05/08/24 平成17年8月24日・25日(大阪市・東京都)「食品に関するリスクコ ミュニケーション(妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項について の意見交換会)」            食品に関するリスクコミュニケーション  (妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項についての意見交換会:東京都)           日時:平成17年8月25日(木) 13:30〜16:46           場所:三田共用会議所 講堂 1.開会 2.リスクコミュニケーションについての説明 3.テーマについての説明 4.休憩 5.パネルディスカッション 6.意見交換 7.閉会 ○司会(広瀬厚生労働省食品安全部企画情報課長補佐)  それでは、定刻となりましたので「食品に関するリスクコミュニケーション(妊婦へ の魚介類の摂食と水銀に関する注意事項についての意見交換会)」を開始いたします。  本日は皆様御多忙の中、また天候の余りよろしくない中、多数の方に御参加いただ き、ありがとうございました。  私は本日司会を務めさせていただきます、厚生労働省医薬食品局食品安全部企画情報 課の広瀬と申します。よろしくお願いいたします。  初めに配布資料の確認をさせていただきます。お手元に議事次第があるかと思います が、その後が本日の座席表ということになっております。  配布資料1といたしまして「リスクコミュニケーションについて」。  資料2として「『妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項』の見直しについて 」。  資料3として「食品に関するリスクコミュニケーションにおける事前質問・意見につ いて」でございます。  参考資料といたしまして「意見交換会に参加いただいた皆様へ」。これはA4縦のカ ラー刷りの1枚のものでございます。  「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項についての意見交換会 参考資料 」。これは少し分厚い冊子になっているかと思います。  また「食品安全エクスプレス」。こちらもA4、1枚の横の紙でございます。  「食生活指針について」。これは少し小さくてかたい紙でできているんですが、封筒 から出したときにたまに封筒に残ってしまったりすることがありますので、よく封筒の 中も確認いただければと思います。  「食事バランスガイド」。こちらもA4、1枚紙でございます。  資料の不足等がございました場合には、恐縮ですが受付もしくは担当の方までお申し 出いただきますよう、お願いします。  続きまして、簡単に本日の議事進行を説明いたします。  議事次第をごらんいただきたいのですが、まず厚生労働省大臣官房参事官の松本義幸 よりごあいさつを申し上げた後、順天堂大学医学部公衆衛生学教室の堀口先生から「リ スクコミュニケーションについての説明」を10分程度させていただきます。  続きまして、厚生労働省食品安全部基準審査課食品規格専門官の近藤から「『妊婦へ の魚介類の摂食と水銀に関する注意事項』の見直しについて」を御説明いたします。説 明時間は1時間程度を予定しております。  説明の終了時刻といたしましては、2時45分ごろを予定しております。説明終了後10 分間程度休憩を取らせていただきまして、2時55分からパネルディスカッション、意見 交換会を行いたいと思います。午後4時30分には終了したいと考えておりますので、御 協力方よろしくお願いいたします。  それでは、松本参事官から開会のごあいさつをさせていただきます。よろしくお願い します。 ○松本厚生労働省大臣官房参事官  皆様、こんにちは。厚生労働省でリスクコミュニケーションを担当しています、松本 義幸であります。  妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しについての意見交換会の開催 に当たりまして、一言ごあいさつ申し上げます。  本日は御多忙のところ、また台風11号の影響で足元が悪いにもかかわらず、多数の御 参加をいただきまして、ありがとうございました。  魚介類に含まれますメチル水銀に関する安全確保につきましては、平成15年6月に公 表しました、「妊婦の方等を対象とした注意事項」の見直しに当たり、昨年7月に食品 安全委員会に食品健康影響評価を依頼しますとともに、厚生労働省の薬事・食品衛生審 議会におきましても並行して議論を進めてきたところであります。  今般8月4日より食品安全委員会より食品健康影響評価結果が通知され、耐容量やハ イリスクグループが示されたことから、厚生労働省においても8月12日に審議会を開催 し、注意事項の見直しの案をとりまとめたところであります。  また本案に対する意見募集を8月22日より開始しております。  厚生労働省としましては、今後、意見募集に寄せられた意見やリスクコミュニケーシ ョンの結果を踏まえ、再度審議会で議論いただいた上で注意事項を決定する予定として おります。  注意事項の見直し案では幾つかのポイントがあります。魚は良質なタンパク質等を含 む重要な食材であり、健やかな食生活に欠くことのできないものであるということ。食 品安全委員会の評価結果では、妊婦の方のみが対象であって、子どもを含め一般の方々 は対象となっていないということ。妊婦の方も、魚の種類や量を工夫してバランスよく 食べていただきたいということです。  また、厚生労働省としては、この注意事項の見直しがいわゆる風評被害や魚介類の摂 食の減少につながらないよう、正確に理解されるための方策も講じていきたいと考えて おります。  本日はお集まりの皆様と情報を共有し、また意見交換を通じて、今回のテーマについ ての理解を含めていただければと思います。  簡単ではございますが、開会に当たりまして、ごあいさつ申し上げました。どうぞよ ろしくお願いいたします。 ○司会  ありがとうございました。  それでは、本日の意見交換会の目的についてですが、先ほど、配布資料の中で説明さ せていただきましたけれども、「意見交換会に参加いただいた皆様へ」というA4縦の 1枚紙のカラー刷りのものがございます。  簡単に御説明いたしますと、この意見交換会というのはリスクコミュニケーションの 一環として行うものですけれども、このリスクコミュニケーションの中では必ずしも個 々の意見交換会の中で何かを合意して決めようというものではございません。  今回は、妊婦への魚介類の摂取と水銀に関する注意事項について、関係者の間で情報 を共有すること。それから、さまざまな立場から意見交換を行い、この問題についての 認識、正確な理解を深めることを目的としております。  このリスクコミュニケーションという言葉ですけれども、聞き慣れない言葉と思われ る方も、また聞いたことがあってもどういう意味なのか理解しにくいという方もいらっ しゃると思いますので、まずリスクコミュニケーションとは、ということについて、順 天堂大学の堀口先生から御説明をいただきます。よろしくお願いいたします。 ○コーディネーター(堀口氏)  こんにちは。順天堂大学公衆衛生学教室の堀口と言います。どうぞよろしくお願いい たします。  それでは、リスクコミュニケーションについて、説明させていただきたいと思いま す。  これはいわゆる片仮名用語で、簡単に日本語に訳してしまえば、「危険と会話」とい うようなことになりますけれども、日本にはこれまでなかった新しい概念ということ で、食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省、いろいろな関係機関がこの適切な日本 語をどういうふうにするかということで御検討されたようですけれども、新しい概念と いうことで、このままリスクコミュニケーションという片仮名の日本語で使われるよう になっております。  ということで、リスクコミュニケーションという片仮名用語で説明をさせていただき たいと思います。 (PP)  リスクコミュニケーションは食品に限ったコミュニケーションではありませんで、化 学物質だとか今、別途話題になっておりますアスベストなど、いろんな社会生活を営む において、私たちに何らかの悪影響を与えるものについて、コミュニケーションをして いくということで、食品に限ったものではありません。  今日は魚介類等に含まれる水銀というものがテーマですので、食品に限って説明をさ せていただきます。  食品の安全を取り巻く動向といたしましては、いろいろと環境の変化があります。こ れは今、日本は飢餓から飽食の時代になっておりまして、今回の資料にもあります、バ ランスシートなどを利用して適切な食生活を営みましょうというふうなことにもなって おりますし、大量生産、大量流通、食文化はありますけれども、日本のいたるところで 同じような食材を口にすることができます。日本の食糧の自給率も低く、貿易の国際化 が今、言われておりますし、長距離輸送が一般的になっています。  また、海外旅行も特別な人が行くわけではなく、普通に生活をして日常的に海外旅行 に行くというところで、海外で起こった食の問題が日本においてもすぐ起こる問題にな り得るというようなところです。  食品の安全を取り巻く国際的な考え方は大きく2つありまして、リスク分析とフード チェーンアプローチの2つです。  フードチェーンアプローチというのは、食品の安全を口にする最終段階で確保するの ではなく、生産から流通すべてのプロセスを経る、それぞれの段階で安全を確保してい きましょうという考え方になります。 (PP)  このリスク分析の中に、今日のリスクコミュニケーションというものが位置づけられ ております。これは2002年のJECFAの会議で言われております。 (PP)  そのリスク分析、リスクコミュニケーション全体像を説明したいと思います。  リスク分析は、国民の健康の保護を目的として、国民やある集団が危害にさらされる 可能性がある場合、事故の後始末ではなくて、可能な範囲で事故を未然に防ぎ、リスク を最小限にするためのプロセスというふうに定義をさせており、大きく3つの要素から 成ります。それがリスク評価、リスク管理、リスクコミュニケーションの3つです。  リスク評価は、この日本においてはどういう機関が担っているかというと食品安全委 員会において、食品安全基本法などに基づきリスク評価が行われております。  そのリスク評価の結果を受けてリスク管理をしているわけですけれども、それは厚生 労働省や農林水産省がさまざまな法律に基づいてリスク管理をしております。  最後にリスクコミュニケーションですけれども、これは今回のは主催が厚生労働省と 農林水産省になっておりますが、また別途食品安全委員会でもリスクコミュニケーショ ンを実施しているところでございます。 (PP)  リスクと今ずっとお話をしてきましたが、リスクは日本語に訳すと危険というふうに 中学校の英語などでは習いますけれども、危険になるそのものというよりも、それによ って影響される全体像ということで、大きくとらえております。  このリスクをどのように感じるかというものについては、心理学の領域でここ20年近 く研究が進められておりまして、私たちがリスクを感じるというのは主に3つの要素か ら成り立っていると研究結果から明らかになっています。  それは、恐ろしさ、未知性、そのリスクがもたらす災害の規模になります。  恐ろしさというのは、例えば、飛行機事故を思い浮かべていただければ、どのような 状況になるか。それが恐ろしさにつながるわけですし、未知性というものについては、 例えば、遺伝子組換え食品などをここ100 年ほどずっと食べていったときに、自分たち の子孫にどのような状態があらわれるのかわからない。また情報がないといったものに 対してリスクを感じるようになってきます。  また災害の規模。どれぐらいの人たちに影響があるのかとか、その大きさなども影響 する者となっています。  またリスクは右側に英語で書いてあるんですけれども、日本語に直すとなると能動的 なのか受動的なのか。自分たちが避けることができると感じているのか。やはりそれは 避けることができないものと感じているのかということによって、そのリスクの認知が 異なります。  このリスクの認知は立場が違う人々の間で程度が違いますし、例えば、国民性によっ ても違いますし、男女間によっても違いますし、年齢によっても違います。それがどの 程度どう違うかというのは、それぞれの項目によって、また結果が異なっています。リ スク心理学の分野では各項目について、それを研究しているといったようなところで す。 (PP)  「絶対に(完全)に安全な食品はあるか? 」というところで、まずお話をさせてい ただきます。そのリスクがない食品があるのかというお話です。  安全な食品。よく新聞紙上もにぎわっておりますけれども、普通多くの人々は安全な 食品というのをゼロリスク、リスクが全くない食べ物ととらえている。しかしながら、 リスクが全くないということは実現不可能であるというふうに、1999年の国際会議にお いて明確に言われております。  実際のところ、安全の食品というものはゼロリスクではなくて、どのようなものかと いうと「safe enough 」。十分に安全性が担保されているもの。これが安全な食品とい うものですと。  ゼロリスクを求める消費者がいたりする場合もありますけれども、安全な食品という のは決してゼロリスクではないというところを頭に入れておいていただきたいと思いま す。そして、ある物質が健康に悪影響を及ぼすかどうかというのは、その物質の有害性 と摂取量で決まります。 (PP)  全くリスクゼロというものがないという前提の下に、私たちはこのリスクについて、 いろいろ意見を交換します。それがリスクコミュニケーションということで、関係者相 互に理解を含め、共に考えていきましょうということです。  先ほど、広瀬さんの方からもお話がありましたが、今日皆さんのお手元にカラフルな 1枚の、皆様へということで紙があります。この一番下のところに「本日の意見交換会 の目的」というのが書いてありまして「マル1妊婦への魚介類の摂取と水銀に関する注 意事項について、関係者の間で情報を共有すること」「マル2様々な立場から意見交換 を行い、この問題についての認識を深めること」。これが今回のリスクコミュニケーシ ョンの目的であります。 (PP)  私は今、大学におりますので研究をしておりますが、これまで食品に関しまして、リ スクコミュニケーションの研究を2年進めてまいりました。当初は食物アレルギーに関 するリスクコミュニケーションを実施していたわけですけども、その中から幾つか、私 たちがリスクコミュニケーションを実施するに当たって、気を付けておかなければいけ ないことがわかってきました。それを1枚の紙にまとめております。  私たちは今、平成17年8月という時代に、同じ日本という社会で暮らしています。し かし、異文化を背負う人々がいる。私とあなたは決して全く同じではない。違う文化を 背負って生きてきているということをお互いに理解します。  それから、まず同じテーブルについて、今日皆さんはここに集まり同じテーブルにつ きました。この同じテーブルについて、まずは心を開いて相手の話を聞くということで す。そして、押し付けないように自分の立場を説明します。それはそれぞれ皆さんの立 場と考え方に違いがあります。その違いがあるということを認めて前提にコミュニケー ションを図ります。  今日は目的にもありましたとおり、情報を共有すること。認識を深めることが目的で すので、1つの政策をここで立案していくようなコミュニケーションではありません が、そういった場合には調整可能な部分というものが必ずあります。それぞれの立場の 異なる人人同士ですけれども、調整可能な部分があって、その調整可能であることを参 加者みんなが信じて、その妥当な方策を探る。そして、今日この東京で開かれるのは1 度でありますけれども、そのいろんな調整をしていく場合には1度だけではなく、何度 か繰り返しながらコミュニケーションを図っていく。これがリスクコミュニケーション ということになっております。  ということで、本日コーディネーターを務めさせていただきますが、皆様には上の4 つを同じ参加するものとして心構えとして、心にとめていただき、いろいろフロアから お話をいただければと思っております。ありがとうございました。 ○司会  ありがとうございました。  続きまして、厚生労働省食品安全部基準審査課の近藤専門官から「『妊婦への魚介類 の摂食と水銀に関する注意事項』の見直しについて」の御説明をさせていただきます。  よろしくお願いします。 ○近藤厚生労働省食品安全部基準審査課食品規格専門官  ただいま御紹介に預かりました、私は厚生労働省食品安全部の近藤と申します。よろ しくお願い申し上げます。  本日はこちらのスライドにお示ししておりますとおり、妊婦への魚介類の摂食と水銀 に関する注意事項の見直しにつきまして、これから1時間程度お話をさせていただこう と思います。  こちらのスライドの資料につきましては、お手元に配布されております、資料番号の 2番にすべて収載されておりますので、見にくい点等ございましたら、こちらの資料も 御活用いただければと思います。  また説明の中では、このスライドの中ではかなり見にくい部分もございます。この見 にくい部分につきましては、お手元のやはり配布されております、かなり厚めの資料。 