10/01/25 平成22年1月25日(大阪市)食品に関するリスクコミュニケーション〜輸入食品の安全性確保に関する意見交換会〜           食品に関するリスクコミュニケーション          −輸入食品の安全性確保に関する意見交換会−     日時:平成22年1月25日(月)13:30〜16:00 場所:天満研修センター205ホール(大阪市北区錦町2−21) ○司会(北村)  皆様、お待たせいたしました。ただ今から「食品に関するリスクコミュニケーション −輸入食品の安全性確保に関する意見交換会−」を開催いたします。  本日はお忙しい中ご参加いただきましてどうもありがとうございます。  私は、本日の司会役を務めさせていただきます厚生労働省医薬食品局食品安全部企画 情報課の北村と申します。どうぞよろしくお願いいたします。  厚生労働省では、毎年度、輸入食品監視指導計画を定めまして、重点的かつ効率的な 監視指導に取り組んでいるところですが、本日の意見交換会は輸入食品の安全性確保に 関する情報提供、各関係者さんからの講演、パネルディスカッション、意見交換を通じ まして、輸入食品の安全性確保についての理解を深めていただき、関係者の間での認識 を共有していただけましたらと考えてございます。なお、「平成22年度の輸入食品監視 指導計画の(案)」につきましては、現在パブリックコメントを募集中しているところ でございます。  まず最初に、資料の確認をお願いいたします。  受付で封筒をお渡ししておりますけれども、その中に、まず1枚紙で「食品に関する リスクコミュニケーション〜輸入食品の安全性確保に関する意見交換会〜」という紙が ございます。その下のほうに、配付資料というふうに書いてございますけれども、まず 資料1−1としまして、「平成22年度輸入食品監視指導計画(案)の概要」、資料1−2が 「平成22年度輸入食品監視指導計画(案)」、資料1−3がパワーポイントの資料になりま すが、「輸入食品の安全性確保について」、厚生労働省の資料です。資料2が「輸入食品 の安全性確保についての私たちの取り組み」ということで、全国消費者団体連絡会さん の資料です。資料3が「輸入食品の安全確保の為の取り組み」、イトーヨーカ堂さんの資 料です。資料4が「輸入食品の安全性確保のための取組について」、ニチレイフーズさん の資料です。資料5が「輸入食品・報道現場からの問題意識」ということで、日本放送協 会さんからの資料です。  そのほか、参考資料としまして「食品の安全確保に関する取組」というパンフレットを 同封しております。また、今後の参考にさせていただくためにアンケート用紙を同封さ せていただいておりますので、ご協力のほうよろしくお願いいたします。  資料の不足等ございませんでしょうか。よろしいですか。もし途中で資料の不足等ご ざいましたらスタッフにお声をかけていただきますようによろしくお願いいたします。  続きまして、本日の進行について簡単にご説明いたします。こちらの次第をごらんく ださい。  まず最初に、輸入食品の安全性確保について、厚生労働省の西村補佐からご説明いた します。続きまして、全国消費者団体連絡会の阿南様、株式会社イトーヨーカ堂の伊藤 様、株式会社ニチレイフーズの片山様から、それぞれの立場におけます輸入食品の安全 性確保のための取り組みについてご講演いただきます。また次に、日本放送協会(NH K)の合瀬様より輸入食品報道現場からの問題意識についてのご講演をいただきます。  講演終了後、10分程度の休憩をとらせていただきまして、3時少し過ぎからパネルデ ィスカッション、意見交換を行いまして午後4時の終了を予定してございます。長時間 になりますが、ご協力をお願いできればと思います。  それでは、早速でございますけれども、厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課 輸入食品安全対策室の西村補佐から「輸入食品の安全性確保について」情報提供をいた だきます。よろしくお願いいたします。 ○西村室長補佐 ただ今ご紹介いただきました厚生労働省の西村と申します。本日はよろしくお願いいた します。  時間も限られておりますので進めさせていただきたいと思います。本日は輸入食品の 安全性確保ということについて話を進めていきたいと思います。  厚生労働省として行っております輸入食品の監視体制の概略を図にさせていただいて おります。輸入食品の監視体制というのは、輸入食品監視指導計画、今案文を、資料が 手元にあるかと思いますが、それに基づいて監視指導を行っております。  大きく3つに分かれておりまして、輸出国の段階、輸入時、そして都道府県が主に行 っております国内の段階というふうに分かれております。本日は、私どもが担当してお ります輸出国の段階と輸入時の段階について話をしていきたいと考えております。  輸入食品の監視指導計画につきましては、従来より輸入時、検疫所における検査、モ ニタリング検査、命令検査等の検査が行われておりますが、違反情報等につきましては、 必ず厚生労働省に上がってまいります。厚生労働省から各在京の大使館等に情報を提供 しております。  この赤い部分、輸出国の段階ですけれども、上がってきた情報につきましては、大使 館を通じまして相手国、生産者に対して原因究明、再発防止策をとっていただくという ことにしております。検疫所においても輸入者を通じてそのような指導を行っているの ですけども、厚生労働省としましても大使館を通じて指導を行っております。二国間協 議を通じて行われております。必要に応じては、数枚後のスライドに出てきますけれど も、相手国に行きまして、相手国の政府の方々、農場の方々と話し合いをして相手国に おける対策、現地調査をしております。これは決して机の上だけで話し合いをしている のではなくて、農場まで出て行きまして農場でどのような対策が行われているか、使用 農薬はどうなっているのか、使用自体はどうなっているのかということを逐一詳しく調 査をして、原因究明ができているのかどうかということを見てきております。  その対策ができてくると、では、どういうふうなことをすればいいのかと。相手国で 検査をして、検査で合格したものだけを日本に輸出する、それについては、その成績書 を必ず添付、日本の政府に提出する、いろいろなやり方はあるのですけれども、そうい うことを、話し合いをしてくるということも輸出国に対して大きな業務となっておりま す。  従来は輸入時における検査によって水際での違反食品を排除しようというふうに考え ていたのですけれども、もう少し川上に行きまして、相手国から日本の基準に合った物 を輸出してもらおうというふうな考え方に基づいて、このような業務を行っております。  先ほどの話とダブるかもしれませんが、我々、我が国食品衛生法の資料提供としまし て、今回皆様にお配りしておりますような監視指導計画につきましても、ホームページ に載っております違反情報につきましても、すべて英語にしまして相手国代表在京大使 館にすべて提出して情報提供していると。ホームページもよく見ていただいているので すけれども、情報提供が遅かったのですけれども、極力早くしようということを心がけ ておりまして、英語版のものについても即刻載せるような努力はしております。  ここに書いてあります二国間協議、現地調査等なんですけれども、二国間協議としま しては、本年度大きく3つございまして、アメリカとの間におきまして残留農薬の監視 体制についての取り決めを決めたということと、鳩山総理大臣が中国に参りまして「日 中食品安全推進イニシアティブ」の覚書についての早期締結をしようということを決め てきております。これは今現在、話し合いを鋭意進めている段階でありますので、具体 的なことはちょっとまだ発表する段階ではないというのが現状であります。  あともう一つ、日中韓保健大臣会合におきまして、三国間における食品安全に対する 協議の仕組みに対する覚書をしたと。こちらは三国の国内で起きている食中毒状況など の情報提供を速やかにしようということの覚書をしております。  今まで問題が起きたことに対して原因究明、再発防止策のために現地調査を行ったり するということをお話ししましたけれども、本年度から相手国の法体系がどうなってい て相手国の輸出に対する監視体制がどうなっているのかということを情報収集いたしま して、実際にどのように動いているのかということを、相手国に行って現地を見て違反 になった食品に対する現地調査とは別に、相手国の実態を見てこようということを計画 しております。  もう一つ、相手国の生産者、相手国の政府に対することだけではなくて、輸入者さん に対しまして輸出国の段階の、衛生管理の推進をしていただくということも大きなこと であろうと考えております。一昨年に起きました中国におけるギョーザ事件を機に、相 手国の生産工場における管理体制というのをどのようにしたらいいのかということを指 摘されまして、昨年の6月に、「輸入加工食品の自主管理に関する指針(ガイドライ ン)」を作成いたしまして、それを各企業、輸入業者だけではなく輸入業界、食にかか わるすべての方々に知ってもらうために説明会等を開き、またホームページにも載せた りもしまして周知をしているところであります。  この中に書かれていることは、あくまでもガイドラインでございまして、ごく一般に 言われているハサップの手法を用いた等の食品の管理体制というものの例を例示してあ ります。それ一つ一つに関して輸入業者さんの、自分たちのレベルに合わせてというの ですか、海外に駐在員を派遣することができる企業の方はしていただくし、それに向け て努力をしていただくということを書かれております。日本国内においてハサップとい うものが法令化されて義務化されているわけではないのですけれども、グローバルスタ ンダード化になってきますので、こういった手法を踏まえて推進しまして、このガイド ラインの中身は書かれております。  監視指導計画の中に1つ書かれていることは、従来、海外から貨物を持ってくるとき に、事前にサンプルを日本に持ってきてサンプルの検査をしていただくということを推 進していたのですけれども、昨年ちょっと不祥事がございまして、その不祥事の対策と しまして、検疫所において品目登録制度という制度がございますので、その制度を利用 した先行サンプルの輸入の推進をしていくということを考えております。品目登録制度 というのは従来からあったのですけれども、先行サンプルに関しましては、品目登録制 度は対象外であったのですけれども、どうしても厚生労働省としまして、検疫所としま して先行サンプルの情報というものが我々のデータベースに載せたい、輸入者さんみず から先行サンプルを輸入して検査をすることについて引きとめることはないのですけれ ども、その物の情報というものは輸入者さんの手元だけに残っていたものを、どうして も我々のコンピューターのデータベースに入れまして次回以降2回目以降輸入したとき に、その物がどういう形態で検査をされているのか、どういった工場で実際に製造され ているのかということを知るために品目登録制度というものと結びつけまして、輸入前 の検査の促進をしていこうというふうに考えております。  これは、過去1年間に我々、厚生労働省、海外の視察に行った例を示してあります。  つい最近ではオーストラリアに牛肉の調査に行ってまいりました。また、カナダ、ア メリカにつきましては、BSE関係の登録輸出した業者の日本に対する遵守義務を守ら れているかどうかというチェック、それ以降につきましては、チリは昨年起きましたダ イオキシンの問題の原因究明、現地はどうなっているのかということの調査、それ以降 は農薬等の検査になっていますけれども、検査命令にかかっていて、相手国において対 策がとられたということの検証のためにそれぞれの国におきまして現地農薬の使用方法、 農地及びあとは製造工場を見て政府機関の職員と話し合ってどういう形で日本に輸出す るかということの話し合い、調査をしてきております。  これは1例、2例としてアメリカの牛肉と中国のホウレンソウのことについて例示を させていただいておりますけれども、対日輸出条件としましては、特定危険部位の除去 と20カ月以下の牛を日本に輸出するということが決められておりまして、アメリカでは FSISというところとAMSというところが、その施設に対してチェックを行ってい ると。そのチェックにつきまして日本から職員が出向きまして、チェック体制がちゃん とできているか、対日輸出施設がその遵守事項を守っているかどうかということを見て きております。これは資料に載っていなくて写真を数枚載せておりますけれども、実際 に受け入れのときの書類を見て、そのものが来ているかどうかのチェック、ここがコン テナで歩いてくる間に歩行困難の牛がいるかどうかというのを、ここにアメリカの職員 が見てチェックしているところとか。