10/01/28 平成22年1月28日(東京都港区)食品に関するリスクコミュニケーション〜輸入食品の安全性確保に関する意見交換会〜            食品に関するリスクコミュニケーション          −輸入食品の安全性確保に関する意見交換会−       日時:平成22年1月28日(木)13:30〜16:00  場所:三田共用会議所 講堂(東京都港区三田2−1−8) ○司会 皆様、お待たせいたしました。ただいまから「食品に関するリスクコミュニケ ーション〜輸入食品の安全性確保に関する意見交換会〜」を開催いたします。  本日は、お忙しい中、御参加いただきましてどうもありがとうございます。私は、本 日の司会役を務めさせていただきます厚生労働省医薬食品局食品安全部の北村と申しま す。どうぞよろしくお願いいたします。  厚生労働省では、毎年度、輸入食品監視指導計画を定めまして、重点的、効率的かつ 効果的な監視指導に取組んでいるところでございます。本日の意見交換会は、輸入食品 の安全性確保に関する情報提供、各関係者からの講演、パネルディスカッション、意見 交換を通じまして輸入食品の安全性確保についての理解を深めていただきまして、関係 者の間での認識を共有していただければと考えてございます。  なお、平成22年度輸入食品監視指導計画(案)につきましては、現在、パブリック コメントを募集しております。本日の意見交換会を、御意見、情報をお寄せいただく際 の参考としていただければ幸いでございます。  まず最初に、配付資料の確認をお願いいたします。  受付の方で封筒をお渡ししておりますけれども、その中に次第がございます。  その下の方に配付資料と書いてありますけれども、まず資料1−1「平成22年度輸 入食品監視指導計画(案)の概要」です。  資料1−2が「平成22年度輸入食品監視指導計画(案)」の本文になってございます。  資料1−3が厚生労働省のパワーポイントの資料で、「輸入食品の安全性確保につい て」です。  資料2が全国消費者団体連絡会さんの資料で、「輸入食品の安全性確保についての私た ちの取り組み」となっています。  資料3が株式会社イトーヨーカ堂さんの資料になります。  資料4が株式会社ニチレイフーズさんの「輸入食品の安全性確保のための取組につい て」。  最後の資料5が日経BPクリエーティブさんの「報道の立場から見た輸入食品の安全 性についての問題」となっております。  そのほか、「食品の安全確保に関する取組」というパンフレットを同封させていただい ております。  また、今後の参考にしていただくためにアンケート用紙を同封してございますので、 御協力の方をよろしくお願いいたします。  資料の不足等はございませんでしょうか。途中でもお気付きになりましたら、担当の 者にお声をかけていただくようによろしくお願いいたします。  続きまして、簡単に本日の進行について御紹介いたします。また、次第の方をご覧く ださい。  まず最初に、「輸入食品の安全性確保について」、厚生労働省食品安全部の道野室長か ら説明いたします。  続きまして、全国消費者団体連絡会の阿南様、株式会社イトーヨーカ堂の伊藤様、株 式会社ニチレイフーズの片山様から、それぞれ輸入食品の安全性確保のための取組みに ついて御講演いただきます。  次に、日経BPクリエーティブの中野様より、「報道の立場から見た輸入食品の安全性 についての問題」の御講演をいただきます。  講演終了後、10分程度の休憩をとらせていただきまして、3時をめどにパネルディス カッション、意見交換を行いまして、午後4時の終了を予定してございます。御協力の 方をよろしくお願いいたします。  それでは、厚生労働省食品安全部監視安全課輸入食品安全対策室の道野室長から、「輸 入食品の安全性確保について」御説明いたします。それでは、道野室長、よろしくお願 いいたします。 ○道野室長 皆さん、こんにちは。厚生労働省の輸入食品安全対策室の道野と申します。 よろしくお願いいたします。それでは、今、司会からも御説明したとおり、「輸入食品の 安全性確保について」、私の方から御説明いたします。  平成22年度の輸入食品監視指導計画につきましては、これは毎年、食品衛生法に基 づいて年度ごとに作成することが規定されていまして、勿論、都道府県とか地方自治体 単位でも毎年作成していわけですけれども、輸入食品の検査とか安全対策については国 の役割分担ということになっていますので、輸入食品の監視部分については私どもの方 で策定しております。  22年度の輸入食品監視指導計画(案)の内容については、前年度のものとそんなに大 きく変わるものではございません。主な変更部分については、私の説明の中で触れさせ ていただきます。そういうことで、今年のこの会につきましては、できるだけ関係者の 方にたくさん来ていただいて、いろいろな角度から議論していただいた上で、この計画 (案)に御意見のある方は、そういった議論を参考にして意見を提出していただければ ということで、今回は私の説明は非常に短くて20分ですけれども、できるだけ要領よ く、変更部分についてはきちんとお伝えしたいと考えていますので、よろしくお願いい たします。  最初、国の輸入食品の安全対策について、どういう考え方でやっているかということ で、これは毎年御説明しているところではあるのですけれども、3つの段階に分けて考 えているわけです。1つは、輸出国の段階での安全対策、それから輸入時の安全対策、 それから国内。国内に関しては、先ほど触れましたけれども、地方自治体がそれぞれ地 方分権ということで検査していくとしております。ここについては、今日は説明からは 省かせていただきます。  輸入時の検査に関しては、検査率が低いとか食品衛生監視員の人数が少ないとか、い ろいろ議論されているところではあるわけです。勿論、私どもとしては毎年強化してき ているのですが、輸入時の検査というのはやはり限界があります。それは、それそも食 品の安全性を検査だけでチェックするというのは非常に難しい、限界があるわけです。 そういった観点からも、生産とか製造とか加工の段階での安全対策を輸出国でしっかり 対処してくることが、どうしても重要になってくるわけです。  私どもの取組みとしては、輸出国政府との協議とか必要に応じた現地調査ということ で、勿論一義的には輸出国にしっかりやってもらわなければいけないわけですけれども、 私どもの方もこういった形で働きかけをやったり、検証をやったりしていくというのが 全体の構図になっているわけです。  輸出国における衛生対策の推進ということで、日本の基準なり、日本で実際今、輸入 食品で問題になっていることがどういうことなのか。それから、輸入時の検査が強化さ れている問題食品とはどういうものなのかということについて、的確に輸出国サイドに 伝えていくことが1つあります。そういう情報発信というのが1つございます。  もう一つは、二国間での協力関係をしっかり持っていって、我々も輸出国に出かけて いって協議や現地調査をやっていくということがあるわけです。  これまでの流れとしては、3つ書いてありますけれども、これは平成21年度の動き です。1つは、米国との間で、農薬規制に関して原則的な制度の仕組みというのは非常 に似ている。それから、運用もかなり似ているということがあるので、アメリカと日本 の農薬規制の同等性というところから考えて、検査の強化に関しては、要するに違反が 出た場合に、特定のシッパーに限定して検査強化していくということを米国側と確認し ております。ただし、これに関しては、アメリカの基準が日本の基準よりも緩い食品に ついては対象外になっていて、日本の基準と同じであるとか、日本の基準よりもアメリ カの方が厳しい基準のケースでは、日本国内の検査と同様の対応をしましょうという約 束事を決めております。  2番目ですけれども、これは昨年10月の日中首脳会談で、日中食品安全推進イニシ アチブの早期締結に向けた協議を始めましょうということで、現在、日中間で協議中で す。勿論、ギョーザ問題について、刑事的な事件ということではありますけれども、中 国側で早期解決してほしいということについては、総理から申し入れした上で、それは それとして、食品全般の安全対策というものもきちんと話し合っていきましょうという 枠組みをつくるということであります。  あと、昨年11月に日中韓保健大臣会合で、中国のみならず、韓国からも日本はたくさ ん輸入していますし、一方、韓国も中国からたくさん食品を輸入しているという関係が ございます。そういうことで、この三国間でいろいろな食品安全問題が発生したときの 情報共有ということをやっていきましょうということと、そういう協議の仕組みに関す る覚書に署名をしています。  更に、輸出国の衛生対策に関する情報収集とか現地の調査の実施ということもやって います。これには2つのカテゴリーがあって、実際に問題がある場合と、それから問題 発生する前の段階であっても、輸出国の情報というものをしっかり収集してくるという 意味で、2つの種類でやっています。  もう一つは、国がやるといっても、当然限界もありますし、なかなかすべての問題に 対応するということは無理なわけですので、食品の輸入者たる事業者の方が一義的な責 任を持ってやっていただくということで、私どもとしても「輸入加工食品の自主管理に 関する指針」というものを策定しまして、皆さんに実行していただきたいということで 行政指導をさせていただいているという内容です。  平成22年度におきましては、これは輸入前に輸入予定の食品を実際に日本で検査し て、そうした検査成績書の登録制度をつくることによって、輸入する食品の事前の安全 確認を進めていこうということで、登録制度をスタートさせています。  これは、過去1年間の輸出国での調査とか協議の実績ということでありまして、食肉 から農薬関係、いろいろカテゴリーはあるのですけれども、こういった問題、今日来て いらっしゃるのは事業者の方が多いと思いますけれども、それぞれ関係のあるものもあ るかもしれませんが、私どもとしても取組んできています。  中国に関しては、年に1回必ず行くようにしていまして、中国側と個別問題について も議論しています。さきの協議の枠組み等、大枠の内容についての協議ということです けれども、個別問題についても中国側ときちっと協議していくということで対処してき ているところです。  輸出国での安全対策ということで、強く言われ出した一つの契機というのは、米国産 の牛肉の問題であったり、中国産の冷凍ホウレンソウの問題であったりするわけです。 これは一つの例示ということですけれども、米国産牛肉の対日輸出の体制といいますか、 対日輸出プログラムというものをつくって、対日輸出基準を遵守しようということの仕 組みであります。対日輸出基準は、このような基準になっているわけですけれども、こ れはどちらも農務省ですが、1つは食品安全検査局、日本の厚生労働省と都道府県の食 肉検査所をつけたような機関です。こちらのAMSという機関は、対日輸出施設の認定 機関です。特にアメリカの国内基準に、更に上乗せをして日本向けの基準を満たすとい うことをやっているものですから、その上乗せ部分についての認定というのをここの機 関がやっているわけです。  後は流れですけれども、対日輸出基準自体は20か月齢以下となっていますので、月 齢確認牛のロットを搬入するときに確実にチェックする。勿論、たくさんのロットの牛 が搬入されるわけですから、それぞれについて勿論チェックしていくわけですけれども、 どれが対日輸出向けロットで20か月齢以下の証明が付いているものかということも、 こういう中で確認されていくわけです。  それから、アメリカでは、食用に牛を処理するときにBSE検査を日本みたいにやっ ていませんから、歩行困難牛とか歩様に異常のある牛というのは、リスクが高いという ことで食用の処理から外されるわけです。これは例です。中に入って検査するケースも あります。一応、どこにそういった歩き方がおかしい牛がいるかいないかということを 農務省の検査官が確認するわけです。  同じ北米でも、カナダの場合には、こういった無線タグを使っていて、個体識別の仕 組みができています。勿論、日本みたいに食肉処理された後まで個体がわかるという仕 組みではありませんけれども、その手前までは日本と同様の仕組みです。ただ、日本の 場合には生まれたときに登録しますけれども、諸外国、この間、私、オーストラリアに も行ってきたんですけれども、基本的には生まれた農場を出るときに登録するという仕 組みになっていて、牛の移動を確実にチェックするというのが、もともとの諸外国での 個体識別制度の、一義的な目的だったということであります。  これは、牛が解体されるプロセスの中で、勿論、除去された頭部についての検査もや りますし、危険部位である扁桃の除去もやられていくわけです。同一の牛に由来するも のについては、合札を使って個体の同一性というものを確認、チェックしていくわけで す。  これは、脊髄の吸引器。アメリカは、1日に1,000頭以上、多いところで5,000頭ぐ らい処理する。日本の1日の全国の処理頭数が4,000頭ぐらいですから、1つの施設で それぐらいやってしまうという規模ですので、こういう機械での除去がごく普通にやら れているわけです。  処理された後の枝肉に関しても、こういうタグを付けて追跡ができるようにしていま す。日本向けのものということもわかるようにするわけです。こうやって日本向けのも のを集めて保管して確保していくことをやっています。  