表題が「食品に関するリスクコミュニケーション 妊婦への魚介類の摂食と水銀に関す る注意事項についての意見交換会 参考資料」というものが配られております。スライ ドの中で適宜この資料をお使いするときには、その旨お話をしたいと考えているところ でございます。  これから私が説明する注意事項につきましては、皆様も御存じのとおり、平成15年6 月に第1回目の注意事項を公表しているところでございます。  その際に皆様も御存じのとおり、いろいろな社会的反響がございました。そのような 社会的反響を踏まえた場合に、私どもとしても更に分析や調査や、また研究といったも のを行い、我々の行政にさらなる反映をして、取り得る手段があるのであれば、それを 今回取り込んで、これを注意事項の中で反映していきたいと考えてきたところでござい ます。  今日これからお話しする内容は、私どもが今までこの問題に対してどのように取り組 んできたのかと。そして、今どのような案をつくり、皆様にお示しをしているのかとい う点につきまして、御説明したいと思います。 (PP)  これから御説明する内容は、今スライドにお示ししておりますとおり、第1点〜第4 点まで。第1番目はイントロダクション。第2番目は見直しの経緯。第3番目は内閣府 食品安全委員会の食品健康影響評価。そして、第4番目は「薬事・食品衛生審議会」に おける検討というものでございます。  この3番と4番は先ほど御説明もございましたが、これはリスク分析の原則の中で、 3番がまさにリスク評価と言われている部分に該当しております。そして、4番がリス ク管理と言われている部分に該当しているところでございます。  3番につきましては担当が内閣府でございますので、内閣府の食品健康影響評価とな ります。4番のリスク管理におきましては厚生労働省の管轄ということになりますの で、この厚生労働省の中でどのような検討が行われてきたのかということを順を追って 説明をいたします。 (PP)  それでは、まず「はじめに−1」でございます。魚につきましては、冒頭、松本参事 官からのお話もございましたが、まず魚介類とはどういうものであるのかという点を改 めて認識する必要があると思います。  魚介類につきましては、こちらの第1パラグラフにお示ししておりますとおり、良質 なタンパク質や高度不飽和脂肪酸でありますEPAであったりDHAであったりという ものを他の食品と比較して多く含むものであると。  またカルシウム等につきましては、言わずもがなでございますが、このような微量栄 養素の摂取源である等、健康な食生活における不可欠な食材であるのだという点をまず 念頭に置いております。  次に第2パラグラフでございますが、しかしながら、その魚介類というものは自然界 に存在する生き物でございます。自然界に存在する以上は食物連鎖というものが発生す るわけでございます。この結果、魚介類につきましては、天然に存在しております水銀 というものを特定の地域等に関わりなく、微量に含有するものであるということが前提 条件となってまいります。  また、この食物連鎖ということが起こるならば、これは小型の魚を中型の魚が食べ る。そして、それを大型の魚が食べるという、この繰り返しによりまして、一部の魚介 類につきましては他の魚介類と比較しまして、水銀濃度が高いというものも見受けられ るのが実情でございます。 (PP)  そして、この魚介類を通じた水銀摂取に関しまして、近年、胎児に影響を与える可能 性を懸念する報告がなされているところでございます。これはどのような報告かと言い ますと、この括弧の中に書いてございますように、フェロー諸島前向き研究やセイシェ ル小児発達研究等というものにおきまして、その影響を与える懸念性が指摘されている という現状がございます。  このような現状を踏まえまして、国際機関におきましても、この水銀に関して、どれ くらい摂取ができるのかという量の検討であったりとか、またそれらの検討の結果を踏 まえまして、諸外国でも妊婦さんであったり小児であったり、いろいろな方々を対象と しており、対象の範囲はさまざまではありますけれども、魚介類の摂食に関して一定の 注意を払うことが必要ではないのかという観点から、注意事項が発出されているところ でございます。(PP)  では、続きまして、この注意事項の見直しの経緯をお話したいと思います。この注意 事項の見直しにつきましては、冒頭もお話がございましたが、1年以上の時間をかけ て、今ここで見直しの案の作成をし、そして皆様にお示しをしているわけでございま す。  その1年間の間にどのようなことが行われてきたのかということを、これから順を追 って説明をいたします。 (PP)  まず第1番でございますが、平成15年6月上旬でございます。この時期に審議会の意 見を聞きまして、7種類の魚介類について、妊婦を対象としました摂食に関する注意事 項を公表いたしました。この時点で対象となりました7種類というものの魚介類につき ましては、こちらの括弧にお示ししておりますとおり、サメ(筋肉)、メカジキ、キン メダイ、そして一部のクジラ類というものが対象となっているわけでございます。  そして、2番でございますが、この注意事項を公表した後に、15年6月下旬でござい ますけれども、国際専門家会議、これはJECFAと言われているところでございます が、こちらの方で発育途上の胎児を十分に保護するために水銀の再評価が実施されてお ります。この再評価によりまして、括弧の中に書いてございますが、従来の評価の基準 であったもの。これは3.3 μg というものがあったわけでございますが、これが見直し によりまして、約半分であります1.6 μg まで引き下げられております。  そして、この引き下げられたことを受けまして、次の年、平成16年3月頃に諸外国に おきましても、この評価結果を踏まえまして、さまざまな注意事項が出されてきたとい うものでございます。 (PP)  このような諸外国等の状況、また国際機関における水銀の評価基準の引き下げという ものがありましたので、私どもとしても昨年7月23日に内閣府食品安全委員会に食品健 康影響評価、これはリスク評価でございますけれども、この評価を依頼しております。  この時点で何を評価依頼したのかという点でございますが、まず第1点としまして、 第1のポツになりますけれども、どの程度までの水銀摂取が安全であるのかという点で ございます。これは専門用語で言いますと耐容量というものでございますけれども、一 定期間に特定の方がどれぐらいの水銀を摂取しても、その健康に影響が出ないのかとい うことを評価していただくものでございます。これが注意事項の見直しを行う上での一 番の底辺となる部分でございます。  そして、諸外国におきましては、先ほどもお話をしましたが、妊婦さんに限らず子ど もであったり小児であったり、またはすべての人々であったりという形で、その対象の 範囲というものは非常にばらばらでございます。  このような状況の中で、では、だれが一番その影響を受けやすいのか。これはいわゆ るハイリスクグループはだれであるのかという議論でございますけれども、この点につ いても併せて検討をお願いしたところでございます。  そして、その依頼を受けまして、平成16年9月〜平成17年6月まで、この期間におき まして、内閣府食品安全委員会の中に設置されております「汚染物質専門調査会」とい うところがございます。こちらの方で計6回の審議をいただきました。  そして、その審議の結果というものが平成17年8月4日に厚生労働大臣に対して提出 されたというものでございます。  では、この食品健康影響評価の中で、どのようなポイントに着眼をして、この評価が 行われたのかという点を次に説明したいと思います。 (PP)  まずポイントの1番でございます。今回の注意事項。これは前回も同様でございまし たが、これは妊婦さんが対象であると。この妊婦さんが対象であるというものの前提条 件としましては、胎児が一番影響を受けやすいということが言われております。  では、なぜその胎児が水銀の影響を受けやすいのかという点でございます。食品安全 委員会の「汚染物質専門調査会」の中では、まず第1点とましして、メチル水銀は胎盤 を介して容易に胎児に移行してしまうということが示されております。  また胎児は発達過程にありまして、特にメチル水銀の標的臓器であります中枢神経系 に影響が及ぶものですということが示されております。  では、その胎児が影響を受けるのであれば、似たような乳児であったり成長ステージ の低い小児であったり、こういう方々はメチル水銀の影響を受けないのかというのが次 の点でございます。  まず乳児につきましては、母親が通常の摂食状態であるならば、母乳中の水銀濃度は 低いということがわかっております。ですので、この水銀濃度が低い状態の中では乳児 というものはハイリスクグループには該当しないのであろうということが記されており ます。  また小児につきましては、既に生まれてから一定の時間が経過しております。そし て、神経系の発達もほぼ進んでいるという状況の中で、成人と同様にこのメチル水銀を 排泄する機能も十分備わっているというものでございます。  ですので、このような小児につきましても、ハイリスクグループの対象とはならない であろうということが示されているところでございます。 (PP)  次にポイントの2番でございます。では、今、私どもが取組み、そしてこれから注意 事項を発出しようとしている低濃度の水銀の摂取というものの影響というものが、どの 程度のものであるのかということでございます。  これは今こちらの第1パラグラフにお示ししておりますとおり、例えば、音を聞いた 場合の反応が1,000 分の1秒程度遅れるようなものということでございます。この下の 括弧に書いてございますが、いわゆる水俣病というような重篤な健康影響とは異なると いうことがしっかりと明記されているものでございます。  15年6月の際には、私どもの意図していない部分でございましたけれども、あたかも この魚介類の水銀のお話というものが水俣病のようなものではないのかという懸念を呼 んだわけでございます。ですので、今、私どもがこれからやろうとしている内容という のはこういうものなんだということをここは明確に示しておく必要があるのであろう と、考えたわけでございます。  次の評価の方法でございますが、こちらは3点ございます。  まず第1点目としましては、先ほどもお話をしましたが、このフェロー諸島の前向き 研究やセイシェル小児発達研究のような疫学研究というものをベースにして評価を進め ていこうというものでございます。これは国際機関におきましても、この研究につきま して評価をしております。ですので、このような調査研究というものにつきましては、 十分検討に耐える研究であろうというものでございます。  次にJECFAでございます。JECFAでは代謝モデルというものを用いておりま す。ですので、今回のこの食品健康影響評価におきましても、JECFAで用いられた 代謝モデルを用いて、耐容摂取量を算出しようというものでございます。  次に第3点目でございますが、不確実係数を適用というものでございます。不確実係 数というお話をしますと、何だか非常にわかりにくいなということになろうかと思いま す。不確実係数というのは、この疫学調査研究というものがかなりの長期間にわたりま して、そして多数の方々を対象に行われているということを踏まえますと、その個々の 方から得られるデータというものは必ずしも1点に集約しないということは御理解いた だけると思います。  それはその人の個人差であったりとか、感受性の違いであったりとか、いろいろなも のがあろうかと思います。このようなばらつきがあるデータ。これを用いて評価を進め ていくに当たりましては、当然ながら十分な安全性を見込むために、ばらつきを考慮し たもの。つまり不確実係数というものを使わないと、より安全な評価ができないであろ うというのが一般的な考えでございます。ですので、今回の評価に当たりましても、こ の不確実係数を使うということが評価の方針として示されているところでございます。 (PP)  そして、今お話しましたようなポイントを踏まえまして、8月4日に厚生労働省に対 しまして、食品健康影響評価。これが通達されております。この通達内容は皆様のお手 元の資料にも入っておりますので、後でごらんいただければと思いますけれども、まず ハイリスクグループはだれかということでございます。これは胎児ということで、明確 に示されております。しかしながら、胎児自体はそのものが食品を食べるわけではござ いません。お母さんのおなかの中にいらっしゃるわけですので、当然ながら、その対象 集団というものは妊娠をしている方、もしくは妊娠をしている可能性のある方が対象に なるというものでございます。  そして、どれぐらいの摂取量であればその影響が出ないのかという量でございますけ れども、これはメチル水銀といたしまして、2.0 μg/kg体重/ 週というものでございま す。これは1週間当たりに体重1kg当たり2μg であれば耐容できるというものをお示 ししているものでございます。 (PP)  この食品健康影響評価が出ますと、リスク評価が終了したということになるわけで す。このリスク評価が終了いたしますと、当然ながら、今度はリスク管理において検討 を行うということが進められていくわけです。このリスク管理の検討を行った結果とい うものが最終的な成果物として注意事項という形で出てまいるわけでございます。  このリスク管理における検討という部分につきましては、今スライドにお示ししてお りますとおり「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会」というところ で検討が行われてまいりました。  そして、今回の案をお示しするに至るに、計3回の検討が行われております。第1回 目は平成16年8月、第2回目は11月、第3回目は17年8月というわけでございます。  では、この審議会の中で、私どもがどのような検討を行ってきたのかということをこ れから順を追ってお話しいたします。 (PP)  まず第1のポイントでございますが、魚介類の水銀の含有量。これはどのようになっ ているのかというものでございます。これは先ほどもお話をしましたが、この魚介類が 天然界に存在する以上は、微量な水銀を含有しているというものでございます。ただ、 どの程度含有しているのかということ。これは精密に調査を行い、その結果を集約しな ければわからないというものでございます。  また、今、私どもが出そうとしております、この注意事項におきましても、どれぐら い検討の対象となる魚介類が食べられるのかということを検討していく上でも、この水 銀の含有量というものがわからなければ、それを算出できないというものになります。  ですので、魚介類の水銀含有量につきまして、まず私どもがその集計を行ったわけで ございます。  この水銀含有量につきましては、厚生労働省、水産庁、地方自治体、または諸外国に おきまして実施されました魚介類に含まれる水銀濃度に関する調査結果をとりまとめし ております。その内容につきましては、国内におきまして、385 種類の魚介類、検体数 にしまして9,712 検体。このデータを集約したわけでございます。  参考までにお話ししますと、平成15年6月に注意事項を発出した際の検体数というも のが2,600 検体であったわけでございますので、これの約三倍強のデータを今、集めた ということでございます。  参考までにお話しするならば、国外におきましては165 種類、2万1,724 検体のデー タにつきましても集約しているところでございます。  この集約しましたデータの一覧というものにつきましては、今、皆様方のお手元に配 布されております参考資料の中に一覧表が載っております。ですので、またお時間があ るときにその内容の確認をしていただければと思っております。  続きまして「魚介類の摂食の実態」でございます。注意事項というものはこの諸外国 を見ましても、大体1回当たりにどれぐらい食べているんだろうと。そのような実態に 即して注意事項をつくらなければ、なかなかその運用が難しいという点がございます。  ですので、外国におきましても、例えば、1回当たり何g、1週間当たり何回とか、 一定期間にどれぐらいの量が食べられるのかという形でお示しされているところでござ います。  このため、我が国における魚介類の摂食の実態はどのようなものであるのかというこ とにつきましても、その調査を行っております。第1点目にお示ししておりますとおり に、我が国は国民栄養調査というものが行われておりまして、この平成13年、14年に公 表されている範囲のデータにおける15歳〜49歳の女性の各魚介類の摂食データを集計い たしました。  これはなぜ15〜49なんだと、なぜ女性なんだということがあろうかと思いますけれど も、この年齢層の女性というものが統計学的に言いますと再生産年齢人口と呼ばれてお ります。この再生産年齢人口というのは、生物学的にお母さんになれる年齢の方。これ を示すものとして定義されております。ですので、私どもとしましても、この15歳〜49 歳の女性というものを対象に国民栄養調査の摂食データの集計を行ったわけでございま す。  その結果といたしましては、魚類の平均が73.6g 。カジキ類にいたっては65.4g 。キ ンメダイの場合は75g 。