これはカナダなんですけれども、牛の耳に無線の ものがついていてID番号でもわかるというシステムがカナダでできていると。あとは、 それぞれ解体していくときにこの合い札、番号をつけていきましてそのものがどういっ たものであるか全部わかるようにしてあると。これは脊髄を除去する状況です。これは 部分に分かれていくときに、それぞれにまたタグをつけていって、そのものが本体と分 かれていっても番号でわかるようなシステムをつくられているということです。  最後に、箱にはそれぞれ日本向けだとわかるように赤いマークをつけたり日本語のシ ールをつけたりして日本向けだということがわかるような、最後の最後までチェックを 怠らないようにしているということであります。  こちらは中国のホウレンソウなんですけれども、先ほどお話ししましたように生産農 家、加工工場、輸出と3つの段階に分かれていまして、それぞれの農家に行きまして使 用農薬がどのように使われているのか、使用農薬の統一購入、これはちょっと日本では なかなか考えにくいんですけれども、まがいものの農薬というのが随分と売っているそ うで、農薬が本当にその農薬かどうかというチェックから始めるということになります。 そのために、通常はこの加工工場と生産農家が直接契約をしておりますので、ここが決 めたものを必ず使うと、一括購入をして農薬を配ると、そのもの以外は使わせないとい うことをしております。農薬の使用基準、記録簿を見て使用農薬の分析をし、日本の基 準に合ったものをつくり、輸出すると。日本で万が一、基準に合わないものが見つかっ たとしても、必ずトレースバックができてどこの農家でつくったもの、いつ出荷したも のかわかるという仕組みができ上がっております。  これはオオバなんですけれども、写真で、日本のスーパーで売っているように現地で もって輪ゴムをつけてきれいな形で日本に持ってくる。これは各工場には農薬の使用基 準は必ず掲げられております。これは記録簿を全部こういった形でというのは、農場な り検査場にて確認をしてくるという業務はしております。これは農薬の希釈のためのバ ケツ、これは噴霧器、日本製らしいんですけれども、そういったものまで全部農場の小 屋の隅まで行って確認してくるということをしております。  次に、輸入時のチェックなんですけれども、検疫所におきまして行う業務として書類 審査、書類審査したものについて検査命令、モニタリング検査、輸入者による自主検査 というものをしまして合格、不合格というのが出てくるんですけれども、それぞれの検 査につきましては、昨年度の実数が書いてあるんですけれども、簡単に説明をしますと、 安全だと言われているものは貨物の流通を認めながらモニタリング検査をしていく、モ ニタリング検査で違反が見つかったもの、これは日本食品衛生法に合わないというもの についてはモニタリング検査を強化すると。通常は30%の割合で強化をする。10件の届 出のうち、3件の検査をする。それでまた違反が見つかったものについては、それは特 異的な例ではないと、全体的な汚染があるんだということで、すべてのものについて検 査をする。検査命令ということで貨物をとめ置いて検査をしていただく。違反が出た段 階で輸入者さんについては原因究明をしていただくということになるんですが、それで も違反がやまない、違反が出続けるといった場合に包括的輸入禁止条項として輸入を禁 止できるという条項も食品衛生法の中で設けられております。  これは、今お話ししました検疫所で行われておりますチェック体制についてのことで あります。モニタリング検査につきましては、来年度は、最後のスライドに出てくるん ですけれども、1,600件ほど検査項目をふやそうと考えておりまして、輸入してくる貨 物については食品群ごとに来年度160品目群に分けまして、それぞれの危害分析、安全 性とか違反率とかというものを確認しまして、検査件数を決めてまいります。  先ほど申し上げましたように、違反の蓋然性が高いといっているものについては検査 命令を実施していくと。監視指導計画の主な改正点につきまして、1,600件ほどモニタ リング検査件数をふやすと。おもちゃの規格基準が変わりましたので、検査を強化、追 加をしていこうとです。  それと、モニタリング検査の実施強化後、1年もしくは60件の検査について違反がな いものについては検査強化を解除しようと。それともう一つ、検査命令については2年 間の違反事例がない、もしくは1年間の違反事例がなくて300件以上の検査があったも のについては検査命令を解除しようというふうに考えております。ここら辺の数字につ いては、過去数年間の実績を全部洗い出しまして、違反が出るものについては60件を満 たずに検査命令へ移行しているというものがほとんどでありまして、60件を超えて検査 をしたものについて検査命令に移行しているというものは、もうほぼないという状況で、 このような経験則に基づいてこういったような数字を決めさせてもらっております。  これ以降は参考資料になっておりますので、私の説明よりもわかりやすく書いてある かとは思いますけれども、よくお読みになっていただければと思います。  先ほど、司会の者も申しておりましたけれども、ただ今ホームページに書かれている 監視指導計画につきましては、パブリックコメントを求めておりますので、皆様方の貴 重な意見をファクスでもインターネットのメールを通じてでも募集しておりますので、 1カ月間あるのでよろしくお願いしたいと思います。  どうもありがとうございました。 ○司会(北村)  はい、どうもありがとうございました。  続きまして、全国消費者団体連絡会事務局長の阿南様から「輸入食品の安全性確保に ついての私たちの取り組み」ということでご講演いただきます。どうぞよろしくお願い いたします。 ○阿南事務局長  皆様こんにちは。全国消費者団体の阿南と申します。よろしくお願いいたします。  私どもの輸入食品の安全性確保について、消費者団体としてどのような活動をしてい るのかということで、問題意識とともにお話しをさせていただきたいと思います。  全国消費者団体は全国で43の会員団体の方たちがいらっしゃいまして、それぞれがそ の地域で主に食の安全に対する取り組みが多いですが、活動をしておりますけれども、 全国消団連はその組織をつなぐネットワーク組織でございます。  今年度の主な活動について紹介したいと思いますが、まずは消費者庁をつくる運動が メインの取り組みでした。消費者庁は、9月1日にスタートいたしましたけれども、そ の後もそれをサポートする取り組みなどを精力的に進めているという状況でございます。  食の取り組みについては、水産資源の学習会ですとか、問題になりましたエコナの食 用油の問題ですとか、食品工場に、主にハサップとの関係で見学会の活動などもやって おります。他に講演活動ですとか、意見交換会や意見表明もしております。また、冷凍 食品協会さんが主催された中国食品工場の視察会というものにも参加させていただきま して中国に行ってまいりました。このような年間の活動を進めているところでございま す。  その中国視察の報告を載せております。昨年の8月に行ってまいりました。訪問しま したのは山東省というところです。山東省の検疫局に行き、見学したり、山東省の副知 事さんともお話をさせていただく機会を得ました。  この下にありますのは国家レベルの検疫局ですが、ここの局長さんともお話をさせて いただきました。中国の検疫局は非常に力強く活動していました。検疫官がそれぞれの 輸出向けの食品工場に常駐したり、巡回してチェックをしたりということがわかり、体 制がものすごく強化されているという印象を受けました。この横の右上にあります写真 が、検疫局の中の一室のものですが、検疫官が常駐している工場ですとか、管理してい る畑や養殖池といったところのモニターをしているんです。それらが全部この一カ所で 見られるようになっているんです。今どういう状況になっているかというのが一目でわ かるようになっています。  その下の写真はその検疫局の検査センターであります。すごい機器がそろえられて、 検査が行われていました。  これは安丘市というところの輸出向けの農産物を生産しております畑です。現地では 基地と呼ぶんだそうですけれども、そこを見学させていただきました。これはショウガ 畑でしたか、このような形で管理をされているということで、輸出向けに使用される農 産物の基地は決まっていますし、工場とも連携をとっていて、ここの基地、畑からの生 産物を契約している工場で生産してそれを日本に加工して輸出するという形の連携がと られていました。  この横にありますのが農薬の配送センターです。話を聞きますと、中国の農業者が安 い農薬を使ったりすると、日本の基準では使ってはいけないような農薬もあって、その ための問題が非常に大きいということで、輸出向けの畑で生産する場合は、この農薬の 配送センターから農薬を買って、それを使ってくださいといっています。そして、その 配送センターは農薬の使い方について、日本向けでしたらこの農薬を使う、この農薬は 使ったらいけないというふうなことがしっかりと管理をされているということで、当然 価格は高いわけですけれども、それを政府としてバックアップする、支援するという制 度もできていました。さらにその農薬を買った農家に対してこれをどのように使うのか ということも、指導者がそのセンターにいて、必ずその指導者の指導を受けながら農薬 を使用するという状況がつくられていました。  これは青島にあります亜是加食品、加ト吉さんがやっている食品工場ですけれども、 冷凍うどんですとかをつくっています。そこに行って、検査センターも見させていただ きました。  下の写真にありますけれども、このように中国政府の検疫局の監視があるということ が、プレートにして工場にはってありました。竜大の食品工場にも行ってまいりました。 ここは中国国内でも大きな食品工場ということで、日本向けにも業務用の冷凍食品など を生産していました。  こんなことを見せていただきました。輸出向けの工場の生産がどうなっているのか、 検疫の体制がどうなっているのか、実際にチェックがどうなっているのかということを 説明していただいたわけです。政府の方たちともお話をしましたけれども、ギョーザの 問題がありましてから、日本の消費者の不信感が大きくなり、とにかく売れないという 状況なので、中国政府とすれば何とか日本の消費者に安全・安心をわかってもらいたい ということで徹底的な取り組みをしていると言っていました。全部、日本向けの食品に ついては日本の基準を導入して、これは非常に厳しい基準だと、世界一厳しい基準だと おっしゃっていましたけれども、それを達成するために徹底的な努力をするとおっしゃ っていました。日本の消費者の皆さん、ぜひ安心して使っていただきたいと力説されて いました。  私たちの食生活を考えますと、半分以上は外国産の食品を食べているわけでして、そ うした現実を踏まえながら、では一体どうしたらそれを安全に管理し、安全に食べるこ とができるのかということを考えていく必要があるのではないかと思っていますが、次 に、こうしたことについての問題意識を挙げてみました。  やはり輸出国の食品安全政策ですとか状況について、私たちはしっかりと知る必要が あると思います。輸入量が大きいのは中国、アメリカ、それから東南アジアなどですの で、そこでの体制などをもっとしっかり勉強する必要があります。気になっております のは、やはり中国で、中国製冷凍ギョーザ問題は未解決な状況ですので、こうした状況 が今でも日本の消費者の、やっぱり中国食品は危険よねというふうな認識の固定化につ ながっていると思います。なかなか不信感が払拭されない要因になっていますので、こ の冷凍ギョーザ事件については、解明を急ぐ必要があるのではないかなと思っておりま す。  それと、もう一つは、アメリカですが、昨年ですか、ピーナッツバター、ピーナッツ 製品によりますサルモネラの食中毒が非常に大きな問題になってかなりの被害者が出て いると、100万人ぐらいの被害者が出ているということでした。こうしたことも大きな 問題だと思いますし、O−157とリステリアについても、これもアメリカで起こった ことですが、昨年、ホウレンソウのO−157汚染による食中毒がすごく広がったとい うことです。もともとアメリカは肉が主食の国ですから、そういう肉製品ですとこうし た被害というのは大きくなる可能性は大きいわけですけれども、それにしても管理がど うだったのかということがアメリカでは問題になっているということです。リステリア は、これはハムですけれども、アメリカは今これらに対する危機感を高めていて、食品 安全強化法案というものがもう既に下院を通過して、上院の議論に入っているそうです。 