表示で日本向けのものを区別するというやり方もありますし、バーコードだけで確認 しているところもあります。  こちらはホウレンソウの例ですけれども、平成14年に問題になって中国側で取組み が進んだこともあって、ホウレンソウほど、すべての野菜がやっているかというと、そ こまで行かないにしても、こういった冷凍ホウレンソウの問題で、中国側の農薬管理に ついてはかなり進歩があったと思います。ホウレンソウの場合は、もともとマーケット で買ってきたり、農薬のコントロールが十分でない農家から買い付けてきたりというこ とが最大の問題だったわけですので、農家の管理、使用農薬とか使用方法についても、 かなり厳密に管理させるようにして、契約農家とか自社の農場で収穫したものを原料に していくという体制をとっています。  勿論、加工段階等々で検査もやりながら管理していく。これは、実際に問題が発生し たときにトレースバックができるようにという対処もしています。  これは、去年3月に江蘇省で大葉の栽培についての調査をしたものですけれども、日 本のスーパーで売られているような形態に、この段階で包装されていきます。こういう 形で、農薬の種類とか使用方法について、中国語なので説明は簡略にしますけれども、 細かく使用管理ができるように情報をきちんと提示しているということです。  これは、農薬の使用管理を農家に指導する人だそうです。  これは、農薬の使用記録。  これは、計量です。  私、3つの段階で安全対策を講じると言いましたけれども、これは輸入時です。輸入 時に関しては、おおむね変化はありませんけれども、見ていただくと、基本的には通常 輸入されるものについて、ランダムチェックのモニタリング検査。それから、問題があ ったときにはそれを強化していく。更に、違反の可能性が高いものについては、検査命 令ということで全ロット検査を輸入業者の方の負担でやっていただく。発動例はないで すけれども、検査でもコントロールできないということになれば、輸入禁止というプロ セスになるわけです。  重点的な監視事項ということで、書類でのチェックといいますか、情報チェックとい うのは勿論100%しています。それから、先ほど申し上げたようなモニタリング検査の 実施、検査命令の実施を確実にやっていくということです。  今年度の改正点としては、モニタリングの計画数を1,600件増加する。それから、検 査項目を拡充していくということです。それから、強化だけではなくて、解除のプロセ スも、モニタリング検査強化後、1年間経過したもの、または60件以上検査して、検 査結果に違反が見られないものについては検査強化を解除していくというルール化も、 ポジティブリストがスタートして3年ということで、いろいろなデータが蓄積できてき ましたので、こういった緩和のルールについても整理していくことにしています。  以上で私の方で用意した資料については終わりですけれども、あと参考ということで、 指導検査、モニタリング検査のカテゴリーなどの詳しい話であるとか、モニタリング検 査件数の算出方法、これも詳しい情報ではあるのですけれども、私どものホームページ にも掲載しているものもございますので、今日は多分お配りしていないと思いますけれ ども、参考までに厚生労働省のホームページで当たっていただければと思います。では、 私の方からの説明は以上で終わらせていただきます。 ○司会 どうもありがとうございました。  続きまして、全国消費者団体連絡会事務局長の阿南様より、「輸入食品の安全性確保に ついての私たちの取り組み」につきまして御講演いただきます。どうぞよろしくお願い いたします。 ○阿南 皆様、こんにちは。全国消団連の阿南と申します。どうぞよろしくお願いいた します。  私ども、全国消費者団体連絡会ですが、今43の全国で活動されています消費者団体 をつないでいる組織でございます。43の各団体は、各地域で消費者問題や食の安全の問 題を取り上げて地道な活動を続けていますが、そこをつないでいる組織が私たちの組織 です。  私たち連絡会自身も独自の取組みを行っております。次にまとめてみました。  まず、今年度の取組みですが、何よりも消費者庁を創設する、そして立ち上げをサポ ートするというのが私たちの最大のテーマで、そこに全力注入してきました。そして消 費庁は9月1日にスタートしましたが、食品安全行政の部分も非常に強化されていると いうことについては、皆様、既に御存じのことと思います。  そのほかに学習会もやっております。世界的な水産資源の状況の学習ですとか、最近 ですとエコナ食用油が問題になりましたので、それについて正確な事実を知ろう、本当 のところどうなんだということを知ろうと、花王さんなどに来ていただいて、学習会を 2回ほど連続して開催してきております。  また、見学会などにも取組んでいますが、HACCPについて消費者として考えてみ ましょうということで、HACCPを導入されている明治乳業さんとかキューピーさん の工場に見学に行かせていただいています。  ほか、講演ですとか、パネリスト参加という形で、企業の皆さんとも情報交換などを させていただいているところです。  意見提出もしております。「原料原産地表示の中間報告」についてのパブリックコメン トや、クローン家畜の問題、エコナ、新型インフルエンザについて要請書を出したりし てきました。  その他で挙げましたが、昨年8月に日本冷凍食品協会さんが主催されました中国の食 品工場の視察ツアーというものに参加させていただき、学んだことをみんなに知らせて いくという取組みもしております。それについて、ちょっと詳しく報告したいと思いま す。  中国から輸出されます食品の検査体制、現地では実際どうなっているかということに ついて、大変多くのことを学んでまいりました。訪問したのは、山東省の畑とか食品工 場、検験検疫局で、国家の検疫局にも行き、局長さんのお話などを聞いてきました。  山東省では、省全体が日本への輸出基地という位置付けで大変な取組みをされていて、 副知事さんともお話をさせていただきました。日本の消費者に安全な材料、野菜や加工 食品を届けるために、取組みを強化しているというお話でした。  右側の上にあります写真は、検疫局の内部にあります一つの会議室ですけれども、こ れは検疫官が常駐しています各地の食品工場などのモニターが、ここで一斉に見られる 仕組みになっています。畑の様子も見ることができます。勿論、各工場には監視カメラ が付けられていて、それをここで見ることができるということです。検疫局の検疫官は、 輸出向けの大きな工場などに配置されていたり、畑を巡回したりということもしていま した。  下が、検疫局の検査センターです。中国で食品安全法が制定されたという関係もある と思うのですが、検査に対する力の入れ方は猛烈なものがあると感じました。輸入され た検査機器がまだ梱包されたままでいっぱいありました。  畑にも行ってみました。これは、輸出向けの農産物を生産する畑で、確か生姜だった と思います。すべて厳重な管理下に置かれていました。  右側の下にありますのが農薬の配送センターです。輸出向けの農産物に使用する農薬 をここで買って使うようにという指導をしているということです。中国の農家の方たち は、農薬は高いですので、どうしても安い農薬を使いがちになる。そうすると、日本の 基準にないような農薬もまだ売られているという現実があるとのことでした。そこで、 ここでは輸出向けはこの農薬を使ってください。その使い方はこうですよと、指導員が 農薬の使い方までちゃんと指導するという体制で農薬が販売されているということです。 勿論高いので、それを使って生産する農家には国家からそれなりの援助があるというこ とでした。  それと、近隣の農家の方たちが、この農場と契約を結んで労働者として働いていまし た。その方たちは、そのときは草むしりをしていました。除草剤を使わず、全部手で草 刈りをするために集まっていらっしゃいました。私は、そこまでやるのかと思いました けれども、そこで働く契約をしている近隣の農家の方たちに言わせれば、それでも雇用 の場であるということでした。日本の基準などを学びながら、そこで働いて、自分の暮 らしを維持しているということでした。  この農薬センターには、日本のポジティブリストが大きな一覧で掲示されていました。 基準値とか、使ってはいけない農薬だとか、一々張り出されていました。そんなことを 見てきました。  また、食品工場にも行ってきました。これは青島亜是加食品工場で、日本の加ト吉さ んが現地の労働者を雇って、日本向けの加工食品、冷凍食品を製造しています。冷凍う どんとかを製造していますが、大変な管理の中で行われている。衛生管理が徹底してい ました。  加ト吉さんは、もともとここに工場をつくったときから、結構長い年月、営業されて いらっしゃるそうですけれども、何に苦労されているかといいますと、現地の人たちと どうコミュニケーションを図るのか。雇っている従業員といい関係をどうつくるのか。 地元に信頼される工場としてあり続けるための努力をされている。地元の方たちに評価 されるような工場でありたいと願っているそうです。そうすることで、そこでつくられ る食品の本当の安全性を確保する体制をつくりたいというお話を伺いました。  竜大食品工場、これは本当に大きな食品工場でしたけれども、非常に近代的な食品検 査センターを持っていました。ここに張り出してありますのが、検疫官が常駐している とかという政府の認定のプレートです。こんな形で検査センターと食品工場が運営され ていました。  こんなことも勉強しながら、向こうの政府の方たちともお話したのすけれども、とに かくギョーザ問題以来、あるいはさかのぼればホウレンソウの問題から、日本の消費者 に中国からの輸出品が信頼されなくなっている。何とか体制を整備して日本の消費者に わかってもらいたい。こんなに整備していることをわかってください、よく見てくださ いということでした。  私たちの問題意識についても、少しお話したいと思います。私たち日本の消費者の食 生活ですが、半分以上を輸入に頼らざるを得ないという現実があります。そうした現実 を踏まえた上で、いかに安全を確保していくのかということが一番重要な問題だと思い ます。消費者もそういうことをしっかりと学びながら考えていくことが重要で、輸出国 側の食品の安全政策や状況がどうなっているのかということを、私たちもしっかりと把 握する必要があると思います。中国、アメリカ、カナダ、東南アジア等々がどのように なっているのか、どのような食品安全政策を持っているのかということを知る必要があ ると思います。  その中でも気になっていることがあります。中国で言いますと、今回、視察に参加さ せていただいた理由でもあるのですが、中国製の冷凍ギョーザ事件は未解決なわけです。 おそらく意図的に故意に混入されたものだろうと言われておりますけれども、真相は未 解決ですので、この辺は非常に気になっています。  そして、アメリカで言いますと、昨年ですが、ピーナッツ製品でサルモネラの食中毒 が非常に大きな問題として取り上げられました。ピーナッツバターが汚染されていまし た。また、ホウレンソウがO−157に汚染されていたということも大問題になっていま した。リステリア菌の食中毒も非常に多く、アメリカではメインの課題ということです けれども、こうした問題は非常に重要だと思っています。  アメリカではこの間、食品安全強化法案というものが、下院を通過しています。上院 で審議されていると聞いていますが、こうしたアメリカの状況というものも非常に気に なるところです。  そして、国際機関の危機意識についても、私たちは共有したいと思います。大規模感 染症とか食品テロは、非常に大きな問題です。WHOが国際保健規則を07年に、食品テ ロの増大や感染症の問題に対応するために改正こともとらえておく必要があると思いま した。  さらに、世界的な食糧需給問題、人口増加、資源の枯渇、食糧不足。その中でGMO の取り扱いをどうするのかということも、私たちの大きなテーマになるのではないかと 思います。  最後に、私たち自身の課題を挙げてみました。消費者自身が学習とリスクコミュニケ ーションを推進していく必要があるということです。同時に、消費者力を高めることが 重要であると考えています。さまざまな情報がある中で、それに振り回されることなく、 正確に受けとめる力。そして情報を受けとめて正しく選択できる、正しく判断できる力 をどう付けていくのかというのが私たちの課題だと思っていまして、これは政府や事業 者の皆さん方とも協力してやっていくべき問題だと考えています。  今後、私たち消団連としても、こうした取組みを強化していきたいと思っております ので、どうぞよろしくお願いいたします。以上でございます。 ○司会 どうもありがとうございました。  続きまして、株式会社イトーヨーカ堂QC(品質管理)室食品担当の伊藤様より、「輸 入食品の安全性確保の為の取り組み」について御講演いただきます。どうぞよろしくお 願いいたします。 ○伊藤 イトーヨーカ堂の伊藤でございます。消費者の方がもっと多いのかと思って原 稿をつくってきております。食品関連事業者の方が多いようですけれども、御期待に沿 えない部分は御容赦いただきたいと思います。  私からは、経験に基づいたアプローチでお話をさせていただきたいと思います。  この資料は、毎年、中国上海事務所ほかで開催させていただいています、現地の食品 メーカーさんに対する安全と品質管理に関する説明会資料の1ページ目です。ここでは 詳細な説明は省略させていただきますけれども、約10枚の資料から構成されていまし て、中身は、厚生労働省、農水省の資料をベースにしてございます。