05/03/08 平成17年3月8日「食品に関するリスクコミュニケーション次第(リスク 分析の概念を踏まえた食品安全行政の取組や健康食品についての意見交換会) 議事録            食品に関するリスクコミュニケーション            平成17年3月8日(火)13:00〜16:05            富山県民共生センターサンフォルテ 1 開会 ○司会  それでは、ただいまから食品に関するリスクコミュニケーションを開催したいと思い ます。私は、本日司会を務めさせていただきます厚生労働省医薬食品局食品安全部企画 情報課の広瀬と申します。よろしくお願いいたします。  本日の意見交換会の目的ですが、この場で何かを合意して決めようというものではご ざいません。まず、基本的な情報を皆さんで共有するということから、最初に国の取り 組みなどについて説明させていただいて、その後さまざまなお立場の方から意見をいた だき、この問題に対しての認識をみんなで深めていくことを目的としておりますので、 よろしくお願いいたします。  初めに、本日の配付資料を確認させていただきたいと思います  〔配付資料確認〕  続きまして、簡単に本日の議事進行を紹介させていただきます。  まず、富山県副知事の大永尚武様からごあいさつをいただいた後、基調講演として 「食の安全性確保のための体制と取組について」というタイトルで、食品安全委員会の 寺田雅昭委員長よりご講演いただきます。  引き続きまして、「健康食品の賢い選び方」につきまして、独立行政法人国立健康・ 栄養研究所の田中平三理事長よりご講演いただく予定となっております。  2つの講演が終わりましたら10分間ほど休憩をいただきまして、その後、「リスク 分析の概念を踏まえた食品衛生行政の取組と健康食品」について、パネルディスカッシ ョンと意見交換を行うこととしております。  それでは、大永尚武副知事よりごあいさつをお願いしたいと思います。よろしくお願 いします。 2 あいさつ ○富山県副知事 大永尚武  副知事の大永でございます。開会に当たりまして、一言ごあいさつを申し上げたいと 思います。  3月に入っても雪が降る寒い日が続いておりましたが、きのうからようやく春らしい 感じになってまいりました。本日、このように多くの皆さんのご参加をいただき「食品 に関するリスクコミュニケーション」を開催できますことは、まことに喜ばしい限りで あり、心からお礼申し上げます。  皆様方には、日ごろから食品の安全性確保の取り組みに格別のご理解とご協力をいた だいており、この場をおかりして厚くお礼申し上げます。  さて、近年BSEや高病原性鳥インフルエンザの発生、あるいは食肉の偽装表示、ダ イエット食品による健康被害など、食品への信頼を損なうような問題が相次いで発生い たしております。食の安全・安心に対する消費者の関心がますます高まってきておりま す。  このため、国では平成15年に「食品安全基本法」が制定されました。そして、食品 安全行政の基本理念が定められるとともに、リスク評価を行う機関として食品安全委員 会が設置されました。また、食の安全の確保に向けて、消費者、生産者、事業者、そし て行政がお互いに情報や意見を交換するリスクコミュニケーションにも取り組まれてき ております。  富山県におきましても、平成15年7月に消費者や生産者の代表からなる富山県食品 安全推進本部を設置し、関係者との緊密な連携のもと、食品の検査や衛生監視、表示の 適正化、消費者への情報提供の充実などに努めてきております。また、昨年7月には 「食の安全・安心シンポジウム」を開催したところであります。  こうした中、消費者、事業者、行政など、多くの関係の方々が一堂に会され、このよ うに意見交換する機会を持てましたことは、まことに意義深いものがあります。本日 は、食品安全衛生の取り組みや健康食品についての基調講演、パネルディスカッショ ン、意見交換が行われますが、皆様方には、この機会に食の安全・安心に関する理解を さらに深めていただきますようお願い申し上げます。  終わりになりますが、このたびの開催に多大なご尽力をいただきました内閣府食品安 全委員会、厚生労働省、農林水産省をはじめ関係の皆様方に深く感謝を申し上げますと ともに、本日ご出席の皆様方のますますのご健勝、ご活躍、ご多幸を心からお祈り申し 上げまして、開会のあいさつといたします。  どうもきょうはありがとうございました。(拍手) ○司会  ありがとうございました。  続きまして、食品安全委員会寺田委員長より「食品の安全確保のための体制と取組に ついて」ご講演いただきます。寺田先生、よろしくお願いいたします。 3 基調講演           食品の安全確保のための体制と取組について                    食品安全委員会委員長   寺田 雅昭 氏  食品安全委員会の寺田でございます。  きょうは、この会議にこんなにたくさん来てくださいまして心より感謝いたします。  去年の12月半ばごろに、食品安全委員会から委員の1人がこちらに来て、意見交換 会という形でBSEのことを中心にお話をしたと思います。きょうは、その部分もお話 ししますが、副知事さんが説明なさいましたように、おととしの7月1日に施行されま した「食品安全基本法」をもとにして私どもの委員会ができた、その全体の取り組みに 関してを中心にお話をしたいと思います。それから、次の田中先生の健康食品につなが るような話を終わりのほうでさせていただきたいと思います  〔プロジェクター使用〕                     ☆  いろいろなアンケートでも、世の中で自分の健康が一番大事だと思っているのは当た り前の話で、それから家族の健康、老後の生活設計とか、社会的な地位だとかいろいろ ありますが、私も含めましてみんな圧倒的に関心を持っているのは健康だということは 言うまでもないことであります。                     ☆  それで、空気と同じように非常に大事な健康のもとは「食品」であります。ただいま 大永副知事がおっしゃいましたように、安全性への関心が、国民の皆さんに随分と持た れるようになってまいりました。  その原因の1つは、ここに書いてありますように、食中毒や食品の汚染、それから大 量生産ができるようになりまして、つくっている人の顔が見えないということです。隣 の村のおじいさんがつくったとかいうのではなく、どこかから何かが来て、食べて「お いしい」とか「おいしくない」とか、もっと言うと何となしに食べるという非常に大事 な側面が、大量生産がいけないというわけではなくて、こういう大量生産の時代になっ ていると。それから、グローバル化で輸入食品が大変多くなっています。「きょう食べ ているエビはどこから来たんだ」ということ。それから、技術の開発が進んで、今まで 聞いたことのないような組み換え食品があります。これにはいろんな考え方があるでし ょうが、こういう組み換え食品に関してお話ししますと、遺伝子を食べるなんて、そん な恐ろしいことはできないという方もたくさんいらっしゃいます。普通のダイコンにも 遺伝子はあるし、みんなありますが、その新技術というか、組み換え食品とか新しい言 葉が出てくると、当然ですが、それに対する抵抗感があります。  それから、これは非常にいいことですが、高齢化社会になって健康への関心が高まっ てきました。必ずしもすべてが正しいことではないのですが、情報化社会でいろんな情 報が乱れ飛んで、いろんなところから入ってきてすべて混ざって、食品安全に対する関 心が高まっているのだろうと思います。                     ☆  これは、どこでも言われることですが、自給率が50%ぐらいだったのが、憂慮すべ きことに平成11年で減っております。ほかの国は自給率はもともと多いのですが、黄 色がグリーンよりもどんどん増えているわけです。もちろんアメリカなんてこのぐらい にぽーんといってしまいますが、日本の自給率は非常に悪くなっています。  したがいまして、隣の顔が見えないとか、つくった人の顔が見えないとか、そういう 何とはなしに不安感があるのだろうと思います。                     ☆  これは、2001年にBSEの問題が出たときに、その後、BSE問題に関する調査 検討委員会ができまして、国の食品の安全に対する行政の問題点をいろいろとレポート を書かれました。その中のポイントは、当時の危機意識の欠如、生産者優先、消費者保 護が軽視されている。政策決定が不透明な行政機構がある。縦割り行政で2つの省に環 境省も入ってきますが、連携不足だということ。それから、政策決定に専門家の意見を 適切に反映しない行政をやっている。それから、透明性の問題もありますし、一方消費 者の方々の理解不足もあるということが問題点として指摘されました。  こういうことを少しでもいい方向に持っていこうと、「食品安全基本法」が2003 年7月から施行されました。その中で、私どもの食品安全委員会が、今までの管理官庁 である農林水産省、厚生労働省から独立した形で内閣府の中にできたということであり ます。                     ☆  当然のことですが、消費者の健康保護を最優先に、消費者の保護が一番基本的な考え 方になっております。                     ☆  その場合に、リスク分析という考え方を取り入れようということです。これも、イギ リスやヨーロッパでBSEの問題が出て、結構大きな行政上の変化もありましたが、そ の考えの根本になっているのはリスク分析という考え方を取り入れようということで す。  リスクというのは、起きる確率と被害の程度と影響の程度と、両方の言葉です。1年 半ほど食品安全委員会やっておりまして、片仮名でなく何かいい日本語はないかなと、 いろんな人に聞いたりしますと、ある人は「やばさ加減」だとか言うんだけど、あまり にも使いにくいので、やはり「リスク」という言葉を使っています。  リスク分析というと、何となく物事を分析していくことのようですが、必ずしもそう ではなく、2つの大きなところがあって、リスクアセスメント、どれほど危険性がある かということを科学的に評価するところと、リスクマネジメント、リスクを管理する。 本当は政策決定などいろんな世論をもとにして決めていく。リスクマネジメントはもの すごい大きい力を持っているわけですが、それにリスクの評価を反映するような形で、 その機関とは別個の機関をつくろうというのが一つのみそなのです。  例えば、農林水産省や厚生労働省は、もちろん生産者や消費者、あるいは貿易上の問 題も考えて政策決定をするわけですが、その決定に当たって、科学的な評価の結果を反 映してもらおうということです。リスクアセスメントのほうは決定するわけではありま せん。マネジメントのほうは、やはり大きな力を持っていてそこでやると。  結局、政策決定するところは行政ですが、そのもとになっていますのは国会であり、 国民全体の総意としてマネジメントが動いていくということになります。  リスクコミュニケーションは、リスク分析の一番大事なところであって、なかなかこ れは難しいのです。私もやっていまして、本当にこれが効果があるのかというようなこ とはありますが、例えばこのリスクコミュニケーションがどういう評価の仕方をしたの かは、科学的なデータからですが、この科学的なデータというのは怪しげなところもあ るということで、すべてをテーブルの上にのせて、国民からはそれに対して「いや、そ れはおかしい」と。「反対だ」と主観的に話し合うという考え方ではなく、「こういう 考え方もあるんではないか」「そういうことを言っている意味合いがよくわからない」 というリスクアセスメントの場合のリスクコミュニケーションは双方向にありますし、 リスクマネジメントのほうは、こういう政策決定をやっていこうと思うけれども、国民 の皆さんはどういう感じを持つかなど、いろんな意見をリスクコミュニケーションの場 で集約していくことになります。                     ☆  リスク分析の導入では、未然に事故が起きないように先取りしていくということと、 「科学」と「行政」の分離。科学といいましても、物理とか数学みたいにきちっとわか っているものではないのです。ほとんどの場合が世界的なスタンダードからいって、国 際的に見てこれがいいだろうと。それはこういう証拠ですよというものを評価として出 すわけです。その結果、科学と行政の政策決定や規制のやり方などを分離する。評価の 場合も、政策決定を透明化する。消費者への正確な情報提供。これは必ずしもリスクコ ミュニケーションではなくて、リスクコミュニケーションの一部は正確な情報を提供す るということです。                     ☆  お手元にある資料は後から読んで見てくださったらいいのですが、悪影響を及ぼすも のとして細菌やダイオキシンの科学的物質あるいは物理的なもの。変な話、何かのかけ らが入っているだとか、そういうことも含めまして、そういうことに関するアセスメン トをやっていくと。ここはいつもの話ですが、私どもの食品安全委員会は科学的な評価 をするところであって、全く独立して、透明性と中立を柱にして物事を進めているわけ です。                     ☆  例えば、添加物や農薬などの評価の依頼が来た場合に、ほとんどの場合は人間に食べ させるわけにいけませんし、もちろん人間の大事故があったりして、疫学的なデータが あったらいいのですが、大部分は動物実験の結果です。動物実験の結果、当然ですが、 曝露量例えば食べさせる量をどんどん増やしていくと、悪い影響は増えていきます。例 えば、あまり悪いものをたくさん食べると死んでしまいますが、ある量のところでは全 然影響がありません。大体ラットやマウスなど小動物を使いますが、そこを「最大無作 用量」と言います。  それから、この「ADI」というのは、一般的に最大無作用量の100分の1をとり ます。これは、動物と人間は違いますから、安全をとって10分の1を掛けて、それか ら人と人との間で個人差があるということで、そのまた10分の1掛けると100分の 1を掛けることになります。例えば1グラムで何も影響がなかったとしますと、ADI というのはその100分の1だということです。これを、例えば厚生労働省、農林水産 省に返しますと、これをもとに基準値を決めて、規制や規約をいろいろ決めていくこと になります。  だから、実際にはこのADIよりもまだ低い量で使用を許可するというスキームでや っています。例えば、科学物質の安全量の評価に関しては、こういうことがデータのも とになっております。                     ☆  先ほどの図は農薬や添加物でしたが、後からも出てきますが、健康食品でも何でも食 品というのはすべて食べ物だけではありません。「これはいいものだ」と言っても、あ る量以上になると悪くなるので、量と効果というのは必ず両方考えないといけません。 当たり前の話ですが、アスピリンでも頭の痛いのがぱっと治る。しかし飲み過ぎたら悪 いのと同じようなことで、量と効果、副作用は常に考えなければいけません。それは健 康食品の場合などもそうであろうと思います。  今、リスクマネジメントと言いましたが、管理のほうです。私どもが科学的に評価を した結果を検討して、実際に政策に持っていくところがリスクマネジメントです。その ときにはいろいろなリスクの程度やコストと利益、それを技術的に実現できるのかと か、先ほど言いました安全基準の決定、モニタリングが実際にずっと守られているのか どうかを、食品安全の実際の行政をやらなければいけません。昔からずっとやっていた わけですが、大変大きな力を持っております。ここがマネジメントのところでありま す。                     ☆  リスクコミュニケーションも先ほど言いましたが、ここにいろんなことをずっと書い て、私どものところは委員会を毎週木曜日にやっておりますが、すべて公開し、申し込 んでいただければだれでも傍聴可能でやっておりますし、議事録はすべて公開。それか ら、その下に私どものところにいろんな知恵を出してくださいます専門調査会、例えば 今話題のBSEといいますと「プリオン専門調査会」、添加物の専門調査会というのも あります。それぞれの専門調査会も原則全部公開ですが、知的財産権がある場合だけは 非公開でやっておりますが、その際も議事録に関しては、知的財産権に関係のないとこ ろはできるだけ早く公開しております。親委員会の私どもの委員会はすべて公開してい ます。  それから、意見交換会とか、できるだけいろんな方に、仕組みやBSE問題など関心 のある問題をご理解願おうと思ってやっておりますし、いろんなことをやっています。                     ☆  これまでのことをまとめて申し上げますと、食品安全委員会がありまして、先ほど言 いました評価をするところや、リスクコミュニケーションの実施と言っていますが、私 どもは評価に対するリスクコミュニケーションをやるのであって、政策決定や管理は厚 生労働省あるいは農林水産省が、それぞれリスクコミュニケーションをやられるわけで す。  全体として、関係者の皆さんと一緒にリスクコミュニケーションするということもや っています。例えばきょうなどは、厚生労働省、農林水産省、私どものところが一緒に なってやります。  私どもは、自分らの評価に対するリスクコミュニケーションと、一緒にやるときのリ スクコミュニケーションの調整役をやっております。それから、緊急時の対応として、 実際に緊急時ノロウイルスが出たとか、E型の肝炎ウイルスになったという場合は、や はり厚生労働省が医師会、保健所、県の衛生部、厚生労働省というルートで、がちっと 組んで守ってもらわないといけないので、私どもは、その外側にいて、コーディネーシ ョンや、万が一にも見逃しているところがないかという意味での緊急時対応をしており ます。                     ☆  ここに書いてある食品安全委員会の組織は、添加物や農薬など、それぞれの物質に対 する評価に対して、1つの専門調査会が大体15人ぐらいの人数であります。それか ら、1〜3の専門調査会は、物の評価に対することとは違いまして、例えば企画専門調 査会は、消費者団体の方、公募で応募してくださった方、マスメディアの方などが企画 専門調査会に入って、委員会の全体の活動をいろいろ評価したり、ウォッチしていると いうことです。  リスクコミュニケーションの専門調査会も、一般消費者の方や生産者の方などいろん な方が入って、リスクコミュニケーションをどのようにやったらいいかとか、本当に効 果的なのかどうかとか、そういうようないろんなアドバイスをしています。緊急時対応 に関しましても、実際には何をやったらいいのかというマニュアルづくりを今やってい ます。                     ☆  これを支えてくださっているのが事務局です。このような部門からなっておりまし て、いろんな省庁から来ておられます。本来から言うと親の省庁からではなく、天から ぽっと降ってくるほうが本当はいいのかもしれませんが、逆に言うと、組織が新しいせ いか、農林水産省や厚生労働省、あるいは文部科学省の方が来られている間は本省(自 分のもとのところ)のことをあまり考えずに、食品安全委員会のために一生懸命頑張っ てくれています。                     ☆  今までのことをまとめますと、1年8カ月〜9カ月の間に管理部門からの要請が36 8件ありまして、138のお答えを出しました。ものによりますが、1つの諮問事項に 対して、専門調査会で大体2回ぐらいやり、済んだ後、親委員会で討議して、それを今 度パブリックコメントということで、1カ月間いろんな方にそれに対するコメントをい ただいて、それをまた親委員会に返し、私どものところから厚生労働大臣や農林水産大 臣にお返事を返すという仕組みになっています。                     ☆  これは、専門調査会の回数で、例えば農薬なら今まで24回、会を開いているという ことであります。                     ☆  過去1年半、新しい委員会でいろんな規程をつくってまいりましたが、まだこれから も仕事をやりながらつくっていかなければいけません。この食品安全委員会の新しい仕 組みはまだまだ世の中の認知度が低いので、何とかこれをいろんなところに行ってご理 解を願おうと思っております。決定権や政策決定はあくまでも管理省庁がやることで、 私どもは科学的な評価をして、それを行政の面で反映していただくという立場です。                     ☆  例えば、遺伝子組換え食品の安全性評価につきましても、まず安全性評価の基準をま ずつくって、それに則って、個別品目の安全性を評価してまいります。この安全性の評 価の基準をつくるときに、消費者の方と専門調査会の先生方と会をやりまして、こうい う基準でこうだと、反対の方もいっぱいいらっしゃいますし、そういう方と「ここのと ころはこういうふうに変えたほうがわかりやすい」「いや、それでも反対だ」というこ とをやって、その後こういう基準をつくって、パブリックヒアリングで外に出して、そ れに対してコメントや基準をつくり、それをもとにいろんな遺伝子組換えの安全性の評 価をやっております。                     ☆  昨年、鳥インフルエンザが山口と、数は少なかったですが九州であった後、京都であ りました。そのときに、委員会として「人の健康に関してはこういう理由で安全です よ。ああいうふうに殺しているのは鳥に次から次にうつらないためで、動物が死ぬのを テレビで見ますと恐ろしいことに違いないと思うわけですが、そうではありませんよ」 ということを国民の皆さんにああいう形で出しました。自分らで言うのはおかしいです が、これで、かなり安心していただいたということを聞きます。私のうちは神戸で、近 くに焼き鳥屋がありまして、そのころ帰って、僕がこういう仕事をやっていることを教 えずに、「どうですか」と言ったら、「いや、あれが出たおかげでお客さんが戻ってき ました」と言ってくださって、大変うれしかった思いがあります。                     ☆  それから、今いろいろ問題になっていますBSE、ここで去年聞かれた話だと思いま すが、BSEの場合は、リスク評価は私どものところでやっています。それを政策ベー スで管理するのは、先ほど言いました厚生労働省、農林水産省で、この評価に基づいて 政策決定をしていくということであります。                     ☆  私どものところでは、この食品安全委員会ができる1つのきっかけになったのがBS Eの問題ですから、諮問も何も来なかったのですが、とにかく日本国内のBSE対策を 検討しようということで、おととしの8月、委員会が発足して1カ月後には専門調査会 を立ち上げて検討を始めました。  ところが、非常に運が悪いことに、12月23、24日にアメリカでBSEの問題が 出ました。私どものところがBSE問題をやっているのは、日米の貿易のためにやって るのでずっとやっていた続きですが、今となっては、日本国内用にBSE対策をどうや るかということは貿易の窓をあける際にまた諮問が来ると思いますが、そのときの内容 に随分影響はあるとは思っております。しかし、もともとそういう話で言ったのではな く、日本国内の今の対策はどうかとずっと見ますと、日本では昨年9月初めに中間取り まとめが出ました。そのとき日本では11頭だったのですが、現在14頭で、最近1頭 また死亡牛が出ましたので15頭です。世界23カ国ではイギリスが18万頭という、 これは本当にイギリスの牛の病気なのです。ヨーロッパ、アイルランドが千何百頭、フ ランスは900という数があるわけです。                     ☆  その危険な部位というのは、煮ても焼いてもどうしようもないような「プリオン」で す。細菌やウイルスだったら熱でやられてしまうのですが、BSEのプリオンはたんぱ く質で、その形が変わるだけですから、不活性化するには焼いてしまうか、あるいは1 33度で30分で3気圧という、とてつもない普通の家で使うような状態では不活性化 がなかなかできないという、やっかいなものです。これは、主に脳と脊髄にあります。 場合によって食べたものが腸を通って回腸から吸収されていくので、ここにもあります し、扁桃にもわずか残っているということです。                     ☆  その部分を除くと、ほとんどの場合は人に対しての危険性はなくなるのですが、た だ、どの量までなくしたら大丈夫かということがわからないのです。そこのところは不 活性化できないのと、もし人になった場合には大変悲惨な病気です。神経の病気はみん な悲惨ですが、ほとんどの場合はみんな治りにくくて悲惨です。  バリアントフォーム、非典型的な、クロイツフェルト・ヤコブ病も同じでありまし て、今のところかかると治療法がないということで、確かに恐ろしい病気ですが、確率 としては非常に少ないということはよく覚えてください。vCJDというのは、英国で BSEもものすごく多かったわけで、18万頭いて153人、フランスが9人、イタリ ア1人、アイルランド2人、カナダ1人、米国1人、日本が最近ありましてこの1人 と。*印がついていますのは、英国に滞在歴があって、証拠がないようですので多分で すが、これは潜伏期間が10年とか20年とか非常に長いですから、どれで感染したか ということをつきとめることはなかなか難しいという問題がありますが、こういう状態 であります。                     ☆  これは数字ですから、ちょっとした計算で随分変わりますが、大まかなところはこん なものだという話としてお聞きください。イギリスを例にとると、イギリスで検査し、 実際にわかったのは18万頭ですが、多分100万頭ぐらいいただろうと言われており ます。人によると、最盛期には300万頭ぐらいいたのだろうと。  日本の場合は、専門調査会の先生方が計算されると、大体5頭〜35頭ぐらいは検査 やSRMという危険な部位を除かない状態でいたんだろうと。それから計算しますと、 vCJDは156人と言っていますが、最大多く見積もって5,000人ぐらいイギリ スで発症する可能性があります。イギリスの方はそんなことは絶対にないとイギリス人 が書いた論文がありますが、できるだけ危険である可能性を多めに考えて計算すると、 大体0.1〜0.9人ぐらい。これは毎年の話ではなくて、今後日本の中でずっと発生 する可能性があると。今まで、BSE対策、危険部位も取り除かないし、テストもしな いし、飼料の規制もしないという状態でこうでしたので、これもソフトな数字ですが、 10分の1〜100分の1ぐらい低いだろうと。  それで、いろんな危険なことを、Aという危険とBという危険はなかなか比較できま せんが、参考までに、「バリアント」は変形と言いますが、典型的なクロイツフェルト ・ヤコブ病です。これはどこの国でも、日本でも大体人口100万人当たり毎年1人出 ます。だから、日本の場合はこの牛とは全然関係のないクロイツフェルト・ヤコブ病 は、年間100人ぐらい発生しております。  それに比べると、規制をきちっとやっていけば、数としては本当に少ないことは少な いのです。ただ、どれだけの量があったら発生するのか、動物実験ではある程度わかり ますが、人間との関係はよくわからないので、そういうことは悩ましいところでありま す。                     ☆  いろんなことをずっと見ていきますと、今まで発生してテストで見つかってきたの が、一番若いのは21〜23カ月で、20カ月以下は、350万頭検査した中では4万 頭ぐらいですが、今までの検査の方法では見つからなかったということです。もちろん 検査法がよくなっていくと見つかることはあるかもしれません。                     ☆  簡単に横に比べることはできませんが、一番大事なのは異常プリオンがたまっている ところを除いてしまうと残った肉は安全であるということです。しかし、真っ黒に異常 プリオンが蓄積しているものは、除く際に周りの肉を汚染する場合があるので、検査で ひっかかるような牛はとにかく全部焼却してしまうことが正しいと思います。しかし、 検査で見つからなかったからといって、異常プリオンがないという証拠ではありませ ん。残念ながら、今の検査の感度は、例えばC型肝炎の人で、お医者さんで血をとって 「大丈夫ですよ」というような感度のいいものではないわけです。だから、ネガティブ だと言っても、ひょっとしたら異常プリオンがちょっとあるかもしれない、検査でひっ かからないだけかもしれないという状態であります。やはり大事なのは、検査でネガテ ィブであって、ひっかからなくても、危険部位をきちっととるということが大事です。                     ☆  今の話で言いますと、こういうふうにSRMという異常プリオンがたまっている脳が こういうような状態で真っ赤になっている。これを除くだけではなくて牛全体を焼却し てしまうわけですから、これは人の口には入ってきません。それから、異常プリオンが 全然なくても、念のためにここをちゃんと除いてあるし、これはないわけですから、消 費にいくわけです。  しかし、先ほど言いましたように、検査してもひっかからないだけの非常に少ない量 の異常プリオンがあった場合には、「これは大丈夫だ」ということで、やはり消費に回 るわけです。だから、ここでマイナスであってもSRMはやはりきちっととっておいた ほうがいいという理屈になるわけです。  今までやった経験などから言うと、ある年齢以下のものはやってもなかなか見つから ないだろうということを中間報告として出しました。                     ☆  日本の場合は、検査は今までは年齢とは関係なくすべてやっております。EUは30 カ月以上、フランスとイタリア、ドイツが24カ月、EUの中でそれぞれの国の立場で やっていましたが、最近になってフランスは30カ月に年齢を上げました。ほかのヨー ロッパの国は全部30カ月以上です。アメリカは、今のところは30カ月以上を検査し て、しかも検査は2万頭ということです。これは、考え方がちょっと違っておりまし て、抽出してどれぐらい感染牛が自分の国にいるんだという立場でやっているという 「サーベイランス」という立場だと思います。  ヨーロッパや日本の場合は、人の口に入るのにできるだけその異常プリオンが入るチ ャンスを少なくしようという立場でやっているわけで、立場がちょっと違います。それ から、アメリカの場合は3,500万頭毎年殺すわけです。日本は120〜130万頭 で、そういう意味ではスケールが全然違うわけですが、ずっとお話ししてきましたのは 日本の国内の対策についてのお話ですし、これからまた米国との貿易をどのようにする かは、厚生労働省と農林水産省は「こういう形で貿易の窓をあけようと思うがいかがな ものか」という諮問がくるだろうと思っております。そのときはきちっと評価をするこ とになると思います。                     ☆  今、アメリカとは全然関係なく国内から諮問が来ていますのは、国内としては、SR Mをもっときちっととるようにしなさいとか、飼料規制をちゃんと実行する担保をやり ますと。一番大きなところは、ゼロ歳から全部やっていたのを21カ月から上のものだ けやると。ヨーロッパは24カ月あるいは30カ月ですから、そちらに近づいたような 状態で、「こういうのでいかがか」ということで、10月15日に諮問が来て、今6回 目か7回目の専門調査会で答申をすべく、いろいろ議論をしているところです。                     ☆  食品安全委員会とはちょっと外れる話ですが、これはがんです。脳血管や循環器も増 えているようですが、がんが圧倒的に増えているということと、何だかんだ言っても、 感染症は戦後随分と減ってきております。大体3人に1人ががんで亡くなっています。  これは、トータルの話であって、年をとった方がどうしてもがんになる確率は高いわ けです。1つには、高齢化社会になり、そういうがんになりやすい人口が増えてきてい るということの裏返しでもあるのです。ですから、年齢で割るとそんなに増えていない のです。年齢別にがんの発生率、死亡率というのは増えておりません。かえって減って いるがんなども随分あります。                     ☆  がんというのは、どちらかというと、長生きの先進国あたりの病気であって、全体の 国の発達状態によって、生活の中でどういうリスクがあるかといいますと、低開発国に おきましては、当然栄養失調や低体重、不健全な性生活、これはエイズなどが多くなっ てきますが、非衛生な状態。こういう状態から中国、インドはこの真ん中です。低開発 だと言いながら、急速に経済的に発達している国は、やはりこの中間でコレステロール の問題、アルコール、それから一番こういうことをしゃべるのはいやなんですが、肥満 です。肥満が大きなリスクの発端になっていると。なかなかおもしろいことに、この前 の図で見ましたように、日本は急速に、先進国タイプへいっているわけではなく、この (低死亡数発展途上国)タイプからこっち(先進国タイプ)へ戦後移ったということで あると思います。                     ☆  これはこまごましたことですが、同じようにたばこを吸ってもがんにならない人とな る人の個人差があります。そういうことが遺伝子レベルでわからないかを、国を挙げ て、あるいは世界的にもいろんなところでやっているのです。  そういうことができてきますと、生命保険に入るときに「あなたはなりやすいからプ レミアムを上げる」とかという話がアメリカでもありまして、クリントン大統領のとき に、「それは差別になるからそれを使ってはいけない」という法律か命令が出て使われ ていないのですが、将来的には個人情報の保護と絡み合わせまして、第二の問題に将来 的にだけではなく、すぐになるような問題です。                     ☆  遺伝子は持って生まれた体質ということになりますが、がんも糖尿病も、生活習慣 病、心臓疾患の病気も、実は環境の問題のほうがずっと大きいのです。例えば胃がんの 例では、日本に住んでいる日本人より、2世、ブラジルへ移民した方、ブラジルにずっ といる方は少ないわけです。要するに、同じ体質を持った民族は、場所が変わると、そ この土地で住んでいる人と同じような傾向になってくる。前立腺がんなどはもっと激し くて、日本には非常に少ないのです。ところが、2世になりますと、もうブラジル人と ほとんど変わらない。これはハワイに移民した方もそういうことになりますし、乳がん もそうです。ですから、逆に乳がんになりやすい遺伝子、あるいは前立腺がんになりや すいような遺伝子が将来わかってくるとしますと、これは冗談ですが、日本に来て前立 腺がんにならないようにしようと、新しい観光立国になるのではないかと。要するに、 環境的な因子というのは非常に大きいということです。                     ☆  随分前になりますが、1978年に私ががんセンターにいたときに、そのときの総長 や研究所長がつくったもので当たり前のことが書いてあるのです。バランスのとれた栄 養や毎日変化のある食生活をとか、ずっと書いてあるのですが、最近厚生労働省は「生 活習慣病予防のための食生活(1996年)」。大体がんにいいようなものにプラスカ ルシウムを十分とるとか、これは糖尿病の話だと思いますが、甘いものはほどほどに。 がんにできるだけならないような食生活あるいは生活の態度というのは、ほかの病気に も当てはまります。アメリカのNIHで同じようなものを出したら、アメリカは立派な ものだと。それよりずっと前の78年に日本は出しているのです。こういうのは「何 だ、こんなことは当たり前の話じゃないか」と言ってそんなに話題にならないのです が、実際の今の私どもの生活を脅かしている病気に対しては有効だろうと思っておりま す。                     ☆  今、アメリカはたばこの問題は済んだので、肥満を防ごうということで、『News week』などにも出ているわけです。                     ☆  アメリカでは、この肥満の問題はたばこの次に、国のプライオリティとして防ごうと しています。ああいうお国柄ですから、今やり始めています。幸いなことに、日本は非 常にいいのです。ちょっと増えていますが、アメリカなどに比べたら肥満の方が圧倒的 に少ないです。                     ☆  今まで言った肥満も含めまして、いろいろな物を食べたらいけない、こうしたらいけ ないという問題とは別個に、次の田中先生がお話しされるような、健康食品だとか、ポ ジティブな方向で物事でいい物がないかと。薬と食品の間を田中先生はお話しなさって くださると思いますが、例えば保健機能食品を、日本の中できちっとした形でやってい こうということがあります。                     ☆  その場合の審査といたしまして、私どもはあくまでも安全性であって、効果に関して はわかりません。安全性に関しての評価はして、それを厚生労働省に返しますが、以前 は最初の有効性評価がなかったのです。受付をして厚生労働省から直接私どもが安全性 の評価をして、また厚生労働省へ返して、ここで有効性と安全性の私どもの評価と合わ せて、承認、不承認で返したわけです。  僕らは、健康食品の安全性を評価する場合にもどこが有効か迷ってきたので、安全性 に関しては先に有効性を一度評価してから私どもに回してほしいと言っていましたら、 今度新しく2月からこういうスキームに変わってまいりました。                     ☆  最後ですが、「安全・安心」ということはいっぱいあります。  安全というのは客観的なものであって、安心というのは主観的なもので、安全プラス 信頼というのは安心なのかと。文部科学省が学者の先生にいろいろ会をやってつくった 結果がこのようになっております。  日本語の「安全」はアメリカの「セーフティ」というちゃんとした言葉があるわけで す。「安心」という一つのワードは外国にはないのです。「フィール・セーフ(安心と 感じる)」とか、一つの言葉がないのです。