08/01/30 「食品に関するリスクコミュニケーション(輸入食品等の安全確保に関する意見交換会)」について (平成20年1月29日東京都新宿区、平成20年1月30日大阪府大阪市) 食品に関するリスクコミュニケーション〜輸入食品等の安全確保について〜 議事録 平成20年1月30日(水)13:00〜17:00 於:天満研修センター 101ホール 【司会(吉川)】  本日は皆様、ご多忙の中ご参加をいただき、ありがとうございま す。ただいまから「食品に関するリスクコミュニケーション」を開催したいと思います。 私は、本日司会を務めさせていただきます厚生労働省食品安全部企画情報課、吉川と申 します。どうぞよろしくお願いいたします。  本日の「食品に関するリスクコミュニケーション」は、テーマに関する説明や基調講 演、パネルディスカッション、意見交換を通じて、輸入食品等の安全確保についての理 解を深め、関係者間の認識を共有することを目的として開催するものです。  まず、配付資料の確認をさせていただきます。議事次第がございますので、そちらの 下の配付資料一覧に沿って確認をさせていただきます。  本日の資料といたしましては、資料1−1、平成20年度輸入食品監視指導計画 (案)、資料1−2、輸入食品の安全性確保について、資料2、陶磁器等及び乳幼児玩 具の鉛等の規格基準の改正について、資料3、中国における食品安全管理体制(残留農 薬検査を中心として)、資料4、日本生協連の輸入食品の安全確保の取り組み、また、 参考資料といたしまして、食品の安全確保に関する取り組みというパンフレットをおつ けしております。不足の資料がございましたら、挙手をいただきまして、スタッフのほ うにお知らせください。  また、アンケート用紙を同封させていただいております。これは、今後の意見交換を よりよいものにできますよう、皆様のご意見をお伺いするものです。ご協力をよろしく お願いいたします。記入いただきましたアンケートは、意見交換会終了後に出口の付近 でお受けをする予定です。  続きまして、簡単に本日の議事進行を説明させていただきます。  議事次第をごらんいただきたいのですが、最初に政府インターネットテレビにおいて 配信をしています、輸入食品の監視についての8分ほどの動画をごらんいただきます。 次に、テーマに関する説明といたしまして、平成20年度輸入食品監視指導計画(案) について、厚生労働省食品安全部輸入食品安全対策室輸出国査察専門官の近藤から、続 きまして、輸入食品との関連性もありますので、陶磁器等及び乳幼児玩具の鉛等の規格 基準の改正について、厚生労働省食品安全部基準審査課課長補佐の光岡より説明をいた します。その後、基調講演といたしまして、株式会社アジア食品安全研究センターの技 術顧問の佐藤様より、中国における食品安全管理体制について、その後、日本生活協同 組合連合会品質保証本部商品検査センター長の和田様より、日本生協連の輸入食品の安 全確保の取り組みについてご講演をいただきます。基調講演の終了めどは、午後3時1 5分ごろを予定しております。  講演終了後、10分程度の休憩をとらせていただきまして、3時25分からパネルデ ィスカッション、意見交換を行い、午後5時の終了を予定をしております。本日、どう ぞよろしくお願いいたします。  それでは、動画「輸入食品の安全を守れ!〜輸入食品の監視〜」をごらんください。 (動画上映) 【司会(吉川)】  それでは、テーマについての説明に入らせていただきます。  初めに、輸入食品安全対策室専門官の近藤より、平成20年度輸入食品監視指導計画 (案)について説明をいたします。 テーマについての説明 【近藤】  ただいまご紹介にあずかりました、私、厚生労働省輸入食品安全対策室の 近藤と申します。きょうはよろしくお願いいたします。  それでは、テーマに従いまして、これから輸入食品の安全確保についてご説明をした いと思います。  輸入食品につきましては、ただいまのビデオをごらんになっていただいたとおりに、 国民の食生活のカロリーベースで6割を占めるというものでございまして、厚生労働省 としても、その安全確保に対しては大変注視をしているところでございます。また、輸 入食品の安全確保という業務が基本的には検疫所で行われ、また、その検疫所自体がい わゆる港の保税地域というところに所在しています。このため、保健所の業務のように 皆様の身近で行われている業務と異なりまして、なかなか目にする機会がないというこ ともあり、この業務を理解するのがなかなか難しいということもございますので、きょ うはその輸入食品の監視業務のアウトライン等も含めながらご説明して、平成20年度 の監視指導計画についてもご説明を申し上げたいと思います。 (パワーポイント)  スライドをごらんください。  こちらが、輸入食品の従来からの輸入届出の件数と重量の推移をあらわしたグラフと なっております。青色が重量、そして、赤色が件数というものでございます。ごらんに なっていただければわかりますとおり、重量についてはやや上向きの横ばいというもの でございますが、件数につきましてはかなり増加しているということがおわかりいただ けると思います。  これは、1つの要素といたしまして、原料の輸入が従来は多かったわけですが、それ が加工食品に変わってきているということもございます。また、例えば野菜とか果物に ついては、従来加工品が多かったものが逆に生鮮品が増えてきたということもあり、や はり生鮮品を一度に多量に我が国に持ち込んでも日持ちはしませんし、また消費するこ ともできないということから、少量多数回の輸入に移るということが起こります。この ため、近年の輸入統計をとってみますと、件数が非常に多いと、そして、重量について は横ばいであるということがこの図からおわかりいただけると思います。 (パワーポイント)  では、その輸入されている食品の内訳、これは重量ベースでございますが、グラフに あらわすとこのようなものになります。  ごらんいただきまして端的におわかりいただけますとおりに、やはり農産加工品、ま たは農産品と言われているものが非常に多いということがおわかりいただけると思いま す。この内訳の中の大半を占めるものは、主に穀類でございます。日本では、食料自給 率の上ではお米につきましては自給をしておりますが、それ以外の、例えば大豆であっ たり、または小麦であったり、またはトウモロコシであったりというものにつきまして は、食料自給率が大変低うございます。このため、このような穀類について輸入せざる を得ないということになりますと、重量ベースで見た場合に農産品等が多くなってくる ということでございます。 (パワーポイント)  次のスライドが輸入食品監視指導計画でございます。  これをこれから説明申し上げるわけでございますが、まず、監視指導計画自体がどの ような位置づけになっているのかということをあらかじめご説明します。  この監視指導計画につきましては、食品衛生法の第23条というものに規定されてお ります。この23条は、平成15年の食品衛生法の一部改正により新たに設置された規 定でございまして、この中身の輸入品については主として国が管轄しておりますので、 検疫所の輸入食品監視指導計画につきましては国が策定し、その内容を公表し、そして 意見を求めるという形になっております。  また、これとは別個に、都道府県におきましても監視指導というものが行われており ますので、都道府県におきましては管轄する地域の監視指導計画というものをおつくり になりまして、この計画に基づいて監視指導を行っていただいているというものでござ います。 (パワーポイント)  次に、輸入食品の監視体制の概要でございます。  この概要をごらんになっていただきますとおわかりになると思いますが、監視の仕組 みというものは三層構造、または三段階という構造になっております。そもそも輸入食 品の安全確保というものは、営業等を目的とするものを監視の対象としております。つ まり、事業者が海外から我が国内で営業を目的として持ち込む貨物、これについて規制 の対象とするというものでございます。ですので、まず事業者たるものの一義的な衛生 確保の義務があるということは大前提でございますが、それに加えて、行政としてどの ようなシステムを構築して、そして、安全性の確保を行っているのかというものを端的 にあらわしたものがこちらの図でございます。  まず、真ん中のカラムでございます。こちらのカラムが、先ほど見ていただきました DVDの、ビデオの中身に相当する部分になっております。検疫所における届出審査と いうものが真ん中に書いてございますが、この審査がなされますと、その横に四角囲み になっております情報等を用いまして、検査の必要性を判断しております。検査の要ら ないものについては、速やかに国内に流通をしていただくと。また、検査が必要なもの につきましては、輸入時の検査体制と四角囲みの中に書いてございますが、1つに検査 命令、1つにモニタリング検査、そして最後に自主検査という幾つかの検査のシステム に乗せまして、検査を受けていただきます。  この検査の結果、合格となったものは当然国内に流通が可能となります。ただ、不合 格となりますと、先ほどのDVDのフローチャートにもありましたが、これは我が国に 輸入できない、そして、水際で廃棄等の措置がなされるという形になっております。ま た、国内に流通した貨物でございますが、これにつきましては、今度は地方自治体の管 轄に入りまして、地方自治体の方の監視を受けるという形になっております。  追ってこれからのスライドの中でもご説明いたしますが、このような輸入食品の監視 のシステムがございますけれども、これは必ずしも100%すべての食品を検査してい るものではございません。統計学的な治験に基づきまして、必要とする検体数を確保し て、これに基づいて監視を行っているというものでございます。ですので、自治体の監 視もかなり我々の業務の中では役立っておりまして、このような地方自治体の業務の中 で違反等の食品が発見されるということがございますと、この一番下のカラムになりま すけれども、右側にあります違反発見時の通報ということが厚生労働省に対して行われ ます。厚生労働省では、このような違反の情報が寄せられた場合には、これをリアルタ イムで輸入時の監視に反映をしております。  また、このような情報については、今度は一番上のカラムに行きますけれども、輸出 国における衛生対策にも反映させるということを行っております。輸入食品は、その名 のとおり国内でつくっている食品ではないということもございまして、輸出国における 製造段階における管理というものが非常に重要でございます。この管理体制をもう1度 点検をしていただき、そして、我が国の基準に合う食品をつくっていただけるように二 国間協議等を行います。そのような協議等を通じまして、やはりやらなければいけない 事項があるであろうということがわかりますと、一番上のカラムの左側の四角囲みにな りますが、必要な対策というものが構築されます。この必要な対策が構築されたものを また輸入をして、そして通関をしていくという流れになっております。  ですので、この三層構造を循環させることによりまして、輸入食品の安全性というも のを日々高めているという状況にあるものでございます。 (パワーポイント)  次に、検疫所でございますけれども、じゃ、どこにあるんだろうということでござい ます。当然ながら大阪にもございます。全国には31カ所の検疫所。これは本所と支所 という単位がございますが、これを合わせて31カ所の検疫所の施設がございます。北 は北海道から南は沖縄までとなっております。  この図を見ていただければ、ぱっと気づく点があろうかと思います。それは、太平洋 ベルト地帯に沿って検疫所が設置されているというものでございます。大消費地に近い ところにたくさんの食品が揚がるというのが、流通の仕組みでございます。これは輸送 コストも当然ながら抑えられますし、また鮮度も落ちないということもございます。で すので、日本の検疫所の配置は中央に帯状に沿って配置されているということが、この 図からおわかりいただけると思います。  また、先ほど見ていただきましたビデオの中にある検査センターというものにつきま しては、記述もございますが、横浜と神戸の2カ所にございます。また、これをサポー トする検疫所の検査課という施設もございまして、検査課が全国に現在6カ所設置され ております。検査課のほうは◎であらわしておりまして、センターは★マークであらわ しているものでございます。 (パワーポイント)  このような検疫所に、分析を担当する者、または書類を審査をしたり、現場に行って サンプリングをしたりしている者、これを合わせて何人ぐらいの人間がいるんだろうと いうものがこちらの図でございます。  平成20年度は、まだ予定でございますけれども、341名という者が働いておりま す。昨今は行政機関も小さな政府ということがございますとおりに、なるべくコンパク トな組織にしていこうということがございますけれども、輸入食品の監視業務自体が国 民の食生活を維持する上で非常に重要であるというご認識をいただいておりまして、 年々その人数が増加している状況にあるということがおわかりいただけると思います。 (パワーポイント)  食品等の輸入の届出とは何でしょうかというものでございます。  先ほどもご説明しましたが、営業を目的として輸入しようとする場合には厚生労働大 臣あてに届出をしなければならないということが、食品衛生法の第27条の条文として 規定されております。ですので、海外から食品を持ち込もうと、ましてそれを営業目的 で持ち込もうとする事業者の方は、この条文に従って輸入届出をしなければならないと いうものでございます。 (パワーポイント)  そして、次に検査体制の概要でございます。  検査体制につきましては、先ほどの三層構造のフローチャートの中でもご説明いたし ましたが、モニタリング、そして検査命令というものがございます。これが検査のシス テムの中核をなすものでございます。  こちらの図では、全部で4つのカラムを書いてございます。  まず、一番下のカラムは、通常行われておりますモニタリング検査というものでござ います。モニタリング検査の中身につきましては次のスライドでご説明いたしますが、 検疫所で行われている一定の頻度で食品を抽出して検査するものです。そしてこのシス テムの中で、特定の食品について違反が見つかりますと、第2番目のカラムのモニタリ ング検査強化というところに移行いたします。というのも、1回目の違反では、それが 偶発事例なのか事故なのかというものがなかなか判断しにくいということもございまし て、1度の違反が見つかった場合には検査の強化を行うということを行っております。 ですので、一番左の矢印の横軸を見てもらいますと、検査率と違反の蓋然性と書いてあ りますけれども、これは当然、上の階層に上がるごとに高いものになっていくというも のでございます。  そして、このモニタリング強化検査でも違反が見つかるということになりますと、や はり違反の蓋然性は高いであろうという判断のもとに検査命令を行っております。この 検査命令等を行った上でも、なおかつ輸出国からの食品衛生法違反の事例がとまらない、 またはその輸出国において管理されている可能性が非常に低いとなった場合には、その 食品自体の危険性が非常に高いということになりますので、その国の特定の品目につい て日本への輸入を禁止してしまうという規定がございます。実際にこの包括的輸入禁止 規定が発動されたことはありません。現時点では検査命令の段階までのシステムの中で 輸入食品の安全性が確保されているというものでございます。  参考までに件数を申し上げますと、下のモニタリング検査、これは強化部分も合わせ てですけれども、大体4万8,937件。また、一番下に指導等の検査というのがござ いますけれども、この指導等の検査というのは、規格基準に適合していることの確認と いうものは一義的に輸入者が確認する義務があるという観点のもとに、輸入者の方に基 準適合性を確認をしていただくという検査がございます。この検査が一番下にございま す指導検査等という部分でございまして、これが5万8,575件でございます。さら に、蓋然性が高いと判断される検査命令に該当するものが約9万3,000件。これら をトータルいたしますと、約20万件の検査が毎年輸入食品に対して行われているとい うものでございます。  これに対応する輸入届出件数は185万件ですから、輸入届出の大体10%前後が検 査に該当しているということになります。皆さんがよく輸入食品の検査率は何%でしょ うと、で、10%ぐらいという数字をお聞きすると思いますけれども、これは、この件 数を届出件数に当てはめた場合に10%になっているということでございます。  ですので、この検査件数自体がそもそも固定されたものではなく、例えば指導検査に ついても、その検査の件数というものは非常に多く変動するものでございますし、また 検査命令につきましては、違反の蓋然性に沿ってその対象となるものが増えるかもしれ ない。また、その相手国の対策がとられて減るかもしれない。そういう変動要素を含ん でおりますので、必ずしも固定された検査率によって輸入食品の検査が行われているも のではないということをご理解いただければと思います。 (パワーポイント)  次のスライドが、先ほどご説明いたしました制度の概要でございます。  指導検査はもう説明しておりますので割愛いたしますが、2番目のモニタリング検査 については、輸入される食品の衛生状況を把握するということを目的として、年間計画 に基づいて実施されるものでございます。  この検査の特徴といたしましては、モニターという観点でございますので、まず国が 検査費用の負担を行っているということと、検査の結果を待たずに輸入することが可能 であるという点でございます。  このモニタリング検査におきまして違反が確認されるという場合におきましては、検 査命令が発動されると。この検査命令につきましては、やはり違反の可能性が高いもの の、これをどうしても営業の目的で輸入したいという人もおりますので、輸入者の方に 費用を負担していただくとともに、検査結果が判明するまでは輸入できないという形に なっております。  無論、そのようなものが輸入届出するまでわからないということでは輸入者の方の影 響も甚大ということになりますので、我々はこの検査命令の対象となっている品目とい うものにつきましては、各検疫所等に通知もしておりますし、ホームページの中でその 対象となるものを明示しております。 (パワーポイント)  モニタリング検査の算出方法でございます。  先ほど、年間計画に基づいて検疫所において検査を実施しているというお話をいたし ましたが、これはどのような仕組みになっているかといいますと、まず食品、これは特 定のグループに分類することが可能でございますので、124グループにまず食品を分 類いたします。食品の中には、食器とかも食品衛生法の対象ですので、そういうものも 含んでおります。これらについて、ここに書いてございますとおりに、農薬ですとか、 また添加物であるとか、または遺伝子組みかえであるとか、このような項目につきまし て、一定の信頼性で違反を検出することが可能な検査数が299件でございますが、こ れで仮に設定をいたします。  この299件というものは何に基づいているかといいますと、FAO/WHOの合同 食品規格計画、CODEXという機関がありますけれども、こちらの中で決められてお りますガイドラインがございます。このガイドラインのナンバーがこちらに書いてござ いますけれども、GL33−1999というものでございます。ここにある特定の食品 群について信頼性が95%存在して、なおかつその食品群の違反率が1%以下であるこ と、これが確認できるもともとの検体数は何件かということが示されております。その 検体数というのが299件ということになっておりますので、私どものモニタリング検 査というものは、この299件をベースに検査計画を構築しております。 (パワーポイント)  ただ、299件がどの食品でも同じかといえば、そのようなものではなくて、やはり その特定の食品が持つリスクの大きさ、またはその輸入量の大小、こういうものを勘案 して計画を立てなければいけないということになります。  このような要素を反映いたしまして計算しますと、これは例示でございますけれども、 例えば米穀については、抗菌性物質や添加物、これについては299件がベースになる わけでございますが、そもそもお米にこのような動物用医薬品等を使うことはないと考 えられますので、このような項目についての検体数は不要ということになります。それ 以外の農薬とか、またはカビ毒でありますとか、こういう項目については当然そのリス クの蓋然性はありますので、必要ということで、検体数を積み上げてまいりますと、ト ータルでこちらでは1,794件という数が算出されるものでございます。 (パワーポイント)  次に、検査命令について簡単にご説明をいたします。  検査命令は、先ほどからお話ししているとおり、蓋然性が高いものについて実施する 検査でございますが、検査命令は、違反が複数回あるから、そのときに初めて適用され るのではなく、例えば、こちらに書いてございますとおりO−157や発がん性物質で ありますアフラトキシンと言われるようなものが検出された場合には、複数回の違反を 待たずに直ちに検査命令を発動しているものでございます。  当然、命令発動があれば解除もありますので、解除というものが下のカラムに書いて ございますが、その輸出国等において再発防止対策が十分構築されたということが確認 できれば、これについては解除も行っているところでございます。 (パワーポイント)  このような命令検査の対象はどのようなものかということの抜粋を、こちらにお示し しております。  その命令の対象の書きぶりですけれども、対象となる国、対象となる食品、そして対 象となる検査項目、これについて記載をしております。ただ、その最後に条件等がつい ているのがわかると思いますが、これは、輸出国において一定の衛生対策が講じられた 場合に、その部分については除くということも可能になってまいりますので、このよう なものは明記をいたしまして、検査命令の対象から除外をしております。 (パワーポイント)  次に、モニタリング検査と検査命令をなかなか概念的に理解するのは難しいと思いま すので、こちらの図をお示ししております。  モニタリング検査は、年間計画に基づきまして輸入届出される食品群について一定の 頻度で抽出をしております。ですので、この検査は、例えば同一食品群の中でAからJ までの届出があったとしても、年間計画に基づきまして、今回はまずA社ということに なれば、A社のみを対象として、BからJまでは検査の対象とならないということでご ざいます。ところが、検査命令につきましては、例えばAからCまでの届出があった場 合にそのすべてが検査の対象になるということを、簡略に図式化しております。  このモニタリング検査をごらんになっていただければわかると思いますが、違反の蓋 然性の低いものを対象としていますが、年間計画に基づいたサンプルの抽出というもの を行っておりますので、当然BからJの中にその違反の蓋然性があるものが含まれる場 合も想定されるわけでございます。このようなものが時として自治体の流通経路に乗っ てしまうということもあり、必ずしもモニタリング検査がすべての食品の検査に対応し ているものではないという仕組みであることをご理解いただければと思います。 (パワーポイント)  次に、昨今にぎわしております残留農薬等のポジティブリスト制度についてでござい ます。  この制度はなかなか複雑でございますが、簡単にご説明いたしますと、基準の設定さ れていない農薬等が一定量である基準を超えて残留する食品については、販売等を原則 禁止しますよという制度でございます。これは従来のネガティブ制度からポジティブ制 度に変わったわけでございまして、大転換ということもあり、これに対応するために、 検疫所のほうでも能力の強化に努力をしております。 (パワーポイント)  このポジティブリスト制度を踏まえた対応というものがこちらでございまして、増員 でありますとか、設備の増強でありますとか、検査項目の拡充ということも行ってきて いるところでございます。モニタリング検査項目の拡充については、現在平成20年度 の項目について検討中という状況でございます。 (パワーポイント)  モニタリング検査項目の選定方法。検疫所は一体どういうふうに選定しているのだろ うというものでございますが、まず毒性の高い農薬については当然重点的に見ることと なります。また、広く使われている農薬はいろいろな国で使われますので、そういうも のについて幅広く見ることとなります。また、過去の検査等におきましてよく検出され るものはやはり検査の項目に加えるべきであろうというもの。また、検査命令の対象項 目になっているもの等についても、当然ながらこれは管理の不良が疑われるものでござ いますから、このようなものも重点的に見ていこうという形で、農薬ごとにプライオリ ティーをつけております。その総合的なプライオリティーから最終的な検査項目を決め ていくという作業を行っております。 (パワーポイント)  次に、輸入食品関係でいいますと、やはり米国産牛肉等の対応というものもございま す。  皆様ご存じのとおり、アメリカでBSEが発生したということを受けまして、日本に おきましてはその輸入を停止したものでございますが、平成17年に1度解禁をし、そ の後、問題が発生したことを受けて改めて管理の仕組みを再構築して、平成18年7月 に再度輸入を解禁したという形になっております。 (パワーポイント)  この管理の仕組みがどのようなものかというものでございますが、こちらは三角形を 描いておりますけれども、下の四角囲みの2つ、こちらが米国農務省USDAの管轄下 にあるものでございます。このUSDA等の管轄、そして対日輸出施設が適切に対日輸 出条件を遵守するということの確認等を行いまして、現在、我が国に対しては米国産牛 肉の輸出が可能となっているという状況でございます。 (パワーポイント)  では、全く問題がないのかということではなくて、過去にも幾つかの事例がございま した。つい直近では、今年の1月に公表しておりますけれども、月齢が21カ月齢とい うものについて輸出をしてしまったということが確認されておりまして、このようなも のについては回収等の措置を講じているところでございます。  ただ、ごらんになっていただければわかると思いますが、事故的な問題が大半でござ いまして、基本的なシステム上の構造欠陥というものではないということがおわかりい ただけると思います。 (パワーポイント)  次に、監視指導計画の話をそろそろ始めたいと思います。  輸入食品監視指導計画につきましては、毎年毎年その結果を公表するということにな っておりますので、その公表を行うわけですが、1年間公表を待つというのでは情報の 伝達が遅過ぎるということもございます。このため、私どのもほうでは中間報告という 形で、上半期、下半期の上半期が終了した段階でその情報を提示しております。  こちらにお示ししているのは、今年度の前期分の結果でございます。いろいろと数字 が並んでおりますけれども、昨年が1年間で違反件数が約1,500件。これはDVD でも出ておりましたが、今年の上半期につきましては619件ということで、若干の低 下が見られています。この後でもお話ししますけれども、この減ってきている理由とし ては、18年5月29日に施行されたポジティブリストに対する対応がかなり進んでき ているためと思われます。その数的な変動というものは、この後のペーパーでも出てま いりますけれども、実際の違反の率も下がってきているというところもございます。 (パワーポイント)  検査実績についても若干触れておきたいと思います。  届出重量上位5カ国の検査実績でございます。届出重量でいいますと、米国、中国等、 やはり主要な穀類輸出国等が対象となってまいりますが、現時点では、速報値でござい ますけれども、検査件数といたしましては米国で約1万件でしょうか。中国につきまし ては約5万件等の件数が行われているという状況でございます。  違反件数につきましては中国が223件というようになっておりますけれども、これ は特に増減がないという状況にございます。 (パワーポイント)  また、その上半期の主な食品衛生法の違反内容を分類して記述しますと、このような 表になります。こちらにございますとおりに、やはり規格基準の遵守違反が非常に多い ということでございます。 (パワーポイント)  そして、ポジティブリスト制度に基づく違反の状況でございますけれども、これは下 のカラムのほうをごらんになっていただければと思うんですが、ここに17年度、18 年度、19年度という流れを示しております。17年度対比で見てみますと、ポジティ ブリスト制度を施行した18年度につきましては前年比7.3倍という非常に高い数字 になっております。19年度につきましては前年比0.7倍ということになっておりま すので、若干その数も下がってきているのではないかと考えております。 (パワーポイント)  食品衛生法の規制の中には、輸入者の営業の禁停止の処分というものもございます。 これは、やはり一義的に食品衛生を確保するのが輸入者の義務であるという観点から設 置されているものでございますけれども、厚生労働省では違反の頻度が高い輸入者の方 につきましては、各企業体を単位といたしまして行政指導を行っております。  指導実績につきましては、一番下に書いてございますが、平成18年で45社、19 年で34社でございます。19年の場合にはまだ半期とちょっとの報告でございますの で必ずしも前年と比較できませんが、現時点では34社というものでございます。 (パワーポイント)  輸出国における現地調査の実施事例につきましては、先ほど検査体制の三層構造とい うものをお話しいたしましたが、輸出国に対してやはり調査やまたは二国間協議等を行 わなければならないということがございます。そういうものをどれぐらいやっているの かというものを取りまとめたものが、こちらでございます。 (パワーポイント)  続きまして、平成20年度の監視指導計画(案)についてご説明をいたします。  資料では15ページになります。 (パワーポイント)  輸入食品監視指導計画というものは、大きく分類いたしますとこちらの図にございま すとおり3つに分類されております。まず、届出時における法違反の有無のチェックで す。これは審査におけるチェックでございます。次にモニタリング、そして検査命令と、 大きく分けて3つのポイントがございます。 (パワーポイント)  また、監視指導を行う上で海外の情報に基づく検査の強化というものも大事でござい ます。輸入時の監視業務の中で違反が見つかったものだけを強化するということでは、 その対応にはタイムラグがあることになりますので、海外における食品安全情報の積極 的な収集も行いまして、これを監視指導に反映させるということを行っています。 (パワーポイント)  また、輸出国における衛生対策の推進。  これは、先ほどの相手国における調査、査察等にもございましたけれども、まず、我 が国の食品衛生規制を知ってもらわなければならないと。これは当たり前の話でござい ますが、こういう部分からしっかりやらなければいけないということを計画の中では明 記しております。無論、情報提供に当たっては英文情報も必要になってまいりますので、 このような英文による情報の提供ということも進めなければならないということ。  次のポイントは二国間協議、現地調査。これは、やはり原因の究明、そして相手国の 対策の確認と、または検証というものが必要になってまいりますので、このようなこと も行っていくということ。  そして、最後は輸出国への技術協力というものでございます。幾ら仕組みを理解し、 基準値を理解しても、それが守られているかどうかを検証する能力が相手国になければ、 そのシステムというものは有効に機能しないということになってまいりますので、日本 としては、例えば国際協力事業団を通じまして輸出国への技術協力というものも行って おります。平成20年度につきましては、現在、中国に対する技術協力を計画して検討 しているところでございます。 (パワーポイント)  輸入者に対する基本的な指導事項、これも計画の上では大変重要でございます。  こちらはその抜粋でございますが、まず、輸入者の方にどのようなことを我々が指導 していかなければならないかということを整理をして、そして取りまとめたものがこの 表になっております。検疫所においては、このような表に基づきまして輸入者の方にも 適宜この指導事項を伝えているということになっております。 (パワーポイント)  また、自主的な衛生管理の実施に係る指導というものもあります。  基本的には頭で理解しても、それは実際にデータ的にどうなんだというところも確認 しなければならない。また、問題があったときにどのように対応しなければいけないの かということも知らなければいけないということもございます。ですので、検査の指導 や適正な表示をしなければいけないということ等も含めまして、輸入者の衛生管理の実 施に係る指導を行うこととしております。 (パワーポイント)  また、こちらは行政の対応になりますが、違反が判明した場合の対応。これにつきま しても、先ほどのフローチャートにございましたとおりに、違反が見つかった場合には 直ちにその情報等をしっかりとフィードバックするとともに、流通することのないよう な対応を図るというものでございます。  また、あまりに悪質な事例等が見つかる場合には、これについてはきちっとその告発 も行って、その罰則の適用というものも検討しておりますし、事実、昨年もそのような 悪徳な輸入者に対しましては、厚生労働省としてこのような対応を行うこととし検討し てきたところです。 (パワーポイント)  次に、平成20年度輸入食品監視指導計画の主な改正点でございます。  平成20年度は、件数につきまして、モニタリング計画については約8万件を予定し ております。また、中身については、残留農薬等の残留物質について検査項目の拡充を 行うということ。また、器具、容器包装及びおもちゃに関しましては、昨年過去に検査 をしたものと実際に持ってきている貨物の整合性がとれずに違反となる事例が何件か見 受けられています。ですので、このようなことがないようにモニタリング検査を強化し ていきたいということとあわせまして、輸入者に対してもそこはしっかりと自ら確認を もう1度してほしいということについて、改めて指導をしていく予定としております。  また、先ほど輸入者で違反が多いということについては行政指導を行っていると言い ましたが、このような方についてもしっかりと検査をして、違反となるものが持ち込ま れることのないような管理について指導をしていきたいと思います。 (パワーポイント)  そのようなことを取りまとめますと、次のスライドに書いてございます輸入者等に対 する指導の徹底ということになります。  この指導の徹底の中では、昨年もそうだったのでございますが、中国産食品の問題を 契機といたしまして、全国13カ所の検疫所で全く同じ資料を用いまして講習会を行い、 これによって輸入者等に対する衛生管理の徹底を求めてきたところでございまして、今 年度につきましても同様にこの日程は進めていきたいと考えているところでございます。  短い時間でございましたけれども、内容については以上でございます。ありがとうご ざいました。 【司会(吉川)】  ありがとうございました。  続きまして、基準審査課課長補佐の光岡より、陶磁器等及び乳幼児玩具の鉛等の規格 基準の改正について説明いたします。 【光岡】  厚生労働省の食品安全部基準審査課の光岡でございます。 (パワーポイント)  本日は、「陶磁器等及び乳幼児玩具の鉛等の規格基準の改正」という題名で、30分 ほどお時間をいただきましてお話をさせていただければと思ってございます。  まず、私ども、陶磁器等及び乳幼児玩具の鉛等の規格基準の改正のきっかけになった 事件でございますけども、昨年、皆さんもご記憶が新しいところかもわかりませんけど も、米国産のおもちゃで、そもそも製造工場は中国で製造されていたものでございます けど、アメリカのほうで鉛が検出されて自主回収事例が相次いだわけでございまして、 その後、日本国内においてもそのおもちゃが本社の指示によりまして自主回収をされた という話がございました。さらに中国製の土鍋で、札幌市内で販売されていたその土鍋 で同じように、湯豆腐をある消費者の方がつくって食べられた結果、銀色の灰色の付着 物がべったりと土鍋の内側に張りついていたと。それで、それを消費者生活センターの ほうに持ち込んで調べてもらったところ、非常に多くの鉛が検出をされたというような 話でございます。  こういった話がきっかけとなりまして、私どものほうでも現在の食品衛生法の、陶磁 器でありましたりとか乳幼児玩具の鉛などの重金属の規格基準についても再点検をする 必要性に迫られまして、これはまたさらに後ほどお話をさせていただきますけども、こ うした陶磁器でありましたりとか乳幼児玩具というのは、一般的には国際標準化機構の ほうで規格基準が定められてございまして、多くの国はそのISO規格に沿った形で規 格基準が定められているという状況にあったわけでございます。  当方もこうした陶磁器等について見直しをしてみますと、非常に古いISO規格をそ のまままだ準用されていましたりとか、また、おもちゃについては日本独自の規格であ りました関係もございまして、これだけ国際流通が頻繁になっている関係上、特に輸入 品が多い私どものほうの国内のこうしたおもちゃや陶磁器などについても同様の規格基 準に合わせる必要性があるだろうということで、この整備を図ったものでございます。  それで、今回は鉛を中心に、縦糸に考えさせていただいているわけでございますけど も、陶磁器とか乳幼児玩具のどこに鉛が含まれているのかと申し上げますと、例えば陶 磁器ですと、その陶磁器の上に塗る上薬の中に、実はガラス質の溶融温度を下げるため に鉛を含ませて、溶融温度を下げて釉薬として使っているわけでございます。これは伝 統的にそうした手法を今までも使ってきたわけでございますし、世界的にも同じような 共通の手法が使われてきたわけです。  また、乳幼児玩具については、これは玩具の表面に塗る塗装の部分ですね。こうした 塗装の塗料の中に鉛を入れまして、これは発色をよくする目的で鉛を入れるわけでござ いますけど、特に赤色でありましたりとか黄色のような、こうした非常に鮮やかな色を 出すために鉛を入れるというものでございまして、こういったことをちょっと念頭に置 いてお話を聞いていただければと思います。 (パワーポイント)  ところが、一方で鉛は非常に強い毒性を示す物質でございまして、特にヒトに対して は、一般的には生殖毒性とか神経発生毒性などを有してございます。特に子供に対して は一定レベルの血中濃度で、これは1980年代の研究でございますけども、知能や神 経の発達に有害な影響を与える可能性がある物質でございまして、そのため2004年 に、CODEXと言われるところですけども、FAO/WHO合同食品規格委員会のほ うでは鉛の摂取量削減についての行動規範を定めまして、各国に鉛の摂取量削減の取り 組みを勧めているものでございます。 (パワーポイント)  それで、これは世界的な流れでございますけども、鉛はともに環境中に広く存在して いるわけでございまして、ここには今、「自然に食品などから摂取される」と書いてご ざいますけども、そのほかにも空気でありましたりとか、それから水でありましたりと か、こういったものから人は鉛を体内に取り込む形になるわけでございます。最近は水 道なんかは鉛の管を使うところはほとんどなくなってきてございますし、公共水道では ほとんど鉛管は使われてございません。しかし、そういった鉛の毒性というものを考え て、そうした対策が行われているところでございます。  じゃ、一方で食品からの曝露量というのは大体どれぐらいになるのかということを、 毎年ではございませんけども、マーケットバスケット調査を行ってございまして、この マーケットバスケット調査の結果をもとに試算をしてみますと、これはPTWIと申し 上げますけど、週間対応摂取量といいまして、汚染物質に使われるADIのようなもの でございますけど、これは週間ですから1週間当たりの対応摂取量という形で計算をす るものでございますけども、そのPTWIの大人で大体15%程度、それから、小児で いいますと大体23%程度だということでございます。  これは平均的な曝露量を考えているものでございますので、食事の偏りでありました りとか、そういったものによって当然80%滞留値とか95%滞留値といった値はさら にすそ野を広げるように広がっていくわけでございますけど、そうはいっても大体この 程度でございまして、今のところ、さほど心配される状況にはないわけでございます。 陶磁器なども、実を言うと、これに溶出する曝露量というものを現実問題として考えた 場合には、これはもっと食品に比べると少ないだろうと考えてございます。  陶磁器とかおもちゃからどうやって鉛を人が摂取するかというと、これは食品に陶磁 器などから鉛が溶出をして、その溶出した食品を摂取することによって曝露されるとい うふうな経路が考えられるわけでございます。