いずれにしても、 こういうことをやっているということでございます。  検査の仕組みや法規制は当然ですけれども、認識を共有するという発想が極めて重要 だと考えております。先ほど阿南さんの資料にありました竜大さんも参加されておりま す。竜大さんは、弊社のプライベートブランドの春雨の製造をお願いしております。私 も北京駐在で1号店の開店に関わった1人として、当時、山東省の工場を訪問したこと があります。1997年でした。当時から、ここなら大丈夫と評価のできる工場の一つだと 思っておりました。そのほかにも、北海食品さんやタイCPグループの青島正大さんほ か、参加されております。  当然のことですけれども、食品の安全は、本来輸入食品に限った見方ではなくて、全 体を視野に入れて考えることが大切だと思います。したがって、弊社、特にQC部門と しては、最優先課題を集団食中毒事故の事前防止という考え方で常に対応させていただ いております。あらゆる対応がこのために準備されている状況でございます。ちまたで は、ここのところ、ノロウイルスが非常に猛威を奮っているようです。弊社の食品関連 部門従業員約2万人以上に対する、毎月1回の検便制度、腸内細菌検査の義務付けもそ の一例であり、リスクの事前把握という意味で成果につながっていると考えております。  このグラフは、過去10年以上にわたり、お客様からいただいた食品苦情を月別に集 計したものです。さまざまな事件がございました。当事者でなくても、大きな事件の影 響は毎回必ず受けてきました。それは、そのままこのグラフにあらわれているかと思い ます。中国産の冷凍ギョーザ事件以降の直近の2年間は、幸いにも比較的落ち着いた状 況が続いております。この数年間の官民一体となった啓発やメディアの冷静な対応も、 成果を出しつつあると考えていいのではないかと私は考えております。  もうすぐ1月も終わってしまいますが、日本の伝統食おせちを通じて、海外からの食 材をもう一度確認してみたいと思います。これは、今年の正月用につくられた2009年 版の予約のカタログからの抜粋になります。全体で各種のセット、約3万4,000セット を販売いたしました。大きな苦情は皆無で、毎年、無事に乗り切ったという言い方をし ております。おせちは、特に細心の注意と集中力が必要だと思います。  我々品質管理部門は、該当商品部のバイヤーをサポートする形で、連携して、場合に よっては泊まり込みで工場に立ち入りをさせていただいています。ここに表現しました 南アフリカ、インド、タイ、カナダとありますように、これが現状であり、既に皆様御 存じかもしれませんが、改めて御理解いただければと思います。いずれにしても、安全 性の確保と現地の人件費の上昇の問題、それからフード・マイレージ・コスト等を見な がら、グループ全体で、これは中国に限らず、世界に最適な産地、供給地を求めていく ことに、ますますなっていくと思います。  例えば、このカリフォルニアワイン赤・白がグローバル展開商品として既にスタート し、100万本を販売したと報道されております。  私は、2000年1月に北京から帰国し、その年の9月から弊社のQC、品質管理部門の 食品の責任者になりました。責任者の8年間は、修羅場とはこのことかと思うぐらい、 さまざまな体験をし、学習してまいりました。数ある中でも、この中国産冷凍ホウレン ソウ事件は、ある意味で私の原点だったと考えております。初めて新聞に自主回収のお わびの告知を掲載したこと、初めて10回線、20台の電話、延べ人数で数十名のフリー ダイヤル体制を敷いたこと。それから、初めて店頭でNHKさんの取材を受け、冷凍食 品売り場を背中に、カメラに向かって謝罪したこと。それから、初めてフリーダイヤル 電話で直接お客様のお小言を承ったこと。勿論、若いころから店頭で承ることはたくさ んございました。そして、これも初めて知りました。該当品の廃棄処分のため、行政手 続がいかに大変な作業であるかも知りました。  あれから8年が経過しますが、幾つか忘れられない、記憶に残ることがあります。そ れは、たまたま私が直接承った3人のお客様からの、厳しくもありがたいお電話でした。 イトーヨーカ堂さんのホウレンソウだけは大丈夫だと思っていたのに。出所はみんな一 緒だったのですけれども。すり身にしてベビーフードとして使っていたのよという若い お母さんからの、これは信頼を裏切ったという思いが強くしました。それから、生のホ ウレンソウを買ってつくるお浸しより、本当に簡単で便利だったんだからと、ひとり暮 らしのおばあちゃんから聞いた使い勝手、便利さへの評価。それから、あれがねえと困 るんだよな。カツオブシをちょこっとかけてという、自分で居酒屋を経営されている大 将からの必需品としてのニーズを、それぞれに確信させられました。  このときは、本当に心から申しわけないことをしたという気持ちでいっぱいでござい ました。真摯にこの気持ちを持つ、これはなかなか体験できることではないなと考えて おります。このことだけは忘れないように、絶対風化させないようにと誓って仕事を続 けてきたつもりでおります。  それとあわせて、直属の上司に当時、現地で使っていないと言っているのに、何で使 っていないクロロピリホスが検出されるのだと厳しく問われたことがありました。ホウ レンソに使用された殺虫剤のことなのですが、反論はぐっと胸に抑えましたが、よっぽ ど、そういう何とかですからと口から出そうになりました。  これはほんの一例ですが、現場の体験を通じて数多くの経験・学習をやってまいりま した。そんな中から、門前の小僧として勉強し、確認し、知識として積み上げて、その 後の判断や決断の材料として、たくさん貯金できたと考えております。本当にありがた いことです。  今、中国について歯切れの悪い言い方をしましたが、少なくとも現在のことを申し上 げているわけではなくて、はるか昔、3年半ほど北京に駐在し、生活した体験から出た 言葉ですから、御理解いただければ幸いです。ただ、例のギョーザ事件が現在でも未解 決であることは、これも紛れもない事実であります。日本の法規制や仕組み、行政機関 の考え方、食品小売業の考え方、そして日本の現在のお客様、消費者の考え方まで理解 してもらうことが重要なのだと思います。  そして、信頼関係は重要ですが、我々日本側にもしぶとく、したたかにというスタン スも私は必要だと思います。生産物を収穫した後や製造・加工後の検査は、あくまでも 結果としては事後対応になります。完全なリスク回避は難しい部分がございます。事前 及び継続的な確認やチェックが、あるいは指導が必要だと思います。  ところで、ここで話題にするために出かけたわけではありませんが、偶然にも先々週、 アジアの3カ国を回ってきました。ベトナムはホーチミン、タイ・バンコク、中国は北 京を訪問しました。ベトナムは初めて、バンコクは昨年に続き2回目、そして北京は毎 年訪問しておりますが、今回は2年ぶり。ちょうどギョーザ事件の直後に行った発生の 年以来ということになります。真夏の30度からマイナス10度という厳しい行程でした が、米の歴史、米の食文化、アフラトキシンの問題も、それからジャポニカ種とインデ ィカ米のこと。フォーという米粉のめんの文化を学習し、実際に少なくともきれいとは 言えない地元の人気店で、ホーチミンの庶民と一緒に食べたフォーは、同行者の一堂全 員がおいしさに感激し、最後は感動しておかわりする人もいたぐらいでした。  生産地、製造メーカーも視察して回りましたが、この3か国の小売業や食品市場を見 てきました。ホーチミンのファミリーマートさんの1号店、北京のイオンさん、それか ら北京に進出しています我々のセブン−イレブン、それから北京にオールデイズの名前 で進出したデニーズ、そのほかベトナム料理、タイ料理、中華料理、現地の日本料理、 食体験を通じて、その現状と変化を知ることで見えてくるものもたくさんあったと思い ます。ますます拡大する貧富の格差、減少したとは思えない貧困層の問題。そういった 課題はまだまだたくさんあるでしょう。  そんな中で、今回の訪問地の写真をざっとごらんいただいて、最後にまとめを申し上 げたいと思います。  これは、ホーチミンの公設市場です。12年前の北京を思い出しました。  左上の写真は、皮をむいたカエルが足をはさみでちょん切られようとしております。  それから、ホーチミンにも韓国資本のロッテさんのロッテマートが進出しております。 ヤクルトやキムチの品ぞろえも豊富でした。  バンコクでは、昨年と同じショッピングセンターを視察し、水耕栽培野菜、有機野菜 の販売が、内容を確認したわけではありませんけれども、継続されていることを確認し てきました。  北京では、弊社の2号店で同行者にも買い物をしていただきました。1階入り口近く の化粧品売り場は、現地の資生堂さんが最も目立つ場所に展開されています。  地下食品スーパーは、来月の旧正月を前にして非常ににぎわっておりました。私自身 も関わった、開店から12年目の北京の1号店は、17日夜に閉店。因縁があったのか、 立ち会うことができました。  右上の写真が、隣接したビルに移転して、21日に開店した最新店舗になります。テナ ントで、マクドナルドさん、吉野屋さん、サイゼリヤさん、そしてユニクロさんまでを 擁する、10年前にはほとんど考えられなかったようなすばらしい店舗を立ち上げたよう です。  左側の下の写真、よく見えないと思いますが、現地で製造されています日本ハムさん、 伊藤ハムさんのハム、ソーセージももう販売されております。  余談になります。北京、上海、香港でチェーン展開する有名な上海料理のお店では、 オーダーした瓶ビールがきちっと冷えていませんでした。「もっと冷えたのはないの」と 聞くと、「外が氷点下10度なのに、何でそんなに冷たいビールがいいのか」とウエート レスに言われました。「それでも冷たいのが欲しいの」と言うと、「じゃ、氷を入れます か」となって、最後はピッチャーに入れた生ビールで妥協することになりました。この 話はおまけが付いてまして、返品したはずの余り冷えていない瓶ビールがそのまま勘定 書に十数本加算されているのを、通訳がチェックして注意していました。  悪気はないのです。でも、こんな小さい体験から、日本の当たり前がそうではない事 例がいかに多いのか。10年前の北京と、こういうところは変わっていないではないかと 思いました。これも中国の中国たるゆえんだと思います。  バンコクでは、我々のグループでPBをおつくりいただいています、セブン・プレミ アム開発で大きな取引のあるタイのCPフーズ社を訪問しました。世界の台所と称して 戦略を明確にされております。品質管理部門の若いスタッフは、伊藤さん、我々は、日 本では法規制や行政機関よりも、更にお客様、消費者の考え方が厳しいということを知 っていますと話してくれました。タイで最大の華僑系コングロマリットは、ますます強 くなっていると思いました。  先ほど貧富の格差拡大と言いました。そんな中でも、彼らはしぶとく、たくましく生 きています。ベトナムも10年を待たずに、中国のレベルに追い付くでしょう。タイは、 若干の不安定要素があっても、毎年発展しています。北京は、オリンピックを経験した ことで、表面的かもしれませんが、非常に落ち着いた都になりました。  それぞれ関係のない情報に見えるかもしれません。それらをつなぎ合わせることで見 えてくるものもあります。各国の生活のレベルが上がることで、各国が日本へ輸出する 食品の科学的な安全と、あわせて心理的な安心感もいい方向に進んでいく、そう考えて いいのではないかと私は思います。決して楽観視するわけではありませんが、彼らも日 本とのビジネスで損害をこうむりたいわけではありませんから。  話が中国中心になってしまいました。申しわけございませんが、情報は重要です。1996 年に一緒に辞令をもらい、同時期に北京と、そこから2,000キロ以上離れた四川省の成 都の二手に分かれて現地に赴任し、何もないところから、それこそ最初に井戸を掘り、 地域に密着した店舗を開店し、それを成功させてきた駐在12年目の10人余りの日本人 同僚に敬意を表し、彼らが現地で生活し、体験し、ビジネス等で経験した情報が、中国 産食品輸入の安全確保と改善のためにも大きなウエートを占めると私は信じております。 その国の歴史、文化、考え方を理解し、その上で日本を知ってもらうことだろうと思い ます。  まさしくアジアの時代です。日本と大陸を出張ベースで行ったり来たりではなく、コ ストはかかるかもしれませんが、中国に妥協せず、その上で中国の心理や考え方を理解 して現地に常駐する人材を置くこと、現地に入り込むことが、当然かもしれませんが、 食品関連企業にとって輸入リスク回避の極めて重要な戦略の一つであること。4つの印 象を表現しまして、短い時間で多々、言葉足らずであったかもしれませんが、私の話は 終わりにしたいと思います。ありがとうございました。 ○司会 どうもありがとうございました。  続きまして、株式会社ニチレイフーズ品質保証部長の片山様より「輸入食品の安全確 保のための取組について」、御講演いただきます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○片山 こんにちは。ニチレイフーズの片山でございます。私自身は、食品の安全とい うのは、大きくいえば、仕組みと、その仕組みを使う人の問題かと思いますけれども、 本日はその仕組みの部分で、私どもの取組みの内容を、一端ですけれども、御紹介させ ていただきます。  