外国の方とそういう話をすると、結局日本 人が言う「安心」というのは、どちらかというと「信頼」ということになるんだろう と。ですから、「安心・安全」と言うときに、「安心」のほうは、例えば私どもの食品 安全委員会がやっていることに関してできるだけ多くの方に信頼感を持っていただくと いうことが一番大事ではないかと思っている次第です。                     ☆  これは宣伝です。こういうふうにやっておりまして、土日はだめですが、「食の安全 ダイヤル」は必ず受け付けますので、ご意見、ご質問がありましたら、何でもお知らせ ください。あるいは訪ねてくださったら大変ありがたいと思います。  以上でございます。 ○司会  ありがとうございました。  続きまして、独立行政法人国立健康・栄養研究所 田中先生より「健康食品の賢い選 び方」についてお話しいただきます。               「健康食品」の賢い選び方           独立行政法人国立健康・栄養研究所理事長   田中 平三 氏  皆さん、こんにちは。  今から一番眠いときにこういうお話をするのは恐縮でございますが、40分間お耳を 拝借したいと思います。  〔プロジェクター使用〕                     ☆  「健康食品」の賢い選び方ということで、先ほどからいろいろお話がありましたよう に、この図の左側に医薬品がありまして、右側に通常の食品、両者の間にあるのが健康 食品です。このようにきれいに線が引いてありますが、実はそんなにきれいに線を引け るものではありません。わかりやすい言い方をしますと、だれも区別できないというの が結論です。それは、医学、薬学、あるいは栄養学の立場からもそうですし、法律的な 解釈の仕方もあるからです。三者の区別ということについて、あまり神経をとがらさな いほうがいいと思います。  「薬事法」という法律によると医薬品の定義が書いてあります。病気の診断、治療、 予防に使用する。そして、構造(臓器、組織、細胞)、機能、例えば血圧に影響を及ぼ すものが医薬品であると定義されています。  健康食品については、法律上の規定、定義は明確でありません。通常の食品よりも健 康によいと称して売られている食品だということです。しかし、通常の食品は健康にい いのは明らかですね。私たちが生きていき、健康を維持し、あるいは赤ちゃんが成長し ていくのに必要であるから食べているわけです。私たちの祖先は、恐らくそこらに生え ている草や木の実をとったり、あるいは雷に打たれて死んだ鹿や牛を食べてきた。ある いは、海でとれた魚や貝を食べてきました。そういったものが、歴史的に通常の食品と してあるわけです。これは、当然健康によいわけです。生きていくために必要なもので す。  医薬品というのは、例えば抗生物質とか、あるいは副腎皮質ホルモンといったものは よくわかるわけです。例えば、「ビタミンA」は皆さんご存じだと思いますが、通常の 食品に含まれています。土用の丑にうなぎを食べたらいいとかいわれています。あるい は鳥や豚や牛の肝臓(レバー)に多く含まれています。これらは普通の食品です。  ところが、がんの手術などをしてまだ口から物をとれないときには、点滴という形で エネルギーやビタミンその他をとるわけです。そのときは、ビタミンAは薬です。ま た、錠剤やドリンク剤として売っているビタミンAも薬です。ところが、同じ包装であ っても、ビタミンは健康食品で売ってもいいことになっています。後でお話しします 「栄養機能食品」と言われるものです。ですから、同じビタミンを考えても、この3つ は明確に区別することはできません。ですから、医薬品と健康食品と通常の食品を区別 したいと思わないでください。                     ☆  もう一つ、医薬品と健康食品とを効果の差で見てみますと、こういうことです。  医薬品というのは、比較的短期間内で効果が出現します。健康食品は比較的長期間経 過してから穏やかな効果が出現してくる。そういう差があるということが1つのポイン トです。  私が生まれ育った大阪では、「ぼちぼちでんな」と言いますが、それがいわば健康食 品です。国立健康栄養研究所の理事長たるものが「ぼちぼちでんなが健康食品だ」と言 ったら「もうあの人の話は信用できへん」と思われるかもしれませんが、そういうこと なのです。  一番注意していただきたいのは、誇大広告にだまされないようにということです。こ れが、きょう私が一番言いたいことです。つまり、がんが治った、脳卒中で左半身や右 半身が麻痺している人が突然歩き出したとか、あるいはIQ(知能指数)が上昇したと か、そういう誇大広告にだまされないでください。こういうことは体験談から出てきて います。確かに、○○健康食品をとった人が、がんがよくなったという体験談がありま す。ひょっとしたら、何かいい抗がん剤を同時に飲んでおられて、そちらのほうの効果 が出てきたのかもしれません。仮に○○健康食品をとっていて、一人の方に効果があっ たとしますと、それは新聞やテレビにはばっと出るのです。しかし、同じように健康食 品をとっておられて、あと999人に効果がなかったとしても、それは表に出てこない のです。そういうことがありますので、健康食品を選ぶときの一番のポイントは、体験 談に基づく誇大広告にだまされないでくださいということです。裏返したら、もしがん が治る、脳卒中の麻痺が治る、頭(IQ)がよくなる、知能指数がよくなるというもの が仮にあったとしたら、それは医薬品です。食品ではあり得ないということを覚えてお いていただいたらと思います。                     ☆  健康食品の現状というのは、そういう期待させる作用に科学的な根拠がないことが多 いようです。科学的根拠とは何かということを、後で少しお話しします。  試験管内の実験で、あるいは動物実験のデータをそのまま人に当てはめている。試験 管内で効果が認められたとか、あるいは動物で効果が認められたというのをすぐ人に当 てはめている話がありますが、それはだめです。やはり人の研究結果が必要であるとい うことです。先ほども言いましたように、体験談のみを利用しているのも困ります。原 材料のイメージのみを前面に出していることもあります。それから、もっとおもしろい のは、価格と効果が一致しない。高いものほどよく売れるらしいです。例えば、原料が 10円で、100円で売っても売れないそうです。1万円とするとよく売れるそうで す。これも健康食品の現状です。  後からも触れますが、もう1つは品質に問題があります。例えば、アトピー性皮膚炎 などによくきく健康食品だということで売られているのを調べてみると、副腎皮質ホル モンが入っているということもあるようです。こういったことが、現在における健康食 品の問題点です。                     ☆  では、健康食品の成分にはどういうものがあるか。ちょっと難しいかもしれません が、医薬品の場合は「有効成分」といいますが、健康食品は「関与成分」という言い方 をしております。「関係しているかもしれないような成分」ということです。当然、ビ タミンやミネラルなどの栄養素があります。「常成分」とありますが、栄養素というの は動植物に普通に含まれている成分であるということです。同じように含まれているの ですが、栄養素でないものがあります。例えば「難消化性の炭水化物」、平たい言い方 をしますと食物繊維です。それから、食物中に含まれている化学物質、これは、皆さん 方聞かれたことがあるかと思いますが、例えばフラボノイドとか、イソフラボンといっ たようなものです。それから、生薬から由来してきて、その植物独特の「特殊成分」が あります。これは、ハーブ類や生薬から、食品として売ってもよろしいと言われたもの があります。それから、「多種成分」といって、栄養素や非栄養成分がいろいろ含まれ ているようなものがあります。プロポリスとかスピルリナとかいったようなものです。 それから「発酵微生物」、ヨーグルト類です。そういった物が健康食品の成分と言われ ております。                     ☆  そこで、この健康食品の有効性の科学的根拠についてお話ししてみたいと思います。                     ☆  どういうことか。科学的根拠のうちで最も信頼性の高い研究デザインあるいは研究方 法を「介入研究」といいます。「比較的血圧の高い人」という言い方をしております。 「高血圧」という言葉は食品には使いません。なぜかというと、これは病気の名前だか らです。先ほど言いましたように、薬事法では、病気の診断、治療、予防に使うもので あるといいますから、病気の名前を食品に使うことができないということです。それ で、血圧の高い目の人といいます。血圧の高い目の人と高血圧とどう違うのかもなかな か難しいですが、血圧が高めの人を無作為に、健康食品をとる人と、色と形のよく似た にせの食品―英語では「プラシボ」「プラセボ」と言っていますが―をとる人に分けま す。  ここで今「無作為」と言いましたが、サイコロをころがして偶数が出たら健康食品、 奇数が出たら偽物の食品をとってもらうというようなやり方をするのです。何でそんな ことをするかというと、研究者が、例えば医者がこっちの効果を見たいと思ったら、効 きそうな人に健康食品をとるようにしてもらったら困るわけです。健康食品をしっかり 食べてくれるような人、あるいは血圧が高いめの中でも、より高い人のほうがよく下が りますから、より高い目の人の健康食品を摂ってもらったら、困るわけです。こちらと こちらのグループが男性と女性の割合も同じでないといけないですね。女性ばかりかた よっていたら困ります。あるいは、高齢者がかたよっていても困るので、年齢も同じで ないといけません。血圧も、両方同じでないといけないのです。そのために、サイコロ で偶数が出たらこちら、奇数が出たらこちらということで、意思が入らないようにする わけです。  このように無作為に2つのグループに分けますと、その健康食品を食べるか食べない か以外はすべて同じ条件になりますので、この健康食品の効果がはっきりするというの です。こういう研究でないと、科学的な根拠があるとは言えません。これは、人間を対 象としてやっていないといけません。これを頭に入れておいてほしいと思います。そし て、大体8〜12週間ぐらい後に、両方のグループで血圧の平均値を出して、統計学的 に有意に健康食品を摂っている人の血圧が低くなったということになれば、1つの科学 的根拠になるわけです。  難しいかもしれませんが、皆さん方がこういう研究で物を言っているかどうかが非常 に重要であるということを覚えておいていただきたいと思います。  私が昔医学部で教授をしていたときには、この話を「疫学」という講義で1時間余り かけて説明しておりますので、きょう皆さん方に数分で話して「難しかったな」と、そ れで十分です。あまり気にしないでください。こういう研究をしているかどうかが、健 康食品を選ぶポイントになるということです。                     ☆  健康食品の有効性というのはいろんな研究が蓄積されてきますと、このようにいろい ろ段階分けをしております。                     ☆  次は、安全性の問題です。  先ほどお話をしましたように、もともと動物性食品や植物性食品から出てきたもので すので、成分自身にはそれほど大きい悪影響をもたらすものはありませんが、あり得る ことです。抽出したりエキスにしたりしていきますと濃厚ですから、多量摂取による健 康障害が起こってくるかもしれません。その他、健康食品の場合にはいろんなことを考 えていかなくてはなりません。  左側は人間側の要因です。1つは利用方法です。非常に長い間とっているというこ と、あるいは一度に大量にとっているということ。例えば、ダイエットにいいというも のを、「1日1錠か2錠お飲みください」と書いてあるのに、「えいっ、早くやせたい んだ」と言って、ボトル1本分をとってしまうというのがあるそうです。そういうこと は食べる人の側に問題点があります。  もう1つは、体質的なものがあります。先ほど言ったような科学的根拠に関する実験 は、大体若い人を対象にしてやっております。20歳前後の学生さんに、バイトで「こ の実験に参加してくれたら1日3万円出す」というような話をすればみんな飛んできて くれます。若い男性でやっていることが多いわけですから、お年寄りや赤ちゃん、妊婦 さん、アレルギー体質の方には健康障害が起こってくる可能性があります。  食品自身は大丈夫ですが、製品の品質の問題があります。製造過程で不純物や変な有 害物質が入ってきたりすることがあります。故意に医薬品を混ぜたりしていることもあ ります。  それから、これはなかなか難しいのですが、医薬品や他の食品成分との相互作用もあ ります。