よろしくお 願いいたします。 (休憩) ○司会 それでは、時間になりましたので後半を再開したいと思います。  「健康食品の利用について」、独立行政法人国立健康・栄養研究所情報センター長の 梅垣様より御講演をいただきます。 ○梅垣情報センター長 ただいま紹介いただきました栄養研究所の梅垣と申します。今 日は「健康食品の利用について」ということで、実際に健康食品を利用するときにどう いった点に注意すべきかといったことを中心にお話ししたいと思います。  お話しする項目ですけれども、「不適切な製品の利用」。健康食品として流通してい るものの中には、無承認・無許可医薬品というようなものもありますし、不純物を含む ものもあります。これはもう健康食品と言わないという人もいるぐらいですから、ここ のところを注意しなければいけない。そういうお話をします。  「病気の治療や治癒を目的にした利用」ということで、健康食品はあくまでも食品で 病気の治療・治癒ができるという科学的なデータは、実は調べてみてもないと、今のと ころはっきりしたデータはないということ。そのことをお話しします。  しっかりした製品であっても病気の人が利用するとか、アレルギー体質の人が利用す ると悪い影響を受ける場合がある、そういうお話をしたいと思います。  類似しているのですが、「医薬品との併用」ということで、健康食品と医薬品を併用 すると、医薬品の効果が効きやすくなったり、効きにくくなったりするという場合があ る、安易に医薬品と併用すると問題だというお話をしたいと思います。  「保健機能食品の利用の考え方」ということで、先ほどお話がありました。保健機能 食品はあくまでも食品です。医薬品ではない。ではどうやって使うかという、我々の考 え方を御紹介したいと思います。  「情報の収集と解釈」。ちまたにはいろんな情報があります。その情報が拡大解釈さ れたりする場合があります。その点をお話しします。  最後に「今後の課題」、健康食品を適切に利用するには、どういう点に注意すればい いかという、今後の課題について御紹介したいと思います。  まず、「不適切な製品の利用」ということで、医薬品成分や有害物質の混入というこ とをお話しします。健康被害を受けやすい健康食品はどんなものかというと、錠剤・カ プセル、特定の成分が濃縮されたもの。は、効果も強くあらわれるかもしれませんけれ ども、言いかえると有害の影響も出やすいという特徴があります。  特定成分を容易に摂取できるというサプリメント。これは特定成分を容易に摂取でき るというメリットは確かにあります。でも注意しなければ過剰摂取してしまうというデ メリットもあるわけです。  特に違法な製品でそういうことが起こりやすく、私どもの研究所が運営しています健 康食品の健康食品の安全性・有効性情報で、違法製品の摘発事例を集めています。その 集めているものをデータベースにしていますから、ある時点で全部抜き出して解析する ことができます。その解析を行いましたところ、摘発された製品の入手経路というのは、 インターネット、渡航先で買ったというものが非常に多いという特徴があります。摘発 された製品の形状はというと、カプセル、錠剤が多い。買う人も売る人もそうなんです けれど、医薬品的な効果に注目しているという実態が、この結果からわかるのではない かと思います。  違法に添加された医薬品成分、違法な製品に添加された医薬品成分にどんなものがあ るかというと、肥満抑制関係が非常に多いです。シブトラミン、N−ニトロソフェンフ ルラミン、これは中国製のダイエット食品で、数年前に問題になりました。また甲状腺 粉末とかがあります。  それから、強壮・強精関連では、シルデナフィル、タダラフィル、いわゆるバイアグ ラ関係です。この違法な製品が、恐らく半分以上であるという実態があります。  血糖関係では、グリベンクラミド。経口血糖降下剤です。リウマチなどではデキサメ タゾンとかインドメタシンが入っています。健康食品でもし効果が非常に出てきたとい うのは、実は言いかえたら危ない。こういう製品が入っているのではないかというのを 想定してもいいと思います。  では、一番の問題で。健康食品の中で違法な製品というのは、実は海外から結構入っ てくるという特徴があります。これは私どもの研究所が情報として出した一つの例です が、2008年2月6日に、香港衛生署が摘発した情報をこちらに出しました。これは香 港だけかなと思っていたら、実はその後日本で広島県、郡山、大阪府、それから埼玉県 で同じ製品が出てきたんです。短期間で出てきた。というのは食品には今は国境がない ですから、すぐに国内に入ってくるのです。そういうことを考えて、いろんな製品を見 ていかなければいけない。そういう実態になっているということがわかるのではないか と思います。  今までは違法な、本当に悪質な製品です。その他に、悪質というところまでいかない けれども、品質がしっかりしていないもので有害物質が混入していたという事例があり ます。これは故意に何かをつくったり入れたりという場合ではないと思うのです。例え ば最近はないんですが、クロレラ製品の中にフェオフォルバイドというのが入っていて、 光過敏症を起こしたという過去の事例があります。それから、L-トリプトファンで、 微量の不純物が入っていて好酸球増多筋痛症候群といって、アメリカでかなりの方が亡 くなったという事例があります。ゲルマニウム製品の中に、酸化ゲルマニウムが入って いて腎障害を起こしたという事例もあります。コンフリーの中に、有害なアルカロイド、 ピロリリジンアルカロイドというのが入っていて問題を起こしたという事例があります。  最近よく注目されているのがインドのアーユルヴェーダとかいう伝承医学。昔からの 伝統的な医学というふうに伝えて製品を売る場合があるのですが、その製品中に鉛とか ヒ素が多量に含まれているという事例が出てきています。  名前だけで消費者の人は製品を選びますが、中にこういう不純物が入っている場合が あるということです。アガリクスの中のカドミウム、イチョウ葉エキスの中のギンコー ル酸が入っていることもあります。ちゃんとしたメーカーさんは含有量もチェックをし て品質のしっかりしたものを売られていますけれども、何せ健康食品はだれがどこで売 っているかというのがよくわからないものがありますから、中にはこういう有害なもの が入っているものもあるかもしれないということも認識して、健康食品と対応していか なければいけないということが言えるのではないかと思います。  天然・自然というと、非常に一般の方は安心してしまう。安全だと思ってしまう場合 があります。それから合成品というと危ないというふうに思う人がいるんですけれど、 実はそれは調べてみないとわからないのです。実際に天然・自然の中に、植物エキスが 非常に多いんですけれど、この中にアリストロキア酸という、腎障害を起こして、尿路 系のがんを起こすと成分が含まれていることがわかっています。こういうものが入って いる場合があるということですが、実際はこういうものは国内ではほとんど流通してい なません。海外から入ってくる場合があります。厚生労働省とかアメリカのFDAはし きりにこういうものの情報を出しています。  天然・自然という言葉を健康食品が売りにしているんですけれども、実は調べてみた ら非常に危ないものもある。危なくないものもある。一概に天然・自然ということだけ で、商品を選んだりすることは問題だということが言えると思います。  健康食品の一般的な特徴です。例えばこういう製品で、最近人気のグルコサミンと書 いてあると、表示の中に確かにグルコサミンが入っている。けれど、よく見ると成分表 示だけで20種類以上も入っているものもあります。消費者の人は、自分がいいと言わ れているものが入っていると、何か得した気分になって、こうした製品を選ばれるんで すけれど、実は製品の純度とか含有量は非常にあいまいです。例えば植物のエキスとい うのは、先ほどのアリストロキア酸でないですけれど、有害物質が入っているかもしれ ない。これはわからない。それは、先ほど松井専門官が言われたように、安全性の認証 とか検証をしているかどうかというのが重要です。そこのところがよくわからないとい うことがあります。  それから、いいという成分が入っていると書いてあるんですけれど、実ははかってみ るとほとんど検出できない。本当に添加されているかもしれないですけれど、検出でき る量までには至っていないという事例があります。  実はこれは一番問題です。成分の含有量とか品質が明確でなければ、有効と言えない し安全とも言えない。非常にあいまいで判断ができないような状態になります。それか ら医薬品等の相互作用が、最近非常に注目されていますが、本当にその成分が入ってい たら医薬品との相互作用を心配しないといけないですが、微量だったらほとんど作用は ないはずですから、相互作用も心配する必要はない。ただし、含有量が曖昧なのでその 判断はできない。こういう表示の問題が今あるということです。  健康食品、先ほどたくさんいろんなものを入れている場合があると言いました。これ は特異的な事例ですけれど、組合せによって有害な影響が出る可能性があるものです。  先ほど言いましたコンフリーにはピロリジジンアルカロイドという成分が含まれてい ます。このアルカロイドは肝臓の薬物代謝酵素によって代謝されて、N-オキサイドと か共役ジエンピロールになってアルキル化剤としてタンパクとか核酸に反応して有害な 影響を起こすというのがわかっています。このアルカロイドだけだったらいいんですけ れど、これにさらにプラス肝臓の薬物代謝酵素を活性化するような成分を一緒に混ぜて 製品をもし作ったとしたら、当然これは健康被害を起こしやすい製品になってくるわけ です。こういうところは余り考えないで、いいといわれる成分をたくさん入れられる場 合がある。これはやはり注意しないと問題を起こす可能性があるということが言えるの ではないかと思います。  これは先ほど紹介しましたトリプトファンと好酸球増多筋痛症候群。アメリカで 1500人以上が障害を受けて、37人が死亡したというものです。この製品の中に異種化 合物によるものがあった。それが原因だったという見方もあるのですが、実は明確には なっていない。不純物の混入レベルは1%以下と非常に少ない。少ないからなぜこんな のが問題になったのかということです。重要なことは、相対的なパーセントというので はなくて、総量が多かった。摂取量が多くなると、不純物の摂取量も多くなりますから、 それによって有害な影響が出てしまうという可能性があるということです。  もともと、トリプトファン自身は、それぐらい多くとると問題ではないかという考え 方もあります。食品で食べているからこれは安全だという考え方もあるのですが、要は どれだけの量をとっているかです。それはトリプトファン自体もそうですけれども、異 種化合物か不純物をどれくらい総量でとっているか、そこを考えないといけない。言い かえたら、普通の食材でとるのは問題はない。恐らくそんなに過剰に摂取することない のですが、サプリメントとして濃縮物にすると、容易に特定の成分、自分が思っている 成分を摂取できます。しかし同時に一緒に含まれている有害物質も多くの量をとってし まいます。そうすると、それが有害な影響が出るレベルにまで達してしまう。そういう 問題がある。こういうところも考えなければいけないと思います。  製品の品質というのは非常に重要で、有害影響が起こったかどうかというのを判断す るときにも非常に重要なポイントになってきます。例えば有害影響の評価をどうするか というと、摂取を中止すると症状が回復したかとか、もう一度摂取したら同じ症状が起 きてきたかとか、既存のデータにそういうものを摂取すると有害な影響があったかとか、 体質による影響、摂取量と時間、どれくらい摂取してどれくらい発症したかということ。 これで製品としての健康食品と健康被害に因果関係があるかないかを判断するわけです。 医薬品との併用の問題もあります。  一番重要なのは、表示されている成分が確かに含まれているかどうか。これがやはり 一番重要です。入っていなければ恐らく関係ないし、もしかなり入っていたら有害影響 と関係するだろうと判断できる。けれど、例えば20種類ぐらい入っていると、これは 何が影響したかはわからない。非常に判断が難しくなります。ですから、品質がしっか りしたものをつくる。もしくは品質がしっかりしたものを利用するというのが、非常に 重要になってくると思います。  よく原材料の情報と商品の情報を混乱する場合があるのですが、これはそれを示した ものです。原材料の情報として、ビタミン、ミネラルというのは、非常に信頼性が高い のですが、その他の成分というのは、それほどデータはありません。  これらの成分が製品に添加されて、同じような信頼性の順番になるかというと、実は そうではないんです。どうやって製造するかによって製品としての信頼性は違ってきま す。原材料の仕入れ、先ほどのGMPでつくるというのがありましたが、そのような中 間製品、最終製品で評価して製造する。ここで医薬品は、やはりきれいにつくるという ので、製造過程のところが一番信頼性が高い。そして製品としての信頼性は非常に高く なる。  特定保健用食品も、最終製品自体で評価しますから、信頼できる。  また栄養機能食品というのは、成分表示がビタミン、ミネラルですけれども、一緒に いろんな成分が入れられています。本当にそれが問題ないかというと、製品としてみる と若干信頼性が落ちてくる。ビタミン、ミネラルは非常に信頼性が高い。でも、製品と して見たときは非常にわかりにくいといえます。  最後は、いわゆる健康食品というのは、製品としての信頼度はかなり低くなるという ことです。一番のポイントは、成分や製品のチェック方法があるかどうかというのが問 題です。ある成分を入れている、入れていないというのがわかればいいんですけれど、 これがチェックできなければ何とも言えない。医薬品はチェック方法があります。特定 保健用食品もチェック方法があります。栄養機能食品もビタミン、ミネラルについては チェック方法があります。でもいわゆる健康食品の中には、天然物の場合、入っている と言われても分析方法がない。本当に表示されている成分が入っているかどうか証明も できないです。このように非常に難しいことがあります。  ですから、製品の情報と成分の情報は違うということが明らかに言える。注目したい のはやはり最終製品としてどうなんだというのを見ていくこと。そうしなければ健康食 品を勧める場合も利用する場合も、非常に問題が出てくるということが言えると思いま す。  2番目、病気の治療や治癒や目的とした利用。医薬品と誤認・混同した利用というの が非常に問題になるということをお話しします。  健康食品の利用目的ということで、gooリサーチで3万人を対象にして調査したとい うデータを紹介します。ここで病気の治療・治癒目的というのが6.4%、ほとんどの方 は、日常的な健康の保持増進とか美容とかに使われているということです。けれど、病 気の治療・治癒にも使っている。いいかえれば健康食品を医薬品ととらえている。これ は間違っていると思うのです。