一方で、しかしながら、先ほど申し上げ ましたように、やはり海外から輸入されてくるこうした製品、海外製品で鉛が検出され る事例が非常に多く報道されているわけでございまして、一般的に言えば、きちっとつ くっていれば、鉛は本来それほど溶出されるようなものではないにもかかわらず、こう したものが出てくると、不良品が発見されるといった事例が相次いだ関係上、鉛の規制 を強化して、こうした不良品を市場から排除していくということが必要になってくるわ けでございます。 (パワーポイント)  これは、現行の日本の陶磁器等の鉛やカドミウムの規制の内容でございます。  それで、陶磁器とかガラスやほうろう引きという形で実は規制を分けてございます。 主に食器とか調理器具などについての規制が行われているわけでございます。  一般に、これらはいずれも共通して言えることは、ケイ酸塩を含む無機化合物を原料 としてございまして、本来なら高温で焼成とかをすれば、例えば陶磁器などで言います と、鉛はほとんど溶出してきません。鉛を多少使っていた釉薬を使っていても、ほとん ど鉛は溶出してこないことがわかってございます。  ところが、不良品の陶磁器みたいなものを、先ほど申し上げました事件があった中国 製の土鍋を詳細に調べてみますと、実は焼成温度が極めて低い不良品であったというこ とが後ほど判明してございますけども、こうした製造工程の中での不良品の中で焼成温 度が甘かったようなもの、こういったものはやはり鉛が極端に溶出するというケースが あるわけでございます。 (パワーポイント)  これが現在のほうろう引き製品の具体的な規格基準でございまして、これは実は先ほ どちらっと申し上げましたけども、ISO規格というものをもとに制定されてございま して、実はこれは1986年――いささか古うございまして、この1986年当時のI SO規格をもとに制定をされてございまして、その後、実は国内での陶磁器等の規格基 準は改正はされてございませんでした。 (パワーポイント)  これは、その1986年のISO規格ができるまでの経緯を少し調べたものをここに 記載してございますけども、もともと1976年にWHOがセラミック製の容器からの 鉛とかカドミウムの溶出を大変危惧をして、ISOに規格の策定を要請したことからス タートをしております。それで、このISO専門委員会のワーキンググループ、TC1 66というのがございまして、このTC166はこのアドホックに設けられたものでご ざいますけども、その検討した内容は、食品と接触する陶磁器製品とかセラミック製品 のガラス製の食器などで検討を開始したわけでございます。  それで、1981年にISO6486というものをつくりまして、このISO648 6の中に食品接触の陶磁器でありますとかガラスセラミックとかガラス食器についての 規格基準を定めたものでございますけども、続いて1982年にはISO7086と。 これはガラス製の中空容器だけの規格を策定したものでございまして、1986年当時 は我が国ではこの規格をもとに規格を制定したというものでございました。 (パワーポイント)  実はその後、陶磁器のISO規格はさらに進んで改正をされてきていまして、これは 1998年になりますけども、ISOのTC107とSC6ですね、ほうろう小委員会 のほうでISO4531というものが出されてございます。それから、同じく1999 年に、先ほどもおっしゃいました1986年のISO6486もさらに改正をされまし て、2000年に至ってはISO7086が改正されてございます。これは、いずれも 鉛とかカドミウムの溶出量をいかに抑えるかというところに力点を置いた改正でござい まして、我が国でもこの新しいISO規格を取り入れるということを今回の目的の改正 にしたものでございます。 (パワーポイント)  先ほど申しましたISO規格の改正された一群のものを新ISO規格と呼んでござい ますけども、これを食衛法の中にいかに取り込むかということを今回は目指しているも のでございまして、国際的に統一された規格設定を我が国の中の食品衛生法の規格基準 の中に取り入れるということでございます。  そのために、平成16年度から平成17年度に厚生労働科学研究のほうでその取り入 れ方についての検討を行いまして、問題点を洗い直して検討をさせていただいたという ものでございます。 (パワーポイント)  それで、その結果が今回の改正案という形になるわけでございます。上のほうが現行 法の、先ほど申しましたものを再掲したものでございますけども、下のほうがさらに新 しい今回の改正案でございまして、これはちょっと色はわかりにくいかもわかりません けども、同じものといいますか、カドミウムの部分で同じものがあるのが一部残ってご ざいますけども、黄色の部分とか赤の部分を見ていただきますと、黄色の部分は2分の 1からさらに規制を強化したというところでございます。 (パワーポイント)  今度は、おもちゃの改正の部分でございます。  先ほど、陶磁器のお話の中で、釉薬の中に鉛を使って使うんだというものをご説明申 し上げましたけど、おもちゃの部分で問題になってくるのは塗装の部分だというふうに お話をさせていただきました。  それで、おもちゃの鉛の規制をしようとする際に、これは食衛法の規制の範囲という のをもう1度見直してみますと、非常に古い規制でございまして、このおもちゃの規制 の範囲を定めたのは昭和47年ぐらいでございまして、おおよそ大分たちますけど、三 十数年たっているんだと思いますけども、当時のおもちゃを想定してその規制の範囲を 定めたものでございますので、現在のその乳幼児を対象としてつくられているおもちゃ の範囲といささか範囲が異なってきているということもございまして、このおもちゃの 範囲の規制も今回あわせて改正をさせていただくというものでございます。  食品衛生法のおもちゃの規制の根拠条文となってございますのは、この食品衛生法の 第62条というものでございまして、この食品衛生法第62条はおもちゃについての準 用規定を定めているものでございます。したがって、これによって有毒・有害なおもち ゃの製造とか販売とか輸入を禁止することができる形になってございます。また、規格 基準を定めることができる形にもなっているわけでございまして、それで、「乳幼児が 摂食することによりその健康を損なう恐れがあるおもちゃとして厚生労働大臣が指定す るもの」というものの中で、おもちゃの規制の範囲を定めているものでございます。  また、必要な企画基準については、そのおもちゃまたは原材料の規格でありましたり とか、おもちゃの製造基準を定めているというのがおもちゃの規制の概要でございます。 (パワーポイント)  先ほど言いましたように、2点、今回はそのおもちゃの改正についてお話をさせてい ただく形になるわけでございますけど、まず1点目は指定おもちゃの範囲の改正でござ いまして、先ほど、指定おもちゃというのはこれで、この外に出てしまいますと食品衛 生法の規制の外になってしまうわけでございますけども、その範囲をなるべく広く規制 をするということを念頭に置きましたものですから、材質による限定がされていた現行 の規制を廃止いたしまして、それから、さらに最近多く販売されてございます知育玩具 のようなものとか、それから、指定おもちゃと組み合わせて遊ぶようなおもちゃですね。 例えば、ここには例として家具を示してございますけども、人形と一緒に遊ぶハウスの ようなものであるとか、家具のようなものであるとか、それから、乗り物おもちゃで一 緒に遊ぶレールのようなものであるとか、駅舎のようなものであるとか、こうした附属 玩具みたいなものもあわせて規制の範囲の中に入れるというものでございます。  さらに、金属製の玩具アクセサリーについても、一昨年ですか、アメリカのほうで4 歳児のお子さんが靴の頒布品といいますか、販促品で配られたアクセサリーを誤って飲 み込みまして、それで鉛中毒による死亡があったという事例もございまして、したがっ て、こうしたことも踏まえまして、金属製の玩具アクセサリーといったものも食衛法の 中で規制をしていこうというものでございます。 (パワーポイント)  これが指定おもちゃの範囲の現在の姿でございまして、◆で指定が大まかに4つほど に分けてございますけども、まず最初のほうは、乳幼児が口に接触することをその本質 とするおもちゃのものでございますけども、これは例えばラッパのようなものであると か、それから、歯固めといいますか、そういったようなものですね。乳幼児が直接口の 中に入れるということを前提とするおもちゃですね。こういったおもちゃを想定してい るものでございまして、ただ、これは今現在のところ材質規制があるわけでございまし て、紙とか木とか竹とかゴムといった、こういった材質規制を前提のものでなっている わけでございます。 (パワーポイント)  したがって、例えば近年、こうした材質以外のもの、布製のようなものでこういった 物をつくりますと、これは現行の規制の中では食品衛生法の規制の外という形になって しまうわけでございまして、こういったこともございますので、食品衛生法の規制の中 で読み込めるような、こうした材質の規制を取っ払うというものでございます。この材 質規制を取っ払いますと、この改正案の形になるわけでございまして、乳幼児が口に接 触することをその本質とするおもちゃという、単純にこういう形になるわけでございま す。  それから、材質規制を取っ払いましたので、例えば写し絵とか折り紙とかのようなも の、積み木みたいなものは個別に出してあったわけでございますけど、材質規制を取っ 払いましたので、これは限定列挙のおもちゃの中にこれを含めてということになったわ けでございまして、加えて玩具アクセサリーであるとか知育玩具といったものをこの規 制の中で取り込むという形にさせていただくものでございます。 (パワーポイント)  2点目が、この規格基準の改正でございまして、今回は鉛等の重金属の規制をすると いうことも念頭に置いたものでございまして、従来は、実を申し上げますと、具体的な 規格基準のあるのは塩化ビニール樹脂塗料しかなかったんですね。これはなぜかといい ますと、昭和47年当時にこの規格基準がつくられているものでございますけども、そ のおもちゃが合成樹脂製のおもちゃであったりとか、こうしたものの中心が塩化ビニー ルでつくられていたのが主であったわけでございますけども、最近はそういった材質の 範囲というのは大きく広がりまして、むしろ現在合成樹脂でつくられているおもちゃは、 どんどん塩化ビニール樹脂というのはほとんど使われていないという状況になってきて ございます。したがって、これをすべての塗料を対象とするように改正をさせていただ くということの改正をするものでございます。  さらにおもちゃについては、現在国内で製造されているということはほとんどござい ませんで、大部分が輸入されているおもちゃでございます。製品の形でそのまま輸入さ れてくるという形でございまして、したがって、例えば試験をしようという場合には、 その試験対象を製品に対してしませんと、現行の規制の中では塗料に対してするという、 つまり原材料に対してするというような試験対象になっていましたので、これを実態に 合うように製品を対象とするおもちゃにさせていただくということによって、より円滑 な検査が可能になるようにさせていただくというものでございます。 (パワーポイント)  それから、これが重金属とか砒素とかカドミウムの溶出規格でございますけども、鉛 の検査って重金属の試験でやっていたわけでございますけども、規格基準そのものをI SO規格に基づいて設定するというものでございます。 (パワーポイント)  さらに、これは、乳幼児が飲み込む可能性のある大きさの玩具アクセサリーについて は鉛の規格を設定すると。これについてもISO規格と同等の規格を設定するというも のでございます。 (パワーポイント)  具体的にはどんな規格を設定するかと申し上げますと、改正前と改正後でございます けども、現行の食品衛生法の試験は、40度の水で30分放置をいたしまして、鉛等の 重金属を試験液に溶出させるという方法をとるわけでございます。しかしながら、鉛等 の重金属は、正直申し上げますと水ではほとんど溶出してこないんですね。したがって、 この値としては、鉛として1マイクログラム/ミリリットル、これは試験溶液1ミリリ ットル当たりの鉛の含量でございますけども、この含量、非常に厳しいように見えます けども、実際はほとんどこれによって溶出するということはあり得ないだろうと思いま す。  一方で、今回の改正をするほうは0.07モルの塩酸を用いまして、これは強制溶出 させる方法なんですね。これで37度で振とう1時間するということによって、塩酸で 溶出させて機器分析ではかるというものでございます。こうした溶出試験で鉛をはかり ますと、これはどちらかというと、値としてはこの90ミリ/キログラムと、これは玩 具の材質1キロ当たりの溶出量の上限という形になっていますけども、具体的には塗装 の部分を削って、その部分について塩酸の中で溶出させて試験をはかるという方法をと るというような、そうした試験法になるというものでございます。 (パワーポイント)  それにあわせて、調理器具とか容器に使われている金属の鉛の含有量の規格も改正を する形をあわせて提案をさせていただいているものでございます。  主要な金属の鉛含有量の規格は、現在のところ10%未満という形になってございま す。これは実はほんとうに高い値でございまして、実際こうした器具とか容器が国内に 流通しているという状況ではございません。現在は大体JIS規格に合致しているもの のレベルがほとんど国内に流通しているものだろうと思いますけども、これは鉛が大体 0.1%以下での金属の基準が定められておりまして、今回食衛法の規格基準について も、こうした流通実態といいますか、現況を十分考慮いたしまして、鉛の含有量を大幅 に引き下げさせていただくというものでございます。  鉛の含有量のこうした規格は、私どもも1回調べてみましたけども、明治30年代の 非常に古い企画がいまだに残っていたような状況でございまして、こういったことも現 在の鉛の規格基準の改正にあわせて、より実態に合うような規格基準の改正を行うとい うものでございます。  メッキ用のすずでありましたりとかハンダの含有量の規格、これは食品の食器などに 使われているハンダとかメッキ用ということでございますので、食品と直接接触するよ うな金属についての含有量の規格を強化するというものでございます。  これで私のほうの話を終わらせていただきますけども、全般論といたしましては、縦 糸の軸としてはこうした食器でありましたりとか調理器具の鉛の含有量の規格をより強 化するというものでございまして、主にそれは陶磁器とかガラス製のもの、それからほ うろう引きのようなもの。それから、おもちゃの規格基準の改正としまして、おもちゃ の現行の規格規制の範囲を大幅に広げるというものと、それから、おもちゃの鉛等の規 格基準をISO国際標準化機構のISO規格に沿ったものに合わせるといった点が、今 回の改正の中心となるようなものでございます。  以上でございます。 【司会(吉川)】  ありがとうございました。  続きまして、基調講演に入らせていただきます。  まず初めに、株式会社アジア食品安全研究センター技術顧問の佐藤様より「中国にお ける食品安全管理体制(残留農薬検査を中心として)」についてご講演いただきます。  ここで簡単に講師の経歴をご紹介させていただきます。  佐藤様は、東京農工大学大学院農学研究科農薬科学専攻修士課程を修了され、その後、 昭和電工株式会社に入社し、農薬残留分析法開発研究、農薬の分解代謝研究、農薬技術 普及業務などに従事されました。退社された後、財団法人雑賀技術研究所、和歌山大学 客員教授、南京農業大学理学院客座教授などを経まして、現在、株式会社アジア食品安 全研究センター及び青島中検誠誉食品検測有限公司技術顧問及び瀋陽農業大学食品学院 兼職教授をお務めでいらっしゃいます。  それでは、どうぞよろしくお願いいたします。 基調講演 【佐藤】  ご丁重なご紹介、ありがとうございました。  皆様こんにちは。ご紹介いただきました佐藤でございます。  いただきましたテーマは中国における食品安全管理体制ということで、雑駁な話にな ると思いますが、ご紹介させていただきます。 (パワーポイント)  まず、私がほぼ毎月行っている青島の中心地、いわゆる新市街といいまして、旧市街 が旧ドイツ領ですので、いわゆるヨーロッパ風のれんがづくりの建物があって植え込み がいっぱいあるんですが、新市街のほうは非常にショッピングに便利なようになってお ります。  観光案内ですので、これがクラウンプラザといいまして、青島の市街では一番背の高 さも高いし値段も高いホテルでございまして、これがマイカル。スーパーというか、シ ョッピングセンターみたいなものです。このクラウンプラザの向こう側にジャスコがあ りまして、ジャスコで買い物をなさる中国の方は比較的裕福な方が行かれると。比較的 高級なものを売っている。もうちょっと向こう側に行きますと、この辺にカルフール。 これがマイカル、ジャスコ、カルフールということで、買い物するには非常に便利なと ころでございます。  そして、これが街灯ですけども、これがずっと、夜中の2時、3時でも新聞が読める ぐらい明るくついておりまして、お客さんと一緒に飲みに行って、2時ごろふらふら酔 っ払って1人でホテルに歩いてきても何ともないと、非常にきれいな明るい町でござい ます。 (パワーポイント)  これは日曜日の朝でございまして、ちょっと見にくいかと思うんですが、片側三車線 ありまして、手前にバス道路があって、さらに普通の歩道があるということで、非常に 道路も広くてきれいでございます。それがウイークデーの通勤時間帯になりますと、片 側三車線のところに車が4台、5台というふうにきっちり入りまして、お互いにクラク ションを鳴らし、場合によってはハザードランプをちかちかやりながらお互いに先を競 うと。  行かれた方はご存じのとおり、横断歩道も信号もほとんどございません。そこでどう するかというと、車にちょっとでもすきがあると、そこへそろっ、そろっと人が出てく ると。車のほうもぶつけたくないもんですから、スピードをおろすとさらに人が入って くるという状態で、車の間を人が縫って中心線まで行きます。同じように左右をきょろ きょろ見ながら、車のスピードの遅そうなのがいると、そこへわっと飛び出していくと いうことで、渡っていくということで、ちょっと見にくいかもしれませんが、この辺に 人がずらっと並んでいるのが映っていると思います。こんな状況でございます。 (パワーポイント)  そして、ちょっと郊外へ行きますと、今まであったれんがづくりの平屋の民家が、い ろんなマスコミなんかでもごらんになっているかもしれませんが、政府の計画によって たちまちブルドーザーで壊されて、広場になると同時に、こうしていわゆる高層のマン ションがどんどんできていると。これはもうできて住んでいます。これも住んでるかな。 これが内装工事中で、これが今建設中と。この裏にもう1本クレーンがあって、またや っているという状況でございますし、行くたびに私を迎えに来てくれる車のルートが変 わる。えっ、こんな道、いつできたの? みたいな感じで、どんどん変わっていくと。 ものすごい勢いで発展していっています。  特に北京オリンピックに向けて、今年の8月でございますが、青島はヨット会場でご ざいます。外国人が大勢来るということで、外国人の目に触れそうな薄汚いところが全 部きれいに直っています。まだまだそういう工事が進んでおりますし、青島の空港もタ ーミナルビルのすごいきれいなのが2つできちゃいました。そんな状況でございます。 (パワーポイント)  観光案内はこのぐらいにして、実際に輸入食品、中国と日本の関係ということで見て いただきますと、生鮮野菜の輸入量、大体100万トンぐらい輸入をしておりますが、 そのうちの59万トンが中国製でございます。日本の生鮮食品の約6割は中国から来て いるということで、まず日本の生鮮野菜の供給元は中国であるぞと。 (パワーポイント)  そして、一方中国ではどうかというと、農産品の輸出市場の構造ということなんでし ょうけれども、2004年でごらんいただきましても日本向けが33%、そしてEU、 韓国、アメリカ、香港、アセアン、その他ということで大体10%ずつということで、 日本向けが非常に突出をしております。そういう意味では、農産品の輸出相手国として 中国にとっても日本は非常に重要な国でございます。そういう意味での農産品の日中関 係ということをご認識いただければと思います。 (パワーポイント)  これは、もうお忘れになったかもしれません。忘れっぽい日本人ですので。2002 年の例の冷凍ホウレンソウのクロルピリホス事件のいきさつが書いてございます。