まず、私どもニチレイフーズの会社概要ですけれども、冷力を中心にしましたニチレ イグループの加工食品事業を担っております。冷凍食品を中心にしまして、冷凍野菜を 含めて、製造、加工、販売をやっております。食品に関する品質保証の組織という形で、 グループ全体の監視ということで、ニチレイの品質保証部と、それから分析機関であり ます食品安全センターが中心になって、グループ全体の品質を網羅しているということ でございます。  更に、我々は事業会社ですから、会社全体の経営についても、経営監査部というとこ ろが監視しています。私ども事業会社は、その業務を遂行するということを行っていま して、品質保証委員会というのが、マネジメントシステムの中でいえばレビューという 形で定期的に行われて、内容、情報を確認していく。更に、リスクマネジメント委員会 というものは、緊急時の対応を会社としてどう判断するかということで、緊急時に開い て、その内容を精査していくということでございます。  通常の活動の中では、私自身が所属します品質保証部という中には、4つのグループ 組織があります。  1つは、企画監査で、工場の監査を中心にする。また、ニチレイフーズグループの中 の基準を設定していくグループでございます。2番目の表示規格というのは、まさに表 示の内容を含めて、パンフレットだとか、内容について法律に触れないことをまず一義 的にチェック部署でございます。それから、品質管理グループというのは、どちらかと いいますと生産工場に対して改善指導をしていく、一緒になって汗をかいていく部隊で ございます。それから、生産情報センターというのは、私どもから品質に関する情報を 一括管理して、外部へ発信する部署でございます。従来は、各部署から情報を発信しま して、社内でも情報が混乱していたこともありますけれども、お客様からの問い合わせ、 特にお得意様からお問い合わせのあるものについては、ここから一括管理で発信してい くということでございます。  それから、消費者の方々から直接お電話なりメールなりでお問い合わせいただく部署 は、お客様相談センター。これは、商品本部にありまして、どちらかといいますとお客 様の声を商品の改良、開発に生かしていくという考え方でございます。  ニチレイグループ全体の中では、ブランド付与のための審査というものがあります。 これは、私ども事業会社ではなくて、ニチレイのNブランド全体を審査するということ で、工場の審査と商品ごとの審査という形でやっております。このことを通ってから、 事業会社としまして、工場の審査、それぞれの役割を担っていくという段階になります。 設備管理面、施設、衛生面、いろいろな角度で審査していきます。  私どもの事業会社、ニチレイフーズとしての品質管理の概念図、概略ですけれども、 生産工場を中心にしまして、まず入り口の原材料のところについては、原材料供給者、 サプライヤー様の方の段階、そこと本社では素材調達部原料グループというところが中 心になって、ここの管理をしていくということでございます。  工場の中では、原料の入荷、保管、生産から出荷という活動を行っていくわけですが、 我々品質保証部がここに関しての監査を実施して、仕組みとして問題がないかというこ とを監視しております。そこから発信する文書は、先ほどお話しましたように、工場か らの情報を得まして生産情報センターで一括管理して、お客様へお問い合わせに対して の情報を公開していくという流れでやっております。  その中で、調達段階でも、サプライヤー様の工場診断というものをまずやります。こ れは、生産工場並びに関係の部署で共通のツールとして使用しております。同一の基準 でサプライヤー様の工場を診断していく。この診断をする人間も、社内で認定しました 工場診断士という認定者を、各自営工場に設置しまして、そういう人間が工場の診断を 行っていくという形で、基準の統一性を図っております。  それから、工場の中では、当然原料の受入検査として衛生検査等、それから品質の決 められた基準に従って確認していくということでございます。その工場での受入時の検 査の結果をそのままにしておくわけではなくて、その内容について定期的に原料のサプ ライヤー様の方にフィードバックして、更に内容の改善をしていくという仕組みを持っ ています。こういう中で、我々の求める要求事項を詳細にわたって理解していただくと いう流れになっております。  これは、原材料規格証明書の内容でございます。この内容は、私どもと原料サプライ ヤー様との契約書の内容になりますので、必要であれば秘密保持契約を結びながら、こ ういう内容をいただいております。この内容につきましては、私どもからお得意先様に 対して情報をこのまま公開するということは決してありません。この内容を我々が判断 しまして、表示とかの参考にさせていただくということで、ここに原料原産地、原産国、 アレルギーの問題等々、必要な内容を含んでいます。これは、私どものオリジナルのフ ォーマットでございます。  この中で大事なのは、下に書いてありますけれども、3次原材料レベルまで内容を公 開していただいております。最近の各メーカーさんは、同じようにここまでのことを調 べられていると思いますけれども、私どもはこの内容を6〜7年前からお願いしてやっ ております。3次原材料というのは、簡単に言いますと、例えばコロッケという商品が あると、そこに使っているパン粉、工場で使う原料そのままが1次原材料。そのパン粉 をつくるための原材料が2次原材料で、ここに例えばマーガリンがあります。マーガリ ンが2次原材料になりまして、その次のマーガリンの油脂が何ですかというところが3 次原材料になる。この油脂についての原産地がどこか、すべて書いていただくという内 容になっております。  これは、一般的な生産段階の品質管理ということで、特に変わったところはないと思 いますけれども、5Sの内容から工程管理、異物管理等々、トレースの記録をとってい くということで、日常の品質管理の中でやるべきことをやっていくということです。あ るべき姿を保ち、異常があればすぐにわかるような管理をする。こういう5Sのところ を一番に重要にしながらやっております。  それから、生産段階での品質管理。これはHACCPの考え方に基づいて、必要な項 目をチェックしていくということで、記録を残していく。それから、私どもの決めた管 理基準を逸脱したときの対応まで含めて、商品別に工程管理基準書という形で整えてお ります。  これからは、輸入食品の事例として少しお話をさせていただきたいと思います。今日 もいろいろなところで出ていますけれども、中国の冷凍野菜の事例を少しお話させてい ただきたいと思います。  まず、私どもと中国のパートナーさんの企業とは、ニチレイ蔬菜会という形で取組み をさせていただいて、その中では毎年1回、経営者レベル、品質保証の責任者レベル、 原料の調達レベル、それぞれに分かれて会議を行い、共有化を行っています。内容的に は、栽培する農場の基準、どういう形で管理するか。その農薬の使用の内容については、 事前に計画書を提出いただいて、その内容に従って農薬の使用をしていくということを 取り決めております。  次に、検査の内容ですけれども、これは必要な都度、残留農薬の検査を行いながらチ ェック、確認していく。内容が適切に管理されているかどうかの検証を行うということ でございます。  4番目のトレースバックについては、商品ごとの賞味期限と一緒に私どもの記号を付 けて、何か事故が起きた場合には、すぐにトレースバックができるような仕組みで、工 場の記号、農場の記号、農場から工場に搬入するときのトラックのナンバー、生産ライ ンでの場所、そんな情報が入っております。  そういう中で、中国冷凍野菜の農薬の検査がどの段階でやられているかということで ございます。  1つは、栽培時に中国生産工場の責任で、収穫前に農薬が適正になっているかという ことを確認してから収穫を行う。それから、収穫したものの、我々は半製品と言ってい ますけれども、シーズン、年に1回の生産ですから、日本のお客様のいろいろな包装、 アイテムに従うためには、一度バルクの状態で半製品を保管する。この時点で先行検査 と言っていますけれども、農薬検査を行う。これは、中国にある私どもの錦築と言って いますけれども、日清製粉さんと共同の検査会社をつくりましたので、そちらでやって おります。  それから、輸出国側、中国政府側での検査があり、日本に到着してから通関前に、内 容について必要なものについては、これはリスクに応じてですけれども、日本の私ども の食品安全センターで検査を行い、それから監査検査という形で年間計画に従って検査 をするということです。その内容を踏まえて、日本の国での輸入時の検査が行われると いうステップになっています。青字になっているところは、私どもの会社としてやって いる検査でございます。  食品安全センターということでお話しましたけれども、ここは微生物から残留農薬、 動物用医薬品等々を検査しまして、中国の錦築という私どもの検査のための会社との運 営を、共同しながら管理しているということでございます。  それから、監査検査についての一つの考え方。これがいいとは私ども、思っていませ んけれども、一つの事例として、監査の頻度というのはどのぐらいやったらいいか。こ れは、全体として会社としての予算もあります。その中で、どういう商品ごとに監査検 体を決めるかという考え方で、リスク係数を私どもなりに計算してやっている。リスク 係数の考え方としまして、国レベルでのリスクの違い、有機かどうかということ、作物 自体の種類によっての問題、それから命令検査等になっていれば、そこに引っかかる可 能性もありますので、そういう問題。それから、調理というのは油の影響が検査に対し ても及ぼすことがあるので、調理してある、していない。こんなことを掛け合わせまし て、一つの基準という形で定めて、これに従って検査の濃淡を決めております。  これが一つの事例ですけれども、国であれば、中国を1とすれば、一番下の欧米は0.25 ぐらいの差を付けているということでございます。それから、作物については、根菜類 は比較的小さい、葉物の方は高いという形でやっております。  これが管理表です。これは、計画に従ってしっかりとちゃんとやっているか。年間計 画ですから、それに従ってやられているか、中間なり、その実施率を確認しながら、遅 れがないようにしっかりと監視していくということを進めております。  以上が今日の報告の内容ですけれども、ここにあるように、私どもはお弁当の商品が 多いので、小さなお子様を持つお母様の気持ちになって食品安全に取組むことを一番に 考えております。  また、最後になりますけれども、こういう私どもの取組みの内容を発表できる機会を いただいたことを大変感謝しております。冷凍食品に関するなかなか厳しい環境があり ますけれども、今までの反省として、やはり私どもだけではなくて、会社が、メーカー がどういうことをやっていることの情報公開が足らなかったという反省がありますので、 本当に今回はいい機会をいただいたと思っています。これで私の発表を終わらせていた だきます。どうもありがとうございました。 ○司会 どうもありがとうございました。  続きまして、日経BPクリエーティブ企画制作本部編集委員の中野様より、「報道の立 場から見た輸入食品の安全性についての問題」について御講演いただきます。よろしく お願いいたします。 ○中野 皆さん、こんにちは。日経BPの中野でございます。よろしくお願いいたしま す。  このロゴマーク、御紹介させてください。2003年、食品安全基本法が施行された年で もあって、食の安全元年と言われた年でございます。2003年にこのロゴマーク、Food Scienceと申しまして、食の安全の情報を発信する専門ウェブサイトをこの年に立ち上 げまして、それ以来、このサイトで編集長のような仕事をさせていただいております。 今日は、その経験を基に「報道の立場から見た輸入食品の安全性についての問題」をお 話させていただきたいと思います。  昨今の輸入食品の問題なんですけれども、昨年4月、メキシコで豚インフルエンザが 発生し、勿論すぐに新型インフルエンザと名称が改められましたけれども、このときに 日本の外食店、すべてではありません。幾つかの外食店が、「当店はメキシコ産豚肉を実 は使っていたんですが、安全のためにもう使わないことにしました。これからは安全で す。どうぞ御安心ください」というメッセージを発信しました。あと、「うちは使ってい ないのですよ、PRしてください」と私のところに教えてくださった小さい飲食店さん、 結構ありました。  これは結構大変な問題だと思います。勿論御承知のとおり、メキシコ産の豚肉を食べ ることによって新型インフルエンザに感染することはあり得ないのですけれども、「安全 のために、当店はメキシコ産豚肉は使わないことにしました」、あるいは「使っていませ ん」という発言が相次ぎました。ただ、その後すぐに、「そういったことは誤解を招くの でよくないよ」ということで、業界全体に広がるということはなく、大きな問題にはな らなかったのですけれども、私どもとしては、報道の立場として、これは非常に問題で はないかと思いました。  先ほど来、御説明がいろいろあります中国産冷凍ギョーザ事件、ちょうど2年前、起 こりまして、それまでも何となく中国産は「嫌だわ」「嫌いだわ」「怖いわ」という感想 が漏れ聞こえておりまして、ギョーザ事件を機に一段と、「とにかく輸入食品嫌いだわ」 という風潮が出てきました。  