マグロ類の場合には32.2g というデータが得られているところ でございます。  しかしながら、このマグロに関しましては、平成15年にも御議論がありましたとお り、実際に食べる場合にどれぐらいの量を食べているのか。なかなかこの平均量を食べ るということはあり得ないわけでありまして、実際に例えば、お刺身を食べる、鉄火丼 を食べる。そのような喫食形態を踏まえた場合に、どれぐらいの量を1回に食べるので あろうということにつきましても調査を行いました。  この調査結果によりますと、マグロのお刺身、すし、鉄火丼の1回当たりに食べる量 というのがおおむね60〜100gという結果が得られているところでございます。ですの で、このようなデータにつきましても、今回の注意事項の案をつくるに当たりまして、 十分な考慮を行ったわけでございます。 (PP)  では、懸念される水銀の問題でございますけれども、今、私どもの水銀の暴露の状 態。暴露というのはどれぐらい摂取しているんだろうという状態でございますけれど も、この暴露の状態というものがどうなっているのかということについても確認を行い ました。  その結果につきましては、まず第1のポツにございますように、厚生労働省では汚染 物質摂取量の調査というものを行っております。これは一般的な食生活を行っている方 々が普通に食品を摂取した場合に、どれくらいのこの物質を摂取しているのかというこ とを調査をしているものでございます。  この調査、平成7年〜平成16年までの10年間のデータをとりまとめますと、平均いた しまして、人1日当たり8.4 μg の水銀を摂取していることがわかっております。この 8.4 μg というものは、食品の中には水銀というもの自体は天然に存在する物質であり ますので、どのような食品においても微量ながら水銀が入っているというものでござい ます。  では、魚介類の方からはどれぐらい摂っているのかということを計算をしてみます と、約8割が魚介類由来で体内に取り込まれているということがわかっております。  では、この8.4 μg でございますが、これが今回食品安全委員会に評価をしていただ きました、2.0 μg と比較した場合にどの程度の量であるのかというものが次の試算の 結果でございます。  ここには仮にすべての水銀がメチル水銀であって、妊婦の体重を50kgとした場合に、 その1週間当たりの水銀摂取量というものは以下の式で求められます。つまり8.4 μg に7日をかけまして、体重で割ってやると。そうしますと1.2 μg という数字が出てま いります。この1.2 μg というものがどの程度の数字かと言いますと、一番最後の行に 示しておりますけれども、健康影響評価に示される耐容量の約6割ということがわかる わけでございます。  ですので、これが今、私どもが摂取をしている水銀の量であり、その水銀の量という ものが耐容量と比較した場合にどの程度のものであるのかということがおわかりいただ けると思います。 (PP)  では、具体的に妊婦の方に特目をして、その計算を進めていく上ではどうしたらよろ しいのかというものでございます。一番見出しにございますように、「妊婦1日当たり の耐容摂取量」を求めて、そこからいろいろな魚介類がどれぐらい節食できるのかとい うことを試算をしていくわけでございますが、まずその上限値がどこにあるのかという ことを決めなければいけません。ですので、この上限値、いわゆる耐容摂取量というも のが妊婦さんにおいてはどれぐらいのものであるのかということをこの表でお示しをし ております。  1番は先ほど来お話しております耐容量でございます。そして、妊婦の方の体重でご ざいます。妊婦の方は当然ながら妊娠の初期、後期と移動するにつれて体重も増加して いくであろうと。一般的には医療機関におきましては体重が10kgの増加を超えることの ないようにしましょうということが言われていると思っております。  このようなさまざまなステージの方々を対象とするとした場合に、やはり私どももあ る一定の論拠のある数字を持たなければいけないということになるわけでございます。 そのために私どもはこの国民栄養調査におきまして、この調査の対象となりました妊婦 の平均体重を用いております。300 人弱のデータがございまして、各妊娠のステージに おかれる方々が含まれているデータでございます。  この平均値を取りますと、2番にお示しをしておりますとおり、55.5kgであるという ことが示されております。ですので、妊婦1日辺りの耐容量というものが1番かける2 番、そしてそれを7日に割ってあげるとしますと、15.9μg という数字が出てくるわけ でございます。この数字が妊婦さんが1日に摂取できる水銀の量ということになるわけ でございます。 (PP)  この水銀の上限の量がわかったということになるわけです。この水銀の上限量という ものは、こちらの今お示ししておりますスライドで言いますと、一番上の線、この耐容 量という部分が15.9μg という数字になるわけでございます。そして、その15.9μg を 超えることのないように、どのようにこの食品を摂取していくのかということを考えた ものがこちらの表でございます。  一番左側のグラフがございますけれども、これは先ほどお話しましたように、魚介類 の水銀の寄与率というものが約八割ということでございますので、この8.42μg に大体 8割という数字を書きますと、魚介類からは6.72μg を摂っているんだなと。そして、 それ以外の食品からは1.70μg の水銀を摂取しているんだがということがわかると思い ます。  しかしながら、魚介類の中でも水銀の低いもの、高いものがあり、私どもがこれから 作業を行おうとしているものは水銀の高いもの。これをどのように取り扱ってコントロ ールをするのかという点でございます。ですので、この検討の対象とならない水銀濃度 の低い魚介類から、どれぐらいの水銀を摂取しているのかということを考慮しまして、 その考慮をした底辺の数字がバックグラウンドになるわけでございますけれども、その 数字を引いた上で、水銀濃度の高い魚がどれぐらい摂食できるのかということの検討を しなければいけないわけです。  その考え方をお示ししているのが、その横にございます仮定1〜仮定3までのグラフ になります。仮定1は何を言っているかと言いますと、これから検討の対象となる魚介 類以外の魚介類から水銀の摂取はないというふうに考えているものでございます。  しかしながら、この天然界に存在するお魚であるがゆえに、微量でありますけれど も、水銀を含有しているということを考えますと、この検討の対象とならない魚介類か らの水銀の摂取がゼロということは考えられないわけでございます。ですので、仮定1 というものは検討対象以外のお魚から摂っている水銀の評価。これを過小に評価してい るんだろうということになります。  この対極を成すのが仮定3でございます。仮定3というのは検討の対象とならない魚 介類から、今、魚介類から摂取している水銀量のすべてを摂っているという考えでござ います。  しかしながら、仮定3を見ていただきますと、通常の食生活の中では当然これから検 討の対象となる魚介類についても、これを食べながら暮らしているということがあるわ けでございまして、これは余りにも検討対象以外の魚介類からの水銀摂取量を過大評価 し過ぎているということになるわけでございます。  そして、真ん中の仮定2が中間のグラフとなっておりまして、大体半分。これを検討 対象の魚介類から。そして、残りの半分を検討の対象以外の魚介類から摂っているんだ ろうというものでございます。  私どももこの仮定については、試算を行いましたけれども、おおむね水銀摂取量を計 算をしてみますと、仮定2に落ち着くということがわかっております。ですので、今回 の注意事項もこの仮定2に基づきまして、最終的には作成をされているものでございま す。 (PP)  それでは、その検討対象になるもの、ならないものというもののお話でございますけ れども、検討の対象となる魚介類というものにつきましては、先ほど御説明しました が、約9,000 検体。このデータをとりまとめた中で、現行の私どもの暫定的規制値とい うものがあるわけでございますが、この暫定的規制値であります総水銀0.4 ppm 以上、 メチル水銀0.3 p pm以上の魚類につきまして、選択をしますと今こちらにお示しをして いる魚介類が選択されてくるというものでございます。  こちらの魚介類。上から魚類、クジラ類、最後に貝類というものがございまして、い ずれも総水銀で0.4 、メチルで0.3 を超えているものという形になっております。約385 種の魚介類のデータをとりまとめているわけでございますが、その中でもこの暫定的 規制値と言われているこの尺度を超えるものは、このものしかないということがおわか りいただけると思います。 (PP)  それでは、具体的に暴露評価というものを試算していくことになるわけでございます が、この試算に当たりましては1週間当たりにその検討対象となるお魚がどれぐらい食 べられるのかという量をお示しすることになります。その量を求めていくときの計算式 でございますけれども、こちらの上限値であります耐容量。こちらから他の食品からの 水銀摂取量。これは仮定2の値になるわけでございますけれども、この値を引く。そし て、その残っている摂取可能な水銀の量を魚介類の持つ水銀含有量で割り返すという作 業を行います。そうしますと耐容量の範囲内で摂食できる当該魚介類の量というものが 求められるわけでございます。 (PP)  その試算の結果を行ったものが、次の表となっております。こちらの表は大変細か く、見づらくて恐縮ではございますけれども、魚の中には総水銀とメチル水銀があると いうことがございまして、総水銀、メチル水銀、個々に仮定1〜3までの計算式を示し ております。  ただ、今この胎児に対して懸念が考えられている影響の物質というものにつきまして は、これはメチル水銀であるということです。そして、試算の結果から仮定2というも のがある程度妥当な設定なのであろうということがわかっておりますので、こちらの方 では右側の欄のメチル水銀の仮定2のところを太字で囲まさせていただいております。  参考といたしまして、こちらの括弧で下に書いてございますけれども、検討対象以外 のお魚についてはどうであったのかということをお示ししております。上の検討対象と なっております中には、なじみの深いマグロが入っております。ただ、そのマグロにつ きましても、いわゆるミナミマグロ、クロマグロ、メバチと言われているものだけが対 象でございまして、それ以外のマグロまでを対象としているものではございません。  そこで参考といたしまして、それ以外のマグロはどうなんでしょうかということの試 算も併せてお示ししているわけでございます。この試算の中ではキハダ、クロマグロの 幼魚。これはメジマグロでございますけれども、それにビンナガ。そして、皆様がよく お食べになるであろうツナの缶詰というものをお示ししております。  この値を見ていただきますと、おおむね検討対象となっているものの3倍ないしは4 倍という量が摂食可能なんだということがおわかりいただけるものと思います。ですの で、私どもはこの注意事項をつくっていく中では、同じマグロと言われているものであ っても、検討の対象となるものとならないものはしっかりと区分けをしてお示しをしな ければいけないんだということが、この表からもおわかりいただけると思います。 (PP)  では、注意事項を作成するに当たりまして、私どもがどのような点に留意をして、こ の作成を行ってきたのかということでございます。全部で6点の留意事項がございま す。  まず第1点目でございますが、魚介類は健康的な食生活を営む上で重要な食材である んだということをまず強調しなければいけないという点でございます。私どもは日本と いうこの国に暮らしておりますし、当然ながら、魚食の文化というものを持っているわ けでございます。ですので、そのような文化的背景というものも踏まえて、まず食生活 を営む上で重要なものなんだというところを説明しなければいけないというのが第1点 目でございます。  続きまして、第2点目は、魚介類は食物連鎖の過程で水銀を蓄積しているんだという 点を説明する部分でございます。特にこの魚介類の持つ水銀というものが、だれかが人 為的にマグロを汚染したり、それ以外の例えば、カジキを汚染したりとかというわけで はなく、これは自然界に住む以上は仕方ない事項なんだということを認知する必要があ るという点でございます。ですので、この点につきましても誤解のないように、しっか りと食物連鎖の過程で水銀を含有してしまうんだということを書かなければいけないん だというのが第2点目でございます。  次に第3点目でございますが、検討している水銀の影響でございますが、これはあっ たとしても胎児の将来の社会生活に支障のあるような重篤なものではないんだというこ とを明確にする必要があるという点でございます。このような表現につきましては、か なり具体的なものを書き込んでいきませんと、いろいろな方のいろいろな判断。そし て、いろいろな憶測。この中で冒頭お話ししたような水俣病というようなものと同じで はないのかと言う方が出てくる可能性があります。ですので、そういうものではないと いうことをしっかりと明記をして、正しく御理解いただくことが必要なんだろうという のが第3点目でございます。  次の第4点目でございますが、妊婦につきましては一定の注意をした上で魚介類を摂 食することが重要であるんだという点でございます。つまり、私どもがこれから決定し ようとしております、この注意事項というものは、妊婦さんに対して魚介類を食べるな と言っているわけではないと。一定の注意を払って健康な食生活のために重要な食材で あるこの魚介類を摂食していただきたいと。ただ、その食べる場合には一定の御注意を いただきたいというものなんです。  ですので、次のパラグラフになりますけれども、水銀濃度が高い魚介類を偏って大量 に食べることを避けて、水銀の摂取量を減らすことで魚食のメリットとの両立ができる んだということを明確に書き抜く必要があるという点でございます。  5番目でございますけれども、その対象のお話でございます。これは食品健康影響評 価にお示しいただきましたように、胎児が対象であるということでございます。ですの で、妊婦が注意事項の対象であるんだと。それ以外の子どもや一般の方々は対象外であ るのだということを明確に書き抜く必要があるという点でございます。  最後の第6番目でございますけれども、この注意事項が消費者の方々に正確に理解し てもらうことが必要なんであろうという点でございます。本日のリスクコミュニケーシ ョンという場を通じまして、今、私どもが行っておりますこの施策の中身というものを 御説明させていただいているわけでございますが、このようなリスクコミュニケーショ ンという手段も注意事項を正確に御理解いただくための1つの道具なんだろうというふ うに考えているところでございます。  では、これらの注意事項を踏まえまして、今、私どもが意見募集を行っております注 意事項の案というものがどのような形になっているのかということを、これからお話し いたします。 (PP)  こちらにつきましては、スライドの方がかなり小さくてみにくいということがござい ますので、お手元にお配りをしております厚い資料の参考資料がございますけれども、 こちらの1ページと2ページをごらんいただければと思います。  この1ページ、2ページにお示しをしているものが、今こちらのスライドにお示しを しております右側、左側のものになるわけでございます。まず表題でございます。表題 につきましては妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項となっております。これ は妊婦さんが対象であるのだということを、まず最初にお示しをするという目的を持っ て記載しておるものでございます。そして、何を訴えたいのかということにつきまして は、魚介類の摂食、それの対となっている水銀のお話なんですということを、この表題 においてお示しをしております。  そして、次に小見出しが付いておりますが、「<魚介類の有益性>」ということを説 明をしております。この魚介類の有益性は、まず最初に説明する内容でございますの で、第1番目にこの有益性を記載をしております。中身といたしましては、魚介類は良 質なタンパク質や生活習慣病の予防や脳の発育等に効果があると言われているEPA、 DHA等の高度不飽和脂肪酸をその他の食品に比べ一般に多く含み、またカルシウムを 始めとする各種の微量栄養素の摂取源になる等、健康的な食生活にとって不可欠で優れ た栄養特性を有しているのだということをお示しさせていただいております。  2番目の小見出しでございますけれども、「<魚介類の水銀>」という部分でござい ますが、ここでは第1行目に、魚介類は自然界の食物連鎖を通じて、特定の場所に関係 なく微量の水銀を含有するものなんですということを記載しております。ただし、その 含有量は一般に低いというものでありまして、健康に害を及ぼすものではないというこ とも示させていただいております。  その上で食物連鎖というものを考えた場合には、どうしてもこの一部の魚介類につき まいては、水銀濃度の高いものが存在してしまうということを最後の行でお示しさせて いただいているところでございます。  そして、具体的な「<妊婦の方々へ>」の注意事項の内容でございますが、これが第 3番目の小見出しになっております。