ある 民間検査団体が中国の冷凍ホウレンソウからクロルピリホスが残留基準値を超えて出て いるぞということをすっぱ抜きまして、それから検査してみると、なるほど、当時冷凍 ホウレンソウの残留基準値は0.01ppmでしたけども、検査すると0.3ppmあっ た。ああ、30倍だと。0.7ppmあった。ああ、70倍も出たということで、マス コミで来る日も来る日も報道され、輸入している商社さんその他が新聞に謝罪広告を出 すというようなことがどんどん続いてしまったわけです。そんなこともこのポジティブ リスト制度に大きな影響があったと。  いろいろあったんですが、最終的にはこの辺ですね。中国も困り果てまして、そこで 日本向けの冷凍食品を輸出する企業を登録制とすると。登録条件として、1社であるい は1組織で20ヘクタール以上の農地を管理できること。そして、そこに農薬の専門家 を張りつけて、農薬の使用方法あるいは管理方法についてきちんと指導できること。そ して、さらにガスクロその他の分析機器をもって残留農薬の検査が自社できちんとでき ること。そして、その検査記録を全部保存しておくことという条件をつけまして、当局 の立ち入り審査がありまして、そして合格したところだけ、まず最初に27工場ですか、 それから18工場ですか、これを許可すると。ここ以外は日本向けに輸出してはならな いということになりまして、この騒ぎも収まったといういきさつがございます。 (パワーポイント)  中国国内では、一番上に書いてあります国家質量監督検験検疫総局――質検総局と言 ったり、AQSIQと言ったりしておりますけども、ここだけが全部国家公務員でござ いまして、全部で3万5,000人いらっしゃると聞いたかな。それが全部、北京政府 から一貫して、例えば青島のCIQの職員まで全部国家公務員です。それ以外は、北京 に政府がありまして、そこの職員。そこの意向を受けて、あるいは指示を受けて、省だ とか市の政府が実施をするといったような状況になっていると、こういうものです。 (パワーポイント)  実は中国では、1998年ぐらいだったと記憶しておりますが、香港だとか上海でい わゆる毒菜事件というのが発生しました。野菜を食べた人が食中毒を起こした。亡くな った方もいるようなふうに聞いておりますけれども、そんな事件があった。実は、普通 に栽培のときに病害虫の防除に農薬をまいて、それが残っていたものを食べたのではこ んな事件は起こらないんです。これは、収穫後の農作物のさらに病害による劣化を防ぐ ために、栽培する人が出荷直前に高濃度で農薬を散布する、あるいは、ひどい場合には 原液にざぶっとつけたものを出荷するというようなことがあって、それを食べた人が被 害に遭ったということのようです。  そんなことを受けまして、いろいろな残留基準値をかなり厳しいものをつくっており まして、特に食用油であるとかスイカだとかは検出してはならないとか、それから、0. 005ppmあるいは0.01ppmを基準値とするというような、かなり厳しい基準 値がいろいろつけられております。 (パワーポイント)  そして、そういうようないわゆる公害事件でしょうか、そういうことを起こさないよ うにということで、2001年に国務院が無公害食品行動計画というのを立てまして、 実施部隊として農業部、日本で言う農林水産省、ここを指定していろいろとやっており ます。  そして、この農業部が農産品質量安全法――これは後でもう1度出てきますけども、 それを制定しまして、18種類の農薬の使用禁止、それから9種類の農薬の使用制限と いうようなものを実施したり、監視指導の強化をしたり、そして、政策的に無公害食品 の栽培、生産に対して政府が、農業部がいろいろと支援をすると。さらに北京、天津、 上海、深せん、この4つの都市にモデル地区を設けて、そこでこの運動を推進するとい うことで、これは国民の支持を受けて、周辺にどんどん広がっていくということのよう でございます。 (パワーポイント)  これはその基準値です。 (パワーポイント)  ごらんいただいてそのとおりですけれども、無公害食品というのが、日本で言うと慣 行栽培というんでしょうか、いわゆるギャップ、GAP、ちゃんと決められたとおりに 農薬を使っているというのが無公害食品。そして、緑色食品というのが減農薬栽培。で、 有機食品ということで、大都市の大型量販店へ行きますとこの緑色食品コーナーという のがございまして、中国の方もお金持ちの方がここへ集まって買っていらっしゃるよう でして、かなり人気のようでございます。 (パワーポイント)  これは、毒性の強い有機リン系農薬について3段階で規制をしていこうということで、 これは2004年に農業部から出たんですけれども、メタミドホス、パラチオン、パラ チオンメチル、モノクロトホス、フォスファミドン、これについて2004年1月に製 剤登録は抹消すると。翌年には使用を綿花、水稲、トウモロコシ、小麦に限定すると。 そして、2007年から全面使用禁止ということで、高毒性の農薬をどんどん駆逐しよ うということをやっております。 (パワーポイント)  これが2006年11月1日にできた、中国では初めての農作物そのものに対する安 全法でございます。  ここの第2章のところにありますように、これは強制的で罰則があるということでご ざいます。例えば汚染された地域で栽培してはならないとか、いろいろなことが決めら れておりまして、この一番下、罰金刑がございまして、ちょっと古い話ですけれども、 中国の農家でお金持ちの、日本で言うと豪農に相当するところを万元戸と。年間1万元 の収入がある農家、これはお金持ちの農家であると。今ですと1元あたり十六、七円で しょうか。ですから、16万とか17万円の年間所得のある農家というのは大富豪の農 家であるぞと、こんな言葉がございますが、その万元戸じゃなくて、これはひどい場合 には2年分の収入が罰金として出るというような、非常に厳しい法律でございます。 (パワーポイント)  これはたしか上海だったと思いますが、市場でございます。  この白菜とカリフラワーの大きさを比べてみてください。ものすごくでっかいカリフ ラワーですし、キュウリなんかもこうして花がついて、非常に鮮度のいい、きれいなも のがずらっと並んでいます。  これがハミウリで、1個で20元しないんですが、半分で10元とか8元で売ってい て、半分買ってくるとホテルの冷蔵庫へ入れて1週間ぐらい、私、楽しめます。結構お いしいメロンの仲間です。 (パワーポイント)  これは果物屋さん。 (パワーポイント)  これは青島の市外で見たんですけども、魚屋さん。こうして生きたまんま売っており ます。 (パワーポイント)  本論ですが、日本に向けての輸出ということで、冒頭に見ていただきましたように、 中国の農産品の33%近く、30%以上は日本向けなんです。日本が断トツなんですね。 そこで、日本が農産品に対して非常に厳しい基準値を設けて、それを施行を始めるとい うことで、中国は大変な騒ぎになりまして、緑色関税障壁だということで、私、随分中 国の人に言われました。緑色というのは安全なんですね。で、その安全に名を借りた先 進国による非常に難しい基準を決めておいて、発展途上国の農産品を締め出すという、 それは不法な非関税障壁に当たると、緑色関税障壁だと随分言われましたけれども、と は言いながら、日本向けに輸出しないわけにいかない。そこで、いろいろと努力をして おります。 (パワーポイント)  日本としても、2002年のクロルピリホス事件のようなことを起こしてほしくない ということもありまして、先ほど冒頭のお話にもありましたけども、二国間協議その他 で政府関係の方も十数回中国に出かけて、いろいろと説明会をしたりしております。  そして、その下のほう、民間でもいろんな方、いろんな団体が中国に出かけ、あるい は呼ばれていって、ポジティブリスト制度がこうなりますよ、だから、気をつけてくだ さいというような説明会をいろいろやっています。ここに出ているのは私が関係しただ けですけども、4回行っています。  一番上の国外食品安全法規培訓班というのは、要するに勉強会。これは当初、私の所 属している青島誠誉食品安全研究所が日本と関係のある企業を約五、六十社集めて勉強 会をやろうかなと思って始めたんですが、それがどんどんどんどん上に上に吸い上げら れちゃいまして、とうとう最後には商務部と質検総局が主催であって、おまえたちは手 伝えという話になっちゃったんですが、実際にしゃべっているのは私なんですけれども、 実際にふたをあけてみますと、1,300人集まったそうです。座席はもちろんいっぱ い、真ん中の通路も両側の通路も後ろもいっぱい立ち見ができて、さらに入れない人は 廊下の外でドアに耳をつけて聞いているというような状況にまでなって、非常に熱心で した。  それをやったすぐ後、今度は地元の山東省のほうからもう1度来いということで、青 島と烟台で説明会をやりました。で、「おまえ、中国まで来てんなら、ついでに北京へ 来い」ということで、農業部の蔬菜研究所のリュウ主任に声をかけられまして、北京の 蔬菜研究所でも話をしました。  翌年2006年11月1日は、中国の農学会が南昌市でやっていますので、そこへ来 いと。旅費も払ってやるし、滞在費も払ってやるということで、ただなら行こうかとい うことで出かけたんですけども、行きまして説明をしたということで、この中国農学会 のときには日本からは私、それから、EUから1人来ていまして、EUのポジティブリ ストと日本のポジティブリストの説明をしまして、そのときは中国各地のいわゆる試験 場の主任クラス、副主任クラス、かなり偉い人たちばかり集まっていましたけども、熱 心にメモをとっていました。 (パワーポイント)  これは烟台での風景写真でございます。私の写真なので、あんまりうまく写っていま せんけども。 (パワーポイント)  一番下に書いてあります日本肯定列表制度、これがポジティブリストですね。うまい 字を当てはめたなと思いますけども、その日本のポジティブリスト制度の対策に対する 緊急通知というのが出ておりまして、それによると、日本向けの主要な蔬菜に対しては、 19種類の農薬――この上にあるやつですね。この19種類の農薬について、23種類 の作物について、それぞれ重点的にこういう農薬を検査しておけという指示が出ており ました。 (パワーポイント)  これは上海のCIQのものだと思いましたけれども、日本向けのお茶についてはこう いう農薬を検査しておけという指示が出ていました。 (パワーポイント)  それから、これは山東省。ですから、青島と烟台のCIQを持っているところですけ れども、そこの通達ですね。日本のポジティブリストと、それから1年前に導入したE Uのポジティブリスト、これに対して積極的に対応しろよと。そして、日本やEUの動 き、内容、その背景、実態を把握して、そして、その影響を分析して冷静に対処しなさ いと。  そして、その次のところですが、中国国内でどういう原材料、どういう副材料を使っ ているか、どういう農薬、どういう動物薬を使って、その残留値がどうなんだというこ とを真摯に調査して報告しろと。  そして3番目。中国の企業の自社管理体制を強化しろ。それから、検疫局であるCI Qの管理体制、能力を高めろということが出ています。  一番下の(4)のところですが、計測技術を日本の技術に合わせろというような指示が出 ております。 (パワーポイント)  これはその結果のほうですけれども、ポジティブリストが導入されて約半年の間の違 反事例でございまして、従来の基準値、クロルピリホスの違反だけでございまして、こ んなものが出ています。  それから、ポジティブリスト制度になりまして暫定基準値がいっぱい増えました。そ れに触れたものがビフェントリン以下、この4つの農薬。  そして、一律基準値。日本の常識から言うと、本来だったらあり得ない、こういう農 作物にこの農薬を使う可能性はほとんどないよねというようなものについては、一律基 準値0.01ppmですそ切りをするというか、それを一律基準値としたわけですが、 それに触れたものがこんなものがあります。  一番下にありますように、従来の基準値を違反したものが14%。しかし、この一律 基準値を超えたものが大部分であると。で、マスコミその他によりますと、ポジティブ リスト制度が導入されてから中国の輸入野菜の違反が増えたみたいな書き方をしている のをおやおやと思って見たことがありますが、違反が増えたというよりは、むしろ日本 のハードルが高くなったと。で、この一律基準値でひっかかるものが多くなったという ことだと思っております。 (パワーポイント)  この監視指導結果の抜粋なんですが、平成19年の7月、昨年の7月に出たものから 私が勝手に抜き出したものですけれども、残留農薬は、やはり中国から圧倒的に農作物 が入ってくるわけですから、中国の違反が多かった。そして、冷凍食品だとか魚肉関係 ですと中国、それからタイ。それから、添加物になると中国、アメリカ。そして、いわ ゆる肉関係ですとベトナムが増えてくる。  一番下は、これは穀物関係ですけれども、特にアフラトキシン、カビ毒ですが、アメ リカが中国の3倍以上です。ところが、私の思い違いかもしれませんが、なぜかこの一 番下のアメリカの穀物がカビ毒に汚染されているなんて記事はめったに見ません。中国 の農作物から農薬が1つでも出ると新聞のトップ記事になっちゃうんですけども、この 辺は出てこない。何か中国に対してマスコミの考え方、扱いが違うようなふうに、私は 勝手にひがんで見ています。 (パワーポイント)  それで、これは国別の違反率。これも私が勝手に抜き出したものですけれども、やは り届出件数からいうと中国が断トツ、57万8,000件ぐらいですね。そこから9万 1,000件ぐらいを検査して、違反が530件、違反率が0.6%。アメリカはその下 ですね。19万7,000件ぐらいあって、違反率が1%ということで、中国のものが ものすごく違反が多くて汚れているというふうに、日本の一般消費者は思っているかも しれませんが、どっこいそうではなさそうだなというのがこの数字でございます。 (パワーポイント)  中国国内は、ご存じのとおり、今年北京オリンピックなんです。今までは、まず外貨 獲得のために、輸出物に対しては非常に国内でも神経を使って厳しい措置をとっており ました。国内のほうはなかなか手が回らないという状況であったのに、何とオリンピッ クで外国の人たちがぞろぞろ中国へ来ちゃうんです。しかも中国国内でいろんなご飯、 いろんな食事をしちゃうんです。これは中国国内のものは後回しってわけにいかなくな っちゃった。そこで昨年、大慌てでと言うとこれはちょっと言葉が過ぎるんですけども、 5つ安全対策を矢継ぎ早に立てました。  それの1つ目が3月1日、農薬残留等の検査方法36項目を国家標準、GBとして正 式に使用開始をしたと。それまでに、能力のあるところは一部取り入れていたんですが、 中国国内の検疫所によって検査方法が違っていると。ECDのガスクロしか持っていな いところは、LCマスで分析しないと感度が上がらないようなものは分析できないとい うような状況にあったんですが、中国全部、一律にLCマス、GCマスを入れてきちっ とやりなさいということで、この一番上の「蔬菜・果物中の残留農薬等500種」とあ りますが、これは日本のポジティブリストの通知法とほとんど同じでございます。私は そのものを手に入れて見ていますけれども、中国語なので飛ばし読みしているんですけ ども、大体そっくりだなと。ですから、日本の通知法がそのまま中国の国家標準、肯定 法になっちゃっている。これに従って分析をしろというような指示が出ております。  ガスクロやガスマス、LCマスを使った一斉分析法、そして、欧米や日本の検査にお ける要求、要するに検出下限値を満たせということが出ております。 (パワーポイント)  そして、2つ目。これが質検総局から出ているわけですけれども、CIQシール。要 するに検疫所で検査をした場合に、検査合格証を張れと。検疫所、CIQと言うんです が、そのCIQというシールを張れと。シールを張っていないものは税関で輸出の手続 そのものをしないということですから、輸出する場合には全部CIQ・検疫所で検査を して、その合格証を張ってないものは一切輸出できないということになったわけです。 (パワーポイント)  それから、3つ目。これが中国の国家の第11次五カ年計画というのが出されたわけ ですが、それに従って、食品、薬品、外食衛生、これについても国家食品薬品安全十一 五規画と。第11次五カ年計画というのが出されました。  おそらく日本でも、私、間違っているかもしれませんが、20%検査していないんじ ゃないかと思うんですが、中国では5年後には90%の食品を検査すると。そして、も し何らかの食中毒事件とかがあったときには、100%完全に対処するというような方 針が打ち出されております。 (パワーポイント)  4つ目。これは国務院から出たものでございまして、食品等の生産物の安全監視管理 強化に関する国務院特別規定というのが出されました。これは、従来の食品安全法だと か農産物品質安全法だとか、いろんな法律がありますけれども、そういうようなものを 全部ひっくるめて、その谷間のものも全部埋めちゃおうと。  で、ここの重点は上から2つ目のところ。生産経営者、監督管理者、地方人民政府の 責任を明確にして、その監督管理部門の連動性を高めるということでございまして、要 するに谷間を全部埋めちゃうことと、それから、地方の政府役人が目こぼしをしちゃっ て、あるいはうっかりして通してしまったら、その役人に責任を問うと。だれがこれを 通したんだ。通した人の名前を公表するぞ。名前を公表されますと、その人はそれでお しまい。昇給も昇進もあり得ない。悪質であるとみなされると降格、もっと悪質だと除 名するというようなことで、ほんとうの現場の農家の人たち、場合によってはまだ細か いラベルの字まで読まないで勝手にやっちゃう人たちがいるわけですから、そこを押さ えることはできないので、一番上の管理監督するところをがっちり押さえちゃうという ような手に今出ております。 (パワーポイント)  これが5つ目。これが一番新しいんですが、12月26日、つい最近ですね、全人代 の常務委員会で審議されているようです。11項目の禁止事項がございまして、もちろ ん禁止物質が混ざっていたり、そういうものを使ったものはだめよと。それから、原因 不明で死んだり、毒死したり、とにかく死んだ動物の肉を加工したり売っちゃだめだよ というような、そんなものがいろいろと入っておりまして、11項目禁止するというよ うなのがいろいろと出ております。 (パワーポイント)  中国政府としてはモニタリング強化。20%今やっているそうですけれども、1つ違 反が見つかると50%にすると。2回やると100%検査をすると。  それから、仮に日本に輸出されたものが日本の検疫所でひっかかったとすると、その 情報を手にして中国国内でその企業名を公表すると。そして、中国国内で、その企業は 日本向けの輸出を禁止するという措置にできます。  そして、輸出するものは必ず検疫して合格したという、このCIQマークを張れとい うのがこの中国の措置でございます。 (パワーポイント)  日本ではどうしているか。中国で昨年、5つの新しい規制をいろいろと矢継ぎ早にや りました。CIQマークというのは中国の検疫所で合格証ですからいいかというと、日 本はどっこいそうはいかないよと。中国がどういう対策、措置を講じられようと、日本 は日本なりに独自に従来どおり、淡々と検査をしまっせというのがここでございます。 (パワーポイント)  これは宣伝ですけど、これの真ん中に私が写っていますが、これは中国の私どもの研 究所でございまして、2003年に日本の企業の約20社が出資をしてできた研究所で すが、そこに中国の政府系の資本が今20%入ってきております。日中合作の研究所で ございまして、例えば青島のCIQで手に余るような多成分一斉分析で400成分やっ てくれみたいなのが来ると、こっちへ回ってきちゃいます。中国のCIQの下請なんか もやっておりまして、年間1万件弱、ひどいときは1日100件CIQから持ってきち ゃうもんで、ええっ? という話で、徹夜でやるというようなことで、今いろいろとや っております。 (パワーポイント)  これは私どものこの研究所で1年間やった実績でございまして、違反している、して いないということではなくて、こんな農薬がこんな割合で出ているよということで、上 のほうの3つ、4つを見ていただきますと、全部いわゆるピレスロイド系の農薬でござ います。急性毒性は低くて、選択性が高くて、比較的使いやすい、今世界各国で使って いる、日本でももちろん増えていますけども、こういうものが多く検出されています。  そして、大体この中でとにかく何らかの農薬が検出される、違反している、していな いは別として、というのは大体1割ぐらいでございます。違反しているのは一、二%。 