アメリカは何十年も食品安全についての体制強化がなされてこなかったわけですけれど も、この間、急速に問題意識が高まり、強化をしようという方向性になっていますので、 この辺の情報をキャッチする必要があると思います。  また、国際機関の危機意識ということですが、やっぱり今は大規模感染症、インフル エンザを始めとする問題ですとか、食品テロの問題がこれからますます大きな課題にな ってくるととらえていると感じます。この下にあります国際保健規則というのは、これ はWHOが定めています規則ですが、食品テロですとか大規模感染症などの問題に対応 して、おととし改定されています。こうしたことも情報として必要だと思います。  次の問題意識としては、これからますます進むであろう世界的な食料需給問題という ことです。これからますます人口は増加し、資源は枯渇する、食料も不足していくとい う状況の中でGMOをどういうふうに取り扱っていくかという問題も出てくると思いま す。  最後に、私たち消費者自身の課題を挙げてみました。やはりこうした輸入食品の安全 を確保するということに対しても、行政や事業者にお任せするだけではいけないと思っ ています。消費者自身が積極的に学習をするということと、リスクコミュニケーション を私たち消費者自身が推進していく必要があるのではないかと思っています。私たち自 身の消費者力をアップして、情報を正しく認識して自分で判断できる、自分でリスクを 回避できるような消費者になっていくための取り組みを進めていきたいと思っておりま す。  以上でございます。ありがとうございました。 ○司会(北村)  どうもありがとうございました。  続きまして、株式会社イトーヨーカ堂QC(品質管理)室食品担当の伊藤様より、 「輸入食品の安全確保の為の取り組み」につきましてご講演いただきます。どうぞよろし くお願いいたします。 ○伊藤食品担当  レジュメを1枚お配りしてあります。小売業を通じて経験してきた食品とのかかわり というふうな書き方になっています。少々切り口が異なる話になるかと思いますけれど も、若干情緒的な話になる部分もございます。ご了解いただきたいと思います。  これは、私どもが上海事務所、その他の現地中国で開催している現地の食品メーカー さんに対する安全と品質管理に関する説明会資料の1ページです。十数ページになって います。厚生労働省の資料、農水の資料等がベースになっています。ここでは詳細の説 明は省略させていただきます。いずれにしても、こういう説明会を毎年やっているとい うことでございます。もちろん検査等の仕組みや規制は当然ですが、ここに、見えにく いかとは思いますが、「皆様との共有の認識」というふうな言葉が書かれています。こう いった考え方をきちっと伝える部分が非常に重要かというふうに考えております。  先ほど、阿南さんの資料にもありましたように、龍大さんもこの中に参加されており ますし、龍大さんには弊社のPBの、プライベートブランドの春雨の製造もお願いして おります。私も北京に駐在して1号店の開店にかかわった一人として、当時、現地山東 省の工場を訪問したことがあります。1997年でしたが、当時からここなら大丈夫と評価 のできる工場の一つであったというふうに考えています。  いずれにしても、10年、20年のおつき合いで取引を願っているということになるかと 思います。これ以外にも煙台の北海食品さん、それから青島の正大(CPグループ)さ んの工場等、それらの方々が参加されています。  食品の安全ということで考えますと、まずは輸入食品に限らず食品全体でという発想 が大切だと思います。ですから、弊社の最優先課題、我々の部署の最優先課題は、当然 集団食中毒事故を事前防止というためにあらゆる対応を準備しております。1月に入っ て、ちまたではノロウイルスが猛威を振るっております。先日の情報でも宮城県の刑務 所で百数十人が感染されたという情報が流れています。食品関連部門の従業員、イトー ヨーカ堂だけでも約2万人に対して毎月1回の検便制度、腸内細菌検査の義務づけもそ の一例であります。リスクを事前に把握して対応するということになるかと思います。  このグラフは、過去10年以上にわたりお客様からいただいた苦情、クレーム等を月別 に集計したものです。すべてではなくて、選別して要責任ありと判断したものです。メ ーカーさん、あるいは私どもに責任があったものを集計したグラフでございます。さま ざまの事件がありました。当事者ではなくても大きな事件の影響は毎回必ず受けてきま した。中国産冷凍ギョーザ事件以降は、この直近2年間は幸いにも比較的落ち着いた状 況が続いております。この数年間の官民一体となった啓発や、それからメディアの冷静 な対応、そういった部分も少しずつ成果を出しつつあるのではないかなというふうに私 は考えております。  いずれにしても、食品業界は今落ち着いています。ぜひこれを継続したいものだとい うふうに思います。もうすぐ1月も終わります。日本の伝統食おせちを通じて海外から の食材を確認してみたいと思います。  これはことしの正月用につくられた09年版の予約のおせちカタログからの抜粋です。  各種類、各値段、いろいろございました。全体で約3万4,000セットを予約販売させ ていただきました。おかげさまで大きなクレーム等はなくて無事に乗り切りました。毎 年このおせちの予約のセットについては本当に乗り切ったという表現を使っております。 やはりこのおせちには細心の注意と集中が必要です。我々品質管理部門は該当商品部の バイヤーをサポートする形で連携して、場合によっては泊まりがけで工場に立ち入りさ せてもらっております。ここにありますように南アフリカ、インド、タイ、カナダ、す べてを表現していませんが、現状はこういう状況である、既にご存じかもしれませんが 改めてご理解いただければなというふうに思います。  いずれにしても、安全と現地の人件費の上昇ぐあい、あるいはフードマイレージのコ スト等を見ながらグループ全体で中国に限らず世界に最適産地、供給地を求めていくこ とにますますなっていくかと思います。このカリフォルニアワイン、赤白がグローバル 展開商品として既にスタートしております。情報では既に100万本を販売したというふ うに聞いております。  私は2000年の1月に北京から帰国し、その年の9月から弊社のQC、品質管理部門の 食品の責任者になりました。今から2年前に定年で退職し、現在も嘱託として後進の指 導に当たっております。この責任者の8年間は修羅場というか、まさしく修羅場とはこ のことかと思うぐらいさまざまな体験をさせていただきました。学習してまいりました。 数ある中でも、この中国産の冷凍ホウレンソウ事件は、ある意味で私のいろんな意味で の原点であったという部分がございます。初めて新聞に自主回収のおわび、告知を掲載 したこと、初めて社内で10回線、20台の電話を使い、延べ人数で毎日数十名のフリーダ イヤル体制をしいたこと、それから初めてあるお店の冷凍食品売場の店頭でNHKさん の取材を受けてカメラに向かって謝罪したこと、それから初めてフリーダイヤルの電話 で直接お客様のお小言を承ったこと、若いころは店頭で多くのクレームを受けてまいり ました。それから、初めて知りました。該当品、このホウレソウの廃棄処分のための行 政手続がいかに大変であるかということも学習しました。ただ焼却して埋め立てるだけ では済むものではございませんでした。  あれから8年が経過しますが、幾つか忘れられない記憶に残ることがあります。それ は、たまたま私が先ほど申し上げた直接承った3人のお客様からの厳しくも、ありがた いお電話でした。「イトーヨーカ堂さんのホウレンソウだけは大丈夫だと思っていたの に」、こう言われると困っちゃうんですけれども、大体供給元はみんな一緒だったわけ ですけれども、すり身にしてベビーフードとして使っていたのよという若いお母さんか らのお言葉でした。もう信頼を裏切ったという思いが強くいたしました。それから、 「生のホウレンソウを買ってつくるお浸しより簡単で便利だったんだから」と、ひとり暮 らしのおばあちゃんからいただいた使い勝手、便利さに対する評価、それから「あれが ないと困るんだよな。かつおぶしかけてちょっとすぐ出せるんだから」というふうに言 われました。自分で居酒屋を経営されている大将からの必需品としてのニーズをそれぞ れ確信させられました。このときは本当に、もう心から申しわけないなという気持ちで いっぱいになりました。真摯にこの気持ちを持つ、これはなかなか体験できるものでは ありません。そのときのことを決して忘れずに、風化させないで、社内でも風化するこ とのないようにいろいろと気を配って誓って仕事をしてきたつもりでおります。  それとあわせて、当時、直属の上司、名前は出しませんが、こう言われました。「伊 藤、 現地であの薬は使ってないと言ってるのに何で検出されるんだ」と厳しく問われたこと が何回もありました。ホウレンソウに使用されていたクロルピリホスという殺虫剤のこ となんですが、反論はぐっと抑えましたが、よっぽどそういう・・・・・ですからと口 から出そうになりました。これはほんの一例ですが、数多くの体験と学習の中から、も ともと理系の学校を出たわけでもなく文系を出て、食肉の部門について最後品質管理の 仕事をやらせていただいた私にとってはまさしく門前の小僧という形で勉強し認識し、 知識として積み上げて、その後の判断や決断の材料としてたくさん貯金できたというふ うに考えております。本当にありがたいことです。  今中国について、音声なしで大変失礼な言い方をしましたが、少なくとも現在のこと を申し上げているわけではなく、はるか昔、3年半北京に駐在し、生活した体験から出 た言葉ですからご理解いただければ幸いです。ただ、先ほど阿南さんもお話されていた ように、例のギョーザ事件が現在でも未解決であることは紛れもない事実でありますか ら、日本の法規制や仕組み、行政機関の考え方、食品小売業の考え方、そして日本の現 在のお客様、消費者の考え方まで理解してもらうことが重要なのだと思います。そして、 あの国との信頼関係は重要ですが、我々もしぶとく、したたかにというスタンスを持つ ことも必要だと思います。当然、生産物を収穫した後や製造加工後の検査はあくまでも 事後対応です。ですから、完全なリスク回避は難しい部分がございます。事前及び継続 的な確認、チェックや指導が重要だと思います。これまでも現地のメーカーさんや企業 集団に日本人、少なくとも台湾人の責任者が現地、現場に常駐していることが重要な条 件だと考えてお取引をしてきたつもりでございます。特に専売品、開発商品やプライベ ートブランドの開発現場においてはそういう考え方を一部持っておりました。  ところで、この会合のために行ったわけではございませんが、偶然にも先々週、アジ アの3カ国を回ってきました。ベトナムはホーチミン、タイのバンコク、中国は北京と。 ベトナムは初めて、バンコクは昨年に続き2回目、そして北京は毎年訪問していますが、 今回は2年ぶりで、例のギョーザ事件直後に行って以来ということになります。真夏の 30度から北京のマイナス10度という厳しい行程でしたが、米の歴史、米の食文化、それ からジャポニカ種、インディカ米、それからフォーという米粉の麺の文化を勉強してき ました。実際に少なくともきれいとはいえない地元の人気店でホーチミンの庶民と一緒 に食べたフォーには、10人の同行者は一堂全員がもうおいしさに感激し、最後は感動し ておかわりする人まで出たぐらいでした。生産地、製造メーカーも、当然一部視察して まいりましたが、この3カ国の小売業や食品市場を通じてベトナム料理、タイ、あるい は中華料理、現地の日本料理、食体験を通じてその現状と変化を知ることで見えてくる ものもたくさんあるんではないかというふうに思います。ますます拡大する現地での貧 富の格差、減少したとはとても思えない貧困層、課題はまだまだたくさんあるでしょう。 そんな中で今回の訪問地の写真をざあっとごらんいただいて、最後にまとめのコメント を申し上げたいと思います。  これはホーチミンの公設市場です。左上の写真はカエルの足をちょん切ろうとしてい ます。それから、反面、ホーチミンも韓国資本ロッテマートさんが最新のスーパーマー ケットとして進出されています。ヤクルトやキムチも販売されておりました。  タイでは昨年と同じショッピングセンターを視察し、水耕栽培の野菜、有機野菜の販 売が継続されていることを確認しました。  それから、これは北京の弊社の2号店で買い物をしていただきました。1階入り口近 くの化粧品売場は現地の資生堂さんが最も目立つ場所に展開されています。  地下の食品スーパーは来月の旧正月を前にして非常ににぎわっておりました。特に緑 色野菜のコーナーが目立っていたと思います。  それから、偶然ですが、私自身もかかわった、開店から12年目の北京の1号店が17日 にたまたまいろんな事情で閉鎖、閉店することになり、その場に立ち会うことができま した。