これ、私どもがやった調査なんですけれども、調査結果を見ても明らかなように、こ の事件以来、中国製の冷凍食品を買わなくなりましたという人たち、21.9%なんですけ れども、更に、冷凍食品だけではなく、中国産の農産物、中国産の加工食品、とにかく 中国産は嫌だという人が半数以上、合わせまして4分の3が「中国産はもう買わないで す」という答えが出てきました。このように人々が中国産は嫌いだと言うようになった こと、これはすごい問題なのですけれども、この問題の原因はどこにあるのか。いろい ろな原因があって、複雑に絡んでいると思うのですけれども、私はメディアの立場にい ますので、メディア報道にも責任があるのではないかということで、問題提起したいと 思います。  どういうことかといいますと、中国産冷凍ギョーザ事件のほかにも、外国の輸入食品 などで産地偽装があります。中国産なのに国産と偽って売っていたりするのが多々あり ます。これを伝える、例えばテレビ番組でニュースキャスターが、実際にニュースを言 う前にまくら言葉として、「またしても食の安全が脅かされました」というフレーズをよ く聞きます。あとは、スーパーの店頭でキャスターの人がマイクを持って、「食の安全が 叫ばれている中、食品スーパーは国産の品ぞろえを強化しています」という報道をして いるのもよく見ます。  でも、これは冷静になって考えてみますと、中国産が危ない、あるいは外国産が危な い、日本産、国産が安全ということではないのにもかかわらず、外国産は危ないという 間違った報道の仕方をしているということで、こういった間違った報道が先ほどの消費 者を不安に陥れる行動につながっているのかと思います。  それから、ポジティブリストが制定されて以来、残留農薬基準が非常に厳しくなって、 0.01ppmの一律基準を上回る事例も耳にするようになりました。そのときに、先ほど もホウレンソウの話が出ましたけれども、0.01の基準に対して0.02ppmだったとする と、何と基準値の2倍検出されましたということで、またこれもメディアが「何たるこ とか」という報道の仕方をするわけです。「何と基準値の何倍」という、その何倍という ことだけがひとり歩きして、「ああ、怖い」ということにつながってしまいます。これも メディアの責任だと思います。  それから、これもおととしの夏でした。台湾産のウナギを国産と偽装して事件が起こ ったのですけれども、これはダミー会社までつくって、大変深刻な事件だったと思いま す。これを報道するときも、外国産か日本産のウナギという話で、ウナギは育て方の違 いというものは勿論ありますけれども、ここでも中国産、台湾産だから危ないというこ とをちらちらと書くようなメディアもございました。本来メディアであれば、こういっ た偽装事件で不当な利益を得た業者、悪事をもっと追及するべきではないかと思うので すけれども、どうも危ないということに終始したようです。  実際、冷凍ギョーザ事件では、当初メディアは、やはり中国は残留農薬が危ないとい うことで始まったのです。ただ、一日もたたないうちに専門家のコメントなどを交えて、 これは従来の材料となった農産物の栽培における農薬の管理が悪かったからとか、間違 いがあったからということではなくて、加工の途中で何らかの悪意を持った人による犯 罪ではないかということはすぐに説明がなされたのですけれども、そういったニュース を流している背景で、いわゆる資料映像として、広大な中国の農場で白い農薬みたいな ものをばーっとまいている様子が映し出されていました。  それを見た視聴者の人たちは、これはふだんの品質管理のための農薬の管理の話では なくて、犯罪なのだよということをテレビのナレーションでは言っているのだけれども、 映像から目に入ってくるものは、農薬をたくさんまいている様子。やはり農場で農薬を まくのはよくないという間違った認識につながってしまいます。  私も機会があって、中国の厦門の方で農場、加工工場を見学させていただいたのです けれども、こういった実態を見ないで、あるいは見なくてもしっかり情報収集すれば正 しいことはわかるにもかかわらず、中国は危ないとメディアが報じるわけです。中国産 は危ないとメディアが報じると、そのまま消費者の人たちは中国産は怖いという認識に なり、そういう消費者に対しては、メーカーさんとしては、「中国産ではありません」と か、「中国産は使っていません」と言いたい気持ちになってくるのだと思います。  そういった間違いが間違った行動を生み、更に間違ったビジネスに発展していくとい うことです。これは農水省と厚労省の表示の共同会議で行った消費者調査で、おもしろ い結果だなと思ったものです。何と8割の人たちが、「とにかく原産国表示をすべきだ」、 つまり、「これは中国産とか、これはどこ産という国をちゃんと表示すべきだ」という意 見でした。表示自体は構わないと思うのですけれども、その理由を尋ねると、原産国に よって安全性がわかるから。これも正しいことではないと思います。国によって安全を 判断するという間違った行動に消費者を追い込んでいることがうかがえます。  メディアの不勉強というか、知識のなさぶりというのは、私も自戒を込めて言うので すけれども、ほかにもびっくりするような事実誤認が結構あって、それが間違った記事 になっていくのです。では、なぜメディアは誤解するのでしょうかということなのです。 メディアの記者も消費者の一人なのですけれども、そもそも知らないのです。科学的リ テラシーが低いのです。文系の出身の記者が多いので、科学的なことは知識としてなか なか得にくい。  更に、人事異動で別の分野の担当になると、また一から勉強のし直しで、広く浅く手 掛けているので、食の安全の、しかも科学的バックグラウンドを伴ってきっちり理解す るというのは、なかなか難しい。記者ですから、事件を追い掛けていって裏はとろうと しています。裏はとらないと記事にならないのですけれども、とはいえ科学的エビデン スはなかなかとりにくい感じです。それから、科学の世界の特殊性というのも、よく知 らないということがあります。  一方、知識が欠けているにもかかわらず、それを記事にして、メディアは民間企業で すから、視聴率、あるいは出版でしたら部数があってなんぼの世界というところもある ので、なるべくセンセーショナルなニュースを出したいというところもあり、一つのこ とをかなり大げさに表現したりすることが、更に誤解が輪を掛けて悪影響を及ぼすこと になっていくかと思います。  そもそも記者も含めて、一般の人たちもそうなのですけれども、リスクについての正 しい認識がほとんどされていない。これは皆さん御存じかと思いますけれども、古い調 査です。がんの原因となるのは何でしょうというもので、がんの専門医が答えたのは、 たばこと普通の食品。専門医ですから正解ですけれども、一般の人に尋ねた答えは残留 農薬と食品添加物。現代の科学では、残留農薬と食品添加物ががんの原因になるという のは、ちょっと考えにくい。だけれども、一般の人たちはこういった誤解をしているわ けです。  一般の人たちだけではなくて、例えば栄養士という食の専門家である方も、ちょっと 残留農薬は危ないと思っていらっしゃるところがあるようです。多かれ少なかれ、すべ ての食品はリスクがあるわけです。ゼロリスクというものないわけで、ただそういった ことの理解がなかなか現実的には進んでいません。消費者団体の中には、例えば食品添 加物をバッシングするときに、「どんなにわずかな量でも毒ですよ、危ないですよ」とい う言い方をされるところもあります。ただ、同じ化学物質でも、量によって効果をもた らすこともあれば、逆に害をもたらすこともある。こういったことが理解されていない というわけです。  それから、ルール違反と健康被害の区別ができていない。いろいろな回収事件があり ます。今回の残留農薬の基準値超えもそうですし、例えばパッケージの印刷を間違えた ということでも回収があります。そのときに、回収したものに対して、「健康上、問題が ありません」という記述をよく見ます。でも、それを見た消費者の人たちは、「おわびを したということは、非を認めているということだ。ということは、実際に健康上、被害 を与えたのではないか」という印象を持つわけです。「健康上問題がないのに、なぜ回収 するのか」と勘繰って、「健康に影響があるに違いない」という推測に至り、やはり危な いという印象を持つわけです。  あとは、日本人はとても検査が大好きで、検査済みというものにかなり信頼を置いて いると思います。残留農薬ポジティブリスト制度が発効した直前でしたか、ある業者さ んが、「検査を実際にすると時間もお金もかかるから、検査済みの証明書だけください」 と言ったという笑い話があったことを聞きましたけれども、かように検査大好きという ことです。  以上のように、消費者の人たちというのは、検査済みが安全、不使用表示はよいもの、 無添加こそが安全、国産が安全、有機は体にいいといった、これはいずれも正しいこと ではないのですが、そうだと誤解しているわけです。その誤解に対して、世の中、例え ばメーカーさんは消費者に商品を提供するに当たって、誤解をただすということではな くて、むしろその誤解に乗って提供した方が、マーケティング的には売れるのではない かというのが現状なのかと思います。それに乗じて、メディアでさえも消費者の誤解を 前提にメディア報道しているところもあるのではないかというのは、反省すべき点です。  ただ、私どももそうなのですけれども、「誤解に乗ってもうけよう」とか、「うそはう そでもいいや」ということは思っていなくて、一生懸命勉強しているのですけれども、 科学的に正しいことを皆さんに理解してもらおうと思って、いろいろ議論を試みます。 ところが、やろうとしても、「科学は間違えるものでしょう」「企業は営利に走るもので しょう」「政府は国民を裏切るものでしょう」と揚げ足をとって、議論に参加してくれな い人もいるわけです。どうするべきかというと、やはり今日のこの場のようにリスクコ ミュニケーションを地道にやっていくしかないと思います。  リスコミをやる意義というのは、いろいろな政府の施策がたくさんある中で、一番困 っていること、一番深刻なことに優先的に対策費を出してもらうため、それが何かを探 り関係者が納得することにあります。国民にとっても自分たちの税金が対策費に使われ るわけですから、みんなが参加して、理解を深めていくべきではないかと思います。リ スコミは余りやっても意味がないとか、なかなか効果がはかれないという意見もありま すけれども、私自身参加しているリスコミで幾つか、多少なりとも効果があったのでは ないかというものもありました。  今日のまとめなのですけれども、残念なことに輸入食品というのは、どちらかといえ ば今、嫌われています。メディアは、輸入食品の安全性確保の実態を認識しているとは 言いがたい。輸入食品の問題が起こると、安全性に原因を求めがちで、結局それが消費 者の不安をあおる報道につながってしまう。それの解決としては、リスクコミュニケー ションを進めて問題解決に取組むべきで、そこでメディアである私たちも参加させてい ただき、これからも頑張っていきたいと思います。以上でございます。 ○司会 どうもありがとうございました。それでは、ここで約10分間の休憩とさせて いただきます。15時12分ぐらいから再開したいと思いますので、それまでにお席の方 にお戻りいただけますようによろしくお願いいたします。 (休 憩) ○司会 それでは、時間となりましたので、これより「パネルディスカッション及び意 見交換」を行います。  まず最初に、壇上のコーディネーター、パネリストを御紹介いたします。  皆様からごらんになりまして、一番左がコーディネーターをお願いしております日経 BPクリエーティブ企画制作本部編集委員の中野栄子様でございます。  そのお隣が、全国消費者団体連絡会事務局長の阿南久様でございます。  株式会社イトーヨーカ堂QC(品質管理)室食品担当、伊藤正史様でございます。  株式会社ニチレイフーズ品質保証部長、片山博視様でございます。  厚生労働省食品安全部監視安全課輸入食品安全対策室、道野室長でございます。  これからのパネルディスカッション、意見交換の進行につきましては、中野様にお願 いします。どうぞよろしくお願いいたします。 ○中野 日経BPの中野でございます。これ以降、コーディネーターを務めさせていた だきます。よろしくお願いいたします。  今日は、厚労省の専門家の方に加えて、消費者の代表の方、それから食品メーカーの 代表の方、それから食品流通の代表の方と有意義な議論をしていきたいと思います。終 わりましたら、最後の方に会場からの皆様の意見にもお答えしていきたいと思っており ます。  早速ですけれども、2006年にポジティブリストが制定されて、それ以降、厳しい基準 などもあることが理由かと思いますけれども、先ほどの私のプレゼンの中でもちょっと 紹介させていただいたのですが、基準値超えのニュースというものをよく耳にするよう になりました。それに注目しているから、よけいにそういったニュースが多いのかと感 じるのですけれども、実際のところどうなのかということで、パネリストの方々にお聞 きしてみたいと思います。  その中で、事前に皆様からいただいた御意見や質問の中に、ポジティブリスト制度に ある一律基準0.01ppmが厳し過ぎるのではないか。あるいは、結局回収して廃棄する ということになって、資源のむだ遣いになるのではないか。あるいは、健康被害が出な いにもかかわらず、回収するということはどうなのだろう。皆さんの意見をお聞きした いということがございました。  