09/01/19 平成21年1月19日(福岡市中央区)食品に関するリスクコミュニケーション〜輸入食品の安全確保に関する意見交換会〜議事録          食品に関するリスクコミュニケーション        ――輸入食品の安全確保に関する意見交換会――               日時:平成21年1月19日(月)14:00〜16:45       場所:アクロス福岡 国際会議場 【司会(北村)】  それでは、時間となりましたので始めさせていただきたいと思い ます。  本日は、皆様ご多忙の中ご参加をいただきまして、どうもありがとうございます。た だいまから食品に関するリスクコミュニケーション、輸入食品の安全確保に関する意見 交換会を開催いたします。  私は、本日司会を務めさせていただきます、厚生労働省食品安全部企画情報課、北村 と申します。よろしくお願いいたします。  本日の意見交換会は、テーマに関します説明、講演、パネルディスカッション、意見 交換を通じまして、輸入食品の安全確保についての理解を深め、関係者間の認識を共有 することを目的としまして開催するものでございます。  まず最初に、配付資料の確認をお願いいたします。お配りいたしております資料の一 番上に次第がございます。そこに、配付資料は書いてございますので、それに従いまし てご確認をお願いいたします。  まず、資料1−1、「平成21年度輸入食品監視指導計画(案)について」というこ とで資料がございます。次に、資料1−2、「平成21年度輸入食品監視指導計画 (案)」というのがございます。次、資料1−3としまして、パワーポイントの資料に なりますが、「輸入食品の安全性確保について」という資料になります。資料2としま して、「輸入食品の安全確保の取り組みについて」と、日本水産株式会社さんの資料に なります。  不足の資料はございますでしょうか。挙手いただきましたら、係の者がお伺いいたし ます。途中でお気づきになられましたら、スタッフに声をかけていただければと思いま す。よろしいでしょうか。  また、アンケート用紙を同封させていただいておりますので、これは今後の意見交換 会をよりよいものにできるよう皆様のご意見を伺うものでございますので、ご協力をよ ろしくお願いいたします。ご記入いただきましたアンケートは、意見交換会終了後に受 付のほうでお受けいたしますのでよろしくお願いいたします。  続きまして、簡単に本日の議事進行を紹介させていただきます。また、議事次第のほ うをごらんいただきたいんですけれども、最初に輸入食品の監視についての動画をごら んいただきます。時間は8分ほどになります。  次に、テーマに関します説明としまして、「輸入食品の安全性確保について、平成2 1年度輸入食品監視指導計画(案)」について、公正労働省食品安全部輸入食品安全対 策室の近藤から説明いたします。  続きまして、日本水産株式会社品質保証室水産品・農産品品質保証課長の前田様から、 日本水産株式会社におけます輸入食品の安全確保に関する取り組みについてご講演いた だきます。  講演終了後、10分ほど休憩をとらせていただきまして、3時45分ぐらいからパネ ルディスカッション、意見交換を行いまして、午後4時45分の終了を予定してござい ます。よろしくお願いいたします。  また、携帯電話のほうは、進行の妨げになりませんようにマナーモード等にしていた だくようによろしくお願いいたします。  それでは最初に、動画「輸入食品の安全を守れ――輸入食品の監視――」をごらんく ださい。 (動画上映) 【司会(北村)】  それでは続きまして、厚生労働省食品安全部監視安全課輸入食品 安全対策室の輸出国査察専門官の近藤より、「輸入食品の安全確保について、平成21 年度輸入食品監視指導計画(案)」について説明いたします。それでは、近藤専門官、 よろしくお願いいたします。 説 明 【近藤】  ただいまご紹介にあずかりました、私、輸入食品安全対策室の近藤と申し ます。よろしくお願い申し上げます。  こちらの会場にいらっしゃっている何名かの方は私も面識がございますし、皆様も多 分ご面識があると思います。というのが、これからお話しする内容もそうですけれども、 昨年1年間がどういう年であったのかということを振り返ってみますと、1月末に中国 産冷凍食品の問題が起きたということでございます。  その問題が起きた1週間後に、政府調査団が中国に行っていたということもご記憶に あろうかと思います。実は、私はその政府調査団の一員でございまして、中国に行って いろいろな物を見てまいりました。そこで見た経験等も踏まえながら、今日はご説明を していきたいと思っております。よろしくお願い申し上げます。  時間は、これから大体40分程度となっております。ですので、お伝えすべき点をわ かりやすくかみ砕いてお話をするということ。また、監視指導計画を今日これから説明 いたしますけれども、監視指導計画は例年から継続して行っていること、また昨今の事 案を踏まえて対応すべき点を反映すべきこと、こういうことがございますので、後者の 点について主にお話を進めていければと思っております。  まず、輸入食品の監視体制でございます。お手持ちの資料では、資料1−3がこちら のスライドの一覧となっておりますので、もしなかなか見にくいという点等がございま したら、お手持ちの資料をご活用いただければと思います。  これは、輸入食品の現状をまずご説明しておりますけれども、大体どれぐらい輸入が あるのかということでございます。これも皆様、大変ご熱心でございますでしょうから 既にご存じのことと思いますけれども、平成19年につきましては、届け出件数で18 0万件で、重量としては3,226万トンという輸入食品が輸入されております。若干 ここ数年減少傾向にあるのかなということでございます。  これは、先週金曜日の新聞にも書いてございましたが、昨今のいろいろな衛生事案の 発生を受けまして、輸入食品自体の輸入届け出が若干減ってきているということが、こ の届け出件数にも反映されているものと思っております。  では、その届け出の内訳がどうなっているのかということでございます。で、これを 見ていただきますと、日本の食糧自給状態がどうなっているのかということが大変よく わかります。一目でわかるとおり、農産食品と農産加工食品が非常に多いということが わかると思います。  これに比較しますと、水産食品や畜産食品は多いながらも圧倒的にその量は少ないと いうことになっています。これは、ウエートベースで示しておりますので、穀類の占め るウエートが非常に大きいということがあります。ですから、主に小麦とかまたはトウ モロコシと呼ばれているものは、日本の自給率が非常に低いと。ですので、このような 重量の大きいものをたくさん輸入する、結果として、農産食品や農産加工食品の輸入重 量の比率は大きくなるという形になっております。  で、これからお話しいたします輸入食品監視指導計画でございますけれども、これは 平成15年に食品衛生法が改正されまして、その折に導入された条文となっております。 条文番号は第23条でございます。で、この中に、輸入食品監視指導計画というものは どういうことをするものであるということが書いてございまして、その中に皆様方から のご意見をいただきまして、その意見を踏まえて計画を策定するということ。  また、一番下に書いてございますけれども、その計画の実施に当たってはその実施の 状況について公表に努めるということになっております。ですので、これ以降のスライ ドにございますけれども、輸入食品監視指導計画につきましては、年度の途中に一度そ の状況等についてのご報告をしております。  こちらが、監視体制の概要の一枚紙というんでしょうか、スライドとなっております。 冒頭にビデオをごらんいただきましたけれども、そのビデオの中で行っている行為が3 段階の図柄で示されています。3段階といいますのは輸出国、輸入時、そして国内でご ざいますが、この輸入時の段階に検疫所という組織が輸入食品の監視業務を行っており ます。  で、この3段階に分けるということにつきましては、この一つに食品の衛生確保とい うものは、「生産段階の各工程において適切に行われることが必要である」という食品 安全基本法の理念にも基づいております。特に、輸入食品の場合には国内でつくってい ない、海外で生産されているということを考えた場合に、やはり輸出国の段階を抜きに は考えることはできないと。また、その輸出国における管理が適切であるかどうかは、 輸入時にも確認が必要であると。  また、この後ご説明いたしますけれども、さらに国内に流通しているものについても 確認し、そのおのおのの段階で得られた衛生に関する情報をリアルタイムで輸入時の検 査業務に反映していくということが、適切な輸入時の監視を行う上で大変重要であると いうことでございます。  特に、昨今、輸入時の取り扱いというのは、これは輸入食品のみならず、動物検疫や 植物検疫もそうなんですが、ワンストップサービスを導入しております。コンピュータ システムによって、各省庁で一元的に届け出を取り扱うということでございます。です から、厚生労働省の検疫所につきましても、先ほどビデオでごらんいただきましたけれ ども、コンピュータのシステムを使いまして、輸入届け出情報のスクリーニングを行い、 その段階で問題があるものについては、機械的にその貨物を探知して検査官に知らせる という仕組みができ上がっております。  窓口の配置状況ですけれども、こちらはごらんいただければわかりますとおりに、太 平洋ベルト地帯に沿って検疫所が非常に多いということがおわかりいただけると思いま す。昨今は、リスクの低減という意味も含めまして国内に在庫をとらない。ですので、 都度都度必要になったものを海外から輸入し、消費地に販売していくという流れになっ ております。  つまりは、消費地に近いところで水揚げをして、それを時間を置かずにその消費地に 流通させるという仕組みになるわけですので、当然ながら人がいっぱい住んでいるとこ ろの近くに港もできますし、港があればその部分に検疫所も設置されるという仕組みな っております。ですので、太平洋ベルト地帯に検疫所が非常に多いということ。  また、分析に関しましても、先ほどセンターのご紹介がありましたが、このセンター につきましてはビデオに映っておりました横浜のセンター、そしてもう1カ所神戸にセ ンターがございます。こちらのほうで、いわゆる高度な分析といわれている、残留農薬 であったり動物用医薬品のような検査につきましては一極集中で検体を集めまして検査 の効率化を図る。  また、それ以外の検査につきましては、検査課が全国に6カ所設置されておりますの で、こちらのほうでも検査を行って、業務の分担を行いつつ効率化を進めているという 状況でございます。  こちらは、食品衛生監視員の推移でございます。検疫所で輸入食品の監視を行ってい る職員は、全く無資格で行っているのではなくて、大学を卒業していただきまして一定 の学術知識を持った専門の方を採用しております。この方は、食品衛生監視員と呼ばれ ておりまして、この監視員が新聞報道等ではまだまだ少ないのではないかというような ご指摘を受けている人たちでございます。  人数ですけれども、平成20年度、今年度でございますが、341名が配置されてお ります。そして、公務員も定数削減が非常に強く叫ばれている中ではございますが、何 とか増員のほうを図っておりまして、来年度につきましては368名を配置するという ことで予定しているところでございます。  次のスライドは、こちらも食品というものは届け出というところから始まるものです ので、検疫所に対する輸入の届け出というものは何を届け出しているのかということで ございます。届け出事項は、括弧書きの中にございますとおりに、輸入者のお名前から 貨物の内容、また遺伝子組みかえの有無等々についての記載事項がございます。  で、これらの届け出が行われた結果といたしまして、先ほどビデオにもございました が、次に検疫所で審査ということが行われています。審査の中では、違反の蓋然性が高 いものについては検査命令を行うというふうになっていたと思います。で、それ以外の ものについては、その輸入食品の衛生状況の確認を行うことを目的といたしまして、モ ニタリングという検査を行っております。  このモニタリング検査は、年間計画に基づいて行われておりまして、この図でいいま すと一番下の部分にモニタリング検査という文言があろうかと思います。さらに、モニ タリング検査の下に指導検査がございますが、これも平成15年の食品衛生法の改正に おきまして、「輸入者の方には一定の衛生確保を行う責務がございます」ということを 明記しております。その中の必要事項といたしましては、自主検査を含むという形にな っています。ですので、検疫所では食品を輸入される方に対しましては、まず輸入者の 方にみずから衛生確保を図っていただくという観点から、指導検査を行っておりまして、 この指導検査が一番下の欄に書き込まれているということでございます。  これらの検査の結果ですけれども、違反が見つかるということになりますとその違反 が見つかった食品の当該項目については、輸入食品としての違反の蓋然性が高いか低い かということを確認する必要性が発生します。というのも、食品の違反が一気に見つか ったから、もちろんその内容にもよるんですけれども、必ずしも違反率が高いと判断す るのは非常に難しいと思います。ですので、我々といたしましては、モニタリング検査 の強化という形で検査の頻度を引き上げます。で、この検査を引き上げた結果といたし まして、やはり同じ食品から同じ項目で違反が見つかるということになれば、これにつ いては違反の蓋然性はあるということになりますので、検査命令に移行してまいります。  で、この検査命令までの間が、検査によって安全性を担保しようという考え方に基づ いて設計されているものです。しかしながら、今からおおよそ10年前を皆さん振り返 っていただきますと、10年前に何があったか。10年前には中国産の冷凍ホウレンソ ウの事件があったんですね。この中国産の冷凍ホウレンソウを契機といたしまして、一 番上にあります包括的輸入禁止規定が議員立法でつくられているんですね。  検査による安全性の確保は、その検査の対象となる貨物のロットの同一性がいかに担 保されているかということに従います。ですので、検査の対象となるロットに一定の均 質性がないということになった場合には、これはもはや検査によって安全性を確保する ことはできないんです。このような事実が確認された際には、包括的輸入禁止という手 段を使いまして、ある特定国のある特定の品目については、日本へ輸入を認めないとい うことができる仕組みとなっております。  幸いながら、この包括輸入禁止が使われた経緯というのは今のところございませんけ れども、この包括輸入禁止も実は対外国だけでなく、内外無差別で適用される条文とな っておりますので、仮に特定の県の商品について特定の違反が、しかもロットの管理が 不良で起こっているというようなことがわかれば、これは国内にも適用される条文にな っておりますので、こういう点も含めて今生産者が非常に神経質に生産に取り組んでい るという状況だろうと思っております。  