こちらではまず、近年、魚介類を通じた水銀摂取 が胎児に影響を与える可能性があるという報告があるんですということをお示しをして おります。しかしながら、この胎児への影響というものは、先ほどもお示しをしました が、例えば、音を聞いた場合の反応が1,000 分の1秒程度以下のレベルで遅れるような ものであると。そして、あったとしても将来の社会生活に支障があるような重篤なもの ではないということをお示ししております。  その上で妊娠をしている方、もしくは妊娠をしている可能性のある方を妊婦という形 で定義をいたしまして、次の事項に留意をしつつ、魚介類を摂食するように心がけてく ださいという文章としております。お役所がつくります文章というものは、とかく「等 」という言葉を使っているケースが多いわけでございますけれども、今回のこの注意事 項の文章の中では極力この「等」という言葉を排除しようということで、今回に当たり ましても、妊娠している方、もしくは妊娠している可能性のある方については妊婦とい う形で明確に定義をさせていただきまして、その上で御説明をさせていただいておりま す。  そして、現在の私どもの水銀の暴露状況についても、次のパラグラフでお示しをした 上で、更に魚介類は健やかな妊娠と出産に重要である栄養のバランスのよい食事に欠か せないものですということで、改めてその魚介類の有用性という点を強調させていただ いております。  更に、本注意事項は妊婦の方々に水銀濃度が高い魚介類を食べないように要請してい るものではないということも明確にさせていただいております。その上で本注意事項は 胎児の保護を第一に食品安全委員会の評価を踏まえまして、魚介類の調査結果等からの 試算を基に作成しましたということ。  そして、水銀濃度が高い魚介類を偏って多量に食べることは避けて、水銀摂取量を減 らすことで魚食のメリットと両立することを我々は期待をしているのですということを 記載しております。  次にこの2ページ目になるわけでございますが、こちらが具体的に、どのようにした らよろしいのかというものの表となっております。こちらでは摂食量と目安というカラ ムと魚介類というカラム。この2つのカラムを並べまして、上からバンドウイルカか ら、下はイシイルカまで並んでおります。  そして、一定期間にどれぐらいの量が食べられるのかということの目安をお示しして いるものでございます。先ほど、お話申しましたが、一言にマグロと言ってしまいます と、マグロの中でも対象となるもの、ならないものがあるということは既にお話をした ところと思います。ですので、いわゆる風評被害というようなものを受けない1つの工 夫としまして、この参考の1番の中に、マグロの中でもキハダ、ビンナガ、メジマグ ロ、ツナ缶というものは通常の摂食で問題がない。ですから、バランスよく摂食をして くださいということを記載をしております。  また、参考の2番でございますが、こちらの注意事項の摂食量の目安の中には、80g という数字が記載されております。では、この80g というものがどのような量なのかと いうことはなかなか一般の方にはイメージをしにくいというところがございます。です ので、この参考の2番では、お刺身であったり、すしであったり、これが一貫であれば どれぐらいかと。また刺身の1人前であれば、どれぐらいの量なのかと。普通、焼き魚 で食べる切り身のお魚というものがあろうかと思いますけれども、これが一切れ大体ど れぐらいなのかということを参考の2番でお示しをいたしまして、より具体的にこの80g というものをイメージできるようにしているところでございます。  ただ、一般のこの食生活の中で、一定期間内に同じお魚を反復して何回も食べるとい うことはなかなか想定しにくいわけでございまして、大抵の場合にはこの複数の種類の お魚を組み合わせて食べているのであろうというふうに考えております。ですので、こ の複数の種類のお魚を組み合わせる、または非常に回数を多く食べる方がいらっしゃっ た場合、そういうときにはどういう配慮が必要であるのかという点をこの参考の2番の 下の一部にお示しをしております。  そして、次の小見出しの「<子どもや一般の方々へ>」というところでは、これは妊 婦さんが対象であるということを明確にお示しするために、まず今回の注意事項は胎児 の健康を保護するためのものですと。子どもや一般の方々については通常食べる魚介類 によって、水銀による健康への悪影響が懸念されるような状況ではないんだと。ですか ら、健康的な食生活の維持にとって有益である魚介類をバランスよく摂取をしてくださ いというメッセージを記載しております。  そして、最後の点でございますけれども、正確な理解のお願いという点でございま す。どのような文章をつくろうとも、正確に理解をしていただかなければ、それは全く 意味をなさないということになってしまうわけです。ですので、きちんと理解をしてく ださいということをこの最後の小見出しでお示しをしております。この部分でもまず最 初に魚介類の有益性を強調しております。  魚介類は一般に人の健康に有益であり、本日の妊婦への注意事項が魚介類の摂食の減 少やいわゆる風評被害につながらないように正確に理解されることを期待しますと記載 しております。  そして、当然ながら、科学の進歩というものは今後とも続くわけでございますし、当 然ながら、その魚介類に持っている水銀の含有量等の調査もこれからも続いていくとい うものでございます。  このような中では新たな知見、そして集積されたデータ。こういうものが集まれば、 当然ながら、今度はそれを踏まえてさらなる検討を行う必要性も生じてくるということ でございます。ですから、一番最後の行の中では、今後とも科学技術の進歩に併せて、 本注意事項の見直しを行うこととしているということを記載しております。  これが冒頭申し上げました、私どもの留意点を踏まえて、今つくり上げております注 意事項の案というものでございます。そして、この注意事項の案につきましては、今こ ちらのスライドにお示ししておりますとおりに、8月22日から意見募集を行っておりま す。この意見募集は一月間行っておりまして、9月21日までとなっております。ですの で、本日のこのリスクコミュニケーションを通じまして、私どもが今、作成をしており ます注意事項の中身というものを正確に御理解していただきました上で、御意見等があ れば、忌憚のない御意見をどんどんこちらの方にお寄せいただければと考えているとこ ろでございます。  また、なかなかこのような汚染物質と言われているような世界のお話というものは、 なじみにいくと。そして、中身もなかなか理解しにくいというところがございます。で すので、本日も行っておりますけれども、実は昨日既に大阪の方でこのリスコミの方を 行ってきております。そして、今日が東京の会場ということになっているわけでござい まして、このような意見交換の場を通じまして、内容についてより深く、そして正確に 理解をしていただければと思っているところでございます。  なお、この注意事項につきましては、寄せられた御意見等を踏まえまして、更に私ど もの審議会の中で議論を重ねて、その上で最終的な注意事項を確定して、それから関係 する自治体であったり母子保健の担当部門であったりというところへ通達を発出したい と考えているところでございます。  今お手元にお配りしております参考資料につきましては、1ページ目の2ページ目を 見ていただいたわけでございますけれども、やはりこの内容を正確に御理解いただくた めには、Q&Aも必要であろうという観点から、3ページ目以降に全部で問1〜問22ま でのQ&Aを作成しております。  このQ&Aは、今までいろいろな場所で寄せられた御意見を踏まえてつくりましたQ &Aとなっておりまして、多分こちらの中身をごらんいただければ、よりよく理解でき るものと思いますし、皆様がお持ちになっている疑問点のようなものにもお応えできる ものであろうと。更には関係する方々から皆様のところにお問い合わせがあった際に も、十分御活用いたけるものであろうと考えているところでございます。 (PP)  また、お配りしております参考資料でございますが、19ページ以降でございます。こ の19ページ以降につきましては、この1年間以上をかけまして検討を行ってきたその流 れ、概要というものをとりまめとさせていただいております。なぜ我々が今このような 作業をやり、そしてどういう手順を経て、このような注意事項の案がとりまとめられて きているのかということが、この19ページ以降の概要というものをごらんいただけれ ば、多少なりとも御理解いただけるものと考えております。  また、それに付随しまして、23ページ以降には、今まで公表しました注意事項。また 諸外国における注意事項がどのように行われているのかという一覧表。更には魚介類等 の水銀含有量。今回行いました約9,000 検体以上の魚介類の水銀濃度の結果というもの もとりまとめられております。  また食品安全委員会からお示しをいただきました、食品健康影響評価の中身について もお示しをしておりまして、このようなものもまたお時間があれば、内容等を御確認を いただきまして、より理解を深めていただければと考えておるところでございます。  注意事項の案の説明につきましては、おおむね時間も1時間を経過しておりますの で、この辺りで終わりにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。 ○司会  ありがとうございました。  それでは、ここで休憩を設けさせていただきたいと思います。お時間になりました ら、席の方にお戻りいただけますよう、お願いいたします。パネルディスカッション及 び意見交換の方は3時から開始したいと思いますので、それまでにお席の方にお戻りい ただけますよう、お願いいたします。                   (休憩) ○司会  それでは、時間となりましたので、これからパネルディスカッション及び意見交換を 行います。まず本日のパネルディスカッションを行っていただくメンバーを御紹介いた します。  皆様の方から向かって、中央から右の方に紹介させていただきたいと思いますが、食 生活ジャーナリストの村上紀子様でございます。  大日本水産会品質管理部部長の高鳥直樹様でございます。  そのお隣が、農林水産省水産庁漁場資源課生態系保全室室長の丹羽行様でございま す。  そのお隣が、食品安全委員会事務局リスクコミュニケーション官の西郷正道様でござ います。  また、向かってちょうど中央から、皆様から言うと左の方になるかと思いますが、ま ず真ん中が厚生労働省大臣官房の松本参事官でございます。  そのお隣が厚生労働省食品安全部基準審査課の近藤専門官でございます。  一番左側になりますが、本日のコーディネーターをしていただきます順天堂大学医学 部の堀口先生でございます。  以上、6名でパネルディスカッション及び意見交換の方を進めていきたいと思いま す。  それでは、堀口先生、議事進行をよろしくお願いいたします。 ○コーディネーター(堀口氏)  それでは、終了の時間4時半まで、リスクコミュニケーションを始めさせていただき ます。  まず初めにお二人のパネラーから、これまでの近藤専門官の説明などを踏まえまし て、お話をいただきたいと思います。  まず最初に大日本水産会の高鳥様、よろしくお願いいたします。 ○高鳥氏  大日本水産会の高鳥でございます。  大日本水産会という組織は、明治15年にできました水産業界の中央団体でして、漁業 の生産、お魚をとったり、あるいは加工、流通といった水産に関わるすべてのあらゆる 分野の業態をカバーしておる団体でございます。  今回の水銀問題につきましても、私どもは生産団体の方々を中心として、それぞれ取 り組んでまいりまして、今日は厚生労働省の案を受けて、ごく身近に我々の今、考えて いることを御説明したいと思います。  まず今回の指導内容は妊婦のみが対象であるということでございまして、もともとそ のリスクも聴覚能力の1,000 分の1秒どうのこうのというような、リスクは極めて低い ものでございます。そういったことを我々も訴えてまいりまして、あくまでこれは予防 措置であるというようなことを理解していただきたいと思います。  水俣病の場合とは違いまして、汚染レベルを極めて低いですし、いろいろな要件も違 いますので、決して水俣病と同じにしないでいただきたいということを重ねてお願いし たいと思います。  次に科学性ということから考えますと、フェロー諸島とセイシェル諸島、それからイ ラク等もございますが、基本的にフェロー諸島とセイシェル諸島の科学的な調査に基づ いて、今回のリスク評価がなされておりますが、そのフェロー諸島とセイシェル諸島の 疫学調査のデータは相反するものがありますので、違っておるということです。  それから、国内での我々が長い間、こういったマグロも含めて、こういった魚介類を 食べてきておることによって悪い影響が出ているということは、先ほどの水俣病以外に は一切ございません。ということは、国内での緊急の措置ではないんだということを理 解していただきたいと考えまして、すなわちこれは米国や欧州の国際的な流れを受けて の措置であるということで、決して国内の主体的な例に基づいて起こった事態ではない んだということがよく理解されるかと思います。  したがいまして、今後、日本独自の疫学調査を精力的にやっていただきまして、今後 この見直しの内容につきまして、リスク評価にさかのぼりまして、継続的に見直しをし ていただきたいと考えております。  次に、今後の指導という観点から申し上げますと、この食事指導にもに書いてありま すように、通常の食生活をしている限りでは、決してリスクをもたらすものではないと いうことでございますし、また今回の食事指導に少し書かれていますが、この食指指導 の内容が、妊婦さんが対象となっているマグロやキンメダイを食べてはならないという ことではなくて、食べてもいいんですよ。しかし、それを一定限度を超えて多量に食べ 過ぎないように注意してくださいということでございますので、決して食べないという ことが全面に出ることがないように十分な配慮が必要であると考えております。  最後に風評被害の観点からお話をしますと、現時点では私どもの業界としまして、風 評被害というような明らかな事象は出ておりません。これは前回の6月のときと時期的 にも違いますし、今、出ていないからと言って安心して、風評被害が出ないんだという ようなことを断定するには早過ぎまして、やはりまだまだ時間をかけて、業界としても 見守っていかなくてはいけないと考えておりますし、そのようなことから、私ども業界 としましても厚生労働省に対して、風評被害に対するあらゆる措置を講じていただくよ うに、よく要請をしていきたいと考えております。  そのためにQ&Aを今回一緒に出すんですが、是非早くパンフレットをつくっていた だきたいと考えておりまして、こういったものを配っていただきまして、末端の販売者 の方方、更には消費者の方々において、この水銀のリスク管理について正しく評価され て、ますます魚食が増えることを祈っております。  以上です。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  そうしましたら引き続き、食生活ジャーナリストの村上様、よろしくお願いいたしま す。 ○村上氏  村上でございます。  私は長く新聞現場で食生活全般を担当しておりまして、その中でも食と健康をめぐる 情報というものに非常に強い関心を持って書いてまいりました。60年代から食品公害な ど、食の安全性をめぐる報道というものも非常に増えてまいりましたし、加えて健康志 向が高まるに連れて、いわゆる健康情報という健康食品についての情報なども氾濫して いる。そういう食と健康をめぐる情報の洪水の中で、たくましく生きるにはどうしたら いいかという課題を抱えて書いてまいりまして、大学に移りましてからはもともと大学 も大学院も情報を含む社会心理学やジャーナリズム論の専門でして、そういう畑ですの で、大学では食と情報をつないで食情報科学という研究室をつくって、いわゆるリスク の情報とか健康情報みたいな問題を研究してまいりました。  このお魚の水銀の情報についてですけれども、これはリスク情報を考える上で、なか なかいいというのもなんですけれども、事例研究としては非常に面白い研究だと思いま す。その理由ですけれども、まず第1にこのリスク分析という時代に入ろうとした、ま さにその時期に起こった、折も折という時期的な問題もひとつ非常に特徴的だろうと思 います。  BSEというのは、まさに安全性に関わる情報としては一大問題だったわけですけれ ども、先ほどから御説明がありましたが、これを契機にリスクという考え方を、国を挙 げてここへ切り替わるという、ちょうどその時期にこの水銀の問題が起こったというこ とですね。  国がもう100 %安全な食品はないときっぱり言い切ったというのは、やはりある種画 期的なことではないかと。国がリスク分析の手法を取り入れたというのはそういうこと なわけです。それまでは食品に有害物質が見つかったとしたら、それはあってはならな いことという感覚で受け止めてきたものですけれど、これからは、あることは認めまし ょう。では、一体どのぐらいのリスクがあるのか、それ次第で食べるか食べないかを考 えましょうという姿勢に切り替えることになった。  