こういう人が6.4%いるということです。  これは恐らく普通の人を対象にした場合です。つぎは立場が変われば考え方が変わっ てくるということを示した結果を御紹介します。医療機関を受診した人の調査です。健 康食品に対して期待している効果を通院患者さんと入院患者さんで調べています。通院 患者さんでは、健康の維持などもありますけれど、病気の治癒というのが11%、先ほ どの一般の人は6.4%でしたが、11%になる。では、入院患者さんはというと、病気の 治療が38%、かなり上がってくるわけです。要するに、使う人の立場が変われば、一 般的に言われている健康の保持増進に使っているわけではないということが、問題点と して出てくるわけです。  これはがん関係のところで調べられた結果です。国内のがん患者さんを対象にして調 べられた結果だと、約4割以上の人がサプリメントを利用している。サプリメントは恐 らくがんの治療目的に使われているという実態。先ほどの入院患者さんの例と非常によ く似てます。ですから、こういうところも注意して対応していかないと、一般的な人を 対象にした話なのか、それとも患者さんを対象にしたときの話なのか、それぞれの立場 で使う人の考え方が変わっています。それを理解して専門職の人は対応していかないと、 間違ったことになってくるということが言えると思います。  一番重要なのは、健康食品と医薬品を明確に区別していくことだと思います。一般の 人は、今示しましたように、混同しています。ですから専門職もしくはアドバイザリー スタッフの人が、健康食品と医薬品を明確に区別するということが重要だと思います。  なぜ明確に区別する必要があるかというと、2つのポイントがあると思います。  まず、食品で病気の治療・治癒ができるという明確な科学的根拠があるか。それから、 科学的な根拠がもしあったとしても、消費者の方が安全で効果的に利用できる環境が整 備されているか。アドバイザリースタッフの話もありましたけれども、そこのところが 整備されれば、健康食品はそれなりに使えるかもしれません。けれども、少なくとも両 方、今のところはありません。  一番重要なのは、食品で病気の治療・治癒ができるという明確な科学的根拠があるか。 実は探してみると、ほとんどないです。体験談とかそういうものがほとんどです。もし くは特殊な環境で使ったものが多い。そういうところに注意する。やはり健康食品と医 薬品は、明確に専門職自体が区別しないといけない。これで病気が治りますというふう なことを言うと、世の中の人は混乱するのです。  健康食品と医薬品のどこが違うか。このポイントは3つあります。まず、製品の品質 です。医薬品は同じ品質ものが製造流通するようになっています。医薬品はGMP基準 で製品をつくっている。健康食品の場合は、同じ名称でも全く品質の異なるものが、存 在します。後で恐らく長村先生がお話になると思いますけれども、例えばコエンザイム Q10というのは医薬品でも使っています。医薬品の場合は、溶解試験と崩壊試験をや っているんです。でも健康食品の場合は、それをしているものと、していないものがあ る。ちゃんとつくっているメーカーさんもあるけれども、ただ混ぜているだけのメーカ ーさんもある。そうすると製品の中には全くおなかの中で溶けないものもある。そうい う問題点を健康食品はもっているということです。  2番目、科学的根拠の質と量。医薬品は病気の人を対象として安全性、有効性の試験 が実施されています。健康食品はどうかというと、病気の人を対象とした試験は実施し ていない。これは実際にできないです。ですから、ここは最も注意しないといけない。 安全性試験があったとしても、対象者は健常者です。病気の人を対象に安全性試験をし ているということは、まずないと思います。健康な人を対象に試験をしている。これか ら何が言えるかというと、病気の人が利用したら何が起こるかわからない。未知の部分 があるということです。こういうことも健康食品では考えないといけないということで す。  3番目に利用環境。医薬品は医師・薬剤師により安全な利用環境が整備されています。 ちゃんと使えるようになっています。医薬品はよく効きます。効くということは、言い かえたら有害な影響が出るということもあるわけです。ですから、そういう悪い影響が 出ないように、医師・薬剤師によって安全に管理している。利用環境が整えられている ということです。では、健康食品はどうかというと、これはあくまでも食品ですから、 商品の選択や利用は消費者の自由です。友達に聞いたとかインターネットに出ていたか らこういうふうに使ったといって、勘違いをして利用している人がいるということです。 ちなみに、アドバイザリースタッフというものがありますけれども、そういう人がちゃ んと働けるようになれば、恐らくこの部分はきっちりできるということは言えると思い ます。けれども、今のところは、なかなかそこまでは至っていないという問題があるわ けです。  これは先ほど来お話のあった、食品の機能表示の移り変わりです。1991年に特保の 制度ができました。その後、栄養機能食品という制度が入ってきまして、保健機能食品 制度ができ、特保制度の拡充がありましたが、重要なことは、食品と医薬品は昔から明 確に区別されているのです。これが混同されるような制度になるということはまずあり ません。ですから、食品と医薬品は明らかに違うんだということ、これを専門職の人が きちんと理解をしておかないと、消費者の人は非常に混乱すると思います。ここのとこ ろが一番重要だと思っています。  「保健機能食品の表示制度の表示の基本的な考え方」というのが出ています。これを 見ますと、国の政策に合うもの、科学的な情報などがあります。一番重要と思うのは、 この7番目で「医薬品などと誤認しないように、疾病の診断、治療及び予防に関わる表 示をしてはならないこと」です。特定保健用食品、保健機能食品もあくまでも食品です。 食品になぜ疾病の診断治療を予防に係る表示をしてはいけないかというと、根拠はない し、もし根拠があったとしても、一般の人がそういう表示をしてあると、医薬品と乱用 してしまうのです。そして、食品を病気の治療・治癒に使ってしまう。だから、食品と 医薬品は、専門職の人が明確に違うということを言っていくことが必要だと思います。  ちなみにアメリカのDietary Supplement Health and Education Actという法律があ ります。アメリカはサプリメントの先進国だと言われていますけれども、この1994年 にアメリカで出ている制度ですけれども、これにも、「病気を“診断する”、“予防す る”、“治療する”などの表現は許されない」となっています。アメリカのDietary supplementもこう書いてある。要するに、アメリカのDietary supplementは普通の食 品でもないし、医薬品でもない。別のものとしてできているんですが、、やはり医薬品 とは違うんだということを明確にするようになっているわけです。日本の保健機能食品 で求めていることこれは同じです。  3番目は、「病者やアレルギー体質の人の利用は要注意」ということで、お話ししま す。これは健康食品の安全性・有効性情報データベースに情報を入れて、その中の素材 情報データベースから全部抜き出してきて、過去にどういう要因で健康被害が起きた事 例があるかというのを調べたものです。  そうしますと、「体質に関わるもの」というのが37%。それから「長期また過剰摂 取」。これは、根拠もないのに長時間摂取していると、健康被害を受けたという事例で す。「医薬品との相互作用」「病者の利用」というものがあるのです。けれども、一番 「体質に関わるもの」が多いということです。すべての人に効果があるとか、すべての 人に安全なものはない。特定の人によっては有害な影響が出るものもあるということで す。特に食経験があっても、濃縮物として過剰摂取をすると、健康被害を起こしてしま うということがあります。  先ほど言いました、天然・自然を標榜しているものは安心して使われるんですけれど も、そういう天然、自然の素材でアレルギーを起こすという事例があります。ユーカリ、 松葉樹皮抽出物、プロポリス、ローヤルゼリー、サフランとか、こういうのは全部天然 物で、皆さん安心して使われるのですが、すべての人にアレルギーが起こるわけではな いのですが、特定の人にアレルギーを起こしてしまうので、注意しなければいけない。 どういう人かというと、既に何らかのアレルギー症状を経験した人は、やはり特に注意 をした方がいいということです。ですから、アドバイザリースタッフの人が、もしだれ かに何かを勧めたりサプリメントについてアドバイスをする場合は、もしその人がアレ ルギーを持っていたら注意してほしいとか、利用してもいいのだけれども、アレルギー 症状が出てきたら、その時点ですぐにやめてくださいと言わないといけない。原因がわ からないとずっとその製品を摂取します。そうするとアレルギー症状も悪化してしまう ということがあります。こういうところもやはり気をつけないといけないと思います。  これは「サプリメントの利用が病状によって悪影響を及ぼす可能性」という事例です。 ウコンというのが今、非常に人気があります。論文を見ると胆道閉鎖症とか胆石の人は 摂取禁忌というのがあります。なぜかということです。ウコンは実は、科学的なデータ があるのは、消化不良の改善にいいというデータです。消化不良の改善にいい。要する に胆嚢に作用して胆汁収縮、胆汁液を出すということです。胆汁液を出すのですけれど も、胆管のところが詰まっていたり狭くなっていると、疼痛を誘発し、症状が悪化する。 こういうことからこういう病気の人はウコンを摂取してはいけないというか、やめた方 がいいというデータがあるわけです。中には、胆石とかこういう病気の人でもウコンを 摂取して、全然問題ないという人がいます。重要なことは、病気というのは、人によっ て状態が違うわけです。全く影響がない人もいれば、注意しないといけない人もいます。 でもこれは個人ではなかなか判断できないですね。そういう人がどうしてもウコンを利 用したいと言うのだったらしょうがないですけれど、少なくとも主治医に告げる、ある いは相談するということが重要だと思います。  つまり何かが起こったときにその原因を特定するというのが非常に重要なのです。そ の原因を除けば、症状は改善します。その原因が何かわからない状態で使っているとい うのは、非常に問題です。ですから、少なくとも病気の人が利用するのはやめた方がい い。もし利用するとしても、主治医に相談してほしい。これが重要なところだと思いま す。  ウコンは、とても人気があるんですけれど、実は結構問題を起こしている事例もあり ます。ただ、かなりの人が利用していますから、それだけ問題事例も、比率的には多く なってくるということがあるかもしれません。今のところ出ているのは、ウコンのうち に薬剤性の肝障害を起こしたという事例です。C型慢性肝炎の人が利用すると問題だっ たという事例もあります。ですから、肝臓にいいと思って利用されていると、実は問題 を起こす事例もあるということです。  このときにC型慢性肝炎の人は、鉄過剰症を起こしやすいので、鉄制限療法というの をされているらしいのです。そのときに、ウコンの製品の中に鉄が多いものを利用され ていると、せっかくちゃんと病院で鉄制限療法をしているのに、医療関係者に黙って患 者さんが鉄を健康食品からとっているというと、問題になるということです。病気の人 は絶対に使うなといっても、人は使いたくなります。そのときにどうアドバイスするか というのも、問題です。けれども、少なくとも使っているかどうかというのを医療関係 者が把握できる、もしくは使っている人は医療関係者に言うという対応が必要だと思い ます。  ビタミンCは、ほとんどの人に問題はないのですが、例外があって、腎臓の機能が低 下している場合は、やはり注意しないといけない。腎臓が正常だったら、尿中に全部過 剰摂取したものが出ていきます。けれども、腎臓の機能が低下している人では、こうい うシュウ酸血症を起こす場合があるということです。一般に物事を安全だ、危ないと両 極端に判断をされます。けれども、人によって違うということを認識しなければいけな い。ビタミンCは普通の人がとっても下痢を起こすくらいです。でもこういう場合もあ るということで、特に病気の人が安易に健康食品を使うのは問題だということが言える と思います。  先ほど来、特別用途食品とか保健機能食品の説明がありました。食品名と利用対象者 が必ず対応があります。だれにでも使えるものでもないし、だれがどうやって使うかと いうのを想定して、食品はできているわけです。特別用途食品は、特別の配慮が必要な 人ですから、これは病者とかが専門職のアドバイスを受けて利用するというものです。 妊産・授乳婦用粉乳だったら、妊産婦・授乳婦、乳児用調製粉乳だったら乳児が利用対 象者ですね。  最近、特定保健用食品を病気の治療にも使いたいという人がいます。けれども、特定 保健用食品はだれを対象にしてつくっているかというと、健康が気になり始めた人を対 象につくられたものです。病気の人を対象につくられたものではないのです。だからこ このところは、注意しないといけないと思います。また、栄養機能食品は、ちゃんとし た食生活ができていない人、そういう人が足りない栄養素を若干補うという、そういう 目的で使うものだということです。こういう考えで製品はできています。これをしっか り認識しないと、混乱してくるということが言えると思います。  日本の幼児のサプリメント。サプリメントは普通の大人ではかなりの人が使っている。 半分ぐらいの人が使っているという情報があるんですけれども、子供にもそういうサプ リメントの利用が最近増えているということです。これは私どもの研究所で調査した結 果です。アメリカでは実は30〜50%、調査対象者によって違うんですが、これぐらい 使っていたという報告がありましたので、日本でどうかというのを調べた結果です。小 学校に行く前の子供の親御さんを対象に調べますと、15%がそういう濃縮物のサプリメ ントを摂取していたという実態がありました。成分としては、ビタミン、ミネラルが多 くて、他種として魚油とかプロテインが多いです。ビタミン、ミネラル、魚油が多い。 魚油はとると頭がよくなるという情報があります。どこの親御さんも自分の子供を健康 で賢く育てたいという思いがあるんですね。インターネットを見ていると、これをとる と頭がよくなるとか健康になるとか出ている。そういう情報から、こういうサプリメン トを使われるということです。ここに、漢方薬というのがあります。これは、調査をし たときに何をとっていますかというので書いてもらったんです。漢方薬は薬です。何が 言いたいかというと、この回答した人は、薬と食品の区別がつかなくなっているという ことです。先ほど言いましたように、サプリメントもしくは健康食品と薬は、明確に区 別しておかないと問題が起こるということが言えると思います。  次に「医薬品との併用」というお話をしたいと思います。健康食品と医薬品の相互作 用があるということが、非常に最近注目されています。けれども、一番問題となるのは、 健康食品の品質です。