あと、横に検査件数を書き抜いてございますが、この検査件数は当該検査区分で実施 された件数になっております。よく輸入食品の検査は10%では低いんじゃないのかと いうことが報道等に出てくることがあるんですけれども、その10%のもとになってい るのがこの数字なんですね。届け出件数は、先ほど言いましたように180万件、そし て横に出ている数字を全部足し上げますとおおむね20万件になるんですけれども、こ の180万件に対する20万件が10%の根拠という数字になっています。  ただ、今お話をしている中で多少おわかりいただけると思うんですけれども、モニタ リング検査というのは年間計画に基づいているのである一定の規定数があると。ただし、 その上の強化になった件数は、その年々にどういうものが強化になるのかというのは予 測がつかない世界でございます。  もう一つは、検査命令がございますけれども、この検査命令にモニタリング検査の強 化からその年に何件移行するのかということ。また、検査命令になった段階で、そのも のがどれぐらい輸入されるのかということも、これは市場経済の原理に基づいて決まり ますので必ずしも一定ではないということになります。ですから、20万件というのは あくまで検査を行った結果論の20万件でありまして、よく言われる10%をねらって いるんではないかというものではないんだということをおのずからご理解いただければ と思います。  次のスライドは、個々に検査の中身があるんですけれども、中身というものはどうい うものであるのかということをお示ししておりますので、また参考までにごらんいただ ければと思います。  次に、モニタリング検査の算出方法でございます。このモニタリング検査、モニタリ ング検査と私どもはよく言いますけれども、それはどういうふうにつくられているんで すかということをここの図柄の中でお示ししております。何枚かスライドがあるんです けれども、この1枚目につきましては、まずリスクに応じて食品類を決めて、リスクの 低いものにはモニタリング検査を適用するという考えがございます。  ですから、食品によってもいろいろなリスクがあります。化学物質もあるし微生物も あるし、カビ毒もあるし、いろいろなリスクがあるんですけれども、そのリスクを持っ ているグループごとに大きく食品を区分していきますと、大体157分類になります。 この157分類ごとに、どういう検査を適用すればその食品の違反の蓋然性が評価でき るかということが2ポツ目に書いてございます。ここでは、299件という数字が出て まいります。  この数字は、その下の参考にございますCODEXという国際機関において、特定の 食品群の中で一定の違反率があることを何件検査をすれば確認できますかということを 示している表なんです。これがガイドラインナンバー、括弧の中に書いてありますけれ ども、CAC、これはCodex Alimentarius Commissionの略、GLというのはガイ ドラインという意味で、ガイドラインの33、1999年につくられたものでございま す。  このプランの中のちょうど中央部を見ていただきますと、標本の違反率が1%という のが左側にございます。ですので、ある特定の食品群についてまず1%の違反を見つけ るためには、この1%という欄を見ます。そして、その1%のあることを、どの程度の 信頼性を持って見るかということを次に決めるんですけれども、これは一般的に95% といわれています。ですので、特定の食品に特定の項目の1%の違反率があることを、 95%の信頼性を持って確認するためには、299件の検査を行えばわかるという仕組 みなんです。  この基本的な考え方を使いまして、これはあくまで例示でございますけれども、それ がどうやって最終的な件数になっていくかということなんですね。先ほど言いました2 99件というのは、農薬だったら農薬だけ、動物用医薬品だったら動物用医薬品だけ、 これで個々に299必要になるということなんですね。  ここでは米を題材としておりますけれども、どういう項目を見ようかと。残留農薬、 抗菌性物質等々から放射線の照射というところまで、基本的に299という数字を並べ れば、すべての項目について違反率が確認できるという仕組みになるんですけれども、 実際にはお米の生産において食品添加物が使われるということは基本的に考えられない だろうということ等々の考え方を組み合わせていきますと、そこに検査の件数の軽重と いうのがついてまいります。  ですから、検査の軽重をつけた結果として、カビ毒については299やりますけれど も、放射線照射というのは基本的に禁止されている事項でもございますので、こういう ことは行われないという前提条件のもと、検査を横軸で立ち上げますと715件という 数字が出てまいります。この数字を175分類全部足し上げていきますと、最終的に今 年の計画件数ですけれども、約8万3,000件という数字が出てまいります。  次に、検査命令ですけれども、検査命令は確かにすべてをとめおいて検査をしますの で、検査の実施を確保するという意味では有効なツールなんですが、その実施の方法に は二つございます。一つは、人体に対する影響が大きいものが確認された場合には、1 回の確認だけですぐ検査命令にします。ところが、一定の安全性が確保された上で使用 方法とか残留基準が決まっているものについては、下の欄になりますけれども、違反の 蓋然性を確認した上で検査命令にするという仕組みをとっております。  解除に当たりましては、有効な対策がつくられないと再発は防止できないという観点 から、再発防止対策等々の内容が適正であるということが確認できた段階で解除を行う ということを行っております。  具体的に、どのような品目が今検査命令になっているかということでございます。こ れはあくまで抜粋でございますので、詳しくは私どものホームページの中をごらんいた だければと思います。ホームページの中には、検査命令の別表1がございます。別表1 というのは、これ以外の国も含めてすべての検査命令の対象品目を掲示しているもので すけれども、この検査命令の別表1を皆様にお示しする意味というのは実は二つござい ます。  一つは、我々は行政手続上、検査命令というのは輸入者の方に検査の費用を負担して いただいて、その上で合格になったものの輸入を認めるという仕組みになっております。 ですから、あらかじめ皆様にこういうものを持ってきますとこういう検査がありますと いうことをお示しする必要があります。ですから、このような表をお示ししているとい うのが一つ目。  もう一つは、この表がどうやってつくられているかということなんですね。この表は 何年にもわたりまして国の検疫所の監視業務において見つかってきた違反、またはこち らにもいらっしゃると思いますけれども、事業者の方が自主的に検査を行った結果とし て見つかった違反、または自治体の方に調査をしていただいてわかった違反、こういう ものを全部吸い上げまして、この別表1ができ上がっているんですね。だから見方を変 えると、世界中の食品についてどういうハザードがあるのかということがこの別表1か らわかるんですね。  なので、特定の国を見た場合に、農薬の命令検査が多いということになった場合には、 その国の農薬の衛生管理体制を疑って、しっかりしているかどうかの確認をとるという ことが必要になると思います。また、動物用医薬品の場合でも同様に、動物用医薬品の 検査命令の項目が多いという分については、その観点からも確認の強化が必要なんだろ うと思います。  ですので、この検査命令の別表1というのは、見方を変えるといろいろなものが見え てくるという表ですので、ぜひとも皆様の衛生管理等にお役立てをいただければ非常に 助かるというものでございます。  次の絵柄は、検査の仕組みを図示しているものでございます。先ほどの文章にもござ いましたけれども、モニタリングの場合には検査率がございますので、すべての貨物に 行われているものではないと。ただし、ここで違反の蓋然性があると判断された場合に は右側の検査命令に移行しますので、その折にはすべての輸入届け出について検査を行 っていただくという形になっております。これを図示したものです。  これが、冒頭3枚目ぐらいのスライドでご説明しましたが、監視指導計画については その第23条4項という項目の中で、検査の実施状況について示さなければいけないと いう形になっております。ですので、その中間報告といたしまして、平成20年度も公 表を行っております。届け出検査、検査の実施状況等が書いてございます。  1点だけお手持ちの資料の修正をお願いしたいんですけれども、一番下に検査命令対 象品目とございまして、このスライドの中では一番最後の括弧書きに「平成20年9月 30日現在」となっているんですが、皆様にお配りしている資料は修正が間に合わなく て済みません、「19年」となっておりますので、そこを「20年」という形にお直し をしていただければと思います。  その中間報告の中身を違反という特異的な部分に限って抽出をしてまとめてみますと このような形になっております。昨年は大体年間で1,500件の違反があったという ことでございます。今年は中間段階ですけれども、届け出ベースで501件という形に なっておりますので、若干違反の件数としては前年よりも低いという状況になっており ます。  ただ、違反の条文別の構成がございます。一番左側に「6」「9」「10」と書いて ございますが、これが食品衛生法の条文番号でございます。この条文番号で見ますと、 11条の部分がやはり非常に多いということがわかります。11条というのはどういう ものであるのかといいますと、横に書いてございますとおりに「基準及び規格」となっ ております。つまり、あらかじめ基準・規格が食品衛生法上示されておりまして、その 示されているものに合わないというものでございます。  この合わない部分が非常に多いということであるならば、これを裏側から見た場合に、 輸入者の方があらかじめわかり得る基準と規格に合っているかどうかをいかに適切に確 認して輸入するかということによって、この11条の違反というものは下げることがで きるということを言っているんです。ですので、先ほど輸入食品の事前相談というもの もございましたけれども、検疫所でも、このような場を通じまして規格や基準を含めて、 輸入者の方に対するご指導を行っております。  あと、こちらはあまり耳ざわりのいいお話ではないんですけれども、あまりに違反を 繰り返す輸入者の方がいらっしゃる場合には、営業の禁停止も行うことができるという 形になっております。このような禁停止に至る前の段階で、やはり我々としても注意努 力義務を喚起するという必要がございますので、二つ目の検討開始要件の中にございま すとおりに、違反率がおおむね5%を超えている方は、申しわけございませんが厚生労 働省にお呼び立てをしております。で、厚生労働省に来ていただいた上で、改善の方法 またその原因の究明について、確認・報告を期限を切って求めております。  このような形で、再発を防止するということにも努めております。ちなみに、指導実 績はどれぐらいあるのかといいますと、一番下にあるとおりに、平成18年、平成19 年、また平成20年には24社という形になっております。  あと、このような輸入者に対する行政指導というのは当然重要なんですけれども、な かなか民間だけでは対応し切れないという部分もございます。このようなものについて は、政府間協議または政府の人間が現地に行って指導等を行うということも必要になっ てまいりますので、このような現地調査等についても行っております。実績は、こちら の表に示しているとおりでございます。  これからが平成21年の監視指導計画のご説明となります。最初の部分につきまして は、昨年と同様の内容でございます。一つには検疫所で何をやるのかということ。で、 検査を的確に行って、その検査の結果を踏まえた適切な対応を行っていくということを お示ししております。これは昨年と同様でございます。  また、海外の情報に基づく緊急対応というものも必要でございます。最近はネットが 非常に普及しておりますので、諸外国の衛生管理当局等が何か対応等を行った場合には、 その対応が速やかにホームページにアップされる。それを我々も探知することができる ます。ほかにも、UNFAOさんという国際機関があるんですけれども、そのような組 織からも各国該当するような問題事例があった場合には、その国に対して国際機関から も情報が届くというようなことも行われております。  無論、我が国でも情報収集というのは恒常的に行っておりまして、どこがやっている かといいますとその上のポツにございます1番、2番のバレットにあるように国衛研の 情報分、また食品安全委員会といわれる内閣府の組織も行っております。  そして、問題事例があった場合には、先ほど輸入食品にはコンピュータシステムが導 入されているということをお話ししましたが、このコンピュータシステムの中には検索 の機能がついております。この検索機能によって、わずか数分で200万件の検査をチ ェックすることができます。この検索機能を通じまして、問題があった貨物が海外情報 で確認された場合には、その輸入実績があるかということを速やかに検疫所のデータベ ースから引っ張り出しまして、もし輸入があった場合については速やかに輸入者に情報 提供をするとともに、各自治体に連絡をいたしまして問題の拡大防止を図るということ も行っております。  次の、輸出国における衛生対策の推進でございます。ここも先ほど2国間協議等を行 っているということで説明をしていますけれども、特に三つ目、輸出国への技術協力と いうのがございます。我々は過去からずっと国際協力機構(JICA)を通じまして、 発展途上国に対する衛生管理技術の供与を行ってきております。昔はODAというもの を持っていたんですけれども、これは今外務省がやっておりますので、私たちとしては あくまで技術の供与ということを行っております。  具体的に、昨今、何をやっているかといいますと、農薬とか動物用医薬品の分析の技 術は、実は日本が世界でナンバーワンでございます。で、数多くの検査項目も分析でき るというフレキシビリティーにも富んでいるという点があります。ですから、今諸外国 から、この日本の分析技術を教えてほしいというご要請というのが非常に多いです。 我々も限られた人間の中でやっていますので、全部が全部対応できるわけではないんで すけれども、昨今では例えばマレーシアとか、今年であればチリにも行って供与してい ます。  今年度末から、どの国でその対応を図っていくのかということですけれども、今年度 末からは中国に我々は技術の供与を行う予定としております。