ですから、これはこの我々の研究所へ来た時点で、日本向けに出ていけないとはねられ ちゃう。これが日本向けに出ていかないのは、日本が一番厳しいですから、日本向けで だめだったら、じゃ、アメリカに回そうか、あるいはEUに回そうか、あるいは韓国に 売ろうかというようなことになるんだと思うんですが、そんなふうになります。検査し た農薬の件数からいきますと0.05%ぐらいです、違反があるのは。 (パワーポイント)  まとめでございますけれども、冒頭に申し上げたように、日中双方の農産物の貿易と いうのは非常に重要な問題でございます。中国の消費者も安全意識が今どんどん増えて きております。そして、中国では例の文化大革命という非常に不幸な事件がございまし て、いわゆる文明、文化、知識、こういうものはほとんど否定をされてしまって、肉体 労働が最も崇高なものであるというような運動で、大分中国の中がかき回されてしまっ たんですが、それが終わってから、今度は価値観が変わってきまして、黒い猫でも白い 猫でもネズミをとる猫はいい猫だと偉い人がおっしゃって、結果がよければすべてよし と、手段は選ばないみたいな話になってきて、拝金主義的な状況になってきた。とにか くもうける人が偉いんだみたいなことになっちゃった。それはまた困るということで、 今それの修正ということで政府が一生懸命努力をしております。  そこへきて、ポジティブリスト制度。オリンピックで外国人がどっと中国へ来てしま う。中国の食材をそのまま彼らが食べるとえらい騒ぎになる。さらに2年後、上海万博 ということですので、今これを外圧としてうまく利用して、何とか中国の国内のいろい ろな制度を改革していこうということで、それが5番目ですね。  そして、それをするために、中国はご存じのとおり共産党の1党独裁でございます。 ですから、いろいろな指示に反するものは反国家的な運動だというような扱いを受けて しまうということで、非常に行動力も強いですし、強制力もある。ですから、決めたこ とはすぐ実行できてしまう。これはすごいことです。そして、そのために非常に速いス ピードで変化していきます。  ちょうど今の中国の状況、公害問題を見ても、モラルを見ても、いろんなものを見て も、ちょうど日本の昭和三十八、九年ぐらい、例のオキシダントの問題だとか、いろん な問題がちょうどそのぐらいかなと私は勝手に思っています。日本は40年かけてここ へ来ました。ところが、中国は40年かかるでしょうか。おそらく、あと数年で今の日 本並み、あるいはそれを超えてしまうんじゃないか。中国のは危ないからな、汚いから ななんて言っていていいんでしょうか。きょうあすには、もう追いついているかもしれ ない。非常に速いです。  そういう意味で、中国のは買いたくない、食べたくないなんて言っているとえらいこ とになるので、そうじゃなくて、もっと日本にはおいしい、きれいな、立派な、リンゴ にしたって、ミカンにしたって、スイカにしたって、非常にいいものがいっぱいあるん です。こういうものをどんどん売り込む、逆に売っていくというふうに出ていかないと、 日本に中国が物を売ってくれなくなっちゃう。あそこはうるさいからEUに売るんだ、 アメリカに売りゃあ買ってくれるんだからいいよと、日本には売らないよと。さらに、 中国の人たちがもっと日本並みの食事をするようになったら、中国の国内で自分の国の 人たちを養う食料も供給できない状況になるんです。幾らお金を積んだって中国から入 ってこない、こういう状況にもなりかねないと。  最後なんですが、例えば昨年の段ボール入り肉まん事件みたいなのが週刊誌その他で 報道されました。あれがもしほんとうだとしても、あれは犯罪ですよ。あんなものが検 疫所を通って日本に入ってくるでしょうか。あんなものを心配する必要は全くないんで す。  これは一部の週刊誌、テレビ、そういうところが、ここにあえてお化け屋敷効果と書 きました。うちの週刊誌を見てください、怖いことが書いてあるよと。うちのテレビを 見てください。もっとすごいことが書いてあるよ、すごいことを報道するよ。で、お化 け屋敷と一緒です。「いらっしゃい、いらっしゃい、うちのお化けは怖いよ」と言うと お客さんが入ってきちゃう。同じことをねらっている。これはマスコミのとんでもない やり方だと思います。皆さん、マスコミに踊らされないでください。  以上です。 【司会(吉川)】  ありがとうございました。  続きまして、基調講演の2つ目でございます。食品の流通販売をされております事業 者でもあるとともに、消費者運動にも積極的に取り組んでいらっしゃるということで、 日本生活協同組合連合会品質保証部商品検査センター長の和田様をお迎えいたしまして、 日本生協連の輸入食品の安全確保の取り組みについてご講演をいただきます。  それでは、よろしくお願いいたします。 【和田】  皆さん、こんにちは。日本生協連の和田と申します。よろしくお願いしま す。  日本生協連の輸入食品の安全確保の取り組みということですけれども、普段からとい いますか、昨年も、先ほど佐藤さんのお話の中にもありましたけれども、中国の問題と いうようなことで、私どもも検査、調査を強化したということがございます。ただ、輸 入食品だからといって特別なシステムを私どもの品質保証の取り組みの中で回している わけではなくて、国内でつくるもの、海外でつくっていただいているもの、それらすべ て、システムとしては基本的に同じ中で回しております。  そういった私どもの取り組みについてご紹介をして、その中で輸入食品について若干 といいますか、ある程度情報を盛り込みながらご紹介をしていきたいというふうに考え ておりますので、休憩前の最後のお話ということでございますが、どうぞよろしくお願 いいたします。 (パワーポイント)  これは、日本生協連と会員生協の関係のようなものを示したものでございます。簡単 に見ておいていただければと思います。 (パワーポイント)  組合数としては、2006年度で今2,400万人おりまして、どんどん増えている というようなことですが、逆に店舗だとか共同購入だとかで組合員が商品を買う点数は、 1人当たりではどんどん減ってきているという状況もございます。 (パワーポイント)  日本生協連の主な事業と活動について。  日本生協連自身は、生協自身が事業を行い、それから消費者主体の組織として事業を 行う、それから、社会的な活動を行っていく、そして、消費者の暮らしをよくしていこ うというような組織でございますから、(1)、(2)、(3)に書きましたように、事業もござい ますし、それから政策提言、社会的な課題の活動と、それから暮らしの助け合い、福祉 の活動というのも全国各地域で展開をしているということでございます。 (パワーポイント)  生協はずっと食の安全・安心について、どんどん高めていこうじゃないかということ で取り組んできたわけです。それも運動としてですね。そういう場合に、生協が考える 安全というのはどういうことなんだということで、ここでご紹介をするというか、復習 をさせていただきたいと思いますけれども、安全というのは科学的な実証に基づく客観 的な評価であって、ただ、いつもその評価がずっと変わらないというようなことでもな い。その時々の科学的な数字をもとに検証され、新たな知見で評価結果が変わり得ると いうことでございます。  私ども、科学的な安全を追及する取り組みということで、例えば食品添加物の安全性 の評価等を、日本生協連の中で会議を設けまして評価の取り組みをいたしております。 その中で管理をしていこうという添加物も、数十ずついろいろな種類の管理があるんで すけれども、管理をしていると。  それから、安心についてでございますけれども、これについては、一言で申しますと 一人一人が感じる評価ということじゃないかと思っております。幾ら科学的に安全です よ、安全ですよと申しましても、やっぱり例えば昨年起きました偽装問題のようなこと がありますと不安である、そういったところから安心できないというようなことにつな がるのではないかなと思っております。  組合員、消費者が、あ、やっぱり安心できるねというような生協、例えば食品につい て信頼してもらうということになると、「適時、適切な情報提供」と書いておりますけ れども、迅速性というのが非常に重要じゃないかなというふうに思います。それから、 正確な情報をしっかりとわかっていただけるような形で消費者、組合員に提供していく、 説明していく、それも1回や2回じゃなくて、しっかりとやっていくんだということが 必要じゃないかなと考えています。 (パワーポイント)  日本生協連の食品の安全の課題として3つの課題が――消費者運動というのもやって おりますし、それから事業活動、その両面から見て(1)、(2)、(3)とこちらに書いたような 内容で、安全・品質・安心に関する調査・研究をする、それから、食品の安全の社会的 な取り組みをする、そして、安全・品質・安心を追求した事業ですね。(1)、(2)の活動を 具現化するものとしてコープ商品を開発して組合員に提供していく、これが課題と考え ております。 (パワーポイント)  最初の安全・品質の調査・研究ですけれども、日本生協連の中で食品添加物や家庭用 品、いろいろなものについて、微生物もございますが、商品の基準や物質の取り扱いの 基準、そういったものをつくっております。それから、日本生協連として商品の政策を どういうふうにしていったらいいんだろうかと、取り扱いの政策なども立案をしており ます。そういった部局だとか、組合員、消費者からのご意見、苦情というのも非常に貴 重ですし、それらを商品政策や日本生協連の政策、社会的な活動に生かしていくという ようなことについても、非常に重要なものと考えております。 (パワーポイント)  こういった部署は品質保証本部という4つの部署が集まったところですけれども、こ ちらで仕事をしているわけです。今全員で98名と書いておりますけれども、パート職 員、派遣職員を含めて約130名がこちらの部署で働いております。私は商品検査セン ターにおりますけれども、こちらも約70名が検査、それから検査にかかわる業務に携 わっています。 (パワーポイント)  写真であらわしてみるとこんな感じということで、見ておいていただければと思いま す。 (パワーポイント)  2番目に社会的発信、運動の分野ということで、食品衛生法の改正の運動ということ で、2000年代の前半にかけて食品安全行政に働きかけてきたと。それは常に行って いることでありますけども、顕著なこととしてはそういったことが上げられると思いま す。また海外の生協とも交流したり、食の安全についての交流もございますし、国際動 向を、CODEXなんかの会議にオブザーバーであったりして出かけていって、情報を 入手していく。どのような動きをしているのか、国際的な動向も把握をするといったよ うなこともやっております。 (パワーポイント)  これらをいろいろ調査・研究しながら、社会的な活動をはかりながら、その中で組合 員に提供していく商品、これを開発・改善・供給という、いわゆる事業ということをや っておりますけれども、その中で、右の上のほうに、ちょっと見づらいんですけども、 3つの基本と5つの付加価値ということで書いてございますけども、こういった基本的 な課題、テーマ、商品の政策をもとに、アレルゲン・GMOの情報管理をしたり、マー ケティングの調査をしたりと、いろいろな活動、事業にかかわる活動をとり行って商品 を提供しています。 (パワーポイント)  今まで申し上げたところを図示したものが(1)、(2)、(3)ということで、それぞれに密接 にかかわりがありますし、体外的にも、各地の生協とも日本生協連の活動は双方向でや りとりをしながら、こうしてくださいと言い切るだけではなくて、それぞれに意見交換 をしながら議論をして話を進めてまいります。  日本生協連の食の安全、その中でマネジメントシステムISO9001ですが、その もとで商品事業、商品基準や表示基準、そういったものを持ちながら使用管理をして商 品を、組合員に安全で安心なものを届るというのを第一義にして活動しております。 (パワーポイント)  輸入食品についてですが、食品の輸入量増加の背景というのは、ここに書きましたよ うに自給率の低下。先日も農家の方と話をして、農業人口が減っているというのは、そ の方は青森の方でリンゴ農家なんですけれども、どんどん高齢化してリンゴ農園を維持 していけないんだと。やっぱりちょっと坂になっているような園地もあって、登れない とかそういったこともあると。で、跡継ぎがいないというような農家さんも、結構ああ いった特産地のようなところでもあるんだというお話を伺いましたけども、これは全国 で言えるのではないかなというふうに思います。農業政策についてここでお話しするこ とではございませんけれども、そういった持続的に農業を行えるように日本の中でどう いう政策をとられるのか、実効ある政策というのがかなり求められているんじゃないか なというふうに私自身は思います。 (パワーポイント)  そして、中国からの野菜輸入量の推移ということで、日本の自給率が下がっている。 その反面、中国からは、一時こうやって落ち込んだときもございましたが、全般的には 伸びてきていると。 (パワーポイント)  これは、日本生協連で食品の安全・安心にかかわるアンケートということで、200 7年の秋にアンケート調査を実施したものです。  商品のパッケージのどこを見ますかというときに、改善してほしいところを赤の棒グ ラフであらわしてございます。2つ矢印をちょっと横から入れてありますけれども、原 材料の原産国であったり、製品の原産国。加工国ですね。それについては結構かなり高 いレベルで見ますよというアンケート調査結果になっています。 (パワーポイント)  続いて、同じアンケートですが、加工食品購入時に重視する点というのは、安心でき る原産国であるというところに、2005年、6年、7年と、どんどんと重視するとい う方が増えてきているわけなんです。 (パワーポイント)  それから、生鮮食品を購入するときにも同じような傾向が見られます。 (パワーポイント)  こちらは、農林水産省のほうで平成18年、おととしですけれども、商品モニター調 査を行われて、国産品は上半分ですね。下半分は輸入品についてということで、色が変 わると、青っぽいのは幾らか不安である、かなり不安であると、不安を感じるといった アンケート結果。輸入品について、そういう非常に不安を感じるというところが多くな っています。 (パワーポイント)  日本生協連の食品の安全・品質管理の重点と考えているところは、これはもう事業者 の皆様がいらっしゃいましたら当然のことだというふうになるかと思うんですけれども、 まず原材料・資材の由来、こちらをしっかりと把握できているか。  それから、工場だとか工場へ流れているラインですね。従業員の方はどういうふうに 教育されているのかなと、言葉がちゃんと通じているかなとか、そういうこともありま すけれども、それから工場の雰囲気。製造ラインとともに仕事のラインですね。業務ラ インが整然としているのかというようなことは、工場長からずっと働いている方がどう いうふうな雰囲気で仕事をやられているのかなというのも重要なことだと思っています。  それから、過去の製造履歴。私ども、検査をしたり、工場に入らせていただいて点検 をさせていただくと。事業者にお願いしてやるんですけれども、そのときに問題があっ たか、どんなことを感じたかとか、検査で違反というんですかね、私どもの例えば自主 基準だとか、食品衛生法の基準に触るようなことはなかったかというようなことを記録 として持って、すぐに引き出せるか。あるいは、当事者である製造者のところでしっか りとすぐに、こういうことがあってこういう改善をしたというのが出せるようになって いるかということは重要だと思います。  それから、問題が発生したときに、危機管理のシステムというんですか、何かあった ときに、どれがどこのロットでどこの商品に使われているのかと、それがしっかりと引 き出せるか、すぐにできるのかというようなところも重点だと思っています。  そして、私どもにおける検査、お取引先における検査ということもありますけれども、 工場点検をした内容、お問い合わせ・苦情内容。特にお問い合わせ・苦情内容というの は組合員から直接私どもに、組合員サービスセンターというところに入りますが、非常 に重要な情報源となっています。 (パワーポイント)  私どもの検査のシステムは、商品の開発意思、開発の決定、それから開発工程を経て、 実際の発売に至って、どんどんどんどんリニューアルしながら回っているということで、 商品をライフサイクルに見立てて書いてございます。  最初に開発意思を決定して、それから商品を設計するんですが、そのときにはお取引 先を選定するということになりますが、ほんとうにつくっていただく、それは大丈夫― ―大丈夫という言い方は失礼なんですけれども、私どもの商品をつくっていただけるの かどうかといったところを総合的に判断する必要が出てまいります。  それから、原料についてどういう管理をされているかということで、原料管理ガイド ラインというものを私どもで持っておりまして、お取引先にいろいろと調査をお願いす る。ほんとうにそうなのかということで工場を見させていただくこともございますけれ ども、それから、その管理の状況がしっかりできているのかというのを検査で検証させ ていただくことが多くなっています。  そして、試作品においては、テストキッチンという部署もございますので、実際に食 べてみて、例えばおいしいよと言っているような商品について、ほんとうにおいしいの かとか、これは極端な例ですけれども、そんなようなことを検査させていただいたり、 それから、試作品では商品のパッケージにつける栄養表示のもとのデータを試作品でと らせていただく。それから、初回生産品でも検査をしていくというようなことで……。 (パワーポイント)  次のスライドですね。ここに、検査を主体に各段階でどのような検査を組み立ててい るかというのを、行うのかというのを書いております。  ここは開発工程が主体になっていますけれども、供給時の検査も年間に開発検査と呼 んでいる開発時の検査は、大体年間1,500から2,000品目ぐらいについて検査を 行う必要があって、この開発時の検査を通らなければ、私どもはISO9001の中で どっかでひっかかっちゃえば販売できないというふうにしておりますので、どっかでひ っかかるとまた前へ戻ると、仕様の見直しだとかを行うということになります。  その後、発売後、定期的な検査というのもやはり2,000品目ちょっとぐらい検査 を行っておりますけれども、こういう中で、全体食品としては5,500品目を販売し ておりますので、年間1,500から2,000の開発、そして、定期的に2,000品 目ぐらいの検査を行っているというふうにごらんいただければと思います。 (パワーポイント)  今ご説明した内容がこちらに書いてありますが、1つ、何だこれというのが市販品の 検査。  日本生協連は、今のシステムについて、私どものPB、プライベートブランド、コー プ商品についてああいった検査を責任を持っておこなうと、責任を持って供給するとい うふうなことをしているんですが、市販品については、これは私どもの商品の実力を知 るというとおこがましいんですけれども、どちらかというと日生協商品が世の中でどう いうポジションにあるのかな、あるいは、日生協の商品だけを検査していますと世の中 のことがよくわかんなくなっちゃうということもありますので、そういったものを検査 していく。そして、残留農薬データ集なんかにはこちらの市販品のデータも入れながら、 社会的にこういうふうな農薬の残留実態ですよというのをあらわすというところでも、 うちの商品ばかりだけではなくて、市販品のデータも例えば4分の1から3分の1ぐら いは盛り込んで、データをデータ集にあらわしているということがあります。 (パワーポイント)  事例として今残留農薬のことを申しましたが、私どもの検査は残留農薬、動物用医薬 品、食品添加物、今回はこの事例を申し上げますけれども、あと微生物、あるいはアレ ルゲン、それから最近で言うと肉種の判別検査、包材の検査というようなこともやって おりますけども、まず残留農薬、動物用医薬品についてご紹介をいたしますと、検査と しては発売前の原料検査。これは開発時点ですね。それから、定期的に原料をお取引先 から送っていただいて検査をすると。あるいは商品を検査をするということもございま すけれども、それがメーンになっております。  ポジティブリスト制度への対応としては、違反の可能性があるものを重点的にチェッ クするということで、常々、年間で千二、三百の残留農薬の検査を各商品の原料を中心 にやっておりますけども、特に重点管理品目と申しまして、2006年度が88品目と 書いておりますけれども、これは産地を特にうたっている商品、そういうものをコンセ プトとして持っている商品について重点的に対象にしようと、毎年やろうじゃないかと。 