健康食品だけでなく、医薬品を飲んでいて、ほかの健康食品も飲んでいます と、健康障害が起こってくることがあります。  先ほどから、いろいろ不確かな体験談的な情報もお話ししましたが、そういったこと が積み重なって健康食品による健康障害が起こってくるので複雑です。医薬品の場合は 原則として単一成分で、しかもそれは毒性や安全性の試験が詳しくやられていますし、 それに加えて医師が処方し、あるいは薬剤師が管理している医薬品を売る特別な場所、 つまり薬店、薬局で売るという形ですのでいいわけですが、健康食品はどこでもだれで も手に入るということで、専門的な監視者がいないということも重要な健康障害の発生 につながることです。                     ☆  このスライドには、いろいろ示してありますが、例えば高麗人参エキスを飲んでこう いう障害が起こってきたという話があります。もし皆さん方が、何か健康食品をとって おられてこういう症状が出てきたら、こういうものが犯人であるかもしれないといった ことを、参考までに見ていただきたいと思います。                     ☆  先ほども言いましたように、こういう医薬品を混ぜているものがあり、こういう成分 があるということです。最近では、こういったニガウリの何とかといったようなもので も健康障害が起こってきたという事例があったようです。それで調査してみますと、医 薬品が検出されたというわけです。何かあればこれを参考にしていただきたいと思いま す。                     ☆  健康食品の安全性についても、一般的にはこういうランク分けがしてあります。                     ☆  この健康食品の中から、厚生労働省が安全性と有効性を確認したものを「保健機能食 品」と名前をつけております。  1つが「特定保健用食品」です。これには、通常「バンザイマーク」と言われている ものがついています。これにつきましては、有効性と安全性が確認されているというこ とですから、このマークがついていたら、そこに書いてあることは信用がおけると考え ていただいていいのではないかと思います。これについては後で詳しくお話しします が、このマークを知らない方は、どうぞ覚えておいてください。そして「厚生労働省許 可もしくは承認」「特定保健用食品」と書いてあります。  もう1つ「栄養機能食品」というものがあります。それぞれについてお話ししていき ます。                     ☆  特定保健用食品が創設されてきた背景というのは、やはり健康への関心が高く、生活 習慣病にできるだけなりたくないという願望が人々にあるわけです。先ほど寺田先生の お話にありましたように、特に、この生活習慣病は高齢者に多いわけですから、そうい う時代の流れがあります。もう1つは食品中の特に非栄養素成分あるいは先ほどのヨー グルトみたいなものの研究が、日本を中心にすごく発達してきました。そういったとこ ろから、保健作用を有する、健康の維持増進に関与する食品を活用する時代になってき たわけです。そういう情報が正しいかどうかを踏まえた上で、対応策として特定保健用 食品が出てきたのです。  食品の選択における不正確あるいは非科学的な情報の混乱防止のため、国が科学的根 拠に基づく情報提供を積極的に行う必要が出てきました。健康食品がいっぱい出てきた ので、その中で安全性と有効性を確立されたものを「特定保健用食品」として出してき たということです。                     ☆  どういうものがあるかというと、「おなかの調子を整える食品」、わかりやすい言い 方をしたら「便秘によい」ということです。でも「便秘」という言葉が食品に使えない からこういう言い方をするのです。「血圧が高めの方」「コレステロールが高めの方」 「血糖値が気になる方」、高血圧や高コレステロール血症、あるいは高脂血症とか糖尿 病という言葉は使えないのでこうなっているのです。「ミネラルの吸収を助ける食品」 「食後の血中の中性脂肪を抑える食品」「虫歯の原因になりにくい食品」といったもの が、先ほどの「バンザイマーク」がつけられて「特定保健用食品」とされています。こ れは、商品1つ1つについて、安全性と有効性を厳密に審査した上で許可されているも のです。  安全性は、寺田先生の食品安全委員会がやられております。有効性については厚生労 働省の薬事・食品衛生審議会が審査することになっています。                     ☆  1カ月ほど前から、その特定保健用食品に「条件付き」というものが出てまいりまし た。先ほどのバンザイマークの中に「条件付き」と書いてあります。これは従来からの 特定保健用食品よりも科学的根拠のレベルが少し低いもの、しかしながら一定の有効性 が確認されたもの、わかりやすい言い方をしますと、従来の特定保健用食品はぼちぼち 効果があったのですが、今度は「ぼちぼち、ぼちぼち」ぐらい効果があったレベルであ る。ちょっとレベルが低いと解釈していただいていいのではないかと思います。そうい ったものがもうじき出てくる可能性があります。とにかくいっぱい健康食品があります から、その中で比較的科学的根拠と安全性が確立されたものを特定保健用食品といいま す。ちょっと科学的根拠は弱いけれども、他の有象無象の健康食品よりは有効性がある だろうということを確認されたものを「条件付き」という名前をつけてあります。                     ☆  これもこの1月終わりに通知が出されたのですが、「規格基準型の特定保健用食品」 があります。これは、特定保健用食品の許可件数が多い食品、例えば食物繊維などがそ うで、便秘にいいとか、コレステロールや血糖にいいといったような表示をしているも のがたくさん出てきております。特定保健用食品としての食経験も豊富で、科学的根拠 が十分蓄積されてきているものについては、もう個別に有効性の評価をしないで特定保 健用食品としてよいということになります。それについては、使用法とか表示というこ とは確かめられますし、その商品自身の安全性についての試験は要求されます。難消化 性デキストリンという広い意味での食物繊維がまず最初に規格基準型になるだろうと思 われます。相当国民の皆さん方にとられてきた特定保健用食品でもあるということで す。  消費者側から見れば、原則的には従来からの特定保健用食品と変わりないと考えても らったらいいと思います。                     ☆  もう1つは、「疾病リスク低減表示」が認められる特定保健用食品が2つ出てまいり ました。ここでの「リスク」とは何かというのは、先ほどの寺田先生の説明ともよく似 ていますが、この場合ではある病気に罹患する確率、またはその病気で死ぬ確率です。 この確率を下げるものであります。  ビタミンの中で「葉酸」というものがあります。初めて聞かれた方もあるかと思いま すが、「神経管閉鎖障害」という一種の奇形の問題があります。妊娠されて18日ぐら いから26日ぐらいの間に脳と脊髄が入る袋みたいなものが形成されてきます。それが 背中のほうで閉じるわけですが、閉じないと重篤な奇形を起こす病気であります。しか し、妊娠された方は、自分の妊娠18日から26日っていつだとはっきりわからないと 思います。多分産科の先生でもわからないと思います。そのころになるわけです。そう いった人が葉酸をよくとっていると、こういう奇形になる確率が低くなることがほぼ確 立されてきました。そういったことで、葉酸の場合には「神経管閉鎖障害のリスクを低 くするかもしれません」という表現が認められました。  もう1つは、カルシウムと骨粗鬆症です。これはもう皆さん方ご存じですね。特に、 閉経期の女性が、骨などがすきすきになって骨折しやすいというもので、寝たきりの原 因にもなっています。重要なのは、若いときにカルシウムを十分とれば更年期ごろの予 防につながるという話でありますから、若い女性にカルシウムをとりなさいということ です。なぜこれをトピックス的にとっているかといいますと、一番最初に、食品には病 気の名前を使うことができないと言いましたが、この「神経管閉鎖障害」と「骨粗鬆症 」という2つの病名を食品に使っていいということになったわけです。そういう意味で は画期的な話です。この2つのみ病気の名前を食品に使っていいということになったわ けです。                     ☆  保健機能食品の中で、もう1つ「栄養機能食品」というのがあります。  先ほど医薬品、健康食品、通常の食品の区別でお話ししましたように、ここに書いて あるビタミン12種類とミネラル5種類については、現在食品として売ってもよくなっ てきました。これは、一定量以上、一定量以下入っているかの規制はありますが、それ を守ればよろしいということになっております。  特に、ダイエットをしている女性や高齢者や独居者などで栄養素補給の必要のある 人、いわば隠れた栄養失調みたいな人がおられます。私が子どものころの昭和20年代 は多くの栄養失調がいたのですが、今の飽食時代でも、隠れた栄養失調のために、こう いうビタミンとミネラルの入ったものが栄養機能食品として認められております。これ は、医薬品として売っても、栄養機能食品として売ってもいいわけです。一定量以上入 っており、過剰摂取を防ぐ上限量が守られておればよろしいというものです。                     ☆  例えば、ビタミンAですと、その栄養素の機能表示が認められています。「ビタミン Aは夜間の視力の維持を助ける栄養素です」という表現です。「わかりにくいな」と思 われるかもしれませんが、端的に言いますと、皆さん「夜盲症」という言葉を知ってお られますね。多分小学校の理科の教科書にも出てくると思います。ビタミンAの欠乏症 は夜盲症ですが、病名が使えないからこういう表現をしています。この背景には、「暗 順応」の障害を予防するという意味なのです。どういうことかというと、今皆さん方が トイレのために外へ出られて戻ってこられたら、しばらくの間は、隣の人の顔はわかり ませんが、慣れてきますと見えるようになってきますね。これを「暗順応」と言ってお ります。暗順応や夜盲症という名前ではなくて、こういう表現を使っています。これが 健康食品のつらいところでもあるのです。「夜間の視力の維持を助ける」、夏、富山城 の公園に変なおっさんがうろうろして、そういう人が何かを見るのに役に立つような感 じがしないでもないですね。そういう意味ではないのです。「ビタミンAは皮膚や粘膜 の健康維持を助ける栄養素です」というビタミンAの栄養素機能に関する表示も認めら れています。  次に、「注意喚起表示」があります。「本品は多量摂取により疾病が治癒したり、よ り健康が増進するものではありません。1日の摂取目安量を守ってください。妊娠3カ 月以内あるいは妊娠を希望する女性は過剰摂取に注意してください」。一定の規格基準 に合っておれば、こういう表示を認めて、自由に栄養機能食品として売っていいわけで す。                     ☆  ところが、こういう問題が1つ出てきました。ある商品にビタミン・ミネラルは入っ ているのですが、表示が○○エキスになっている。もしそれをつくっておられる業者が おれば悪いですが、例えば、皆さん「大豆イソフラボン」を聞いたことがありますね。 これは骨粗鬆症にいいと言われています。そこへビタミンDやカルシウムを入れておい て、名前を「栄養機能食品」と出すと、本当に売りたいのはイソフラボンなんだけど、 カルシウムやビタミンDなどを入れておいて、栄養機能食品という表示をしたら、あた かもイソフラボンが栄養機能食品として認められているようになります。この規則で言 うと、カルシウムやビタミンDであれば栄養機能食品でいいという趣旨を、悪用してい るのでしょうね。そういうものがあるから要注意ということで、新たにこういうことは 認められなくなってきました。これも新しい制度の一つの進歩した点であると思ってお ります。                     ☆  そのほか「特別用途食品」といって、病人の方の食品や高齢者あるいは赤ちゃんの粉 ミルクなどがあります。これを特別用途食品と言い、こんなマークがついています。先 ほど言いましたように、保健機能食品には特定保健用食品と栄養機能食品があり、特定 保健用食品にはこういうバンザイマークがつけてあります。科学的根拠のレベルの少し 低いものは、条件付きという“たすき”をつけて売られるようになります。  もう1つ、日本健康・栄養食品協会が、手の上に心臓を乗せたようなマークをつけて います。これは「JHFAマーク」で、新聞の広告などでもよく載っております。ここ の協会の理事長先生の写真まで新聞に載っておりますが、これは効果を保証したもので はありません。「バンザイマーク」は効果と安全性を保証したものですが、「JHFA マーク」はそういう効果を保証したものではありません。