多分、皆様も非常に興味 がある点だと思いますけれども、中国側も分析という分野においては、日本とは一長一 短の差がございまして、追いついていない部分もあると。ですから、このような点につ いて足りないところをしっかりと勉強したいという申し出が来ております。ですので、 このようなご要請を受けまして、本年度末から我々といたしましても中国に対しまして の技術供与を行うことにしております。  次のスライドは、輸入者への自主的な衛生管理の実施に係る指導なんですけれども、 これは次のスライドを見ていただきますと表がございます。輸入者に対する基本的指導 事項とございます。この輸入者に対する基本的指導事項というのが、毎年皆様にコメン トを求めております管理指導計画の表の中に入っていまして、実は検疫所もこの表を見 ながら必要となる項目について輸入者の方にご指導を行っております。  この表を見ますと、ほんとうに基本的なことが書いてあるんですけれども、ではこれ を見て輸入者の方が適切な対応をとることができるのかということでございます。無論、 特定の方はできるというふうに思っておりますが、一部の方にとってみると、これを見 ていただけで何をやっていいか具体的にイメージするのは難しいと思っております。な ぜかといいますと、輸入者というのは資格が要らないんですね。だれでも輸入者になる ことができる。だから、経験豊富な方もいらっしゃれば全く経験のない方々もいらっし ゃるということになります。  我々といたしましては、昨年の1月末になりますけれども、ギョーザの問題を受けま して、では輸入者の方がよりよく衛生管理ができるように、もっとかみ砕いたものをつ くろうということでガイドラインをつくっているんですね。これもホームページに載っ ておりますけれども、生産または流通の各段階で、輸入者の方はどういうふうに対応を すべきなのか、何を確認すべきかということがかみ砕いて書いてあります。それは、ま さにこの基本的指導事項をよりわかりやすく書き抜いたものになっているんです。  ですから、この基本的指導事項を見ていただきまして、まずは抜けているかいないか というところを確認していただくことになろうかと思うんですけれども、さらにわから ないということがあればこれはガイドラインも併用していただいて確認をとっていただ ければ、より理解ができるという仕組みになっております。  来年度の計画の主な改正点でございますけれども、まず監視指導の強化ということが ございます。一つ目は、検査の件数を増加します。もう一つは、検査の項目も増やしま す。で、もう一つ、器具、容器包装及びおもちゃについても食品衛生法の中で管理され ているものがあるんですけれども、昨年の10月に規格・基準の改正ということがあり まして、その改正を踏まえてモニタリング検査をこれに沿った形で拡充するということ。  最後でございますけれども、これは計画を輸入実態に沿ってきちんと見直しますとい うことなんです。昨年、行政監察の中で、検疫所の検査の実施の内容が計画と合ってい ないというご指摘をいただいたんです。実際には、検疫所は輸入実態に沿って検査をや って、実態に則した形の検査は終了しているんですけれども、その大もとの計画が前年 までの実績を使ってつくっていますので、必ずしも翌年でその計画が合うかというとな かなか合わないことがあるんですね。  ですから、実態を踏まえて検疫所の方に対応していただくのではなく、本省のほうと してもしっかりと見直した計画をちゃんと出しなさいということになっておりまして、 この点についても我々も対応したいというふうに考えております。あとは、情報収集の 推進でございます。問題が起こる前から、より積極的に現地の情報を推進していこうと いうこと。  で、最後にございますとおり、先ほどお話ししましたガイドラインがありますので、 このガイドラインについてもお話ししております基本的指導事項に加えまして、これを もっても輸入者の指導を充実させていこうと考えております。  以降、参考資料をおつけしております。これはもっと時間が長いリスクコミュニケー ションの場合に、もっと前の段階にいろいろ差し込んで説明するものなんですけれども、 今日はお時間の関係もございまして参考資料という部分に幾つか資料を入れております。  その中で一枚だけ、これはあくまで皆様のご参考のためにご説明いたしますけれども、 ここに農薬の残留基準の設定方法がございますね。よく新聞をごらんになっていただき ますと、食品衛生法には違反をしていますと。要するに、基準には合っていません、だ から、先ほど言った11条の規格に合っていませんよという形になるんですけれども、 その11条の規格に合わないことをもって、直ちに健康に影響があるものではありませ んという新聞の広告をごらんになる方も多いと思います。それはなぜかということなん ですね。そのなぜかということが、このスライドと次のスライドに書いてございます。  まず、基準を設定する場合には、このADIという1日許容摂取量を設定して、これ を超えないように各食品の基準値が置かれています。で、その各基準値を設定する場合 には、どれぐらい食品を食べているかということを考慮しなければいけないので、その 考慮する対象としては、普通の方もそうですけれども幼少児、妊婦または高齢者の方、 こういう方も考慮しています。  で、これらの方々の摂食量、食品を食べる量を勘案した上で設定される基準値の合計 がADIの80%を超えないというのが残留基準なんですね。ですので、このADIを どういうふうにつくっているのかというのが次の表です。  ADIは、これが毒性曲線と言われているんですけれども、縦軸が人への影響ですね。 だから一番上に行くと死んでしまうと。で、横軸がその量をあらわしています。量が上 がるにつれて、二次曲線を描いて致死量に達していくんですけれども、そのADIをつ くるときには、どんなに化学物質等を投与してもその動物等に対して全く毒性影響が見 つからないかをまず確認します。これが無毒性量といわれています。  この無毒性量の点から種差または個体差を見ます。人間を使ってこういう評価をする ことはできませんので、どうしても動物に頼らざるを得ないということがございます。 また、人間も個人間でその差はあると言われていますので、種差と個体差を考慮します。 で、この種差、個体差を考慮いたしますと、おおむねADIというのは無毒性量の10 0分の1の値になってきます。ですから、実際の使用レベルというのは、そのADIの 80%以下とお話ししましたので、それよりもさらに低いレベルで残留基準が設定され ているということになります。  ですので、このような基準値の設定の考え方と検出された量を考えた場合に、例えば 0.01ppmが基準値だった場合に、これを0.02ppmで検出したとしても、直 ちに問題が起こるおそれはないということになります。  無論、すべからく検出された値が問題がないことになるわけではなくて、こちらにあ るとおりに出た量があまりにも多いということになれば、これは当然ながらそのような 文書は到底書けないということになりますけれども、この考え方の枠組みの中でつくら れた基準値の中で若干の違反があったとしても、それが直ちに健康に影響するおそれが ないということが書けるのはこういう理由に基づくということでございます。  あくまでこれは参考まででございますけれども、新聞を読むときにご参考にしていた だければと思います。  足早ではございますが、私からの説明は以上でございます。明るくしていただいた上 で恐縮なんですけれども、資料の1−1の裏側に「指導計画案の内容」というものもお つけしておりますので、お時間があればまたそちらの内容もごらんいただければと思い ます。  ご清聴ありがとうございました。 【司会(北村)】  どうもありがとうございました。  続きまして、日本水産株式会社品質保証室水産品・農産品品質保証課課長の前田様よ り、日本水産株式会社におけます輸入食品の安全確保に関する取り組みにつきましてご 講演いただきます。  それでは、よろしくお願いいたします。 【前田】  それでは、ただいまご紹介いただきました、私、日本水産株式会社の品質 保証室というところで、名前のとおり主に水産品や農産品についての品質保証を担当し ております前田と申します。よろしくお願いいたします。  さて、本日は、弊社の「輸入食品の安全性確保の取り組みについて」という題でお話 しさせていただきます。お手元には資料を事前にお配りさせていただいておりますが、 本日投影をさせていただくスライドは若干お手元の資料と異なっておりますので、あら かじめ申し上げておきます。お話をしながらご説明しますので、その際はスクリーンの ほうを見ていただくというような形になるかと思いますので、よろしくお願いいたしま す。  それでは、本日のお題のこちらが目次的なものになります。私どもの取り組みですけ れども、輸入食品の安全性を確保するための取り組みというのは多岐にわたるわけです が、そのうちの本日は生産工場の管理、原材料の管理等のまず管理的なところで、私ど もが推進しています一貫生産というようなところをご紹介します。その後に、検査や教 育や、またいろいろなところでの事故の対応についての我々の体制について少しご説明 して、最後に当社の品質保証体制のまとめをさせていただきながら、本日のお話を終了 させていただければと思います。  しかしながら、40分というお時間の中ですので、いずれも概略になってしまうかと は思いますが、その点ご了承ください。よろしくお願いいたします。  では、早速ですけれども、生産工場の管理の取り組みについてお話をさせていただき ます。日本水産が諸外国から輸入する加工食品は、ニッスイがつくりました独自の認定 工場の基準に合格した工場でのみ生産をしております。私どもはHACCP相当基準と 呼んでいるんですけれども、その物差しをもって私ども品質保証室が直接現地に出向き、 合格した工場からしか輸入を認めていないというような仕組みにしております。  また、認定工場は1回やったら終わりというわけではなくて、私ども品質保証室が定 期的に巡回いたしますし、また実際ものを買ったりつくらせたりする部署の者が定期的 に巡回するというようなことも行っている体制で仕事をしております。  今、私どもでHACCP相当基準と申しましたけれども、その中の基準を少しご紹介 していきますと、この基準は、私どもの海外の工場のみならず、国内の工場も含めてす べて同じ基準で運用させていただいておりまして、基準はここに書いてありますけれど も242項目からなっております。そのため、私どもは海外国内といわずに、国内外と も同じ管理をできるようにということを目指しているわけです。  この中には、こちらにありますように施設設備の要件であったり一般的な衛生管理の 要件であったりありますけれども、さらに私どもはこの品質保証の体制がその工場で継 続的に維持していただけるかどうかということで、最近は経営者の姿勢や従業員の教育 などを評価体系にしておりますし、工場経営者のまたは管理者の品質保証に対する姿勢 がやはり一番重要なのかなと最近は思っております。  さらに、この部分をもうちょっと掘り下げますと、これはお手元にありませんのでど うぞスライドを見ていただければいいんですが、先ほど申し上げたように、骨格として 設備の要件、一般的衛生管理の要件それからHACCP管理の要件となっておりまして、 設備の要件においては、こちらにありますように製造面積であったりラインレイアウト から、または天井や床、壁という構造という、どちらかというと建築屋さんみたいな視 点からチェックする部分でございます。  また、この一般的な衛生管理の部分では、生産エリアを中心としてその中で従業員に どういうふうに行動していただけるんでしょうかと。きちんと食品を衛生的に取り扱っ ていますか、手洗いをきちんとしていますでしょうか、トイレはどんなところにあるん だろうというようなことを見ながら仕事をしていきます。  また、工場の使用水なんかも最近いろいろと問題がございますので、諸外国の水道事 情もあまりよくないところもありますから、そういったところも含めながら工場の評価 をしていくという仕事をさせていただいております。  これが、私どものやっている認定工場の制度でございまして、国内、海外含めて今1 30ぐらいの工場を管理していることになっております。  続きまして、私ども食品をつくるというか食品を扱う者において、いい食品をつくる ためにはいい原材料を使わなければいい食品はできないと考えておりまして、したがっ て、食品の安全を確保するには原材料の安全を確保しなければいけないと思っておりま す。  したがって、私どもニッスイでは、原材料を購入するための基準をつくりながら、こ ちらに「原材料に係る基準」とありますけれども、それをつくって、原材料購入時の確 認事項を工場に説明しながら生産工場と打ち合わせをして取り決めています。また、リ スクの高い原材料などについては、直接生産現場に出向いたり、その原材料を生産して いる工場にも出向いてチェックしたりするような取り組みもしております。  このように、購入する原料を定めていきまして、実際に購入する際には原材料規格保 証書という書類を提出していただくことで、再度もう一度内容の確認をしながら仕事を することにしています。  この原材料規格保証書の内容は、私どもでつくっている原材料データベースの中に登 録しながら作業をしていて、商品の表示にも当然利用しますし、それからこの原材料が どの工場でどのように使われているかということが瞬時に私どももわかるような体制に しております。  原材料を購入するときに、原材料規格保証書をいただくわけですけれども、その中に 記入していただかなければいけない項目の大まかなところはこういうところでございま して、原材料の規格や内容とともに原材料の由来であるとか、その他安全性に係る情報、 例えばこちらで言うと飼料農薬であったり動物用医薬品の情報であったり、またGMO の有無であったりということを記載していただいて我々に報告していただくと。その内 容をチェックするという仕事をするわけですが、海外の工場からそういった正しい情報 を入手するというのは非常に難しいんですが、生産工場と協力しながらこつこつとやら せていただいています。  こういった情報を提示していただけない購入先からは原材料を購入しないようにして おりまして、この部分をきちんと開示していただけないところとはおつき合いをしない ということは、工場と申し合わせて徹底させていただいているということでございます。  このスライドもお手元にはないので、ちょっと画面を見ていただきたいんですけれど も、これが今お話ししました原材料規格保証書のサンプルです。下のほうにあるちょっ と見づらいですけれども四角いシートが第1枚目、で上のほうにあるのが2枚目であり まして、1枚目のほうには原材料の配合であるとか主要原材料の由来であるとか、そう いったものまで記載していただく。で、上のほうには、その商品の安全性の規格である とか商品の規格であるとか、それから先ほど言った安全性に係る情報を記載していただ く。