つまり危険か安全か、2つに1つという時代はここで終焉したということで、リスク 分析を取り上げた食品安全基本法が施行された平成15年7月以降は、こうした意味で日 本の食生活の歴史に記録される1つの切り替えの件になっているというわけですけれど も、その時期であった。6月ですから直前なんですね。つまりリスクコミュニケーショ ンの時代に突入しようとしたときに起こったケースであったということ。  第2の特徴は、やはり先ほどおっしゃった情報公害と言われる風評被害が起こって、 キンメダイを中心にぱったり売れなくなった。市場の暴落が起こって大変な御迷惑がか かった。  全部のお魚ではなくて、妊婦がほんの少し注意すればいいという種類のお魚がありま すよという程度の情報に、こんな過剰反応は一体どうしたことかと。その原因はまたも やマスコミがいたずらに不安をあおったせいではないかという非難は非常に強うござい ました。そして、その手前として、厚生労働省がマスコミへの発表の仕方。そこにも問 題があったのではないかという批判も続いて起こっておりました。  それでは、初めのキンメダイが主役でございましたので、私どもは仮にキンメダイ報 道とよく呼びますが、その最初の報道のときの報道ぶりはどうだったかということです が、私は食の情報の研究のために当時の新聞やテレビは大方集めてございますけれど も、新聞はある全国紙が大見出しに「妊婦さんギョ」と。ギョは片仮名でギョと言うん ですけれども、多分お魚にかけたんだと思うんですけれども、「週に3回は御法度」な どと、ちょっと面白い見出しを付けるところもございまして、この紙面をこの新聞社の 系列のテレビ局が大写しにして、テレビのワイドショーでまたもう一度繰り返し見せ る。  私ども新聞屋としては、あれは面白いんですけれども、楽でいいですね。新聞記者が すごく苦労して、あちこち調べて書いて、時間ぎりぎりで冷や汗かきかき書いた原稿を そのままそっくり持ってきて話題にできるというのは、随分テレビ局は楽だなと。これ はほかのテレビ局でもよくやりますね。夕刊キャッチアップとかいろいろあります。楽 でいいとは思いますけれども、私どもが見ても面白い。  そんなふうにしましたけれども、まず新聞は押しなべてセンセーショナルというほど ではなかっただろうと思います。テレビの方はどうかと言ったら、これは一番気になり ましたのは先ほど出た水俣病。水俣病の映像を大分使うところがございまして、そのと きに問題は、この水俣病の場合の水銀のレベルと今回の話とはけたが大きく違うんだと いうことをクリアーに見せないというか、そこをはっきりさせないまま、水俣の例を引 いたという、そこが問題ではなかったと思います。  押しなべて、びっくりマークがスーパーに多かったり、もうテレビのびっくりマーク の量というのは皆さん、テレビ番組を新聞の一番後ろのページでごらんになると、私は 前に数えたことがあるんですけれども、実にびっくりマークの多いこと多いこと。この ごろはNHKでもときどきお使いになるみたいですけれども。  このテレビ報道はどちらかと言うと、先ほどの、どのぐらい怖いリスクなのか。どの ぐらいの程度のリスクなのかというのが、厚生労働省が発表なさったときに余りはっき り出てこなかった。その後、Q&Aが10日ほど遅れて出まして、そのころから勿論詳し く出るんですけれども、最初はちょっとわかりにくかったということもございまして、 そうなるとテレビはもう自分の方でいろいろ材料を用意して、そのわからない部分を埋 めなければならないというので、水銀だ、では水俣だというので手持ちの映像を出した りしたということはあるかもしれません。  もう一つ、報道ぶりが異常に取りざたされたのは、これも第一報に引き続いて、買え 控えというか風評被害という現象が起こったということだと思います。風評被害という 言葉は本当に難しいところで、根拠の弱いいい加減な情報とそれに躍らされる消費者の 過剰反応みたいな形で言われるんですけれども、情報の種類によっては不安を抱くのが 当然で、それはそれほど感情的だなどと言われてしまうには当たらないということもあ ろうかと思います。  それから、もう一つ、キンメダイのときも、私は都の市場などで調べてみました。そ うしたら、中には消費者が買う買わない以前に、流通の業者が仕入れないという形をと って、本当に消費者は買わなかったのか、棚になかったから買えなかったのか。買う気 があったかどうかわかりませんが、その辺が風評のときに、やはりときどき、この問題 は起こってきて、必ずしも消費者が買え控えを全面的にということも、どこまで言える のか。  しかし、勿論、流通の方はこんな報道の後に売れないかもしれないものを棚に置くと いうのもできないだろうということもございまして、ちょっと難しい問題もあろうかと 思います。  不買の現象については、先ほど申し上げたように、私は健康情報みたいなものをやっ ているので、そのブーム情報の裏返しなんですね。ブーム情報というのは小さなブーム ですよと、どこかの新聞が書く。そうするとそれを読んで、ほかの新聞社やテレビ局 が、こんなブームがあるらしいというので、わーっと報道をすると報道量も増える。そ して、そのうちに読者も視聴者も、どうもこれがはやっているらしいというので、それ では自分もというふうになって、小さなブームですよ報道が瞬く間に大きな本格的なブ ームになってしまうということがございますけれども、ちょうど不買の動きにもそうい う側面がございまして、売れないという情報が増えるほどに買わなくなるという現象が あるんです。これは仕方がないということもあるかもしれませんが、BSEのときもそ うでしたけれども、ものを買わないという行為の中には、不安だから買わない、行政な り業者への不信感の表れとして買わないということも勿論ございますけれども、加えて 何となくみんながそうしているからというようなことも確かにございます。  そういう意味で、マスメディアとしては、売れないという情報を流すことをためらう かということになって、ためらいの気持ちもなくはないのですけれども、世の中の私ど ものいる環境の変化をいち早く見つけ出して、問題があれば警鐘を鳴らすというのがマ スメディアの本来の役目だとしますと、不買の状況というのも変化の1つではあるの で、だから報道しないというわけにもいかない。これはもう非常にジレンマで難しい問 題だと思います。  それはさて置いて、第3に、なぜこんなに大騒ぎになったかということですけれど も、やはりマスメディアがこの情報は報道する価値があるという判断をしたからなわけ ですね。1つはやはり水銀ということに非常に日本の人たちは敏感であること。水俣の 経験もあるし、そのほか幾つかの魚の水銀の問題が過去に起こっておりますから、これ はやはりみんなの関心事であるという判断ですね。  それから、今度の水銀が人工的にどこかの公害で汚染されたというのではなく、天然 自然の現象で魚に集まるんだという、これは素人にとっては、やはりある種のショック ではあるわけですね。発がん物質の情報を私が新聞社にいたころも盛んに書きましたけ れども、発がん物質の騒ぎの多くは人為的に加えた添加物であるとか、人為的な化学物 質の問題でしたけれども、やはりショックだったのは魚の焼け焦げとか、最近ではポテ トチップスのアクリルアミド。この辺はもう普通に調理していると出るというんですか ら、大昔から私どもは火を使っている。人間はもうかねてからそういうものを摂ってい たのかという、何か人工的、人為的ではない汚染というものはやはりショックがある。 それも今回のニュース価値の中に1つ含まれるかと思います。  1つは厚生労働省のQ&Aが遅れて、原因は詳しいことがよくわからない。それか ら、最初に厚生労働省が発表した文面の第2パラグラフの中に、人の健康、特に胎児に 影響を及ぼすおそれがある高いレベルの水銀を一部の魚介類が含有している。これだけ ですよ。そうすると、やはりこれほどレクチャーを受けて、細かい質問まで行かなかっ たメディアとしては、非常に大変なことらしいという印象も持ってしまう。そんなこと もあったかと思います。  これはプラスの方の異例のことでしょうけれども、キンメダイのときですけれども、 通達の一番初めに魚のメリットを挙げていますね。これは厚生労働省としてはちょっと 珍しいのではありませんか。何かこういう危険が見つかったという報道は昔からありま すけれども、それをする前の段階で、魚は有用である、食べることは大事だということ をまず言う。それから、では、どのぐらい食べたらいいのかという具体的な量を出した のも、ちょっと異例と言えば異例だった。その辺はやはりメディアとしては面白い材料 だというか、ニュース価値のある材料だと判断するわけです。そんなことで、かなり報 道量が多くなる。しかも、先ほど申し上げたように、風評被害の報道も重なって大変な 量の報道になりました。 ○コーディネーター  村上さん、なるべくフロアからの御意見もいただきたいので、手短にまとめていただ ければと思います。 ○村上氏  では、ここで1つだけ言えることは、マスメディアが大きく扱うこととリスクの大 小。リスクの大小とマスメディアの扱いの大小は決して比例しないということです。  つまり今回のリスクは1,000 分の1秒の反応がどうこうというリスクであったのに、 これだけ大きく扱われる。一方では食の危険と言ったら食中毒で死者が出ている。けれ ども、食中毒の記事でこんなに大きいことはそうはないという。つまりマスメディアが 独自に判断するニュース価値というものとリスクの大きさとは違う。  ですから、どんな形の報道をするにせよ、どのぐらいのリスクなのか。そこだけはマ スメディアはどんな形の報道や放送や記事にしても、そこをきちんと抑えなければいけ ないという、これはもう大変な教訓だったと思います。  それで厚生労働省はキンメダイの教訓を非常に学習なさって、研究会を開いて、どう いう発表をしたからいいかというのを研究をなさって、今回マグロの報告を発表なさっ た。今のところ、新聞の反応はもう非常におとなしいし、テレビももう水俣はなくて、 どちらかと言えば静かで、今のところ風評被害も出ていないということで、これは発表 の仕方がよかったのかもしれません。  ただ、マスメディアの方もこれで本当に学習したのかというと、まだちょっと心もと ないわけでして、これからまた第2、第3のキンメダイ報道みたいなみたいなことが起 こらないとは、残念ながら言い切れないのですけれども、このリスクコミュニケーショ ンの時代にマスメディアというものが本当に強い批判を真摯に受け止めて、このリスク コミュニケーション時代の報道、特にリスクの報道というものについて、本気で考えて いかなければいけないということを痛感しております。 ○堀口助手  どうもありがとうございました。  それでは、もう一度おさらいをしたいと思いますが、初めに高鳥様の方からお話をい ただきました。まず今回の注意事項はあくまでも妊娠をしている人、またその可能性が ある人が対象になっているということ。それが予防措置であって、リスクも1,000 分の 1秒程度の聴覚の問題であり、これからの社会生活には影響がないと考えられていると いうこと。この注意事項は国際的な流れに沿ったものであり、2つの大きな疫学研究に よって今回の注意事項が出されているわけでありますけれども、日本独自の疫学的な研 究を是非進めてほしいというお話。  実際の妊娠をしている人、またその可能性がある人の摂食指導に関しては、通常の食 生活では問題がなく、偏って多量に今回の注意事項に挙がった魚類について摂食するこ とを避けることによって魚食の両立が図られるということです。  風評被害として、現在のところは大きな動きはないけれども、今後何が起こるかわか らないので、Q&Aの利用やパンフレットを配布していただくなど、販売者や消費者、 皆が正しく理解をしてもらいたいということであったと思います。  村上様の方からは、これまでのこの魚介類の水銀に関わるメディアの報道についての お話があったと思います。  この水銀に関する問題は食品安全委員会ができる直前に出てきた問題であり、風評被 害が実際に起こりましたと。その風評被害の問題にはメディアの報道の問題と厚生労働 省からの発表の問題と2点あったのではないかという御指摘でした。メディアというの はリスクの大小とメディアの取り扱い方の大小というのは、必ずしも比例しないという ことでありました。 ということで、お二方のお話。それから、今日のリスクコミュニケーションの目的はこ の注意事項に関しまして、案が示されておりますが、関係者の間で情報を共有するこ と。これについての認識を深めることということですので、配布資料等をごらんになり ながら、御不明な点、疑問な点などありましたら、フロアから御発言をいただきたいと 思います。 ○司会  大変恐縮でございますが、松本参事官は公務のため、3時半をもちまして退席をさせ ていただきます。申し訳ありませんが、引き続き、よろしくお願いいたします。               (松本大臣官房参事官退席) ○コーディネーター  それでは、続けさせていただきますが、ということで、この注意事項案、Q&Aなど など、皆様が現在御不明な点、御理解できない店などがありましたら、フロアから御発 言をお願いしたいと思います。 ○参加者1  築地の市場からやって来ました、永井と申します。  根本的な質問なんですが、例えば、1,000 分の1秒の聴覚ですとか、あったとしても 胎児の将来の社会生活に支障の出ないもの。これがリスクなんでしょうか。 ○コーディネーター  近藤専門官、どうぞ。 ○近藤専門官  今のお話はその1,000 分の1秒というような影響がリスクに該当するかどうかという お話だろうと思います。  私どもは今回のこの注意事項をとりまとめるに当たりましては、当然ながら、この諸 外国におけるフェローでありますとかセイシェルでありますとか、こういうところの疫 学研究を基に今回の注意事項の案をつくっていったものです。  この疫学調査の中では、魚介類の水銀というものを摂取することに伴って、一定の影 響があったのではないかという報告もございます。  ですので、その影響がたとえ1,000 分の1秒であるということであっても、影響があ るという観点では、私どもはこのような注意事項をつくっていく必要性はあるのではな いかと考えているところでございます。 ○コーディネーター  よろしいですか。 ○参加者1  もう一点だけよろしいですか。日本においても、先ほども調査を求めるという話が出 ていたんですが、それは是非お願いしたいと思います。それと同時に、特にマグロなど は魚種による差というのはこの表で出ているんですけれども、例えば、皆さん御存じの とおり、トロとか赤身とかの部位による差というのはどうなんでしょうか。 ○コーディネーター  それでは、マグロの部位による差ということで、中垣さん。 ○中垣厚生労働省食品安全部基準審査課長  前に水産庁で分析していただいたことがありますけれども、明確な差というのは見ら れておりません。 ○コーディネーター  今お答えになりましたが、松本参事官に代わりまして、基準審査課の中垣課長が到着 しましたので、よろしくお願いいたします。 ○中垣課長  遅れまして、申し訳ございません。恐縮でございます。 ○コーディネーター  部位に関しましては、よろしいですか。  ほかに何かありませんでしょうか。後ろの方、よろしくお願いします。 ○参加者2  日本生協連の原と申します。御説明ありがとうございました。  今日は2分というような時間制限はなくていいわけですね。けれども、無制限という わけにはいかないと思いますので、今日のところは3点だけ申し上げたいと思います。  1つは、1973年に暫定規制値が水銀について、今日は説明がなかったんですが、設け られたと思うんですが、このときに検討会の報告を受けて局長通知に妊婦、乳幼児及 び、これは一般の人ですけれども、魚の多食者について注意を喚起すべきというふうに ただし書きが付けられて局長通知が出されたわけですが、これが実際にはこの注意喚起 が余り行われなかったというふうに聞いているわけですね。  こういうことでは結局だめなので、今回の注意喚起の方法。一昨年の注意喚起に比べ て、マグロが入ったことなどは評価できると思うんですけれども、一昨年同様、非常に 煩雑な形で魚種などが挙げられていて、消費者にはとても覚えられるような内容ではな いというふうに感じております。  そういう意味で、実効性に大変疑問があるということで、規制対象外の魚種のうち、 淡水魚以外の魚種については比較的水銀濃度が高いということが知られておりますの で、マグロ、カジキ類、サメ類、深海魚類及びクジラ類については食べずに注意をする というような形での注意喚起をすべきではないかというふうに考えております。  それから、2番目。 ○コーディネーター  済みません。忘れると思うので、1つずついいですか。まず一番最初のを中垣課長、 お願いします。 ○中垣課長  食べ過ぎに注意とおっしゃっておられるわけでございます。では、食べ過ぎというの は一体どれぐらいが食べ過ぎなんだろうという次の疑問にまいってしまうわけでござい ます。  確かに今回の注意の書き方、あるいはあらわし方というのが一目でわかるというよう なものでないというのも、また事実なんだろうと思いますし、その点は今後の検討課題 として、また考えていかなければならないことなんだろうとは思いますけれども、その 当たりも含めて現在考えておりますのは、パンフレットを作成しようと。