それから、重点調査品目というのは、例えば重点的にこれは検査をしておいたほうがい いぞという地域ですね。2006年度は中国にいたしましたけれども、そちらの商品を 選定して、その原料を検査する、あるいは商品を検査するということをやっております。 (パワーポイント)  私どものポジティブリスト制度に対する基本的な視点としては、農薬取締法を遵守し ていれば、農薬を適正に使用するということですから、食品衛生法違反は発生しないと 考えております。  ただ、海外でつくられるものは、先ほどからもお話があるように、法規制が異なって いて日本と差があるので、いろいろとそごが出てくる面もあると。  それから、飛散対策は不可欠であると。国内での飛散(ドリフト)については、あま り問題になっていないようではあります。  それから、食品衛生法を遵守するということで、これはあえて書かせていただいたの は、栽培現場だけではなくて、流通の場面でも、原料を保管する工場の中でも、あるい は何か缶の中に保管しておくというようなことでも、いろいろ問題はあるかもしれない ということで、しっかりと目を光らせておく必要があると考えております。 (パワーポイント)  ちょっと戻りますけれども、重点管理品目、重点調査品目については、こちらの表を ごらんいただければというふうに思います。  一般商品についても、先ほども申し上げましたように年間1,000と書いてありま すけども、今年あたりですと1,300ぐらいになるのではないかと思っていますが、 開発検査を軸に行っています。 (パワーポイント)  残留農薬検査の事例を多少ご紹介しておこうと思います。  2007年度は集計中ですが、2006年度は1.2%。だんだん下がっているじゃ ないかというようなことがあるんですけど、これは差があるのかどうか、私ども、1, 000検体ぐらいをやったぐらいではわからないと思っております。  ご紹介しますと、ネギ、これは中国産でしたが、国産原料に切りかえました。このイ チゴはタイ産です。タイ産のものでしたが、タイ産のものはこのロットについては使用 しないということにしました。ニラも中国産、ミツバは、これは国産ですね。さかのぼ っていくと、つくっている圃場が確認できましたので、その圃場については一たん除外 して、改善がされるまでちょっと待つということにしました。 (パワーポイント)  こちらは、いろいろご紹介がありましたので割愛をいたします。 (パワーポイント)  こちらも飛ばしてまいりますが、農薬の話、動物用医薬品の話が主体で話しておりま すけれども、例えば食品添加物だとか、あるいは6条違反、6条にかかわるものですね、 こちらのほうは依然として結構あるのかなと。残留農薬に、あるいは動物用医薬品に注 目が行っているようなところがありますけども、そういうふうなことも私自身は感じて おります。 (パワーポイント)  日本生協連で残留農薬を検査した際、この5年間ぐらいの集計ですけれども、国産が 大体4割強、中国産が4分の1弱というような形で、米国、タイ、台湾というようなこ とで検査をやっております。国別にあらわしてみると、このようになりますと。 (パワーポイント)  それから、中国産のサンプル。どういった農薬が。  先ほど佐藤さんのほうからもご紹介がありましたけれども、アセトクロルなんかは、 私のところでは、日本生協連では2006年ぐらいからやっと検査を始めたので、この 2003年までの集計の中には出ておりません。ただ、先ほどの佐藤さんの表とも大体 似通った内容で出ているのかなと思います。 (パワーポイント)  検査の際に重視する点ですけれども、海外で製造されているものは、コープ商品、非 常にというか、少なくないと申し上げていいと思います。中国産に至っても、200以 上の商品が中国の工場で製造されております。それから、やっぱり世界各国で生産され る原料が日本に入ってきているということで、私どもの商品にもそれが使用されている と。  こういった状況に対応するためには、ここに書いたように、効率的に検査を、効果的 に検査を行う必要があるということで、分析法としても必然的にこのような方法をとら ざるを得ないと思っていますが、いろいろ問題になる薬剤とかは個別の試験法をとらざ るを得ない場合もあるので、こちらにどう対応するかというのが1つ課題になっており ます。 (パワーポイント)  検査の際に重視する点として、主には検査項目をどのように設定したらいいかといっ たところで使うデータ、あるいは根拠になります。ごらんをいただければいいかと思い ますが、先ほど厚労省のほうで紹介なさったところともダブっているような、同じよう な内容もあるんですけれども、ごらんいただければと思います。 (パワーポイント)  続いて食品添加物の検査ですが、これも発売前の原料。原料で食品添加物って何を検 査するんだというようなのがありますけれども、漂白をしているかとか、酸化防止剤を 使っているかとかいったようなところで、例えば試作品、あるいは通常供給している商 品で何か問題があると、原料まで振り返って原料をいただいて検査をするというような こともございます。それから、定期的にも発売中の商品について、あるいは原料につい て検査を行っております。  主には、検査を行うときには、かなり商品の原料の中にはいろんな素材が含まれてい て、その中に食品添加物がちょこっと使われているということになると思いますので、 通常の公的な公定法よりは感度をかなり高めて、商品について一斉に保存料、酸化防止 剤を例えば17種類検査するとか、そういったような手法をとって検査をしております。 それが主体になっております。  検査のデータを判断するときの根拠は食品衛生法であり、日本生協連の自主基準なん ですけども、その自主基準というのはどういうものだというふうになるんですが、管理 添加物は59品目ございます。これは安全性評価に基づいて運用を決定していますが、 そのほかに保留添加物というのがございます。これはまだ現時点では安全性評価をして いないもので、これからしていく必要があるかどうかというところ、検討から始まるわ けですけども、基本的に使用は避けましょうと言っているものです。 (パワーポイント)  日本生協連の添加物についての基本的な考え方は、ここにあらわしたとおりです。  安全性評価を第一義として、必要最低限度において使用します。  科学的な根拠に基づいてということで、再評価・見直しを不断に継続するということ を基本的な考え方としています。 (パワーポイント)  こちらはお読み取りをいただければいいかと思いますが、ちょっと文章が長いのです けれども、不使用品目、留意使用品目、それから保留添加物ということで、先ほど申し 上げたことを詳細に書いております。 (パワーポイント)  添加物について、ここは酸化防止剤の事例ですが、世界中で各国の規制、あるいは地 域の規制がそれぞれ異なってまいります。ですが、世界中から原料が輸入されてまいり ますので、あるいは製品が輸入されてくると、つくられるということですから、日本で はこれだけやっときゃいいのかなということになるかもしれませんけれども、各国から ですから、これも全部対象にして検査を行うということをして、こちらは事例でござい ますけれども、こんな感じでやっているというのをごらんいただければいいかと思いま す。 (パワーポイント)  安息香酸がかなり高くなっていますが、感度を上げて検査をしていること、食品中に 天然に含有されるものが結構検出されているというふうに受け取っていただければと思 います。 (パワーポイント)  こちらは亜硝酸、亜硫酸。単一で検査を行わなければいけないような項目についてで すが、掲載しています。  甘味料のところはグリチルリチン、ステビア、サイクラミン酸、一斉分析というのを やっております。 (パワーポイント)  日生協における検査の役割ですが、もちろんだということなんですが、品質保証のシ ステムの中で、そのシステムがきっちり機能しているのかということを検証する、しっ かり確かめるというのがまず1つ。この手段の1つと書いた意味合いでございます。そ れから、汚染実態を常に継続的にモニタリングすることで、商品の安全性、品質にかか わる知見を積み重ねる。そして、社会的な活動、社会的な貢献につないでいったり、コ ープブランドの品質保証に貢献できたらなと思っております。それらを総合して分析を 行い、解析を行うことによって、いろいろな危害を予知し、予防していくことができれ ばというふうに考えております。 (パワーポイント)  日生協の安全、品質確保・検証の取り組みということで、箇条書きでぽつぽつと書か せていただいておりますが、まずは商品の仕様をいかに管理するか。お取引先で起こる 出来事、私どもの商品をいろいろと取り扱っている中で起こる出来事、そういったもの を総合的に、リスクを商品について評価していくということは非常に重要なことだと思 いますし、運用していく上で、あるいはいろいろ判断する上で、商品基準や表示の基準 の体系が必要になってくる。  パートナーとしてのお取引先と書きましたが、いろいろなことを、私どものプライベ ートブランドの安全・安心の確保という面ではご協力をお願いしております。 (パワーポイント)  そして、社会的な活動といったところへ組合員の信頼を得ていくということなんです けども……。 (パワーポイント)  これらをまとめますと、安全性、品質確保の取り組みとして、生産製造段階における、 先ほども申し上げましたが、リスク評価。そのリスクをしっかりと基準だとかいろいろ な体系で管理していく。使用管理というのは、生産から商品に至る段階において、しっ かりと監視の目というか、検証していく、点検をしていくというアプローチが必要にな ると。総合的なシステムを、私どもは不断の努力を行っていかなければいけないという ふうに思っています。それが、リスクコミュニケーションということもありますけども、 消費者からの強い信頼感を得ることにつながっていくと考えております。  おしまいでございます。ありがとうございました。 【司会(吉川)】  ありがとうございました。  当初の予定より少しおくれておりますけれども、ここで10分休憩を設けさせていた だきたいと思います。パネルディスカッション及び意見交換は3時45分から開始した いと思いますので、それまでにお席のほうにお戻りいただきますよう、よろしくお願い いたします。 パネルディスカッション・意見交換 【司会(吉川)】  それでは時間となりましたので、これからパネルディスカッショ ン及び意見交換を行います。  まず初めに、パネリストのご紹介をさせていただきます。  壇上、皆様から向かって左側、2番目の方から順にご紹介させていただきます。  全大阪消費者団体連絡会事務局長、飯田秀男様でございます。 【飯田】  飯田でございます。 【司会(吉川)】  味の素株式会社品質保証部長、天明英之様でございます。 【天明】  天明です。よろしくお願いします。 【司会(吉川)】  輸入冷凍野菜品質安全協議会会長、河合義雄様でございます。 【河合】  河合でございます。よろしくお願いします。 【司会(吉川)】  先ほど講演いただきました、日本生活協同組合連合会品質保証本 部商品検査センター長、和田様でございます。  同じく講演いただきました、株式会社アジア食品安全研究センター技術顧問、佐藤元 昭様でございます。 【佐藤】  佐藤でございます。よろしくお願いいたします。 【司会(吉川)】  先ほどご説明をさせていただきました、厚生労働省食品安全部輸 入食品安全対策室専門官、近藤でございます。 【近藤】  近藤でございます。 【司会(吉川)】  厚生労働省食品安全部基準審査課課長補佐、光岡でございます。 【光岡】  光岡でございます。 【司会(吉川)】  最後に、本日のコーディネーターを務めます、皆様から向かって 一番左側になります、厚生労働省大臣官房参事官、牛尾でございます。 【牛尾】  よろしくお願いします。 【司会(吉川)】  以後のパネルディスカッション、意見交換の議事進行につきまし ては、牛尾にお願いをいたします。よろしくお願いいたします。 【牛尾】  それでは、皆様の前に7名の方に並んでいただいておりますが、そのうち の4名の方々から既に説明と講演をいただきました。そういう趣旨で、3名の方に加わ っていただきましたので、飯田様、天明様、河合様、この3名の方々から本日の説明及 びその講演を聞いて、それぞれのお立場から感じられたこと、あるいは質問等があれば 順番にお願いしたいと思います。  それでは飯田さん、よろしくお願いします。 【飯田】  飯田でございます。  消費者の立場からということになるんだと思うんですが、先ほどの日本生協連の組合 員調査の結果もございました。大阪府も年1回、府民意識調査というのをやっておられ まして、その結果が公表されております。食の安全・安心の設問もございまして、16 年、17年、18年の結果が今公表されています。その中に、「あなたが不安に思う対 象は何ですか」という質問項目があります。近年では表示偽装の問題がまず特に昨年は 大変な問題になって、そこに関心が集中しているんですが、この表示偽装問題とあわせ て必ず上位にランクされるのが、輸入食品の安全性の問題でございます。これに関して そういう調査結果が出ておりまして、消費者から見ますと輸入食品の安全性の問題って 非常に高い関心のもとにあるというふうに思います。  食品衛生法が改正されまして、こういった形で毎年国と都道府県、あるいは政令市、 中核市のところで監視指導計画がパブコミに付される。ちょうど今そういう時期なんで すが、国のほうにあってはこの輸入食品の問題がそういう対象になっているということ で、今年で5回目になるんですか、こういう制度が発足しましてね。計画案が公表され て、意見を募集されるというやり方に変わった当初は、かなりこの計画の内容を関心を 持って読んだ記憶があります。こういう意見交換会も、1回目、2回目は各都市でやっ たように思うんですが、昨年はやらなかったように思うんですね。きょう、こういう形 でまたやられるということで、いろんな形で食品の安全の問題、あるいは輸入食品の問 題に関心が高まっているということで、開かれているんじゃないのかと思っています。  そんなふうに非常に高い関心の問題ですので、また後で少し問題点については整理し て発言をしたいと思います。よろしくお願いします。 【牛尾】  ありがとうございました。  それでは、続いて天明さん、お願いします。 【天明】  味の素株式会社で品質保証部ということで、品質保証の仕事をやっており ます天明でございます。  事業者の立場という形でお話を、特に輸入食品についてのお話をしたいと思います。  味の素につきましても多岐にわたって原材料を購入しておりますけれども、その中で やはり輸入食品というか、輸入品については非常に数が多くて、重要な位置づけになっ ております。その中ではいわゆる価格ですとか品質について、やっぱり輸入品が欠くこ とができないということでございます。  このために、この輸入品については安全であり、かつ高品質で、安定的に使用できた り購入できるものを確保していかなきゃならないということで、今一番重要なのは、食 品の原材料を決めるに当たって、十分調査をして、それで輸入品というんですか、原材 料を決定していくということを今心がけております。  中身は、安全性及び、特に日本向けということでありますので遵法性というんですか、 日本での法律をちゃんと守っているかどうかと。あとは社会性ですとか、あとは品質で すね。味の素で求めている品質をちゃんと確保できるかどうかということについて最初 に十分調査をして、それで購入をするということをやっております。  味の素として、特に原材料サプライヤーさんに対して品質要求事項ということで、味 の素としてこういうものが欲しいということを明確に打ち出して、それに対応していた だく、対応できるものを入手するということでございますし、あとはできるだけ現場に 行って、現地に行って調査をするということで、書類だけではなくて、やっぱり現場に 行ってその管理を実際目で確かめて、それをもとに行動していくということで、安全・ 安心につながるような原材料を十分な品質、量を確保しながら購入していくということ で、今原材料サプライヤーさんというんですか、原材料を入手していただけるサプライ ヤーさんという人とか、商社さんとか、そういう方々と協力してやっていくというのが 今一番、特に輸入品については重要な課題だと思って実践をしているということでござ います。  いろんな問題点があれば、またご回答したいと思います。よろしくお願いいたします。 【牛尾】  ありがとうございました。  では、続きまして、河合さん、よろしくお願いいたします。 【河合】  ここに書いてある輸入冷凍野菜の食品安全協議会というのは、皆さん方、 なかなか聞いたことがないと思うんですけれども、実は私、今所属しているのが株式会 社ニチレイでございまして、技術と品質の担当をしております。  この協議会は、冷凍野菜の安全をきちっとやろうと。先ほど佐藤さんから紹介があり ました、ちょうど2002年にホウレンソウの残留農薬の問題がありまして、そこら辺 からどうも中国バッシングというのがずっと始まっているんじゃないかなと。それを機 会に、ポジティブリスト制度の始まる1年前に冷食のメーカーが、皆さん一社一社がこ ういう問題をやろうと思ってもなかなか難しいということで、6社が集まってこういっ た協議会をつくって、現在は19社、ほとんど冷凍野菜の主だったところは皆さん、こ の協会の会員になっているといったところでございます。  今内容につきましては、先ほどの佐藤さんの説明が中国の現状を非常に物語っていて、 わかりやすかったんじゃないかなというふうに私は感じていまして、今日みたいなリス クコミュニケーションの場でこういった形でやられると、非常に助かっているというこ とでございます。  我々の中でも今一番問題になっているのが、中国バッシングによるメディアの、事実 とはちょっと違う、先ほど来からずっと言っていますけど、中国の一面を映して全体が さもそうであるというような形で見ていますけれども、我々がそういったテレビとかを 見ていますと、中国の中でどんなことが起こっているかという一面を、例えば田舎で春 雨をつくっているところを見て、これがみんな中国だよみたいなところがあるんですけ ど、今の日本の検疫制度を知っている方だったら、到底こんなのが入るわけないなとわ かるわけですね。特にそういったことがきちっと伝わっているかどうかというのが一番 問題かなと思っていて、そこら辺のところをどうやって皆さん方、一般の消費者も含め てきちっと理解してもらえるかというのが非常に重要なことじゃないかなと思っていま す。  ですから、我々と中国の食品土畜進出口商会という向こうの方々のそういう協会とも いろいろお話ししていますけれども、今みたいなメディアの方々にどうやって正確な中 国を教えようか。我々、台湾の方ともやっていますけれども、台湾の方もそのように言 っています。もうちょっと正確に、きちっと事実を伝えてほしいということですね。  それと、もう1つは、今中国で問題になっているのは中小企業がどうなるかという問 題がありまして、このところはちょっと難しくて、今向こうからの提案、こちらからも やっているのは認定制度の問題がありまして、ちゃんとしたところはきちんと評価して、 それを公表してほしいと。これは中国が言っているのでびっくりしたんですけれども、 我々のほうもそんなことができるのかなと、これは検討課題として今上がっているとこ ろでございます。先ほど来、ずっと話が出ていますけれども、そういったことは今企業 と企業でやっているところが多いんですけれども、全体でそういったことができるかど うかといったところが、一歩進める上では必要になってくるかなと思っています。  それと、特に今回のポジティブリスト制度の農薬とか動物性医薬の検査の問題も一部 ありまして、先ほど来、中国も検査しなさいという声が出ていますけれども、実はこの 検査体制についても、いろいろ検査体制の中身を見ますと、まだ始まったばかりで、機 器の問題とか検査制度の問題で、やはり全く問題がないというわけじゃなくて、これか らの課題じゃないかなと思っています。そういったところもひっくるめて、今後の技術 交流をどうやっていくかというのが重要な課題になるんじゃないかなというふうに最近 の日中の会議の中でも議題になっていますし、きょうの話を聞いていても、そこら辺が 重要課題になるんじゃないかなというふうに私は思いました。  きょうはよろしくお願いいたします。 【牛尾】  ありがとうございました。  