こういったところにきちんと情報を開示していただけないお取引先は、申しわけな いですけど取引しないということを私どもは徹底するようにしております。  諸外国はなかなか難しいところがありますが、日々交渉しながら時間をかけてやって きて、協和香料の問題があったとき以来、こういうことを進めてきて5年ぐらいたち、 ようやく相当数のところからきちんと提出していただけるような状況になりました。  このような取り組みによって私どもは原材料の安全性確保に努力しているわけですけ れども、やはりこの原材料の安全を確保することが食品の安全を確保する第一歩である と考えていまして、今後もこれまで以上に原材料の安全性確保について尽力したいと思 っておりますし、必要に応じてやはり原材料の生産現場に踏み込みながら仕事をしなけ ればいけないかなと考えております。昨今、いろいろな問題がございますから、生産工 場を見て、その生産工場の管理者の人たちの動きや、また包材に至るまでチェックする という、幅を広げながら仕事をしていかなければいけないというのが今の考えているこ とで、今後ともリスクに応じたチェック体制と管理ルールを社内で徹底しながらさらな る取り組みを進めていこうと考えております。  ここまでが原材料のところで、工場と原材料のお話をさせていただきました。  で、これはお手元にありません。とはいいましても、私どももやはりこれまでの歴史 の中で失敗をしてきている部分もございまして、違反になるような食品を輸入したこと も経験としてはございます。その幾つかの事例を少しお話しさせていただきます。  この写真は、中国のエダマメの農地の写真ですけれども、私どもはエダマメに使用す る農薬というのは、リストをつくってこの農薬じゃなきゃだめだと決めております。そ れをきちんと買えるように、我々が買ってお渡しまでしています。そういうような取り 組みをしているんですが、ここから収穫したエダマメを自主検査しましたところ、我々 が把握していない農薬が検出されました。これは、写真の後ろを見ていただくと山があ りますけれども、木々がきちんと生えていますが、これが実はライチの果樹園だったん です。ライチの果樹園でプロパモカルブという農薬を使用していたわけですけれども、 これが風に乗って移染したという事例があったわけで、私どもが把握していないものが そのエダマメに残留してしまったという事例でございます。  また、こちらはインドネシアのブラックタイガーというエビの養殖の池です。これは もう干上がって水を上げてしまった写真ですけれども、私どもはインドネシアでエビフ ライをつくって輸入しているわけですが、ご存じのようにインドネシアからの養殖エビ 及びその加工品には4種類の動物用医薬品の検査命令が行われているわけですけれども、 その中の一つであるフラゾリドンの代謝物であるAOZが私どもの商品から出てしまっ た。これは違反となってしまった事例です。  今から10年前の2000年ごろのインドネシアは粗放養殖といっていました。非常 に密度の少ない自然に近い養殖をしていました。したがってえさもあげません。そうす ると、非常にストレスもないので病気も起きません、だから薬もあげませんというよう な、自然に近い養殖だったんです。  ところが、ここ数年、少しでも収量を上げようとかお金をもうけたいという事情があ ったのでしょう。だんだん変わってきているのを、私どもの情報収集がおくれたことが 原因でした。実際調べてみますと、私どもジャワ島では、一つの拠点で3,000ぐら いの池から収穫をしております。その3,000のすべての池を管理することができて いなかったということでございます。そういったところから、こういった薬剤の使用が 起きてしまったんだろうと考えております。  この写真を見ると、今お見せしました養殖場の横に雑貨屋さんみたいなよろず屋さん がいっぱいあります。そういうところに、これだけ多くの薬剤が売ってあります。で、 動物用医薬品として売っていません。栄養補強剤とか成長促進剤ですとか、それからエ ビの養殖池の水質改良剤といった形でたくさん売られています。  これだけ自由にたくさんの薬剤が売られていて、こういうものをすべてきちんと管理 していかなければいけないのと、我々がこれらの薬剤を購入して日本に持ってきて幾つ か調べてみましたが、やはりこの中から動物用医薬品のコンタミネーションがあるもの ですとか、農薬が入っていたものを見つけています。こういったことも、現地に行って 調べてみないとわからないことでした。  これも同じくジャワ島のエビの養殖場で、ちょっと白いのは塩ですけれども、養殖は 連続してやっていきますと池自身が疲弊していきますので、だんだん地力がなくなって 収量が悪くなる。収量が悪くなると休ませなければいけないので、休ませている間、た だ池にしておくのももったいないので、塩田にしたり水田をやったりいろいろなことに 使っています。  こうやって輪作しながらやってきているんですけれども、そのときに水田をやれば農 薬もまきますよね。そういったものの影響があったりする可能性があるし、最終的には 地力を回復させるためには、有機だからいいだろうというので鶏ふんを土の中にまぜ込 む人たちがいらっしゃって、そういった仕事をされていたということもこの違反が起き てから現地を調べてわかったことですが、その鶏ふんを持ち帰って調べてみると、鶏ふ んの中からやはり動物用医薬品が出てきたりという事実もございました。  こういったことで、現地のほうをチェックしなくてはいけなかったんですけれども、 その辺の取り組みが不足していたところで違反になってしまったというような私どもの 事例のご紹介でございます。  私どもの事例を少しお話ししたところで、これからは皆さんのお手元にあります資料 で一貫生産というのをお話ししたいと思います。これが一応安全性確保の非常にいい手 段だろうと考えています。  というのは、少し宣伝になって申しわけないんですけれども、こちらが南米のチリの 養殖の写真でございますけれども、サケはご存じのように完全養殖ができるようになっ ておりまして、親から卵をとって卵をふ化させて稚魚をつくって、稚魚から成魚にして、 それを加工して皆さんにお届けするというような仕事をしております。そうしますと、 すべての生産工程は自分たちで把握することができますので、その中にどんなリスクが あるのかも自分たちですべて把握することができる。そうすると、必要に応じて適切な 対処をすることができるので、私どもとしてはこれが非常に安全性確保については重要 だろうと考えております。  また、これはちくわの事業です。サケは養殖でしたけど白身魚の資源アクセスも持っ ていまして、アラスカでのスケソウの漁業ですとか、南米チリですとかアルゼンチンで のホキだとか、ミナミダラというような魚ですとか、ニュージーランドでのホキですと か、いろいろなところで原料を漁獲しています。それを使ってちくわの原料となるすり 身を自分たちでつくり、主としてちくわをつくるというような仕事も漁獲から最終商品 まで一貫した生産ができているという事業の一つであります。  また、これは中国の鳥事業ですけれども、中国というと皆さん非常にイメージが悪い かとは思いますが、一番上の左端には養鶏場の写真です。遠方にあってすごい山の中で 人が近づけないようなところにあります。我々はおばあちゃん鳥です。皆さんのお口に 入る2代前のおばあちゃん鳥から飼育を始めて、少しずつ増やして、皆さんのお口に入 る最終の鳥を生産しています。  上の右のほうにあるのは、えさの工場ですけれども、えさも自分たちでつくっていて、 自分でやっていると。  これは屠殺場かな。肉をやっているところですけれども、ここでできたものだけを屠 殺場に持っていて、自分たちでその隣接した横の加工工場で加熱加工品をつくって空揚 げとかチキンカツですとかをつくって皆さんにお届けするという仕事を、今中国の北京 でやっております。  ということで、これもおばあちゃん鳥から最終の製品までですから、自分たちで管理 できる範囲の中で仕事ができる一貫生産の仕事であると思っています。  続けてどんどん宣伝ばかりして申しわけないんですけれども、こちらが農産品の部分 です。農産品も同じように仕事をしていて、台湾とか中国、タイなどで仕事をさせても らっています。農産品の場合であればエダマメが中心なんですけれども、農地での栽培 管理に取り組んで、栽培農地の特定であったり薬剤の限定であったり、農地の管理者の 組織化であったりということに取り組んできています。  次のスライドを見ていただきますと、これは農地の栽培管理者の組織図でございます。 先ほど近藤専門官のほうからお話もありましたが、中国でホウレンソウの問題がありま した。その際に、私どもも中国現地に飛びまして調査をしました。中国の福建省で我々 も仕事をしていましたが、実際我々のエダマメの原料をつくっていただく農民の方は、 ざっと数えて約2,600人の方がいらっしゃいました。2,600人の農民の方々が 使われる農薬をきちんと管理しようとするのは非常に難しいことでした。  したがって、私どもはどうしたかというと、組とか班をつくって組織化する仕事を中 国でしました。それがこの組織図になっています。現実的に2,600の農民を200 3年の秋には14組79班というような形にグルーピングして、管理しやすいような体 制をつくりました。そうすることで、農薬の限定もでき農薬の使用頻度もきちんと管理 でき、栽培も管理できるようになってきました。  で、これはお手元にはないんですけれども、そのときに作成した農地の地図です。真 ん中の白いところが農地です。先ほどの移染という問題もあって、隣から飛んでくるこ とがありますから、その周りで何がつくられているか確認する。それとか、いつどのく らいの何が熟れて、いつ収穫したかということがはっきりわかるような農地地図をつく ってきています。  したがって、皆さんご存じのように、中国では、中国政府のほうが輸出の農産品につ いては農地の登録制度をつくったりしましたけれども、こういう取り組みをすることに よって、非常にスムーズに対応することができました。  最後になりますけれども、こういったことから、私どもは一貫生産をしていきますと、 どこで何がいつどのようにつくられたかということを自分たちで把握することができま すので、その一例として、皆さんに今度はそれをお伝えしなければいけないので、商品 のほうにはロット記号をつけさせていただきながら、皆さんにはこのロット記号でどこ でつくられているのかがわかるようなお知らせをするという取り組みをさせていただい ております。  ここまでで、輸入食品の安全性を確保するための生産における対応ということについ てお話をさせていただきました。以上のように、安全性確保の取り組みを我々はやって きました。だけども、ほんとうにそれが正しいのかどうかというのは一応検証しなけれ ばいけないものですから、検証する体制について少しお話をさせていただきます。  私どもも、安全性の確保の取り組みの検証するための仕組みとして、ここにあるよう に国内でも海外でも同じなんですけれども、工場での検査また自分たちでの自主検査、 また外部機関を使いながら、すべての検査が我々でできませんから、我々でできないも のは外部の機関にお願いをしながら仕事をさせてもらっている体制をつくってきていま す。  こちらは、お手元にちょっとないんですけれども、私どもが輸入する食品を、先ほど は行政のモニタリングとか検査命令のご紹介がありましたが、これは我々が自主的にや っている食品の検査のフローでございます。  私どもは、基本的には品質保証室がチェックするんですけれども、実質的には商品を 輸入する人たちがこの仕事の中心になっています。ですから、商品を輸入する人たちが 自分たちで輸入した商品に対して、我々、品質保証室が決めた頻度でサンプル抜き取り 指示をして分析をする。それを、我々の会社の中にある食品分析センターの専門家がそ の結果を判断しながら輸入するものや品質保証室に対して報告するというような仕組み でルーチンでぐるぐる回していまして、これで自分たちの商品が安全であるか、我々が やってきたことが正しいのかということを検証しながら、日々の輸入をさせていただい くという取り組みもさせていただいております。  自分たちの中に分析センターがあるとお話ししましたが、東京の八王子にあるのが私 どもの食品分析センター。ただ、最近はやはり東京だけでは手が回らなくなってきまし たので、中国の青島には青島ニッスイ食品研究開発有限公司という別会社で検査や工場 指導を行う組織をつくっていますし、タイには東南アジア地区を管轄するタイ品質管理 センターというものも置いておりまして、東京だけでなく現地に根づいて仕事をしよう という体制もつくってきています。  これは、今、お話しました青島の研究会社の風景です。日本の検査会社とそう変わら ないきちんとした設備と最新の設備を使っています。逆に土地はありますので広々と仕 事をしていますね。  これはお手元にはありません。現地にある設備の一覧です。さらに、今年になって、 分析の機器の増強も検討しておりまして、さらにこれより増える予定にしています。  そうやってお話ししてきた中で、青島ニッスイがどのような仕事をしているかの一例 なんですけれども、農薬の問題から端を発してこういう仕事をし始めたので、今現在主 力になっているのは農薬検査です。私どもが輸入する農産の加工品であるものは、輸入 前に現地できちんと農薬残留検査に合格したものだけ輸入することにしていますし、ま た現地で使う加工食品に対する原料の農産品というのもありますから、それは購入のた び産地ごと、収穫時期ごとに確認をして、合格したものだけしか原材料として使いませ んのでという体制をこのような設備で仕事をしています。  私どもの農薬検査の検体数というのは、ちょっとご紹介しますと私どもは2000年 ぐらいから自社で農薬の一斉分析に取り組みました。ここは2003年からの表ですけ れども、最初は大体70項目ぐらいから始めまして、年々少しずつ増やしてきて現在は 435項目の農薬の一斉分析ができるようになっています。これは中国も日本も同じく やるようになっています。  この435項目については、先ほど我々は農薬の使用は限定しているとお話ししまし たけれども、ですから我々の農産品に使っている農薬はすべて把握しているわけですね。 ですから、その把握している農薬がこの中に入っていること、プラス厚生労働省さんが 示していただいたモニタリングの項目が現在約500を超えていますが、それの中から 私どもの技術で一緒にできるものということで選択して、今現在435で管理するよう にしております。  このような検査体制をとりながらやってきているわけですが、農薬だけではございま せんので、そのほかのことを少しご紹介しますと、例えば中国には水質があまりよくな い場所もあります。青島なんかもあまりいい水ではございません。カビ臭なんかで痛い 目に遭いました。