それを保健所 等が実施をする母親教室のようなところで、妊婦の方々にお願いをしようというふうに 考えておるところでございまして、最終的に注意事項がまとまった段階でパンフレット の作成に入りたいというふうに考えておる次第でございます。 ○コーディネーター  よろしいですか。 ○参加者2  私の意見としては、食べ過ぎに注意ということで、具体的には例えば、100 gだとか 80gとかいうことで、こういうふうな摂取量になるというふうに後で例示すればいいの であって、そんなに細かく何食以内とか80gで週1回とかいうふうな形で示されても、 やはりわかりにくいのではないかということで、御検討をお願いします。  その件については御意見としては承りましたので、それは私どもの意見として聞いて いただければ結構です。  それから、2番目に、一般人と幼児に関してなんですけれども、メチル水銀に関して の一般の安全性に関して、現時点ではWHOによって3.3 μg/kg体重/ 週という値が、 これは水俣病の研究から得られた基準値として設定されているというふうに思います。  その現在の暫定規制値、総水銀0.4 ppm 、メチル水銀0.3 ppm という値も、それと同 じ考え方で設定されていると思いますけれども、食品安全委員会の答申に関しての説明 資料の中では、一般人については従前の基準評価を適用すると書かれておりましたけれ ども、それが今回の注意事項では全く心配ないと書かれているということで、一般人に 関してもメチル水銀の高い魚種を偏ってたくさん食べることは注意換気されるべきでは ないかと考えております。  まして小児に関しては中枢神経が発達段階にありますので、やはり妊婦ほどではない にしても、注意喚起が図られるべきではないかと考えます。 ○コーディネーター  それでは、中垣課長、お願いします。 ○中垣課長  子どもあるいは一般人に対する耐容量、あるいはそれを受けた評価に関する御意見だ ろうと思います。  参考資料2の43ページをごらんいただきたいと思います。一番下のQ4でございま す。  ここに食品安全委員会が乳児、小児に対する考えを述べておるわけでございます。す なわち乳児については母親のメチル水銀が母乳に移行をしないというようなことから、 対象とする必要はないと。  小児については体外に排泄する機能が成人と同様に働く。更にセイシェルの研究にお いて、子どもの神経系の発達にメチル水銀に関する有害影響が示されなかったというこ とから、小児はハイリスクグループと考える必要はないというようなことが明らかにさ れておるわけでございます。  また、本日お配りしております資料3の裏側に14番という御質問と、それに対するお 答えを述べておるわけでございます。今、御指摘ございました一般集団について、食品 安全委員会の食品健康影響評価案のポイントについてというものを一部改正されてお る。すなわち一般集団に対して、従来のPTWIが適用されるべきではないかという御 質問でございます。  これに対して、回答のところを見ていただくと、おわかりいただきますように、今年 の8月4日の食品安全委員会に出された資料。食品安全委員会の専門調査会がまとめた 資料によりますと、一般集団に対する評価は行っておりませんということが明確にされ ておるわけでございます。すなわち小児に対しては体外に排泄される。更にはセイシェ ルでも小児に対する悪影響というのは見られていない。一般集団については評価をして いないというようなことが示されておるところでございます。  そういう点から申し上げますと食品安全委員会の評価結果を基にリスク管理を考える という我々の立場から申し上げますと、子どもあるいは一般の方々に対して、今おっし ゃったような注意をする必要はないんだろうというふうに考えている次第でございま す。 ○コーディネーター  もしよろしければ、西郷さん、何か付け加えることはありますでしょうか。 ○西郷食品安全委員会事務局リスクコミュニケーション官  今、中垣さんから御説明があったとおりでございます。まず評価の依頼の内容はそう だったということでございます。  あと食品安全委員会では、メチル水銀について、議論としては例えば、成人に対して の冠動脈疾患、要するに循環器系に対するリスクファクター、動脈硬化などを引き起こ すリスクもあるのではないかということは議論にはなりましたが、否定的な結果もあっ て、まだ評価をするには知見が不足しているということで、今後の検討課題とするとい うふうな形になっております。その他については中垣課長がおっしゃったとおりだと思 います。 ○コーディネーター  ということです。  それでは、3点目に行ってよろしいですか。 ○参加者2  その食品安全委員会の43ページのQ&Aに関しては、これはハイリスクグループに成 人や小児は入らないということを言っているだけであって、小児や成人は何ら配慮が必 要ないと言っているわけではないと思います。西郷さんがおっしゃられたように、成人 について今後評価が必要というふうにおっしゃっているのであって、今回の事前質問に 対する答えのところで、一般集団に対する評価が行われていませんというのは、今回食 品安全委員会がハイリスクグループに関する評価というふうに受け取って評価をしたた めに、一般成人に対する評価は行わなかったという中身ではないかと思いますので、成 人に対する安全基準に関しては従来からの3.3 、日本の計算の仕方によっては3.4 とい うふうになるそうですけれども、そういった基準を適用して注意喚起を、食べ過ぎと言 っても、これは食べ過ぎなければ、そういうオーバーすることはないと思いますけれど も、注意喚起をしていただきたいと思います。  小児に関しましては、そういう具体的なデータがないことは事実ですけれども、中枢 神経が発達中であることは事実だと思いますので、その点については是非、予防的な観 点から対応をお願いしたいと思います。それは意見として聞いておいていただければ結 構です。 ○コーディネーター  済みません。私の理解ができていないのかもしれないんですけれども、リスク管理を する場合にハイリスクグループ以外の人として、今、位置づけられている一般の人々や 小児に対しても何らかの注意事項をすべきであるというふうな御意見ですね。 ○参加者2  そうです。だから、ハイリスクグループというのが最も暴露が高く、感受性が高い集 団というふうに食品安全委員会の方で定義をしておりますので、そのハイリスクグルー プに対する注意喚起の仕方と、それよりもややリスクの低い集団に対する注意喚起の仕 方は違って当たり前だと思いますけれども、成人や小児に対しても影響が全く懸念され ないようなことではないので、注意換気をしていただきたいと。  毛髪中の水銀の濃度を調べたデータでは、成人で20 ppmを超えるような人も少ないな がらいるというような報告ありますので、そういったことも配慮して、これは偏ってマ グロとかばかりをたくさん食べた場合に限られると思いますけれども、そういったこと のないように、一般的な内容でも結構ですから、注意喚起をしていただきたいという意 見です。 ○コーディネーター  リスク管理の対象の話だったと思います。 ○参加者2  3番目に、これで最後にしますけれども、反応時間が1,000 分の1秒遅れるというよ うな表現で影響を表現していらっしゃるんですが、この聴性誘発電位の試験というのは 中枢神経の発達を見るためにたくさん行われた試験のうちの1つにすぎないわけなんで す 実際にフェローの報告では総合的な評価として、言語能力、注意力、記憶力に関し て影響が出たというふうに評価をされておりますので、そういったことをきちんと表現 をしていただきたい。それはフェローにおいてですけれども、日本においても偏った食 べ方をすると、そういう影響が出得るということで、実際には厳密な試験をしなけれ ば、なかなかわかりづらい、一般の人にもそういう反応ですとかに関してはばらつきが 当然ありますので、簡単に影響が出た、出ないというのを一人ひとりを診断してわかる ようなことではないと思いますけれども、そういった影響が見られたということに関し てはきちんと伝えていただきたいというふうに思います。  1,000 分の1秒云々というような表現で、水銀の影響の表現をいたしますと、消費者 にその水銀の影響に関して、非常に軽視される可能性があります。先ほどの御質問の方 にも1,000 分の1秒というような影響で本当にリスクというふうに言えるのかというふ うな御質問がございました。こういうふうな誤解をされる可能性がありますので、注意 喚起の仕方に関しては、消費者に誤解を受けないような、水銀のリスクについて、きち んと受け止めていただけるような表現で注意喚起をしていただきたいというふうに思い ます。 ○コーディネーター  中垣さんの方から。 ○中垣課長  まず1点目、一般成人の方々に関する、これは御意見ですから、私も我々の考えだけ 述べて終わりにしたいと思いますが、参考資料の2ページ目をごらんいただきたいと思 います。  どんなものでも余りに偏った食べ方をするということは決して勧められるものではご ざいません。今回の注意事項では、2ページ目の小見出しの「<子どもや一般の方々へ >」のところを見ていただきますと、魚介類をバランスよく摂取してくださいというこ とをお願いをしておるところでございます。  2点目の1,000 分の1の話でございますが、44ページをごらんいただきたいと思いま す。Q7でございます。要するにどのようなリスクがあるのかというのは、我々として はリスク評価をした食品安全委員会の見解に沿っていく必要があるんだろうと考えてお ります。Q7にございます、どのような影響なのかというのを我々としても同じような 書き方をしたということで御理解を賜れば、ありがたいと思います。 ○コーディネーター  このQ&Aを作成されている食品安全委員会の西郷さんの方から、お願いします。 ○西郷リスクコミュニケーション官  確かに御指摘のように、評価の中でもどのような影響が出たのかといったことについ ては、いろんなはかり方があって、わかりにくいということがあって、端的にどういう ことをお示ししたらいいでしょうかと、実は評価の先生方に御相談を申し上げたとこ ろ、今、御説明のあったようなところが例示としてよろしいのではないかということで ございましたので、私どもとして、それを使っているわけです。  御指摘の点のその他は、1,000 分の1秒というのは何かぱっと音を聞いたときに、そ れに反応して脳波の電位がぴゅっと出るわけですけれども、それをたくさんはかってい くと、ちょっと遅れが出るのではないかとか、そういったはかり方をするそうです。  その他は例えば、絵を見せて、この絵は何の絵ですかというのをちゃんと答える能力 があるかとか、あるいは同じ図を、丸を描いたり三角を描いたりするのをちゃんと描け るかを調べたり、あるいは心拍の変動はどうだとか、とにかくありとあらゆることを、 神経生理あるいは心理学的な試験を行ったわけです。フェロー諸島の試験では、7歳に なったとき、14歳になったときに相当膨大なコホートと申します同期の方々を使ってこ のような試験をさせていただいて出たことでございます。  確かに評価書を見ていただくと、その辺のところは全部出ているんでございますけれ ども、ものすごくたくさんあるものですから、例を取って言えばといったことで、この 辺のことをすればいいかと。  言ってみれば、この辺のところが健康に対する影響として大きいか小さいかといった ことについて、いろんな御判断があるかと思いますけれども、そういうレベルのことを 一生懸命分析しているということでございます。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  では、大日本水産会の高鳥さん、お願いいたします。 ○高鳥氏  私は、中垣課長とかと違って全然学識はないので、申し上げるのも気が引けるんです が、私が冒頭申し上げましたように、科学性ということについて、フェロー諸島とセイ シェル諸島で疫学調査の結果が違っておるということを申し上げまして、フェロー諸島 では最先端のと言いますか、微細な電気化学的な反応によって1,000 分の1秒云々で、 そういうリスクがないとは言えないというような表現だと、私は理解をするんですが、 そういったことでリスクがあるだろうということが示唆されております。  一方、セイシェルにつきましては、若干昔に調査されたので、そういう最先端の科学 性ということからは少し外れるかもしれませんが、おおむね魚を食べた子どものグルー プの方がある学習能力の点において優れておるという結果も得られておるわけで、私の 記憶では食品安全委員会においてもフェロー諸島でのデータに基づいてリスクアセンメ ントをするというのはいかがなものか。セイシェルの結果もあると。  けれども、結果的にはフェローのデータが有用されたという印象を私も受けておりま して、そういったこともここでよく皆さんに理解していただければ、その1,000 分の1 秒という文章があながち的外れなものではないというふうに、私どもは考えておりま す。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  済みません。今、御意見いただいていたと思うんですけれど、先ほどその1,000 分の 1秒がわかりづらいと。一方で一番最初に小さなリスクというふうに言われましたし、 先ほどはそれが小さなリスクで誤解されるという、本当は大きいのではないかというよ うな御発言だったと思うんですけれども、パンフレットをつくるということで、わかり やすい表現を考えてと今、御意見をいただいたと思います。  生協さんということで、消費者の日々接していらっしゃる組織の方だと思いますの で、わかりやすい表現のもし具体的な案をお持ちでしたら、今ここで言っていただけれ ば、それはパンフレットをつくる側の人たちにも有効な議論になるかと思うんですが、 もし具体的な表現方法をお持ちでしたら、御発言していただけませんでしょうか。 ○参加者2  今、具体的に対案を用意しているということではありませんけれども、例えば、1,000 分の1秒の遅れということに関しては、たまたまこの試験方法の話ですので、フェロ ーの試験で言語能力、注意力、記憶力に影響が見られましたが、この基準を超えて直ち にこういった影響が出るということではありませんと。  その影響に関しては、例えば、音を聞いたときにその反応時間が1,000 分の1遅れる か否かの試験を行うことによってわかる程度のものですというような表現だったらまだ わかるんです。  その影響に関しては、当然その食べる量によって変わりますので、その基準を少し超 えるぐらいであれば、影響はほぼ見られないというふうに考えられるわけですが、たく さん食べる人というのは度を過ごして食べる人もおりますので、そういった方にはそれ 以上の影響が出る可能性もありますので、そういった水銀の影響に関して、最もその影 響の軽微な例を挙げることによって、こんな影響ですというようなことを言うべきでは ないかというのが私どもの意見です。 ○コーディネーター  わかりました。ありがとうございます。  どうぞ。 ○参加者3  宮城県の流通対策協議会の理事です。  気仙沼でマグロを関係を扱っております。今、築地の方がいたので、非常にわかりや すいんですが、参考資料のところに1回約80gとバンドウイルカとかゴンドウとかキン メダイとか、こういったものを全世界の方々、私もマグロ業界として、これだけの量を 食べてもらえば水産業界は非常に潤うかと思います。本当にこういった数字を一般の国 民、市民、世界の方々が本当に食べているのかなと不思議なくらいです。  1,000 分の1秒にしてもマイクログラムにしても、私たち現場にとっては数の中には 入っておりません。要はむしろここに胎児の健康を保護するために魚食普及に努めてほ しい。そういったことをここに皆さんよりも報道関係の方々がおります。そういった形 の中で、水産庁の方もおりますが、本当にこの限られた資源を有効に活用していくため にも、やはり水銀における公害よりも食べない方の公害が非常に強いのではないかな と。  私もこの15年から現在に至るまで、厚生労働省のこういった水銀問題に1回目から参 画しておりまして、非常にいい結果が出てきたのではないかなと。当初、何でこれほど 厚生労働省が神経質になり、水産庁と相反する部分があるのかなと非常に困惑しており ましたが、本当にすばらしい結果が出てきたのではないかなと、そんなふうに思ってお ります。  今後また再度調査をして発表をするとかという文面がありますが、とにかくこれだけ の1回約80g、2か月に1回まで、1週間当たり10gなどというようなものとか、キン メダイ、メカジキ、クロマグロ。クロマグロ関係は非常に高価なものですし、メカジキ に至っては皆さん見たことはありますか、食べたことはありますか。本当にどうぞこの 数字に至るまで、みんなで一生懸命食べていただければ、日本の水産業会もまだまだ捨 てたものではないのかなと、そういうふうに思いますので、本当にありがとうございま した。 ○コーディネーター  ありがとうございます。  それでは、女性の方、お願いいたします。 ○参加者4  着席したままで失礼させていただきます。消費者で東京都地域婦人団体連盟の飛田と 申します。  今回、一昨年に加えての注意がなされたということは、特にマグロが入ったというこ とは前進だと思っております。