06/04/27 平成18年4月27日(東京都)食品に関するリスクコミュニケ−ション (残留農薬等のポジティブリスト制度の導入に際しての生産から消費までの 食品の安全確保の取組みに関する意見交換会) 食品に関するリスクコミュニケーション (残留農薬等のポジティブリスト制度の導入に際し ての生産から消費までの食品の安全確保の取組みに 関する意見交換会:東京都)議事録 平成18年4月27日 日本教育会館ホール ○司会(森田厚生労働省食品安全部企画情報課情報管理専門官) こんにちは。皆様、 本日は御多忙の中、御参加をいただきましてありがとうございます。ただいまから「食 品に関するリスクコミュニケーション(残留農薬等のポジティブリスト制度の導入に際 しての生産から消費までの食品の安全確保の取組みに関する意見交換会:東京都)」を 開催したいと思います。私、本日の司会を務めさせていただきます厚生労働省食品安全 部企画情報課の森田と申します。よろしくお願いいたします。 残留農薬等のポジティブリスト制度につきましては、昨年度、制度の内容というもの を知ってもらうことを目的として全国で意見交換会等を行ってまいりました。本日の意 見交換会は、生産から消費までのフードチェーンの各段階の方々から残留農薬等のポジ ティブリスト制度に関する取組みの紹介をいただきまして、それを踏まえて関係者間で 問題意識を共有し、相互理解を図ることを目的として開催するというものでございます。 それでは、最初に配付資料の確認をさせていただきたいと思います。 封筒を開けていただきますと、議事次第がございます。そこの下の方に、配付資料が 書いてございます。 見ていただきますと、資料1〜9というものがございます。それは次の紙以降、右肩 の方に資料1、資料2と書いておりますけれども、これで資料9までちゃんとあるかど うかというのを御確認いただければと思います。 参考資料といたしまして、残留農薬等のポジティブリスト制度のパンフレットを御用 意させていただきました。 それから、アンケートを同封させていただいております。これは今後の参考にさせて いただきたいと思いますので、お帰りの際に出口に回収ボックスを設けておりますので、 そちらに提出いただければと思います。 資料の不足のある方は、手を挙げていただければ担当の者が伺いますので、お申し付 けください。 続きまして、本日の議事進行を紹介させていただきます。 まず、残留農薬等のポジティブリスト制度の導入について厚生労働省及び農林水産省 から簡単に概要を説明し、その後、生産から消費までの各段階の関係者4名の方から15 分ずつ程度、ポジティブリスト制度に関する取組み等の御紹介をいただきたいと思って おります。 その後、10分程度休憩を取らせていただきまして、2時35分からパネルディスカッ ション、意見交換を行いまして、午後4時終了を予定しております。 それでは、早速ではございますけれども、残留農薬等のポジティブリスト制度の導入 について、厚生労働省食品安全部基準審査課の河村課長補佐、続きまして農林水産省消 費・安全局農産安全管理課農薬対策室の横田室長から続けて御説明いたします。 ○河村厚生労働省食品安全部基準審査課長補佐 厚生労働省食品安全部基準審査課の河 村でございます。よろしくお願いします。 今日は、農薬等のポジティブリスト制度の 概要につきまして簡単に御説明申し上げます。資料につきましては、資料1とカラーの パンフレットがございます。これが参考資料ということで見ていただければと思います。 資料につきましては、非常に詳しめに、農薬についての基準はどういうふうにつくる のかという部分から掲載してございますけれども、今日は説明については時間にかなり 限りがございますので、その中から必要なものをスライドに用意してございますので、 それで説明したいと思います。 (PP) ポジティブリストというふうに呼んでおりますけれども、では、そもそもポジティブ リストとは何かをここで説明してございます。 一般的には、ポジティブにつきまして相対する言葉はネガティブという言葉がござい ますが、それぞれ明確にどこかで定義されているものがあるかというと、そうではござ いませんで、一般的な考え方としましてこういったものですというのがここに示してご ざいます。 ネガティブリストと申しますのは、原則、規制がないというような状態で規制するも のについてリスト化する、一覧表にして並べるというようなものがネガティブリスト制 度と呼ばれてございます。化粧品などで使用できる物質がこの規制の例として挙げられ るということで、特に全体的な規制はないんですけれども、使ってはいけない物質がリ スト化されていて規制されているというのが1つ事例としてございます。  それに対するのが、ポジティブリストということで、原則、何らかの規制がある中で 使用等が認められるもの、また基準が決められているものについてリスト化するという のがこの制度でございます。既に食品衛生法では、食品添加物の規制がこの規制でござ いまして、原則使用してはならないという中で、厚生労働大臣が使用を認めるものにつ いて使用基準、また使用対象などを決めてリスト化して規制しているというものがござ います。 この区分の中でいけば、これまでの食品衛生法の中で残留農薬等の規制についてはネ ガティブリストというような分類に入っていたということでございます。それが今回、 大きく転換した形で、その下のポジティブリスト制度というような規制のやり方に移行 するということになります。 (PP) 一般的に、食品中の残留農薬等のポジティブリスト制度というのをどう表現している かということでございますが、基準が設定されていない農薬等が一定量を超えて残留す る食品の販売等を原則禁止するということで、基準等が設定されていない農薬というも のについて、まず大きく網をかけて規制しましょうというような考え方になっておりま す。 そもそも、この制度を導入する経緯を申しますと、平成7年に一度、食品衛生法を改 正してございます。そのときの衆議院、参議院の附帯決議の中で、農薬の規制について はこういったポジティブリスト制度の導入を視野に入れて検討しなさいという宿題をい ただいてございます。 また、最近の輸入食品の増大、農薬に関する違反事例がいろいろございまして、国民 の皆様に食品中の残留農薬等の問題について関心が高まったということがございまして、 平成15年に食品衛生法の大きな改正がございましたけれども、その中でこの制度を導入 するというふうに決めて、3年間の準備期間を経て、今回施行という運びになったとい うことでございます。 この中で「一定量を超えて」と記載してございますけれども、 そもそも、規制をするに当たって、ゼロ規制の方がいいのではないかというような考え 方もあるわけですけれども、こういったものにつきましては分析の問題等でなかなかゼ ロにするのは非常に難しいということがございます。 それで、化学物質として許容できる摂取量、また国民の皆さんの食品の摂取量という ものから検討して、人の健康を損なうおそれがない量ということで一律基準と呼んでい ますけれども、0.01ppm という値をもって全体的な網をかけましょうというふうな規制 にしてございます。 では、言葉で言ってもなかなか難しゅうございますので、次の図でお示しします。 (PP) これが、これまでの農薬の規制の概念図でございます。 農薬とか、飼料添加物とか、動物用医薬品というのは世の中にいっぱいあるわけです けれども、この大きな外枠の白ぬきになったところでございますが、その中で、これま で食品衛生法で基準が定められているものというのは250 の農薬、また33の動物用医 薬品等に基準が定まっておりまして、当然、この基準を超えてこれらが残留する食品と いうのは食品衛生法違反で、販売等の流通が禁止されるということでございますが、基 準がないもの、この外枠の部分でございます。これらについては基準がないということ で、そもそも規制の対象にならないということがございました。その辺の部分がもっと 強化していいのではないかとが指摘されていたわけでございます。 (PP) これが、ポジティブリスト制度以降の概念図でございます。先ほどのとおり、農薬と か飼料添加物、動物用医薬品というのが世の中にいっぱいございます。それが、この外 枠でございます。 まず、先ほどの「残留農薬等のポジティブリスト制度とは?」と書いてございました 一定量で規定しましょうというのが、この真ん中の部分でございます。人の健康を損な うおそれがない量として厚生労働大臣が一定量を告示する。先ほど言いました0.01ppm で全体を規制しましょうということでございます。ただし、残留基準が個別に定まって いるものについてはその基準で規制しましょうということで、この部分でございます。 そもそも、残留しても健康影響がない物質もございます。そういったものについては、 人の健康を損なうおそれがないことが明らかであるという物質として対象外物質という 形で、この制度の対象外ですということで今回65の物質を告示しております。この大き な3本柱でこの制度は成り立っているということでございます。 ただ、この残留基準を定めるということに当たりまして、従来の規制のままでいきま すと、先ほど言いましたように、農薬でいけば250 、動物用医薬品でいけば33と、全 体の農薬や動物用医薬品の数から行くと、基準が定まっているものは非常に少のうござ います。日本国内で、使用が認められている農薬とか動物用医薬品であっても、基準が ないというものがまだたくさんございましたので、そのままこの制度へ移行しますと、 残留基準がないということで、多くのものに一律基準が適用され、過剰な規制になりか ねないということがございました。そのため、今回いろいろ国民の健康の保護という観 点、また、この制度の円滑な施行という観点から、まずは国際基準、農薬取締法の登録 保留基準、海外の基準を参考にして、この制度を導入するに当たって新たに基準を設定 しまして、最終的に250 から、この5月29日の施行のときには799 の農薬、動物用医 薬品、飼料添加物について残留基準を置いて、それで規制するというふうにしておりま す。 今回そういった新たに基準を置いたものにつきましては、今後、食品安全委員会等の リスク評価を経て基準を見直していくというような作業もしていくことにしてございま す。 いずれにしましても、この施行に当たりまして、新たに残留基準を定めた部分がござ いますけれども、現行の基準については改正等を行ってございません。また国内であれ ば、そもそも農薬というのは農薬取締法の方で使用基準等がきちっと定められてござい ますので、その使用基準を守って適正な管理で使用していただければ基準値を超えるこ とはないというようになってございます。 また、この制度自体はネガティブリスト制度からポジティブリスト制度というような 大きな転換がございましたけれども、制度を変えたことによって、検査の実施とか検査 結果の提出を義務付けるといったことは一切ございません。そもそも、検査のみでその 食品の安全性を確保するというのは非常に困難でございまして、全部検査すると食べる ものがなくなってしまうわけですから、そういったもので食品の安全性を確保するのは 非常に限界があるということがあります。 食品中に残留する農薬は、そもそも生産段階での管理、適正使用が非常に重要という ことは従来どおりでございますので、この制度が始まってもその考え方は変わるもので はないということを十分御理解いただきたいと思います。 (PP) 最後になりますけれども、厚生労働省ではこの制度に関しましてホームページ等でい ろいろ情報提供をしてございます。法令の内容とか基準値、また試験法の関係、Q&A というものを掲載してございますので、一度、訪ねていただければと思います。 また、Q&Aにつきましては随時、こういった意見交換会でいただいたものも含めま して更新しておりますので、一度ごらんになっていただければと思います。 以上、短い時間で恐縮でございますけれども、ポジティブリスト制度の概要について 御説明させていただきました。 ○横田農林水産省消費・安全局農産安全管理課農薬対策室長 続きまして、主に農薬取 締法に関する話をしたいと思います。私、農水省の農薬対策室の横田と申します。よろ しくお願いします。 (PP) 皆様方、御存じのとおり、植物には病気とか害虫が発生しますので、農薬を使わなけ ればこういうふうに、例えばトマトであれば枯れ上がってしまったり、リンゴなどです と、ときどきリンゴを割ったら中から虫が出てきたというようなことにもなりかねませ ん。 (PP) 農薬を使用した農産物の安全性確保につきましては、4段階で安全性確保が行われて います。 1つが、農薬の登録制度。ここで農薬自体の安全性チェックを行い、2つ目が、3〜 4年前に事件がございましたが、無登録農薬の取締り。3点目で、農薬の正しい使用。 4点目で、今度は農作物中の農薬の監視という4点セットで農産物の安全性の確保が行 われております。 (PP) 「農薬登録制度による安全性チェック」というのは、先ほど国際的に約800 ぐらい農 薬等が使用されているとございました。国内で使用できる農薬というのは、そのうちの 4割程度、320 ぐらいしかありません。なぜならば、国内で農薬を使用する際には日本 において農薬取締法に基づき農薬登録を取らなければ使用できません。ですから、そう いう意味ではほとんど半分以上のものについては日本国内では使用できないという現状 です。 日本国内において、農薬登録を取るときには、いろんな科学的データ、毒性試験をや ったり、あとは動植物の体の中で、この化学物質がどういうふうに代謝されるのか。更 には、環境中への影響がどうなるのか。農作物中の残留がどうなるのか。これだけの試 験をやった上で農薬は登録されます。一般的には、1つの農薬が登録されるまでに十数 年、数十億円という時間とお金がかかります。 (PP) 先ほど、使用方法との関係がありました。例えば、残留基準と実際の農薬の残留程度 の関係で言いますと、残留基準が0.5ppmみたいな基準があったとして、実際に使用する 方法、こういうふうに使用基準というものを定めていきます。使い方です。 そのときに、実際に出る農薬というのはこの程度です。要するに、この0.1ppmちょっ とと0.5ppmの関係を見ていただければ、すぐに何かのことがあったとしても、残留基準 を超えないという形で使用方法のチェックが行われていっております。 (PP) 実は、3〜4年前に無登録農薬を輸入して勝手に使っていたという事件がございまし た。従来、農薬取締法は販売者に対して無登録農薬を販売してはいけないという法律の 規制になっておりました。それを平成14年12月に改正いたしまして、農薬登録を取ら ない限り、勝手に輸入したり、販売は当然ですけれども、勝手に使用してもいけないと いう形で規制を強化しております。 (PP) 更に、先ほど使用方法をきちんと守れば大丈夫というお話が厚生労働省からもありま したが、以前はできるだけ使用方法は守ってくださいという規制を行っておりましたが、 平成15年3月に施行されました新しい農薬取締法におきましては、使用者はその農薬、 使える作物が決まっています。作物を守れ、使用時期を守れ、使用回数を守れ、使用量 とか希釈倍数を守れ。これを守らなければ罰金刑なり懲役刑がかかってきます。それぐ らいにがんじがらめの中で農薬は使用されているというのが現状です。 (PP) ポジティブリスト関連の資料がありましたが、省略しましたけれども、今回、農業生 産場面で何が問題になっているかといいますと、今の現行基準、更に先ほどお話があっ た国際基準も入ってくる。国際基準が入らないところには、一律基準が入ってくる。 この関係で何が心配かといいますと、農薬をまいているときに風がさっと吹いたりす れば横の作物にかかってしまう。そのときに、例えば米とかリンゴに農薬をまいていて キャベツにかかって、この一律基準をオーバーしたときにどうしようかということで心 配になっています。 (PP) 私どもで、今、農業生産現場の方々と相談しながら対策を進めているのは、1つは、 先ほどあった農薬使用基準。適用作物とか、使用量とか、使用時期とかをきちんと守れ。 基本に戻ってください。更には、農薬については、例えば農薬をまくときにいろいろ注 意すべき事項があります。 (PP) 散布するときの風向きとか風速を見てください。風が強いときにまいてはだめです。 できるだけ、作物に近接したところから散布してください。 圃場の端で散布して、隣の畑と近付いていれば、隣の作物にかかる可能性があるから 注意してください。 こういう農薬の飛散が起きないような対策を、今やっていることよりも少し注意して やってください。それによって、農薬の飛散の心配はなくなります。 ただ、ここで御注意いただきたいのは、農薬を使用するのは農家の方々だけではあり ません。例えば、立派なおうちにお住みの方は樹木などがあると思います。安易に樹木 に農薬をかけて、それが横に畑があって、横の畑にかかってしまった。それによって基 準値をオーバーするようなことがあった場合には、当然ながら農薬を自分の家で庭木に 散布していても加害者になり得ますので、すべての農薬散布をする方がこういうことに 注意する必要がありますので、こういう辺りについては全農薬使用者に対して私どもの 方でも指導の徹底を図っていきたいと思っております。 (PP) 最後になりますけれども、私どもの方でも農業生産現場においてきちんと農薬を使っ ていこうということとともに、先ほど言ったように、風が強いときに農薬散布はできる だけやめましょうというような農薬散布上の技術的なテクニックについての指導をなお 一層進める予定にしております。 農業生産現場においては、ここまで注意して農薬散布を行っております。是非、皆様 方におかれましても、農薬散布によって何か危ないことが起こるのではないかと過剰反 応をしないように、冷静な対応という形で取り組んでいただければと思います。 はなはだ簡単ですけれども、以上で終わらせていただきます。 ○司会 次に、生産から消費までの各段階の関係者4名の方から、残留農薬等のポジテ ィブリスト制度に関する取組みなどについて御紹介いただきます。 最初は、JAしもつけ栃木トマト部会の大山寛様から「とちぎの特別栽培農産物の取 り組み」です。よろしくお願いいたします。 ○大山氏 ただいま御紹介いただきました、栃木からまいりました大山です。よろしく お願いしたいと思います。 私は、今、説明がございましたように、トマト栽培をやっております。これは施設園 芸の中のトマト栽培であります。 今、私の会社は社員、パートなどを含めまして、今、10名で1ヘクタールほどの規模 のトマトの栽培をしております。1ヘクタールといいますと、皆さんちょっと想像がつ かないかもしれませんけれども、トマトの本数ですとちょうど2万1,000 本ほど植え付 けされています。年間の収穫量というのが、今、約二百五十トンほど出荷しております。 そういう中でトマト栽培をやっております。 (PP) 今、農薬の問題がありましたけれども、我々は特別栽培農産物ということで、これは 皆さん、言葉はお聞きになったことがあろうかと思うんですが、従来の慣行の農薬散布 回数を2分の1に減らそうというようなことで2分の1以下の農薬散布にしようと。あ と、化学肥料を2分の1以下に削減していくんだということで、申請いたしましてきち んと認可をいただいたものが特別栽培として販売していくんだということであります。 今、農水省の方からも説明がありましたように、非常に農薬は規制が厳しいものであ ります。そういう中で、その中での半分以下の散布回数でこういうふうな野菜をつくっ ていこうということが非常に技術的にも、あるいはいろんな面で、かなりお金もかかり ますし、難しい面があります。 (PP) 農薬を減らすためには、耕種的防除。これは、特に人の手によって害虫を取ったり、 あるいは病気になりそうな病葉を取ったり、こういうことを常にやっているものですか ら、非常に労働的に人件費がかかってしまいますが、どうしても農薬を減らすというこ とになりますとこういう努力も当然やっていかないとなかなか減農薬の方には進んでい かないというのが現状であります。女性が中心になりますけれども、こういうふうな手 作業で害虫あるいは病葉を削除していくというのも積極的にやっております。 (PP) あとは、今、物理的防除ということを取り組んでおります。これは特に、土耕栽培を やっているものですから、土壌の連作障害を防ぐために、今まで臭化メチルと農薬等を 使って消毒をやっていたんですが、これは還元消毒法といいまして、特に米ぬかを圃場 に約十アール当たり1トンぐらい米ぬかを散布いたしまして、その上にビニール、透明 フィルムをかけます。そして、これはちょうど時期的にはこれから6月、7月、8月と、 非常に温度の高い時期に、この消毒法を実際に行っています。 そうしますと、勿論、天窓は密閉状態にするものですから、ハウス内の温度が約五十 度を超えます。そういうふうな中で、約一か月間弱、25日からそういうふうな状態にし ておきますと、米ぬかが熱によって発酵します。そして酸欠状態になりまして、土壌が 還元状態になる。あるいは、夏、密閉するものですから、地温が約四十二度ぐらいに上 がってきます。それが20日間ぐらい続きますと、土壌消毒的なものができます。 そう いうことで、有機物の大量投与と土壌消毒を兼ねまして、こんなようなやり方でできる だけ臭化メチル等を全然使わないような方法での土壌消毒等も行っております。 (PP) それと、ちょっとわかりにくいかもしれませんけれども、防虫ネットなんですが、当 然、害虫予防には表から入れなければ、先ほど還元消毒をやりましたということで説明 しましたけれども、かなり高温で、1か月近く置いておくものですから、ハウス内には 当然、害虫等はおりません。 そういう中で、ちょっと見づらいと思うんですけれども、この表に張ってある部分が、 現在0.1 ミリ目のネットを張っておきます。このハウスの周り、全体的にこういうふう なネットを張ることによって、表からできるだけ害虫をハウスの中に入れないような工 夫をしております。そういうことに物理的な防除をできるだけやりながらハウス内の環 境を整えていくと。そんなことの中で、農薬回数を考えた散布方法でやっております。 (PP) あとは、昔、よくありましたハエ取り紙といいますか、粘着テープです。このテープ はかなりねばねばした粘着テープになっております。 虫自体が、その虫の種類によって違うんですが、若干、黄色が好きとか、青が好きと かという虫の種類があります。そういう中で、黄色が好きな虫も結構いるものですから、 こういう黄色いテープを張ることによって、非常に虫がここに寄ってきて、多分、この 写真も、ぶつぶつ黒いのがぽんぽんとあるのが虫がくっついた、そして殺虫効果がある というような状態です。こういうものも張りながら、できるだけ農薬の回数を減らそう というような努力もしております。 (PP) 今は、農薬といいましてもいろんな農薬がございます。先ほど農水省の話がありまし たように、規制の厳しい中でも、今、非散布型農薬というふうな農薬の種類があります。 これは、黄色いテープなんですが、この黄色いところに虫が寄ると、今、お話ししま したように、ここに農薬といいますか、ふ化防止剤が塗ってありまして、虫は黄色が好 きなものですから、この黄色いところに虫が一旦寄ると。その虫が、葉っぱの裏に入っ て卵をなす。卵を産んでも、その卵はふ化しないというような農薬の種類のテープであ ります。こういうふうな農薬を使いますと、全然散布しなくても害虫予防になります。 残念ながら、今、温室コナジラミという虫だけにしか効果はないんですが、そういう ものも使いながら、現場では、今、栽培をしております。 (PP) 「トマト栽培の環境」と書きました。この環境というものが非常に重要な部分であり ます。 当然、旬の作物、旬の野菜ということを昔はよく言いました。今は、こうして、その 中で栽培しているものですから、本当に旬がわからなくなったというようなことを言い ます。 その旬の野菜は何でおいしいかということを考えてみますと、その野菜に一番合った 環境でつくられるから健全に生育する。健全に生育すれば、農薬などは少なくて済む。 そして、やはりおいしいものができるというような、非常にそういう環境が大事なのか なと思っております。 従来は、こういう施設園芸というのは、冬、出荷量が少ないときに暖房をたいて、付 加価値を付けて、少しでも有利な販売をしていこうというような経営の中で野菜栽培を しておりました。そういう中で、今回、私がつくっているハウスは、こういうふうな軒 の高いハウスであります。 そういう中でトマトを栽培しているんですが、作業などはこういうふうな作業台車な どを使いまして、高いところの作業をしながらトマトを作っているんですけれども、非 常に、このハウスの中の受光体制、トマトの葉っぱが光を受ける態勢が非常に改善され まして、真っすぐ上がるものですから、非常に光を十分に受ける。あるいは真っすぐス トレートに上がっていくものですから、ハウス内の風通しが非常によくなるとか、非常 に大きな効果があります。 当然、光が十分に葉っぱに当たれば、そのトマトは健全になりますから、病気にかか りにくいトマトになっていく。そして、風通しがよければ、当然、風が流れれば葉っぱ に水滴とか、湿度などもかなり下がるものですから、どうしても病気になりづらい環境 ができるというのが、このハウスの特徴でありまして、非常に大きな成果を上げること ができました。これは農薬散布回数が何回減るんだというふうに具体的な数字は出ませ んけれども、私どもこのハウスでトマトを栽培していまして、従来よりもかなり、2割 ぐらいの農薬散布量は減ったかなと思っています。 (PP) 今のハウスの特徴と仕様を表したんですが、従来、このハウスの高さというのは、こ こは3.8 メーターと書いてありますけれども、従来は2メーターぐらいのところ。例え ば人間が管理するのにも、収穫するのにも手が届いて管理できるというぐらいな、2メ ーターぐらいのハウスの中で栽培していたものですから、トマトもだんだん大きくなり ますと斜めに誘引していく、斜めにはわせていく。そして、人間が常に手の届くところ で作業するというような環境でやりました。 どうしても、そういうふうな斜めですから、先ほど言ったように過繁茂になる、ある いは風通しが悪くなる、病気の発生も多くなるというふうな条件だったんですが、ちょ うど、この黒い丸いものから下まで3メーター20ほどあるものですから、常にトマトは 真っすぐ上がってくると。それで、下の収穫が終わったら下葉をかきましてどんどん下 げてくるというようなつくり方をしています。 私のトマトは昨年8月18日に収穫を開始しました。まだ収穫最盛期であります。6月 いっぱいを収穫予定にしております。約9か月間ほど、トマトを栽培、収穫しているも のですから、トマトの長さが実際には7メーターあるいは8メーターほどの茎だけが長 く残ってきまして、それで上がってトマトを収穫しているというのが私のハウスの特徴 でありますし、そういう環境を整えることによって、今、非常に問題になっているポジ ティブリスト関係の農薬の使用回数などもかなり減らすことができるようになりました。 非常に環境が大切だと感じております。 (PP) 栽培履歴。特にこれは消費者の皆さんとかは非常に関心が高いものだと思います。 私が記帳している履歴を、デジカメで撮ったものですから見にくいと思うんですが、 こういう形で、どういう農薬を幾々日に何回かけたか。希倍数が何倍だとか、全部記録 しています。それとか、農薬といいましてもいろいろありまして、1つの農薬の名前に 2成分ある農薬もございます。そういう中で、常に1成分、あるいは農薬としてカウン トしないようなものですとか、そういうことを常に使用した日に記帳する。 これは、我々、先ほど紹介がありましたように、JAで出荷しているものですから、 常に毎月、記入したものをJAの担当者がチェックしていく。全部検印を押していくと いうような仕組みになっています。当然、もし必要があれば、いつでも開示ができるよ うな体制は取っております。常に開示をするわけはないんですが、常にこういうふうな 形で記帳しています。 前後してしまいましたけれども、こちらは年間の計画の方です。年間、こういうふう な幾々日ごろ、どういうふうな農薬を使っていますという年間計画をきちんと立てて、 こちらは実使用、かけた日あるいは回数等を記帳しております。そういうことによって、 自分がどういう農薬を法に準じて、どういうふうな希倍数、あるいはどういうふうな成 分回数をかけたかということがいつでもわかるような体制は取っております。 (PP) これは、おまけなんですけれども、今、非常に食育とかそんなふうな言葉が盛んに言 われています。なかなか、今、子どもたちは実際に農業現場に入ってくることが非常に 少ないです。 私のところは、ここ数年、子どもたちをこういう形でハウスの中に入れまして、収穫 の最後のころ、自由にもぎさせます。非常にいい顔をします。農業現場で自分で収穫し たという経験がないものですから、非常に明るい、すごくいい顔をします。そして、本 当に喜んでくれます。そういうことをやりながら、農業の現場の考え方、やり方という ことを是非、少しでも多くの人にも理解していただくように、今、努めております。 以上で、私の話を終わらせていただきます。ありがとうございました。 ○森田 ありがとうございました。 それでは、続きまして、財団法人食品産業センター技術部長の塩谷茂様から「『食品 中に残留する農薬等のポジティブリスト制度』に関する留意事項」です。よろしくお願 いいたします。 ○塩谷氏 今、御紹介にあずかりました、食品産業センターの塩谷でございます。今日 は、この演題に沿いましてお話しさせていただきます。 (PP) まずは、食品産業センターの御紹介でありますけれども、会員として団体会員、企業 会員、そして個人会員等で約四百の会員がございます。このような会員の御意見を伺っ て、本制度に対しては関係各省に対して要望いたしました。 そして、円滑な導入が諮られるということになりますが、皆さん既に御存じのように、 食品産業というものは中小の企業がほとんどでございます。したがって、5月29日から 制度が施行されますけれども、今、それに際してのQ&Aも出ておりますけれども、本 制度の概要について、そして、制度の運用の留意事項ということについてお話しさせて いただきます。 (PP) まず「制度運用の留意事項」ということです。 (PP) ここに書いてありますけれども、日本国内では、先ほどの農林水産省の方のお話のよ うに、農薬取締法に基づき遵守・管理されていれば、残留農薬を超えることはないと。 諸外国においても、基本的にはそのような規制が行われているという点が2点であり ます。 3点目には、国内に流通する食品は、都道府県等で、そして輸入食品は、検疫所でモ ニタリングが実施されて、違反事例などの結果が公表されるということがありますので、 本制度は、リストに掲載されているすべての農薬等について検査・分析を義務付けるも のではないということであります。 (PP) 運用のその次でありますが、これはよく皆さん誤解されやすいところですが、本制度 の施行によって、使用農薬等の使用範囲が広がる、種類が多くなるということはありま せん。 それと、国内においては、これまでどおり農薬取締法で決められた農薬しか使 用できないということを御留意ください。 (PP) こういう状況で、原材料についてですが、農畜水産物の安全性を確保するように努め るということが第一義的でありますけれども、これについては国や都道府県のモニタリ ング結果をよく踏まえて、原材料の農薬等の使用実態や管理状況を調べて、適切に生産 管理された農畜水産物を調達するということであります。 検査・分析は、必要に応じて農薬等の使用が適正であるかをモニタリングするために 行うものであるということから、食品製造業者・流通業者は、このような趣旨をよく理 解して、原材料や生産工程に関する適正な情報入手に努めていただきたいということで あります。 (PP) 今のは、運用の留意点ということでありますが、具体的な制度対応への手順です。 (PP) まず、この制度の対応ということでありますが、もう一度繰り返しになりますけれど も、農薬などは適正に使用が管理されていれば基準を超えることがないということから、 第一義的には生産者が安全性を担保する義務がありますが、製造・加工に当たっては食 品衛生法に適合した原材料を使用することとされていることから、各自が法令順守に努 めてくださいということが基本的な考えであります。 (PP) まず、1でありますが、原材料生産地における使用実態等の情報収集をしていただき たい。この情報収集というのがポイントでありまして、厚生労働省や都道府県が公表す る違反事例、主な生産・流通段階での農薬等の使用実態等を参考に、残留の可能性のあ る農薬等の把握に努めていただきたいということであります。それで情報を入手して、 その可能性を自分たちできちっと掌握するということが一つのポイントになるというこ とであります。 (PP) 次に、検査・分析でありますけれども、使用農薬の実態を把握した上でということで ありまして、念のため原材料などにおける残留状況を把握したい場合には、先ほど前の スライドで述べましたように、情報をきちっと掌握して、その可能性のある農薬等につ いて検査を行うということが留意点のその2であります。 (PP) これは少々見づらいので、中身は説明しませんが、先ほどのように農薬Aというもの が検出された場合の食品規格の適合性の判定のデシジョンツリーをここに供覧しました。 ちょっと見にくいのでございますけれども、食品産業センターのホームページにこの 留意点を載せておりますので、それを御参照ください。 (PP) 3番目に、最後になりますけれども、重要なことはやはりコミュニケーションという ことが必要になります。後ほどスライドでお見せしますが、これは外部コミュニケーシ ョンで、これが内部コミュニケーションで、この2つのコミュニケーションをきちっと 実施していただきたいということです。 1つ、外部コミュニケーションとしては、卸売業者とか、小売業者あるいは消費者に 対しては、ここに書いてありますが「原材料が適正に管理されていること」や「農薬等 の使用基準が従前と変わるものではないこと」の理解を促すというコミュニケーション を取っていただきたいということが1点であります。 2番目には、納入業者に対しては「食品衛生法に適合した原材料」であるということ について、常に情報の共有化を図るという、この2ウェイのコミュニケーションが必要 であるということであります。 (PP) これは、内部コミュニケーションということで、大きな企業ほどよくあるようなこと が考えられますけれども、これは1つの組織の中での話でありますが、本制度の趣旨を、 周知徹底するということである。 特に、ここに2つ書きましたけれども、工場等製造設備、そして原材料・製品保管倉 庫等の、消毒を実施される場合があると思いますけれども、その際の交差汚染がないよ うにふき取りをちゃんとやるとか、洗浄をやるということ等を注意していただきたいと いうこと。 もう一つは、やはり製造部門や物流部門。特にアウトソーシングしている場合は、委 託業者さんに対してコミュニケーションをきちっと図るということが必要であるという ことでございます。 色々申し上げましたけれども、最後になります。 (PP) やはり、情報の入手。そして、それを的確に掌握するということが1つ、この制度を 円滑に運営するのに必要な事項と考えますので、ここに例として述べましたが、先ほど ありましたが、厚生労働省のポジティブリスト制度について出されておりますQ&A、 監視業務のホームページ、そして当センターの留意事項について、このようなホームペ ージを載せておりますので御参照ください。 ただ、ほかにも都道府県等からも同じようなホームページで情報の提供をしてあると 聞き及んでおりますので、その部分も十分に留意されて情報の収集を図るということが、 この制度を円滑に運用するということの留意点の一つと考えられますので、よろしく御 配慮のほどをお願いいたします。 以上であります。 ○司会 ありがとうございました。 続きまして、株式会社セブン−イレブン・ジャパン物流管理本部品質管理部総括マネ ージャーの伊藤友子様から「残留農薬等のポジティブリスト制度導入に際して」です。 よろしくお願いします。 ○伊藤氏 ただいま御紹介にあずかりました、セブン−イレブンの品質管理部の伊藤と 申します。セブン−イレブンとしての今回のポジティブリスト制度に対しての対応を少 しお話しさせていただきたいと思います。 まず、最初にセブン−イレブンについて少し御紹介させていただきたいと思います。 セブン−イレブンは、フランチャイズの形式を取ったコンビニエンスストアでして、 実は生鮮品はほとんど扱っておりません。したがって、今回のポジティブリストは全部 加工食品という扱いになります。 もう一つ、セブン−イレブンの特徴としましては、弁当・総菜のように、セブン−イ レブンが開発に携わったオリジナル商品の比率が非常に多くなっているということが特 徴になっています。このために、セブン−イレブンに商品を納入していただいているメ ーカーさんで組織をつくっております。日本デリカフーズ協同組合と申しまして、ここ にオリジナルの日配品をつくっていただいているメーカーさんが全部参加した形で入っ ていただいておりますので、セブン−イレブンとしましては、日常的にここと協力しな がら品質管理の基礎をつくっております。今回のポジティブリスト対応の原案について も、ここで皆さん、セブン−イレブンも入ったような形で原案をつくっております。 したがって、小売業という形なんですけれども、ちょっと形が違っていまして、セブ ン−イレブンとしてはエンドユーザーさんが使用原材料をどうやって管理するか。これ を主体に全部組立てをしております。 (PP) 実は、11月に公示された後にセブン−イレブンとしても本格的に対応について検討に 入ったわけですが、そのときに、新規商品は仕組みをつくればこれからチェックしてい けばいい。では、既存商品に対してどこまでチェックするべきかということが論議にな りました。 ここでまず、一番基本に置いたことは、今回のは法律なんだということで す。ということは、生産に携わるすべての生産者、メーカーさん、私どもも入った販売 者全員が当然守る義務がある。これはやはりしっかり頭に入れておこうということです。 一つの組立ての基本方針としましては、各段階での責任分担を明確にすることを基本と していくことが一つの柱になっています。 お客様から、セブンーイレブンで売っているんだから、全部一番大もとまできちんと さかのぼって、全部調べて責任を取るべきだろうというようなお話をいただいたりする ことはありますが、小売業としましては商品が多岐にわたっていますし、それは不可能 であり、又そこまでの必要性はないと考え、これを基本に据えております。 それと、これは先ほど食品産業センターさんが注意事項としてお話しをされていたこ とと同じですが、日常業務の中で検査で安全性や適合性を担保するのは不可能だという 実感があります。従って、セブン−イレブンとしては別の形で適合性を担保していくと いうことを2つ目の柱としております。 要は履歴を確認していき、ここできちんとした原材料がつくられているかを調べてい く形にしています。この適合性を調べた中で、最終的に検査を検証の手段として使って いくという形で全体の組立てができています。(PP) 1つ目の部分ですが、まず私どもで扱っている商品を2つに分けております。いわゆ るナショナルブランド。これはメーカーさんがブランドを付けてくださっているので、 メーカーさんにお任せしようと考えています。先ほどオリジナル商品が多いと申し上げ ましたが、これについては何がしかの責任があるので、確認していきます。オリジナル 商品の原材料の中で、国産についてはちゃんと法律ができているので、特殊なもの以外 はメーカーさんに調査依頼して、メーカーさんとコミュニケーションを取りながら確認 していこうというふうにしています。 原材料の中の輸入品については、セブン−イレブンはきちんとした形で確認していか なければいけないわけですが、この中も2つに分けております。 1つは、食品として安全性が確保されているもの。これについては原材料メーカーさ んがしっかりと確認されているので、メーカーさんとコミュニケーションを取りながら メーカーさんに保証していただこうと考えています。 もう一つの部分は、原材料の性質が残ってしまうものについてで、安全性について調 査が必要なものについては、セブン−イレブンとしてもきちんとした形で調査していこ うと全体の仕組みを組み立てています。 (PP) オリジナル商品の中ですが、1つは、先ほど申し上げました、食品として安全性が担 保されているものです。これは、色々な商品、原材料を使っていて、混合による量の低 下があるもの、それから、加工が非常に複雑で、加工による消失があるもの。これにつ いては限りなく安全ではないかと考えています。もう一つの部分、生鮮品及び洗浄、凍 結、乾燥程度の、簡単な加工、これはもともと持っている性質が残ってしまうので、注 意深く調査しようという形をつくっています。 調査の内容ですが、先ほど申し上げたように、検査で適合性の担保はできないので、 一番根本のところは環境整備、要は生産記録を中心に考えています。ただ、加工食品の 加工原材料関係は使用期限が非常に長いものが多うございまして、既に生産の履歴等が 消失していて確認が取れないものがたくさん出てきました。それについては、均一性が ちゃんとわかっているものについては、一部検査で証明してくださるのでしたら、それ はよしとしようというふうに組み立てております。 では、実際にどうするか。 (PP) 対応方法としまして次のように考えます。ポジティブリストが別に大きく変わったわ けではないというお話が先ほどから出ていましたが、従来から生鮮品を中心に安全性の 確保に対する考え方は組み立てておりますので、基本的には今までと大きく変えており ません。もともと原材料の生産記録を主に考えており、それに対してバックデータとし て分析検査を実施していくというような形を従来取っておりましたので、今回について はそれに補足するような形になっています。 履歴確認で一番重視しているところが、独立した管理単位での生産、これを重視して います。全体的な組立てはいわゆるIPハンドリングという形で、最初のアイデンティ ティーが最後まで保存されるというような形で全体の組立てをしていますので、一番最 初の独立した管理単位での生産を重視し、この管理単位に対して生産の記録をいただい て内容確認するような形を考えています。 内容確認の上で、投薬記録と休薬期間の確認が一つありますが、あともう一つ、使っ ている動物性医薬品とか、農薬の成分をきちんと確認していく、これが2つの柱になっ ています。 真ん中辺りに、原料検査というのがありますが、これは全部はできておりません。今 でも、一部実施していますが、将来的なことを考えたときは現地での原材料検査、即ち 加工する前の検査を重視していくような形で考えています。なぜかといいますと、やは り加工する場合はアイデンティティーが一番最後までストレートに残らないケースが非 常に多くなっています。例えば1つの製品が分割したり複合したりとかそういうような 形になっているので、一番単純なところ、加工する前のところで原材料検査を実施する 組立てが一番効果的で、一番経済コストもいいような形で組立てができると考えており ます。これは将来に対する課題という形にもなっています。(PP) 私どもといたしましては、原材料メーカーさん、関連のメーカーさんを集めて、皆さ んにセブン−イレブンとしての考え方を説明させていただいております。今、調査をお 願いしますが、まだ全部の結果は出ておりませんが、5月29日、施行の前には全部終わ っているようなスケジュールで考えています。 今回は、輸入品を主に組んだんですが、輸入品には通関時の検疫というハードルがあ るので、違反品はシップバックになって、適合していないものは輸入できないという考 え方もあると思いますが、それでは影響が大きい上に、無駄が出るということで、私ど もでは不適合品が出ない仕組みをつくることが必要と考えています。 今回、いろいろ組立てをしてみたのですが、最終的に思ったことは、相手先との信頼 関係を築くことが本当に必要なんだということを痛感しております。