早速なのですけれども、これについて、まず同じ事業者としてニチレイの片山さんは、 これが厳し過ぎる基準なのか、実際会社ですごくお困りなのか、そこら辺をちょっと教 えていただければと思います。 ○片山 私どもの考えることは、1つは基準が厳しいかどうかということよりも、今日 もお話がありましたけれども、消費者の方々が基準と安全性を誤解しているといいます か、基準を超えたら安全性に問題があるという問い合わせも結構いただいているわけで す。私ども、輸入している、今日もお話しました冷凍野菜でも、基準を超えるものは出 ております。これは、1つの例で中国であれば、日本と中国と違った基準になっている ものがあるわけです。そうすると、我々は日本向けの商品と中国国内向けに流通する商 品を完全に区分けしないと管理できないことになりますので、そういう仕組みをつくっ ているのですが、仕組みの中で意図せずに、中国国内では問題がないものが一部混ぜら れたり、加工段階とか、いろいろなところであったとすれば、そういうものが違反事例 として出てくる場合もあるわけです。  そういう意味では、基準自体は安全性がより高くなっていますから、厳しいというこ とではなくて、それはきちんと守らなければいけないと思いますけれども、そのときに、 その基準自体、いろいろな環境が変化したときに、その見直しをしていただければあり がたい。1つには、国と国との貿易がだんだん盛んになってくると、基準が違うと、国 内に流通しているものと、例えば日本に持ってきたものと、それが違うことになるのは 大変混乱を招くと思います。そういうことが実態としてはあるということでございます。 ○中野 では、お仕事をなさる上で、基準自体は厳し過ぎるものではなくて、しっかり それはルールとしてとらえて、十分やっていけるものですよという理解でよろしいでし ょうか。 ○片山 はい。基本的にはそういうふうに理解しています。これはポジティブリスト制 度を決めたときに、私も実は一緒になって普及活動もさせていただきましたけれども、 それは実態にあわせて、例えば日本の農薬取締法とか各国の状況にあわせてつくったも のであって、そのこと自体がしっかり守られていれば、農薬の使い方とかドリフトの問 題とかありますけれども、基準は守られるはずだと私自身は考えます。だから、そこの ところが、もし環境が変わって、当初決めたときとは違う環境になっているのであれば、 それを変えないと実態として合わないものが出てくる。  これは、違反事例として多く、現在、命令検査になっているようなものがあれば、そ れは実態として中が変わっているのではないか。我々事業者は、違反しそうなものをあ えて輸入しようとは考えませんから、しないように努力しながらも、そういうものは出 てしまうということに原因をもっと追及しなければいけないと思っています。 ○中野 ありがとうございました。そうは言っても、例えば消費者の側から見ると、そ ういう細かい事情がなかなかわからないために、基準値超えましたというニュースを聞 くと不安になるのではないかと思いますが、阿南さんはその辺りをどういうふうに消費 者のお立場でとらえていらっしゃいますでしょうか。 ○阿南 何倍と言われると、とても不安になります。それは、一律基準の話で言うと、 ポジティブリスト制度を導入したときに、食品安全委員会で評価し切れない部分があっ て、順番にやっていきましょうとなって、当面設定された基準です。なので、それは食 品安全委員会できちんと国際的な整合性をとったり、ちゃんとリスク評価をするという 作業がスピードアップして、合理的な基準が設定される必要が、まずあると思います。  それと、食品安全委員会でリスク評価をして、厚生労働省が基準をちゃんと決めると いうところが、リスク評価と安全性と基準設定がなかなか理解されていない、混同され ているということだったのですけれども、そこについて消費者の理解をいかに促進する かということが一番大事ではないかと思います。  この基準はどのようにして設定された基準なのか。その中身や背景がわかれば、消費 者自身も判断できるわけです。今のところ、判断する素材が何もないのです。ですから、 その辺の情報の説明がちゃんとなされる必要があると思います。本当に不安になります。 ○中野 確かにおっしゃるとおりですね。今日もこういう詳しい説明がある中で、いら っしゃっている方のほとんどが事業者の方と聞いております。ここにもう少し消費者の 方がいらっしゃれば、よりそういう理解が進むきっかけになると思います。ですので、 今後はもっと厚生労働省さんに消費者の方をたくさん集めていただいて、情報発信して いければいいかと期待しています。  今、片山さんの方から、環境が変わっていけば、それに応じて実際も素早く対応して 実態に合ったものにして、それでそれに向かって努力していきましょうということがあ ったのですが、厚生労働省としては、その環境の変化も見据えた上で継続的に規制を見 直していくということを計画されているのか、その辺り、道野さん、教えてください。 ○道野 ありがとうございます。もともとポジティブリスト制度、平成18年に導入、 法律自体は、平成15年に食品衛生法を改正したときに整理したわけです。施行するま での間に、それまでは300ぐらいの農薬しか基準はなかったわけですから、施行するま でに一定の基準値をちゃんとつくっていかないと、要は一律基準は全部の食品にかかっ てしまう。勿論、食品安全委員会のリスク評価に基づいてつくった基準もありますけれ ども、日本と同じような基準のつくり方をしている先進5か国、EUも含めたところの 基準値を参考にしたり。WTO協定の中で国際基準があるものについては、それを最優 先する。  日本でADIをつくったものとして、登録保留基準のあるものもあったわけですけれ ども、そういった形でおよそ800、基準をつくろうということでずっとやってきたわけ です。現在の基準自体も、そういった先進国の基準を参考にしたようなものもまだ残っ ていますし、一方で18年につくるときに、当然WTO通報していますから、輸出国は それも知っているわけですけれども、それ以降に輸出国でまた基準が改正されて、緩和 されたり強化されたりしているものもあるわけです。  今やっていることというのは、先ほど阿南先生がおっしゃったような食品安全委員会 がリスク評価したものに基づいた、新たな基準値の見直しということが1つ。それから、 輸入食品に関していえば、インポートトレランスという仕組みにしているのですけれど も、輸出国政府の方で残留試験をやって、その場合にこれぐらい残りますよというデー タを出してきてもらって、残留基準の見直しをするということを進めています。  ただ、私の資料の一番最後にもありますけれども、残留農薬の基準のつくり方という のは、ADIをそれぞれ基準値を設定した食品に割り振って、トータルの摂取量がAD Iを超えないようにという考え方です。勿論、その原則をきちっと守った上で、そうい った見直しを進めていくという対応をしております。 ○中野 ありがとうございました。  この基準値を超えるということになりますと、流通している食品が回収されて、場合 によったら全量廃棄になるということもよく耳にします。それで、基準値を超えたこと はルール違反ではあるのだけれども、基準値を超えたからといって、即健康に被害がな い。これを回収するのはいかがなものかという意見も多々聞かれまして、そういうとき に、私も小耳に挟んだといいましょうか、例えば海外ではそんなことはない。健康被害 が出ない場合には回収はしないということも聞くことがあるのですが、何やらそれもち ょっと正しい情報ではないように先ほど聞きまして、その辺り、正確なところで教えて いただければと思うのですが、道野さん、再び済みません。 ○道野 回収についてなのですけれども、全世界の国を見てということを我々はやって いるわけではないですけれども、例えば米国にしても、それから欧州にしても、特に欧 州についてはアラートと言って、加盟国の国内検査、それから輸入検査で違反になった ものに関して情報を毎週公表しています。そういうものを見ても、国とか共同体レベル で、違反したものについて回収しないでいいですよと書いているものは、少なくともな いと私どもは認識しています。勿論、もう少し小さな単位でそういった運用をされてい るところが絶対ないと申し上げることはできませんけれども、その辺はよく事実関係を 整理した上で議論すべき部分もあるかと思います。  もう一つは、安全性の話との関係ですけれども、先ほど申し上げたとおり、ADIの 範囲で設定した農作物すべての1日当たりの摂取量を勘案した、その当該農薬の摂取量 がおさまるように基準をつくっているわけですから、一つの農産物の基準違反が、直ち にADIを超えるということは通常考えにくいわけです。そういうことで、私どももプ レスリリースの資料の作成に当たっては、違反食品があった場合に、どのぐらいの量食 べたらADIを超えるのかという試算も含めて公表するようにしてきています。  農薬の基準値の何倍という報道は、一時に比べると、例えば冷凍ホウレンソウの問題 がかなり騒がれたころに比べると、随分減ってきていると思いますし、正しく理解され つつあるのではないかと私の方としては受けとめております。  それから、回収の話に関しては、よく情報を見ていただく、それから事業者の方が多 いですから、事業者の方がきちんと発信していただくということも大事だと思います。 1つは、法律に基づく回収なのか、そうではなくて自主的な回収なのか。それから、回 収の理由は何なのか。ただ、健康上、問題ありませんとだけ書いてしまうと、結局何な のだろうと、かえって消費者の方はいろいろ考えてしまうので、どうして回収している のか。誤認を誘発する、事実誤認をされるおそれがあるからとか、勿論いろいろな理由 はあるのでしょうけれども、そういったことも含めて、きちんと情報提供していただく ことも大切だと思います。 ○中野 ありがとうございます。それで、実際に食品衛生法違反の回収というのは、実 はそんなに多くないですか。 ○道野 食品衛生法に基づく回収の量というのは、そんなに多くはないと思います。多 くの場合、自主回収ですし、勿論明示的に自治体等の検査で違反があった場合、それは ケース・バイ・ケースです。回収命令を出すというのは、確実に回収をしていただくと いう観点から、法津に基づいて命令する。その命令する要因となるものは幾つもあると 思いますけれども、そういう要因に引っ掛かるものは行政命令が出ますし、そうでない ものについては自主回収ということで報告をいただく。役所の方が後でフォローすると いうこともあります。勿論、そうではない、全く法律とは関係なく回収しているような 事例もあります。だから、その辺の内容をきちっと情報発信することが大事だと思いま す。 ○中野 同じ回収をするにしても、これこれしかじかで、こういう理由で回収しますと いうのを詳しくコミュニケーションするというか、情報発信するということが大事なの かなと受け取りました。  阿南さん、消費者のお立場としてどうですか。そういうことで消費者の方は納得され るのでしょうか。より詳しい回収理由を説明することによって、少しは安心しますか、 それともまだまだ甘い。どうでしょうか。 ○阿南 やはり説明は必要なのですね。例えば偽装問題が起こります。食品衛生法には 直接関係ない場合も、今まで回収されたことがあると思います。偽装するような会社は 安全上も問題があるだろうと普通は思います。でも、実際にはそれはわからない。ちゃ んと確認しなければいけないわけです。それでも回収されたりするということがあるの で、そこの切り分けはなぜなのかということを、回収する側がしっかり説明する必要が あると思います。  輸入食品とは関係ないのですけれども、エコナの食用油問題の時、企業は商品を販売 自粛しました。しかしその時、安全だけれども、販売自粛すると言ったことで消費者は 混乱したのです。なぜそうなのか。同じことだと思います。ですから、ちゃんと理由を 説明しなければいけない。食べても余り問題ないのに回収されて、それが廃棄される。 そのむだは消費者だってとても気になります。本当にこれでいいのかと思うので、そこ はしっかりとした説明が必要だと思います。  アメリカなどでは、行政が回収命令を出すことはほとんどなくて、事業者の自主的な 判断で行われると聞いていますけれども、それでもその際にはランクが3つぐらいあっ て明確にされているのだそうです。消費者もちゃんとわかっていて、なぜリコールされ るのか理解できる。そういう仕組みを全体で共有していくことが必要なのではないかと 思います。 ○中野 なるほど、貴重な御意見だと思います。そういう取組みを進めていくことによ って、例えば食品流通の現場、食品の店舗、店頭でこれから仮に回収しなければならな いようなことがあったときに、お客様にどう伝えていくかということで、伊藤さん、流 通からのお立場でコメントいただければと思います。 ○伊藤 どう伝えていくかというのは非常に難しい問題で、長年やってきましたけれど も、なかなか結論が見えない感じがいたします。ただ、先ほどホウレンソウの件を発表 させていただきましたけれども、ADIの問題も、当時、社内あるいはいろいろなお取 引先を通じて、馬のように毎日食べても影響は出ないという言い方もあるとも当時聞き ました。それから、コマツナの基準と比べても、ホウレンソウは厳し過ぎるのではない か。それはなぜかというと、コマツナより日本人は一般的にホウレンソウが好きだから という、とても理屈に合わない説明があったことを記憶しています。  