右側の上のほうが隣接する新しいビルに移転して、この21日に開店した最新の店 舗になります。隣り合わせです。テナントでマクドナルドさんや、それから吉野家さん、 サイゼリヤさん、ユニクロさんまでを要する、もう10年前にテナントを探して苦労した あのときが考えられないようなお店と一緒になって立ち上がっております。  余談になりますけれども、欧米人のお客さんが多い新しい北京ダックのお店では生食 用のカキが出てきました。何で北京ダックを食いに来たのに生食用のカキなんか出るん だとみんな思ったわけですけれども、弊社の日本人スタッフに念のため、「これ生で大 丈夫なのか。オーストラリアから輸入物か」と質問したところ、「大連ですよ、伊藤さん、 大連。大連だから大丈夫ですよ、伊藤さん」というふうに強調されました。私が最初に 口にしないと同行者が食べませんから食べたわけですけれども、翌朝みんなに確認しま した。問題ありませんでした。非常においしかったです。  それから、北京、上海、香港でチェーン展開する有名な上海料理のお店では、オーダ ーした瓶ビールがきっちり冷えていませんでした。「もっと冷えたのはないの」というふ うに聞くと、「外は氷点下10度なのに、何でそんなに冷たいビールがいいの」というふう に言われました。「いや、日本人はそれでも冷たいのが欲しいんだよ」というふうに言っ たところ、「じゃ氷を入れますか」というふうになって、最後はピッチャーに入れた生ビ ールで妥協することになりました。この話はおまけがついていまして、返品したはずの 余り冷えていない瓶ビールがそのまま勘定書きに加算されているのを、十数本ですけれ ども、通訳がチェックして注意していました。彼らに悪気はないんです。こんな小さな 体験から、あれから12年たっているのに、まだまだこんなことがあるんだなというふう に感じました。日本の当たり前が中国に限らず、その当たり前が当たり前でないことは たくさんこれからもあります。バンコクでは我々のグループとPB、セブンプレミアム 等で大きな取引のあるタイのCPフーズ社を訪問させていただきました。品管部門のえ らい方々とお話しをさせていただく中で、彼らの企業ポリシーが「世界の台所」を目指 しているという戦略を明確にしていました。品質管理部門の若いスタッフは、「伊藤さ ん、我々は知っていますよ。日本では法規制や行政機関よりもさらにお客様、消費者の ほうが、考え方が厳しいことを知っています」ということをはっきり言っておりました。 CPフーズだから言えたことかもしれません。  先ほど貧富の格差拡大と言いました。そんな中でも、3カ国の彼らはしぶとくたくま しく生きています。ベトナムも10年をたたず中国のレベルに追いつくでしょう。タイは 政治に若干の不安定要素があっても毎年毎年発展しています。北京はオリンピックを経 験したことで表面的かもしれませんが、私がいたころよりは非常に落ち着いた都になっ たというふうに思います。  それぞれ関係のない情報かもしれませんが、それらをつなぎ合わせることで見えてく るものもあります。各国が日本へ輸出している食品の科学的な安全とあわせて心理的な 安心感もいい方向に進みつつあると考えていいのだと私は思います。彼らも日本とのビ ジネスで損害を被りたいわけでは決してありませんから。  どうしも話が中国中心になってしまい申しわけないと思いますが、1996年に辞令をも らって、同時期に北京と、そこから2,000キロ以上離れた四川省の成都に分かれて私も 含めて現地に赴任し、何もないところから、それこそ最初に井戸を掘り、地域に密着し た店舗を開店し、それを成功させてきた7割を占める、駐在12年目の多くの弊社の日本 人同僚に敬意を表し、彼らが現地で生活し体験し、ビジネス等でも経験した情報が中国 産の食品輸入の安全確保と改善のために大きなウエートを占めるということを私は信じ ています。その国の歴史、文化、考え方を理解し、その上で日本を知ってもらうことで あろうと思います。  日本と大陸を出張ベースで行ったり来たりではなく、コストはかかるかもしれません が、そして中国に妥協せず、その上で中国の心理や考え方を理解して現地に常駐する人 材を置くこと、現地に入り込むことが、当然かもしれませんが食品関連企業にとってリ スク回避の極めて重要な戦略の一つであるということを結論として申し上げて、短い時 間で言葉足らずも多々あったかもしれませんが、私の話は終わりにしたいと思います。 ご静聴ありがとうございました。 ○司会(北村)  どうもありがとうございました。  では続きまして、株式会社ニチレイフーズ品質保証部長の片山様より、「輸入食品の 安全性確保のための取組について」、ご講演いただきます。どうぞよろしくお願いいた します。 ○片山部長  ニチレイフーズの片山です。短い時間ですけれどもよろしくお願いいたします。  お話の内容は、我々が取り組んでいる内容がご参考になればということで、初めのほ うは輸入食品に限ったことではなくて食品安全ということでお話しさせていただいて、 後半の部分に輸入食品についての多少細かなお話をさせていただこうと。それからお手 元に配付している資料については見ていただければわかる内容ですので、それに幾つか 加えさせていただきましたのでよろしくお願いいたします。  私どもの会社は、加工食品事業ということでニチレイというグループの中の加工食品 事業部門を担っています。同じグループの中には素材輸入担当の者、それから冷蔵保管、 流通というところで冷力を中心にしたグループ会社でございます。  品質保証ということでは、まずグループ全体の品質保証ということで持ち株会社のほ うに、これは経営として経営監査、それから品質保証という形で企業全体の品質保証体 制を監視するという立場の部門、それから分析を中心にします食品安全センター、後で また詳しくお話しさせていただきますけれども、グループトータルの中に、こういう監 視の目がある中のニチレイフーズという一つの事業会社の中に私自身が勤務していると。 企業の中の、これは組織として品質保証委員会という中で情報の共有化、それからあら ゆるリスクに対応しましてリスクマネジメント委員会、これは役員を中心に担当の部長 を集めてお話しをしていると。その中に私ども品質保証部という組織がありまして、監 査を中心に、それから基準だとかそういうものを定める企画監査グループ、それから表 示を中心にした監視をする表示規格グループというもの、それから品質管理グループと いうのはわかりにくいんですけれども、一般的にはお客様からのお問い合わせだとか、 そういうもののクレームを中心にその原因追究と改善指導を行うという部署です。それ から生産情報センターというのは品質関連の情報、お得意先を中心に求められたことに 対して一元管理して発信をしていく部署でございます。  お客様相談センター、一般の顧客から問い合わせを受ける場所は商品本部というとこ ろにありまして、これはお客様の声を商品の改良だとか開発に役立てようとこういうこ とです。それから、私どものニチレイブランドというものの審査というのは、ニチレイ のホールディングのほうの品質保証部が行っていまして、ブランド審査には工場の審査、 工場がある一定レベルに達しているかどうか、管理・運営面、施設・衛生面、そういう ところで工場の審査をすることと、それぞれの商品についての検査なり表示だとかいろ んなもののチェックを行って、この2つでブランド審査を行っているということですね、 これに合格したものが私どもニチレイフーズとしても商品の発売が許されると、こうい うチェックになっています。  私どものニチレイフーズの中では、どういうふうになっているかということですけれ ども、生産工場を中心に、まず初めは原材料のところです。原材料のところは私どもの 会社の素材調達原料グループがその一括管理をしています。ここのサプライヤー様、供 給会社さんのほうへ工場の診断、それからいろいろな取り決めを行って条件に合ったも のを工場のほうに提供するということでございます。  それから、工場の中での生産のところは入荷から保管、生産から出荷の間、こういう ところの全体のところは工場の監査という中で品質保証部が全体を監視していると。そ れからその中での情報発信、必要なものは生産情報センターというところから情報発信 をしてお客様、お得意様からのお問い合わせについてはお答えをしていくと、こういう 流れになっております。  まず、調達段階での原材料管理のところですけれども、これはまず工場診断という形 で、これは購買をする人間の中に品質保証の教育をして工場診断士と、社内的にはこう いう名前をつけて、一定の必要なスキルを持った者が工場を診断し、その基準に合致し ているかどうかということをまず見ます。その工場が合格すると実際に購入する原材料 についてのチェック、これは工場での受け入れ検査だとか定期的にこの受け入れ検査で の情報を問題ある場合もあると、こういうものの定期的にフィードバックをして問題の 解決に当てるということです。そういうことによって原料の品質の確保、継続して維持 していくと、こういう流れになっています。  次に、調達段階での原材料管理で、この部分は皆様には資料等ありませんけれども、 いわゆる工場で使う三次原材料までの情報を提供していただいています。これは原材料 のメーカー様との契約書という形で秘密保持契約を結びながら、私どもから情報は、そ のままは流さないという形になっています。具体的に三次元材料とはどういうものかと いいますと、例えば冷凍のコロッケをつくるといった場合に、その原材料としてパン粉 があります。これが一次原材料と呼んでいます。パン粉をつくるための、例えばマーガ リンがあります、これが二次原材料です。マーガリンをさらに構成する植物油脂があり ます。植物油脂が我々から見ると三次原材料ですので、このパン粉のメーカーさんから その植物油脂の原材料の、例えば原産地だとか添加物だとかいろんな情報、そこまでを 明らかにしていただくということで私どもの商品の表示だとか、いろいろな問い合わせ に対応するという形でやっています。  この辺のところはアレルギーの問題だとか大変重要なところかなと思っています。こ のことは各メーカーさんも最近ではやられていますけれども、私どもが、多分一番早い 時期、もう七、八年前ぐらい前からお願いをしているということでございます。  生産段階の品質管理ということでは、これはもう当たり前のことですけれども、人の 管理、5Sの管理と言っていますけれども、そういうところから工程管理、異物の管理、 いろんなところでやらせていただいています。これは特に変わったということではなく て当たり前に工場でやるべきことをしっかりとやると、その記録をしっかりと残して、 お得意様からのお問い合わせがあったときには答えられるようにするということで徹底 しています。  生産段階での品質管理の項目としましては、これは工程管理基準書という中で一括管 理しています。これはハサップの考え方にものっとった形で各項目のチェック項目、管 理基準、測定方法、このチェックの頻度だとか担当の記録、そういうものを1つの表に まとめて管理基準を逸脱した場合どういう対応をするかというところまでまとめた表を 使っています。  次に、これから輸入食品の事例としまして、一番我々ども思っているリスクの高いと いうことでは中国冷凍野菜の事例をお話ししたいと思います。  先ほど、イトーヨーカ堂様の、伊藤様のからもお話ありましたけれども、我々やはり 原点はホウレンソウの事件です。2002年に起きました。それまでは特に、私ども独立し た独自のシステムをつくるということはなかったかと思います。これは業界全体、輸入 停止という形になっていますので、私どもだけではなくて業界全体で改善を取り組んだ と。そのときに私どものほうは中国のパートナーの企業さんと取り組んだ内容の一例で ございます。  まず最初に、栽培管理としまして、まず農場がどういうところかと。これは中国国内 で流通するものと日本へ輸出するものと完全に分けてくださいと。これ事前にドリフト の問題だとか、それから農薬の使用、そんなところの確認をするということです。それ から2番目、農薬の選定、これも農薬については農場の、農家の方々が勝手に使うとい うことではなくて、中国の、我々工場と言っていますけれども、パートナー企業さんか ら配付するという形でやっています。そうしないと、今までにお話ありましたけれども、 実際の表示の内容と違う農薬が流通しているという実態もありますので、そういう形で 管理している。それから実際に使用する農薬については、毎年農薬の使用の計画書を出 していただいて、その計画書に基づいて管理するという形をとっています。  それから、残留農薬検査については、現地でも確認ができるということと、現地の工 場で、それから私どもの日本での分析、それから中国については、中国のほうに分析機 関を設けまして私どもの手で確認ができるような形をとっております。  