品質の保証です。関与成分の 量が、一定の規格に守られているというものであるということです。そういったもの が、健康食品として信頼のおけるものであるということであります。                     ☆  これは、私の国立健康・栄養研究所のホームページです。例えば、ヤフーから「国立 健康・栄養研究所」と入れて検索しましたら、私どものホームページが出てまいりま す。皆さん方のプリントにはこのアドレスがうまく出ているかどうかわかりませんが、 見ていただきたいと思います。                     ☆  この「健康食品の安全性と有効性の情報」をクリックしていただきますと、こういう ページになっておりまして、いろいろ健康食品の情報があります。健康食品の有効性や 安全性のデータベースもあります。それから、話題になっているもの、特に今言いまし た特定保健用食品、ビタミン・ミネラル、栄養機能食品、安全性の被害情報について、 あるいはどのように利用したらいいかということも見られます。これは、多くの専門家 が集まって消費者側に立ってつくったものであります。                     ☆  これが健康食品の情報ネットワークです。食品等に関係した健康障害から一般消費者 を守るために、食品・栄養の専門職業人、大体管理栄養士、薬剤師、後でちょっと触れ ますNRが、お互いに協力して必要な情報の収集・把握・蓄積を行い、情報を共有して 活動しやすくするためのシステムです。科学的根拠に基づいた有効性に関する情報を提 供します。一般消費者に対して適切な助言や指導を行い、健全な食生活の推進が図れる 体制を整えていくということです。                     ☆  一般の人が入ることもできます。NR,薬剤師や管理栄養士を中心とした専門職業人 も入ることができます。そして、消費者の人は、我々のようなプロジェクトチーム、健 康食品の研究者チームや専門職業人とやりとりしていったらいいだろうということで す。  ある健康食品を食べている人のうち、何かおかしいことが1例富山に起こったという ことは、多分埋もれてしまうと思います。ところが、同じような人が北海道でも、東京 でも、大阪でも起こってきたということで、3〜4例集まってますと、この健康食品は やばいということがわかります。そういうことを全国に流していこうというシステムで す。そういった健康食品による健康被害を未然に防ごうという話であります。                     ☆  もう1つ、私どもは健康食品の専門職業人で「NR」を認定しております。  それは、栄養情報担当者という名前で、Nutritional Representativeということで難 しいですが、医薬品の情報を提供する人を通常「MR(Medical Representative)」と いいますが、これをもじって、「N」を「M」にかえたのです。そういったことで、栄 養情報を担当しております。  通常の食品の専門職業人には栄養士さん、医薬品の専門職業人には薬剤師がおられま す。両者の真ん中に入るのが健康食品と申しましたが、その健康食品の専門職業人に、 できたら管理栄養士や薬剤師の方に入っていただきたいということであります。まだ1 期生が400人しか出ておりませんが、ことしはさらに1,000人ぐらい出てくると 思います。  国立健康・栄養研究所がいろんな研修機関を指定して、そこで管理栄養士や薬剤師の 方が一定の研修を終えたときに、研究所の実施する認定試験を受けることができるよう にしているわけです。  富山医科薬科大学あるいは金沢大学で医学の教育を受けてきて、厚生労働省が国家試 験をします。研修あるいは教育機関と認定者を分離しておかないと、質的担保が保てま せん。自分のところで研修して自分のところが試験をすれば、日本の常として99%ぐ らい合格させてしまうわけです。それではだめなので、このシステムは研修するところ と認定するところを分けたというところが1つの大きい特色になっています。                     ☆  そういった人にこれから健康食品のアドバイザーになっていただこうということで す。                     ☆  そこで、これは少し古いのですが、去年のちょうど今ごろに朝日新聞に「キーワード の周辺、サプリメント」という記事が出ておりました。  大阪府堺市の会社員島田賢一さんは、約1年前からサプリメントにはまっている。 「頭がすっきりする」と感じるDHA入り錠剤と、「内臓にいい」と思う黒酢カプセル が愛用品で、朝食のときに胃潰瘍などの原因になるピロリ菌を抑えるとされる 「LG21乳酸菌」入りのヨーグルトドリンクを流し込む、こういうことですね。  薬局の店頭に並ぶサプリメントの効能書きを読んでいると1時間はあっという間に過 ぎる。毎月6,000円は使っている、と朝日新聞に出たのです。  どこかに「忙しい」と書いてなかったですかね。それなのに1時間もサプリメント屋 にいられる人ですが、不思議な方です。                     ☆  「職場はきつい3交代制。酒、たばこもやめられない。将来の成人病、生活習慣病が 心配になってきたところに、家族や知人のすすめもあって飲み始めた。食事は1日30 品目を心がけているが、酢の物や青魚を毎日とるのは難しい。もうサプリメントは欠か せません」という記事が載っています。                     ☆  「某国立研究所の理事長いわく」と書いてあります。これは実は私の名前が載ってい たのですが、「健康の維持・増進には、まず日常の食事が基本です。さらに運動、労 働、休養、睡眠、たばこ、酒なども関係します。これらを適切に営むことが第一です。 サプリメントだけで健康になるとは考えるべきではありません」と過度の依存を戒めて います。  したがいまして、厚生労働省が特定保健用食品や栄養機能食品を許可しているのは、 決して健康食品を奨励するものではありません。もしも、健康食品を選ぶならば、これ を選んでくださいという意味であることをご理解していただきたいと思います。  健康にとって、日常の食事、生活習慣が大切であるということをくれぐれもお忘れな くということで、私の話を終わります。ありがとうございました。(拍手) 4 パネルディスカッション・意見交換会 【コーディネーター】  厚生労働省食品安全部企画情報課課長補佐            広瀬  誠 【パネリスト】  食品安全委員会委員長                     寺田 雅昭  (独)国立健康・栄養研究所理事長               田中 平三  富山県消費者協会会長                     金井 澄子  協和薬品(株)取締役品質管理部長サプリメントアドバイザー    宮林 紀子  厚生労働大臣官房参事官                    松本 義幸  農林水産省消費・安全局消費者情報官補佐            中山 直子  富山県厚生部食品生活衛生課主幹                名越 雅高 ○広瀬補佐  それでは、時間となりましたので、パネルディスカッションに移らせていただきたい と思います。  まず初めに、パネリストをご紹介させていただきます。  有識者の代表といたしまして、先ほどご講演いただきました食品安全委員会の寺田委 員長でございます。  独立法人国立健康・栄養研究所の田中理事長でございます。  消費者の代表ということでご参加いただいております富山県消費者協会会長の金井澄 子様でございます。  事業者代表ということでご参加いただいております協和薬品株式会社取締役品質管理 部長のサプリメントアドバイザー宮林紀子様でございます。  行政の代表ということで、厚生労働省大臣官房参事官松本義幸でございます。  農林水産省消費・安全局消費者情報官補佐中山直子でございます。  それから、ご当地の取り組みということで、富山県厚生部食品生活衛生課主幹の名越 雅高様でございます。  これからパネルディスカッションに入っていきますが、まず、富山県における食の安 全の取り組みということで、名越主幹から少しお話をいただきたいと思います。 ○名越主幹  富山県食品生活衛生課名越と申します。よろしくお願いいたします。  私のほうからは、近年の食品安全行政を振り返りながら富山県の取り組みについて簡 単にご説明申し上げたいと思っております。  先ほどおっしゃいましたように、消費者の食の安全に関する不信というものは大変高 まっております。その原因といいますのは雪印食品、それから平成13年に起きました BSEの対応でなかったかと思います。この2つの事件を通して業者あるいは行政に対 して消費者の不信が高まってきたと思います。食の安全、病気になるんじゃないかとい うような消費者の不安感から、業者は時々うそをつく、信用できないということで、業 者に対する不信感がそれぞれ増幅し、現在の大勢になってきたというふうに考えており ます。  ただ、平成13年10月18日から行われましたBSEの全頭検査につきましては、 1カ月の間に全国に検査体制をしいたということで、今から考えても大変うまくいった と。いろいろと擬陽性が出てすったもんだいたしましたが、当時の関係者は大変努力な さったと考えております。その後、国民の食肉への信頼感は裏切られるということで消 費者の懸念はますます増幅したということが言えるかと思います。  その中で、このようなリスクコミュニケーションの意味は大変重要なものがあると考 えております。その後、いろいろ食をめぐる事件が連続して発生いたしまして、食の安 全をめぐる問題は国家的対応を迫られるということになってきたわけでございます。  国の対応については、先ほど述べられましたので、当富山県における対応についてご 説明をいたしたいと思っております。  平成14年4月に、県は農林水産部食料政策課に新たに食品安全係を設置いたしまし た。そして農林水産部、厚生部兼務の食品安全担当参事が任命され、組織機構の改編が 行われたということでございます。富山県における食品安全元年であったと考えており ます。それとともに食品安全担当参事をチーフとして、食品関係担当係長をメンバーに 庁内横断型組織として食品安全対策チームが結成されました。そして、生産から消費に 至る各段階での連携が図られる体制が整ったということでございます。  その後、平成15年7月には、食の安全性の確保に関する事項について協議するた め、副知事を本部長とし、学識経験者、生産者、食品等事業者、消費者、庁内関係部長 を構成員とする富山県食品安全推進本部を設置いたしております。また、平成16年度 からは各自治体は改正食品衛生法に基づき、地域の食品衛生上の問題発生状況を分析評 価し、その実績を踏まえて食品衛生監視指導計画を策定し、当該計画に基づき監視指導 を実施することとされております。富山県でも今年度から計画に基づいて監視指導を行 っているところでございます。  また、お手元に平成16年度の「食の安全・安心施策」A3版1枚ものがございま す。ここに富山県の食の安全・安心施策を網羅しております。試験研究の推進まで7つ に分けて富山県の食品安全施策を書いてございます。また後で見ていただきたいと思い ます。  そのほか、県のホームページに「食の安全・安心情報コーナー」を設けまして、県民 への正しい食の安全情報を提供するとともに、「食品安全出前講座」の開設や、富山県 では保健所のことを厚生センターと言っておりますが、厚生センター単位での「食品安 全フォーラム」、それから「食の安全を語るつどい」を開催するなど、関係者とのリス クコミュニケーションに努めているところでございます。今後とも、県民の方々への情 報提供、そしてご意見を県の施策に反映させるよう努めてまいりたいと考えております ので、どうかよろしくお願いいたします。 ○広瀬補佐  ありがとうございました。  それでは、パネルディスカッションに入っていきたいと思います。  まず、パネルディスカッションはテーマごとにコーディネーターのほうで進行してい きますので、よろしくお願いいたします。  また、お話の過程の中で会場の皆様にもご発言いただく機会を設けたいと考えており ます。  まずはパネラーを中心に進めていきたいと思います。  テーマですけれども、本日お配りしている資料の中の資料3ですが、これは本日の意 見交換会に参加いただくに当たって、参加申し込みの様式のところに事前に意見や質問 を記入していただいたものを事務局として整理させていただいたものでございます。全 部で8個意見が来ておりますが、時間の関係もありますので、このうちの幾つかを取り 上げて議論をしていきたいと思います。  まず、1と2について議論をしたいと思います。