表示されている成分が本当に含まれているかということです。含 まれていなければ相互作用を考える必要はないかもしれません。かなり入っていたらや はり注意しないといけない。でも、その判断ができないんですね。こういう実態がある ということです。  複数の成分が添加された製品というのは、多くの対応が出てしまい、有害な影響が発 現してもその原因究明は困難です。薬はほとんどが単一の成分で何ミリグラムと明確に 規定されています。健康食品の場合は20ぐらい成分が入っていて、しかも何がどれだ け入っているかわからない。1対1の対応じゃないですね。1対20の対応があるわけ です。1個の健康食品だけを利用しているという人は、余り最近いらっしゃらない。複 数の健康食品を利用されています。そのため医薬品の1に対して50とか、1対100み たいな対応ができてしまうわけです。そうすると本当に相互作用を起こすのか、起こさ ないかというのが、全くわからないような状態になってくる。こういう問題が医薬品と 健康食品の相互作用で、現在あるということが言えます。  どういうところで健康食品と医薬品の相互作用があるかというと、いろいろところで あります。消化管の吸収の段階で相互作用を起こす場合、それから肝臓の薬物代謝酵素 のところで相互作用を起こすなど、いろいろあります。一番よく知られているのが、こ の肝臓の薬物代謝酵素を誘導する、セイヨウオトギリソウ。これは軽いうつに効果があ るという、セントジョーンズワートで、薬物代謝酵素を誘導することがよくわかってい ます。  セイヨウオトギリソウを含む製品と医薬品を利用すると、医薬品が効かなくなるとい うのでよくわかっています。ただし、これも本当にセイヨウオトギリソウが、肝臓の薬 物代謝酵素を誘導するような量で製品中に入っているか、入っていないかによって、判 断も変わってくるんです。これは非常に難しいかもしれません。これは1つの事例です けれども、注意しないといけない。  この薬物代謝酵素を誘導する健康食品にはどんなものがあるかについては、実はほと んどわかっていないんです。わかっているものは非常にわずかです。ここをしっかり調 べないと、ちゃんとしたものをうまく利用することはできないということがあるわけで す。  ほかの健康食品と医薬品の相互作用の事例として、パーキンソン病患者が利用するレ ボドパです。これはドパミンの前駆体です。この薬と中性アミノ酸の併用は、レボドパ の作用を抑えてしまうというので、症状を悪化させることがあります。レボドパが、中 性アミノ酸と消化管のところの吸収の段階で拮抗するから、薬のレボドパが余り吸収さ れないということがあるということです。  一番の問題は、普通の食品の中にも中性アミノ酸は入っている。けれど、中性アミノ 酸のサプリメントを大量にとると、当然量が多いですから、相互作用しやすくなるとい うことです。普通の食品自体にこういうのが入っていても、それほど多くの量と頻度で とらないです。ですから、あまり過敏になることはないのですが、一番注意しないとい けないのは、やはり濃縮物ということになると思います。  ワルファリンというのは、いろんな薬と相互作用するんですけれど、特にビタミンK の含有食品とワルファリンの相互作用というのが有名です。ビタミンKを多く含むホウ レンソウとかブロッコリーを摂取している人や、特に納豆を摂取している人です。これ は非常に問題だということです。けれども、一番の問題は、本当に微量でも相互作用を 起こすかどうかというところです。ある程度の量がないと、相互作用を起こさない、そ このところの判断が難しいということです。  ちなみに最近の情報ですけれども、ビタミンKのレベルが低いと、逆にワルファリン の治療を困難にする、ある程度の量は必要だということも言われています。ビタミンで すから当然ないと、悪い影響が出ます。ある一定の量は必要なのです。どこまで許容で きるかというところは、よくわかっていない。最近の報告ですと、1日100〜200マイ クログラムのビタミンKの一定した摂取を維持するというのが重要で、途端に多く摂取 したり途端に少なくしてしまうと、薬が効きやすくなったり効きにくくなったりすると いうことがあるといわれています。  ここで一番重要なのはワルファリンを服用している人は、一定したビタミンKを摂取 して、血液凝固時間をチェックすること。これが基本で、何も調べないで安易に判断す るというのは、問題だということも言えると思います。  グレープフルーツジュースとフェロジピンの相互作用の事例。要するにカルシウム拮 抗薬とグレープフルーツジュースが相互作用を起こすという事例です。これは、非常に よく知られています。実はこれをよく調べてみると、相互作用を起こす人と起こさない 人がいます。こちらは、その実験結果を論文から出してきたデータです。グレープフル ーツジュースを飲むと、フェロジピンの血中濃度が上がる。要するに消化管の薬物代謝 酵素のところに影響し、こういうふうにかなり血中濃度が上がる。これは普通のコント ロールです。  相互作用を起こす成分はフラノクマリンで、この成分を除いたものでは相互作用を起 こさないということで、このデータからフラノクマリンがグレープフルーツジュースの 相互作用の原因物質だということを示したデータです。こちらは非常に明確に相互作用 が出ています。上のデータでは相互作用がないです。人によって、影響がある人とない 人がいるということです。こういうことも知っておくとことが必要だと思います。すべ ての人に影響が出るわけではないということです。これは細かい話です。全体的には相 互作用があるから、これは回避しないといけない。けれども、どこまで回避すればいけ ないかというところを、専門職はじっくり考えていかないといけないところだと思いま す。  医薬品との相互作用の一般的な考え方は、健康食品自体にそんな作用を持っていると いうのは余りなく、医薬品は作用がありますから、薬の作用が効きやすくなったり効き にくくなったりするということ。そこが問題だということです。  例えばこれは一つの例です。これは薬の作用域、治療域、中毒域を示した図です。薬 は治療域で使われています。健康食品を利用すると、薬が治療域まで達しないことがあ る。例えばセントジョーンズワートのような場合です。薬が代謝されて薬の濃度が治療 域まで行かない場合です。それから薬が効き過ぎて、先ほどのグレープフルーツジュー スのように、中毒域になる場合もある。血中濃度が高まってしまう場合があるというこ とです。健康食品自体はそんな作用はないかもしれないんですけれども、薬は作用が強 いですからそれを考えていかないといけないということが言えると思います。  最近いろんな調査をしますと、健康食品を利用する人というのは、複数の製品を利用 されています。これは非常に問題です。複数の製品を利用したときの問題点は、例えば 健康被害を受けたとき、どれで健康被害に関係したか、わからないのです。3つも4つ も利用されていると、どれで影響があったかわからない。それから医薬品との相互作用 の問題も組合せが非常に複雑になっていて、何が影響していたのかもわからない。健康 食品間の相互作用による有害影響の可能性だって、ひょっとしたらあるかもしれません。 そもそも複数の製品を摂取したときの有用性のデータはない。ここも非常に重要なとこ ろです。いいと言われて健康食品をたくさん摂取されるんですけれど、本当に複数の製 品を利用してよかったという科学的なデータがあるかないか、というのを冷静に考えて いくということも、重要だと思います。  では、「保健機能食品の利用の考え方」の話です。特保でいろんな製品が出ています けれども、これさえ摂取すれば食生活が乱れていても大丈夫だと思う人もいます。けれ ども、それは間違いです。だから特定保健用食品をどう使うかというのを考えてみる必 要があると思います。特定保健食品とか栄養機能食品の2つを合わせて、保健機能食品 といいます。保健機能食品でも、だれがどのような製品をどのような目的で利用するか によって、有益にも有害にもなる、こういうことを考えていかないといけないと思いま す。  一般にいろんな情報が出るときに、これは悪いというと皆さんはとても悪いものだと 思うし、これはいいというととてもいいものだと思います。けれど、だれが何をどうや って使うかによって、いい場合もあるし悪い場合もある。健康食品の場合も、すべて悪 でもないし、うまく使えばいいものもあるわけです。その使い方がうまくできていない。 いい加減な情報が出ているのですが、そこのところが問題です。国が認めている保健機 能食品でも、どうやったらうまく利用できるかというのを考えていかないといけない、 ということです。  これは一つの考え方です。「乱れた食生活の不安を癒す目的での利用、医薬品的な効 果を期待した利用は問題」です。これをやってしまうと、本来、特定保健食品の意味が なくなってしまいます。どうするかというと、まず現在の食生活を改善するきっかけ、 動機づけとして特保を利用してほしいということ。正しい食生活を考えた基本事項、例 えば糖質が気になる人は糖質を少なくする。脂質が気になる人は脂質を抑えるとか、そ ういうことにつながれば特保は、すべての人に効果がある。これは当たり前のことです。 例えば運動しないといけないというときに、特保の飲料を飲むから運動をしようとか、 油ものをちょっと食べていて特保の飲料を飲むんだから、少し油の摂取量を控えようと いう行動に結び付けば、特保は非常にいいものになっていくわけです。そういう考え方 で特保を使うのが、一番重要だと思います。  特保の表示はうそではなくて、ある程度の効果があるということが証明されているわ けです。ですから、ちゃんとした使い方をすれば、それなりに「効果が期待できる」。 この期待できるというところは重要です。表示されているデータが必ず出るわけではな くて、人によって出る場合と出ない場合がある。要するに「期待できる」というところ が、食品の重要なところだと思います。すべての人に効果が出てきたとしたら、作用が 強いので有害な影響が出ます。ですから、期待できる、弱い作用というのが、食品とし ての作用だと考えてもいいと思います。  この使い方のところは、私どもの研究所のホームページで詳しく出していますので、 もし御興味のある方はごらんください。  これは実際の特保の例です。難消化性デキストリンを入れた飲料というのは特保でた くさんあります。血糖値が気になる方の食品であります。これはそのデータです。横軸 は時間、縦軸は血糖値です。青は対照の飲料です。炭水化物を摂取すると血糖値が上が る。その時に特保の飲料を飲むと、血糖値の上がりが抑えられるということが言えてい るということです。星がついているのは、効く人と効かない人がいるということです。 でも、この対照の人が例えば20%の糖質の制限をしたら、すべての人で血糖値は20% 上がりにくくなる。当たり前のことです。そういうことをやってくださいというのが特 保で重要なことだと思います。  それから、こういう効果が出るというのは、「期待できる」というレベルです。けれ ど、これは使い方もあります。炭水化物を摂取しなければ、ほとんど何もないんです。 この特保飲料を使う場合は、糖質をなるべく制限するという動機づけに使うというのと、 食事とともに、炭水化物とともに摂取するというのが正しい使い方です。要するに、空 腹時にこの飲料を飲んでも、普通のお茶や水を飲むのと同じです。ですから、効果的な 使い方をするにはどうしたらいいかというのを考える。そういう点を普及していかない と、本当の特保の意味は出てこないのではないかと思います。  もう一つの栄養機能食品、これは規格基準型の食品です。重要なのは栄養素の補給・ 補完。栄養素というのは決まっています。その補給・補完に使うということです。ビタ ミンの12種類とミネラルの5種類の表示が、現在は、許可されている。重要なのは、 ビタミン、ミネラルは科学的根拠が多い、ではどういう根拠かというのを調べてみると、 これは不足している人が補ってよかったというデータです。十分とっている人が、更に とってよかったというデータは、今のところありません。ビタミンAとかベータカロチ ンでは余り多くとり過ぎるとよくないというデータもあるわけです。だからこういうと ころも考えなければいけない。要するに不足している人が使う。これはとても有意義で いいわけです。でも十分とっている人がさらにとっても、恐らく意味はないだろうとい うことです。だから先ほど言いました、だれが何をどんな目的で使うかによって、いい 場合もあるし悪い場合もあるということを考えていかないといけないと思うわけです。  特にビタミン・ミネラルは食品摂取基準と連動しています。これは横軸が摂取量で縦 軸はリスク。要するに少ないと不足のリスクがあり、とっていくとリスクが下がってき ます。そしてあるところでリスクが上がってくる。過剰なリスクが出てくるわけです。  こういうことから食事摂取基準というのができているのですが、食事摂取基準という のは習慣的な摂取量を示しています。ここが重要です。よく、ビタミンとかミネラルの サプリメントを売る人が、今日の食事を見て足りないかどうか判断して勧めるというん のですけれど、一日だけでは評価できません。今日、あるビタミンの少ない食事をした ら、それは明日か明後日補えば十分なんです。それは食事摂取基準の習慣的な摂取量を 考えれば理解できると思います。  耐容上限量の場合も、通常の食事でこの習慣的な値である上限を超えることは、まず ありません。同じものを毎日食べることはできません。ですから、この耐容上限はサプ リメント対応だというふうに解釈できる。普通のものを普通の食事から基本的にとると いうことが、一番重要であるということを理解できるというように思います。この食事 摂取基準で示されている値を誤解している人が非常に多いです。  「栄養機能食品は個別審査を受けていないため、問題がある製品」もあります。例え ば「栄養機能食品(カルシウム)」と書いてあったら、これはカルシウムの補給・補完 に使う製品ですが、中にイソフラボンを入れたりブルーベリー、ほかの天然物を入れた りしている製品があります。これは、本当は道義的には栄養機能食品としては違反です。 先ほど芳賀さんが言われましたけれども、まさにこれが今、問題になっているところだ と思います。  保健機能食品というのは、消費者の人が何を選びますかというときの判断基準を示し ているだけで、これをとれば健康になるとかと言っているわけではないです。スーパー などに行って、これらの製品を選ぶときに、あなたは何を判断基準に製品を選びますか という、判断基準を示しているだけなんです。基本はやはりおいしくて、価格がそれほ ど高くないものを選ぶのが普通の消費者だと思います。そういうことを考えると、保健 機能食品も食品で、消費者がどう選択するかを示しているものだということです。  では、情報の収集と解釈ということで、一番問題なのは、イメージでとらえられると いうことです。「天然・自然だったら安全、化学合成品は危険」という考え方ですが、 調べてみなければわからない。それから、「特定成分の摂取量が考慮されないという問 題。