それから、大事な4番目の、万が一何かあった場合の、トレースバックシステムとい う形で、ここに書いてありますけれども、工場番号、それから農場どこまで、それから 農場から工場に入るまでのトラックの番号、どういう段階で入ってくるかと、それから 生産工場の中でもラインがどうなっているかと、そういう情報が賞味期限の表示ととも にわかるような形で実施しております。  それで、一つの例ですけれども、中国冷凍野菜の農薬検査事例という形で、まず収穫 前検査というのがあります。これは農場での収穫する前に検査をすること。ドリフトは 怖いですから、長方形の畑であればその四隅と真ん中、最低でも5カ所をやるという形 でドリフトだとか影響はないかということを確認してから収穫に入る。収穫して冷凍の、 半製品と言っていますけれども、そういう形で冷凍野菜をつくります。まだこれは最終 商品の包装になっていません、バルクの状態といいますか、そういう段階で私どもが中 国にある分析機関として錦築という会社を設立しています。ここで半製品段階での、こ れは工場だけではなくて我々が監視するという形で先行検査をやっています。  それから、商品をつくってから輸出、中国政府のほうで必要ならば輸出時の検査があ る、それから実際に輸入前に私ども、今度は日本で通関前の検査をやって問題ないこと を確認してから通関時の検査をおこなうということがあります。  それから、監査検査という形で商品の年間の計画に従ってこれは日本で実施していま す。それから日本の行政の検査という形で検疫所での検査があります。検査回数として 5回から6回あり、その中で私どもの会社の関係で3回はやると。それから相手企業さ んがあれば最低でも4回ぐらいは検査をしていると。これはあくまでも確認のためであ って、これでいいということではありませんけれども、これぐらいの検査をやっている ということでございます。  それから、食品安全センター、私どもの日本にある分析の機関ですけれども、ここで は微生物の検査から残留農薬、あらゆるものの検査ができるように整えております。そ れから、下の錦築というところは中国での同様の分析機関、ここは運営管理を協力しな がらやっているという体制でやっております。  それから、監査検査というところで少しお話をしたいと思っていますけれども、ここ の部分は商品の一定の割合で商品検査を行うという形で、全体的には年間で1,000検体 ぐらいのものをやっているということでございます。その考え方ですけれども、これが 商品別の検査頻度をどうしたらいいかということで、私どもが考える一例です。これは リスクに応じた係数を求めてその頻度でやると。これは費用のかかることですから、年 間でどれぐらいの予算でどうやるかと。年間の数量があった場合、それをどういうふう に割り振るかということです。それは国別の係数があり、これは有機の野菜かそうでな い場合、それから作物自体によっての農薬のリスクが違う、それから命令検査になって いるものは当然日本の輸入時に検査頻度は高い、それから調理の条件によってここも違 ってくるだろうと、こんなことを考えながら頻度を決めているということでございます。 これが一つの事例ですけれども、国係数、中国が1であれば、例えばアメリカ、カナダ は0.25と、こんな形で私どもで決めさせていただいています。  それから作物の係数としまして、どちらかといえば根菜類は低くなって、葉物は高く なっているということです。それから調理係数というのは、やはりフライ工程があるな しということで差別化しています。これは検査の問題で油の影響で、検査をしてもなか なかわかりにくいというようなこともありますので、そんなことで計算をして、例えば 中国産のホウレンソウが2とすれば米国産のフライドポテトは0.015と、こんな計算が 出てくるということでございます。  それから、検査自体は計画どおりやっているかどうかというのは、こういう表を用い て年間計画の中に実施率がどうなっているかと、計画どおりやられているかというこう いう確認を見ながら計画どおり進めております。  こんなことをやりながら、私どもも安全・安心な食品を届けたいということで企業努 力しているということを、一つの情報として皆様方にご紹介させていただきました。  今後も我々だけではできませんので皆様関係の方々と協力しながらやっていきたいと 思っています。私からの話は以上でございます。 ○司会(北村)  どうもありがとうございました。  続きまして、日本放送協会(NHK)解説委員室解説委員の合瀬様より「輸入食品・ 報道現場からの問題意識」についてご講演いただきます。どうぞよろしくお願いいたし ます。 ○合瀬解説委員  皆さん、こんにちは。NHKでニュース解説をやっております合瀬と申します。一次 産業、農業、漁業の経済担当の解説委員ということになっていますが、2000年に解説委 員になった途端にここ大阪で雪印乳業の集団食中毒事件というのが起こりました。それ を担当して以来、ずっと食の安全も安定供給とともに私の重要な取材テーマの一つにな っています。そういう立場でお話をさせていただきます。  私がこういうところに呼ばれる時にはだいたい決まっておりまして、食の安全を巡っ て大変な騒ぎになっているのはマスコミが悪い。それで代表として出てこいと、文句を 言われて、防戦一方というのがいつものパターンなんです。今確かに言われるように健 康とか食べ物に対する報道というものはすごく多くなっています。チャンネルつけます と料理番組から始まってグルメ番組、旅番組、大体食べ物が出てきます。それから食の 安全問題。もちろん食料品の問題、報道が多いのは、背景に視聴者のニーズがあるから でしょう。健康問題とか食料問題というのは、テレビ局にとっても視聴率がとれる重要 なコンテンツの一つで、困ったときの食料問題とか、困ったときの健康問題という位置 づけになっているんだろうと思います。その背景には見ている人たち、視聴者の考え方 の中に健康に対する強烈な不安があると思うんですね。  私はこういう話をするときに、毎回皆さんに聞くんですが、この中で、私は健康に絶 対的な自信を持っているという方、ちょっと手を挙げていただけますか。全然いらっし ゃらない。現在は健康であるというのと健康に自信があるというのは若干違います。も ちろん健康である人は多いのでしょうが、私は健康に「自信がある」という人はいろん なアンケートをみても10%ぐらいなんですね。ということは90%の方々が、何らかの不 安を持っている。厚生労働白書でもずっと以前に半健康という言葉を使いました。健康 であるのと健康に不安を持っているというのは大きな開きがあるんです。  先週人間ドックに行った時のお話をしたいと思います。今の人間ドックというのはす ごいですね。胃カメラや大腸検査をはじめ、CTスキャンもやる。その結果、かつては ほとんどわからなかったことがすごく初期の段階からわかってくるようです。幸いにも 健康には問題が無かったのですが、胃の中の写真などを見せられて「合瀬さん、あなた は健康です、今のところでは。だけど胃が相当荒れています。大腸に僅かなポリープが 見えます」ということをわあっと言われれば、いまは確かに健康であっても、不安にな ってきますよね。検査機器がすごく精度がよくなり発達してきた結果、様々なことがき わめて初期の状況から分かってきた。それはそれで有り難いのですが、それを指摘され るとやはり不安になってくる。みんなどこか何かしら抱えている。ということもあって、 大体の皆さんが、みんな健康に不安を持っています。ほとんどの皆さんが、半病人だと いわれるゆえんです。  そういう中では、できるだけやっぱりリスクを取り除きたい。いろんな食べ物とか、 少しでも健康不安があったら健康食品を飲みたいとか、鉄分が少なくなっていますと言 われたら何か飲みたいとかという、そういうふうに思うのは当然のことです。だからそ ういう健康に対する情報、食品に対する情報というのは物すごくニーズがあるのではな いでしょうか。現在、特定保健用食品(特保)の市場は7,000億円、健康食品の市場は 2兆円を超えていると言われます。大体日本の野菜生産が2兆円ぐらいです。野菜生産 と同じぐらい健康食品が市場として大きくなっている、今後ますます大きくなるでしょ う。これは少しおかしな事ではないでしょうか。  みんな健康でないわけではないのです。ただ健康に不安があるために市場として拡大 しています。検査が高度化して不安が高まる。そうした人たちにむけた情報がますます 不安を高めてしまう。この繰り返しがさらに食の不安となって、私は大きくなってきて いるのではないかというふうに考えています。  こういう状況の中にあっては、事業者は何かが起こったときの説明責任、情報開示が 非常に重要になってきます。それでやっぱり対応していくしかない。ここ10年間、一体 どういう食の事件、事故があったのか、まとめてみました。ざっと並べてみると、結構 やっぱり輸入食品にかかわる事件というのは多いですね。冷凍ホウレンソウの事件とい うのは2002年に起こっていますし、この前後の要するに輸入、食肉の偽装事件なんてい うのも、実際は輸入肉だったのを国産の肉というふうにごまかして焼却して国から補助 金をだまし取ったという、そういう話であったり、海外産と国内産の価格が違うことで いろんな事件、事故が起こったりしているわけです。アメリカ産のBSE牛肉について もそうですし、2003年9月に中国から輸入された冷凍エビから抗生物質が検出されたり して、輸入農産物に対する不安というのを背景にした事件、事故が結構起こっていると いうことがわかると思います。  2008年には中国産冷凍ギョーザに毒物混入、10人が入院しました。7月には、水産加 工会社が中国産のウナギを国内産と偽装、これも輸入農産物がらみですね、10月に起き ました汚染米、これも海外から入れたお米を、これは廃棄すべきところを、これを流通 させてしまった。輸入農産物を使って、価格差を利用して大きな利益を得たとか偽装し たとかという結構輸入農産物にかかわる事件、事故が続いています。  こうした事件事故を振り返ってみると、私は多分食をめぐる社会的な環境が大きく変 わったというふうに思っています。1つは、食料の6割が海外から入ってきている。先 ほど食品メーカーの方がいろんな検査をしているというふうに言われましたけれども、 一般の人たちにとっては、一体どういうふうにしてつくったものかほとんどわからない。 しかも入ってくる輸入品は、かつては漬物の材料とか一次製品として入ってきたものが、 人件費安いものですから海外でいろんな加工をしての輸入が増えています。毒物が入っ ていた冷凍ギョーザのパッケージなどは日本語で書いてありましたし、だれも海外であ れをつくったとは思っていなかったのです。問題が起きて初めて裏を見ると、ここに中 国の工場でつくったということが書いてある。だれが、どこで、どういうふうにつくっ たかということについての潜在的な不安があるといいますか、それが1つあります。2 つ目は、やはり大量生産、大量流通で、どこかで問題が起きたらあっという間に自分た ちの食卓の問題になってくる。2000年に起きた雪印乳業の集団食中毒事件においても、 たしか小学生か何かが腹痛を起こして保健所に届け出があったはずなのですが、対応が 遅れた結果、物すごい数の食中毒、結局1万5,000人の食中毒患者が出てしまった。か つてはミルクプラントというのはあちことに分散していたのです。ところが1カ所に集 めて効率的につくるというふうに行政も指導してきた。これは農水省の補助金も出てお りました。海外の乳製品なんかと競争するためになるだけ効率化する。ですから今の食 品の製造現場というのはかなり集中して効率化しているわけです。1カ所で大量に生産 し広域流通させる。ですから1カ所で起こった問題がたちまちのうちに自分たちの食卓 の問題になるという問題があります。3つ目に、先端科学、特に遺伝子組み換えだとか クローンだとかという技術が、どんどん自分たちの食卓の中に入っているわけです。よ くわからないけれども、いろんな技術を使っていろんな食べ物ができてきている。安全 だと言われても、そういう気持ち悪さというか、そういうのがあるのではないでしょう か。  こういうふうに食料をめぐる状況がどんどん変わっている一方で、自分たちの舌の感 覚はどうなのか。今若い人たち、においをかいで、これがまだ食べられる、食べられな いというのを、そういう感覚事態が何か鈍くなってきているのではないでしょうか。か つては本当に自分の住んでいるすぐそばで農産物がとれていましたから、情報もどんど ん入ってきたのですが、今はもう本当に食料の製造現場というのは、はるか遠くに見え ないところになってしまいました。食料をめぐる状況はどんどん変わる一方で、自分の 感覚はどんどん鈍っている。そういう中で、さっき言ったような検査精度というのは我 々の体を調べるだけじゃなくて食べ物を調べる検査精度もすごく上がっています。