前からわかっておりましたことなんですが、私たち日本 人もお魚大好きで、マグロも大好きで、平均のグラム数を超えるのではないかと、私な どは思いますけれども、しょっちゅうお魚類をたくさんいただいております。  そういう食生活を送る者にとりまして、何が必要かということですけれども、具体的 にどれくらいが適切であるということ。妊婦の方、胎児に対するハイリスクグループの 限定の仕方なども各国の注意事項を見ておりますと、必ずしも諸外国が日本と同じよう な考え方を取っているとは言えないわけです。  例えば、カナダですとすべての人。更に幼児、妊娠可能年齢の女性。アイルランドや オーストラリアはすべての人。デンマークですと、妊娠を考えている女性などを入れて いる国はほかにもたくさんあるんですけれども、それに加えて14歳未満の子ども、授乳 中の女性。授乳中の女性を入れている国はほかにもあります。ノルウェーなども授乳中 の母親ということは書かれております。  これは世界の国々が、特にノルウェーなどは魚をたくさん食べる国ですが、こういう ことを注意事項として入れているということは、我が国とどこが違うかと言えば、予防 原則に立って、できるだけ食生活を安全に送ってもらいたいという行政の姿勢の違いが 表れているのではないかと、私は思っております。  今回一歩前進で、その点は評価いたしますけれども、考え方として、なかなか我が国 独自のデータがない。今回は対象を前回と比べると大分広げましたというお話がありま すけれども、検体数が非常に少ないものもあります。アオダイですとかメヌケとかウス メバルでしたか。そういう魚はかなり数値が高かった。これが入っていない。  また、諸外国との比較において、数値に差のあるものなどもあるわけです。そういっ たものについて、どのような判断を取られるのか。あるいは今後どのように調査を進め られたり、諸外国との情報交換を行っていかれるのかということなども知りたいと思い ます。  最初に申しましたのは、消費者としての意見でございますけれども、私どもは決し て、先ほどから申しておりますように、魚を敬遠したりするようなことはございません で、むしろメディアの側の大変真剣さに欠ける情報提供の仕方。メディアの姿勢という ものがいろいろなところでさまざまな問題を引き起こしているということではないかと 思われます。  面白おかしく物事を拡大して書くというようなことなどが広く行われているわけで、 今日もお見えになっていらっしゃるかもしれませんで、なかなかメディアと日ごろ接し て、メディアに深く関わって運動していらしたりしている方はこういう発言はしないわ けです。私などは全くそういう意味では行政の方とかメディアの方とも常に一定の距離 を保ちまして、自分自身の消費者の意見を申し上げるということを貫いているつもりで おりますから、言いにくいことも申し上げるわけですかが、メディアにどっぷりつかっ ている方は決してメディアの批判をしないし、また行政に深く関わっておられる方も余 りはっきりものをおっしゃれないという、私もそうであればそうなのかもしれません が、人間として弱い部分が出てきてしまうわけです。  それはよけいなことでございますが、今回のことで気になっているところとして挙げ させていただきたいのは、データの先ほどの偏在の問題や各国の行政の姿勢の問題のほ かに、例えば、水銀暴露の実態のところで表示されている数字、薄い資料の8ページ 目。  これは4番目の「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会」における 検討のところの8ページ目。妊婦さんの体重を15のところでは50kgとした場合。16のと ころでは55.5kgとした場合というふうに、考え方がそこでも数字が違っているわけで す。  これは例えば、食品安全委員会がなさったところでも不確実係数の扱いが国際的なJ ECFAの評価の仕方と違っていたりしまして、いろいろあいまいなところが不確実性 に満ちたものであるからこそ、こういう違いが出てくるのかしれませんけれども、私な どが今回のこういう御説明をお伺いしてお願いしたいこととしては、私たちは魚食を大 切にしている、食生活を守ってきているわけですから、生産される方も情報を世界各国 の人が予防原則に基づいてということは、将来を担う子供たちなどが16歳以下とか14歳 以下の子供たちも食べない方がいいと言っている国があるという、それはマグロに関し てとか2、3のほかの魚種について、食べ方を制限しているわけですけれども、それは 未来を担う子供たちにとって悪い影響がないようにということだろうと思うんです。  ですから、ただ単に売ればいいという姿勢ではなくて、慎重に皆様方も業界の方も研 究をなさる必要があると思います。行政もそうです。データが非常に少なくて、ほかの 国々データによって、私どもの食生活のことについてのこういう情報提供がなされるわ けですので、今後は世界の研究者とも連携を図ったり、また我が国独自の疫学調査を含 めての調査を、先ほども水産会の方もおっしゃっておられましたけれども、私どもとし てもやっていただきたいと思います。  また行政の皆さんは風評被害、風評被害とおっしゃって、まるで何かにおびえるかの ようにおっしゃいますけれども、それは先ほど申しましたような、むしろマスコミとの 付き合い方、無責任な人たちとの無責任な交流の仕方をしないことをなさるべきであっ て、消費者の方に軸足を置いていただきませんと、余り信頼できなくなるということを 申し上げておきたいと思います。  以上です。 ○コーディネーター  済みません。たくさん言われたので、少し整理をさせていただきたいのですが、もし 私が間違えていたら訂正してください。  最初に諸外国とその対象が違っていますと。そのハイリスク群がどういうグループか というのは食品安全委員会によるリスク評価の部分において決められたことなんだけれ ども、いわゆるリスク管理の部分で今の注意事項はハイリスクグループをターゲットに 当てているけれども、諸外国のように食品安全委員会が言ったハイリスク群以外の一般 の人や子供たちへもその注意事項をするようなリスク管理の姿勢を示してほしいという 御要望があったのかなと思います。  データが少なく、日本における疫学調査などもないので、やはり調査及び研究という ものをお役所だけではなく、業界を始め、進めなければいけないのではないかというお 話。  それから、マスメディアに対する報道の姿勢の在り方に関する御意見というようなと ころだったと思います。  もう一つ、資料2の8ページの水銀暴露の実態の妊婦の体重が15枚目のスライドでは 50gになっているけれども、16枚目のスライドでは55.5gになっていて、ここに違いが あるんだけれども、というような御指摘だったと思うんですが、間違えていますか。 ○参加者4  あとは魚ですね。汚染度の高い魚として、アオダイとかメヌケとかウスメバルといっ た魚などがありましたり、世界によってデータが違う魚があるわけです。例えば、サワ ラなどはたしかそうだったと思うんですが、汚染度の水銀の蓄積量が違うものもありま す。  ですから、検体の数とかいろんな理由があってのことでしょうが、そういうものが見 送られていて、ついでに言うなら、私どもはイルカを食べたり、クジラを食べたりはめ ったにしないわけですね。そういうのを国がこういうところに載せたら、日本人はこう いうものを食べているのかと。自然保護の団体から何と野蛮なんだろうということを思 われますね。特殊な場面で召し上がる方があるかもしれませんが、そういう扱いも重要 だと思いますので、めり張りについてもちょっとはっきりしない点があったということ を申し添えさせていただきます。こういう書き方をされますと、誤解を招きます。 ○コーディネーター  それでは、50gと55.5gは説明していただけますか。 ○中垣課長  今、御指摘ございました資料2の8ページ、スライドで申し上げると15番と16番で、 妊婦の体重50kg、55.5kgということで、違うのではないかという御意見でございます。 妊婦の体重を食品安全委員会は評価の過程で60kgという体重を使っております。厚生労 働省は慣用的に50kgというのを使ってきたところでございまして、この15番のスライド というのは過去十数年にわたってやってきた調査で、すべて50kgで換算した数字を出し ておりますので、今回もそういう意味で50kgを使った。  16番の試算。これは実際に試算をしていくに当たって、55.5kgを使ったわけでござい ますが、これは国民栄養調査の250 〜260 人の妊婦さんの平均体重でそういう意味で根 拠のある数字。食品安全委員会は60kgというのもバックグラウンドのない一律の数字と いうことでございます。  勿論、妊娠の初期から出産直前までは10kg内外の増加があるのが通例でございます。 したがいまして、どの数字を使おうと一定の不確実性。例えば、55.5が平均だとする と、その前は5kg減、その後ろは5kg増ですから、一定の不確実性を最後に考えなけれ ばならないという数字でございます。  ほかに御意見いただきました、対象者の問題でございます。この対象者は今回の資料 の中でも諸外国の注意事項を参考資料の25ページから、諸外国における注意事項を我々 が入手した範囲ですべて要約をしております。  おっしゃるとおりに諸外国で対象者の範囲というのがかなり異なっております。この 点につきましては、昨年の7月に食品安全委員会に評価をお願いする段階で我々は気が 付いておりまして、どのような方を対象に注意をすべきかということで、今回特別に食 品安全委員会から評価をしていただいたというような経過があるわけでございます。  勿論それを予防原則的なものから一般の方々に広げるべきだとか、子どもに広げるべ きだというような御意見はあるんだろうと思いますが、我々としてはデータに基づい て、科学に基づいて考えていく必要があるんだろうと考えております。  3番目に検査数について御指摘がございました。今回の参考資料の78ページの「4. 検討対象の魚介類」のところをごらんいただきたいと思います。78ページのちょうど中 ほどに検討対象の魚介類というのがあって、まず厚生労働省、水産庁、地方自治体、諸 外国のデータが資料1となっていて、その資料は49ページから三百数十の魚介の種類ご とに載っておりますが、ここをごらんいただければありがたいと思いますけれども、そ の上で一定の基準を用いて魚介類を選定しておるわけでございます。  今、御指摘のあったのは79ページの「対象外とした魚介類」ということで、この数字 に当てはまるんだけれども、今回の対象外としたものについて、その魚介類の範囲と理 由を述べておるわけでございます。  そういう意味から申し上げますと、検体数が少ないというものが確かにあるわけでご ざいまして、これらのものについては、また今後調査をしていかなければならないとい うふうに考えておるわけでございます。  具体的に申し上げますと、15年6月に注意事項を発表した際には、国内における検査 数が2,600 でございました。今回は9,700 、約四倍弱調査をしたところでございまし て、今後ともこのようなものを特に対象と考えつつ、調査をしていく必要があるんだろ うと考えております。  また、疫学調査の話がございました。疫学調査につきましては食品安全委員会の専門 調査会の座長をやられた佐藤先生を中心に、もう既に実施に入っております。ただ、セ イシェルのデータもフェローのデータも7年とか14年とかかけて収拾されたものでござ いまして、そういう意味から申し上げますと相当の年月がかかっていくんだろうと思い ます。  あと、外国との違いについて、外国の魚、開国の検査結果等の違いがございました。 外国の検査結果についても57ページぐらいからまとめております。  先ほど、サワラについて御質問があったわけでございますが、私の知っている範囲で 申し上げますと、日本ではアマダイというと京都のぐじで20〜30cmぐらいの魚を思い浮 かべるわけでございますが、ここに出てきているアマダイに対応する英語の魚種という のはどうも1mぐらいあるようなもので、実態として全く違うのではないかというよう なことがわかってきたところでございます。  そういうこともございまして、今回の注意事項の対象としましたのは、すべて国内の 検査結果。外国のは参考としてここに掲げさせていただいておりますけれども、実際 上、注意事項をつくっていったのは国内の検査結果によったところでございます。  以上でございます。 ○コーディネーター  それから、昨日も大阪の会場で、イルカは食べるんですかという質問がありましたの で、水産庁の丹羽さん、もしよければよろしくお願いします。 ○丹羽水産庁漁場資源課生態系保全室長  昨日、大阪でもお伝えしたんですが、地域によっては食べられる場所もあるというこ とで、この注意事項自体が日本全国をカバーするということで、そういう地域の妊婦も 対象とするということで記載されていると理解しております。  以上です。 ○コーディネーター  それでは、次に進めさせていただきます。  一番後ろの方、どうぞ。 ○参加者5  三浦市からまいりました。本日、三浦市からは20名ぐらい参加しております。それは 三浦三崎は基地でありまして、遠洋漁業、近海も含めまして、業界の関係者、市議会、 県会議員の先生、その他が20名ぐらい来ております。代表して意見を申し上げます。  全体の平成15年のときには、まさにメカジキとキンメが挙げられたわけで、三浦市は キンメでは非常に風評被害を受けました。今回のこの注意事項を読みますと、前回と比 べて非常によくできていると思います。まず最初に魚介類の有益性について述べており ますし、先ほどの資料2の11ページで「注意事項見直しに当たっての留意点」というこ とで、健康な食生活を営む上では重要な食材であるとか、その辺のところが入っており ます。胎児の将来の社会生活に支障のあるような重篤なものではないこととか、非常に こういう点が十分に配慮されていると思います。  今回のものについては、妊婦への万が一の場合に備えての安全性を見込んだ予防措置 ととらえておりますので、この辺を今後も明確にしていっていただきたいと思います。  先ほどから、科学的根拠の問題についていろいろありますけれども、これについては 今後も調査、研究を積極的に進めて、継続的に見直しの対象になるものはしていただき たい。  1988年のJECFAの会合で、メチル水銀の毒性を緩和する魚の微量の成分。例え ば、セレンですね。これの重要度についても可能な限り評価を行うべきであるとしてい ますので、こういうマイナス要素だけではなくて、魚体にはそういうものもあるという ことも既に言われていますので、そういう点も今後十分に研究していただきたいと思い ます。  前回のキンメの風評被害のときを含めまして、前回キンメとメカで、今回はマグロ関 係が挙げられているわけですけれども、今回もキンメもメカも入っているわけですけれ ども、別にそれほど騒いでいない。マグロについて言えば、お盆前にこういうことがあ って、三浦の市場の関係者も今日来ておりますが、市場の方の状況も現実の相場とかに は今のところ、それほど影響は出ていないということです。  我々が一番心配しているのは、先ほど来いろいろありますけれども、風評被害で関係 業界が経済的損失を被るということがないように十分注意してもらいたいと。それは先 ほど、パネリストの方も言っていましたけれども、国民全体を相手とする政府の食事指 導というのは、結局マスメディアを経由して伝達されることになりますから、是非、正 確なリスクコミュニケーションが行われるようにお願いしたいと。そのためには我々生 産者だって、その安全性については十分心配しているわけですから、業界もできる限り の協力はしていくつもりでおります。  魚介類の水銀問題に関しては、次のことをできる限り正確に理解して、冷静な対応を していただきたいということがあります。1つは、魚介類に含まれるメチル水銀という のは極めて微量であるということですね。水銀は自然界に昔から存在したもので、最近 になって急激に増えたというものではないということです。  それから、古来、日本人が日常の食生活様式で事故もなくずっと過ごしてきているん だという実績。今回の注意事項については、対象は妊婦の方に限定しておって、それ以 外の方には特に注意する必要がないというような表現にあるわけでして、その辺のとこ ろも十分に理解していただきたい。  マグロを始めとして、魚介類が持っている食品としての優れた性質を考えれば、水銀 問題のゆえに、もしこれを食べないような選択をした場合は、栄養的にも食習慣的にも 大きな利益を失うことになるわけで、非常に残念なことになると思います。  JECFAでも魚のメチル水銀の濃度の制限や摂食が検討される場合には、その栄養 面の有益性は、懸念される有害性にも増して尊重されるべきものであるであるというレ ポートが出ております。世界一の長寿を誇る日本が魚食文化に支えられてきたことを忘 れてはまずいと思います。  食の安全は我々生産者にとっても根本的な問題であります。魚が人間の健康や健全な 食生活に大きな役割を果たしているということを考えれば、消費者に安心して適切な形 で魚の消費を続けていただきたいと思っています。魚は潜在的リスクを抱えている以上 に、人間にとっての必要な栄養源であるしエネルギー源であります。我々生産者として は事業を通じて入手できる情報、リスクを含めて、開示していくように努めてまいりま すので、消費者の皆さんには是非多様な要素を正しく理解して、食の安全について妥当 な選択をしていただきたいと。  