食品中に良いと言われる成分が微量で含まれていても有効?多量に含まれていても 安全?」という考えは間違いです。要するに微量であれば何の作用もないし、多かった ら安全性が心配される。こういう量的な考え方が、なかなか理解されていないようです。  これは先ほどお話ししましたけれども、商品の原材料の情報と商品の情報は違うとい うこと。要するに原材料の情報は科学論文で出されています。けれども、これを入れた 製品が本当に安全かどうかというのは、わからない。ちなみに、特定保健用食品は最終 製品で評価されている。ここが重要なところです。  ベータカロチンを過剰に摂取すると肺がん発症率が増加したというデータがあります。 このデータをお話しすると一般の方は、ニンジンとか普通の野菜からとったベータカロ チンが危ないんですかと言われる。けれど、これは何が問題かというと濃縮物として摂 取した時です。普通の食品からとると幾ら頑張ってとっても血液中濃度はそんなに上が らないんです。ところが、濃縮物としてとると、かなり血液中濃度が上がってきます。 今までこういう濃縮物を摂取した経験は浅い。ですから、それがいいのかどうかわから なかった。実際に調べてみると、どうも濃縮物として摂取するのはよくなかったという データが出てきているわけです。  私たちはいろんな情報に振り回されますけれども、基本は何かというとやはりちゃん とした普通の食生活をするということで、それが一番安全だということが言えるという ことになると思います。  これはそのことを示しています。横軸が摂取量、縦軸は生体影響です。レバーの絵が あります。レバーはビタミンAが多いですね。ビタミンAが過剰になると、当然、過剰 症を起こします。なぜレバーを食べていて問題ないか。毎日レバーを食べる人はいませ ん。いろんな食品を私たちは食べたいし、食品には容積がありますし、においもありま すから、毎日毎日好きでも同じものを食べることはないんです。ですから、特定の成分 を過剰に摂取しない。言いかえたら有害な成分も過剰に摂取しない。安全な食べ方とい うのは、普通の食事から食べるのが一番だということが言えると思います。  錠剤・カプセルにすると、特定成分を容易に過剰に摂取できるということで、知らな いうちに過剰摂取してしまうということです。ただ、これが全部悪いわけではなくて、 例えばビタミン、ミネラルで品質のしっかりしたものだったら、余り食事から食べられ ない方が使うと悪くはないのです。ですから、だれが何をどうやって使うかによって、 よくもなったり悪くもなったりするということ、そういうことを考えていかなければい けないというように思います。  そういう情報を中心に、我々のところで、先ほど松井専門官にご紹介していただきま した、情報サイトで情報を出しています。有効性に根拠がないことを示す。有効性のデ ータを出しますけれども、ほとんどが、根拠がないという内容です。なぜこうやってい るかというと、要するに乱用を防止するということ。根拠のないのに使ってしまうと、 健康被害を起こす可能性がありますから、乱用を防止するという意味があります。  有害事例を詳細に示すことによって、類似した被害を防ぐという目的もあります。ま た健康食品の実態を示すことによって、国の保健機能食品制度がちゃんとしていること、 そしてその意義を伝えていくことができる。こういう情報提供サイトをつくっています。  この中で例えば「拡大解釈に配慮した情報の提供の必要性」という考え方があります。 「俗に何とか」と書いてあります。これを書くと学者の先生は、よくわかっているのに 「俗に」なんて書くのはおかしいといわれるんです。けれど、情報はだれに渡すかによ って変わるわけです。一般の人に、学者さんが考えている情報をそのまま書いてしまう と、拡大解釈されます。ですから、ちょっと一歩引いた考えで情報を提供しています。 保健機能食品には病名は入っていない。例えば、「鉄は、赤血球をつくるのに必要な栄 養素です」というように、貧血とかそういう言葉はは入っていない。これも情報提供す るときの同じ考え方と思います。要するに情報を伝えるときに、情報をとらえた人がど う判断するかによって、伝わり方が変わりますから、それを考えながら私たちは情報を 伝えていかないといけないということです。  その中で重要なのは、情報を書くときに、「だれが何をどれだけの量と期間摂取して、 どのような生体影響を受けたか」と具体的に書かないと、心配しなくてもいいことに対 して、とても心配したりする人もいます。逆に心配しないといけない人が、全然気にし ないということもあります。ですから、具体的に書くということを今、行っているとこ ろです。  これはチオクト酸、リポ酸でインスリン自己免疫症候群を発症したという事例です。 これは4月ぐらいにかなり新聞などでも紹介されました。要するにメディアを介して出 していただいた。そうすると多くの人に認識してもらえるという非常にメリットがあり ます。そういうことで、新聞社の人にお願いをして協力をしてもらっています。  これはローヤルゼリーに関する有害事例です。ローヤルゼリーの情報のところにアト ピーを起こすとか書いてあります。これについて電話で問い合わせがあって、こういう 症状を起こしたというのが最近ありました。ローヤルゼリーを飲んでいたら、下痢を起 こしておなかが痛くなって出血を起こしたという症状があったという人の電話でした。 入院して症状は改善したけれどもよくわからなかったとおっしゃったので、我々のとこ ろのデータベースを見ました。そうすると以前、日本人で同じ症状になった人がいたこ とがわかりました。こういう時の参考になるから、ちゃんとした情報で、いい情報も悪 い情報も集めておくというのが重要だということが言えると思います。  ビタミンC、ビタミンEは、運動をすると活性酸素ができるから、摂取するといいと いってたくさんとっている人がいます。けれども、実は余りよくないという情報があり ます。運動自体にインスリンの抵抗性改善という作用があるわけです。ビタミンCとか ビタミンEを大量にとると、本来の生体の適応現象が抑えられてよくないというデータ が出ています。こういうデータを見ると、一般の人はビタミンC、ビタミンEは要らな いんですかというふうに思います。けれども、何が問題かというと過剰に摂取したこと が問題であり、適量に摂取したことが否定されているわけではないのです。そういうこ とも伝えていかないといけないと思っています。  情報に関する留意事項として、まず過去に否定された情報は、注意した方がいいだろ うということ。それから、類似した健康被害事例の把握をすること。それから最新情報 をチェックすること。こういうところはやはりアドバイザリースタッフとか専門職の人 には必要だと思います。  こういうことを踏まえて、今後どうやっていくかということをちょっとお話ししたい と思います。健康食品の問題点と対応で大きく分けると、先ず製品側の問題です。これ は事業者の人が対応をしてもらえれば改善することです。もうひとつは利用者側の問題 です。要するに不確かな情報に基づいて使っているとか、医薬品的な効果を期待して利 用するとか、アレルギーの人のように本当は利用してはいけない人が利用するという問 題です。  こういうところに何が影響しているかと言うと、一番の問題は情報の氾濫です。いい 加減な情報が出ている。それで世の中が混乱しているわけです。重要なのは、科学的な 情報を提供して、情報の氾濫、ここを改善しなければいけない。  それから、先ほど来ありました、アドバイザリースタッフ。そういう人を活用して、 ちゃんとした情報が渡るようにしなければいけない。こういう問題点を今後改善してい かなければいけないと思います。  「専門職による利用状況の観察」が重要です。食品で販売前にいろんな有害事象がわ かるというのはなかなかないです。実際売られて、そこで何か問題がでてくる。例えば リポ酸の事例もそうです。後でわかるということがあります。専門職の人が注意深く有 害事象を見ていく必要があると思います。本当に利用した製品との関連があるのか。本 当に成分との因果関係があるのか。その有害事象が重大かどうかという、そういうとこ ろも注目していくということです。  厚労省にいろんなデータが集まってきているようですけれど、有害事象で健康食品が 問題だったというのは明確にすることは困難です。ですから、どうするかというと、一 事例でもいいから、どんどん蓄積していく。それを解析すれば、本当に問題になったも のがわかってくるということです。こういうところも専門職の人に協力してもらえれば、 今はわからなくても、将来これが問題だというのを明らかにすることができる。それが 被害防止にもなりますし、ちゃんとした商品をちゃんと使えるような状態になる。そう いうことが言えるのではないかと思います。  消費者と専門職のコミュニケーションの充実が重要だということ。違法な製品や粗悪 な製品の選択は問題外です。それから、医薬品的な効果を期待した利用も問題です。こ ういうのを改善しなければいけない。改善するにはどうしたらいいかというと、やはり 消費者と専門職がコミュニケーションをとってやっていかなければいけないということ です。  消費者の人が信頼しているのは、インターネットの情報とか友人・知人で、実は専門 職の人は余り信頼されていないというデータがある。非常に悲しいことですけれども、 それを改善していかなければいけないということが、今の大きな課題だと思います。  社会環境の変動を考慮した対応が、特に専門職には求められています。サプリメント や健康食品で考慮すべき事項としては、多様な食生活、多忙な生活、多様な考え、人に よって違うんです。みな同じではないんです。そういうことを考えるということです。  また、科学的研究の進歩には新しい情報が出てきています。信頼できる情報を共有す る。一番重要なのは何かというと、健康食品やサプリメントはすべて悪い、よいとは言 えないということ。両極端に判断することはできない。基本となる生活習慣等を理解し、 健康に不安がある人の立場で、安全で効果的な利用を考える必要がある。立場によって 違うわけです。ですから、それぞれの人の立場を聞いてあげて、この人にはどう対応し てあげるのが一番いいだろうというのを考えていくのが、私はサプリメントを扱う人の 重要な使命だと思っています。  最後ですけれども、健康の保持・増進というのは、ちゃんとした食生活、運動、休養、 この3つのバランスがとれて成り立つ。これは当たり前のことです。サプリメントとい うのは、食生活の中のほんの一部です。だからもしサプリメントを使うとしても、あく までも補助的というのが、重要なポイントです。補助が主体になったら、もう大変なこ とです。  健康食品は多様であるが、あくまでも食品の一つだということ。医薬品ではないんだ ということを理解すること。それから、メリット、デメリットを考えて補助的に利用す る。物事はいいことと悪いことがあります。ですから、いいことが上回るような条件で 使うということです。利用したときは、利用状況の記録をとる。どうしてもサプリメン トを利用したいという人がいるわけです。そういう人に対してやめなさいというのはな かなか言えないし、やめなさいと言うと隠れて使われます。ですから、自分がどれだけ 何をとったかメモしてくださいというふうに、我々はお願いしています。  それから、いいという体感があるかどうかです。いいという体感がないのに継続利用 するというのは、むだです。それは利用者が判断することです。少なくともいい体感が あるかどうかというのを考えて利用する、そういうアドバイスを専門職の人がしていか なければいけないと思います。  以上です。どうもありがとうございました。 ○司会 ありがとうございました。  続きまして、「消費者への情報提供のポイントについて」、鈴鹿医療科学大学教授、 長村様より御講演をいただきます。 ○長村教授 皆様こんにちは。ただいま御紹介にあずかりました長村と申します。  今日の健康食品のリスクコミュニケーションということですが、結果として消費者に 一番いい情報を与えるにはどうしたらいいかというところの結論的なものを、僕が最後 に申し上げさせていただきたいと思っております。  まず、消費者への情報提供において非常に大切なことは、まず情報提供者が、健康食 品に関して問題点を正確に把握しているということであります。これにつきましては、 実は梅垣先生の、僕の前の話、これもすばらしい話でございまして、健康食品全体をど う考えるか。非常に現状をうまくとらえておられます。この状態の情報が消費者に正確 に伝われば、今の混乱している状態というのは、相当に改善することが考えられます。  それに当たりましては、何が重要かといいますと、やはり消費者の理解力と心理をよ くとらえる必要があります。これは科学的な分野と少し外れているところがあるかと思 いますが、現在のいわゆるいろんな問題におけるリスクコミュニケーション、地震が起 こったときとか災害のとき、そういうときにも、一般人はどのような誤解をしてどのよ うな行動をとるかというところに関して、我々アドバイザリースタッフと称する人種も、 ちゃんとそこら辺を理解しないと情報が一方通行になってしまうということであります。  もう一つは、消費者に正しい情報を受け取るシステムを構築しないとだめではないだ ろうか。今日もこうしてやられまして、いろいろな方が来られて、そしてお話になられ ます。また帰って職場とかでいろいろなことをやられていくんですけれども、単発的に こういうことがぽっぽとあるだけではと言ってはいけないかもしれませんが、やはり系 統的にどうしていくかという、そういう組織立った考え方というものができていないの ではないだろうか。ここら辺のことを大体まとめて、今日お話しさせていただこうと思 っています。  まず、情報伝達者が健康食品に関して問題点を把握していること。これは非常に重要 なことだと思いますが、この問題点に関しましては、今の梅垣先生の方がかなりお話に なられましたので、僕の方も適宜端折って話をさせていただこうと思っています。  初めに、健康食品は消費者にとってどのような問題を内在させているか。ここのとこ ろで健康食品をめぐる大きな問題点といいますのは、一つは先ほどから非常に話題にな っております有効性表示の問題であります。そして、品質がどうであるか。これも梅垣 先生もいろいろ言っておられましたが品質の問題。そして医薬品との相互作用でござい ます。  まず、「有効性表示の問題」なんですが、その前にちょっと問題にしないといけない のは、健康食品というのは何だろうかという、有効性ということを言うからには、何か の対象が有効だ、有効でないというのを言わなくてはいけないわけです。  これは先ほど松井さんがお話になられました、一昨年出されました、「健康食品の安 全性に関する検討会の報告書」の冒頭のまとめに出ている健康食品についての定義のと ころですが、「広く健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるもの全般を指 している」と。「広く健康の保持増進に資する食品」というのは、例えば牛肉、ホウレ ンソウ、豚肉、こういうものもみんな入ってきますので、ある意味では食品ということ になってしまうわけです。