1兆 分の1グラムみたいなものもはかれるようになって、これが本当に悪いかどうかわから ないのですが、そういうのが見つかったという情報がぽんと出てくると、やっぱりみん なパニックになってくるわけです。  去年の秋にありました花王のエコナ問題、あれも実はそれまでは知られていなかった グリシドール脂肪酸エステルというのが、突然ヨーロッパで報道されました。どうも調 べてみるとエコナにたくさん入っているらしいという。我々不安ですからどんどん検査 精度を上げる、検査精度を上げるといろんなものが見えてくるわけです。それをどんど んつぶしていくということになるわけですが、つぶしたらまた新しいものが、また検査 精度が上がってどんどん出てくるという、そのいたちごっこになっている。  そういう中で、食の安全の問題どういうふうに考えればいいかということです。企業 の危機管理の原則は何か問題が起こったときに、状況を把握しすぐに対応すると言うこ とです。中国産冷凍ギョーザ事件のときは、まだ原因がわからなかったけれども、日本 生協連はすぐに記者会見を開いて、とりあえずマスコミを全部集めて、疑わしい商品を すべて公表した。まず流通をとめなければいけなかったわけです。原因はわからないけ れども、とりあえずとめる。大量生産、大量流通の時代ですから、まず流通をとめると いうことを考えて対応しなければならないということです。  気をつけなければならないことは、情報を出すときにだれに対しての情報かというこ とをキチンと理解してもらうことです。よく取り上げられる例に、厚生労働省が水銀蓄 積が比較的多いキンメダイ、その情報を出したときに、これは明らかに妊婦というふう に出したのですけれども、受け取る方は妊婦に悪いものは我々にも悪いだろうというふ うに考えてしまった。  もちろん厚労省はだれに対しての情報というのを明記したのですけれども、これが大 きな混乱を呼んでしまった。ますますこういうことは気を付ける必要がある。一方で、 やっぱり消費者には情報理解力、よく情報リテラシーが必要だと言うことです。今情報 を発信しているのはテレビとかラジオだけではありません。ホームページやブログで、 最近はツィッターというのまで駆使して物すごい情報が出てきます。我々の困っている ところは、テレビもそうですけれども、今テレビとか新聞、なかなか読んでくれなくな ったんです。若い人たちは様々な情報をほとんどインターネットで見ています。そうい うのも含めて、情報が本当にだれに対しての情報なのかとか、どういう対応を期待され た情報なのかというのを消費者が理解する力というのを本当に育てなければいけない。  実は、市民安全基本法の中で、消費者の責務として、きちんと食の安全のことを理解 しなければいけませんねということを書いてあります。、しかしなかなか上手く伝わら ない。きょう来られている方々は大変関心の高い人たちだと思うんですが、関心のない 人たちに一体どれだけ関心を向けさせるかということを考えると、上手く伝わるように 少し強調して流さざるを得ない。流さなかった、知らせなかったときのリスクとメリッ トというのを考えると、全く関心のない人たちに振り向いてもらえるような工夫が必要 です。事業者の方からはマスコミは騒ぎ過ぎだというふうに言われますけれども、報道 機関としては知らせる責任があります。これだけ大量生産、大量流通でいつだれが食べ るかわからないときに、健康被害の可能性のある物があるならば基本的にはとめなきゃ いけない。そういうことを後で騒ぎ過ぎだとか言われるのですけれども、これはみんな で考えていかなければいけない課題というふうに思います。  またこの後もシンポジウムがありますので、足りない部分はそこで補いたいと思いま す。どうもありがとうございました。 ○司会(北村)  どうもありがとうございました。  それでは、ここで約10分間の休憩とさせていただきます。3時15分に再開したいと思 いますので、それまでにお席のほうにお戻りいただきますようによろしくお願いいたし ます。 (休  憩) ○司会(北村)  それでは、これよりパネルディスカッション及び意見交換を行います。  まず、壇上のコーディネーター、パネリストをご紹介いたします。  皆様からごらんになりまして、一番左がコーディネーターをお願いしておりますNH K解説委員室解説委員の合瀬宏毅様でございます。そのお隣が全国消費者団体連絡会事 務局長、阿南久様でございます。株式会社イトーヨーカ堂QC(品質管理)室食品担当、 伊藤正史様でございます。株式会社ニチレイフーズ品質保証部長、片山博視様でござい ます。厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課輸入食品安全対策室、西村補佐でご ざいます。  それでは、これからのパネルディスカッション、意見交換の進行につきましては、合 瀬さんにお願いします。よろしくお願いいたします。 ○合瀬解説委員  はい。よろしくお願いします。  引き続き、意見交換会を続けますが、リスクコミュニケーションというのは非常に難 しくて、一方的にこちら側からいろんなことを言っても、なかなか伝わらないわけです ね。私もずっとさっき、ほかの方々が話していらっしゃるのを聞きましたけれども、や っぱり人間の能力には、ある程度聞いたらとまって、少し考えて疑問に思ったことを解 決しながら次に進まないと、なかなかわからないんです。そういう意味からいくと、す みません、1人15分という、厚生労働省から1人15分だぞというふうに言われて、かな り濃い情報をわあっと言ったものですから、多分皆さんはほとんど、ほとんどというか 半分ぐらいしかおわかりにならなかっただろうと思います。  ここに書いてありますように、意見交換会というふうに書いてありまして、これから は皆さんの疑問をベースにいろんな話を進めていこうという趣旨であります。すぐに、 じゃ質問ありませんかと言っても無理でしょうから、とりあえず、まず皆さん、きょう は皆さんの疑問をお互いにキャッチボールしながら、では今輸入食品の何が問題であっ て、どういうふうな対応をしているのかと、これでそうした処置で安心できるような状 況になっているのかどうかというのを話していきたい、意見を交換していきたいと思い ます。もちろん、そちらから注文とか、こういうふうにしないとだめじゃないかという のはいろいろいただいて、今後の参考にさせていただきたいと思います。  本来であれば、私は厚生労働省が司会をする日だと思うんですが、厚生労働省のほう にもいろいろ意見を、というか注文を言ってくれという立場で私が、大体マスコミがこ ういうことをやるということになっておりますので、私が司会をやりまして皆さんの意 見を集約して厚生労働省にぶつけるというふうになっております。  前半ちょっと、いろいろ先ほどの意見の中で少し言い足りなかったこととか、それか ら少しつけ足したいところ、もしくはほかの人に聞いてみたいこと、ちょっとパネラー の中でやりまして、後半、皆さんの中から質問等をお受けしたいと思いますので、もし 質問等がおありになる方があれば、今からちょっと準備しておいていただければと思い ます。  まず、どういうメンツかといいますと、こういうふうになっています。行政の立場か ら厚生労働省の西村さん、それから製造の立場からニチレイの片山さん、流通の立場か らヨーカ堂の伊藤さんで、消費者の立場から全消連の阿南さん、私がマスコミの立場か らと。いろんな質問は、この人に対してというふうにいただけるか、もしくはみんなに 対してというふうにいただければと思います。  まず、先ほど15分間で言えというふうに言われたので、ここはちょっと足りなかった とか少しつけ足したいということがありましたら、皆さん、何かありますか、大丈夫で すか。じゃちょっと議論を回していく中で話をしていきたいと思います。  実は、皆さんの出席の案内を出したときに、出席者の方からいろんな質問をいただい ています。東京会場、それから大阪会場、両方いただいておりまして、その中にちょっ と前半の30分ぐらいはそれに答えていきたいと思いますが、まずこういうお便りという か質問を事業者の方からいただいています。これそのまま読みますね、「抜本的には我 が国の食品衛生法に適合しているものが輸入されることが前提でしょうが、科学的なリ スクの代償に関係なく、マスコミの大騒ぎに消費者が右往左往、いわれのない影響で倒 産した中小企業も数多くあります。何とか輸入食品の安全に対する不安を払拭するため に具体的な対策がなされているんですか。全員にちょっと聞いてください」という質問 をいただいております。いろんな事件が起こって、マスコミがいろんな報道をして社会 的な事件になると。大きな事件はともかく、人の人命にかかわるような事件はともかく、 そうでないのも非常に大きく報道されて、中にはいわれのない回収をさせられたりとか、 それからつぶれたりするところもあると。輸入食品の安全性に対する不安を払拭するた めに何か対策はそれぞれ打っているのかということだろうと思うんですが、それぞれの 立場からリスクコミュニケーション、どういうふうなことをやっているのかということ をちょっといろいろお聞きしたいと思います。まず、ちょっと向こうから、厚生労働省 の西村さんからちょっと、どういうふうなことをやっておられますか。 ○西村室長補佐  今、合瀬さんが読まれたとおりの質問を受けておりまして、第一には、日本で違反の ものが出てこないということが一番だと思いますので、先ほどお話ししましたように川 上の部分でのチェックをしていただくということが一番いいのかなというふうには思っ ております。私どものところに情報が上がってきたときに、マスコミの皆様方にいろい ろな情報提供をしていく中で、なるべくわかりやすく、その貨物が今どこにあってどう なっているのか、流通しているのかしていないのか、検査値としてこれだけ出ているけ れども、これはどの程度の値なのか、プレスリリースの資料を見ていただくとわかるん ですけれども、この団子を1日10キロ、20キロ、毎日これから一生食べ続けたら害が出 るとか出ないとかという書き方をしておりまして、健康の被害度についてもなるべく発 表していく、必ずプレスリリースの一番下の部分には、書くようにもしておりまして、 ご理解を得られるように努力はしています。 ○合瀬解説委員  はい。それでは、ニチレイの片山さんにお聞きしたいのですが、多分ここに書いてあ る「輸入食品の安全に対する不安を払拭するために」と、要するにみんな輸入食品という のはちょっと危険でないかと思っていると。国産に比べて、どちらかというと不安に思 っているということだろうと思うんですが、そうじゃないのだよということをおっしゃ っているのか、そのあたりの消費者に対するアピールというのはどういうふうにされて いるのですか。 ○片山部長  まず、輸入食品と国内の食品とあった場合に、きょうも説明にありましたけれども、 まず輸入時の検査というのは、これは行政のほうでしっかりとやられていると。そこの ハードルが一つあるわけですよね。そうするとそこで結構いろんなものが違反として事 例が出てくるということで、そのことに対しての報道だとか、それから理解で誤解をし てということで、本来食品衛生的な問題として健康に危害を与えるぐらいの違反だとか というのはほとんどないのではないかなと思います。そこの健康危害を与えるようなも のと、それから違反ということとの、ここの理解がなかなか一般の方にはわからないの かなと。当然違反していることは問題なので、その商品は輸入できませんし、また国内 でも見つかった場合には、そのことが報じられてくるわけですけれども、そういう意味 で私どもが輸入食品についてきょう説明した中でも、本来日本の法律に合うようなつく り方をしっかりする、それから例えば、一例でお話ししました中国に関しては、中国国 内のものと、これは基準が違うんです。ある意味では、それは基準が違っても健康影響 はどっちがということではなく、それは同じ人間に対してはそう変わらないということ なんですが、基準が違っていることがあるということなので、日本の基準に合うような 作物のつくり方を教え、そのとおりに、システム的にそうなっているかということを監 視するということをやっているわけです。やはり私自身が安全面でいうと、この監視の ところでシステムがちゃんとやられていると、ここに一番注力をしていますが、もう一 つ不安なところは、やはりこれは人がやることなので、どこまでそれがきちっとやられ ているかというところが難しいところかなと。ここは中国の企業の方々に日本と同じよ うに従業員のいろいろな問題を、不満だとか、そういうものは残さないように意見を吸 い上げる仕組みを入れてもらうだとか、そういう機会で非常に日本的な、ある意味では 管理の仕方をお願いして、そういうところにシステムと人と、そのところがしっかりと 物づくりの中に生かされているということを一生懸命お願いし、そのことを我々も一緒 になって取り組んでいるという状況だと思います。