回答については事務局のほうで用意 させていただいたものを右側に記載しておりますが、時間も限られていますので、読み 上げは省略させていただきます。  1番目は「健康食品と医薬品との違い」というお話でしたが、先ほども田中理事長の ご説明の中にありましたけれども、法律的には線が引かれていますが、実際はなかなか 分けにくいのが現状だということでございます。詳細については回答欄をお読みいただ ければと思います。ことらをお読みになって、当初の質問の趣旨とちょっと違うとか、 追加の意見等あれば、後ほどお伺いしたいと思います。  2つ目は「食経験の定義について」ですけれども、乾燥、粉砕したものを加工したも のは「食経験」の範疇に入るのかということですが、もともと食べているものであって もエキス化したものや特定成分を抽出したようなものについては、当然摂取量が多くな りますので、食経験があるからといってそういったものが安全ではないという趣旨でご ざいます。  ものの安全性を考える上で、先ほど寺田委員長のほうから曝露量と生態影響というお 話をいただきましたが、有害性の観点と摂取量のあたりをもう少し復習の意味も兼ねて ご説明いただければと思います。 ○寺田委員長  先ほど申し上げましたように、これは何事でもそうですけれども、量が増えてきます と毒になるのは当たり前の話で、水でも1リットルを10回ほどわーっと飲むのと、の どがかわいたときだけ飲むのとでは違うわけですから、影響というのは必ず量を考えな ければだめだと。例えば健康食品の場合、ご質問がありますように、カプセルにしたと きに、どうも食品と医薬品との区別がぼやけたということが1つありますが、昔から人 が食べているいわゆる健康にいいというものは、そこの地域の料理法が非常に大事な場 合が多いような気がしています。例えばお湯でちゃんとあくを抜いてから食べたら毒で はないけれども、そのまま生で全部エキスにすると毒になる。だから、食べた経験があ るからだけではなくて、量の問題と料理法を考慮に入れないと、単純に食べた経験があ るから大丈夫だとはなかなか言えないと思います。 ○広瀬補佐  ふだんの生活ではこれが毒とか毒ではないという分け方に慣れておられるかと思いま すが、やはり物性だけで決まるものではなくて、摂取量によっても当然ある量を超えれ ば毒になったり、ある量以下であれば特に問題がなかったりすることはあると思いま す。  次のテーマとして、6番目に移らせていただきたいと思います。  健康食品がテレビやチラシで世間に氾濫しているのですが、どこにポイントを見極め ればいいのかというお話でございます。「健康食品の見極めのポイント」ということで 先ほど田中理事長からご説明いただきましたが、簡潔に幾つかポイントを絞って復習の 意味も兼ねてお願いしたいと思います。 ○田中理事長  医薬品と健康食品、健康食品と通常の食品の区別というのが非常に難しいということ はある意味ではポイントかもしれません。  まず、一番最初に申しましたように、がんが治ったとか脳卒中によるマヒが治って、 すたこらさっさと歩けるようになったとか、あるいは知能指数が上がったとか、そうい う誇大広告にだまされないというのが第一のポイントであるかと思います。  それから、病気の名前、診断、治療、予防という言葉は医薬品に使われる言葉であり ますので、そういったきわどい使い方をしているというのは注意しなければならないと 思います。病気の名前を書いてあったり、あるいは予防にいいとか、治療にいいとか書 いてあるということですね。  もう1つは、構造・機能に作用する。先ほども言いましたように臓器、組織、細胞な どが構造です。あるいは血圧、コレステロールも機能に入るかと思います。そういうこ とを許可なしに書いてあるのもあやしいということです。結局のところ、たくさんある 中で、安全性と有効性が確認されているものが特定保健用食品でして、これについては 血圧高めの方とか、おなかの調子をよくするとか、機能への表示が認められているわけ です。それから構造の表示も認められているわけです。特定保健用食品以外のもので、 そういう構造や機能への表示をしているものはあやしいということになるかと思いま す。  栄養機能性食品につきましては、ビタミンとミネラルであります。これらは主として 錠剤、カプセルであります。同じ会社が同じようにつくって、同じ包装であっても、医 薬品で売ることも栄養機能性食品として売ることもできるということです。要するに、 ポイントとしては、選ぶのなら特定保健用食品もしくは栄養機能食品を選んでください というのがまとめではないかと思います。 ○広瀬補佐  ありがとうございました。  それでは、事業者の方にもご参加いただいておりますので、健康食品等についての取 り組みについて、宮林様から少しお話いただければと思います。 ○宮林部長  健康食品の製造業をやっております協和薬品の宮林と申します。  今ほどの田中理事長のお話の後では非常に私ども分が悪い立場で、なかなか正直なこ とを申し上げるのは難しいのですけれども、ただ、健康食品の製造業者として日ごろ努 力していること、あるいは考えていることを少しこの場をかりてお話しさせていただけ たらと思っております。  食品安全委員会ができたときに、安全・安心ということでこのようなリスクコミュニ ケーションの場が全国的に催されたわけですが、私どもでは安全というのは製造者側の ISOであるとか、HACCPであるとか、あるいは今回ガイドラインが出ましたGM Pであるとか、そういうトレーサビリティシステムの確立、あるいは今ほどもお話があ りましたが、科学的根拠であるとか、安全性の確立というのが努力目標で、それに向か って何らかのワークをしていかなければならないと思っておりますし、また逆に、安心 はやはり消費者サイドに私ども事業者のほうから正しい情報を提供することによってき ちんとした知識や理解を得ることによって生まれるものではないかと考えております。  この機会に、先ほど来健康食品の問題ということでも出てきておりましたが、実は昨 日も今ブームになっております「コエンザイムQ10」という健康食品の中に医薬品が 含まれていたというニュースが大々的に報道されまして、私どもも取引先からいろんな 問い合わせが来たのですけれども、正直申し上げまして、医薬品が入っていた健康食品 というのは、先ほどの田中理事長のレジュメの中にもありますけれども、無承認・無許 可医薬品、すなわちにせ薬ということで、国内の健康食品の製造業者があえてそのよう な医薬品を添加するということは今日まずありません。ほとんどこのような違反事例と いうのは、海外から輸入したもの、インターネットで販売していたとか、あるいは海外 からの混合原料を使用して製品化したという場合に起こっております。ただし、やはり 原料を製品化したということは、事業者にもきちんとその原料の受け入れ検査をする責 任があったというわけですが、決して医薬品を混入して何らかの効果があるように見せ ようと思っている健康食品の製造業者はいないということだけはこの場で強調させてい ただきます。  その次ですけれども、先ほどもがんが治るとか、何かがよくなったという経験談は科 学的根拠でないというお話がありました。私どももきちんと私どもの製造する商品に関 して科学的根拠や安全性のデータをとりたいという形で努力はしているのですが、実は これがなかなか経費がかさむということで、特定保健用食品の中でもものによっては特 定保健用食品として市場に出すまでに数億円お金がかかるというようなことも言われて おります。私どもでも非常に簡単な臨床データをとったりはしておりますけれども、通 常、被検者1人当たり最低20万から100万円、ある程度の科学的根拠を出すために は20名から40名ぐらいの最低の人数が要るということで、なかなかこれの負担も大 変なものになっております。正直言えば、こういうことはもう少し産学官のネットワー クなどでできればいいかなと思っておりますけれども、健康食品というのは、多少市民 権を得てきたかなとは思いますが、まだまだ蚊帳の外でないですけれども、まま子の部 分があるというのも現状です。企業側としては、今いろんな形でGMPに適合するよう なハード・ソフトのシステムの構築のために努力したり、あるいは原材料の安全性を確 保するためにいろんな調査をしたり、日々一生懸命取り組んでいるのが現状だというこ とだけお話させていただきました。 ○広瀬補佐  多くの事業者の方がかなりまじめに取り組んでおられると思うのですけれども、その 中に混じってそうでないところが若干あったりすることもこの健康食品という問題を難 しくしているのかなという感じがしております。  それから、次のテーマとして8番目のものをご紹介させていただきたいのですが、 「にがり」についてのご質問、ご意見でございました。元来、豆腐の凝固剤ということ で表示されていたのですが、食品ということで販売されているケースがあるということ で、食品として認められるのかどうかということでございました。にがりについては、 もともとは豆腐の凝固剤ということで使用されてきたわけですが、近年、食の多様化の 中でにがりを食品として摂取することも実際として出てきたということがあります。た だ、豆腐に使われていたという食経験はあるわけですが、にがりを直接飲むというのが 本来一般的な食品の形ではなかったと思うので、摂取する量とかそういうものには気を つける必要があるのではないかということは考えております。  もともと食品衛生法の定義の中では「食品」とは「すべての飲食物」ということで定 義されていて、要するに飲んだり食べたりするものは食品であるという定義でございま す。除かれているのは「薬事法に規定する医薬品等を除く」ということなので、法律上 では「医薬品でないものはすべて食品」という定義になっておりまして、にがりなども 普通に飲んだりする分には食品の範疇に入ってしまうということだと思います。  ほかにも幾つかいただいた意見はありますが、すべてを紹介していますと、会場の方 からの意見を聞く時間もなくなってしまいますので、事前のものについては回答なども 見ていただきながら、足りないという部分があれば、また後ほどご発言いただければと 思います。  それから、本日のパネルディスカッションの中で消費者代表の方にも来ていただいて おりますので、金井様から今後の食の問題等について、こういうことはあるべきでない かとか、いろいろご主張があれば伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○金井会長  消費者協会の金井でございます。実は私、いい加減にお引き受けしたといったら語弊 がございますけれども、よくよく見れば、健康食品ときょうの出題に大変ふさわしくな い人間だったということに今ごろ気がつきまして大変後悔いたしております。皆様の前 で私が自分の歳を申し上げることははばかられるんですけれども、実は80歳を超える 今日まで、あまり病気もしませんし、健康食品などというものにあまり相当たらないで 過ごしてまいりました。それで、はてさてどういうふうに申し上げればいいのかなと思 ったんですが、このごろ新聞、雑誌、テレビ、あらゆるものを見ましても、健康食品や サプリメントの過大広告が山ほど出ておりまして、何を信用していいのか、お隣の協和 様に大変申しわけないようなことですけれども、私は自分が関係がないからそういうも のに対して特別に興味は持っておりません。ですけれども、実際は先ほど先生方から伺 いましたように朝、昼、晩の食事をきちんといただいて、そして今日まで健康に、その 間の食事というのは戦時中やらいろんなことを踏まえまして、いろんなものをいただい てまいりましたが、幸いこのように元気にしております。そういうことは別といたしま して、朝、昼、晩のきちんとした食事をいただいて今日あるので、そういうサプリメン トや健康食品にすがるというようなことは、病気のときにはお医者様に治していただく ような薬をちゃんといただきますから、それをまじめに守って治れば、この時代のよう にあまりにもそういうものに頼るということに全く疑念を感じております。それに対し てきょうは先生方のご教示を得たいなというふうに私は思っております。 ○広瀬補佐  ありがとうございました。  それでは、会場の皆様からも、1つは健康食品の問題について私はこう考えるとか、 こういう考え方もあるのではないかというようなことがあれば伺ってみたいと思いま す。どなたかご発言いただける方いらっしゃいますでしょうか。基礎的なことから難し いことまでどんなことでも結構ですので、少しご発言いただければと思います。  もし健康食品だけで出ないようであれば、食の安全全体の取り組みということでも結 構です。