細かいことは別にいたしまして、結論的にはやはりこういう 色分けをされた、いわゆる健康食品と栄養機能食品の一部。こういうものが世の中で、 いわゆる健康食品として出回っていますね。この健康食品の安全性をどうするかという のが、平成20年に出された報告書の対象となった健康食品だと思っております。  明確な健康食品の定義がない。残念なことに、日本の近隣諸国の韓国、中国、台湾と かこういった国々では、日本以上に明確に健康食品に該当するものの法的な定義がなさ れている。日本では、今のところ、保健機能食品に該当するもの以外は、一応は全部食 品という法律的な分類になってしまっている。ここにひとつ大きな混乱の原因が存在し ているというふうに、理解しております。  食品というのは、健康を維持する明確な機能を有しております。まず一次機能といわ れる、いわゆる栄養素が持っている健康に及ぼす機能。それから、感覚機能、一杯のコ ーヒーが非常に気分をさわやかにするとか、こんにゃくの刺身がおいしいとか、そうい ったようなことになるわけです。一番健康食品っぽいところでは、例えばニンニクの中 の成分にビタミンB1の作用を増強する因子が入っているとか、そういったところから 来るものであります。  食品が健康を維持する機能を有する、このことに関する日本全体の医師を含めての理 解の不足が、ひとつ健康食品の世界を非常に混乱させてきている大きな原因ではないだ ろうかというふうに、僕は考えています。それはいまもって医療機関にあって、自分も 最近、管理栄養士という集団を教育するようになりまして、その集団が病院の中でどの ような機能を果たせるかというところの非常に大きな働きといたしまして、ニュートリ ーションサポートチームというのがあります。栄養サポートチームというんですが、こ れを始められたのが、実は私の前任の藤田保健栄養大学の東口教授なんです。  東口教授が絶えずこう言っており、また書いている書籍の中に、非常に興味深い一節 があります。がん患者の70%はがんで死んでいない。栄養がとれなくて死んでいる。 その栄養というのは、メシマコブだアカリクスだと、そういうものではないんです。  結局僕も最後に言わせてもらいますが、一番大事なのは、バランスのとれた食事をど のようにとっていくか。そこの中でプラスアルファで健康食品というのをどう位置付け ていくかというところを、どのように考えていくかというのが、大きな問題ではないか というふうに思っております。  ところが非常にこれは業界と厚生労働省の間でもめている非常に大きな問題点ですが、 46通知というのがございます。この46通知には非常に厳しいことが書いてございま して、赤で書いてある、「貴管下関係業者に対して、遺憾のないように指導取締りを行 われたい」。そして、「薬事法及びその他関連法令に基づき、告発等の厳重な措置を講 じられたいことを」となっております。その対象となっているのは疾病の治療または予 防を目的とする効能効果、そして身体機能の一般的増強増進を主たる目的とする効能効 果。ただし、栄養補給、こういった具合に書いてございます。  だけどこれを緩めてしまったらどうなるか。僕は今自分がやっております健康食品に 関するアドバイザリースタッフとしての活躍をしている人たちから入ってくる情報から 見る限り、安易に認めてしまう、広げてしまうのは非常に危険というか、消費者にとっ ては大きなマイナスを被る可能性があるというふうに理解しています。  例えばこの食品は、「ビタミンCを多量に含んでいますから、壊血病の予防に役立ち ます」「このシジミエキスはタウリンを沢山含んでいるので肝臓に良い」「この食品の 血糖降下作用は医者も認めています。だから糖尿病にお勧めします」。栄養学的には極 めて明白な事実であっても、この表記は全部薬事法違反になります。  これはやはり今の現日本の法令というか制度の中にあっては、やむを得ない事態では ないだろうか。でも事実としてこういうものがあるのに、どういうふうに消費者と製造 者の間をつないでいったらいいだろうかというのが、僕が今自分のテーマとしてやって いる問題でございます。  健康食品は本当に効果があるのか。これは先ほどの梅垣先生の話にもいろいろありま したが、一つはタレントを使用しまして、自分も飲んでみたら効くかなという感じのタ レントの使用。派手な体験談。先ほど松井さんが、最初に40キロも一発でダイエット、 1か月で40キロもやせるという話がありましたが、それに類した体験談がいっぱい出 ています。もっともらしい学者が後ろにいて、これこそすばらしい健康食品です。こう いったものがあります。  それで、ちょっとレジュメにはないんですが、個人情報に近いものがありますので、 写真だけでお見せしますが、こういう具合に、「脂肪燃焼排泄アミノ酸&キトサンで」。 やはりこれをとったらすばらしく自分もこんなにきれいになれるかなと思っちゃう。そ れから、体験談、さっきの40キロには負けたという感じですが、これにも1か月で10 キロとあります。通常、肥満外来と称するところでも、1か月に10キロやせさせると いうことは、ちょっと危ない行為であります。ちなみに60キロの人が10キロずつ毎月 やせたら、6か月後には0になるんですが、実は健康食品のダイエットのこれに関して は、厚生労働省からの報告が出ておりますように、本当に骨壺に入っちゃった人も見え るわけです。ですから、いわゆる激やせをするなんていう健康食品は、危ない。  化学名が書いてありますと、非常に効くような錯覚に陥ってくる。それから、学者が 権威づけている。これなんかも、できるだけ見えないようにしていたんですが、写真で あの先生ってわかる方もいるかもしれませんが、著名な国立大学の薬学部の教授です。 「アオパパイヤしかない」とこういうふうにおっしゃっておられるんですが、本当かし らと思っております。  本当に効果があるのか。動物で有効であるということと人間で有効であるということ は、違っております。例えばアガリクスというのがありますが、ちゃんと調べてみると、 こういうふうに書いてございます。「がん細胞の縮小や消失、がんの抑制効果に関して は多数の研究結果が報告されている」。だったらアガリクスはやはり効くんじゃないで すかということになるんです。ところが、この結果はほとんど動物実験か試験管内の結 果です。  実は動物のがんといいますか、特にマウスのがんは、ほとんど今、薬で治ります。例 えばキノコのたぐいでがんに効くという話の一番御先祖様は、シイタケの中のレンチナ ンだと思います。このレンチナンが出ましたときの一番最初の実験は、東京大学の薬学 部の柴田先生がおやりになったんですが、移植しますと1か月すると死んでしまうエー ルリッヒの腹水がんに、シイタケから抽出したレンチナンを一発打ってやりますと、百 発百中全部助かります。レンチナンはそれで夢のがんの薬として世の中に出たんですけ れど、今はほとんど影がありません。結局人間に効くということと動物に効くというこ とは、かなり違った問題が内在しております。  今度は本当にあると感じたら、実は医薬品が入っていった。ダイエット健康食品をと ってふらつき汗をかいて、意識が朦朧としてしまった人が出た。これは石川県のホーム ページにあってその後の結果も出ているんですが、それを調べてみたらアシタバとか乾 燥酵母、仙薬、オウセン、キキョウ、こういったものでそういった症状が出るはずはな いというので調べてみたら、グリベンクラミド、これはもう立派な糖尿病治療薬である わけですが、こういう医薬品が混入されていた。ダイエット食品で入れられているので、 非常に危険な行為であります。ダイエットの人はたくさんとったら効くかもしれないと 思って、もしこれをとる人がたくさんとったらどうなるか。  僕はかつてドイツの糖尿病研究所にちょっといたことがあるんですけれど、そこでも 低血糖ショックで階段から落ちて大けがをしたという人が発生しております。現実に糖 尿病患者の人で低血糖で、これは名古屋で数年前にあった事件ですが、コンクリートミ キサーを運転していた運転手が、歩道へ乗り上げて女性2人をひき殺すという非常に気 の毒な事件が起こっております。血糖降下剤をこういう違法な形で入れた健康食品とい うのは、本当に殺人未遂に近い危険なものであります。  実際、厚労省が出している報告の中でも、平成17年の報告ですが、これまでに報告 のあった未承認医薬品による健康被害事例は796人、うち死者が4人となっている。こ こで健康食品の問題でちょっと注意をしないといけないのは、先ほど梅垣先生からも指 摘がありましたが、僕もあえて繰り返しておきます。健康食品で効果があったりして被 害が発生している事例というのは、ほとんど悪質なこういう医薬品が入っているんです。  これは国民生活センターなんかもホームページで公開しておりますが、アトピーによ く効く健康食品といいますか、塗り薬ではなくて、口コミで広がってきたものがあった。 本当にステロイドが入っていないでしょうかと調べたら、立派に入っていたという、要 するに違法なもので起こしている事件、事件性のあるものの非常に多くは、違法につく られたものであるということと、あとプラスアルファの問題がございます。そこら辺は また後で申し上げます。  健康食品をめぐる大きな問題点として、これは梅垣先生も指摘されておりましたが、 品質の問題であります。  品質については国民生活センターの指摘で、有効成分が本当に入っているか。含量の 不足というのを出しております。これは最近コンドロイチンとかグルコサミンというあ れが出ておりますが、ここの★印で書かれた部分というのは、ラベルに表記してある量 です。そして、青い線で示されているのが日健栄協の方法で測定した場合、これだけ。 HPCL法が一番正確な方法だろうと思います。こういうふうなものです。  データの話をいろいろ国民生活センターの宗林さんとしたときに、やはりこういうの を見るとプラシーボ効果というのもかなり重要だということがわかりますかねなんて言 って笑って話になったんですが、ある有名なタレントさんが出てきて、よく効くといっ てテレビに出てくるコマーシャルの製品は、随分低いところにありますよということを おっしゃっておられました。  ということで含量がまず不足している。含量の不足ということは、先ほど梅垣先生も 指摘された幾つかの問題が発生してまいります。  それからサメ軟骨由来というのはどうか。ここの二糖の比をとると、1以下の場合は、 魚類というかサメ軟骨から出てきたものらしいんです。ところがもう3以上になりまし たら、これは豚とかそういった哺乳動物のものらしいです。この中間の値をとっている のは、適当に混ぜられているというところなんです。ところが、どれもラベルにはサメ の絵がかいてある。ですから、あたかもサメ軟骨からとったかのように見えるように書 いてあるというような、そういう表記です。  それから、飲んでもおなかで溶解しない。例えば崩壊度試験を行って当該健康食品成 分が吸収されない可能性というのを指摘しております。これなんかも、見てみますと、 かなりのが崩壊しない、崩壊しない。結局飲んでもうんこになって出ていっちゃうわけ です。  何でこんなものをつくるかというと、結局健康食品というのをつくって、一定期間販 売をする間に、錠剤というのは結構難しい問題がありまして、いろんな成分が入ってお りますと、乾燥材を入れてあっても水分を吸ったりしてぼろぼろと壊れてきちゃうわけ です。そうすると製品クレームになります。  ですから、バチーンと強く打てばいいんですが、今度強く打つと硬くなり過ぎて、結 局溶解しない。ですから、やはりちゃんとした技術のコントロールされたところでやら ないと、単に錠剤になれば、それを飲めばみんなおなかで効くかというと、そうでもな いということになります。こういう、ほかにも崩壊しないといったようなデータが出て きています。  もう一つ、実は健康食品をめぐる大きな問題点として医薬品との相互作用というのが ございます。これは実は先ほど梅垣先生の方も情報がまだ余りないとおっしゃったんで すが、まさにそのとおりでありまして、私が今、主催させていただいております健康食 品管理士認定協会というのがございますが、この認定された健康食品管理士が日ごろ抱 えている問題というのを、絶えずいろんな形でネット上から情報を得ておりましたとき に、3年ほど前に一回、自分たちの一般市民に対する活動がどのように動いているかと いうところの情報を集めるために、大々的なアンケート調査をやりました。  そのときに出てきた非常に大きな問題は、健康食品については、一般的にアガリクス についてやればがんに効くとか何とか書いてある。それから、タウリンと見れば肝臓に いいとかそんなようなことがいっぱい書いてあるんだけれども、よく一般の方から受け る質問の1つに、例えば血圧の薬をもらっています。その人が、プロポリス、具体的な 名前を言っていいかどうかわかりませんが、プロポリスを勧められた。先生、これは一 緒に飲んでもいいんですかねと言われたときに、ぱっと調べることのできる本がないと いうことがわかりました。  我々は「健康食品ポケットマニュアル」というそういう本を、教育委員会が1年半ぐ らいかけて徹底して調査をしましてやったんですが、そのときにわかりましたのは、断 片的な情報はいっぱい出ております。ですが、まとめて簡単にわかるそういうものが出 ていない。要するに一般市民に対して結構そういう疑問は、病院で薬をもらっていて、 だれかに何かを勧められた。そのときにこれは飲んでいいかということを聞かれたとき に答えられないという状況があるというところで調べたわけであります。そのときに調 べた情報の一部であります。  食品及び健康食品は、医薬品種々な相互作用します。中にはかなり深刻な問題があり ますが、その実態については、かなり未知な点が多くあります。ただ、食品及び健康食 品と医薬品の相互作用としましては、一つは吸収の過程における相互作用、食品自体が 吸収を阻害したり促進したりいたします。それから代謝の過程における相互作用としま しては、これは肝臓でやられるということになってまいります。肝臓で薬を変化させる のは、肝臓の酵素です。  まず、吸収の過程における相互作用でありますが、例えば食事で接収した成分と医薬 品が複合体をつくって吸収されにくくなる。例えば牛乳、乳製品の中の金属イオンとテ トラサイクリン系の抗生物質なんかで、難吸収性複合体の形成によって吸収が低下する というようなことがございます。結果的には効果が減弱する。実際のとられたデータを 見てみますと、通常食のときにはちゃんと一番上の方までいっているのに、バター、ミ ルク、カッテージチーズ、こういったものをとったときは、こういうふうにかなり抑制 されてしまっているというデータであります。実際にカルシウムを多く食品が吸収を低 下させる可能性を有する医薬品には、こういったようなものがありますということでご ざいます。  それから、食事で摂取した成分と医薬品が今度逆に複合体をつくって吸収されやすく なるということがございます。これも牛乳などの乳脂肪分ですが、グリセオフルビンな どの抗真菌薬、これは脂肪成分と複合体を形成して吸収が促進されます。