安全性・適合性の 担保は検査ではできませんし、現地調査は勿論、適合性判断の重要なポイントにはなる わけなんですけれども、これもピンポイントでしか見られません。やはりそのときに現 象面の判断だけでなくて、相手先さんに実情の説明や弊社としての考え方の説明をして、 コミュニケーションを深めて相互理解を深めることが安全・安心への担保となるという ことを実感しておりますので、最後に付け加えさせていただいて、私のお話を終わらせ ていただきたいと思います。 御清聴ありがとうございました。 ○司会 ありがとうございました。 最後は、家庭栄養研究会副会長の蓮尾隆子様から「真のポジティブリスト制度をめざ して」です。蓮尾様からいただいている資料は資料9でございますので、よろしくお願 いいたします。 それでは、蓮尾様、よろしくお願いいたします。 ○蓮尾氏 家庭栄養研究会の蓮尾と申します。今日は、名簿を拝見させていただきます と、消費者の方がほとんどお見えになられていない中で私が発言するのは、消費者全体 の意見でないということを是非皆様、御理解いただいてお聞きになっていただければと 思います。 皆様のお手元の資料に入れさせていただきましたのは、私どもの機関誌に、 消費者もポジティブリスト制度の今後について十分理解してもらう必要があるというこ とで、一応、啓蒙活動ということで書いて、みんなで共通認識を持とうということで書 いたものを、間に合わなかったものですから、それを資料とさせていただきました。 時間もないので、読むような形になって失礼なんですけれども、食品の安全・安心を 求め、長年にわたって法制度の改善・整備を要望してきた消費者及び消費者団体にとっ て、今回の残留農薬等のポジティブリスト制度の導入は国民の健康保護を図るためには 重要な制度であると考えています。従来の食品中の残留農薬基準に関わる規制を大きく 転換し、規制の対象も加工食品を含むすべての食品となったことは安全・安心確保のた めに非常に前進したことととらえ、歓迎しています。 このポジティブリスト制度が導入され、有効に運用されることで消費者がより安心し て農畜水産物及び加工食品を購入できるような制度としていくことが重要なことです。 同時に、生産者、食品企業、輸入業者の方々がこの制度の導入に至った経過と背景を 十分に理解し、納得していただいた上で法令順守がなされなければよい結果が得られな いからです。罰することを強化し、目的とした制度では意味がなく、基準が守られなけ れば結果的に消費者、国民の安全は保証されないことを消費者はわかっています。 これまでの生産者、輸入業者、加工業者、流通関係者、事業者の性善説に立った法制 度の下で表示違反、原産地のすり替え、偽装表示など、時には命にも関わる違反事件を 繰り返し、消費者、国民は何度となく裏切られるという苦い経験をしてきたことでもあ ります。 2003年の食品衛生法の一部改正により、ポジティブリスト制度の導入が決定 し、この間、1次案から3次の最終案までが公表され、意見交換会やパブリック・コメ ントが求められてきました。私どもも、その都度、要望・意見を上げてきました。3年 という期間の中で、ポジティブリスト制度導入施行に当たっては、関係省庁と連携を取 り、生産者、輸入業者、加工、流通等の関係者すべてにわかりやすく指導・伝達される よう、消費者には農薬について理解ができるように情報提供をお願いしてきました。 ところが、施行まで1か月と迫った今でも、私の身近な生産者、食品製造に当たる方 々のところで、ここに至ってポジティブリスト制度の内容を知り動揺している方々が学 習会を開いて説明を受けるといった光景に何度となく遭遇してきました。何度も繰り返 しますが、生産物を生産するのは生産者であり、加工食品を製造するのは業者の方々で あり、輸入食品については制度・規制の変更を相手国に伝えるのは国家間の正式な申入 れと合意・確認は当然ですが、具体的な内容を徹底して伝えるのは輸入業者の方の任務 でもあるでしょう。 食品の生産・流通等、フードチェーンのすべての段階において安全性を確保するとい う趣旨から見ると、取り分け、食品の生産現場における、制度の運用の基本であるリス クマネージメントの説明と理解の遅れを大変危惧しています。今回のポジティブリスト 制度の導入を要望してきた消費者としての危惧の背景には、急増する輸入農水産物、輸 入加工食品の安全規制を強めてほしいという思いがありました。これをきっかけに、ポ ストハーベストの必要のない国内農産物の振興に消費者の目が向けられることも望んで もいました。 ところが、この制度の導入に当たって、国内の生産現場で起きている耕 作面積の狭い日本で、多品目生産に起きるドリフト問題、品目ごとに異なる使用農薬の 影響など、かなり深刻な問題が想定されていることを知りました。 一昨日、農水省の地産地消を検討する会議が開かれましたが、そこの中で果樹生産者 の方から、リンゴ、ナシ、ブドウをつくっているが、全部、使用許可農薬が違う。少し 高くてもいいから、全部に効く共通な農薬を開発してほしい。それでないとドリフトな ど一律基準にかかり、生産・出荷ができなくなると大変危惧していました。5月29日か らの施行を前にして、その手順と進行を少し心配しているところです。 これらのことからも、この制度の見直しを5年ごとにということでなく、国内のマー ケットバスケット調査や、海外諸国の使用状況の収集も行うなどのことであれば、守ら れる制度にしていくためにも必要に応じて随時見直しを行うことを検討していただくこ とをお願いしたいです。 このほかの問題点として、皆様のお手元に配らせていただきました真のポジティブリ スト制度を目指してというところにも触れておきましたけれども、問題点が幾つかある ので説明させていただきますが、消費者から見た問題点ということです。(3)という、5 月号で書いた分です。 暫定基準については、一見合理的に見えます。しかし、コーデックス基準は輸出先国、 企業などに都合のよい緩やかな基準が決められているのが問題だととらえています。国 際基準を優先させるため、国内の登録保留基準よりも高い数値が採用されていることも 心配していることの一つです。小麦に使われているクロルピルホスメチルは、コーデッ クス基準では10ppm としていますが、米と比べると100 倍も緩く、一律基準値0.01ppm から見ると1,000 倍も緩やかな暫定基準となっています。 2004年の農林水産省の調査でも、168 検体中152 検体から0.01〜0.48ppm の範囲で クロルピルホスメチルが検出されており、一律基準0.01ppm だとほとんどが輸入禁止に なるからです。輸入小麦は食べる量も多く、暫定基準値は日本人の安全を尺度にもっと 厳しくしてほしいと思っています。 グリホサートなども基準値が緩やかです。大豆が20ppm 、菜種が10ppm 、綿実が10p pm と飛び抜けて基準値が緩やかなのは、除草剤耐性の遺伝子組換えで、種子中にたくさ んの除草剤が残留しているのを認めているからではないかと思っています。 国内で一日許容摂取量、ADIの評価がされていない農薬等にも残留基準を設定して いることも問題点の一つです。問い合わせたところ、食品安全委員会で順次評価を進め ていくということなので、これについては安心しています。加工食品も規制の対象です が、開発加工食品が続々と輸入されています。大部分の加工品は混合し調味されたもの が多く、規制としては一律基準値を超える残留農薬等が検出されたものについては流通 禁止とすべきではないでしょうか。 構成原材料から判断するとすれば、早急に原材料割合、原産地表示の整理が必要だと 思います。望んでいたポジティブリスト制度が施行されたわけですから、外国で使用さ れている農薬等をしっかりチェックする必要があります。水際での検査体制の強化を強 く要求していきたいと思います。 また、今後もポジティブリスト制度を実効性のあるよりよい制度にしていくためには、 随時、生産・製造・流通等、フードチェーンに関わる立場の人たち、行政関係者、消費 者とのリスクコミュニケーションは欠かせないように思われます。 最後に、勿論、皆さんは御存じな方もたくさんいらっしゃると思いますけれども、情 報として私どもが活動の一環にしていきたいと思っていることの一つを報告して終わり にさせていただきたいと思います。 最近、デトックスとかファイトケミカルという言葉をよく見かけるようになりました。 デトックスとは、毒素を除くという医療用語で、日常的には毒出し、解毒、浄化などと いう意味で使われているようですが、デトックスの対象物の一つに、毎日の食事からや むを得ず摂取してきた水銀、鉛、カドミウム、砒素などの有害ミネラルを挙げられてい ます。これらは30年以上前に問題となった環境汚染物質が食材と飲料水などを通じて体 内に侵入し、蓄積し、現在は体内の汚染物質となっているというのです。 こうした有害ミネラルを排泄する方法として研究され、排泄効果があるというのがフ ァイトケミカルと言われる非栄養素成分の主に植物由来の抗酸化物質の総称で、ファイ トケミカルというもので、特に淡色野菜や果物、大豆、海草、お茶などに多く含まれて います。ファイトケミカルは、抗酸化作用、がん化促進の阻止、白血球の働きを高める といった働きをしてくれます。多くの野菜には抗がん剤と同様の働きがあるということ がわかってきたということです。 そういう中で、薬でもなく、サプリメントでもなく、安全・安心の野菜・果物を毎日 必ず摂取することで、体の中にため込んだ毒素を毒出し効果ということで、野菜・果物 が非常に効果的ということですから、その意味からも可能な限り国内で生産された安全 で安心できる健全な農産物を食べていくためにも、この真のポジティブリスト制度が有 効的に活用されていくことを望んでいます。 そのためにも、ここに関わる皆さん方と一緒に、望むこと、できないこと、やればで きることといったことを具体的に話し合い、コミュニケーションを取り、共通認識を持 つ中で、このポジティブリスト制度が非常にいい形で国民の安心・安全を考える制度と してこれから進められていくことを望んでいます。 特に、農薬については食品添加物と違って、リスクもベネフィットも目には見えませ ん。それは表示がされにくい対象物であることと同時に、是非そこに生産される方、そ れから、今日もいらしていらっしゃるメーカーの方を信頼して、疑わなく、どこで買っ ても安心して食べられるような食品が市場に流通していくことを望んで、消費者の思い をお話しさせていただきました。 どうもありがとうございます。 ○司会 ありがとうございました。 それでは、ここで10分ちょっと休憩させていただきたいと思います。開始は午後2時 半からパネルディスカッション、意見交換を行いたいと思いますので、お時間になりま したら席にお戻りください。 (休 憩) ○司会 それでは、時間になりましたので、これからパネルディスカッション及び意見 交換を行います。 まず、パネルディスカッション、意見交換のコーディネーター及びパネリストを御紹 介いたします。 本日のコーディネーターですけれども、皆様からごらんになって一番左側、順天堂大 学医学部公衆衛生学教室の堀口逸子先生です。 次に、パネリストですが、皆様からごらんになって右側の方から順に、JAしもつけ 栃木トマト部会の大山寛様です。 財団法人食品産業センター技術部長の塩谷茂様です。 株式会社セブン−イレブン・ジャパン物流管理本部品質管理部総括マネージャーの伊 藤友子様です。 日本生活協同組合連合会理事の阿南久様です。 家庭栄養研究会副会長の蓮尾隆子様です。 壇上につきましては、以上、パネリスト5名でございます。なお、内閣府食品安全委 員会、農林水産省及び厚生労働省の各行政機関の関係者は壇上ではなく、いす席の方に 控えております。コーディネーターの求めに応じまして適宜発言することとしておりま すので、よろしくお願いいたします。 それでは、パネルディスカッション、意見交換の議事進行につきましてはコーディネ ーターにお願いいたします。 ○コーディネーター(堀口氏) 今から1時間半、この壇上を中心にしてディスカッシ ョンを進めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。 このリスクコミュニケーションを進めるに当たりまして、一昨日、打ち合わせをさせ ていただきました。また、昼食をとりながら今日のパネラーの方と少しお話をさせてい ただきました。 これまで行ってきましたリスクコミュニケーションは、このポジティブリスト制度の 理解を深めるというところで、壇上の方には厚生労働省を始めとした省庁の方々がお並 びになっていたと思いますが、本日から始まりますこのリスクコミュニケーションの場 は、それぞれ消費者、生産者、事業者の立場、お互いの立場を理解し合い、このポジテ ィブリスト制度をお互いに理解し合う場ということで、私、消費者ではありますが、事 業者でもなく、生産者でもない私がコーディネーターを務めさせていただきます。 今日フロアに約900 名の方がいらっしゃっているとお聞きしたのですが、フロアと壇 上とのやりとりというものではなく、まずは、このパネラーの方々を中心としてお互い の立場を理解し合っていくというようなところで進めさせていただきたいと思います。 また、適宜、必要に応じてフロアの方にも私から質問させていただきますので、その際 はどうぞよろしくお願いいたします。 それから、今日、私、パソコンを持っていますのは、いろいろな意見が出てきて、い ろんな考え方に対してそれぞれの立場の方がまたアドバイスをしたり、考え方をお話し するわけですけれども、私たち共通の日本語という言語でしゃべってはいるのですが、 ときどき、それが同じように認識されなかった場合などもありますので、お手元にメモ は取っているかと思いますが、私も同様にメモを取らせていただきまして、それを画面 に打ち出すような形を取りたいと思います。また、コーディネーターの私が間違えた理 解をしている場合には、パネラーの方々には私に御指摘いただければと思います。 それでは、早速始めさせていただきたいと思います。 先ほど、それぞれ15分ずつパネラーの方からお話がありましたが、生産者の方からは 生産の現場のスライドと履歴、農薬を散布する計画と、実際にやっている履歴のスライ ドがありまして、それをJAさんの方にいつも提出して確認してもらっているというよ うな取組みについての御紹介があったかと思います。 そして、ポジティブリスト制度の理解をお互いに広めていき、理解していくために、 食品産業センターの塩谷様の方からはいろいろな研修会を開いてお話をされているとい う、今の加工を中心としました産業界の話をしていただいたと思います。 そして、セブン−イレブンの伊藤様の方からは、セブン−イレブンとしての取組みと いうところで、主に自社製品の取組み。