したがって、私どもも定期的に中国の生産工場の使用水というのはモ ニタリングすることにしていまして、異臭検査ができる体制も整えています。  また、ここでは微生物検査はベースですけれども、各工場には当然微生物の検査室が ありますから、そこで技術指導ができるようなスタッフをそろえています。私どもはそ の生産工場に対しての技術指導において、これはエクセレントラボと呼んでいますけれ ども、生産工場で日々管理していただかなければいけないわけですが、そこでの検査が 正しくなければいけないので、その検査がきちんとできるように指導してあげなければ いけないというのをやっています。地道にやっていて、中国と日本でまずはやっていま すので、そのほかの国にはまだ広がっていません。こちらにあるのがマニュアルで、青 いのが日本語、緑が中国語、薄緑が英語、このマニュアルを全部つくっていまして、各 国に対応できるようにして、同じやり方で一緒にやりましょうというような取り組みも しています。  また、使用培地については、今日本と台湾だけですけれども、私どもの関係会社にニ ッスイ製薬という会社がございます。そこが培地の会社なので、そこと共同しまして、 一回使い切りで計量しなくていいよというような培地をつくっています。同じ培地をみ んなで使おうというような取り組みもさせていただいて、このような形で生産工場で 日々管理していかなければいけないんだけれども、それを正しくやっていただく、正し くできるようにしていただくためのお手伝いさせていただくという取り組みもしており ます。  こちらはタイです。中国と同じような設備を整えながらこちらもゆったりと仕事をし ています。  そういった検査指導体制をとりながら仕事をしてきていて、輸入の冷凍野菜の加工品 を例にとりますと、農地での管理もきちんとやりましょう、生産工場の管理もきちんと やっていただきます、それもちゃんとできるように指導もしましょう。それで、あと日 本に持ってきたときは、私どもの社内での検査体制でチェックして皆さんにお届けする というような取り組みを今しているところでございます。  あとは教育体制ですけれども、こちらに今あるのは輸入食品に係る我々の社内の教育 だけを出しております。社内的にやっているんですが、これは先ほどの中国でのテクニ カルアカデミーの人たちで、中国の工場の担当者を呼んで実習している風景です。  また、中国の担当者を日本に呼んで、日本で長期にしばらく生活していただいて、日 本の社会を知っていただきながら勉強していただくというような取り組みも今やってお ります。また、これは昨年からやっている仕事なんですけれども、中国の生産者とのコ ミュニケーションも重要なので、信頼できる生産工場なのかどうかということも重要な ので、経営者同士の顔を突き合わせた話し合いを現地でやるという取り組みもしました。  昨年起きた事故は皆さんご存じのとおりで、人為的な事故でしたからそれに対応する べく仕事をしなければいけない。意図的な混入に対する対応としては、フードディフェ ンスということが最近叫ばれていて、実際のところ勉強を始めたところです。  私どものほうとしては、今会社のリスクマネジメントとして、ガイドラインやチェッ クリストなんかも作成しながら仕事をしているところです。昨年10月に八戸に新工場 ができましたが、そこには静脈認証の入場体制だとかをとりながら仕事をするというこ とも取り入れてきています。今少しずつ勉強しながらやっているところです。  最後にまとめてお話しさせていただくと、品質保証体制というのを今までずっとお話 ししてきました。それのベースになっている社内での品質保証体制というのは、社長が トップになりながら右と左にあるんですけれども、一つは私どもの品質保証室や先ほど いった分析センターのある企業としての品質保証の機能です。  もう一つは、そうは言っても我々はルールをつくったりチェックしたりする立場の人 間だから、日々食品を扱ってものをつくる人たちがきちんとやらなければいけないので、 そのためにはラインとしての品質保証体制として、事業をやる人たちが責任を持つんだ よというような位置づけになった組織にしています。  品質保証委員会というのも組織していまして、月3回、社長が議長でこちらにある議 論の内容ですけれども、お客様の声というのは日々いただくクレームですとか問い合わ せといったものを取りまとめて、中身についてピックアップしながら議論しています。 それから、あとは社内のルールもこの中で決めていきます。こういうことをやることに よって、非常に意思決定が早くて迅速に物事を決められるようになってきています。  最後は、これがコンプライアンスガイドを全社員が持っていまして、あとホームペー ジでもごらんいただくことができます。私も今これを持っているんですけれども、これ には会社の経営方針であるとか、それから倫理検証であるとか、品質保証の検証である とか、いろいろな会社のルールとか法律が書いてあります。こうやって輸入食品を管理 することは非常に多岐にわたっていて、品質保証の人間だけじゃできないんですよ。私 一人ではとてもできません。したがって、食品に携わる私どもの社員一人一人全員が品 質保証に関心を持って、きちんとルールどおりに仕事をしなければいけないということ が一番大切なことなのかなと。  そういうことによって、食品の安全を確保しながら輸入して、あとは皆さんにうそを つかないと、正直に仕事をしましょうというのが私どもの考え方のベースでます。  ちょっと長くなりました。さわりですけれども、これで日本水産の品質保証の体制の お話とさせていただきます。どうもありがとうございました。 【司会(北村)】  どうもありがとうございました。  それでは、ここで約10分ほどの休憩を設けさせていただきたいと思います。パネル ディスカッション及び意見交換は、3時48分ぐらいから開始したいと思いますので、 それまでにお席のほうにお戻りいただきますようにどうぞよろしくお願いいたします。  では、休憩に入ります。 ( 休  憩 ) パネルディスカッション 【司会(北村)】  それでは、そろそろ皆さんお集まりでお時間となりましたので、 パネルディスカッション及び意見交換会を行いたいと思います。  まず最初に、パネリストのご紹介をさせていただきます。  壇上、皆様から向かいまして左側、2番目の方から順に右手に向かいましてご紹介い たします。  まず、福岡県地域婦人会連絡協議会副会長の萩尾房子様でございます。 【萩尾】  萩尾でございます。(拍手) 【司会(北村)】  エフコープ生協商品事業支援部商品製作セクションの伊藤正美様 でございます。 【伊藤】  伊藤でございます。よろしくお願いします。(拍手) 【司会(北村)】  続きまして、先ほどご講演いただきました日本水産株式会社品質 保証室水産品・農産品品質保証課長の前田裕之様でございます。 【前田】  前田でございます。(拍手) 【司会(北村)】  続きまして、先ほどご説明いたしました厚生労働省食品安全部輸 入食品安全対策室輸出国査察専門官の近藤でございます。 【近藤】  近藤でございます。(拍手) 【司会(北村)】  最後に、本日のコーディネーターを努めます、皆様から向かいま して一番左側、厚生労働省大臣官房参事官の塚原でございます。 【塚原】  塚原でございます。よろしくお願いいたします。(拍手) 【司会(北村)】  パネルディスカッション、意見交換の議事進行につきましては、 塚原参事官にお願いいたします。よろしくお願いいたします。 【塚原】  それでは、これからしばらくパネルディスカッションの時間帯、私がコー ディネーターをさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  まず最初に、輸入食品の安全確保につきましてパネリスト4名の皆さんと前半戦の議 論をさせていただきまして、後半にフロアの皆様との意見のやりとりということにさせ ていただきたいと存じます。  では、まず初めに、お二方のパネリストにはもう既に講演をいただいて、まだ萩尾様 と伊藤様からご発言をいただいておりません。まず、萩尾様のほうから輸入食品の安全 性に関して日ごろ考えておられること、あるいは今日の説明を聞いての感想、いろいろ な観点からご意見がございましたら、ご発言をお願いいたしたいと思います。よろしく お願いいたします。 【萩尾】  私は婦人会の副会長をしている萩尾という者でございますけれども、私は 昭和を生きてきた人間ですが、大変食糧のない時代を過ごしてきました。婦人会は昭和 22年に設立されておりますから、その一番消費者運動をやらなければならないお米の ない時代を生きてきた者でございます。  今日パネルを見ましたけれども、やはり豊かな食生活の中で、いろいろな問題が起こ っております。昨年の中国の輸入ギョーザの問題、それから三笠フーズのお米の問題と かたくさんございます。  そういう中で、昨日も久留米市の婦人会が企画いたしました中国の食品業者が合弁で 入っております企業の内容について、やはりパワーポイントを使ってのご説明がありま して、日本は生産量が少ない、食糧の自給率が40%しかないという中で、こんなに豊 かな食生活を送っている食糧のうち、台所事情がこんなにも豊かなのは、全部外国の事 業に頼っておるし、工場は中国にほとんどあると。また、水産物は世界から輸入してお るというようなことを、しっかりとこの何日かで知りました。また、メディアでも知り ますし、私たち団体としてもそういうことは情報として、消費者全国大会とか、そうい うところへ出ましたらわかるわけでございます。  婦人会も以前は、コープ福婦という生協活動もやっておりましたので、ある程度の知 識は共有いたしまして、内部ではいろいろ勉強会をやっております。  今回は、輸入食品の安全対策という課題でございますけれども、まず安全だろうかと いうことにまだまだ疑問を持っております。今日は厚労省からお見えになっております が、消費者である私たちは主権者です。国民としての生活者です。これは国が輸入事業 をする中で、また食品を購入をする中で、信頼の中で購入させていただき生活しておる 者でございますが、最近のことを考えますと非常に不安です。自給率が40%しかない んだから、もちろん外国から輸入しなくてはならないけれども、それが不安定にほんと うにどうなんだろうか。食品添加物が入っているとか、表示方法もいろいろありましょ うけれども、魚からお肉からお野菜から全部外国ということになってくると、ほんとう にどうしようかという思いでいっぱいでございます。  それで、私たちは消費者として、地域の生活者として、地方の消費者行政に対しては いろいろなクレームをつけたり、お願いをしたり、県の消費者相談センターに持ってい ったりするんですけれども、今日は厚労省の方がお見えでございます。先ほどちょっと 先生とお話ししたんでございますが、お米と麦、この米穀類は輸入ですね。それは農水 省にも関係がありますねと。お魚も農水省ですかね。そういうふうに全般が国の行政に よって管理され、また安全を国民に与えていただいているからこそですけれども、それ に今現在非常に不信と不満が漂っている。  不満ばかり言ってるのではいけなくて、私たちは消費者としての責任といいますか、 認識が甘かったんじゃないか。女性団体の代表としまして、女性は子供を産み育てる命 の原点でございます。子供たちにこういう食事を与えていいんだろうか悩みます。そし て、これが企業の一つの営利事業であってはならない。また、国の外交政策の中で採用 されてもならない。その中の安全確保については、今日はその立場の方がたくさんお見 えのようでございますけれども、私たちは団体の組織として、そして地域に張りついて おる生活者ですから、そういうことを具体的に声を大きくして申し上げております。  毎日のことは大型店に行って見ております。いろいろな情報は、メディアを通してく るものは定かな情報であろうかとかいろいろ見ますけれども、そういうことを含めて情 報の共有ができない。また行政のほうにも、安全性について、消費者不在ではなかった ろうけれども、もう少ししっかりしていただきたいし、こういう安全対策についてとい う場を与えられたこと、共有できることは非常によかったなと思って、今日は勉強に参 りました。 【塚原】  どうもありがとうございました。  続きまして、伊藤様からお願いいたします。 【伊藤】  エフコープの伊藤と申します。現在、無店舗事業の商品事業をサポートす る部署で、主に品質管理を担当しております。今日は事業者の立場で参加させていただ きました。どうぞよろしくお願いいたします。  初めに、輸入食品の安全性確保のための取り組みということでお話をしてくださいと いうことでした。その前に皆さんご承知のように、輸入食品において事故が発生しても うすぐ1年になりますが、2008年1月30日に中国で製造し輸入した日本生協連の 「CO・OPの手作り餃子」において、有機リン系の農薬が混入したということで、組 合員を含め地域の皆様に大変ご迷惑とご心配をおかけしたことを、改めて心よりおわび 申し上げます。  そのことで、生協に対する信頼とか安心・安全が大きく揺らいで、また農薬の混入事 故についてはフードディフェンスといった新たな課題をつきつけられた事故でもあり、 未然に防げなかったこと、危機対応が不十分であったことに対して、生協の責任として 重く受けとめております。  事故が発生してもうすぐ1年たちます。昨日のニュースで中国側のほうから進展があ ったと報道されていましたけれども、まだ解決に至っておりません。これは要望になる んですけれども、日中両政府の協力と責任において、一刻も早い解決を望むところです。  この間、輸入食品について国産品も含めての話になりますけれども、商品の安心・安 全を高めるために、エフコープとして取り組んできたことを少しお話しさせていただき たいと思います。取り組んできたこと、今取り組んでいる途中のもの、今後取り組んで いきたいといったものを含めて、主に、管理面と検査、組合員、この三つの視点でお話 ししたいと思います。  まず、管理についてですが、エフコープではこれまで食品衛生法とかJAS法などの 法令や、生協の自主的な品質基準に基づいて、仕様書とかパッケージの点検、工場点検、 商品の検査などにより食品の安全を確認するといった管理を行ってきました。  しかし、このような管理については、生産・製造する立場から品質をコントロールす ることを前提としていて、この間起こった牛肉コロッケ事件とか、今回の冷凍ギョーザ 事件などのような意図的に起こる被害については想定しておりませんでした。  そこで、エフコープでは、九州、沖縄の生協で構成するコープ九州事業連合という場 で、新たな管理方法として、組合員の立場に立ち、商品を通して組合員との約束ごとを 保証し、これによって信頼を得ていくといった品質保証を重点に置いた独自の品質保証 システムを構築して、それの運用を目指して現在取引先と一緒に取り組みを進めている 最中であります。