国には引き続きリスク情報とリスク軽減の多様な選択肢を検討して、魚介類を重要な タンパク源としている日本として、よりよい指導に努めていただきたいと思います。三 浦の町というのは三崎港という天然のいい漁港がありまして、近海でキンメもとってお ります。マグロは遠洋マグロの基地であります。経済に直結しておりますので、この問 題に関しては非常に関心があります。  ですから、今日は大挙、先ほど申し上げたような人たちが来ておりますので、十分こ のようなことを配慮して、次の指示をしていただきたいと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  何かほかにありますか。 ○参加者6  日鰹連の尾崎と申します。カツオ、マグロ業界の団体の者でございます。  ちょっと抽象的なことをお伺いしたいと。まずはコメントになってしまうかと思うん ですけれども、予防原則とか言われていることと、その食の安全ということを総合的に 行政として、どう判断されるか。その姿勢をちょっとお伺いしたいとな思っておりま す。  と申しますのは、私どもから見ますと、今回の指導は、これだけ食べていただければ 魚界は潤うというようなお話が先ほど、宮城県の方からありましたけれども、ただ、今 回、試算結果が資料2の10ページに出ております。マグロは割合代表的な三種が入って おりますけれども、仮定2を使われると、例えば、メバチという大変皆さんに一番食べ ていただいているマグロが約140 gまでとれるとされていますけれども、注意事項はま とめられて、その80gのグループに入ってしまっていると。  そうしますと、試算というのはいろんな仮定を置いてされた計算ですから、その数字 を全部うのみにするようなものではないという理解でおりますので、この試算結果をそ のまま出されても、特に問題はなかったのではないかと私は思っておりますけども、こ れを80gという形に、非常に安全を見込んだ表現をされたというようなことがございま す。  非常に予防的に動かれているなという感じがしたものですから、それでちょっとお伺 いしたかったのは、先ほどからも堀口先生もおっしゃった、完全に安全な食品はない と。safe enough というところで受け入れるしかない。これはアクセクタブル・リスク というような言い方をされていると思うんですけれども、村上さんも食品安全基本法が できて、その食品安全委員会が動き出したときの画期的なことというのは、やはり食の 100 %の安全がないということを明快に認めたことだとおっしゃっていました。そうい う意味で非常に食の安全はゼロリスクがあり得ないという前提があると。  もう一つは、魚介類に含まれる微量水銀というもののリスクは、先ほどからいろいろ 議論されてはいるんですけれども、疫学データは問題があるというふうに出されたの は、やはりフェローの一例だけであります。それから、そのリスクの程度はいろんな表 現がされておりますけれども、やはりそれほど高くはない、低いものであるという状況 の中で、つまりメチル水銀のリスクに対応するのに予防的に動かれるのが、それは1つ の御判断だとは思いますけれども、果たして適切なのかなと。  やはり1つのキーワードはゼロリスクはないということと、食はマルチリスクだとい うことだと思いますので、そうしますと1つのリスクについて追及していくと、やはり 別のリスクを負うという可能性がありますので、そういう意味で余り1つのことに完璧 に対応するということが果たして適切かと。  それはもう一つの面として、先ほども御発言がございました、魚のベネフィットとい うことなんですけれども、魚のベネフィットとそのリスク。例えば、今回はメチル水銀 のリスクというのをどのように比較して、どのように最終的な判断をするかという非常 に難しい問題があると。その魚のベネフィットがあると言いながら、今度はリスクがあ るというふうに並列的にいつも議論されることが多いわけですけれども、これは両方一 緒にして比較対象ができなければ、やはり判断できないのではないかと思います。  たまたまアメリカの業界からいただいた、アメリカの水産庁がつくったパンフレット がございまして、その業界を説明したパンフレットなんですけれども、ここに水銀のリ スクについて述べられていて、そこでアメリカの水産庁が魚のベネフィットは水銀のリ スクをアウトウェイすると。これは比較して、そのベネフィットの方が大きいというこ とを書かれているとか、やはり今後やるべきこととして、更にそのリスクとベネフィッ トを量的にアセスするということが必要であるというようなことを言っていると。  結局、マルチリスク、魚のベネフィットとの関係を考えましたときに、やはり食べ物 が安全というのは1つのことだけではわからない。総合判断が必要になってくると思い ますので、そういう意味で予防原則というのをどこまでやるか。その総合的な食の安全 という観点から、例えば、メチル水銀の問題をどのように位置づけられるかといったこ とについて、非常に漠然としているんですけれども、行政のお考えをお聞かせいただけ ればと思っております。 ○コーディネーター  それでは、予防原則と安全、リスクとベネフィットについて、中垣課長、お願いいた します。 ○中垣課長  まずその御質問に答える前に、先ほどの三浦の関係者の御発言に対して、御意見だと 思いますから、御質問ではないので答える必要はないんだろうとは思いますけれども、 2点述べさせていただきたいと思います。  1点は、今後の調査と見直しの話でございます。これは15年の6月から今回の見直し まで調査をした。また先ほど申し上げたとおり、疫学研究については既に東北大の佐藤 先生を中心に進められておるという状況にあるわけで、それらのデータが整った段階で 必要があれば、また見直すということも視野に入れております。  2点目でございます。15年6月に最初に注意事項を発出した際のいわゆるリスクコミ ュニケーションの在り方について、研究会を設けて分析をしていただきました。厚生労 働省が何を発表し、新聞でどうキャリーされ、テレビでどうキャリーされというような 状況を研究していただいたところでございます。  その報告書によりますと、正しい情報を正しく伝達され、正しく理解されるように発 信しろというのが行政として考えるべきだと書かれております。正しい情報というのは 言いかえれば、科学的、合理的なものだろうと私は考えております。伝達の多くの部分 というのはマスコミに委ねるところがございましょうし、理解というのは妊婦さん、あ るいは消費者の方々の主体的な行為ですから、そこを我々として、どうのこうのという のはなかなかできないわけですけれども、正しく伝達され正しく理解されるように発信 をする。言うなれば、わかりやすく言いたいことを伝えていくというようなことに、今 回は我々としも相当工夫したところでございます。  勿論これが十分かどうかというのは、今回の我々の発信でQ&Aをいつ出した、都道 府県にいつ報告をしたというようなことも、あるいは新聞がどうキャリーした、テレビ はどうキャリーしたというようなことも含めて研究をしていただいて、今後に役立てて いこうとは思っておりますけれども、前回の経験を踏まえて、そのようなことも我々と してはやってきたということでございます。  日鰹連から今、予防原則とリスクの問題について、御質問、御意見がございました。 いわゆる予防原則と言われておりますのは、EUを中心に取り入れられているデータが ない現状において、あるいは想定できないリスクに対して、あらかじめ対応を取るとい うことなんだろうと思います。  そういう意味で、我が国の食品安全基本法というのは科学に基づいて対応を取るんだ というふうに書いておりますから、そういう意味での予防原則的な、今、私が申し上げ たような意味での予防原則というのは取り入れられていないんだろうと考えるわけでご ざいます。  今回の注意事項というのは、あくまで食品安全委員会が評価をされた上で、一定のリ スクがあって、そのリスクに収めるためには2.0 という耐容量を示された。その範囲内 に収めるためにどのような形でやっていくということを検討していったというものでご ざいます。  個別具体的に参考資料の12ページについて御指摘がございました。すなわち参考資料 の12ページを見てみると、ここの下から2番目のマグロのところにメバチというのがあ って、これは1週間に何g食べてもその耐容量を超えないかというのを試算したもので ございます。ちょっと字が小さくて申し訳ないんですが、御指摘されたのはメバチの右 側の欄。調査結果に基づく試算、メチル水銀の仮定2のところに137.7 gとなってい る。137.7 gとなっているのを最終的な注意事項では80gにまとめた。それが予防原則 ではないかという御指摘だったんですけれども、この点については右の13ページにこの 問の答えが続いているわけですけれども、ここをごらんいただきますとわかりますが、 あるいは先ほど申し上げましたとおり、メチル水銀の仮定2を1つの目安としました。 更に1回に摂食する量が一般に80g程度であるということから、80gを1つの目安にし た。  それに先ほど御説明をした、妊婦の体重あるいは妊娠期間中の変動。大体10kgぐらい 変動していくとか、あるいは魚介類の試算ですから平均濃度をこれは用いております が、当然のことながら、ばらつきがあるというような不確実性を考えたもので、そうい う意味で80gというふうに書いておるわけでございまして、御理解を賜れば幸いでござ います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  そろそろ時間になっていますが、どうぞ。 ○参加者7  千葉県から参りました、NGOの木野村と申します。座ったままで失礼します。  いろいろ比較する場合に例えば、資料2の4ページの上にあります、15年6月下旬の 国際専門家会議ということになっていますが、国際ということになりますと、いわゆる 日本人のような菜食を主とした文化。海を見たこともないというような地域あるいは 国。そういったところの食文化。こういったものとの関係が、この会議においてどのよ うに平均化されてしまっているのか。あるいはこの中から日本独自のものをデータとし て取り入れているのかが1つ。  同じ資料の6ページ。これにフェローの関係だとか、あるいは不確実性の係数の適用 とか、非常に進歩された表現が使われておるわけですけれども、これの分布も今、盛ん に流行しているのは正規分布なんですけれども、正規分布のあれで不確実性をどういう ふうにしているのか。あるいは正規分布ではなくて二項分布を取っているのがあるので はないかとか、あるいはばらつきが大きいものだから、中央値を取っているとか、平均 のところは統計的にいろんな表現がございます。  ですから、そういった面での数量化という面は、何かを評価する場合に非常にいい、 客観的な方法なんですけれども、その数量化をする場合に、先ほどの4ページの従来は 3.3 μg だったのを一挙に半分の1.6 μg になったと。これは何か数字遊びしているの ではないかなというような気がしてみたらば、今度はこの資料の8ページを見ますと、 これが2.0 μg になっている。  だから、これは何か根拠があるのか、単なる調査方法の差による差なのか。あるいは 実態にこうなのか。  前の方の質問に対してお答えいただいた、参考資料の13ページを見ると、なぜ今回マ グロが注意事項の対象になったのですかの中に、従来の3.4 μg から2.0 μg に引き下 げられたことだと。だから、こうなったんだと言うんです。だから、マグロがこの注意 事項の対象になったんだと。  これは日本のような魚を好きな国民、私などもマグロは大好きですけれども、恐らく ほかの人の3倍くらい食べているのではないかと思うんですけれども、そういう点で調 査方法の差というものがどういうふうにこのデータに生かされているか。これは先ほど 申しました海を見たことのないような地域に住んでいる方の食文化を含めまして、それ を平均化してしまったのでは日本のあれとしては意味がないのではないかなということ もございまして、これは数量化に対する根拠と言いますか、正統性と言うか妥当性と言 いますか。それについて御質問をさせていただきました。 ○コーディネーター  最初の質問のところは国際会議での議論と、いわゆるリスク評価の部分についての御 質問であったかなと思います。リスク評価につきましては食品安全委員会の西郷さんの 方から説明いただき、最後に中垣課長に補足していただければと思います。 ○西郷リスクコミュニケーション官  最初に、厚生労働省の今日の資料で言うと4ページの7の方に、国際専門家会議はJ ECFAとよく出てくるところでございますけれども、これが3.3 から1.6 になったと いうことでございますけれども、これは3.3 をやっていたときというのはかなり昔でご ざいまして、特に明確な記載はないわけでございますけれども、多分水俣病の発生の最 小発症量だとか、そういったところから安全を見て計算していったら、そういうところ になったというのがもともとでございます。  今回出た1.6 と申しますのは、先ほどから問題になっておりますような1,000 分の1 秒の遅れというのがいいか悪いかという議論がございましたけれども、そういった影響 が出るところについて分析をしたら、そういうふうになっていったと言っております。 それから、今度JECFAが1.6 と言いながら、今度は日本の食品安全委員会では2.0 になったのはなぜか、あるいは不確実係数をどういうふうに扱ったかという御質問がご ざいましたけれども、これは両方とも考え方は一緒でございまして、不確実係数という のは分布で勿論言っているわけでございますけれども、要するにもともとは髪の毛をは かったところを見たわけでございますけれども、髪の毛から出てくる水銀の量と血の中 の水銀の量が密接な関係にある。だから、いちいち血の中をはかるのは大変でございま すので、髪の毛ではかってみることができそうだということになります。  ただし、髪の毛から10出てきたら必ず一定のメチル水銀が血の中に入っているとい う、1対1で決まるわけではないので、それについてはある程度の不確実性を見る必要 があります。  実際、血の中というのはどうなっているかというと、それは食べた方から入ってくる と。これも多分密接な関係にあるんでしょうと。ただし、人によって違うかもしれない ということもあるわけでございますけれども、それも不確実性というのをいろいろ見て いって求めていったということでございます。  JECFAが使った数字と日本の食品安全委員会が使った数字は、出発点は同じなん ですけれども、若干異なっております。なぜ異なったかと申しますと、JECFAを見 ましても、その不確実係数の計算については、もっと検討すべきだというふうなことは JECFAの報告書に書いてございましたものですから、食品安全委員会でも検討した ところ、具体的に申しますと、たしかJECFAがルート6.4 としたところを食品安全 委員会は4にしたといったことがございますけれども、そういった違いが出たというこ とでございます。評価の数字はそういうことでございます。 ○コーディネーター  それでは、中垣課長、補足をお願いいたします。 ○中垣課長  今食品安全委員会から御報告されたとおりなんですが、この我々の資料2の4ページ のスライドの7の2にございます国際専門家会議というのは、正式に申し上げますと、 FAO/WHO合同食品添加物専門家会議と言われるものでございまして、国際的にい わゆるこの分野の専門家と言われる人たちが集まったということを示しております。  したがって、魚を食べる地区とか魚を食べない地区とか、あるいは日本に向けたメッ セージを出しているわけではございません。この15年6月の国際専門家会議で評価され た資料も今回食品安全委員会で評価された資料も基本的には一緒でございます。その解 釈が違っておるということでございまして、今、言われたとおりなんですが、より詳細 には参考資料の43ページのQ2、Q3に御指摘されたような点について、専門家の方々 がまとめられておりますので、またごらんいただければと思います。 ○コーディネーター  時間も延長してしまいましたので、ここら辺りで終わりにさせていただきたいと思い ます。  また、本日、時間が足りなくて意見が述べられなかった場合には、意見募集が9月21 日まで厚生労働省のホームページでありますので、そちらの方に是非お願いいたしま す。  15分延長させていただきましたが、今日はどうもありがとうございました。(拍手) ○司会  どうもありがとうございました。  以上をもちまして「食品に関するリスクコミュニケーション」を終了させていただき ます。  本日は長時間にわたり、また貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございまし た。出入口でアンケートの回収を行っております。今後のリスクコミュニケーションの 参考とさせていただきますので、是非御協力いただけますよう、お願いいたします。  また、皆様のお近くでこのような意見交換会を開催することもあるかと思いますが、 是非とも御参加いただけますよう、お願いいたします。  それでは、皆様、お気をつけてお帰りください。本日はどうもありがとうございまし た。 (了)