それも、輸入品を含めた取組みについて具体的 にスライドを使ってお話ししていただいたと思います。 そして、消費者の代表としまして、先ほどお話がありましたが、決して全体をまとめ た話ではないというお断りがありましたけれども、蓮尾様の方から消費者に向けて普及 啓発活動をされてきた資料を基にしてお話をしていただいたと思います。 先ほど、壇上には上がらなかったのですが、今回、パネラーとして日生協、日本生活 協同組合連合会の阿南様がいらっしゃっていますので、阿南様、今、4名の方のお話、 それから簡単にポジティブリスト制度の紹介もありましたけれども、何かそれぞれパネ ラーの方に御質問とか、また日生協として何かお話はありますでしょうか。 ○阿南氏 ありがとうございます。 日本生協連の阿南と申します。お手元に資料を2つ提出しておりますが、まず資料8 をごらんいただきたいと思います。これは、2000年に私どもが取り組みました食品衛生 法の抜本的な改正を求める請願運動の際の請願項目です。 この5番目に、今回定められましたポジティブリスト制度についての請願項目があり ます。農薬・動物用医薬品の残留基準の設定を計画的に進め、残留基準の決められてい ない食品の流通・販売ができないようにしてほしいというものです。  先ほど、蓮尾さんがご報告された資料にもありましたが、このときには1,370 万筆の 請願署名が集まり、大運動となりました。残留農薬のポジティブリスト制度導入につい ても、全国の消費者の大きな願いであったということです。 実は1995年の食品衛生法改正の際にも私たちは同様の請願をしておりますけれども、 そのときは国会での附帯決議という形に終わっております。ですから、そのときから数 えますと、実現までに10年以上かかったということになります。そして、今回ようやく 私たちの願いが実現するということになったわけですので、私たち消費者はこのことを 本当に喜んでいるということをまずお伝えしたいと思います。 その上で、この制度については私たちは消費者組織として、同時に生協という事業体 としても、重要な責任を担っていると考えておりますし、できる限りのことを私たちは やっていくという決意でおりますことをお伝えしたいと思います。 今日、多様な立場の皆様から報告をいただき、本当に学ぶことが大きかったわけです けれども、この制度によって生産から消費に至る各段階での取組みが確実に進められれ ば残留農薬に対する不安は大きく解消されることになると考えております。しかし、実 際の取組みはやはり大変なことなのではないかとも思います。 もう一つ、資料を提出しております。資料7です。こちらは、日本生協連として主に 報道関係の皆様方への情報提供として出しているもので、「クローズアップCO・OP」 の初回号です。  ちょうどポジティブリスト制度のスタートについて情報提供しております。この8ペ ージに日本生協連が昨年5月に実施いたしました「食品の安全・安心に関する消費者ニ ーズアンケート」というものの結果がまとめられております。 ここでおわかりになるように、残留農薬についての不安は依然として強いものがある ということを認識させられた結果になっております。ですから、今回のポジティブリス ト制度の導入によって本当に不安が大きく解消されるのかどうか、これからの具体的な ところで問われてくるのではないかと思っておりますので、その質問や疑問や不安をま とめてみましたので、述べたいと思います。 まず、農業者の方は農薬を適正に管理し使用していくということが挙げられています が、このことが果たして本当に生産者の皆さんや農業者の皆さんがやりやすい方法で説 明されて、確実に実行できるようなことになっているのかどうかということが第1です。 2つ目に、ドリフトは実際問題として考えられることですが、その防止策は、実際に はどのようなものであるのか、また本当にそれが確実なものであるのかということ確認 したいと思います。 3つ目に、市場を通らない農産物についてです。今回の残留農薬の検査については地 方自治体が、主に国内の農産物については市場の収去による検査によって行うことにな っておりますけれども、市場を通らない農産物、例えば私たち消費者は重宝してよく使 いますけれども、道の駅で直接販売をされている農産物や、また東京にも畑の前で直接 販売していたり、農家の玄関先で販売しているところでの農産物のチェックはどのよう にできているのでしょうか。これからどのようにされるのだろうかが疑問です。 4つ目に、これとも関係しますけれども、地方自治体としての実際の指導や、検査に 当たる時の体制としてはどのようになっているのかということを疑問に思っております。 私は、多摩地域に住んでおりまして、保健所の管轄で言いますと、多摩立川保健所が その地域の食品の検査ですとか、食品衛生の監督をしているところになっておりますけ れども、この前、ホームページを見ておりましたら、ポジティブリスト制度についての 消費者向けの説明がありました。 それは、なかなかいいことだと私は思って見ておりましたけれども、同時に、私は群 馬県のことも聞いております。群馬県はポジティブリスト制度への取組みについての政 策を県としてまとめており、緊急時対応マニュアルというものも整備されています。ま た検査結果が判明した後の出荷と公表の取扱基準もしっかり制定していて、私などが読 んでも非常にわかりやすく、消費者としてはとても安心できる情報であると考えており ます。このようなことが、全国各地の自治体で果たして認識されているのかどうかと考 えています。 先ほど、従来とポジティブリスト制度は大きく変わったわけではないというようなお 話もありましたが、この間、私たちが食品の安心・安全を求めて制度の整備を望んでき た、その一番大きなものは、この新しい制度を、消費者も含めた関係者のリスクコミュ ニケーションの中で運用していくということです。 ですから、果たして関係者が本当にコミュニケーションをしながら、お互いにこの制 度が何なのかということを確認しながら、共有しながら、理解しながらやっていけるよ うになっているのかどうか。先ほどの地方自治体の取組みもそうですが、生産者、流通 者、事業者にも、消費者への説明責任というものがあると思いますし、消費者もその説 明を聞く責任があると思いますが、そこがどのように現実化されていくのかということ を疑問に思っています。この点について、回答できる範囲で結構ですけれども、お考え をお聞かせいただければと思います。 済みません、長くなりました。 ○コーディネーター 幾つか御質問が出たと思います。 まず、生産者側は農薬をこのポジティブリスト制度において適正に管理して使ってい くわけですけれども、実際、どのようにしてやっていくのか。やりやすい方法はあるの か。確実に実行できるようになっているのだろうかというようなことだったと思います が、わかる範囲で大山さんの方からお願いいたします。 ○大山氏 生産者がどうしようかという話でしょうけれども、先ほど私が説明しました 特別栽培農産物、これは特に農薬等安全の部分でかなり意識した栽培でありますので、 我々のグループはこの特別栽培の方で栽培しています。ですから、農薬に対しては非常 に敏感になってきております。 そういう中で、今、農薬の管理。これは当然、先ほど農水省の方からお話がありまし たように、私は農薬自体、なかなかゼロでは栽培ができない、農産物ができないと考え ております。やはり農薬の基準をしっかり守って、例えば登録の取れた作物に希倍数も きちんと倍率を守りますとか、あるいは収穫前何日間でしか、この農薬はかけられませ んとかそういうルールをきちんと守れば、農薬自体というのは私はそんなに怖いもので はないと思っております。 さっきお話ししましたように、私はトマトをつくりながら、実際に30年以上トマトの 栽培をしております。ですから、本来、農薬で一番怖いのは我々生産者だと思います。 実際に、いろいろマスクなり眼鏡をかけて防除はするんですけれども、これは必ず被爆 をします。農薬を若干かぶります。ですから、従来、農薬の基準をしっかり守っていか ないと、我々生産者の方が非常に害をこうむるということになりますので、きちんとル ールを守りながら使っていけばそんなに怖いものではないというような認識をしており ます。 ですから、農薬の種類、成分によっては、この成分では3回しか1つずつにかけられ ませんというふうなルールもありますから、きちんと履歴を残す。何月何日にどういう 農薬を希倍数何倍で何百リッター、10アール当たりに何リッターをかけたと。そして、 この農薬の中身の成分は1成分だ、あるいは2成分だというものをきちんと記録しなが ら、収穫前日あるいは2日前という決まりがありますから、きちんとそういうルールを 守ってやれば、私はそんなに怖いものではないと思っています。 それと、その管理をどうしていくかということは、我々はJAグループの中で販売し ているものですから、きちんと意思の伝達ということが非常にスムーズにいく組織なの かなと思っています。ですから、JAなり県の指導機関は、こういうふうな農薬につい てはというようなしっかりしたいろんな講習会等もやっておりますから、それによって きちんとみんなが履歴を付ける。 そして、JAの担当者が月に一遍、これは必ずチェックを入れているというふうな仕 組みをつくっているものですから、多分、私どもの取組みというのはまだ本当に日本全 体の農業者の中ではごくまれなグループかもしれませんけれども、そういうことをどこ かのグループがやることによってだんだん、池に石を投げるではないんですが、どんど ん波紋が広がって、多くの農業者がきちんとルールを守ってやっていけば、農薬をきち んと使えばそんなに怖くないんだということがわかっていただければありがたいと思っ ております。 以上です。 ○コーディネーター ありがとうございました。 JAという中で仕組みがつくられているというようなこと。それから、履歴をしっか りと残すというごくごく基本的なことをお話ししていただいたと思います。 阿南さん、今の回答でよかったですか。もうちょっと聞きたいことはありますか。 ○阿南氏 道の駅とかでの販売についても、お聞かせいただければと思います。 ○コーディネーター 道の駅とか、そういうところで販売するものについてはいかがで しょうか。 ○大山氏 先ほど、道の駅とか軒先とかというお話があったんですが、例えば、私ども はドリフトという問題がございますけれども、施設園芸の中でやっていますと、ほとん ど周りがガラスやビニールフィルムで覆われておりますから、ほとんどそういうふうな 飛散ということは考えておりませんが、若干そういうもので、かなり露地関係の部分に は若干不安が残るという部分があろうかと思うんですが、その辺は、今、JAグループ の中ではきちんとした、飛散ができないようなノズルの開発とか、あるいは風向きによ って飛散しないようにとかいろんなルールをつくりまして、今、生産者側に啓発してい る最中であります。できるだけ、そういうふうな飛散しないような方法は取っていこう というような、今、啓発運動が盛んに行われています。 ○コーディネーター ドリフトについて、JAの中でもいろいろな技術的な開発という か、そういうものを進めているというところですね。 ○大山氏 そうです。それとか、風向きによってどうしても風上から散布すれば風下に 農薬が流れるわけですから、そういうときもきちんと風向きを考えて農薬を散布しよう とか、細かい霧になれば当然遠くに飛びますから、余り霧にならないような農薬を散布 するノズルというものも新しく開発するとか、いろいろ飛散ができないような形をつく りながら、それを是非みんなで守りましょうというような啓発を、今やっている最中で す。 ○コーディネーター 飛散しないような方法を開発していっている最中であると。 ○大山氏 それと、やはり使う側の意識の問題です。さっき言った風上で散布すれば風 下に農薬は流れますけれども、風下から風上に向けて散布すればほかにかからないとい うようなこともありますから、そういうこともきちんと意識づけをしながらなるべく飛 散しないような方法を、今、一生懸命考えているというのが現状です。 ○コーディネーター 意識づけがすごく大事だというお話だったと思いますが、先ほど、 それはドリフトに対してどうやっていますかという先ほどの阿南さんの御質問に対する 回答だったと思うんですけれども、検査について少しお話があったと思います。 その中に、道の駅などで販売されているものについてなど、どのように検査をするの だろうかと。それに関連して地方自治体が検査をして指導するんですけれども、今その 体制が、準備段階でしょうけれども、整ってきているんだろうかというところで、ホー ムページの御紹介もありましたが、ここの壇上に地方自治体の方がいらっしゃらないの ですが、もしフロアに地方自治体の方がいらっしゃって、今の阿南さんの御質問に対し てこういったような準備をしているとか、何かコメントできる方がいらっしゃったらコ メントしていただきたいのですが、手を挙げてくださる方はいらっしゃいますでしょう か。 地方自治体の検査の部門の方がいらっしゃっているはずなんですけれども、いません か。 それでは、その辺に関して、厚生労働省の方で把握している部分などがありまし たらお話しいただけますか。 ○鶏内厚生労働省食品安全部監視安全課健康影響対策専門官 厚生労働省の鶏内と申し ます。 都道府県の取組みなんですが、都道府県においては、まず監視指導計画というものを 各都道府県、それから特別区、保健所を設置している市の方で公表しております。これ は3月中にはほとんどの地区で公表されていると思われます。 この中のすべてではないんですが、私が見たところでは、多分すべての自治体でポジ ティブリスト制度が始まるということが記載されております。違反とかのそのときの取 組みをどういうふうにするかということ、あと、公表についてもその中に記載されてお ります。 具体的に、道の駅で取るというような具体的なことは書かれていませんが、 過去にそのような道の駅ではないにしても、そういう直売場のようなところで野菜を取 って検査したという事例を聞いたことはありますが、今後の中で道の駅というところで 取るかどうかは現状把握はしておりません。 以上でございます。 ○コーディネーター 阿南さん、よろしいですか。 ○阿南氏 これから、農産物は地元で消費しようという話も結構多いですし、私たち消 費者も、できたら地元の農産物をその場で、直売場で買いたいという思いもありますか ら是非その体制などもはっきりしていただいて、それらを情報提供していただきたいと 思います。このポジティブリスト制度に対してどのように対応して、安全な農産物を生 産しようとしているのか、提供しているのかということを生産者の言葉で語っていただ ければ十分だと思いますけれども、検査体制と同時に、充実していただければと思いま す。 ○コーディネーター それは、例えばスーパーなどでお肉とかああいうものが生産者の 顔の写真があったり、また、使っている飼料、餌の説明があったりというようなイメー ジなんでしょうか。 ○阿南氏 スーパーなどで販売しているのは、十分検査はされていると思いますが、そ れはトレーサビリティーという意味で一つの大きな信頼を与えることになります。軒先 販売ですとか道の駅の販売では、生産者の名前が入っていて、私がつくりましたと、生 産者ごとにいろんな商品が売られているわけですけれども、そこに安心・安全の取組み についての考え方が紹介されているといいと思っているわけです。 ○コーディネーター JAの方、もしお聞きになっていたら参考にしてください。 それから、検査の体制は、今、厚生労働省の方から説明がありましたが、監視指導計 画の中に書かれているということですので、監視指導計画はホームページ等でも紹介さ れていますので、消費者の方は自分のお住まいになっているところの保健所の監視指導 計画をしっかり見るということも大事なことなのかなと思います。 ○阿南氏 ただ、監視指導計画は消費者にとって読むのは難しいです。行政用語が多く、 言い回しも独特ですので、もう少しわかりやすいものをお願いします。こうした消費者 への説明はやはり行政の責任であると思っていますので、是非、群馬県で行われている ことが全国に広がることを期待します。 ○コーディネーター リスクコミュニケーションでは、専門用語はなるべく使わないよ うにということで、行政用語も一つの専門用語かなと思いますので、是非わかりやすい 言葉で書いていただければと思います。 今、阿南さんの方から幾つか質問があって、答えが出てきましたが、伊藤さん、何か 消費者の方などに御質問なり、生産者の方に御質問なり、ちょうど中間の地点にいらっ しゃるわけですけれども、ありますでしょうか。 ○伊藤氏 小売業としては、今回だけではなくて、正しい選択ができる企業かどうかと いうことが多分問われているわけだと思います。 やはり、間に入った立場として、お客様の方に向かっては私どもの商品が安全だとい うことを一生懸命アピールしながら、やはり川上の方できちんとしたことをやっていた だきたいという要請を日常の業務の中で実施はしておりますが、今回のポジティブリス トは結構難しい制度であると思います。特に今回については、生産者の方が品質をきち っとつくり込むという側面が大きいので、やはり生産者の方に本当に頑張っていただき たいと私どもでは思っております。 ○コーディネーター 熱心に取り組んでいらっしゃる大山さん、どうでしょうか。 ○大山氏 実際に、これはこれからどんどん啓発が進んで、理解が進んでいけば生産者 側もやはり、我々も一つの経営ですから、当然つくった農産物が売れない、消費者に求 められなければ経営が成り立っていきません。 そういう面では、これからどんどんそういうものは理解していくのではないかと思っ ておりますし、今、お話ししましたように、我々も農業者の方を一つの食品をつくる。 あれは野菜なり、米なり、いろんなものをつくりながら生計を立てていくわけなんです が、ここで消費者の皆さんにお聞きしたい部分があるんですけれども、そういう中で、 やはり私どもは特別栽培を取り決めまして、平成14年から取り組んでいますから、ちょ うど4年間経過しました。そういう中で、なかなかこういう、一時、無登録農薬等の問 題がありまして、かなり農薬に対する不安があって、我々は特別栽培で半分以下の農薬 散布の中で生産したトマトを、通常の栽培と特栽でつくった栽培でなかなか値段に差が 出てこない。 よく、私などもヨーロッパの方の視察などをさせていただいたんですが、やはりスイ スなりドイツ辺りは有機というものに対しては2割、3割高くても消費者が求めてくれ るというふうな習慣があると。なかなか日本では、そういう部分で減農薬で栽培したも のに対して、それに対する付加価値、値段がなかなか反映できない。 先ほど、スライドでお見せしましたように、農薬を減らすということは非常にお金と 手間がかかるんです。これは当然食品ですから、そういうことは我々は努力は惜しまな いんですけれども、非常にそういう中でも、我々がやっている経営としてのなかなか付 加価値が付いてこないというのは、私などがジレンマとして、現状そんな考えもあるも のですから、その辺、もし、どんなふうなお考えか、お聞かせいただければと思います。 ○コーディネーター それでは、蓮尾さんどうですか。 ○蓮尾氏 付加価値を経済性としてどう認めるかということなんでしょうか。 ○大山氏 そうです。 ○蓮尾氏 やはり、それも、リスクコミュニケーションと言ってしまうと非常に大ごと になってしまいますけれども、その生産されたものの価値を消費する側が自分の価値観 と一致したときには、価格的な問題の高い安いというのは何と比較するかというところ に来ると思うんですけれども、やはり先行投資といいますか、自分のための、病気にな って治療費に費やすか、病気にならないためにあらかじめそういった予防的原則みたい なものを自分の価値観の中に取り入れて、そういうものを選んで食べていくということ の多様的な中での、やはり本人の価値観みたいなものではないかと思うんです。 ただ、それを知らないから、そういうものだと思って、高い安いの質的な問題がよく わからなくて、値段だけで選んでしまうという人たちもいるでしょうし、でも、ある意 味では非常に格差が広がってきた現代の経済状態の中で、そこら辺を理解してもらうと いうのはかなりの問題意識があると思いますけれども、やはり自分自身が物の価値を認 めるか認めないかというところの問題だと思いますけれども、それは消費者の中での学 習とかそういうことではなく、生産する側の働きかけというのが随分消費者を変えてい くと思います。 それから、セブン−イレブンの伊藤さんのお話なども、多くの消費者 は聞く機会がありませんので、今日もお話しなさった塩谷さん、大山さんの話なども聞 けば、企業も頑張ってやっているんだ、消費者のためにどうしていったらいいかという のを本当に真剣に考えているんだということが伝われば、やはり消費者の価値観という のもかなり変化していくのではないかと思いますが、これは言葉で言うは簡単ですけれ ども、現実問題は非常に難しいと思います。 ただ、それを裏付けるような、今、健康状態の悪化というのが、ある意味では具体的 にいろんな形で表れて、先ほどもデトックスなどの話をしましたけれども、現実に、や はり食の乱れというものが大きな不健康状態を醸し出しているということもあるので、 やはりそこに気がつくきっかけをどうやって提供していくかということが経済性の問題 にもつながっていく問題ではないかというふうにはとらえています。 ○コーディネーター 今、例えば生産者からのお話を直接聞く機会があったり、今日の ような伊藤さんや塩谷さんのお話を消費者側も直接聞く機会があれば少し変わっていく のではないかというお話がありましたけれども、塩谷さんの方は会員の企業の方々によ く研修会をされているようですけれども、消費者に向けて何か、このポジティブリスト 制度などを発信したりする機会とかはあるんですか。 ○塩谷氏 まず、消費者に対して積極的にどうかということの前に、この制度が5月29 日から始まるわけですけれども、この制度を円滑に運用するということを周知徹底する と。そして、先ほど私が冒頭に述べましたように、食品産業界というのは中小の企業が 非常に多くございます。ですから、こういう制度があるのかないのか、ちょっと言い過 ぎかもしれませんけれども、これをきちっと周知徹底して理解してもらうということが まず大切でありますし、その努力に対しては厚生労働省も農林水産省も説明会等を開い ておりますし、私どもでもその説明会を開いております。 先ほど、特に行政用語がよくわからぬという話があった中に、やはり、この制度に対 してどのような運用をされるのかということに対しても、私どものセンターが主催して 意見交換会ということで、難しいといいますか、平易な言葉で意見を行政の方と交換し て、この制度をいかに円滑に運営するかということが、まず、この制度に関しては始め ということでありますので、消費者の方々に対しては私どもセンターとしても、行政、 業界、そして消費者という流れがありますので、次の段階ということになると思います。 ただ、私どももホームページ、このような留意事項を掲載しておりますので、それを 御参考にしてくださいということがまず1つであります。 ○コーディネーター まずは、この制度の適切な運営というところで企業に対して説明 会をされて、また平易な言葉で理解ができるようにということで、行政の担当者とも説 明会をしているということでした。 伊藤さん、セブン−イレブンの方ではどうでしょうか。 ○伊藤氏 本当に塩谷さんがおっしゃるとおりで、多分、どの企業としても5月29日に 円滑なスタートができるように、まずそれが優先事項になっているのではないかと思い ますし、セブン−イレブンとしても例外ではないというところです。 それと、私は、品質管理部なんですけれども、企業さんにとっては品質保証は日常的 にやらなければいけないことで、失敗したときだけお客様に非難されるというパターン の方が多いので、そういうことをお客様の方に説明するという発想は余りないのではな いかという感じはしています。御意見としては承っておきたいと思っております。 ○コーディネーター 要するに、品質保証が大前提であって、普段、企業の方から直接 消費者に言うというよりは、何か事件が起こったときに問題になるという話ですか。 ○伊藤氏 そうです。安全なのは、企業としての責任で当たり前という考え方を取られ ている企業さんがやはり多いのではないかというところは思っていますので、余りそう いう発想がなかったので、参考にさせていただきたいとは思います。 ○コーディネーター 阿南さん、日生協の方もいろいろ販売はされていますが、日生協 の方はどのような情報を会員さんを中心として提供されているのでしょうか。 ○阿南氏 まず、今日の資料7の「クローズアップCO・OP」ですが、ポジティブリ ストについての解説をしています。 4ページからは生協としての取り組みですが、日本生協連の5つの部署における食品 の安全に取り組みや、5ページには商品検査の概要などについて情報提供しております。 6ページでは、ポジティブリスト制度が発足するに当たって、商品管理のしかたを説 明しています。 これらは、連合会の取り組みですが、全国にもたくさんの生協がありまして、それぞ れがたくさんの産地、農業者、流通の皆様とお付き合い、取引をしています。そしてそ れぞれがそうした皆様と、今度の制度について共有し、理解を深め、取組みについての 意思統一を図っているところです。これらについて組合員にお知らせし、このようにし ますということをわかりやすく伝えていくということがポイントだと思います。 取引先はこのようにします、流通段階はこのように扱います、店頭に並べるときはこ のようにします、配達の仕方はこのようにしますということを逐一、情報提供して、理 解を得られるように説明していくというのは生協の事業としての責任であると考えてお り、どの生協においても普段から課題化して実行しています。  安心・安全は当然の前提ですが、それは日常的に消費者とともにつくっていくものだ と思います。なぜかというと、何かあったときに最終的にリスクを負うのは消費者です ので、食べるか食べないかの最終的な判断をするために、それに応えるだけの情報提供 を確実にすすめていきたいと考えております。 それと、先ほどのトマトのことを言っていいですか。 ○コーディネーター どうぞ。 ○阿南氏 非常に付加価値の高いトマトを生産されているが、なかなかこれが高く売れ ないというお話ですが、私自身の食べ方を考えてみますと、その日によって違います。 今日はちょっと高いけれども特別栽培でおいしそうだからこちらを食べてみようとか、 でも、別の日はお財布がさびしいので安い方を食べようとかとなります。それは人によ っても違うし、一人の人間によっても時と場合によってその選択は違うわけですね。で すから、その生産情報がうまく伝わっていくことが重要だと思います。 私たちは、特別栽培をすれば、それは日本の農業の環境にもいいということを聞いて おります。そうしたことをうんとアピールして売っていくことが重要ではないかと思い ます。生協では特別栽培品はよく売れます。それは消費者がわかっているからだと思っ ています。理解して、環境にもいいのなら私も貢献したいという消費者もいっぱいいま すので、なぜこれなのかをちゃんと情報提供していくことが重要かと思います。 ○コーディネーター 大山さん、今、アイデアが出ていたと思いますが、いかがでしょ うか。 ○大山氏 確かに、最近のいろんなデータを見ますと、消費者が実際にスーパーで買い 物をする。この時間が最近、日本人は独特といいますか、忙しいといいますか、20分ぐ らいでいろんなものを見て、スーパーさんで肉や野菜を全部見ながら、それの時間が20 分ぐらいだというようなデータを見たことがあるんです。なかなかそういう中で特別栽 培をやっているとか、こだわりの農産物とかということをなかなか20分か30分ぐらい の間にきちんと見分けをして、値段がどちらが高かった安かったというのは、なかなか 消費者の皆さんもこういう時間の忙しい中では難しいかなという部分は私もありますし、 今、情報というふうなお話がありました。情報という中で、なかなか我々農業者という のも意外と情報発信は下手だった部分はいっぱいあります。 そういう中で、これからもっと我々の取組みとかそういうものをもっと消費者に伝え ていきたいと思うんですが、そこで流通の問題もいろいろあるのかなと思うんですが、 なかなか複雑な問題、あるいは流通のプロの人が、私などが見て大分少なくなったのか なと。昔は八百屋さんが、このトマトは栃木県のだれだれがつくって、こういうふうな こだわりを持ってつくったんですというお話を、コミュニケーションをしながらお客さ んに売っていったという部分がほとんどなくなってきてしまった。 そういうことで、なかなか消費者の本当の情報というのが生産者側の方に伝わらない。 あるいは生産者側でこだわったもの、そういうふうな情報が消費者の方に届かないとい う、なにか流通の中の仕組みにも私は疑問といいますか、なかなか風通しが悪くなって きたと。そんなふうな思いもしているものですから、その辺もいろいろ流通業者の皆さ んに、その辺をこれからうまく風通しをよくするのにはこうやったらいいのではないか という、何かいいアイデアがあれば教えていただきたいと思います。 ○コーディネーター 伊藤さん、どうぞ。 伊藤さん、何かありますか。 ○伊藤氏 済みません、うちは余り生鮮品をやっていないので、答えられるような立場 ではないので、申し訳ありません。 ○コーディネーター 先ほど、生協さんもすごく消費者に情報提供しているというお話 がありました。資料7は4月5日に出たものなんですけれども、消費者の方から逆にポ ジティブリスト制度について生協さんの方にお問い合わせとかは、今、どんな状況にあ るんですか。 ○阿南氏 申し訳ないのですが、私はその辺は把握できていません。 ポジティブリスト制度そのものは、望んできた仕組みですので、できて安心している からでしょうか、余り問い合わせはないのではないかと思います。済みません、その辺 ははっきりと答えられません。 ○コーディネーター 今日のフロアも、本当に消費者の方というよりは企業の方が非常 に多くあって、もし本当におっしゃるとおり望んできた制度であれば、別に説明を聞か なくても大丈夫というような認識があって来られていなかったのかもしれないかなと思 います。 塩谷さん、何か御質問などありませんか。 ○塩谷氏 私どもの方で、留意点にも書きましたように、この制度を守るときに、守る というのは1つは新しい制度ということなので、産業界としては当然、この法令を遵守 するというのは当たり前と考えております。 ただ、その中で、どういうふうに対応したらいいかということで、聞くところによる と、やってもやってもまだまだ対応しなければいけないので胃が痛くなるというところ もあるということなんですが、その中で1つあるのは検査という項目の用語に関してな んですが、私どもの留意点として書かさせていただいたことは検査ですべてを保証する ものではありませんという骨子でありまして、もし念のために、そしてモニタリングの ためにするのであれば各情報をよく集めて、その可能性のある農薬、その項目について 分析をしたらいかがかということを私どもとしてはリコメンデーションしているんです けれども、流通の方では、先ほども現地の検査という言葉で、検査という言葉は非常に 簡単な言葉なんですけれども、内容としては非常に深い内容があって、やればやるほど、 本当に800 やらなければいけないのか、全部やらなければいけないのかとかそういうの をどんどん行くと、とても寝ていられないというところがありますので、もし参考にな ればと思いまして、お聞きします。 ○コーディネーター 伊藤さん、どうですか。 ○伊藤氏 先ほど申し上げたように、検査で安全性、適合性を担保することはほぼ不可 能に近いのではないかと思っています。 それは、やはりサンプリング方法、例えばロットがわかっていても、全部のロットを 代表するような形でサンプリングすることも難しいですし、特に今回のポジティブリス ト対応の原材料ということを考えますと、例えば個体差があったり、そういうことを考 えたときに、検査で適合しているという結果が出ても、では、それが全部のロットの代 表になるかというと、これがそうとは限らないと認識しています。それがゆえに、絶対 に検査に頼らない仕組みをつくっていくことが必要なのだと認識しております。 逆の言い方をすると、ちょっと変な言い方なんですけれども、全項目検査したから安 全かというとそんなことはないんです。例えば物が2つ並んでいたときに、1つが合格 しても、では隣にいるものがやはり同じところでちゃんと栽培されたのか、そういうも のが証明されていない限り検査の成績は何の意味もなくなってしまうという側面があり ますので、最終的には品質を作りこんでいただいている生産者のところまできちんとさ かのぼって、そこの中で正しい使い方をしているかどうか、ちゃんとした農薬を正しい 使い方をしているかどうかを確認することが重要なポイントだと思っています。その上 で、どのような検査をすべきなのかが決まってくるというふうには考えています。 ○コーディネーター 塩谷さん、よろしいですか。 ○塩谷氏 はい。 ○コーディネーター 検査というと、すぐ皆さん、非常に安全性を担保するものと考え がちですけれども、ロットが決まってもサンプリングがまた難しいし、個体差もあると。 検査で適合と出ても、それが全部の代表とはなり難いと考えられるということから、検 査に頼らず、生産者までさかのぼり、生産者とコミュニケーションを取りながら品質管 理をしていくというようなお話だったと思います。 どうぞ。 ○伊藤氏 検査そのものがだめというわけではなくて、検査はやはり検証用のバックデ ータとして取り扱うべきだと考えているというふうに御理解いただければと思います。 ○コーディネーター 検証用のバックデータとして担保していくものであるというお話 でしたが、蓮尾さんどうですか。 ○蓮尾氏 検査のことですか。 ○コーディネーター いいえ、今、大山さんも努力をされ、伊藤さんもいろいろさかの ぼってコミュニケーションを取ってという話をされていましたけれども、いかがでしょ うか。○蓮尾氏 いい例になるかどうかはわからないんですけれども、私もかつて生活 協同組合で商品担当の責任者をやっていたことがあるんですが、そのときに産直商品を 開発していく段階で、各生産地を随分いろんなところへ回りまして、生産者の実態とい うのをつかむために生産者と接触をしてきたという経験があるんですけれども、そのと きに純然たる消費者で気付かなかったということを気付かされたことがあるんです。そ れは、例えば、農薬はできるだけ減らしていきたいというのは生産者も考えていること なんです。必要以上に使いたいと思っている生産者というのは、その当時からほとんど いませんでした。 私、消費者の思いというものを生産者に伝えて、生産者がそのことをきっちりと理解 するまでに、本当にあうんの呼吸で、何を求めているのかというのがわかるまでには大 体7年ぐらいはかかったのではないかと思います。そのくらい、やはり生産者の方は生 活がかかっているわけですし、消費者はそこではなくてもいいというふうに選ぶことが できるわけです。 そういう温度差というのをよく理解していかないといけないのではないかということ と、例えばニンジンなどの例ですけれども、いろいろな生産地を回っていく中で、農薬 をほとんど使わなくても生産できる立地条件に恵まれた生産地と、それから、やはり農 薬はどうしても使わないと、それが本当に品質という面で消費者に納得してもらえるも のがつくれないから、やむを得ず農薬を使う。片方は、それほど努力しなくても、それ ほど農薬に対しての理解が余りなくてもできてしまう。片方は、一生懸命減らしたいと。 だけれども、使わないとできないからということで非常に努力していると。そのどちら を選ぶかということを組合員さんとよく討論をやりました。努力をしないでもできると ころの生産者と、努力して消費者の要望に応えていこうと思う生産者と、どちらを私た ちは生産者として認めていったらいいんだろうかというような話を随分したことがあり ました。 今回も、例えば、消費者の方はほとんど、私もポジティブリスト制度の学習会をうち の会でもやっているんですけれども、ほとんど消費者の方というのはドリフトというの は初めて聞く言葉で、それがどういうものなのかというのは知りません。新聞には出て いるけれども、そういうところは流して読んでいってしまうと。 キュウリとトマトを隣り合わせでつくっているところで、トマトに使える農薬と、キ ュウリに使える農薬は違うんだなどということまでも消費者というのは本当にわからな いわけです。生産者にとっては、それが今度、キュウリの農薬がトマトにかかったとき には、それにひっかかって生産停止になる場合もあると。そのことを大変、生産地のと ころでは危惧しているわけです。それをどういうふうに消費者は理解していったらいい のかというところからやはり始めていかなければならない問題を、ポジティブリスト制 度というのは含んでいるのではないかと思いますので、そこら辺を理解してから制度が 施行されるということであればよかったんでしょうけれども、3年間あったものの、現 場のところでは、私の知る限りですけれども、本当に生産者のところは初めて聞く言葉 というような人も本当にいるんです。JAのところで十分徹底されているところはない のかもしれませんけれども、結構、今年に入って学習会をやったという生産地は随分あ るように私は聞いています。 ですから、そういう意味で、本当に生産者と消費者と加工のところに携わっていらっ しゃる方たちが共通認識の中でこの制度をいいものにしていく。この制度はやはり必要 だったんだとお互いが確認し合えるまでには相当な年月も必要だと思いますし、経済的 にそれがどういう形でお互いが三方一両損みたいな形で折り合いをつけるのかどうかと いうところが、この制度が本当にうまくいくかどうかにかかっているのではないかと思 うので、生産というものの複雑な状況と、日本のように北から南に長い、それと四季の あるという気候の問題を抱える中で、ポジティブリスト制度を一律に運用していくとい うことが、どういう形で生産者にとってやってよかったにつながり、消費者も安心だと いう気持ちにつながり、その間で努力されている業者の方たちも、そのことに確信を持 てるというところまでどういうふうにしていくかというのが今後の、本当にリスクコミ ュニケーションでできるのかどうかわかりませんけれども、でもやっていかなければな らない問題だと。 安心と安全というのは、私の会のところでは常に安定という保証がないと安心と安全 は保証されないということを言ってきているんですけれども、やはり安定的に物が得ら れなくなったときには安心も安全もすっ飛んでしまいますので、そういう意味で、やは り国内の生産体制をきちっと確立していくということの政策もあった上で、その制度も いいものになっていくのではないかと思いますので、そこら辺は厚生労働省とか農林水 産省とか、それから地方自治体の行政のところにも、非常に難しい問題だと思いますけ れども、消費者の立場として支援体制を組んでいただきたいと思っています。 ○コーディネーター どうぞ。 ○阿南氏 検査では、安全は担保されないという伊藤さんのお話を伺って、本当にそう だと思いました。やはり携わる人たちがそれぞれの責任を果たすというところからはじ めて、その責任がどう果たされているのかということがないと安全性は確保できないで すね。そうすると、私たち消費者の側も責任を自覚せざるを得ないわけです。 この「クローズアップCO・OP」の9ページでは、日本生協連として消費者に知っ てもらいたいということを述べています。要するにちゃんと理解して、自分が生活の中 に消費者としてできることをちゃんとやりましょうという食の提案にしています。バラ ンスのよい食生活を進めましょうとか、科学的な情報を基本にしていきましょうとか、 群馬県の作成した「ちょっと気になる農薬の話」の抜粋もありますが、こんなふうにす れば残留農薬も減らすことができるという知恵も掲載しています。やはり消費者自身も、 リスクゼロではなく、何事にも必ずリスクはあるということを肝に銘じて、生産者や行 政や流通にかかわる人たちの努力をちゃんと認めながら消費者自身も努力をするという ことが必要だと、伊藤さんや塩谷さんのお話を聞いていてそう思いました。 こうした努力を消費者自身も行っていきたいと思いますので、そのためにも、正直で 正確な情報を消費者が共有できるように、コミュニケーションを大切にして行きたいと 強く思った次第です。 ○コーディネーター 消費者も、今、伊藤さんや塩谷さんのお話を聞いて勉強をしてい かなければいけないということだったと思うんですけれども、本当に、望んでいた制度 だからといってこの場に表れないのではなく、やはり食品、私たちの毎日食べているも のをつくってくださっている企業の方々、生産者の方々としっかり交流をしていかない といけないのかなと思いました。 何か、ほかに御質問とかありますか。 どうぞ。 ○大山氏 先ほど、蓮尾さんの方からお話がありました農薬、例えばニンジンの話題が 出ましたね。農薬を使わないニンジンができるような産地と、農薬を使わなくてはでき ない産地がありますというお話がありましたけれども、先ほど私も話したように適地適 作というふうに、その産地に合った、その気象に合った、その地域に合った農作物とい うのはあるわけです。なかなか、この日本の広い地域の中で、そういう経営の中で付加 価値を付けながら云々というお話をさっきしましたけれども、そういうことを無理にや っていきますとなかなかいいものができない。ですから、農薬散布なども多くなるとい う可能性は十分出てくる可能性があると。 ですから、やはり我々、生産の中でも産地に、その地域に合ったような特色のある作 物を選択していこうというような意識も結構ありますし、また私ども、先ほどからお話 を聞いていますと、残留農薬の検査云々という話はあるんですが、私などは基本的に農 薬をきちんと取締法の中で守って使っている分には決して検査にひっかかるということ は私は基本的にないと思っているものですから、確かに検査では担保できないというよ うなお話がありました。確かにロットの中での抽出ですから、全部検査しているわけで はないですから検査だけでは本当に担保はできないだろうと思います。 ですから、我々生産者としては、非常にそういうものできちんと基準を守るという大 前提の下に生産していくという、これからというのは勿論そういうふうにやっているわ けですから、そういうことをどんどんPRしていかなくてはいけないと。今のお話を聞 きながら、そんなふうに思っております。 また、1つのところでキュウリ、トマトをつくって農薬云々という話がありましたけ れども、意外と、キュウリにも登録が取れ、トマトにも登録が取れたという農薬は結構 多いんです。例えば、余り特殊野菜になりますとなかなか登録が取れていないんですが、 一般的なトマトとかキュウリとかは非常に農薬が登録を取れているものですから、非常 にどちらにかけても問題ない農薬なども選定しながら、我々は農薬散布なども考えてや っております。 ○コーディネーター ありがとうございました。 今、国内での生産の話が中心になったと思うんですけれども、初め講演があったとき に蓮尾さんの方から輸入品に対する幾つかのお話があったと思うんですけれども、セブ ン−イレブンさんの方では輸入品に対しては、先ほども少しお話がありましたけれども、 どのように考えていらっしゃいますか。 ○伊藤氏 セブン−イレブンは、加工食品を販売していて、いわゆる生鮮品は原材料と いう形で使っています。それで一部、輸入も当然のことながらございます。 その場合は、環境整備された生産者を選ぶというところから、まず始めております。 最近ビジネスベースでつくられているところもかなり多いので、そういうところは生産 記録とかがきちんとあります。管理のいいところもありますし、不十分なところもあり ます。不十分なところは改善できるかどうか。この辺の部分を一生懸命確認しながら、 最終的に分析という形で、その仕組みがちゃんと動いているかどうかを検証した上で使 用するというのが大体基本的な流れになっています。