それで副作用 の可能性があるということでございます。  実際のデータを見てみますと、グリセオフルビンの吸収に及ぼす影響、牛乳とともに 飲みますと、こんなにたくさん吸収されるのに対して、水とともにではこんなふうにな るということでございます。  それから飲んだ酸性飲料が、医薬品の溶解性を増して吸収が促進されることがありま す。酸性飲料、炭酸飲料といった方がいいかなと思いますが、それにこういった抗真菌 薬を投与いたしますと、溶解性が増加して吸収促進。これは副作用の可能性が出てくる んですが、実際にも赤線で表示したような濃度の上昇というのが見られます。  代謝の過程における相互作用。代謝の過程でどんなことが起こるか。飲んだ薬の大半 というのは肝臓で変化します。変化した薬は効果が弱くなったり強くなったりします。 それは肝臓の酵素であります。実際にはこういうところでサイトクロームP-450とい うやつが基本になりますが、こういう酸素を介して、ものを結合させて、そして水溶性 を高めたりして、変化させる酵素でありますが、これには非常に多数の亜系という、い ろいろなタイプのサイトクロームPがございます。サイトクロームPの特異とする対象 の薬物、このCYP1A2とか、2C9とかこういったいろんなものがあるわけですが、 こういったものの薬物との適用性というのがいろいろあります。ここら辺に関しまして は、かなり詳細な研究もなされておりますが、こと健康食品との関係においては、まだ 非常にデータが少ないというのが実情です。  そこの中でも我々が調べた健康食品と医薬品の相互作用の中で、やはりずっと文献的 に見ましても、非常に注意を要するものというのは、一つはセントジョーンズワート、 それからグレープフルーツ、これは先ほど梅垣先生の話で効く人と効かない人があると いう、この問題はあるんですけれど、効く人にとりましては、非常に大きな影響が出る 可能性というよりは、事実出たというものが幾つも報告が出てきております。  食品で摂取した成分が肝臓のCYPの作用を弱めてしまい、作用が弱くなることがあ る。これは例えばグレープフルーツジュースで、先ほどの梅垣先生の話で効果が増強す る。実際こういうことで効果が増強する、ふらつきが出たりするという、低血圧の症状 が出てしまう人がいるということであります。実際に今こういうデータも出ております。  それから先ほどアミノ酸と吸収の競合でいくということで、梅垣先生が問題にされて いましたが、このレボドパというのは、例えばビタミンB6が代謝促進をいたしまして、 ビタミンB6と一緒に飲むと、一切に効果が減弱するというこういった問題もございま す。例えばレボドパのみの場合には、この上で示したような曲線になっておりますが、 B6と一緒に飲みますと、こういうふうに濃度が下がってしまいます。これでやはり効 かなくなってくる、こういうことがございます。  それから、ビタミンKはプロトロンビンを活性化しまして血液凝固を促進いたします。 もう一方でオステオカルシンの生成を促進して骨代謝を活性化する。これは結構重要で ございますが、ワルファリンを投与されている人がビタミンKの豊富な納豆、青汁、ク ロレラなどをたくさん食べると、結局効果が減少してしまうことがございます。脳梗塞、 心筋梗塞、こういうことが実際に起こる可能性があるわけであります。  ところが、我々の活動の中で起っていた、一メンバーからの報告の非常におもしろい 報告ですが、メディアの力のすごさというのを感じさせられた大きな事件ではないんで すが、実はワルファリンを渡すとき、薬剤師は必ず納豆などは食べないでくださいねと 言うのが、義務になっております。ちゃんと指導をしなくちゃいけない。実際に患者さ んにワルファリンを渡すときに納豆を食べないでくださいねと、これは血液をさらさら にする薬なんですが、納豆を食べないでくださいねと言ったら、いや先生、今はその考 えは間違っていると。納豆はナットウキナーゼという血液をさらさらにする成分がある から大丈夫だと。いやいやそんなことありませんよ。ちゃんと薬のここに書いてあるの で、絶対にだめですよと言ったら、いやいや先生、それは間違っている。テレビでやっ ていたという。  申し訳ないんですが今日取材に来ておられるNHKの「ためしてガッテン」でナット ウキナーゼが非常に効くというのを2回ぐらい放送された。これのイメージというのが 強かったんだというのを改めて認識しております。要するに薬剤師の指導も超えるぐら い、やはりメディアの一つの放送というのは、影響が大きいんだなとしみじみと感じて おります。  シメチジンとこういったもの、コーヒー、お茶のカフェインなんかとあれしまして、 濃度を高めて不眠、いらいら。ですからこういうことがございます。  こういうのはデータが随分出てきております。しかし先ほども申しましたように、健 康食品と医薬品の相性については、医療従事者も余りよくわかっていない。医療従事者 がよくわかってないことが、一つどういうことを起こしているかといいますと、いろい ろな調査で、梅垣先生がやられていた調査なんかでも出ていたと思いますが、だれに健 康食品のことを相談するかといったときに、医者は医療従事者の中で最低なんです。本 当は先生、こんなのをとっているんですけれどと話してほしい。医師というのはそうだ ろうと思うんですけれども、話さない。なぜかというと、大体がみんな禁止される。禁 止されるから、何となく自分はまだとってみたいという気持ちがあるのに、禁止される のが嫌だから相談しない。  そういうことで身近な例えば看護師さん、薬剤師、それから臨床検査技師とかそうい った人たちに、話を持ち込んでいるというのがあれです。ところが、医療従事者もよく わからないものですから、とりあえず否定しておこうということにもなっちゃっている わけです。  我々は教育委員会で徹底して調べました。大きな結論としては、多くの効果の弱い健 康食品は、医薬品と一緒に摂取しても、多分であります。ですから、多分というところ があるところには、もしも相手が摂取するとしたら、コントロールが必要だということ がございます。多分心配ない。しかし、例えばこんな深刻なことも明らかになってまい りました。例えばセントジョーンズワートがありますが、種々の薬で効果が減弱する。  実際にこれは効果が移植を受けた患者さんが、シクロスポリンという、この免疫抑制 剤が出たことで、今、移植手術というのは非常にうまくいくようになった非常に貴重な 薬ですが、これをセントジョーンズワートを飲み始めた患者さんが、血中農度がこの幅 にないといけないのが足りなくなって、拒絶反応を起こして、やめたらまたもとに戻っ たという、こういうデータがございます。そして実際にこれで自分の父親を亡くしたが ゆえに、健康食品に関する本を出しておられる同文書院の社長さんというような方もお られます。  健康食品の世界の問題点をちょっとまとめてみますと、健康食品の定義がはっきりし ないままに、市場が具体的に動いている。そして医食同源の言葉のように、食品にはま だ未知の大きな力を秘めている部分がある。  先ほどちょっと例に出した東口先生なんかと話していますと、やはり特定の食品では ない、栄養というもののバランスをどうとらせていくかということで、まさに病気の治 療も促進するということがあるということであります。  特定の健康食品ではない。しかし、健康食品の有効性に関しては、十分な科学的根拠 がないままに広告などにより販売されている。  一方でもう一つ重要なことなんですが、食品という言葉に消費者は、どんなにとって も副作用はないと思い込んでいる人が多い。これはまたちょっと後で問題にします。広 告が信用できない、効果が怪しい、表記量が入っていない。吸収されないかもしれない。 医薬品が混入していることがある。医薬品との相互作用が、これはちょっと間違ってお ります。医薬品との相互作用がかなり未知であるという点であります。こういった問題 点が、一番大きくあると思います。  健康食品の安全性とかというところよりも、先ほどの梅垣先生の話の中にもありまし たが、むしろ品質というところの保証がどれくらいなされているかというところ、これ は非常に大きな問題になっていると思います。  結論的に申しますと、幾つかの数個の健康食品を除いては、普通の人が何となくとる というのには、余り目くじらを立てる必要もないかもしれないと思います。むしろ一番 いけないのは、医薬品が入っているような健康食品が世の中に出回ったりとか、もう一 つはまだまだ注意しないといけないところで、病院で薬をもらっている人が更に何かを とろうとするときに、影響があるかないか。ここら辺のところの情報伝達というのが、 一番国民の皆さんの健康に直接関与する重要なところであるだろうというふうに認識し ております。  消費者への情報提供において大切なこととして、もう一つは、消費者の理解力と心理、 これをちゃんと理解しておくということが重要でございます。  一般の方の化学物質に対する考え方をよく理解しないといけない。これからちょっと お見せしますが、今日来ておられる方は、化学物質とかそういうのはある程度、これか らちょっとお見せいたしますが、見られてもえっと思うようなものが、一般の方にはど れぐらいの知識であるかということを、本当によく理解しないとあれです。  全く量の概念がないというふうに考えていいと思います。入っていれば効果があると いうふうに勘違い。ですから、健康食品が売られるときに、先ほどの梅垣先生のあれに ありましたように、20種類も入れておくと、この効果もこの効果も全部あるだろうか というふうに思ってくれる。ですから入っていれば効果がある。それからたくさん摂取 すればするほど効果があると誤解する。そして食品だから副作用はないと考えている。 健康食品の場合は化学名で言われることで、何かとてつもなく効果があるように感じて いる。  もう一つは、消費者から受ける相談としては、先生、難しい話はいいから、効くの、 効かないのという質問が随分来るようであります。  情報を正しく伝えるために、一般人の化学物質に対する意識を知りたいと思います。 ちょっと変な問題でありますが、「次にあげる化学物質は栄養素、食品添加物、環境汚 染物質などです。これらのうちで、健康な人の体の中にもともとある物質はどれでしょ う。該当すると思われる物質名に丸をつけてください」。  これは回答はこうなっちゃうんですけれど、実際にある県が主催した食育シンポジウ ムです。ここには栄養士さんとかも随分来ておられたんですが、参加された一般の方に、 食育のところですが、アンケート調査をさせていただきました。有効回答を78得たん ですが、この問題は「難しすぎる」と答えた人が68人、「ある程度分かる」5人、 「良く知っている」1人、無回答が4人。これくらいだったんです。  この数に類した数は、実は消費者生活センターなんかでもやったんですけれども、僕 も消費者生活センターでよく呼ばれて頼まれたときにお願いして、逆にちょっとアンケ ート調査をやるんですけれど、最初に出した問題は難し過ぎて、ほとんどの方が難しい ということです。消費者生活センターの方も、先生、これはちょっと難し過ぎますよと 言われた。それでまた問題を変えたんですが、とりあえず回答は、例えばグリシンが体 の中にあるということを知っている人は12%ぐらいしかいなかった。それでもコラー ゲンになると20%ぐらい。こんな数字でありました。  今度はそういうことでまた別のところでこういう調査もやってみました。「遺伝子組 み換え大豆には遺伝子が入っているが、普通の大豆には入っていない」「普通の大豆に も遺伝子は入っているが、遺伝子組み換え大豆には普通の大豆の何十倍の遺伝子が入っ ている」「普通の大豆も遺伝子組み換え大豆も遺伝子の量はほとんど一緒である」。こ れは、もう本当に意外な数字でした。30名、26名、28名ということです。ですからや はり「この大豆は遺伝子組み換えではありません」というような表示が売れるという意 味が、非常にわかってくるわけです。これは実は西澤真理子さんというメディアのリテ ラシーの問題をやっておられる方が、一般消費者の遺伝子組み換え食品に対する意識調 査というのをやられて、やはり同じような数字を出しておられます。  一般市民の遺伝子の理解というのはこんなレベルですから、BSEだ、遺伝子組み換 え食品だと、ここら辺のところが農水省あたりも随分リスクコミュニケーションで苦労 しておられるんですが、まずはこういうレベルの人たちを対象にしているという意識か ら始めないといけないんじゃないかなと思っています。  遺伝子の回答された方への質問で、次にまたこういうのをやってみました。ビタミン はどうでしょうかというんで、これも本当に数少ない回答であります。  こういうような人たちには、例えば何かちょっと入っているということになると、ダ イエットにいいということですが、とにかく入っていれば何でも効果がある。これも僕 が協力した番組の取材のときの、ある健康食品が全く効果がないというよりは危ないん ですが、ダイエットにいいということとか。  それから今度は逆に入っていれば効果がある、量の概念がない人たちは、こういう反 応もします。例えばこれはカナダのレジャイナ大学が、いわゆる全世界の食品の安全性 について調査をして報告を出しています。そこで日本はOECD諸国の中で何番目に位 置するか。ここで見ていただきますとわかるように、2番目であります。ところが何か ちょっと事件があると、消費者は何を信じていいかわかりませんと、物すごく過剰に不 要な不安に陥ってくるというんです。  それから、ある市民講座の後の質問で、先生、グリシンには使用量の上限が決めてい ないそうですね。食品添加物なんて危ない限りですよと。化学物質を特定して、しかも その上、上限値まで問題にされている割に、どうも科学的でない話をされるので、その 人にどうしてそんなことを知ったんですかと聞いたら、こういう「ラーメンと餃子でが んに、おにぎりで成長障害に」というちゃんとした、れっきとした文献があるわけです。 これを読んでみますと、グリシンが怖いのは、使用基準量に決まりがないこと、品質保 持剤として古米は艶が出るし、肉の味が引き立つと多用されていますが、成長障害の弊 害を指摘する学者もいるというんですが、この論文をこの書いた方は、渡辺雄二さんと いう有名な方ですが、渡辺さんの引用されている論文を見ましたら、何があったかとい うと、確かにあるんです。ネズミの餌を毎日20%グリシンに置きかえて、半年間飼う と確かに成長障害が出ているんです。それで、この話をしてあげたんですが、要するに あなたの食事の5分の1ぐらいを全部グリシンにかえてやると、そういう効果が期待で きるんですよという話をした。それから、それ以上に、あなたの体の中にもグリシンが 入っているんですよと言ったら、えっそんな怖いものが入っているんですかというふう に、びっくりされたという、これが一般消費者の真実であります。  こういうことがあるんですが、そして健康食品は食品だから安全だと誤解をしており ます。これは先ほど梅垣先生もおっしゃったように、健康食品は医薬品とは違います。 健康食品はあくまでも食品です。