冒頭、飯田さんのほうから非常に本質的な問題を指摘していただきました。何回アン ケートをとりましても、一般の方々が不安に感じるのは3点、常に上げられまして、輸 入食品の安全性の問題と農薬の問題と添加物の問題、この3大問題が常に上位に上がっ てくるわけでございます。  きょうは輸入食品の問題がメインテーマでございますので、なぜ消費者が輸入食品の 安全性についての懸念がなかなか払拭できないのか、できればそこに焦点を絞っていき たいと思いますが、何かそれについてご意見があれば、手を挙げて思いだけでも言って いただければと思うんですが。  どうぞ。 【飯田】  幾つかあると思うんですが、輸入食品には生産現場がよく見えないという 問題がありますが、この問題が1つ、消費者から見るとあるのではないのかなと思いま す。  先ほど天明さんもおっしゃいましたように、個々の事業者の方はその辺の安全管理を 現地まで見に行かれて、現地の生産の仕方を指導されて管理をするということをされて います。しかし、マスで見ますと、日本が輸入している相手の国は非常に多岐に、世界 でも各国にわたっていまして、それを全部そういう手法でもって管理するというのはな かなか大変なことだろうなと思うんですね。そういう点で、消費者から見ますと、当面 はそういう生産点の安全管理がきちっとされて、あるいは生産点での検査体制が整うと いうところまでは、やはり国の検疫のところできちっと検査をしてもらうという、こう いう体制がちゃんと消費者に見えるということが1つの大事な点ではないのかなと思い ます。  それから、2つ目は、残留農薬の問題、あるいは食品添加物の問題というのはずっと 頭の中にあるんですが、先ほど報告がありましたように、近年のところで言いますと、 鉛の問題ですとか、あるいはカビ毒の問題ですとか、従来と違う種類のハザードが指摘 をされるようになっている。ここの点も1つの不安材料といいますか、新しくチェック しなきゃいけないことが出てきたんだという、そういうふうにどうしてもとらえられて しまうという、こういう問題が2つ目にあるのかなというふうに思います。  3つ目は、先ほど河合さんのほうからもあったんですが、マスコミの報道の仕方と、 それに悪く言うと消費者が振り回されているといいますか、そういう点も確かにあるん だろうなというふうに思います。そこはどうしたらいいのかというのはあるんですが、 消費者はきちんとした正確な科学的な知識をきちっと身につけることが必要ですし、出 していただく情報もそういうことに基づいた情報をきちっと出していただくということ が必要だと思うんですね。  一例を挙げれば、鳥インフルエンザのときの問題があるかなと思います。繰り返し繰 り返し、あのテレビの画像に白装束の検査官が養鶏場に出入りをして駆除しているとい うのが映って、あれが何のために行われているかということをあんまりマスコミは報道 しなかったと思うんですね。ウイルスの拡散を防ぐためにそこの養鶏場のところで封じ 込めるんだということが、報道の仕方、受け取られ方で言うとそうではなくて、卵や鶏 肉にウイルスが拡散して、いわゆる健康被害を与えるかのようにとらえられてしまうと いう、ここのミスマッチがあのときにあったのではないのかなと思うんですね。  そういう点では、消費者の側も、なぜこういう措置をとっているのかということをき ちっと正確に知るといいますか、あるいは知らせていただくという、そういうことが必 要なのではないのかなと思います。 【牛尾】  ありがとうございました。  3点ご指摘いただきました。  生産現場が見えない。これは国内的には例えば地産地消というような形で解決が可能 になるものだろうと思うんですけれども、何しろ日本は世界各国から食品を輸入してい ますから、第一線の現場まで把握するというのが直接的に消費者にはなかなか難しいん だろうなと思います。  それから、新たな課題としてカビ毒等の問題がある。  それから、3番目はマスコミの問題が指摘されたところでございます。特に昨年は中 国野菜の問題が喧伝されたわけでございますけども、なぜ輸入食品の安全性が払拭でき ないのか、その点につきましてはおそらく佐藤さんが大分ご苦労されたのではないかと 思いますが、いかがでしょうか。 【佐藤】  まず、農薬についてかなり、歴史的に見ますと、なんて大上段に言うとあ れですけども、第二次世界大戦後、それまで無機農薬が中心だったものが、例えばBH CだとかDDT、パラチオン、こういうような農薬が日本に入ってきた。実は、3悪と 言われているのがパラチオンとセレサン石灰ですね。水銀剤。イモチ病の防除薬。それ からPCP。この3つが問題だと思うんですが、そういう農薬が入ってきたときに、当 時まだ日本の生産者はそういう農薬が、例えば有機リン剤ですと皮膚浸透性があるんだ というようなことがほとんどまだ理解されないまんま、安全使用基準を守らずに。  例えば、ちゃんとかっぱを着てマスクをして農薬を散布をしなさいと。散布が終わっ たら行水をして洗い流してから、あるいはうがいをして、それから食事をしなさいとい うような注意をほとんど守らないで、そのまま風上に向かってまいて、自分がホリドー ルですね、パラチオンを浴びてしまうと。そのまま行水もしないで焼酎を飲むと、肝臓 がやられていますから、たちまち中毒するというようなことがたびたび報道されたとい うことで、人間はひどい目に遭った、怖いことがあったということは非常に覚えている。  今は食塩よりも毒性の低い農薬が大部分ですと言うとまた怒られますけれども、ほと んどそうなんですね。でも、安全だというのはあまりニュースにもならないし、情報に もならない。ところが、怖いとか危ないとかっていうのは情報になり、ニュースになる と。したがって、農薬イコール怖いんだ、危ないんだという過去の記憶がそのまんま、 特にメディアの方々に残っていて、そういう観点でニュースになったり報道になったり するというようなことが今でもなお行われている。全く事実と違っているんですけれど も、その辺のところは直っていない。これが消費者を間違った感覚に導いている大きな 原因じゃないかと勝手に思っておりますが。 【牛尾】  ありがとうございます。  安全性確保につきましては、天明さんからお話しされましたように、メーカーとして は現場において十分調査をするというのが一番大切で、それが品質確保につながるとい うことで、講演の中にもございました。生協のほうでも同じようなことをされていると 思いますが、いかがでしょうか。和田さん、何か追加するようなことがございましたら。 【和田】  農薬のお話が続いておりますけれども、農薬についてもきっちりと適正に 使っているかどうか、これが大事だと思うんです。基準を守るようにというのはもちろ んのことなんですけれども、例えば、私どもも検査をしておりまして、基準値は守れて いるけれども、これはどういうつくり方をしたんだろうというようなサンプルに出くわ すことがございます。栽培中にいろいろ大変な目にこの作物は遭ったんだろうなと、防 除の努力もしたんだろうなというものがございます。そういったときに、栽培法として 適正だったかどうかというところまで、私どもがどれぐらい刺さり込んでいけるかとい うようなことも必要なんじゃないかなと。それは国内もそうですが、海外でも同じよう に、同じ食品として見ていかなければいけないというふうに思っています。 【牛尾】  ありがとうございました。  ここで、ぜひ会場からもご意見をいただきたいと思っておりますので、まだまだパネ ルディスカッションとしてのテーマは残っていますが、一旦ここで終了しまして、次に 進みたいと思います。  この参加に当たりまして皆様方から質問を何点かいただいておりますので、それをご 披露させていただきまして、関係するパネリストから答えていただくということをまず 行いまして、その後、フロアからのご意見、ご質問等をいただきたいと思っております。  既に講演の中でお話をしていただいたものもございますので、まだお答えしていない ものをちょっとご紹介させていただきます。  「四半期ごとに公表されている輸入届けにおける食品衛生法違反事例について、残留 値に対する基準値を明記していただくとわかりやすい。」というご要望がありますが、 これは近藤さんのほうでよろしいんですかね。 【近藤】  今ご紹介いただきました事前の質問の内容でございます。私どものホーム ページには、輸入食品の違反事例というものを公表しておりますが、確かにご指摘のと おりに、中身として結果の値は公表しておりますが、それに対応する判断の基準である 残留の基準等についてはお示しをしていないという状況にございます。ですので、今回 のご指摘を踏まえまして、平成20年度分より基準値の欄を新たにつくりまして、より 一目でわかるような形にしたいと思っております。 【牛尾】  ありがとうございました。  玩具についてご質問というか、これもご要望と言ったほうがいいんでしょうか、こう いうものを受け付けております。「玩具には対象年齢指定はあるものの、兄弟がいた場 合、上の子の玩具を下の子が使用することは日常茶飯事であり、このような表示は現実 的ではない。また、乳幼児玩具は飲食店で無差別に配布されるものもあり、このような 商品には輸入のものが多く含まれていると思うが、消費者に選択の自由はなく、国によ る監視の目が行き届いているのか疑問に思う。」というご質問というか、ご指摘でござ いますが、これは光岡さんのほうでよろしいですかね。 【光岡】  まず、2つぐらいのパートに分かれるのかもわかりませんけど、乳幼児玩 具に時々年齢を表示といいますか、シールを張ってあるものがあると思いますが、これ はもちろん国がそういうシールを張れなどという指示をしているものではございません で、これは多分、企業側が購入の際の消費者に対しての目安としてお示しをしていただ いているものだろうと思うんですね。  あとは、もう1つの課題のほうは、これは輸入時の検査になりますので、近藤のほう からご説明いたします。 【近藤】  後段の部分につきましては、食品衛生法は、ご存じのとおり乳幼児を対象 としたおもちゃについても届出の対象としております。ですので、例えばレストランに 行ったと。そしたら、おまけがついていたというようなこともあろうかと思います。そ ういう例えば無償で配布されるようなおもちゃについても、乳幼児をその対象の範囲に 含むというものについては、これは届出の義務がかかっております。届出されるものに つきましては、規格基準の適合性というものを判断した上でその輸入を認めるという形 になっておりますので、少なくとも食品衛生法で規定する範囲のおもちゃにつきまして は、輸入時に検疫所においてチェックがなされているというものでございます。 【牛尾】  ありがとうございます。  また中国の問題になりますけども、中国における食品、特に農産物を原料としている 加工食品の残留農薬の管理体制について知りたいというご質問でございます。これは凍 菜研の河合さんにまずお答えいただいて、もし補足する必要があれば佐藤さんのほうに お願いしたいと思いますが。 【河合】  この中国の食品、特に農産物ということなので、まず農産物の管理って今 どういうふうにやっているかといいますと、我々のガイドラインという、きちっとこう いうふうにすれば日本のポジティブリストに合格しますよという1つのガイドラインを つくって、各中国の業者さん、パッカーさんというんですか、いわゆる生産工場にお渡 しして、それを守るようにということで、それぞれの企業がその会社さんに出向いて指 導しています。指導とチェックをしているわけですね。ですから、そこから買っている ものについては、基本的には日本に送られる前に事前に向こうのほうでも検査が行われ ていて、安全を確保しているといったことがあります。ですから、通常輸入する冷凍野 菜につきましてはタイムラグもありますし、つくってからこちらに来るまでにちゃんと した検査を受けてから持ってこれるということもあるので、そういった意味じゃ、冷凍 野菜は非常に安全な部類に入るというふうに我々は思っていまして、それを使った原材 料で加工しているのは基本的に安全じゃないかなと思います。  通常こういう農産物を使った加工品というのは、そういった農産物をやっているとこ ろが加工品に1つ加工のランクを上げた工場をつくって使用しながら、今までの冷凍食 品とかそういう加工に見合った形の製造工程でつくるというのが一般的じゃないかなと 思っています。ですから、そういった意味じゃ、この冷凍野菜と同じように野菜を使っ た加工品というのはできていると考えてもらっていいんじゃないかなと思っています。  特に今はトレースシステムがきちっとできていますので、そういったものが全部わか るように、幾ら加工品であってもわかるようになっている。加工品の場合は原材料規格 証明書というのを原材料ごとに全部持ってこないと、日本の場合、表示の問題とかあり まして、一個一個がチェックされていないと製品としての輸入のときの表示の問題、い ろんな問題でアウトになりますので、そこら辺のところもきちっとやっています。以前 と違ってお任せじゃなしに、今はほとんど中まで入ってやっていますので、そういった 意味じゃ、非常に安全になっていると考えてもらっていいんじゃないかなと思います。  あともう1つは、佐藤さんのところの検査のところがありますけども、中国での検査 も、以前はほとんどなかったんですけど、今は民間のほうでも結構検査体制が整ってき ています。そういった意味では、検査するところも増えてきていますので、非常にわか りやすい感じになってきているかなと思っています。 【牛尾】  よろしいですか、佐藤さん。 【佐藤】  私のほうは分析する側でございますけれども、加工食品についてもそのま ま、例えばレトルト食品、パウチされたものですか、ああいうものがそのまま持ち込ま れることもございまして、例えば、里芋とかレンコンだとかニンジンだとか一緒に煮た ようなもの、そういうようなものも持ち込まれます。それは、そのまますべてをホモジ ナイズしてしまって分析をするということをしておりまして、当然残留基準値というの は、そういう加工食品の混合物であれば混合食品としての基準値はないわけですけども、 何らかの農薬がもし出てきたときに、そのことを依頼主に通告して、そして、場合によ っては依頼主がまた原材料を個別に持ってくると、で、また分析をするというようなこ とをやっております。  少なくとも日本向けの食材については、先ほどもちょっと申し上げたように、かなり うるさい輸出相手国でございますので、かなり中国のほうでもきっちり分析をしている というふうに私は認識しております。 【牛尾】  ありがとうございました。  それでは、せっかく多くの方々にお越しいただいておりますので、これからフロアと の意見交換をしたいと思っております。  通常の手続でございますけども、発言いただく場合は挙手をしていただきましたら、 私のほうで指名させていただきます。係員がマイクを持ってまいりますので、それから ご発言いただければと思います。できれば、発言の前に所属とお名前をおっしゃってい ただければと思います。できるだけ多くの方にご発言いただきたいと思いますので、お 一人、できれば2分程度でおまとめいただければと思います。  テーマは、きょうは輸入食品の問題でございますので、まず輸入食品の安全確保全般 について何かご質問があれば。特にご質問の場合には、どなたにということを言ってい ただければ、回答者も答えやすいかと思います。あるいは、ご質問でない場合でも結構 でございます。コメントだけでも結構でございます。  それでは、フロアのほうによろしくお願いします。  はい。 【参加者1】  会社を退職して、食品化学学会のボランティアなんかをやっている中 村といいますけども、輸入食品の食品添加物について伺いたいんですけども、今日も生 協の方のお話しにあった、モニタリングとかいうことでマル・ペケを打たれているあれ は、添加物として使ってもいいかいけないかだけであって、私はずっと思うのは、例え ば我が国で許可されている事例を挙げれば、菜の花から作った紅こうじ色素を挙げれば、 シトリニンについて規制をかけているわけですね、不純物について。あるいは第8版 (食品添加物公定書)では、例えば赤色104号について、ヘキサクロロベンゼンの規 制をかけている。これは当然中国でも使える添加物であって、例えば梅干その他にそう いったものを使われてくるわけですね。  ところが、システムとして伺いたいのは、それは当然国内のトレーサビリティーでも、 生協さんも去年のミートホープのときには十分な対応がされていなかったように、なか なか日本に食品を輸入したり使用されている側から言うと、許可されているけれども、 規格に合ったものが使われているかどうか分からない。  例えば紅こうじ色素で言えば、シトリニンはなかなか難しいから、僕も添加物協会と も打ち合わせをしに行ったこともあるんですけども、なかなかそういった分析ができな いので規制がかけられないんだというお話なんですね。そうすると、私は二重規制にな っているんじゃないかと。日本においてつくっている方々は、例えば紅こうじのシトリ ニンはきちっと守ったものを使ってお使いになっている。しかし、輸入されてくる食品 に食品添加物の紅こうじを使った場合に、シトリニンは規制されてないものが来ている んじゃないかと疑わざるを得ない。あるいは104号についてもそういうふうに疑わざ るを得ないわけですね。その辺が、制度的にどうなっているのかなということを伺いた い。多分、そのことはお調べなされていないんじゃないかなと思って。お聞きしたいと 思います。よろしくお願いします。 【牛尾】  これはどなたにお答えいただくのがいいでしょうか。 【参加者1】  近藤先生にひとつお願いしたい。 【牛尾】  では、近藤さん。 【近藤】  ただいまご指摘のあった内容は、食品衛生法の中には規格基準というもの がございまして、その規格基準の中に、例えば添加物であれば添加物の規格基準が設定 されています。つまり食品に使用する食品添加物というものは、その規格基準に合致し たものが使われなければならないという規定でございます。無論これに合致しないもの については使えません。今のお話は海外で例えば使われている食品添加物が日本で規定 する食品添加物に合致しているか否か、これを確認しているかどうかというご質問だっ たと思います。  これにつきましては、まず確認の方法として申し上げれば、食品に使用された段階に おいて、そのもの自体が食品添加物の規格基準に合致しているかどうかを確認するのは 非常に困難です。まず無理と言ったほうがいいと思います。ですので、食品衛生法を遵 守するという輸入者の一義的な責任のもとに、海外において使用される食品添加物につ いては、その規格が日本の基準に合致しているということを確認していただくことが必 要であると考えています。  つけ加えて言うならば、食品添加物の検査というのは、先ほど生協さんの説明にもあ りましたが、海外において使えるもの、日本において使えるものが異なっている場合も あります。ですので、検疫所においては、先ほども申し上げているとおり、年度計画の 中で食品添加物というものについては従来より確認を行ってきておりますし、その結果 として、例えば代表例で言えばソルビン酸でありますとか、安息香酸でありますとか、 またはTBHQといった使えない添加物、このようなものも確認されて、輸入時におい て違反という形で処理をされております。 【牛尾】  輸入者のお立場として、何か今のご質問に対して回答はありますか。 【和田】  貴重な情報提供をありがとうございます。  確かにシトリニン、HCBといったところは、ご指摘のようにそういった問題はある ということなんですけれども、私どもの商品については、例えば赤の104と申しされ たところは、コープ商品自体には基本的に使用しないということにしております。紅こ うじのシトリニンにつきましては、まだまだ分析としては努力目標というようなところ でございますが、きょう情報をいただいておりますので、今後いろいろと、例えば海外 でつくる際に現地でどのような点検ができるのかということで考えていきたいというふ うに思います。 【牛尾】  ありがとうございます。  よろしゅうございますでしょうか。 【参加者1】  ありがとうございました。 【牛尾】  ありがとうございました。  では、そのほかに。はい、どうぞ。 【参加者2】  きょうは三重県から参加させていただいています西中と申します。  所属は行政ですけど、ちょっと提案というか、特に味の素さんとか、あと、輸入冷凍 の関係の方にお話を聞かせていただきたいんですが、2002年に確かに中国の話があ りまして、それ以来、先ほどからいろいろとありますマスコミの話と中国の話、これは セットになっています。