ただ、いずれにしても、実際に回収をさせていただいて、お客様の声をお聞きする中 で、つくづく当時、いろいろなことを言っても、結局は負け犬の遠ぼえだなと思ったこ とを今でも忘れていません。ですから、基本的には基準値については今後改善される部 分もあるかもしれません。法律は法律という考え方を1つ持っておかないとだめなので はないかと、個人的な見解ですけれども、そういうふうに考えさせていただいています。 ○中野 確かに法律は法律で、法律を守る。だけれども、その状況を消費者の人たちに できるだけ説明していかなければならないと思います。  先ほどの御発表で、阿南さんも触れられていましたし、伊藤さんも紹介していたと思 います。ギョーザ事件の事件としての解決がまだなされていないのが非常に不安である ということでした。ちょうど先週でしたか、最近、ギョーザ問題をきっかけにして、輸 入食品の問題を協議していた日中両政府の合意案が明らかになったという新聞記事を目 にしました。まだ新聞記事しか目にしていないので、もうちょっと詳しいことを知りた いと思いますが、その辺り、道野さん、教えていただければと思いますが。 ○道野 先ほど私の方からの説明の中でも少し触れさせていただいたのですが、輸出国 での安全対策の推進という観点で、さきの日中首脳会談において日中食品安全推進イニ シアチブということで、日本側からのアプローチとしては、当然対象は日本に輸入され る食品なわけですけれども、そういった食品の安全性確保ということで、両国間の枠組 み、約束事をつくって協力して推進いきましょうということを日本側が提案したわけで す。勿論、こういった二国間の約束事というのは基本的には相互のものですから、日本 から中国に輸出するものも含めて、どういう枠組みで約束事をつくるか、覚書をつくる かということで、現在、中国側の担当部局間で協議中という内容です。  詳細については、まだ政府間で協議している内容なので、御説明することはちょっと 難しいのですけれども、大きな点としては、閣僚級で年に1回、協議を定期的にしてい きましょう。これは個別問題というよりも、私どもが考えているのは全体の進捗管理と か、日中間の協力がきちんと機能しているのかをレビューする機会として、そういうレ ベルの高いところでの協議というのは意味があるのではないかと思っています。  あとのパーツというのは、基本的に食品の安全対策を講じるために、二国間での技術 的な協力、情報共有とか緊急時の対応ということが想定されるわけですけれども、先ほ ど申し上げたとおり、協議中の問題なので、これこれですということはなかなか言えま せんけれども、そういった内容が入ってくるのだろうとお考えいただいていいのではな いかと思います。  新聞でちょっとミスリードだったのは、立ち入りが可能にということが見出しに載っ たということがあって、役所関係からもそうですし、マスコミ関係からも、その部分に ついては非常に問い合わせが多かったです。単純に考えていただいたらいいのですけれ ども、日本国内に関して、日本の公務員が法的権限を持って立ち入ることはできるわけ です。食品衛生法で食品衛生監視員が日本の食品営業関係施設に立ち入ることはできる わけです。だけれども、日本の役人が国外の主権の及ばない範囲で任意に立ち入るとい うことは、当然できないわけですし、逆もしかりです。中国の公務員が日本でそういう ことはできない。  そういうことができるような仕組みというのは、私が知っている限り、世界じゅうで どこもないです。そこは、二国間での同意と、当該国、主権のある国の政府機関の人の 同行が勿論条件となってくるわけです。そういうことですので、見出しだけ見ると、日 本の公務員が任意に中国の施設に立ち入れるような誤解を生みそうな書き方になってい るのですけれども、そうではありません。  あとは、覚書を結ばなくてもできること、現在やっていることもあるわけですけれど も、そういったことも文書にして整理して、きちんと約束事にするということも意味が あるだろうと私は考えております。以上です。 ○中野 ありがとうございます。その部分は、記者が書き過ぎたわけですね。かように、 またメディアはいいかげんだと言われてしまうのですけれども、いかがですか、阿南さ ん、今ので安心なさいましたか。 ○阿南 私、国と国、政府間同士のやり合いというのは大変なものだと思いました。協 議すると言っても、力と力の対決なのでしょうか。もっと折り合う努力ができないもの かと思ってしまいます。私は、この記事は、立ち入りを容認するとあって、こんなこと が確認できたらいいのではないかと思いました。ギョーザのときは、調査が入るまでや りとりが結構大変でしたよね。これはお互いの国にとってよくないことなので、問題が 起こったときには、すぐ一緒にやってみようといういい関係がうまくつくれないものか と思います。  去年中国に行ったときに、政府の方たちもそういう体制や連携を強めたいということ をずっとおっしゃっていましたので、早くできないものか。もう少し国同士のコミュニ ケーションが進めばいいなと期待しております。 ○中野 片山さんはいかがでしょうか。中国に工場をお持ちで活動も続けていらっしゃ るので。 ○片山 御存じの方も多いと思いますけれども、私ども、1年以上前にインゲンの事件 がありました。イトーヨーカ堂さんに大変御迷惑をおかけしたのですが、その件も犯人 が捕まらない。該当の1体だけ故意に入れられたのではないかという形までしか、捜査 も何も進まないのです。こういういろいろな事例が、例えば日本で起きたときはどうし ているかと思ったときに、例えば食中毒を起こした事業所であっても、それは指導が入 って何日かたって営業が再開されるわけです。犯罪が起きたとしても、そのことに対し て日本ではずっととめるということはないと思います。  ところが、国がまたがってしまうと、そこになかなか話し合いが進まない。そのため に、これが例えば事件性があったとすれば、犯人は喜んでいますね。ずっとこんなこと でとまっている。優良な企業に何か悪さをすれば、その企業はとまってしまう、輸入が できない。そういう意図でやっていると、犯人の思ったとおりになってしまっているの か。こういうことを、国で必要であれば、今みたいにお互いが確認していただいて、優 良な事業者だということは我々も認めている企業さんなので、そういう意味での早い解 決をしていくために、今のようなことが本当に進むとありがたいなと思っています。  このことは、日本にとっていい食品が、日本ではできないものが海外ではいろいろな いいものがある。それを輸入してくるということに大変障害になっているような気がし ます。私どもも大変期待しているところです。 ○中野 ありがとうございました。パネルディスカッションは大体ここまでとしまして、 会場にもたくさんいらっしゃっています。会場からの意見もいただきながら、意見交換 会を進めさせていただきます。  御発言される方は、挙手にてお願いいたします。係の者がマイクを持ってまいります。 それで、発言に際しましては、最初に御所属とお名前をできればおっしゃっていただけ れば幸いでございます。それから、多くの方に発言していただきたいので、なるべく簡 潔にお願いできればと思います。よろしくお願いします。どなたかいらっしゃいますか。 後ろの方、お願いいたします。 ○質問者A 私、貿易会社に勤めておりますAと申します。先生方のお話、大変参考に なりました。2つほど質問がございます。  1つは、法律に関してですが、確かに法律は守らなければいけないと思いますけれど も、例えばスピード違反でも、40キロ制限を42キロで2キロオーバーも法律違反、90 キロで走っても、50キロオーバーでも法律違反。しかし、危険度が違います。同じこと が恐らく食品衛生法等にもあると思います。これは、私どもが思いますのは、阿南先生 の方からお話がありましたけれども、リスクの度合いを、行政の方から何が重要か。つ まり、健康被害が一番危険なわけです。健康被害があるものはこれで、これは軽微なも のだということを是非発信していただきたい。そういう取組みがお願いできないかとい うことが1点です。  それにあわせまして、私ども、海外と日本との法律の整合性というものがないことが 非常に問題になります。例えばEUでOKでも、日本ではだめだというものがあります。 なぜEUでOKなのに、日本でだめか。日本の食事情は確かに違います。しかし、日本 の特殊な食事情というのは限られたものですから、そういうものは協調してほしいです。 これだけ日本は違うから、これは基準が違う。なるべくほかのものは、海外との整合性 をとるような努力をしていただきたいということでございます。  もう一つ、私どもは法律を破れば、自主回収等はするべきだと思います。しかし、な ぜ我々がそれを非常に恐れるかといいますと、コストです。非常に今、コストがかかっ ております。あと、風評被害というものもございます。これは流通の方にもぜひお願い したいのですけれども、実際危険がなくても、何かの商品が1つもし回収があれば、関 連する商品が全部店頭からなくなります。先ほどメキシコ産の豚肉のお話がございまし たけれども、こういうことが言ってみれば回収をしにくくしているのです。もし回収に コストがかからずに、回収がしやすい状況であれば、たとえ2キロオーバーの違反でも 我々は回収するのではないかと思います。ただし、それはコストがかからなければです。  では、コストがかからないためにはどうしたらいいかといいますと、私どもの考えで は、やはり行政にいろいろな場所に掲示板といいますか、こういうものは非常に危ない とか、これは法律違反だけれども、軽微だということを発表する場をどんどん与えてい ただきたい。回収と言った途端に、全国何大紙に全部公告を出してという回収の仕方で はなくて、回収にも比較的コストがかからないやりやすい回収と、本当に危険なものに 関しては全国的に一気にやる回収を明確にしてほしい。これは、是非マスメディアの方 にもお願いしたいのですけれども、そういうことをしてほしいと私どもは常々考えてお ります。その辺について、どのような取組みがなされているかということを是非伺いた いと思います。 ○中野 ありがとうございます。回収について、例えば一律に法律を守るということで あっても、リスクの度合いに応じて変えたらいいのではないかという御意見だと理解し たのですが、それでよろしいですか。  あと、例えば流通現場で、回収したためによけいに風評が広がったり、そういうこと をどう考えていったらいいのかということかと思います。何人かにコメントいただきた いのですけれども、流通の代表として伊藤さんはいかがでしょうか。 ○伊藤 法律の問題については、そうあればいいと思うことも、これまでの経験の中で たくさんあったことは事実です。行政なり、いろいろなところで検討が進めばいいと思 います。  それから、回収の問題について、コストと小売・流通の対応という部分で、よくそう いった御批判を受ける場合があるのですけれども、個別・具体的な事例として承ったこ とは、当事者として直接はなかなか機会がございません。ただ、鳥インフルエンザの問 題のとき、それから今回の豚インフルエンザ、新型インフルエンザになりましたけれど も、そのときに少なくとも業界と相談させていただいて、加熱して食べる分には何ら問 題はないということを、これは卵も含めて、過去何回かやってきておりますので、その 成果はきちっと出ているのではないかと、個人的な見解ですけれども、考えております。  コストは本当にかかりますね。ホウレンソウをやってみて、つくづくわかりました。 最後の最後まで。廃棄処分するのにマニフェストというのが要るのだということを数年 前に知りまして、選挙だけではないのだと思ったわけですけれども、実はホウレンソウ が保管されている営業冷凍庫が埼玉県にありまして、我々の営業主体は当時、港区芝公 園にありましたから、東京と埼玉にまたがったということで、行政間同士の手続の煩雑 さも含めて、非常に時間がかかったことを覚えておりますし、当時でも大手4大紙に新 聞社告を出すと幾らになるのかということも、いろいろ情報として確認したことがござ いますので、本当にコストがかかるということについては我々も認識しております。  少なくともイトーヨーカ堂の品質管理部門が社告を出して回収すればという言い方を することは絶対にございませんので、その辺だけは知っておいていただければと思いま す。以上です。 ○中野 ありがとうございました。確かにコストがかかるというのは大変な問題で、そ のコストというものは、結局商品にはね返ってくることもあって、そうすると消費者の 立場としては、物がだんだん高くなって困るということになるかと思います。阿南さん は、その辺りどうでしょう。 ○阿南 今、発言された方と同様に思います。余り健康に影響のないものを回収すると なると、事業者も大変ですし、資源としてももったいないわけです。回収して、全部廃 棄処分するためにはコストもかかるし、もったいないしということで、とても気になっ ているところですので、是非そういう仕組みができたらいいと思います。  同時に、消費者にちゃんとその問題の内容が明らかにされる。安全の問題なのか、そ れとも詐欺的な問題なのか。先ほども言いましたけれども、事実をちゃんと明らかにす る。リスクの程度もどの程度なのかということをしっかりと伝える。そうしますと、消 費者自身がそれをどうしようか。食べるか食べまいか。捨てればいいのかということを 判断できますね。そんな仕組みが重要だと思いました。  