このシステムでは、商品の安全性の確認だけではなく、先ほど言った 故意、意図的に行われる不正といったものを抑制する訓練もしております。  次に、検査についてですけれども、エフコープでは自前の検査センターを持っており ます。ギョーザ事件以降、ガスクロマスや液体クロマスといった検査機械の導入とか、 人員を増やすことによって商品の検査を強化してまいりました。  特に農薬検査については、加工品も含めて今現在年間2,000品目に拡大して実施 しています。検査対象農薬については、先ほどニッスイの方からもお話がありましたけ れども、事故当時は275項目でしたが、ニッスイさんには到底まだ及びませんけれど も、現在では297項目に増やしてきております。検査の内容については、商品の原料 ごとにそれぞれありますけれども、確認すべき優先順位を決めて検査項目を設定してい ます。  例えば、農産品やその加工品であれば残留農薬とか、畜産品については残留農薬のほ かに動物用医薬品とか飼料添加物といったものも検査をやります。加工品の残留検査に ついては、ギョーザ事件以前については生鮮品を主体に検査をやっていたんですけれど も、事故後は取り扱いをしている商品について、原産国または原産地表示、いずれかが 中国でかつ中国産の農畜水産物を使用した商品についての残留検査についても、200 8年の3月まで実施して、現在は中国を含めた外国産を中心とした加工品の抜き取り検 査を、月に20品目程度やっております。  そのほかの畜産品については、牛、豚、鶏などの畜種の判別とか、お米の品種判別を 行なう遺伝子検査をやっております。これらの遺伝子検査については、偽装の抑止効果 が期待できるのではないかと思っております。しかし、商品のすべて検査するわけでは なく、先ほどもお話がありましたけれども、その主たる目的としてはその商品が適正に つくられているかを確認するものなので、この検査をもって100%安全を保証できる ものではありません。  最後に、組合員の視点からですけれども、組合員さんの要望によって2007年の1 0月から商品包材に記載している原産国とか原料原産地のカタログ表示を進めてまいり ました。まだまだ不十分な面があるんですけれども、これを2008年の3月より商品 のパッケージとカタログの表示を一致させるようにいたしました。  また、エフコープのホームページからは、共同購入で取り扱っています商品の原産国 情報とか原材料情報といったものを確認できるようになっております。それとか、最寄 りの支所とかセンター、店舗に問い合わせしていただければ確認ができるようにもなっ ております。それと、カタログに二次元バーコードを掲載しておりますので、携帯電話 からも確認、検索できるようにもしております。  そのほか、食に対する不安を少しでも安心に変えられるように、今日のようなリスク コミュニケーションの開催、工場見学や産地を見学することを積極的に進めることも呼 びかけております。そうしたことをすることによって、自分の目で食の安全を確かめる 活動を積極的に進めていくことも呼びかけております。このことが、互いに見える関係 の強化へとつながって、商品に対する安心感が高まっていくのではないでしょうか。  また、商品事故におけるクライシスの未然防止や回避、またあってはならないことな んですけれども、クライシスが発生または、発生の恐れがある場合に、被害や影響を最 小限にとどめることを目的としたクライシス対応についての手順書を整備し、今以上の 危機管理体制の強化を図っていくように考えています。その他、発生した商品のクレー ムについては、当然のことなんですけれども、異物の混入とか異味・異臭とか味覚とか いろいろ組合員さんが気づいたことを積極的に申し出ていただいた声も、こういった品 質保証システムに生かすことのできる大切な要素だと考えております。  済みません、今日初めてで緊張してなかなかうまく言えなかったんですけれども、以 上です。 【塚原】  ありがとうございました。以上、お二方からご発言をいただきました。  ちょっと簡単に私のほうからまとめさせていただきますと、萩尾さんのコメントは、 輸入食品が非常に多数我が国に輸入されている中で、昨年非常にいろいろな事故等の出 来事があった。非常に食に対して不安である、それをどう解消したらいいかというよう なことで、キーワードとして情報共有ということをおっしゃられたと思います。  次に、伊藤さんのほうからお話しいただいたのは、エフコープが消費者の皆さんに品 物を届けるに当たって、品質保証システムとしての検査体制をいかに充実したかという お取り組みを紹介していただいたんですが、先ほどの講演では、安全を守るために、行 政サイドあるいはニッスイさんのほうからこんな取り組みをしているというご紹介があ ったわけですけれども、一方では消費者代表の萩尾さんからごらんになると、まだまだ 不安だということになっているので、その辺のギャップをどうしたらいいんでしょうか ということが一つ大きなテーマになるのかなということでお聞きしておりました。  その辺につきまして、まだご発言いただいていない前田さんと近藤さんのお二方から コメントをそれぞれ簡単にいただけますか。 【前田】  先ほどは済みません、ありがとうございました。  今、お話を伺った中で、私どもが輸入者というか食品メーカーとして仕事をする中で、 先ほど言われたように、我々がどのようなことをしているかというのがなかなか直接今 ここにいらっしゃる方々にもお伝えすることができないというのが非常に悩みでありま して、エフコープ様のような流通の方々とは日々商談の中でお話をしたりするんですけ れども、直接的にこうやってお話をすることはなかなかできないので、こういう機会は 非常にありがたいです。  そうですよね、知らないということは一番不安なので、皆さんに知らせていくかとい うことについて、どれだけ努力できるか、やれるかということが重要なのかなという気 がしています。  先ほどのエフコープ様のほうからも話がありましたけれども、原料、原産地表示もホ ームページでお話ししていきますよとか、いろいろなツールを使いながら仕事をするの と、あとはこちらは商品の表示というのが唯一直接的に皆さんと接する場面なので、こ こに正しいことをきちんと正直にお書きしていくということがまずは私どもの責務なの かという気がしています。 【塚原】  ありがとうございました。近藤さん、何か。簡単にお願いします。 【近藤】  今から大体5年ぐらいさかのぼっていただきますと、私どもの立場で言う のも非常にはばかられるような話なんですけれども、なかなか皆様と面と向かってご意 見を交わすような場というのがなかったんですね。今日の表題は「リスクコミュニケー ション」となっておりますけれども、このような場を設置するという機会が非常に少な かったということがあります。  ですから、特に輸入食品という話になると、こちらにも多分いらっしゃると思います けれども、営業許可を持って事業を行っている方々につきましては保健所という存在が 非常に大きいということがあります。これは何かといいますと、保健所の方が直接その 方々に対して立ち入り等を行って、点検等も行いますし指導も行うということで、皆様 の身近なところでそういうことが行われている。だから、何をやっているかということ が非常に目につきやすいんですね。また、皆さんが第一報を持ち込む窓口も基本的には 保健所だと思っております。  ですから、地方自治体の方がどういうことをやっているかということは非常にわかり やすい。でも、輸入食品というのは、さっき言いましたように過去からリスコミをやっ ていなかったということもありますし、もう一つはその業務自体が日本の中の外国、い わゆる保税地域という中で行われているんですね。保税地域というところは、普通の方 が直ちにはいどうぞと言って入れる場所ではないんですね。それなりに許可をとらなけ れば入れないエリアということになっておりますので、なかなか皆様の目につかないと いうことがあります。  ですから、一つには交流の場がなかったということもございますし、もう一つは業務 自体がなかなか皆様の目につきにくいところで行われているということがあります。で すので、このような場を通じて、今私たちがどういうことをやっているのかということ を説明することも当然ながら大事だと思っておりますし、そのことについて皆様からご 意見をちょうだいしたい。社会通念とその対応がずれていないかどうかというのが前田 さんのお話の中にあったと思うんです。そういう自分たちの置いている軸足が今どうな のかということを、ここで皆様からご意見をいただくということも非常に大事なことと 思っております。  今日お話ししておりますこのリスコミの中身につきましては、当然パブリックコメン トを求めている内容でございます。このパブリックコメントにつきましては、実は先週 の金曜日からコメントの募集を開始しておりまして、意見を提出できるのは一月間でご ざいます。この一月の期間を踏まえた後に、来年度の計画が決まってまいりますので、 ぜひともこういう意見を述べたいということがあれば、意見募集の中に皆様の声をご提 示いただければと思っております。 【塚原】  ありがとうございました。4人の方からまずコメントをいただきました。  今、ちょっと触れていただいたように、このリスクコミュニケーションの意見交換会 の一つの大きなテーマは、先ほど説明があった平成21年度の輸入食品の監視計画につ いて理解してご意見をちょうだいしようということですので、まず、近藤さん以外のお 三方、今日ごらんになった計画かもしれませんけれども、こんな監視をしています、あ るいはこんな輸入国との取り組みをします、輸入者に対してこんな指導をしますという ような中身が書いてあるわけですが、これについて何か感想なりご意見がありましたら お願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。よろしいですか。  それでは、近藤さんからも今お話がありましたように、輸入監視指導計画、今パブリ ックコメントを案の段階で求めておりますので、ちょうどあと1カ月後ぐらいが締め切 りになっています。よろしくお願いしたいと思います。  それでは、一通り壇上の皆さんのご発言をいただきましたので、これからフロアの皆 さんとの意見の交換に進めていきたいと思います。  まず初めに、この意見交換会に先立ちまして、参加希望者の皆さんからあらかじめご 意見を、あるいはご質問をちょうだいしておりました。まずそちらのほうについて整理 をさせていただいた上で、フロアの皆さんとのやりとりにさせていただきたいと思いま す。  まず、5点ほどいただいていたんですが、1点目、これは近藤さんにお答えいただく ことになろうと思いますけれども、ミニマム・アクセス米のことです。輸入米のミニマ ム・アクセス米については、一定のルールをクリアして輸入されたにもかかわらず、米 の質がなぜ問われなかったのかと、輸入の基準は何かあるのかというご質問をいただい ております。これについてご説明をお願いしたいと思います。 【近藤】  今回のリスコミを開催するに当たりまして、今ご説明がありましたとおり に事前にご質問をいただいております。その中で、私のほうで答えられるものについて お答えをしたいと思います。  今、ご紹介がありましたが、ミニマム・アクセスという輸入米について、なぜ質が問 われなかったのかという質についてのご質問でございます。  ミニマム・アクセスというのは、皆様も新聞で非常によく目にする言葉だと思います ので、改めてご説明は不要と思っております。これは、GATTウルグアイランドに基 づきまして、日本政府が一定量を輸入するという形で毎年輸入を行っているものでござ います。無論、この輸入の手続というものは、国が主体となってやっております。いわ ゆる国貿品といわれているものです。国貿品には実は米以外にももう一つ麦がございま す。ですから、日本は国貿品として米と麦を輸入しているという状況にございます。た だ、お米の場合は麦の場合とは若干背景が異なっておりまして、食料自給表が農林水産 省から示されておりますけれども、この自給表を見る限りにおきましては、実はお米と いうのは日本国内で数少ない自給できている品目の一つなんですね。  WTOという世界組織がございますけれども、この組織の中では例外なき関税化とい うことが求められております。ですので、よく農林水産大臣等が新聞記事の中で、「W TOのラウンド交渉に臨む」という記事が載っておりますけれども、これはその中で一 定の猶予を付すことができないかというような交渉を行う場となっているところです。  ところが、お米につきましては例外なき関税化を受け入れろ、受け入れないのであれ ば一定数量を輸入しなさいということになっておりまして、どちらを選択するかという ことだったんですね。無論、関税化を受け入れれば、海外から安いお米がどんどん入っ てくるという状況がございます。片や、ミニマム・アクセスというスタイルをとれば、 一定量の輸入を継続するという形になると。で、当時、政府の選択、これは農林水産省 の選択になりますけれども、ミニマム・アクセスという形で輸入を継続するという形に なっております。  ですから、麦のように国内自給率が非常に低くて賄い切れないので輸入するという食 料確保政策とミニマム・アクセスの話は、背景情報が若干違うということをまずご理解 いただきたいと思います。  その上で、食料確保という目的または世界貿易の中でのラウンド交渉の結果としての ミニマム・アクセスがありますが、これで輸入されたものをどのように取り扱うかと。 いわゆる品質の観点から見た場合ですけれども、これは昔皆様お米の袋に「特」とか 「優」と書いてあったものを知っていると思います。このように、昔は食糧事務所とい われているところが、その品質のよしあしを判断していたんですね。で、そのよしあし というものは、もちろん組織構造としては農林水産省さんが担当していらっしゃって、 品質の優劣については今でも農水さんが決めております。  では、厚生労働省は何をやっているんだということになるんですけれども、厚生労働 省は食品衛生法という観点から輸入される食品の安全性を確認するということを行って おります。ですから、専ら検疫所は何をやっているんだといいますと、輸入される貨物 に対しましてサンプリングという形で検体をとりまして、残留農薬、カビ毒、またはこ れは成分規格と呼ばれておりますけれども、重金属の含有量の調査などをやりまして、 問題がある貨物が輸入されないように検査を行っているという状況でございます。  今、国内でいろいろ言われておりますカビのお米がありますね。貯蔵技術が大分発展 しましたので昔とは異なってきてはいるんですけれども、お米はある程度長期間保管す れば、どうしてもその一部にカビとかが出てくるのは仕方がないことなんですね。自然 界で栽培されているものがカビの胞子を全く持たないということはあり得ないんです。 