これは国内の部分でもそんなに変 わりはなくて、国内での商品でも、必要があれば農家さんとかJAとかにお邪魔した中 で、生産記録を見せてもらったり、それから薬品管理がきちんとできているかどうかの 確認等をさせていただくこともあります。セブンーイレブンとしては、やはり全体の流 れ、仕組みがちゃんとできているかどうかというところを、判断するような形をしてお ります。 ○コーディネーター いわゆる、全体の仕組みをきちんと見ていくと。 ○伊藤氏 そうですね。1個ずつ、例えば生産記録がある。それから、ちゃんと管理さ れた薬品を使っているとかその辺りのポイントが必要で、できていなければ穴ができて しまうというふうに思っています。結構難しいことではあるんですけれども、やはりそ の辺を1つずつ確認していくことが必要なんだろうと考えています。 ○コーディネーター 塩谷さんのところに所属する企業さんでも、輸入品を利用されて いる利用されている企業さんはあると思うんですけれども、いかがでしょうか。 ○塩谷氏 今の件で、輸入品と海外で生産物をする。それで圃場管理をして、記録をき ちっと取る。それはそれで実際にやられたところもある。 ただ、もう一回戻りますけれども、食品産業というのは中小が多うございますので、 それができるというところとできないところがあるということがあります。そのために、 先ほど申し上げましたように、情報をきちっと入手するということである。特に輸入食 品に関しては国の検疫所がきちっとモニタリングするというシステムが、今、確立され ておりますので、まずその情報をきちっと掌握するということと、次に掌握した後、何 をするかということなんですが、やはりその情報というのは1点だけではなくて、次々 といろんな情報が出てきます。その情報をもって、トレンドをつかまえて、その輸入食 品に対して合理的に、何を考えて、それに対応するかということをする必要があると考 えます。 ○コーディネーター 蓮尾さん、輸入品に対しても、今、しっかりと取組み方をお話し されたと思いますが、いかがでしょうか。 ○蓮尾氏 そういう、やっていらっしゃることを信じたいですね。私たちは無理に疑う ということではなくて、先ほども申し上げましたけれども、食品衛生法というのはかつ て性善説に立った法律だったわけです。それが、やはり性善説が通用しないようないろ いろな事件、事象が起きてきたということから、消費者は法律はきちっと整備されても、 それがきちっと守られないということであるのだったら意味がないと感じる消費者も随 分増えてきたのではないかと思うんです。 ですから、それをやはり回復するためにも、このポジティブリスト制度が導入された ことを契機にして、いや、実際に事業者のところも、生産者のところも、それから輸入 の現場も、チェック機関もきちっと健康を守るためにやっているんだということをやは り具体的に証明していく情報提供というのが非常に必要ですし、その姿勢を示すという 意味で、消費者に対して言葉を多く伝えていってほしいと思います。 そういう偽装表示とかそういうことを絶対起こさないということを、やはりお互いに 確認し合うということと、それから、たまたま昨年、食育基本法が制定されまして、食 育が具体的にいろいろなところで試みられてきている時期でもありますので、食育のそ ういったところにポジティブリストのこともちょこっと入れて、お互いの共通認識が持 てるというような組立て方とか、食育というのは子どもに対してだけではありませんの で、大人も、シルバー世代も、それから自治体も、食品業者も、その責務という形で条 文の中に盛られていますし、消費者の役割ということで学習が必要だということも言葉 に入っていますので、阿南さんがおっしゃったように、消費者の果たす義務として権利 を主張するのであれば、その義務として知るということに積極的に消費者も参加してい くという形の働きかけというのがどういうふうにやったらいいのかわかりませんが、そ れがないとなかなか難しい問題も山積しているのではないかと思います。 ○コーディネーター 消費者も積極的に権利を主張するならば、知るというところで積 極的に働きかけをしていかなければというお話がありました。 残り、あと10分ほどになったのですが、何か一言言っておきたいことなど、まずこち らの方でありますでしょうか。 大山さん、何か、これだけはというようなところはありますでしょうか。 ○大山氏 私どもも、生産という場だけではなくて、やはり情報交換あるいは相互理解、 非常にこれは、今、農産物だけではなくて都市と農村という部分でも相互理解というこ とは絶対必要かなと思っています。 農業というのはいろんな機能がございまして、皆さん御承知のように、空気、水、景 観、あるいはそういうふうな多目的機能を果たしながら農業というのは成り立っている ものですから、やはりこれからますます相互理解という部分がこれから重要になってく るのかなと思います。 ○コーディネーター 今日の相互理解とか、コミュニケーション、情報といったのがキ ーワードかなと思います。 塩谷さん、何かこれだけはというような一言はありますでしょうか。 ○塩谷氏 今、コミュニケーションの話が出ましたけれども、外部とのコミュニケーシ ョンというのが当然1つある話で、それは十分にしなければいけないんですけれども、 もう一つ、先ほどの私どものスライドで見せましたが、内部でのコミュニケーションと いうことが必要になってくると。特に、これは食品の生産ということになりますと、購 入する人、それを使ってつくる人、そして売る人。もっとあるんですけれども、そうい うような工程というのがいろいろありますので、その中できちっと内部のコミュニケー ションも取って、この制度に対応するということのコミュニケーションも必要だと考え ます。 ○コーディネーター 本当にいろんな人が関わっていくと、どこかでコミュニケーショ ンが図られなくなると情報が途絶えてしまいますが、内部のコミュニケーションも、ス ライドにもありましたけれども、重要だというお話があったと思います。 伊藤さん、何かございますか。 ○伊藤氏 1つだけ。コミュニケーションの話が出ていたんですけれども、是非、国間 のコミュニケーションも行政の方にしていただければと思います。特に、海外輸入品が 多くなっているんですけれども、薬品関係の表示だとかの制度が国間で違っていると、 非常に戸惑うようなところがあるので、その辺りの整備、国間のコミュニケーションを 図って共通になってくれると、大変確認する側はありがたいと思います。 ○コーディネーター それは、国と国との間のコミュニケーションですか。 ○伊藤氏 そうです。日本と海外で、特に薬品関係などで表示が整備されていないよう なところなどもあって、その辺りからも輸入などが必要になったりするときもあるので、 その辺りを働きかけていただけると大変ありがたいとは思っております。 ○コーディネーター では、それに関して厚生労働省の方から何かありますか。 ○河村課長補佐 基準審査課の河村でございます。 本制度につきましては、早いときから海外の方にも情報を発信し、また、基準の作成 の際にもいろいろ御意見を聞いてきました。制度の施行が近くなってからも、いろいろ なコミュニケーションを図っているところでございます。 今、伊藤さんがおっしゃった表示の制度をいろいろ考えなければいけないというのは 別途あると思います。しかし各国で国際的に食品に関する規制がいろいろ違うものです から、日本だけでなくて、いろんな貿易上の問題というのがあるかと思います。コーデ ックスのような国際規格をつくるような委員会の方にも我々は参加しておりますので、 そういった中で情報を共有化して、なるべく国際的ハーモナイズが取れる部分はいろい ろ共通認識でやっていきたいとは考えておりますけれども、一概にすべてすぐにという のはなかなか難しいかと思います。 ○コーディネーター ありがとうございました。 それでは、蓮尾さん、これだけは言っておきたいというようなことはございますか。 ○蓮尾氏 今、お互いに対立するのではなくて、お互いに歩み寄る形でよりよいものに していくということを前提に進めていかなければ、本当にせっかくここまで、阿南さん もおっしゃったように、私も30年近く、この制度の実現ということを望んでやってきた という消費者の立場から言うと、そういう意味での信頼関係を、失われている信頼関係 があるとすれば、もう一度それを取り戻すいいきっかけにしていくような活動になって いければということを願っています。 ○コーディネーター 信頼関係という言葉も、最初の講演でもよく聞かれましたけれど も、これもまた一つのキーワードかなと思います。 阿南さん、どうぞ。 ○阿南氏 今日は、消費者の参加が少なかったですけれども、これは消費者サイドから 言いますと、この制度を現実的に実施していく段階でのコミュニケーションに関心が移 っていっているのではないかと思います。 この間、国とのリスクコミュニケーションの場には消費者の参加も大変多かったわけ ですが、今回の制度の確立に関して言えば、今後実際に制度を運んでいくのは、それぞ れの自治体であり、事業者ですから、今度はそこでのコミュニケーションが必要となり、 その輪の中に、お客様や消費者を入れて、相互理解を図っていくということが重要では ないかと思っています。 今まで、余りにもコミュニケーションがなさ過ぎましたし、特に消費者はコミュニケ ーションの輪から排除されてきたのではないかと思います。消費者には言ってもわから ないという認識があったのではないでしょうか。本当にわかりやすい説明ができていた のだろうか、また、するという努力をしてきただろうかということを事業者も行政もこ こでもう一回考えてみる必要があるのではないでしょうか。制度を具体的に円滑に、適 切に運用していくということを考えたときには、それぞれの場面でのコミュニケーショ ンの充実ということを更に一層推し進めていく必要があるのではないかと思いました。 そうしてお互いに歩み寄ってやっていければと思います。 勿論、私たち消費者も、もっと自分たちの責任を自覚して、そのような場を求めてい きたいと思いますし、そこでは率直な意見を出していきたいと思っておりますので、ど うぞよろしくお願いいたします。 ○コーディネーター ありがとうございました。 今日、最初、皆さんと打ち合わせをしたときは、本当に話が進むのかというような話 もありましたが、いろんな話をしていただきました。 あと少しだけ時間があるので、何か1つだけ、今日のいろんな考え方をお互いに出し 合った中で御質問されたい方がおられましたら挙手をしていただけますでしょうか。 では、どうぞ。所属は結構ですから、どのような立場でお話しされるかをおっしゃっ ていただけますか。 ○参加者1 流通段階の卸業者なんですけれども、今回の残留農薬とかの問題とは関係 ないんですが、この制度でパッケージングすると、それが製造工程の一部に入ってポジ ティブリスト制度の対象になるという説明文があるんですけれども、5月28日以前に輸 入して、通関に来て、検疫を通って、現在、流通・販売可能な商品を5月29日以降にパ ッケージングし直して販売することをすると、ポジティブリスト制度の対象になるとい うことですね。 例えば、ウナギのかば焼きとかああいう輸入の、すぐ店頭でスーパーで1匹ずつトレ ーに盛ってパッケージングすると、それが今は販売OKなんだけれども、5月29日以降 になるとそれが検査対象になるということがあると思うんですけれども、それについて は逆にどういうふうに販売していけばいいのかというのはあるんでしょうか。 ○コーディネーター 販売についてですか。 伊藤さん、もし何かあればお願いいたします。 ○伊藤氏 多分、行政の方への質問ではないでしょうか。 ○コーディネーター そうしたら、厚生労働省の方からお願いいたします。 ○河村課長補佐 基準審査課の河村でございます。 恐らく、制度の適用の経過期間のお話だと思います。11月29日付の通知の中で書か れた部分だと思いますが、今回、5月29日をもってこの制度を施行するということなん ですが、加工食品もその対象になると。すべての食品が対象になりますから、加工食品 もなると。では、その加工食品についてどう整理しましょうかといったときに、こうい った制度の改革なのでどこかで線を引かなければいけない。加工食品について検討をし たところ、28日以前までに消費者の方の手に渡るような最終製品まで製造加工された、 それは包装も含めてでございますが、そういったものについては従来の制度を適用しま しょうということにしております。 ただ、29日を超えてそういった包装したものについては新しいこの制度を適用すると いうような、線引きをさせていただいて対応することにしてございます。 ○コーディネーター 回答が、聞きたいことが少し違っていましたか。 ○参加者1 違っています。それはわかるんですけれども、5月28日までに製造・加工 が終了した製品は今の法律でOKだというのはわかります。5月29日以降に、そちらの 方が聞きたくて、現在、輸入食品の加工食品の中で、ウナギのことを言うとあれなんで すけれども、かば焼きになっている状態ですぐレンジでちんすれば食べられるという商 品があるんですけれども、それは輸入段階ではパッケージングされていなくて、5キロ の箱に20匹入っているとか、30匹入っているとかという形態で搬入されてくるんです。 それを、通関時にはこれは販売してOKですと国から合格をもらって販売しているも のを、例えば量販店の店頭で1匹ずつトレーに盛る仕事を今年の丑の日にやりたいとい うふうな販売をされるときは、それがポジティブリストの対象になるということなんで すけれども、それの検査は店頭で行わなければいけないんですか。トレーに盛ったとい う各量販店での検査対象が必要だということなんでしょうか。 ○コーディネーター 多分、個別の事例になってくるので、厚生労働省の方にお電話を されて、ゆっくりと、じっくりと聞かれるのがいいかと思います。 お時間にもなってきましたので、本日のこのリスクコミュニケーションの私の役目は これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手) ○司会 以上をもちまして「食品に関するリスクコミュニケーション(残留農薬等のポ ジティブリスト制度の導入に際しての生産から消費までの食品の安全確保の取組みに関 する意見交換会:東京都)」を終了させていただきたいと思います。本日は長時間にわ たり、また貴重な御意見をいただきまして、どうもありがとうございました。 連休明けの5月11日から、全国9か所で開催する予定にしておりますので、もし今回 御出席できなかった方を御存じでしたらお知らせいただければと思います。 また、出入り口でアンケートの回収をしておりますので、御協力いただければと思い ます。 本日は、どうもありがとうございました。(拍手)