それと1点、今、豚インフルエンザのときの話が出ました。私、豚インフルエンザと 報道されたときに、熊本に出掛けることがありまして、帰りの空港で熊本の有名なラー メンを出すお店に入りました。スープに豚骨を使っているのです。そうしましたら、ラ ーメン屋さんに食品安全委員会の委員長談話が張ってあったのです。今回のインフルエ ンザは、豚に関連した食品から感染することはなく、食べても大丈夫ですと、食品安全 委員会の委員長が談話を出したのですがそれが張ってありました。私は、へぇっと思い ました。こんな伝え方も非常に重要なのではないか。勿論、そこは事業者でしたけれど も、よくわかりました。ありがとうございます。 ○中野 あと、今の方の御質問というか、御意見の中に、海外の法律との整合性がない のではないかという御指摘がありました。これについては、道野さん、もしコメントい ただければお願いできますか。 ○道野 残留農薬基準のつくり方については、先ほど申し上げたとおり、輸出国での基 準、それから国際基準も基本になるわけですけれども、そういうものを配慮してつくっ ているということです。  全体的な枠組みとしても、WTO協定の中にSPS協定といいまして、こういった食 品の安全、動植物検疫に関しての約束事というものがあります。その中では、国際基準 が基本的に原則で、科学的正当性がある場合、国際基準よりも厳しい措置をとることが できるということですので、私どもがつくっている規制・基準というのは、基本的にそ れに整合していないといけないわけです。  それと同時に、その基準をつくるときには、WTOを通じて世界各国に通報して、国 内でも今回の計画と同じで意見募集をしています。勿論、国際基準がないものもあった りするわけですけれども、そういうものに関しても、基本的には科学的根拠というもの が必要なわけですから、それが各国で大きく違うということは通常ないわけですので、 そんなに大きな基準の違いは出てこないと思いますけれども、個別に見ていくと、例え ば国際汎用添加物の問題とか、まだ作業中のものもあると思いますので、その辺は私ど もの方の状況を見ながら、また御意見等、賜ればと思います。 ○中野 ありがとうございました。ほかにどなたかいらっしゃいましたら、挙手をお願 いできればと思います。せっかくの機会ですので、どうぞ。女性の方、お願いします。 ○質問者B 山梨から来ましたBと申します。私、何回もこの輸入食品に関するリスク コミュニケーションとか、そのほかに出ているのですけれども、こんなに静かなのは初 めてでして。それはさておき。  私たち消費者にとって、情報というものは非常に少ないのです。特に私は山梨に住ん でおりますので、ほとんど情報がない。見るのは、結局メディアに出されたものになっ てしまいますので、さっきおっしゃられたいろいろなことが、そんなことはないだろう と思うこともあるのですけれども、大体はメディアを信じてしまう状況にあります。そ ういう意味で、地方にこういうことをきちんと知らせる機会というものはないものかと、 つくづく思います。  具体的に言いますと、例えばBSEの問題などは、最近ほとんど言われなくなってい るのですけれども、アメリカから輸入されたものの中にSRMが混載されていたという 事件は、何回もあるわけですね。でも、そういうことについて、最近はほとんど報道も されませんし、私たちも鎮静化していると思います。先ほどの報告にもあったように、 私たちはダウナー牛みたいなものが、それはずっと前から排除されているのだと思い込 んでいたら、今さらそれは排除されることになったみたいな話は、本当に驚きです。  ですから、世界的にBSE問題が終息したと言う人もいますけれども、そういう点に ついてきちんと情報を、どちらかに都合が悪いことでも発信していただくことが必要で すし、特に地方にはそういう機会をたくさんつくっていただくことが必要かと思います ので、そういう点について皆さんの御意見を伺いたいと思います。 ○中野 ありがとうございました。そうしましたら、私、メディア代表ですので、僣越 ながらちょっと意見を述べさせていただきます。  確かに地方に住んでいらっしゃって情報が少ないというお気持ちは、お察しいたしま す。ただ、最近はインターネットという便利なものも大分皆さん活用されるようになっ て、世界の極地にいても、どこにいても情報は得られる環境になってまいりました。  それで、先ほどの私の発表では、メディアは結構うそのいいかげんなことを言うので 気を付けなさいみたいなことばかり言いましたけれども、では一体何を信じればいいの かと更に不安にさせてしまったのかなという反省も至極です。ただ、インターネットも 含めてたくさん情報があるので、一つの情報だけに頼り切らずに、複数の情報を並列に 見て、そうしますと、ここの記者は変なことを言っているなとか、ここはちょっと怪し そうだなということもわかってくるかと思います。一つの情報ソースだけではなくて、 なるべく複数のものを見るようにする。  それから、先ほど阿南さんからも御紹介があったように、食品安全委員会も一生懸命 インターネットで情報発信しています。先ほどの熊本のラーメン屋さんも、委員長談話 を恐らくインターネットでダウンロードして、それを店内に張ったのかなと思われます。 ですので、食品安全委員会のホームページも、一般の人が見てわかりやすいようになっ ているかと思います。  ただ、厚生労働省のホームページは、専門用語が多くて、まだちょっと難しいとか、 あと厚生労働省はカバー範囲がとても広いので、食品のところまで行き着くのになかな か難しいというところはあります。ただ、それでも随分ましになったと言ったら失礼で すが、よくなったと思います。  ですから、以前に比べて情報の種類はたくさん増えています。そこで、一つの情報で はなく、できれば複数の情報を得て、それで冷静に判断していただければと思います。 ほかの方、例えば道野さん、いかがでしょうか。 ○道野 まず、BSEの話なのですけれども、済みません、私の説明がよくなかったの かもしれませんけれども、アメリカの歩行困難牛の食用牛の処理からの排除というのは、 発生当初から実施されています。勿論、運用についての改善が数年前にあったり、それ から1997年以来の飼料規制についても、去年10月から更に強化されたとか、いろいろ な動きはありますけれども、そういった細かいことについてきちんとお伝えしなかった ので、少し誤解があったかと思います。申しわけありません。  それから、情報発信というか、私どもの情報を見てもらいたいということで、ホーム ページの改善にはいろいろと知恵を絞っているのですけれども、なかなか内容的に難し いということもありますし、何とかわかりやすくしようということで努力はしています。 勿論、インターネットの利用ということに関しては、すべての方がということはなかな か実際には難しいという部分もあります。そういったことで、幸いにして、こういう衛 生行政に関していえば、地方の場合には保健所のネットワークもあるわけですし、そう いうところに問い合わせていただくのも一つのやり方ですし、それ以外にも各自治体で こういう食品の安全とか品質についての窓口も、行政の方も設けていますので、そうい うものも活用していただければと思います。  最後、厚生労働省のホームページの件につきましては、我々も改善しようということ で、2年ぐらい前から少しずつではありますけれども、直してきています。特に輸入食 品のホームページに関しては、食品のカテゴリーの中では一番アクセス数が多いことも あって、更にまたよくしていきたいと思っています。ただ、我々のアイデアは限界があ りますし、ホームページの改善についても是非御意見をいただければと思いますので、 よろしくお願いいたします。 ○中野 そろそろ時間もなくなってきましたので、最後に阿南さんと残りのお二人、お 三人に今のことに関してコメントをいただければと思います。阿南さんからお願いしま す。 ○阿南 ありがとうございます。私は、今日もこの会場に大勢いらっしゃっていますけ れども、消費者は余りいないのですね。この前の大阪会場でも消費者はとても少なかっ たです。私は、とても責任を感じています。何か問題があると、参加して、わあわあと 言う。何も問題がないと、本当は問題がないわけではないのですけれど余り来なくなっ てしまうというのは、消費者としてはいけないことだと思います。  今だって、食中毒の問題を始めとして、重大問題はいっぱいあるわけです。そんなこ とを考えると、消費者の関心を持続していくために私たち消費者団体はもっと役割を果 たしていかなければならないと思います。各地での呼び掛けを強めて、もっと関心を高 めるための取り組みを強めていきたいと思います。食の安全については消費者自身の責 任も重大です。田草川さんのところとも一緒にやれればと思いますので、是非よろしく お願いします。 ○中野 ありがとうございます。伊藤さん、お願いします。 ○伊藤 多分、こちらから出向くということも一つの方法かと考えています。と言いま すのは、機会があって札幌消費者協会からお呼びがあってお話をさせていただくとか、 それから事業関連の方々でも、先日、私の後任のボスになった山田というのが、熊本の 天草の生産者の会合に呼ばれてお話をさせていただいています。そういった機会にすべ て応じるわけにはいきませんけれども、一つひとつを重ねていけば大きな力になるので はないかと考えています。  非常に記憶に残る出来事が実はありまして、数年前に仙台の会合に呼ばれて、石巻の 会場まで出向いて、そこで消費者、お客様といいますか、主婦の方々と懇談することが ありました。その直前に厚生労働省から、水銀の問題で、妊婦はキンメダイを食べるな、 中トロは1日に3かんまでとか、2かんまでという情報が流された時期があって、たま たまあの辺にサメを食べる習慣があったものですから、イトーヨーカ堂では販売を勿論 中止していましたけれども、系列のヨークベニマルさんでは販売していました。そうい うことを含めて、こちらから質問させてくださいということで、その場にいらした皆さ んにお聞きしたことがあります。  厚労省から発表されたサメの水銀の問題について、心配はないのですかと聞いたとこ ろ、「あんなもの、何も心配してねえ。昔から食ってっから」と言われました。そういっ た一言をいただくのは、非常に大きな情報だったと今、思っています。ですから、何か 機会があれば、できるだけ時間をつくって出向くようにしたい。これも何らかの方法の 一つでしかありませんけれども、そういった対応をとっていきたいといつも考えており ます。以上です。 ○中野 片山さん、お願いします。 ○片山 今日全体を通しての個人的な思いを2つ。  1つは、初めにあった基準と健康影響、安全性というときに、例えばポジティブリス ト制度の問題、農薬というときは、これは食品衛生法の中で、危害があるない、健康を 守るための法律だと私が思っているところの基準がそうなっていると、基準を超えたと きに危害があると単純に思う人は多いのではないか。これは、農薬取締法であれば、実 は農薬の使い方が悪いということで基準を設定して、その結果になっていないのだから 使い方が悪いのだという取り締まりの方法があります。そこに誤解を生じやすいかなと いう感想があります。  もう一つ、コストの話がありました。私どもも企業ですから、コストも考えなければ いけないのですが、これは全体として、国としてもいろいろ見直しの中で、本当に食品 衛生のところで食中毒がどのぐらい出て、いろいろなところの被害がどうなっているか。 自殺が3万何千人も出ている、食中毒で何人。そういうときの人の命を守るために、ど こにどうお金を使ったらいいかというのを本当に考えないといけない。ここは冷静に、 私ども企業からもいろいろな情報を発信していかなければいけないですし、そこは考え ないと、国全体が回らなくなってしまうことを非常に恐れます。  最後に情報のことですけれども、先ほども情報発信、非常に少なかった。阿南さん、 消費者団体から言うと、やっていることが悪いと言うのではなくて、まず少ない。そこ を直してくれということを言われていますので、これは精いっぱい今後も努力して、安 全・安心に取り組んでやっている姿が見えるような形にしたいと思っています。以上で す。 ○中野 ありがとうございました。まだまだ議論していきたいのですけれども、時間も オーバーしてまいりました。残念ですけれども、今日はこれまでとさせていただきます。 ありがとうございました。司会にお戻ししますので、よろしくお願いします。 ○司会 中野様、どうもありがとうございました。また、パネリストの皆様、どうもあ りがとうございました。皆様方から壇上の皆様に拍手いただければと思います。よろし くお願いします。(拍手)  どうもありがとうございます。本日は、長時間にわたりまして、意見交換会の円滑な 運営に御協力いただきまして誠にありがとうございました。繰り返しになりますけれど も、平成22年度輸入食品監視指導計画(案)につきましては、現在パブリックコメン トを募集してございますので、御意見等を是非お寄せいただければと思います。よろし くお願いいたします。  以上をもちまして輸入食品の安全性確保に関する意見交換会を閉会いたします。なお、 出入り口、受付の方でアンケートの回収を行っておりますので、御協力をお願いいたし ます。お忘れ物などございませんように、お気を付けてお帰りくださいませ。  本日はどうもありがとうございました。 照会先:食品安全部企画情報課 03-5253-1111(内2493/2452)