健康食品は、食品という名前に隠れて、安全性が保証 されているような錯覚にとらわれているんです。  もう一つこういった問題を含めているところで、最後に、消費者が正しい情報を受け 取るシステムを構築しないといけないというのが、自分の使命として感じ始めたのは、 10年近く前でありますが、前任の大学にいるときに、あることがきっかけでそういう ことを感じ始めました。そしてどうしようかと思っている矢先に、厚生労働省から平成 13年に「保健機能食品の表示等について」において、アドバイザリースタッフという のをつくったらどうかという提言がなされて、それに基づいて翌年、これは先ほど松井 さんの方からも話がございましたが、「保健機能食品等に係るアドバイザリースタッフ の養成に関する基本的な考え方について」というのが提示されました。これに基づいて、 幾つかの団体ができております。そのうちの一つとして、我々は健康食品管理士認定協 会というのを立ち上げまして、健康食品管理士という人たちを製造しているといえば製 造しております。  そして、これに対して先般の、これも先ほどの松井さんの話にございましたが、いわ ゆる「アドバイザリースタッフの養成課程や活動のあり方に関し、一定の水準を確保で きるよう取組みを進める」ということで、これは梅垣先生を班長として僕も今一緒に協 力していますが、厚生労働省の科学研究費で調査研究をやっております。ここの有用活 動こそが、今ある健康食品の問題を、とりあえず最もうまく解決するための方法になり 得るのではないだろうかというふうに思っています。  といいますのは、梅垣先生のような知識を持った方が一般市民であれば、何もこうい う必要はなくなってくるわけです。ところが、今言いましたようにグリシンが自分の体 の中にあるかないかもわからない。そういう人たちが非常にたくさんいる中で、梅垣先 生のような知識をみんなに持ちなさいという、これは無理であります。  一方において、46通知を初めとして、薬事法の規制の中で、今ある食品に機能があ るとしてもその表示というのは、認められない状況にあるわけです。それを全部使って いけないかというと、先ほどの、それこそ梅垣先生のお話にもありましたように、適正 に使用されるならば、それはいい面がある。  要するに、使用方法というものが大事である。今、PL法に基づいて、入っているも のの機能の表示を全部すべきだというような意見も出てきておりますが、こういうこと をもしやった場合どうなるかというと、品質も何もわからない状況のところで、そうい うものが横行し始めると、これはまたむちゃくちゃなことになってしまうと思います。  ですから、表示における規制の問題をどう緩和するか。消費者庁にこれから考えてい ただく重要な問題だと思いますが、慎重にやっていただかないといけない部分がかなり あると思います。  その一方において、食品が持っている機能を上手に生かすというということは、大局 的な目では日本の医療費の削減につながっていくというふうに、僕は感じております。 ですから、その中間を埋める存在として、アドバイザリースタッフというものを有効利 用するというその可能性に関して、我々のやっている活動から、ちょっと紹介させてい ただきたいと思います。  まずは科学的に正しく判断し、疑問を持てるアドバイザリースタッフが健康食品を含 めた食情報の担い手となり市中に存在すれば、食を通しての市民の健康の担い手となり 得ると思っています。ガイドラインで要求されている事項は、先ほどの松井さんのお話 にもございましたので、飛ばしていただきまして、  大体アドバイザリースタッフは、今どういうことに向いているだろうかといいますと、 一つは健康食品の開発研究。健康食品に関する知見の収集。健康食品の販売健康食品に 関する各種コンサルタント、ニュートリーションサポートチームのメンバーとしてのチ ーム医療への参画。そして広くは食の安全・安心に関するリスクコミュニケーターとし ての活躍ということになるかと思います。具体的にはこういう健康食品産業における研 究開発、品質管理、販売等の地域産業への貢献ということがあると思います。  もう一つ、このアドバイザリースタッフというものの存在意義を、最近痛切に感じ始 めている我々の活動がございます。例えば昨年ちょうどNHKが取り上げてくれたんで すが、関市で定期的にやられているんですが、健康食品管理士が実際に2か月に1回や る市民との健康相談みたいなところへ出かけて行って話をする。これが実はもっと早く から大きくやられておりましたのが、沖縄に随分健康食品管理士がいますので、沖縄は 健康食品の県みたいなところでして、健康食品に非常に関心の高いところですが、それ で健康食品管理士が随分いるんですが、あそこでも一般市民に対しての啓発活動という のをやっております。そこで随分いろんな成果が上がり始めてきております。  実際これは先ほどの関市でやられているものですが、ちゃんと過剰摂取には注意して いただきたいと、こんなようなことを言って指導している。読売新聞が取り上げてくれ たんですが、こういう健康食品に関する情報に関しての問題。最近これは自分のところ でやっていることでありますが、鈴鹿医療科学大学で、実は2か月に1回ですが、「食 と健康を考えようという」市民公開講座をやっております。ちょうど先月末にやりまし たんですが、上はともかくとしまして、こういうのを完全にずっと定期的に設けていま す。健康食品管理士による相談コーナー。健康食品の使い方、薬との飲み合わせ、健康 に関する問題など、医療職の健康食品管理士。これは臨床検査技師、薬剤師、それから 管理栄養士等がほとんどでありますものですから、それぞれの立場から健康食品の問題 などの話ができるのと、ついでに例えば病院で先生、こんな検査を受けてこんな値が出 てこういうことに注意しろと言われたんですけれど、本当でしょうかとかというそうい う質問からいろいろありまして、実は鈴鹿ではごくわずかではありますが、一般市民の 方に健康食品管理士というのは頼りになるというふうに、やはり市中のそういう存在に なり得るということであります。  積極的に社会的に、存在を訴えていかないといけないということをやっています。今、 全国的にうちでは北海道、東北、関東、中部、ずっと各大きな支部がございまして、そ の支部で全国で年間40回ぐらいいろんな活動をやっております。それを通して結局市 民とそれからこういう情報を結ぶということが可能だということが、最近わかり始めて きました。  ですから、僕はこのアドバイザリースタッフを有効に使うということが、当面の健康 食品の混乱した状態に一番端的に交通整理をするための手段となり得るのではないだろ うかというふうに思っていいます。  アドバイザリースタッフに対しては、レジュメに書いてございますので、読んでおい ていただけたらと思います。ちょうど時間になってきているようであります。  健康食品で、僕は最後にやはり言いたいのですが、健康を考える前に食で最も大切な ことはバランスと安全であります。「食の過不足は病を創り均衡良き食は病と未病を癒 す」という、これは僕が自分の健康食品管理士という人たちにも、まずちゃんとした食 生活、そこにプラス健康食品をどうとるかという考え方。  いわゆる表示の規制のある社会の中で、どのように有効な食品を使わせるかというこ とができるのは、当然このアドバイザリースタッフの集団ではなかろうかというふうに 考えています。  どうも失礼いたしました。 ○司会 ありがとうございました。  それではここで10分程度の休憩を挟みまして、パネルディスカッションを及び意見 交換に移りたいと思います。再開は17時といたしますので、それまでには席にお戻り ください。 (休憩) ○司会 それでは、これより質疑応答及びパネルディスカッションを始めたいと思いま す。  まず、パネリストの御紹介をさせていただきます。皆様からごらんになって左から2 番目の方から順に、先ほど御講演いただきました独立行政法人国立健康・栄養研究所情 報センター長、梅垣敬三様です。  同じく先ほど御講演いただきました、鈴鹿医療科学大学教授長村洋一様です。  続きまして行政担当者として、厚生労働省食品安全部基準審査課新開発食品保健対策 室健康食品安全対策専門官の松井でございます。  同じく行政担当者として消費者庁食品表示課衛生調査官の芳賀でございます。  最後に、一番左が本日のコーディネーターを務めます、厚生労働省大臣官房参事官の 木村でございます。  意見交換の議事進行については、木村参事官にお願いします。 ○木村参事官 それでは以後の進行につきましては、私の方でさせていただきたいと思 います。  初めに意見交換の前に、実は皆様方の方から事前に御質問、御意見等をちょうだいし てございます。特にその中で御質問に当たるものにつきましては、私どもの方でどのよ うな御質問かということを御紹介させていただきまして、その後、各担当の方から御回 答させていただくという形にさせていただきたいと思います。  第1点目でございますけれども、会社員の方からの御質問でございます。先ほどのそ れぞれの講師の方の御説明の中に、一定の機能性を認める仕組みの研究を進めるとのこ とであるか、現在市場に出ている健康食品でも候補品の可能性があるのでしょうか。ま た、候補品の選抜はいつごろからどのような方法にて実施されるのかお教えくださいと いう趣旨の御質問を受けてございます。  これにつきましては、消費者庁さんの方からお答えいただけますでしょうか。 ○芳賀衛生専門官 先ほど御説明させていただいた内容でも一部触れていたところなん ですけれども、現在予算要求している事業に関しては、特定の食品で何かということよ りは、食品に含まれる成分に関してになりますので、成分の有効性に関して要求される 科学的根拠のレベルとか、それによって認められる機能性の表示の類型、などを国がど ういうふうに客観的に確認できる仕組みがあり得るか。またそういった評価に関して中 立的な外部機関の活用の可能性等も含めて、食品ではなく新たな成分に関しての保健の 機能の表示を認める可能性があるかどうかについての研究を引き続き進めるというよう な背景、課題がございますので、あくまでも何かすぐそれで制度化ということではなく て、制度の拡充に向けた研究はこれまでも検討がされてきたんですけれども、より積極 的に行うという意味で予算化しているモデル事業という位置付けになります。 ○木村参事官 はい。ありがとうございました。  次に2点目に参りたいと思います。次は、公益法人関係にお勤めの方だと思いますけ れども、厚生労働省の事業仕分けで栄養情報担当者の廃止、また消費者庁の表示検討会 においては、程度の低いサラリーマン資格などの不要といった意見がありました。これ はアドバイザリースタッフの認知度がないに等しいということにほかならないと思いま すが、行政として認知度向上への取組みとして、具体例があればお聞かせください。せ めて全国の保健所等へのポスター掲示ぐらいできないものでしょうかといった御質問で ございますけれども、これについては厚労省の方からよろしくお願いします。 ○松井専門官 まず、NRの廃止という話ですが、これは決してNRを廃止せよという ことではなくて、NRの協会の運営に国立健康・栄養研究所の方がかんでいるのですが、 こちらが独立行政法人とはいえ、国の関係機関がそういった民間でできる事業というも のを行っているのはいかがかという趣旨で、仕分けの対象となったというように聞いて おりますので、NR自体が廃止されるものではないというように認識しております。  消費者庁の表示検討会の中で、程度の低いセールスマン資格なのではないかという指 摘が出たのも承知しております。  先ほどの私のお話の中で、ちょっと説明させていただいたのですが、平成14年に通 知を発出させていただいた後、20ほどの認証団体があるのですが、私どもからガイド ラインで示させていただいたものにのっとっているのは、大体4団体ぐらいだと考えて います。ですから、現在、厚生労働省の方で21、22、23年度の3か年にわたりまして アドバイザリースタッフの調査、カリキュラムとかそういったものの分析も行っており ます。  その結果が出た段階で、アドバイザリースタッフは、再度こうあるべきであるという ことで御説明できればというふうに思っておりますので、厚生労働科学研究の結果に従 って、再度認知度の向上というものに努めていくように考えたいと思っておりますので、 どうぞよろしくお願いいたします。 ○木村参事官 ありがとうございました。  次は3点目でございます。次は、大学関係者の方からだと思います。  伝来健康食品の表示に関する検討会での論点整理の中で、健康食品の虚偽誇大な表示 や広告における具体例を明らかにするため、ガイドラインを作成する予定となっている ところですが、一般消費者にもわかりやすいガイドラインの作成をお願いいたしますと。  また、消費者庁と薬事法所管の厚生労働省の連携は強化してほしいと思いますが、い かがでしょうかというものでございます。これは消費者庁さんの方からよろしくお願い します。 ○芳賀衛生調査官 こちらの内容につきましては、過日終了しました、本日御説明申し 上げた健康食品の表示に関する検討会での論点整理の中でも、明確に提案されていると ころでございますので、できるだけわかりやすいガイドラインを目指しております。  ただ、法令違反を問えるかという範囲に関してですとか、表示や広告というのは、い ろんな要素を含んでいますので、そういった難しさの中でより効果的な執行の実現に向 けて努力しているところでございます。いろいろな場面を通して具体事例、それから御 意見等をいただきながら、作業を進めたいと思っております。  薬事法所管の厚生労働省との連携については、これまで以上に強化する方針で動いて おりますので、こちらも引き続き、努力してまいりたいと思います。 ○木村参事官 ありがとうございました。  事前に伺った質問につきましては、以上でございます。これから先は改めて紙等でこ ちらに出されていない方でも結構でございますので、会場の皆様方からもし先ほど来、 講師の方々がお話になったことについてでも結構でございます。改めて何か質問したい ことがございましたら、どうか挙手していただければと思います。挙手の場合は、でき ればお名前と所属と言っていただければ幸いでございますが、いかがでございますでし ょうか。どなたかおられますか。 ○質問者A ●●のAと申します。栄養学を教えているものです。  芳賀先生にちょっとお伺いしたいのですが、細かい話でちょっと恐縮なんですけれど も、規格基準型の特定保健用食品をもう少し何とかという話が出たと思うんですが、規 格基準型が最初に出たときは、たしかおなかの調子だけだったと思うんですが、最近気 づいたんですけれども、デキストリンの血糖値が新たに加わっていたと思います。この 経緯というのは、どういう流れですか。  それと、これはある要件を満たせば、定期的に増やしていくということだと思うんで すが、そうすると例えばイワシのペプチドあたりそろそろ来るのかなと勝手に読んでい るんですけれども、その辺は定期的にやられて、定期的に公表されるということなんで しょうか。 ○芳賀衛生調査官 非常に細かいところをお気づきいただいて、ありがとうございます。 先ほど説明不足なところもあったと思うんですけれども。  これまでの特保の先発品というのは、おなかの調子に関するものが非常に多うござい まして、それらに関しての許可実績をもとに規格基準というのが制度の途中からできて きました。糖に関しても、血糖に関しても難デキ系のものが非常に許可件数が多うござ います。ある程度の数、これまでですと厚労科研の報告書で言われている中では、100 件というのが一応目安にはなっています。ただ、こういったことを決めるときに、どう いった成分も自動的に、100件を越えたらいいのかという単純な話には、多分ならない と思うんです。その機能性の特徴ですとか、例えば医薬品的効果に一緒に乗っかるよう なタイプのものですとか、そういう作用機序のものは、もう少し慎重に見る必要がある かもしれません。  そういったことも含めて、今後、機能性表示の拡大に関しては、消費者庁として検討 を進めていく方向にあるというのが現状だと思います。 ○質問者A ありがとうございました。 ○木村参事官 よろしいですか。その他ほかにございますか。 ○質問者B 食品保健指導士をさせていただいておりますBと申します。  長村先生にお聞きしたいんですけれども、よくユーザーの方からサプリメントを飲む に当たって、薬を飲んでいるので主治医に相談した方がいいでしょうかというふうに言 われます。そういうときには立場としてはどういうふうな感じでお答えしたらよろしい のでしょうか。 ○長村教授 医療機関にかかっている人の場合は、医師の指示というのが非常に重要だ と思いますので、明らかに例えば相互作用がないと思われるようなものとか、病状が判 断できるものであればいいんですが、そうでない場合には、一応相談された方がいいと いうふうにおっしゃる必要があると思うんです。  ただ、問題は医師の中に、申し訳ないんですが、そういう分野の理解の不足しておら れる方がおられます。例えばうちの会員から入ってきた情報ですと、グルコサミンを飲 んで非常に膝の調子がよかった。よかったんだけれど、風邪をひいたときに、たまたま その医師から何か健康食品をとっているのと言われたので、グルコサミンを飲んでいま すと言ったら、そんなもの飲んだって効くはずがないと。僕がいい薬を出してあげるか らといってそれがロキソニンという鎮痛剤なんです。それを出されて、飲み始めたら、 今度胃の調子が悪くなった。そうしたら今度胃の薬を出されてというそこで、いわゆる うちのメンバーの薬剤師が店頭で相談を受けた。  先生、昔みたいに、グルコサミンを飲んだら、医者はそんなもの効くはずがないと言 ったんだけれど、私は非常に効いていたと思うと言われるんです。そういうようなとこ ろでグルコサミンを飲んでおられただけでは胃の障害も何も起っていなかったみたいな ものですから、そういう方になるとちょっと問題かなという、これは医師サイドの問題 が結構あるかなと思います。 ○質問者B 御本人も相談したら多分にやめた方がいいといわれるから言わなくていい よねというんです。そういうケースが多いです。○長村教授 結構それに抵抗して飲ん でおられる方がおられるみたいですが、ただやはり危険なのは、病気の治療とかそこら 辺の目的に対して使っておられるものに対しては十分注意されないといけないと思いま す。  ただ、僕もつい先週ですが、それこそ日本のVIPといわれる方たちを対象にして、 健康食品の話をしてくれと頼まれてしたときに、ある有名な偉い方なんですが、私は青 汁を飲んでいるんですよ。それで物すごく調子がいいんですよと言われて、何も効くは ずがないと言われたけれどもいつも飲んでいます。いいですよねと言われたので、聞き ましたら血圧の薬を飲んでおられるだけだという話だったものですから、効くんなら、 たくさん飲まなければそれぐらいはいいんじゃないんですかというのが、僕は基本的な 姿勢でいるんです。  梅垣先生、どうですか。 ○梅垣情報センター長 人によって違うんです。いいという人もいますけれども、逆に 言わなかったから健康被害を受けたという人も恐らくいるはずです。ですから、安易に 使うのは問題です。何を目的に使っているのかというのが一番重要なんです。  健康食品は薬ではありませんから、栄養補給とかそういう意味で使うのだったら、こ れは問題ないし、栄養補給だったら特定の成分の摂取量は少なくていいんです。病気の 治療とか治癒の目的で使うんだったら、とても健康食品では対応できない。それはちゃ んとした医薬品を使わないといけない。  重要なのは、病気の状態というのは患者さんによって違うんです。一概にこの人にい いとか悪いとかは言えない。その状況を知っているのはやはり主治医の人なんです。主 治医の人はちゃんとした薬を用いた治療をしようとして配慮してやられているわけです。 それに黙って健康食品を使うというのは、医者を信用していないということで、僕はそ っちの方が問題だと思います。  やはりちゃんと情報を伝えて、うまくコミュニケーションをとるというのが重要で、 その手助けをするのが、サプリメントアドバイザリースタッフになるのではないかと私 は思っています。 ○木村参事官 ありがとうございました。 ○質問者C ●●のCと申します。今、健康・栄養研究所がやっておられる、 Nutritional Representative 栄養指導者の講習のお手伝いをさせていただいておりま す。長村先生も強調させされておられたんですが、せっかく消費者に対して直接身近で 相談できたりアドバイスができる、例えば栄養指導者として数千人の方のかなりの勉強 もして資格を取られているのに、私が聞いたのでは、身近でそういう方を紹介してくれ ないかと言ったら、個人情報保護法のために紹介できないと言われてしまったというこ となんです。  もしかしてNutritional Representative の多くの方は、会社に所属されているかも しれないので、そういったところに行きたくないという方もおられるかもしれないんで すけれど、中には、出ていって指導していいよという方もおられると思うので、やはり そういった方を活用する。せっかく育てた方を活用するということを考えて、私は名前 を出して、勿論いつでも相談に応じられるというふうなことを、登録するとか何かそう いった仕組みができないのか。  特に食育基本法ができてから、食育の場で栄養士さんがいろんな質問を受けて困って、 安全については十分に知らない場合が多いで困っているというようなときに助けになる 場合もあると思います。それは食育は主に農水サイドでやっていることだと思うんです けれど、やはり安全の問題というのは、食品や健康と必ず関わってきますので、そうい ったところにも、NRの方を派遣していただくとかいろんな活用を考えて、せっかく育 てた方が身近で地域の消費者の方や市民の方の御質問に答えられるように、是非工夫し ていただきたいと思います。  それから、仕分けで民間移譲にというのはちょっと、私も解せないんですけれども、 国民生活センターとかそういう健康食品についてアドバイスする方というのは、本当は 中立の方、企業サイドだと言いにくい、あるいはどうしても偏って言ってしまうという 方がおられると思いますので、やはり何とかそういった方を中立で守っていっていただ ける独法でもよろしいですけれども、是非頑張っていただきたいと思います。そういっ た要望とお願いです。 ○木村参事官 今の件に関しまして、長村先生、何か感想ございますか。 ○長村教授 栄養情報担当者の方がどうなられるだろうかというその問題も含めて、我 々としては、先ほど松井さんもおっしゃったんですが、一応、梅垣先生が班長でやって います科学研究費で去年の調査の結果、4つの団体は認定というところで、それなりに 教育もしっかりしているというところですが、認定された後、梅垣先生がアンケート調 査をやられたんですが、資格が生かせていないという不満といいますか、そういう感じ を持っておられる方が非常におられます。  それに対して、活動を始めた人たちは、非常に生きがいを感じているというのも事実 です。これは僕の場合は自分が養成している健康食品管理士というあれになりますが、 やはり病院とかそれからうちは臨床検査の資格を持っていて取っている人が非常に多い ものですから、最初の検査の情報のところで接触する人たちとの話で出てくるケースが 非常に多いんです。  病院の中で健康食品相談コーナーというのを月に1回か設けるようになったら、病院 の中で検査部からどこか事務のところへ行こうとすると、もうその間に患者さんにつか まってしまって行けないくらいだと言っている、そういうあれまで出てくるんです。  僕の感じとしては、一般消費者というのは、やはり何かこれがいいんだよとか悪いん だとか、こんなことをしてはいけないというそういう情報を得たいという、非常に情報 に飢えていると思います。ですからそこのところへ一方的なものではなくて、コミュニ ケーションがとれる形でだれかが介在するという、その介在する人たちを養成している というのが、自分がやっていることの一つだというふうに思っております。 ○木村参事官 ありがとうございました。そろそろ時間になりましたので、もうたくさ んできないのであとお一人だけということでございますので、そちらの方、ひとつよろ しくお願いたします。 ○質問者D ●●というNPOを主催しているDと申します。  先ほどの方のお話しを受けてなんですけれども、実際に医療機関にあるいはドクター に相談に行かれる方は非常に多いように思います。ただ、大体どなたもおっしゃること は、ドクターに聞いてもそんなのはわからない、やめてしまえというだけで、相談した 意味がないと。  逆に私はこの前150人のドクターの方にアンケート調査を行いました。そうすると一 番何に困っているかというと、患者さんからサプリメントのことを聞かれて、答えよう がなくて困っているという話を皆さんから聞きました。  医療従事者は、特にドクター、医者が患者さんからの問いに答えられなくて困ってい る。これは問題だと思うんです。生活者に直接伝えて、医療生活者、一般生活者の知識 リテラシーを上げる。これは非常に大事なことなんですけれども、ある程度いくとやは りドクターのところに行くわけです。そのときにドクターがしかるべきアドバイスがで きないというのは、これもちょっと由々しきことかなと思っています。  ドクターたちに教育をしていく。医学大学の中でそうしたことをカリキュラムに入れ ていくということが必要なのではないかという気がするんです。  またもう一歩進んで言うと、例えばアミノ酸はどういう成分として機能があると。そ うした成分ベースでの情報にとどまってしまうと、結局患者さんに1000円のものなの か、1万円のものなのか、製品情報として全くなければ、コンビニに売っているものを 買いなさいということになってしまうかと思うんです。  最終製品について梅垣先生もおっしゃっていたように、物すごい違いがあるというこ とで、例えばジャファのような日健栄協が行っている最終製品ごとのチェックというも のがきちんとドクターのところに何か情報として行っていないといけないのではないか。  特に大学病院の先生なら、まだそうした情報が入手できるかもしれませんが、問題に なっているのは、一般の市井にあるクリニックの先生方。時に自由診療を最近なさって いる先生方もたくさんいて、そういうところに問題がいったときに、一般の市井のクリ ニックの先生方が、何も情報を持っていない。なおかつ学ぶ機会がない。  そうすると間違ったことを伝える。あるいは自分のクリックのオリジナルのサプリメ ントをつくって、それを法外な値段で患者に売っているというようなことも現状として たくさんあります。でも患者さんはドクターが言うんだから、それが5万円であっても 10万円であっても買わざるを得ないような状況になって相談に行くと、逆に物すごい 高額なものを買わされているという現状がある中で、ドクターへの何か情報提供等教育 というか、そういうことについては、今後どのようにお考えでしょうか。 ○松井専門官 まず、医師への情報提供ということに関しては、お医者さんが健康食品 に対する知識がないというと失礼に当たってしまうのですが、健康食品としての理解が 非常に低いというか狭いというのか、そういう現状があって、まず手始めにとつくった ものです。これは医師会さんでもそういうお考えをされている先生もいらっしゃって、 まず簡単なものから入りましょうということで、こういったパンフレットをつくりまし た。  このパンフレットの11ページにあるのですが、日本医師会の取組みということで始 まっています。医師会さんも診療現場への情報提供が必要だろうということで、まずデ ータベースをつくっていらっしゃいます。このデータベースに健康被害が発生した場合 に書き込んで、こういった健康食品は健康被害が発生しますというような情報、臨床情 報ですので、因果関係がどうかというのはともかくして、そういった情報を共有しまし ょうという話をしているのと。  あとこれは特定の企業になってしまうので、私が発言するのも何なのですが、ここの パンフレットに書いてあるのであれなんですが、日本医師会さんがここにちょっと出て いますね。ナショナル・メディスン・データベースというアメリカとか欧米でよく使わ れる健康食品のデータベースです。こちらの日本語版を会員専用のホームページがある のですけれども、医師会の会員であればアクセスできるような形にしてあって、健康食 品のデータベースにアクセスできるようになっています。そのことを周知しようという ことも含めて、こういったパンフレットをつくらせていただいた。この中にも一部健康 被害の情報なんかも書いております。  実はシステムが本格的に稼働するのが、今年度からなのです。ナショナル・メディス ンのデータベースが動き出したのが去年ですので、やはりちょっとまだ先生方の中にも、 そういった情報、データベースが医師であれば使えるという情報が伝わっていないのか なというところもありますので、その点に関しては医師会と協力して、私どもの方で情 報提供を積極的に進めていきたいというふうに考えております。 ○木村参事官 ありがとうございました。よろしいですか。  まだまだ議論を皆様方とさせていただきたいところなのですけれども、あいにく予定 の時間を超えてしまいました。これにつきましては、ここらあたりで終わらせていただ きまして、司会の方にマイクを返させていただきたいと思います。 ○司会 以上をもちまして、本日の食品のリスクコミュニケーション「健康食品と上手 くつきあう方法」を閉会いたします。  今回のリスクコミュニケーションが、皆様の消費者へのアドバイスの際の参考になる ことを期待して、閉会の言葉にかえさせていただきます。  本日はさまざまな御質問、御意見をいただきまして、また、本会の円滑な運営に御協 力いただきまして、ありがとうございました。 ○木村参事官 ありがとうございました。今後とも何とぞよろしくお願い申し上げます。    照会先:食品安全部企画情報課                           03-5253-1111(内2493,2452)