だから、保管されているものをほかの場所に売ったりする段階において、きちんとその 段階ごとに確認をした上で販売をしていくということが一番大事であると思っておりま す。  ですので、最近、国内で保管していた3年前のお米、それもお米の粉とかを移動しよ うと思ったら、例えば何ミリ角かのカビの固まりがありましたというようなご報告がた まに新聞に出てまいりますけれども、これは仕方がないことだと思っております。ただ、 それを仕方がないではなく、各生産段階等に携わる方が適切にそれを見つけて、見つけ た場合にはきちんと除去するということを行うことによって、質も確保された製品がき ちんと市場に流通できるようなるんだろうと考えております。  ですので、質問に対しては、質のお話はどうかと問われますと、答えはまずこれは農 林水産省さんのほうで管理をされていますということと、厚生労働省では安全性確保の 観点からの検査を行っていますという回答になります。 【塚原】  ありがとうございました。  それから、先ほど5点と申し上げましたけれども、そのほかに輸入食品違反事例につ いて触れてほしいというご要望がありました。それから、最近の事件を踏まえて、監視 計画はどういう部分を強化したのかという説明をしてほしいというご意見。それから、 モニタリング検査と検査命令の違いは何かというようなご質問が事前にございましたの で、その部分は先ほどの説明の中でわかりやすくご説明いただいたと考えております。 なお、よくわからないということがありましたら、改めてフロアのほうから後ほどご質 問をいただければと思います。  それから、5点目の輸入食品の原産地表示のことについても要望がございましたけれ ども、この件につきましては安全性というよりは表示の問題でありますので、今回は少 しテーマが違うということで要望として受けとめさせていただいて、それに対するやり とりは今回はご勘弁いただくということで先に進めさせていただきたいと思います。  それでは、お待ち遠さまでございました。フロアのほうから何かご意見あるいはご質 問等がございましたらお願いをしたいと思います。若干、注文をつけさせていただきた いんですが、発言を希望される方は挙手をお願いします。係の者がマイクを持って伺い ますので、差し支えがなかったらお名前とご所属を述べていただいてからご発言をいた だければ幸いでございます。できるだけ多くの方にご発言いただきたいと思いますので、 ご発言につきましては2分ぐらいということでお願いをしたいと思います。  それでは、時間も押しておりますので、「輸入食品の安全確保」というテーマについ て全般的な観点からで結構でございますので、ご発言、ご意見をお願いしたいと思いま す。  どうぞ、何かございませんか。はい、お願いします。 【参加者A】  本日は、輸入食品の安全確保に関することでお話を伺いましたけれど も、ニッスイさんのほうの一貫生産の推進ということで、こんなにもしっかりと努力さ れているというのがよくわかりました。けれども、私たちが買うときに、まだまだ表示 を見て、「中国産」とか書いてありますと、ただ中国産というだけでそういう努力をさ れているのが全く私たちには届いておりません。今日参加させてもらいまして、こんな にも努力されているというのがよくわかりましたが、ただそれが私たち消費者にはなか なか届いていないということがちょっと残念に思いました。 【塚原】  ニッスイさんのお取り組みを評価していただいたご発言でしたが、何かあ りますか。 【前田】  若干宣伝みたくなって申しわけなかったです。私どもだけではなくて、大 手輸入食品メーカーは同じような取り組みを、冷凍ホウレンソウのときぐらいからずっ とやってきています。ただ、確かに先ほどのお話のとおり、それをきちんとお伝えする すべがなかなかないというのが私どもの悩みでございます。接点は商品の表示なんです けれども、ここに書くというわけにはなかなかいきません。先ほど一貫生産の推進とい うお話を少しさせていただいたんですが、とはいうものの、私どもが扱うすべての食品 を全部一貫管理でやれますかというと、それはまた難しいということもあって、先ほど のお話の中で少し説明させていただいたんですけれども、原料を買う人たちとか、流通 していただく人とか、つくってもらう人たちとかと、どのように思いを共有して一緒に つくれるかというのが大切な点で、もう一歩踏み込んでまず信頼性を確保するというの が我々の責務かなと。  そういうことをやっているんだよとお伝えできるのは、今、こういう機会ぐらいしか ありませんが、もしホームページなどを見ていただければその辺のところも少しはご紹 介していますので、ぜひそのようなところで確認していただければと思います。 【塚原】  ありがとうございました。よろしいですか。  次にどなたか、ほかにございませんでしょうか。どうぞ遠慮なさらずに。はい、どう ぞ。 【参加者B】  輸入食品というものは、検査や監視指導が実施されていて、完全とま ではいかないけれども安全であるように今日、私は理解いたしました。  しかしながら、個人輸入になると思いますけれども、海外に行ったときに自分で買う 海外の食品について、例えば中国のウーロン茶であったり金華ハムといった場合に、ど こまで信用して買っていいのか非常に疑問になってきましたので、食の安全から不安を 向こうでどういうふうになさっているのか、かえってそういう場合の不安が増幅してし まいましたが、その点はどんなふうに考えてありますか。 【塚原】  今のご質問は、海外に旅行したようなときに海外で食べる食品の安全性に ついての不安をどうしたらよろしいかということだと思うんですが、どなたか今のご質 問にコメントをしていただけますか。  海外でつくられている食品の安全とか、そういったものに対する情報提供という感じ だと思いますけれども。近藤さん、何かありますか。輸入する前のものです。 【近藤】  これは、海外で食べるということもあるんでしょうけれども、海外でもの を買うときにも、その買っているものが安全かなということも含むんだろうと思って聞 いておりました。  どこの国でもそうなんですけれども、衛生関連に関する規制がない国というのはほと んどないんですね。その国の食品衛生を確保するということについては、しかるべき監 督官庁がありまして、ここが日本と同じような仕組みで点検等や試験等を行ってその確 保を行っているということだと思います。  仮に無法地帯の国があったとした場合であれば、多分そういう国の方々というのは健 康的ではないはずなんです。で、国としてのていを成していないということになってし まうと思うんですね。  言い方は変ですけれども、食品の衛生確保というのは、見方を変えると国防だと思っ ております。国を守るということは、そこで働く方々の命を守るということにつながっ ていますので、表現的にはちょっと右寄りかなと思われてしまうので嫌なんですけれど も、食品の安全を守るということは国防ではないかと思っております。  ですから、海外に行かれてあまたの方が訪れるような町が不衛生な状態であるのかと 言われれば、多分そんな状況にはないんだろうとは思っております。  でも、基準とか企画というのは、日本と同じでないから安全でないということは、こ れもまた間違いでございまして、一つの例を挙げると、農薬の基準がありますね。農薬 の基準は日本のほうが厳しいじゃないかと、海外は甘いよねというようなケースもある と思います。その甘いというのは理由があるんですね。これは基準値をつくるときに、 農薬、これは動物用医薬品でもいいんですけれども、目的がある化学物質だということ なんですね。  人間も風邪を引いたら風邪薬を飲みますね。植物にしても動物にしても、やはり病気 になれば薬は必要になってくるということになります。なので、その化学物質一つ一つ には目的があるんですね。その目的に従って使った場合に、どれぐらい食品に残ってく るんでしょうかということだと思っております。  これを突き詰めて言うと、日本で発生する病気と海外で発生する病気は必ずしも同じ ではないと。それは害虫でも一緒です。日本のバッタは海外にいないことだってありま す。なので、その目的とするものにどういうふうに使うか。使うときにある一定の効果 がないと意味がないので、その効果を求めて使っていた場合にどれぐらい残るかという ところから残留基準が変わってくることもあります。  なので、先ほどのご質問の観点から、海外に行かれて、「いやいや、この農薬の基準 は日本より緩いから、この食べ物は危ないよ」ということにはなかなかならないんだと いうこともご理解をいただければと思います。 【塚原】  よろしいでしょうか。ほかに、どなたかございませんか。はい、どうぞ。 【参加者C】  佐賀から来ましたコープさが生協という団体のオカモトと申します。  今、生協というのは、ギョーザ事件ですごくつらい目にあったんですが、私はギョー ザ事件の直前に中国に行ったんですね。で、工場を見学してきました。すごい設備で中 国の方々も一生懸命頑張っている姿を見て、皆さん大丈夫ですよと言おうとしたときに ギョーザ事件が発生しました。すごく悲しくなりましたけれども、それにおいて組合員 の皆さんとか消費者の皆さんの中国に対しての不信感というのはすごいものがあるんで すね。  私は理事で、大丈夫ですよという立場でした。「私たちの目で確かめてきました」と いう信頼がそこから崩れてしまったんですね。だから、そうした場合に、どうしたらい いんだろうと自分自身もわからないような状態になったんです。  だから、さっき言いましたように、故意の、意思を持った悪質な事件において、不信 感と添加物とかいろいろなそういう状況とまた違った意味なんですが、消費者の方々は また生協と、「また」ということしか言わないんですね。だから、それをどういうふう にしていったらいいのだろうか。私たちは、こういう検査体制できちんとしていますと いうことをずっと言い続けているんですが、事件があるたびにつぶされていくというよ うな気持ちになるんですね。  だから、中国に対する不信感を、こういうふうに検査していますとか、こういうふう に構築して安全になりますということで、一人ずつ理解する人を増やしていくというこ とが大切なんですが、国の政策としては、先ほど言われたように、私たちの生協も「こ ういうふうにしています」と言いますけれども、国の方もこういう説明会を、今度は地 方で3回されますね。だから、もうちょっと消費者の方々にわかるような工夫をお願い します。一度失った信頼を取り戻すことはいかに大変なことかと思いますが、もうちょ っと目に見えるような形にしていただきたいなと思います。 【塚原】  ありがとうございました。  生協の方からのご発言でしたけれども、同じお立場でエフコープの伊藤さん、何かご 発言がございますか。 【伊藤】  そのとおりだと思います。同じような話になるとは思うんですけれども、 実際中国に視察に行かれた方の話として、中国の商品がすべて安全だとは言い切れませ んが、中国全体を悪いものと決めつけてしまうのはいかがなものでしょうかと。大切な のは、一つ一つの商品をしっかりと見て、どこのだれとどんな約束をするかであり、ま たより安全な商品を確保するためには、生産者と消費者が互いに理解を深めて、信頼関 係を構築していくといったことが必要になってくる。中国に行く前はどんな人がつくっ ているのかといった不安がいろいろありましたと、でも行ってみると、私たちのために 一生懸命商品をつくってくれているのを見たり聞いたりしたら、感謝の気持ちでいっぱ いになりました、現地の方の組合の要望にこたえたいという姿勢はありがたいというご 意見もありました。  だから、全部が全部悪いわけではなくて、やっぱり今の食料自給率とか、日本の今置 かれている立場、6割を輸入に頼らざるを得ないといった状況がある中で、日本におい てもこの間偽造とかいっぱい起こっています。だから、国は別にして、そういった信頼 関係といったものが今後大事になってくる。築くのは難しいと思うんです。だからエフ コープでもいろいろ全体でそういった仕組みをつくっていこうという取り組みを今やっ ている最中なので。  リスクはゼロではありませんから、リスクに対してそれをいかに下げていくかといっ た取り組みが必要ではないかなと思っています。 【塚原】  それから、今のお話としては、99のまじめな取り組みが信頼をつくって きても、一つのこういった故意の大きな事件で信頼がゼロになってしまうというお話で すけれども、前田さんにお尋ねしたいと思うんですが、実際中国でもいろいろな形で輸 入食品の一貫生産ということで取り組まれておられますね。そういった事業を開始した 中でということで結構ですが、中国における食品の安全性の取り組みを客観的に見て、 どのようにお感じになっておられますでしょうか。 【前田】  中国に限定するとどうかとは思うんですけれども、ベトナムにしろインド ネシアにしろ、衛生レベルがまだまだこれからだよという国の人たちにとってみると、 正直申し上げると輸出用、自国用、その他という感じのレベルをお持ちのようだという のはあります。例えば中国で言うと、ゴボウという野菜は中国からも結構入ってきます けれども、中国人は実はゴボウは食べないんですね。食の経験はほとんどありません。 だから日本向けにしかつくっていません。それに根ものですから意外と農薬も使わない。 意外とゴボウなんかは日本向けだけにしかつくっていませんから絶対安全というような ところはあるので、その辺の意識を我々としてお願いをしているというか、一緒にやっ ていくパートナーの人たちとどこまで共有できるかなんです。  ですので、先ほどご紹介しましたけれども、中国人の方々で管理者の方々を日本に呼 んで日本の生活を見せて、一緒にしばらくやっていただくとかということもやってきて いて、今6年ぐらいやったかな、ずっとやってきたりしているんですけれども、そうい ったところを同じにしないといけないのかなと。  だから、やっぱり若干レベルはあるみたいですね。 【塚原】  わかりました。  よろしいでしょうか。よろしいですか。 【参加者C】  国の対策としては何か考えていらっしゃいますか。 【塚原】  では、近藤さん、一言述べていただけますか。 【近藤】  国としてどうやっているかということですね。確かに皆様方に大変ご尽力 をいただいて、基本的な部分は十分対応していただいているんだけれども、なかなか対 応している努力が組合員の方を含めた消費者の方に伝わらないということです。  実は、私どもも非常にそこは悩んでいるところでございまして、同じような立場にお ります。というのが、いかに皆様の税金を使っていっぱい検査をして、その結果として どうかということ。また中国の問題が起きれば、そこに傾注していろいろやるわけです ね。  昨年の2月も、私が中国から帰ってきた後になるんですけれども、原因究明はできな いけれども、対応すべきことはやるよということで、ギョーザ問題のときの反省を洗い 出して、一つ一つそれを対応図にして取りまとめたものが実は2月の末に出ております。  