マスコミの方々もほんとうに忠実にいろいろときちっと報道し ていただけるところもあるんですが、ご承知のとおり、三重県でもいろいろとありまし て、当初は和菓子屋さんで最終的には行政がたたかれるということになるんですけども、 そういった中で、先ほど消費者の方で勉強とかいろいろと話がありましたけども、やは りテレビを見て、おいしい、これが健康にいいというと次の日にはスーパーでなくなる ような、そういう状態の中で、なかなか消費者の方から勉強するというのは難しいのか なと思います。  そうした場合に、例えば私たちがよく仕事で回らせてもらいますと、原産国、加工食 品で、中国のものは、あんまり食べたくないんだよなという意見も確かにあるんですね。 でも、先ほどからのお話を聞いていて、中国もしっかりしているというのであれば、そ ういったことを大手の業界の方々がもっとPRしていくということはなかなか難しいん でしょうかね。そこら辺をちょっとお聞かせ願いたいんですが。 【牛尾】  どうぞ。 【河合】  どうもありがとうございます。  実はこの問題につきまして、我々のほうもメディアとの対話をどうしようかというこ ともありまして、先ほど来言っていますけど、中国のほうの関係者はぜひ来てほしいと いうことを、国を挙げてといっていいぐらい歓迎をしています。というのは、自信があ るからということの裏づけがあるんですけども、ただ、メディアが。  大手メディアは公平性ということがありますので、自分たちの費用で行かないといけ ないわけですよね。そうすると、どういった記事かっていうのを、書く、書かないとか 全部メディアがやりますよということなんですね。これからそういったことを、ずっと これ、話し合いをしながら決めていきたいと思っているんですけれども、大手のところ はそういった形で今交渉しようと思っています、実は。6月ぐらいがちょうど野菜がで きるころなので、そういったときに見てやったら、それが吉になるかどうかはわからな いんですけどやってみようかなと思うところなんですね。  その他の要するにいわゆる一般主婦の方向けの雑誌みたいなところは今大部分が無料 のフリーペーパーになっていて、それが結構人気があるんですけども、そこは一面をと るとやっぱり200万とか300万取るんですね。そうなってくると、そこをだれが払 うんだみたいなところになってきて、今ちょっとそこもどうしようかなと考えたりして います。  もう1つは、やっぱり消費者の方はなかなか難しいと言っていますけれども、実は消 費者連盟の方とかそういった方も、中国の方は来ていいですよと言われていまして、実 際見てもらうと、そこら辺で口コミみたいなものがあるんじゃないかなと考えています。 ですから、そういったことをこれからいろいろ向こうと話しながら、やっていこうと考 えています。もっといい案があったら、ほんとうは教えてもらいたいんですけども。  もう1つやろうと思っているのは、ホームページを利用しようというのも1つの手か なと。最近のメディア対策の1つですね。今ここの凍菜協のメンバーが19社あるんで すけれども、ひな形をつくって各社のホームページに載せてもらうような働きかけをし ています。ですから、どこを開いても、この中国の野菜の農薬管理はこのようにしてい ますとか、それに付随してちょっと虫が、やっぱり野菜の場合はどうしても枝豆とかエ ンドウ豆とかいうのは中に入っちゃって、なかなか選別でも難しいとか、そういった事 実をもうちょっと知ってもらったほうがいいかなというような形で、ホームページを利 用したものも今検討しているところなんです。  我々のほうとしてできるのはそんなことができるかなとは思っているんですけど、い いアイデアがあったらぜひお願いしたいなと思います。 【天明】  味の素でも、今言ったように凍菜協には味の素冷凍食品というものが入っ ていまして、中国の野菜ですよというのを売りにした商品というのも出しているんです ね。中国でちゃんと管理をされて、トレーサビリティーがしっかりとれて、ちゃんと管 理されたものを売っていますよということで、中国製品というものを売りにした商品と いうのを出して、中国はしっかりやっていますよということを消費者に対してアピール していくとか、あと、中国だけではないですけども、タイから輸入している鶏肉の加工 品がありますけども、それもタイの中でちゃんと契約して、えさとかすべて管理してい ますよとか、そういう輸入品に対して消費者に少しでもいい印象を持ってもらおうとい うような形で、商品ごとに特色を持ったものをつくっていきながらPRしていくという ことをやっていますし、あとは、ああいう団体の中でいろんな活動というのもいろんな 形でやっていきたいなと思っております。  以上です。 【参加者2】  ありがとうございました。  どこの国のものでもいいものはいいわけですから、胸を張ってPRをしていただける ようにしていただければと思います。 【牛尾】  きょうは、そう数は多くないんですが、消費者の方にもご参加いただいて いると聞いております。最終的にはいろんな情報が消費者に行き届いてご判断いただく というのが、我々行政のみならず企業にも必要だと思っているわけですけども、特に今 議論になっておりますいろいろなマスコミが提供する情報をどういうふうに受けとめら れているのか、逆指名のような感じなんですが、もし消費者の方でお越しになっている 方がいれば、ご感想でもご意見でもあればいただきたいんですが、いかがでしょうか。 いらっしゃいませんか。  どうぞ。 【参加者3】  神戸のほうで生鮮の輸入商社をやっているものです。  消費者の方がおられるということで、ぜひ聞いてほしい話なんですが、当社のほうで 農業新聞をとって購読をしています。中国の輸入商社なので、中国の味方をするわけで はないんですけども、中国の輸入商品から違反事例が出ると、各マスコミ、テレビ、新 聞、雑誌で、また中国の野菜から何十倍ものとかっていう具体数を出されて報道される。 じゃ、その0.01ppmという単位がどういう単位で、それが2倍の0.02ppmで どうなのかというところまで話はしたいんですが、そんな時間はありません。  ただ、知っておいてほしいのが、国産の野菜、JA何とかで生産された野菜何々から 違反事例が発見されましたと、こういう記事が農業新聞にはちゃんと出ているんですね。 ただ、顛末に、食べても人体に影響はない模様と、こういう一文が入るのが国産であっ て、実際にそんなに過大な問題はなくても誇張されて報道されるのが輸入中国野菜とい うふうに、僕たちは被害者というわけじゃないんですけど、そういうふうな差別、区別 じゃなくて差別が実際にあるなということを消費者の方には知っておいてほしいんです よね。  実際、僕が田舎に帰って祖母や近所の親戚の人に、「あんた、中国の野菜を入れてる んだって」というふうに言われるんですけども、これこそ間違った報道の結果だと思う んですよね。だから、消費者の方にはぜひそういうふうなことで、正しい情報をどうや って得るのかというのは永遠のテーマでしょうけども、中国だけが一概に悪いんじゃな いんだよということを知っておいてほしいということがまず1つ。  それで、なおかつ僕は売っていく立場なので、ぜひメーカー様に質問があるんですけ ども、実際に僕もいろいろGAPだとかそういうふうな面で、いろいろな農業というも のをもっと勉強しなきゃいけないというふうなことを思って、農薬の使い方とか、いろ いろなことを勉強している最中なんですが、トレーサビリティーというものでひとつ信 用をかち取る方法が今あると思うんですね。そのトレーサビリティーというもの最小単 位について、メーカー様や量販店様からよく違った意見を言われるんですが、例えば生 産者、農家、個人までという方もおられれば、生産者団体として何々地域、何々地区、 何々村と、そこまででいいという方もおられまして、これは多分グローバルギャップだ とかJGAPのその基準の違いなのか、まだ勉強の途中なのでちょっと偉そうに言えな いんですけども、そういうふうなところ、どこに基準を置いてトレースというものをお 話しされているのかお教えください。 【牛尾】  どうぞ。 【河合】  最後のトレースについてなんですけれども、今のトレースは、規模とかそ の産地の状況によってロット数を若干変えているところがあるので、ちょっと誤解をし ているかもしれませんけれども、基本的に地区地区で集めている農産物とか、大きいと ころで区画をきちっとしてやっている。我々がやっているトレースがきちっとできてい ますよというのは、そこの単位をどこまでやれば見れるかというところですね。そこを 基準にほとんど決めています。大体の大きいところですとこうだというのが決まってい ます。  ただ、商品によってはここの産地は全部一緒なので、そこを一括して管理しているみ たいなところはあります。ですから、商品によって若干違うというのはあると思います。 すべて同じ商品じゃないので、つくり方とかそういったものが違うので、それによって 合わせているというのが現状じゃないかなと思います。ですから、大規模農場であると 基本的にはわかりやすいんですけど、すべてがそうじゃないといったところで、いろい ろ聞いたときの答えが変わってきたんじゃないかなと思います。 【参加者3】  わかりました。 【牛尾】  いかがでしょうか。消費者の方、もしご参加いただいていたら、先ほどの ご指摘というか、お話にどう思われますでしょうか。なかなか手を挙げづらいですかね。  それじゃ、消費者を代表しまして飯田さん、いかがでしょうか。 【飯田】  どうするかですけど、私が思うのは、それぞれによって判断基準が違うの かもしれませんが、自分の信頼に足る情報源を持つことだと思いますね。私の場合、1 つは日生協さんであったり、あるいは身近な生協の方であったり、あるいは行政の出し ている情報であったりということになるんですが、一般の消費者の方から見ると、いろ んな事件や事故が起こって、要はどこを一体信頼したらいいのというふうになってしま っているということだと思うんですね。で、日常的に目にするテレビ画面からの情報が インプットされちゃうという、こんなことだと思うんですが、それが果たして正しいの かどうなのかということをあまり検証せずに口コミで広がっちゃうという、そういうこ とだと思うんですね。  だけども、ほんとうにこの情報が正しいのか正しくないのか、自分にとってどういう 有益な情報なのか、そうでないのかということを見定めるために、だれかが発表してい る資料だとか、あるいは言っていることだとかということを参考にせざるを得ないんで すね。知識がありませんので。そのときに、あの人の言っていることだったら、あの団 体の言っていることだったらということでしか、やっぱり最終は判断できないんじゃな いのかなと私は思います。 【牛尾】  ありがとうございました。  輸入食品の問題を中心としてご意見をちょうだいしてきましたが、そのほかの問題に つきまして、きょう、せっかく陶磁器及び乳幼児玩具の鉛の規格基準のお話もございま したので、全体を通じて、特に輸入食品ということにかかわらずでも結構でございます から、輸入監視指導計画についてでも結構ですし、それから、鉛等の規格基準の改正に ついてでも結構ですし、そのほかの食品に関するご質問、ご意見でも結構でございます。 いかがでしょうか。  はい、どうぞ。 【一般参加者4】  大阪検疫所の北川と申します。  おもちゃの規格基準の改正についてお伺いしたいんですけれども、現行規制ではポリ 塩化ビニール、ポリエチレン製のおもちゃについての規格基準が定められており、規格 基準のないものについては着色料の製造基準のみ定められていると思うんですけれども、 そのほかのポリエチレン製やその他の材質についてのおもちゃの規格基準というのは、 なぜ新設されないのでしょうか。 【牛尾】  身内からの質問ですが。 【光岡】  今回、実を言うと塗料についての規格を塗装全般に広げますと。これは材 質によらず広げますというところで、規格を新たにつくるという形を考えてございまし て、それで、その素地でありますとか基材といいますか、そこの部分については実際は 今回は改正をする予定は今のところは立っていない状況なんですね。  それで、今回なぜ塗装を新たに、材質によらずに全般の規格基準にしたかと申し上げ ますと、16年度から17年度に厚生労働科学研究のほうで鉛やカドミウムとか砒素と か重金属の分析を今までやってみますと、やはり出てくるのは塗装の部分になるんです ね。今回はそういった鉛の緊急対策という意味合いもありましたので、現在のところは 塗装全般に規格基準をつくろうというものでございまして、もちろんその後、国際的な ISO規格に合わせていきますと、基材の部分とかそういうのも実は同じような規格が あるんですね。ですから、将来的にはそうしたISO規格に合わせるという方法も実際 はあるだろうと思います。  ただ、今のところ、日本の自主的な規格でありますSTの規格とかは、実を言うと塗 装しか規格を設定をしていないんです。大方日本で流通しているおもちゃの七、八割は このSTのマークがとられているものでございまして、そうした制度のスムーズな移行 ということも考えますと、今のところは塗装を先に導入したほうがいいだろうというふ うに考えたわけでございます。  実はこれはアメリカのほうでもASTMという自主的な規格があるんですが、アメリ カは公的な規格は材質規格しかございませんので、こうしたISO規格に公的な規格が 合っているわけではないんですが、ASTMというアメリカ材料協会のほうの規格も、 これも同じように塗装だけの規格を設定しているということもございまして、諸外国と の関係、規制の合理性とかそういったところの状況を見てみますと、今のところは塗装 から導入したほうがいいだろうというふうに思って、塗装について規格を定めたという ものでございます。 【牛尾】  よろしゅうございますか。 【参加者4】  ありがとうございました。 【牛尾】  それでは、大分時間も迫ってまいりました。フロアに限らず、今度は前に いらっしゃる方々で、ぜひこれは言い忘れたので言っておきたいということがございま したら、手短におっしゃっていただければと思います。あるいはフロアの方でも、ぜひ これは聞いておきたいということがあれば、手を挙げていただければと思いますが。  はい、どうぞ。 【参加者5】  ミツカングループ本社の野田と申します。愛知県のお酢の会社なんで すけれども、我々も中国に現地法人を持っていて、向こうは向こうの法律を守ってやっ ているんですけども、そのお得意先様が日本の冷凍食品メーカーさんで、中国に法人を 置いておられます。中国と日本の法律というのは微妙に違うものですから、きちっと現 場では中国向け用と日本向け用と仕分けして作っているんです。それがちょっと間違っ て日本の冷凍食品メーカーさんの現地法人に出荷されて、もうちょっとで日本に入る寸 前でした。安全性には全然問題ないんですけど、やっぱり法律が違うということで問題 になります。  現場も涙ぐましい努力でいろいろ頑張ってくれているんですけども、やっぱりダブ ル・スタンダードのものについて、見た目は全然変わらないものですから、我々は調味 料なんですけども、現場のマネジメントを皆さんはどうやられているのかなと。その辺 で何かヒントになるようなことがあれば。私も現場がちゃんとやってくれているので大 丈夫だと思うんですけれども、結構冷や冷やしながらという部分があるものですから、 ぜひともその辺のことでヒントになることがあれば教えていただければなと思います。 【牛尾】  企業秘密になります? 大丈夫ですか?。もし差し支えのない範囲で何か ヒントがございましたら。どなたがよろしいですかね。 【参加者5】  じゃ、河合会長にぜひともお願いしたい。 【河合】  実は、私どもも、これはさっき言ったニチレイのほうの会社、結構いろい ろありまして、そういったことで、基準の違いによってどういうことが起こるかみたい なところもいろいろ検証しているんですけど、最終的に我々が指導をしたのは、分けて くれと。これしかない。今はそれでやっています。将来的にもっと管理が進めば別個と して、今の段階では、日本向けはそこで限定してほしいと。ですから、国内に出すとこ ろから海外向けにはやらないでほしい。一緒にやっているところはやめました。  例えば輸入量が少なかったキノコ類は、やっぱり国内基準と日本向けの基準が違って 同じところでやっていたんですね。やっぱり間違えるんですよ、幾らトレースしていて も。担当者が変わったときに間違えたとかですね。こういったところは、基本的にそこ との取引はやめるというふうにする。もしくは、先ほど来、ちらっといろいろ、不幸に 10%ぐらい落ちている中の一部には、危なそうなのをやめているというのがあったと 思うんですけれども、やはりリスクを冒してまでやる必要は今の時代にはあんまりない かなと考えていまして、きちっとできればやりましょうというスタンスに切りかえたほ うが、私はいいんじゃないかなというふうに思っています。 【参加者5】  ありがとうございます。何とか踏ん切りをつけないといかんというこ とで。 【牛尾】  理想的には基準というものが全世界統一されればいいんだろうと思います けども、おそらくそうはならないんだろうと思いますね。食生活が違うということもあ るし、国の発展段階も違うということもあって、将来的にはできるだけそういう方向に 向かうよう、世界的な標準化に向けたさまざまな努力も国際機関はしているわけなんで すけども、大分時間がかかるんだろうというふうに思います。  大分時間が参りました。あと1問ぐらい、受け付けたいと思います。もしなければこ れで終わりたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしゅうございますか。  はい、それじゃ、どうぞ。 【河合】  何遍も申しわけないんですけど、ちょっと気になることというんですか、 きょう検査の方が講演したので、何となく皆さん方が見ていても検査というのが非常に 重要だというふうにきょうは思われたんじゃないかなと思うんですけれども、我々のほ うで実際やっているのは検査の工程管理をどれだけするかということ、今もHACCP もそうですし、もともとのゼロディフェクト運動のときもそうだったんですけれども、 生協さんなんかはちょうどその管理が強いので非常に安心しているんですけど、この工 程管理というのが非常に重要なんですね。  時々、流通さんのほうから検査証を出してくれないと信用しないよという話があって、 これはぜひ、工程表とか管理をどうやっているかというのに改めてもらいたいなと思う んですね。検査証を出したって何にもなりません、あれは。それをもらった、その商品 の検査証だったらまだいいんですけど、次もらったときはどうかわかりませんので、今 の状況を考えると、どういう管理をしているかというのが一番重要だと思っていまして、 特に海外の商品って、どうしてもどういう管理をしていますかというのを極力チェック していただいて、それで選んでいただくのが一番いいんじゃないかなと思うんですね。 そこのところだけ、ちょっと今日、検査のことが結構出てきたので、ぜひお願いしたい なと思います。 【牛尾】  よろしゅうございますか、ほかに。  どうぞ。 【佐藤】  検査のほうの立場から申し上げますと、検査がすべてではございませんで、 私どももISOの17025を取ってやっております。証明書というか、分析の結果の 報告書には、下のほうに、「この結果は提供された試料についての結果でございます。 母集団を証明するものではありません」というのを書きたいんですが、そこまでは書け ないんですけどね。とにかく、その与えられた、これを分析してくれと言われた、それ の結果ですよということを断っています。 【河合】  ありがとうございます。 【牛尾】  ありがとうございました。  それでは、活発なご意見をいただきましてありがとうございました。予定の時間が迫 っておりますので、マイクを司会のほうに移したいと思います。ほんとうに皆さん、あ りがとうございました。 【司会(吉川)】  以上をもちまして、「食品に関するリスクコミュニケーション」を 終了させていただきます。  本日は長時間にわたり、また貴重なご意見をいただきまして、まことにありがとうご ざいました。  出口におきまして、アンケートの回収を行っております。今後のリスクコミュニケー ションの参考とさせていただきますので、ご協力をよろしくお願いいたします。  また、お近くでこうした意見交換会を開催することがございましたら、ぜひともご参 加をお願いしたいと思います。  それでは、皆様、どうぞお気をつけてお帰りください。  本日はどうもありがとうございました。    照会先:食品安全部企画情報課                      03-5253-1111(内2493,2452)