そのことが実際に食品に対しての不 安を、また日本の消費者の方にわかっていただくために、先ほど阿南さんからもありま したけれども、これは冷凍食品業界としても一般の消費者団体の方を代表に中国のほう にも見ていただいたり、それからマスコミの方に見ていただいたり、やはり現場をでき るだけ知っていただくという努力が今まで少し足りなかったのかなと、そのことをわか っていただくということにできるだけ努力をしているという状況でございます。 ○合瀬解説委員  はい。本来なら伊藤さんに質問を聞かなければいけないんですが、ごめんなさい、伊 藤さん、さっき現場を見ていただくというふうな話があったので、実際に、阿南さんは ごらんになったんですよね。ちょっとそのときの感想なりを、中国の工場を見られての 感想というか、それがありましたら教えてもらえますか。 ○阿南事務局長 実際見せていただいて、私はここまで管理をしているのかと、とてもびっくりしました。 わからなかったです、あそこまで徹底的にやっているということについては。検査もそ うですけれども、従業員の働き方の管理ですとかも、工場内の衛生管理ですとかも、も う徹底的にやるわけですよね。それと、ギョーザの問題は恐らく故意に入れられたので はないかと言われていますけれども、こうしたことに対する従業員教育ですとか、監視 カメラはもちろんついているわけですが、その辺の徹底ぶりというのは、本当にすごい なと驚いて見ておりました。 ○合瀬解説委員  ちょっと一つ数字を確認したいんですが、西村さん、要するによく海外から入ってく るものの違反率、それと国内で国産農産物の違反率、私もちょっとはっきり覚えていな いんですが、大体どういうふうな感じになっていますか。 ○西村室長補佐  すみません、ちょっと国内での違反というのはちょっと私、承知をしていないんです けれども、昨年の例でいいますと176万件の届け出があって、違反というのは1,150件と いうふうになっています。先ほど阿南先生のほうからもお話あったりして、ギョーザ事 件とか中国が不安だとかいうふうに言われているのは承知はしていますけれども、確か に中国からの輸入というのは3分の1ぐらいを占めておりまして、一番の輸入国であり ます。違反件数というのも、それに比例して中国もありますので、3分の1ぐらいのも のが違反として出ていて、件数で見ると届け出の件数が多いので違反件数も多いんです けれども、比率で見ると、1番ではない、2番でもないというふうな数字になっていま す。ほかに特有なもので違反が多いものとかというものは現実問題としてあるというこ とだけはご理解いただきたいと思います。 ○合瀬解説委員  すみません、話折って失礼します。伊藤さん、何かありましたら。 ○伊藤食品担当  流通という言い方をしますけれども、実質的には小売が主体で、毎日大勢のお客様に 店頭で接しているわけですから、そういった状況にありますけれども、あわせて本部に は食品海外部がありまして、L/C開いて直輸入をする部門があります。これは直接輸 入の形で仕入れた原材料をグループ各社の使用分として流すとか、そういった仕事もや っております。ですから、そういった意味で先ほど申し上げた2002年のホウレンソウ事 件とか、あるいはウナギの抗生物質の残留ですとか水銀問題とか、いろいろ痛い目に遭 ったという経緯は確かにございます。では、そういった面で安全だということをどうい うふうにPRしているかというふうに言われますと、特にPRしている状況にはありま せんけれど、法的に表示が必要でないものについてもあえて産地の表示をするというこ とや、加工品といいますか、惣菜対象商品等についてもきちっと表示をするというよう な形をとっている部分はその一つかと思います。あわせてイトーヨーカ堂のQC室の隣 に隣接してお客様相談室というのがあります。直接お電話でお客様からのお小言をお受 けする、あるいはメールで受けてそれに回答するという部門があります。いろんな情報 を連携しながら、輸入の商品についていろんな問題があったときも一つ一つ、一人一人 にきちっとしたお答えをして納得をいただく、そういった積み重ねが不安の払拭のため にやっている仕事というふうに言える部分はあるかというふうに思います。  それとあわせて、とにかく現地に出向くという方針といいますか、そういった動き方 になっていますので、先ほど申し上げた東南アジア、ベトナム、タイ含めて回っている ときに、偶然タイのスワンプーム空港で「伊藤さん」と、若い人から声をかけられて振り 向くと、うちの30代の若い惣菜部のバイヤーと、それから食品海外部のメンバーがたま たまいるわけです。「どうしたんだ」と。「いやちょっとエビの仕入れ、あるいは鶏肉 の加工品のスペックの調整」とか、そういう話をしていましたけれども、「どこへ行く の」と、向こうは上海、「こっちは極寒の北京だ」というふうに冗談を交わしましたけれ ども、それぐらい動きが実質的に社内でもグローバルになって、そういったことも輸入 する商品についての安全性を積み上げながらリスクを回避している、安全性を確保、積 み上げているという結果になっているんではないかなというふうな考え方を持っていま す。  それ以外に、直接ニチレイさんを通じて仕入れさせていただいてお取り扱いをする商 品もいっぱいございますので、そういったことを含めて定期的に札幌、それから仙台、 新潟、名古屋、関西という形で、年に1回ないしは2回、お取引先会議という言い方を していますけれども、そのいろんなお話の中で輸入の問題についても、そのときどきの 事例を集めてお話を申し上げたりして、メーカーさん、お取引先を通じてそういった課 題の改善も図っているという部分があるかと思います。以上です。 ○合瀬解説委員  はい。阿南さん、ちょっとお願いしたいのですが、阿南さん、要するに消費者、輸入 食品の何が不安なんですか。 ○阿南事務局長  輸入食品の何が不安、やっぱりいろんな事件が起こると、農薬の問題だとかカビの問 題だとか、ということが不安です。それがちゃんとチェックされているのだろうかと不 安になります。私は、厚生労働省のホームページに違反事例が公表されますが、時々見 ます。そうしますと、特にアメリカからのコーンなんかがアフラトキシンの問題で、シ ップバックされたというような事例が載っていますので、大体のそうした状況はわかり ます。厚生労働省はそのチェックポイントとして、特にアメリカから輸入する場合には アメリカの今の生産状況や国内市場がどうなっているのかということを見極めながら、 そこを集中的にチェックしようということもやりますよね。私、こういうことが大事だ と思うのです。  例えば、メラミンの事件がありました。あれはその1年前ぐらいですか、中国から輸 入したペットフードにメラミンが入っていて、アメリカで被害が起こっていましたよね。 そんなこともあるし、世界は結構つながっていて、おもちゃの鉛の問題もそうでしたの で、やっぱりそういう情報をいかにキャッチしてポイント的に、中身をちゃんと精査し て、どこに問題があるのか、どこの国からの商品がそうなっているのかということを確 認する作業をすれば、かなりの問題は未然に防げるのではないかと思います。メラミン の問時は、あの1年後ぐらいに中国で起こったわけですよね。こういうことに対する感 度を高めることが必要だと思います。また、アメリカですと、回収、リコール権限は、 行政は持っていなくて、事業者が自主的にリコールすることになっているのですけれど も、リコールの際には3ランクぐらい設けられているそうです。すぐに回収しなくちゃ いけないとか、すぐに消費者に訴えなくちゃいけないとか、いや、それほどでもないと かといった具合に3ランクに分けていると聞いています。こういう分け方の基準のよう なものを共有していくということも行政の役割として大事ではないかと思います。 ○合瀬解説委員  はい。関連でもう一つ質問が来ておりまして、これは多分、今のお話は的確な海外情 報を収集して、それを的確に検疫に反映するということなのだろうと思うんですけれど も、ちょっとこれ質の違う事件、というのは中国産冷凍ギョーザ事件ありましたですね、 あれは、ああいうふうにピンポイントで入れられると、検疫というのはとにかく広く薄 く入っているのをつかまえるやり方ですから、ですからサンプリング調査して見つけら れるわけです。ところが、ああいうふうに中国でもし入れられたものだと仮定すると、 集中的にピンポイントで入れられたものは基本的には検疫ではつかまらないわけです。 そういうことに対してそれをどういうふうにするかということもあると思うんですが、 事業者の方から「冷凍ギョーザ事件のその後の予防策や対策など、生協などでも行って いますが、国としての最新の情報をお教えください」という質問が来ております。これ 厚生労働省に対してなんですが、西村さん、いかがですか。 ○西村室長補佐  今、合瀬さんの話されたとおりで、食品の検査というのは破壊検査になっていまして、 そのものを検査すると食べ物ではなくなってしまいまして、ミキサーで粉砕してそれを 分析していますので、全部のものを検査すると全部のものがなくなってくると、食べ物 がなくなってくるという結果になります。その中で、どれぐらいの割合で開梱したらい いのか、どれぐらいの割合で検査をしたらいいのかということを、いろいろ過去の経緯 だとか違反率だとかいう計算をして決めていて開梱率も全部事前に決めた中で検査をし ております。ピンポイントのものを1袋だけを見つけるというのはなかなか厳しいと思 います。そのために皆様方が言われているように海外に行って実際の工場を見てくる、 工場の管理体制をチェックするということが必要と考えております。また、輸入食品に かかわるすべての人、輸入者さんを初め、倉庫業者の方等輸入食品にかかわっている方 すべての方を対象にガイドラインでお示しをしましております。実際にそのガイドライ ンがどのように活用されているのか、どのようにまた改正をしていかなければいけない かということを含めて考えております。 ○合瀬解説委員  私は、実は日本生協連の、ギョーザ問題の第三者委員会の委員やってくれということ で一緒にやったんですが、あのときに見逃してしまったのは、前兆が出ていたわけです。 ほかのところで、ほかの生協で。実は事前に幾つか出ていたのを見逃してしまったと。 さっき伊藤さんが、クレームがいっぱい来たというふうにおっしゃっていましたけれど も、ですから今の体制、これ言い方悪いんですけれども、もうこれ検疫では見つけられ ないですから、そうすると何かの異常をどうやって早く見つけるかという勝負になって くるわけです。問題が起きたらそれを情報収集してすぐに対策に生かすと。この考えの 中で消費者庁みたいなのができてきて、すべての情報を消費者庁に集めてそこから対策 を打っていくだとか、企業は企業で、日本生協連は生協連でクレームとか何か異常が起 きたものをすぐに分析して、どういうものかというのをすぐ同じものをサンプル調査し てやるという企業レベル、もしくは国レベルでは仕組みはできてきているはずなんです。  ちょっとお2人の事業者の方にお聞きしたいんですけれども、冷凍ギョーザ事件は相 当事業者としてもショックな強烈な事件だったと思うんですが、それに対する対策、ま ずニチレイの片山さん、どういう対策打っていらっしゃるか教えていただけますか。 ○片山部長  冷凍ギョーザの問題からよく言われるのは、こういった食品の問題が起きたときに、 食品衛生上の問題なのか、そうではなくて犯罪みたいな意図的に入れられた問題なのか と、この2つの切り口から考えてと皆さんなっていたと思うんです。そのときに、通常 の食品衛生上の問題であれば1つだけおかしいということはあり得ないので、以前は同 様な幾つか出てきたら大変かなと、そのときにいろいろ判断をするわけですが、このギ ョーザ事件なり、その後のいろいろ問題起きたときに1パックだけおかしいということ もあり得る、意図的にといったことがあった場合に、それを見つけるというのはなかな か大変なんで、そのもとをただせばそういう事件を起こすようなことがないような現場 での管理といいますか、そういうことは一番大事なんだろうなというふうに私ども思っ ています。よく言われるフードディフェンスと。これは国のリスクレベルからいうと日 本というのは逆にいえば一番リスクが低いといいますか、そういう中に私どもいますか ら、日本の食品工場のレベルというのは、非常にそういう面から言うと一番緩いのかな と。それに対して中国だとか、例えばアメリカなんかもいろんな人種の方がたくさんい るということになると、それの考え方の延長線では難しいので大変厳しい監視カメラだ とか、人の管理、入室の管理、すべて徹底してやっていますよね。