そのようなものを出して信頼回復に努めようとしているんですけれども、先ほどの前 田さんではないんですけれども、なかなかこの取り組みをどうやって皆様に伝えていっ たらいいのかというツールがないというのがありまして。もちろんホームページは使っ ているんですよ。ホームページは使っているんですけれども、ホームページのようなも のというのは、見ようとする意思がなければだれも見ないんですね。  だから、だれでも情報が目に入るようなところにどうやってその情報を出していくの かということでありまして、一つには内閣府が取り組んでいるようなパンフレットのよ うなものをいろいろなところに置くというのも大事なんでしょうし、そういうところが まだ我々も非常に手薄であるところがありまして、こういう場でお話をするのはいいん ですけれども、こういうところにいらっしゃる方というのは逆に関心がある人だから、 ここにいらっしゃらない方にどう伝えるかというのがほんとうは大事なんですね。  だから、そこについて皆様の豊富な経験等やアイデアみたいなものを逆に我々もいた だければと思っています。  中国という限定条件をつけてお話をすると、一昨年のペットフード絡みの問題があっ たと思いますけれども、あのとき以来、私どもが注意して説明していることが一つだけ ございます。それは、中国の食品が悪いのかという質問が非常に多いんですね。その問 いに対しては、事実関係をもってお答えをしようという形で努めております。  それは何かといいますと、輸入届け出件数が全体の何%あるのか、そのうち検査を何 件やっていますよねと。で、結果、違反が何件ありましたかということを単なる事実と してお話しする。そうすると、実は中国の違反率というのはそんなに高くないんですね。 輸入食品の平均違反率よりも実は低いと。  なので、そういう事実についてはなるべく私どももお話をすると。ただ、それをもっ てすべてが安全なわけではないし、逆を言えばすべてが悪いわけでもない。なので、す べてが悪いわけではないということの周知方法について、それ以外の何かいい方法があ れば、私どもも勉強していきたいと思っています。 【塚原】  ありがとうございました。よろしいでしょうか。  先ほど手が挙がりました。はい、ではどうぞ。 【参加者D】  ふだん、輸入品は扱っていませんけれども、家畜の診療をやっていま す獣医師です。  BSEの検査について、国はもうやめてもいいよということですが、アメリカから入 ってくるのはやはり厳密にというか、一応厳しくやっていますね。国の場合は月例で制 限していて、それ以上の月例の分はやめていいよということですが、国が都道府県に任 せたという形になっていますので、都道府県はまだ現在行っている。やはりフードチェ ーンを考えると、ほかの国と同じように、さっきのミニマム・アクセスの問題でもそう ですけれども、ここの部分は農水ですよと問題を農水に渡されましたよね。そういった フードチェーンの場合も、我々は消費者の立場であるし、また畜産行政からの立場にあ りますので生産者側にも立っています。そういったところは、フードチェーンを考える と、食料に関するものについては一本化するような行政を早くつくることが、日本の国 の農業や食料不安を解消する一つの道だと思います。  ぜひそういうところを大いに検討してもらって、食の安全のためにはやはり生産者が 喜ぶ安全のシステムをぜひきちんとつくっていただく。それから外国から輸入するもの については、ダブルスタンダードの問題もありますね。基準が国によって違う。これは 量の問題、質の問題、それからバイオセキュリティーの問題もありますので、こういっ たことを深く考慮してもらって問題に対処していただきたいという要望です。  以上です。  今のところ、農業の現場での安全のシステムそ構築し、できるだけ国産の食料、畜産 物の自給率が上がるように、安全なものが届けられるように、九州獣医師HACCP研 究会をつくって勉強しております。ぜひ、そういった行政の一本化を願う要望です。  以上です。 【塚原】  ありがとうございました。  これは、どなたかからお答えがございますか。よろしいですか。 【参加者D】  消費者の方の意見を聞いてください。 【塚原】  それでは、萩尾さんのほうにご指名だそうです。 【萩尾】  生産者の立場から、私はもっともだと思います。私のほうにも生産者、肥 育していらっしゃる方もあります。それから農産物、山芋をつくっているなどの農業の 方もいらっしゃいます。  私が北海道に行きましたら、牧場に牛がいないといって、北方領土返還運動で根室に 行ったときに、近所の牧場の若い方、福岡から移植したまだ結婚もしていない若い方が 目を輝かせていらしたけれども、なかなか肥育がうまくいかないと。北海道の牧場です よ。  だから、そういうことも含めて、国内の生産者の意欲が上がるようにしてほしい。お 肉もオーストラリアから輸入しているとか、今中国からということがありました。私は 消費者ですけれども、全部国外に依存する食料事情でよろしいんでしょうかね。国内自 給率を上げていくことがやはり大事だと思います。  今獣医師さんがおっしゃったように、農業を大事に、それから生産者を大事にする。 日本は農業国ではなかったんでしょうかね。それを今からずっと30年、50年、10 0年後、飢えが来るような国にしてほしくない。  消費者問題を担当されるのは内閣府だと思うんです。農水省それから厚労省ですね。 だから、失礼ですけれども、意識をお変えになって、その責任の所在をはっきりしてい ただきたい。  なぜ中国に工場を合弁でつくらなきゃいけないのか。国内は狭いから中国に行けばい いとおっしゃるけれども、北海道もあるじゃないか。人件費が安いと。こんな着るもの も中国産が多いですね。中国から縫製して持ってきます。だからそういうことも含めて、 生活者として国にお願いしていきたい。政治も今どうも低迷しておりますけれども。  私は、今日獣医師さんがおっしゃった農業生産者、それから消費者、そして次の世代 の子供です。それは全部教育にもつながりますし、福祉にもつながるんです。食は生き る命につながるんです。厚労省に、先生、お願いしておきますよ。  今日は、輸入食品に関することということでちゃんと歯どめをかけられとります。私、 山ほど言いたいことはあるんですけれどもね、プレッシャーがかかっておりますから。 今日は生産者の方のお言葉が出ましてほんとうによかった。  それから、生協の方もおっしゃったけれども、生協は頑張ってください。うちも福婦 コープって生協をしていたんです。平成15年までやっていました。これは食べること ではなくていろいろな生活用品をやっておりました。それはそれで置きます。  ほんとうに今は大事なときです。食が危ない。なぜ中国に合弁をつくらなければいけ ないかということも課題ですよね。北海道につくっていただいたら、あの農場をしてい らっしゃる青年が生き生きとなるんじゃなかろうかと。  北海道は寂しいですよ。タマネギもジャガイモも前みたいにないそうですね。そんな 声もたくさん聞いておりますけれども、この辺で。先生から課題から外れないようにと しっかり言われております。まだ言いたいことはあるんですがね。 【参加者E】  なるべく国内でつくるように考えてください。消費者は少々高くても 辛抱します。少々ゆがんでてもいいんです。 【萩尾】  消費者の意識も変えなければいけませんね。そして、こういうことを厚労 省さんが福岡までお出向きになってしたということは、ほんとうにありがたいと思いま す。消費者不在の行政じゃだめだと思うんです。ぜひお願いしておきます。九州は燃え るんですよ。しっかりやってくださいませ。九州はこういう女の力もありますし、生協 さんもそうでしょう。国内生産自給率が40%とおっしゃるけれども、地産地消も考え ていきましょう。そう思います。 【塚原】  ありがとうございました。  会場からも拍手が起きましたけれども、受けとめさせていただきまして、今後のいろ いろな対策にも反映させていきたいと思います。  済みません、私の不手際でもう5分ほど伸びているんですが、先ほど手が同時に挙が った方がもう一人おられましたので、もう一人お許しいただきましてご発言をお願いし たいと思います。 【参加者F】  時間が過ぎてしまっているのに済みません。  私は、外国の政府機関に勤めている者です。先ほど、地産地消のお話がでましたので、 私も消費者の1人としてそれはすごく賛成ではあるんですけれども、やはり現実として 自給率が40%という状況の中で輸入していくということは避けられないことだと思い ますし、今後何か対策を打たなくてはますます数字が落ちていくと思うんですね。  その中で、私は日本の企業さん、それから海外の企業さんと直接お話をする機会があ るんですけれども、海外の企業さんからお話を聞くのが、日本の基準は厳しいというこ とで、だんだん日本企業さんとの取引離れというのが現実に起こっています。それにす ごくハイスタンダードを求められる一方で、価格に関してはすごく低コストを求められ るということがありますので、そういった意味での兼ね合いに関しては、やはり企業さ ん、民間同士だけではなく、政府同士としてもいろいろなお話し合いですとか、政策を 一緒につくっていかれないと、今後自給率が下がる一方、輸入も減ってくるということ では今までのような食品のレベルというのは維持できないのではないかと思います。  もし、海外政府とのやりとりであるとか、そういったものをもう少し具体的にお話し いただければよかったかなと思います。 【塚原】  このご意見に対しては、どなたにお願いすればよろしいでしょうかね。近 藤さんですか。いいですか。 【近藤】  今のご質問、これからどうなるかということですけれども、多分食料の自 給率というのはすぐには戻らないと思うんですね。農地も疲弊していますし、農民の方 も高齢化しているという状況がございます。ですから、直ちに自給率を今よりもはるか に高い状況に持っていこうというのはなかなか難しい、多少時間がかかることだと思っ ております。  そういう状況の中で、今日本の食料がこれからも順調に輸入できるかという観点で見 た場合に、これもなかなか厳しい状況にあるのではないかと思います。というのは、一 つ例を挙げれば、アメリカは中東のイランイラク戦争に端を発しまして、自分の国の中 でエネルギーを確保しようと。このためにバイオエタノールに今動いていますよね。こ のバイオエタノールをつくるとどうなるかというと、トウモロコシがみんななくなっち ゃうんですね。トウモロコシが輸入できないとどうなってしまうか。これは畜産の方が 非常に困ることになってしまう。日本の飼料用のトウモロコシというのは、ほとんどが 輸入に頼っておりますので、なかなかそれも大変。もう一つ、コーンスターチもなかな かつくりにくくなってしまうという状況になります。  それ以外に、特に日本が厳しいというのも一つの理由にはなるんでしょうけれども、 それ以外に中東等いろいろなほかの多くの国が非常にお金持ちになってきたということ がございます。  その端的な例を挙げると、バナナですね。バナナというのは、昔風邪を引くとよくお 母さんが買ってくれたと記憶されていると思うんですけれども、バナナというのは一時 非常に安く買えた時期があったんですね。ところが、今は日本はバナナは買い負けして います。だからなかなかバナナが買えない状態になってるんですね。  では、そのバナナはどこに行っているかといいますとドバイに行っているんですね。 ドバイという国は非常にお金持ちですので、こういう国に南国産のフルーツのようなも のが流れていくということが起こっています。  また、非常に残念なことに、身近な中国におきましても非常に経済発展が進んでおり ます。そうなりますと、彼ら自身の購買力が強化されています。ですから、その端的な 例はどこへ出てくるかというと、天津甘栗なんですね。天津甘栗というのは日本でも昔 よく冬の風物詩として売ってましたけれども、なかなか入手が難しくなっています。こ れは、中国の皆さんが天津甘栗はおいしいということに気づいて、自分たちが高い栗を 買えるようになったという状況の中で日本に輸出されなくなってきているということも あるんですね。  ですから、一つに日本の基準が厳しいというのもあるんですけれども、諸外国の経済 発展というものも影響して、いろいろなものが輸入しにくくなっていると状況もあると いうことです。  我々が諸外国とどう折衝をしているかといいますと、海外において基準をきちんと守 ったものを輸出していただく限りにおいては何ら問題はないんです。ですから、まずき ちんと農民の管理をしてくださいということをお願いしております。適正な貿易を維持 するためには、適正な食品をつくっていただくということが一番大事ですけれども、そ の適正なものをつくるために何が一番大事かというと、相手国の農民の方をどう教育す るかというのが一番大事な問題なんです。  だから、政府間のやりとりというのは、こういう基準がありますよということは当然 お話をします。そして、そのときに今強く求めている、過去は求めていなかった大きな ポイントというのは、そのことをきちんと地域の生産者に伝えてください、そして管理 をしてくださいということを求めています。  だから、国によっても同じ対応とは限らないんですけれども、農民に対する生産者の 教育の仕組みがしっかりしている国は政府の方にお話をするだけで済むんですが、そう じゃない国が東南アジアにもありますけれども、こういう国に対しては、そこであえて 農民の方に生産者部門との連携と、その部門を通した農民の教育を強く求めているとい うことを従来と違う点でやっております。 【塚原】  よろしいでしょうか。  まだ手が挙がりそうなんですけれども、もう15分も超過してしまいましたので、申 しわけございませんが、ここでパネルディスカッションのほうは終了ということにさせ ていただきたいと存じます。ほんとうに熱心なご意見、ご質問をいただきまして、あり がとうございました。  それでは、マイクを司会に返したいと思います。 【司会(北村)】  パネリストの皆様方、どうもありがとうございました。  以上をもちまして、「食品に関するリスクコミュニケーション」を終了させていただ きたいと思います。  本日は、少し時間が超過いたしましたけれども、長時間にわたりまして、また貴重な ご意見をいただきまして、まことにありがとうございました。  出入り口におきまして、受付のところでアンケートの回収を行っておりますので、ご 協力をどうぞよろしくお願いいたします。また、皆様の近くでこうしました意見交換会 を開催することもございましたら、ぜひともご参加をお願いしたいと思います。  では、皆様、お気をつけてお帰りください。本日はどうもありがとうございました。                      担 当                      食品安全部企画情報課                      03-5253-1111(内2493,2452)