そういうこともお願 いせざるを得ない、逆に言えば中国に関しては中国政府がそのことの指示を出して、ま ず輸出業者だけではなく中国全体の食品の安全という形で取り組んでいる。それに上乗 せして我々が考えるところをお願いしているということがあります。  それからもう一つ、日本で何かこういうことが起きたときに私ども、これはほかの事 業者さんも一緒だと思いますけれども、少なくとも同じ商品で同じようなお客様からの お問い合わせなりクレームが、これは2件、3件ということになったときには、少なく とも注意をして監視をしているという形で広がりがないように、そこのところは早く手 を打てるような仕組みをとっているということで、犯罪的なところというのは私どもだ けでは難しいので、特に日本の消費者に渡るまでといわれた場合には、つくる段階だけ ではなくて日本の流通もいろんなことが起きていますよね、今針が入ったり。どちらか というと流通段階でそういう悪さを日本の中でも起きているという実態からすると、そ こをどうするかというのはなかなか一企業だけでは難しいのかなと考えています。 ○伊藤食品担当  メーカーといいますか、工場を司っていらっしゃる皆様方に対しては、結論としては 性悪説に立つのか性善説に立つのかというぐらいの発想、判断になった部分はあるかと 思います。多分監視カメラが多く設置されるようになったりというようなこともあった かと思いますけれども、このギョーザの事件は日生協さんだけではなくて、私どももJ Tフーズさんを通じて兵庫県のお店で対象品が出ていますので、そのときの気づき方と いいますか、「うん、これは」というような思いに至った部分は、今申し上げたように我 々品質管理に携わるQC室と、それから隣にお客様相談室というのがあります。それか ら我々は3階にいますけれども、1階には渉外部というのがあります。そこには警視庁 のOBの方々も退職された方がスタッフでいらっしゃいます。その3つの部分がよく連 携をしますので、いたずらっぽい内容、さっきの針の問題とかそういうことはもうすぐ に、どこから情報が入ろうが共有するようになっていますので、そういった面で非常に 敏感な動きが若干はできたような気がします。我々の部門に入ってきたときは、そんな ことがあったのかというような受けとめ方であっても、渉外のほうにそれを一報すると、 それはちょっと今までと違うねみたいな反応を示してくれることは、これは事実として ありました。その後、お店に問い合わせしてきたのが保健所さんではなくて兵庫県警だ ったということも含めて緊張感が走ったということはあります。  さっき、性悪説、性善説と言いましたけれども、労務管理の必要性ということもここ で非常に重要になってきたのではないかなと思います。衛生管理、品質管理、生産管理 だけでやっていて安心なものが出てくるわけではありませんので、そういった発想も重 要かなというふうに思います。実際に、これは味の素さんの冷凍食品の事例で、タイの 工場で冷凍食品の中からヤモリが出てきたことがあるんですけれども、1件ならまだし も、続いてもう1個出てきたものですから、すぐ手を打って確認してもらったところ、 現地の従業員のいたずらであることがすぐ判明しました。それはやっぱり通常の管理、 記録、トレースの仕方、いろんなものが十分に備わっていたせいではないかなというふ うに評価しています。  先ほど、阿南さんからもうすばらしい工場というふうにお話がありました。私も、駐 在期間を含めてその前から何回か行っていますけれども、1993年から中国訪問していろ んな工場を見た中で、少なくとも旧国営系の工場は別にして、タイの資本、あるいは華 僑の資本、台湾の資本で当時から入り始めてきた食品の工場については、はるかに日本 よりすばらしいなと思う工場がいっぱいあることは確かにこれは事実でした。問題の天 洋食品さんについても、多分すばらしい工場だと思います。ただ、個人的な意見ですけ れども、あの工場で、何でこれだけ日本の取引先が多いんだろうというふうに思いまし た。それから、つくっていらっしゃる商品が何でこんなに多岐にわたっているんだろう というふうにも疑問に思った部分がありました。この辺もいろんな意味でその要因の一 つになった可能性があるのではないかなという推測はさせていただいております。以上 です。 ○合瀬解説委員  天洋食品に関しては、今日本と中国で今後対策というか決着をどういうふうにつける かの話し合いが行われているみたいですので、まだちょっと確定したことは言えないと 思いますが、阿南さんのところは、要するに消費者団体としてこういうふうにしてほし いという要望もいろいろ出されていますよね。 ○阿南事務局長  ギョーザの事件が起こるまでは、私たちは食品安全については、セーフティーとセキ ュリティーということだけを考えてきたわけですけれども、あのときに初めてフードデ ィフェンスということを新たに考えなくちゃいけないということを認識したのではない かと思います。すごく新しい考え方だと思いました。消費者は、こうしたことがあり得 る話なのだということを認識しておくということが、ふだんの消費行動につながると思 うのです。例えば、先ほど合瀬さんがおっしゃったように、食べるときにはちゃんとに おいをかぐとか、ちゃんと確認をして食べるということが必要ですし、お店に行っても 選ぶときにはそういう食品テロみたいなことがあり得るということをわかっていれば気 をつけるわけです。ですから、ここはやはり消費者も認識を高めて食品の安全を一緒に 守っていくということが大切ですので、私たち自身もそうしたフードディフェンスにつ いての学習ですとかをさらに進めていかなければと思っています。 ○合瀬解説委員  はい、ありがとうございました。  確かにあの後、同じようなものに農薬か何かが入ったときに、食べた人はあれ、飲み 込まなかったんですね、食べて、あ、おかしいと思ったらすぐ吐き出して、それでもい ろいろ病院行かれましたけれども、やっぱりおかしいということが天洋食品の問題があ って、やっぱり消費者自身もちょっといろいろ気づいたんですね。  はい、すみません。ちょっと随分時間をとってしまいましたが、事前にいただいた質 問に答えるのはこれぐらいにしまして、もし会場で質問がありましたら、どなたか発言 していただきたいと思います。質問される方は挙手をされて、係員の者がマイクをお持 ちしますので、差し支えなければ名前と、それからご所属をお願いします。質問につい てはなるべく短くしていただければありがたいです。どなたか質問、ご意見ある方いら っしゃいますでしょうか。  はい、では奥の方。 ○質問者A  大阪消団連のAと申します。  西村さんに伺いたい点があります。聞き逃したのかもしれません、最後のスライドの 主な改正点の3つ目と4つ目なんですが、特に4つ目のところを見ますと、300件以上 の場合、解除というふうにあるんですが、この300件の件数の考え方をちょっと教えて いただきたい。ちょっと伺ったときには検疫所の検査の件数というふうに思ったんです が、1年間に300件の検査をするなんていうのは毎日輸入されているものというふうに も受け取れるんですが、そんなものってあるのかなというふうに思ったりして、上の60 件と300件の件数のカウントの考え方をちょっと教えていただきたいのと、現状はこれ どうなっているんでしょうか、例えば検査命令になったときに、こういうふうに強化し ている期間だとか件数というのは、現状がどうなっているのかも教えてもらいたいと思 います。 ○合瀬解説委員  時間もないので、もしほかにご質問があればまとめてお受けしたいと思いますが、よ ろしいですか。じゃすみません、西村さんお願いします。 ○西村室長補佐  検査命令の解除というのは、今の監視指導計画に書かせていただいているのは、2年 間かつ300件の検査で違反がないことということが解除の条件になっております。先ほ どスライドでお話ししましたように、それ以外に相手国について原因究明ができて再発 防止策ができている場合は、必要に応じて相手国に行きましてシステムが動いていると いうことを確認した上で検査命令を解除するということにしております。  今回、案として改正案では、2年間違反がないで1つ、1年間300件の検査で違反が 無いことで検査命令を解除するというようにしております。   現状としましては、モニタリング検査の強化に関しては、1年間違反が出てきてい ないものについてはモニタリング強化から削除しております。また60件の検査により違 反が出ていないものについても、モニタリング検査強化から通常の監視業務に戻してお ります。 ○合瀬解説委員  はい。大体今のご説明でよろしいですか。  はい。ほかにご質問、ご意見のある方、いらっしゃいますでしょうか、よろしいです か。よろしいでしょうか。  せっかくの意見交換会ですから。 ○西村室長補佐  一つ、輸入食品の監視というのは私ども厚生労働省が管轄してやっているんですけれ ども、日本全国に31カ所の輸入食品の届け出窓口がございまして、皆様方、今回の大阪 会場からのご要望ということで、検疫所をもう少しPRしたらいかがかという意見をい ただいております。31カ所の検疫所の中に関東地区では横浜検疫所に輸入食品・検疫検 査センターというのを設けております。関西地区においては神戸検疫所の中に輸入食品 ・検疫検査センターというのを設けております。この輸入食品・検疫検査センターは、 多くの検査機器をそろえ、残留農薬を始め多くの検査をしております。その検査センタ ーにつきましては、検査機械を止めることがどうしてもできないということがあるんで すが、神戸検疫所については7月から8月の夏休み期間中の間に1日、公募をいたしま して検査センターの中を開放しております。また、検疫所の中も開放しておりますので、 機会がありましたら、神戸検疫所のホームページと神戸新聞に載るというふうに聞いて おります。ことしの夏も公開すると聞いておりますので、機会があれば見学をしていた だければと思います。 ○合瀬解説委員  これは申し込みをすれば見せてくれるんですか。 ○西村室長補佐  たしか100人前後というふうに聞いておりますので、抽選になるのか、100人申し込み があるのかないのかちょっと聞いておりませんけれども、申し込んでいただければと思 います。 ○合瀬解説委員  はい。先ほどありましたように、とにかく一番最初の質問に対しては、輸入食品の安 全性に対する不安を払拭するために具体的な対策がなされていますかということについ ては、やっぱり現場を見てもらうという、すべての人たちが見る機会はなかなかないで しょうけれども、中国の現場を見てもらったり消費者の人に見てもらったりだとか、そ ういうものをビデオで紹介したりだとか、今ありましたように検疫所、そういうところ も実際に見ていただいて、どういうふうにしているかというのを見るとイメージがわい て、実際にどういうふうな検査をしているかとか安全性はどうなのかというのが、疑問 がとれるんではないかというお話と、もう一つは、冷凍ギョーザ事件みたいなものがあ ると、これからは食品の品質管理だけではなくて労務管理まで含めてやらないと難しい というお話でした。  たしか中国の天洋食品の問題があったときにも、その前後に中国の労働法が変わって、 いろいろ人員削減だとかという話があって、それが影響しているのではないかというお 話もありました。日本でもフードディフェンスというか、労務管理だとか工場管理とい うのが非常に今注目されていろんなところで取り組みが進んでいます。そういう動きも いろいろと厚生労働省のほうからまたご説明していただけるかと思います。  きょうは輸入食品の安全性についての意見交換会を行いました。厚生労働省から西村 さんのほか、全消連から阿南さん、それからイトーヨーカ堂から伊藤さん、それからニ チレイから片山さんいらっしゃって、製造現場から行政、消費者、それから流通、小売 の立場まで含めて、いろいろ輸入食品の安全性への取り組みについて紹介していただき ました。どうもきょうはありがとうございました。(拍手) ○司会(北村)  本日は長時間にわたりまして意見交換会の円滑な運営にご協力いただきましてどうも ありがとうございました。  繰り返しになりますけれども、「平成22年度の輸入食品監視指導計画(案)」につき ましては、現在パブリックコメントを募集してございますので、本日の意見交換会にご 出席されてさらに疑問に思ったこと、また質問等できなかったことについても意見等を お寄せいただければと思います。  以上をもちまして、「輸入食品の安全性確保に関する意見交換会」を閉会いたします。 どうもありがとうございました。  なお、出入り口のほうでアンケートの回収を行っておりますので、ご協力をお願いし たいと思います。どうぞよろしくお願いします。  本日はどうもありがとうございました。 照会先:食品安全部企画情報課 03-5253-1111(内2493/2452)