国の新たな取り組みということでいろいろリスク分析に基づいて安全対策がと られていますけれども、実際はこういう行政が始まった背景には、もともと国への信頼 とか事業者とかあって、そういう中で不安がいっぱいあったためにこういう仕組みがと られてきたということがあります。まだ、こういう仕組みの中で完全に皆さんが食品を 安全・安心であるというふうに思っていただけている状態まではいっていないのかなと 思います。 ○質問者A  富山県生協の組合員です。健康食品とかサプリメントのブームですけれども、金井さ んがおっしゃったように、3食きちんととっていれば、こういうものは要らないのでは ないかという考えはあるんですけれども、こういう風潮にどんどんなっていくことに対 して、国のほうから冷静に、人の健康はそういうものに頼らず正しい食生活をというよ うな発信をしていっていただきたいんですけれども、そういうところについてはどうい うお考えをお持ちですか。 ○広瀬補佐  今言われた質問は食育の取り組みのあたりが比較的近いものだと思いますが、松本参 事官、お願いします。 ○松本参事官  国としても現在の若者、あるいは年寄りを含めて食というものに対するとらえ方、今 の状況を決して見逃すことはできないと思っております。これは厚生労働省も農林水産 省もあるいは文部科学省も同じような認識を持っております。  皆様方のお手元に、「食生活指針」が入っております。これはまだ各省庁が一緒にな る前でありまして、文部省と厚生省と農林水産省の決定ということで「食事を楽しみま しょう」とか、「1日の生活のリズムから健やかな生活リズムを」など10項目ほど挙 げております。こういうものを地道に広めていくことが一つの方法であります。  もう1つは、食育をテーマに、それぞれの省庁で、文部科学省では教育現場、厚生労 働省で言えば保健所あるいは地元の食生活改善推進員の方々を通じた働きかけ、あるい は農林水産省は生産から消費にいたるところでの情報提供ということで、食についての 新たな取り組みというか、もっと基本に戻った取り組みを進めていくことにしていま す。また、国会議員の先生方も必要性を考えておられまして、食育基本法という、法律 をつくるよう国会議員の先生方が今取り組まれております。まだ日の目を見ておりませ んが、国を挙げて今の食生活を見直そうと取り組んでいます。ただ、具体的にこれとこ れをやりますというところまでまだ行っておりませんが、1にも2にもわかりやすい情 報を提供する。また消費者の方、国民の皆様にも、全部他人任せでなくて、もう少し食 のことを勉強していただきたいという思いが1つあります。  それと、今なぜ健康食品がはやるかというと、汗をかかずに楽して何かできないかと いうことであります.楽することはあまりいいことではないということでありまして、 そういうことも含めて国民の皆さん方にいろんな機会を通じて情報提供をしていこうと 考えています。  ですから、皆さん方にもう少し勉強していただきたいということと、国としていろい ろ情報提供しておりますけれども、言葉が難しいとかいうのがあると思います。そうい う時は遠慮なさらずにどんどん言っていただきたいと思います。  それと、皆さん方の中に「食の安全・安心トピックス」という紙が入っています。コ ンピューターをお使いになっていらっしゃらない方は、使っていらっしゃる方のところ をのぞいていただければいいと思いますが、登録していただきますと厚生労働省、農林 水産省、また食品安全委員会から毎日食の安全に関する情報が届くような仕組みにして おります。また、このサイトから、先ほど栄養研究所の田中理事長のお話がありました けれども、栄養研のホームページもリンクされておりまして非常に入りやすくなってお ります。そういうところの情報を見ていただきたいと思いますし、これを見てわからな い、言葉が難しいということであれば、すぐでも結構ですから、お電話でもファクスで もメールでも結構ですので、ご意見をお寄せいただければと思っております。そのよう に取り組んでいるということです。 ○広瀬補佐  農林水産省の中山補佐からもお願いいたします。 ○中山補佐  農林水産省でございます。今ほとんどの部分は松本参事官のほうからお話しいただい たようなことでございますけれども、お話の中にもありましたように、農林水産省とし ても食育という部分で食品に関して国民それぞれの方が考える力を持っていただくとい うようなことを基本にした取り組みを進めているところでございます。今、具体的に取 り組んでいることといたしましては、「フードガイド」、1日にどういう食品を摂取し たらいいかということが一目でわかるようなこと、諸外国ではいろいろやられているよ うですが、そういったものを日本でもつくっていけばどうかということで検討会などを やっているところでございます。そういったことも農林水産省のホームページなどでご らんいただくことができますので、また皆さん見ていただきまして、いろいろご意見を お寄せいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○広瀬補佐  国のほうでは食育基本法などがいろいろ審議中ということで、これから実際は取り組 みというのもだんだん活発化していくと思いますけれども、現在、富山県さんとして は、食育に関することで何か取り組まれているようなことがありますか。 ○名越主幹  食育については、県庁内でも関係する課が大変多うございます。片手で数えられない くらいのところが関係しておりまして、国のほうでも農林水産省、厚生労働省、文部科 学省などいろいろなところが出ております。実は、まだ緒についたところでございまし て、所管なりどのようにやっていくかということは富山県においてはこれからの課題だ と思います。きのうも食育に関する会議が富山市内で行われたようでございますが、文 句を言うわけではありませんが、私どものほうには案内がございませんでした。これか らだということであります。 ○広瀬補佐  消費者の立場からということで金井会長からも何かございますか。日ごろの食生活が 重要なんだというお話、どうでしょうか。 ○金井会長  私は、これだけ生きてきましたから、いろいろと言いたいことはたくさんございま す。大体があるときから非常に飽食の時代になって、グルメ、グルメとか、それには何 が関係しているのか、年代的にも差異はございますけれども、先日も農政局の会議でお 話しを伺いましたら、2,600カロリーベースですか、それが全国平均だそうです が、実際は1,900カロリーしかとっていない。5年後には1,900カロリーベー スに落とそうと思っているけれども、その差の700カロリーは全部廃棄物である、そ ういうことを伺ってきまして、私も唖然といたしました。それで、大体が食べすぎであ って、私もこのように太っておりますけれども、今からやせても間に合わないと思って いるんですけれども、今までの習慣的なものもありますし、それから今これだけ食料が 足りませんのに、本当に食品の1つ1つを、もちろん安全なものを自分の手に入れなけ ればなりませんが、それを手を一生懸命下して清潔に洗って、先日のエコ料理の話では ありませんが、たまねぎの薄い皮1枚だけを100人分とってもほんの少しにしかなり ませんし、ネギの根っこも全部きざんで蒸して、それを大事な全体のお料理の味にする んですね。それはその方独特のエコ料理だと思いますけれども、スーパーに行っても大 根の葉っぱ、ネギのシッポまでは一つも売っておりません。それからキャベツでも皮の 汚いところは全部取ってしまって販売されております。1枚1枚を考えてみますと、ひ げ1本でもやはり栄養がそこからエネルギーとして出ている大事なところだからという ご説明を聞いて、私もこの歳になって初めてはっと思ったような次第です。合成のだし とかそういったものを使わないで、シイタケとかニンジン、タマネギを千切りにしてそ れを重ねて塩をパラパラと振って蒸して、とろとろになったものを味噌汁の材料に使っ たり、ハンバーグの実にしたり、そういうことでいただいてみたら結構おいしかったの で、別にそれにはまったわけではございませんが、いろんな付加的な薬品がいろんな食 品についておりまして、それを長く摂取することはとてもいやだと思いますし、本当に 危険なんじゃないかなということを思いながら今日までまいりました。そういうことを ちょっとお話し申し上げました。 ○広瀬補佐  ありがとうございました。  また、会場の方からもご意見を伺いたいと思いますが、どなたかいかがですか。 ○質問者B  8番目の「にがり」について質問をしました新川厚生センターです。再度確認です が、にがりは今言われたように食品だと思うのですが、入浴剤に使ったり、使われ方が いろいろあるわけです。特にうちの管内には深層水施設があります。入善深層水や滑川 には滑川深層水があるわけですが、ミネラルはいろいろなものを含んでいるということ で、栄養成分表示をしなければならないということで、いろいろ食品をつくった場合 に、表示のご質問が保健所のほうに来るわけです。質問をする際に担当部局は違います が、いろいろ書いてくるわけです。特に健康食品をつくっている製造業者は、厚生セン ターでこう言ったから認められたんだというような確認をとるために、今までのような 表示の届け出制がなくなりましたので、その確認をとりにくる製造業者が多いと思って おります。  それと、健康食品の製造業者の方がおられましたが、研究費というか、その料金とい うのはかなり安いのではないかと私らは思っております。一般の医薬品とかそういうも のは何億も使われていると思うのですが、そのあたりはどうなのかなと思います。 ○広瀬補佐  にがりのところについては、一応そういう状況があるということでよろしいですか。 そういうこともあるんじゃないかというご発言だったかと思います。  あと、健康食品の開発の部分についてのご意見もありましたけれども、宮林様いかが でしょうか。 ○宮林部長  今、富山県内ではなかなか開発の部分でサポートしてくれる臨床システムがまだ構築 されておりませんので、基本的には県外、東京あるいは大阪等の臨床検査機関等に依頼 してやっております。安いか高いかという部分はそれぞれの判断によるかもしれません が、やはり本当に特保に持っていくのが、きょうの田中理事長のお話にもありました が、正しい健康食品の選び方の中で選ぶとすれば特保ということになれば、特保に向け て一事業者がワークするには、非常に大きなハードルがたくさんあるなとは思っており ます。 ○広瀬補佐  たしかに、無作為の比較試験とかをすると人手が対象になります。それも1人や2人 のデータでは話にならない。何十人ということでの比較になりますから、やはりそこそ この研究費はかかってしまうということだと思います。 ○質問者C  6番の質問をしたJA女性部の者です。私ども生産者でこのようなサプリメントがあ まりにもたくさん氾濫しておりますのでお聞きしたのですが、表示を見ていますといろ んなものが書いてございます。田中先生おっしゃいましたように、健康食品のバンザイ マークがありますが、そういう表示をつけることは不可能なのでしょうか。私たち消費 者が見て、そのマークがついていれば安心だな、飲んでみようか、食べてみようかとい うマークはつけられないものでしょうか。ヨーグルトとかそういう食品にはついており ますが、サプリメントにはそういうバンザイマークはつかないものでしょうか、お聞き したいと思います。 ○広瀬補佐  多分幾つか認めているカテゴリー以外のあまたの健康食品がある中で、バンザイマー クのつくようなものがないかというご趣旨だと思いますが、先生いかがでしょうか。 ○田中理事長  1つは、特定保健用食品にはバンザイマークはついている。それから、業者の方から 科学的根拠を積み重ねるのは非常にお金が高くつくということですから、もう少し緩や かなレベルのものというので条件付き特定保健用食品というのが出てきたわけです。そ れから、栄養機能食品いわゆるビタミン、ミネラルの今おっしゃっているサプリメント については、栄養機能食品として、括弧の中で主たるビタミンもしくはミネラルを書く ようになっています。例えば(ビタミンD)とか(カルシウム)とか、栄養機能食品という 文字が入っておりますから、それを参考にされたらいよいのではないかと思います。栄 養機能食品のマークはないのかというと、現時点ではございません。これは厚生労働省 の方にやる気ありやなしやということは私からも聞きたいと思っております。 ○広瀬補佐  参事官いかがでしょうか。 ○松本参事官  先月から、条件付特保ということで少し広げてきました。これまでは機能性食品とい うことでかなり厳しい条件を課していました。いわゆる健康食品は、有象無象といった ら失礼ですけれども、比較的まともなものから、いささかいかがわしいものまで混ざっ た玉石混交という状況だったのを、少し消費者の方が選びやすい、間違いのないように ということで、あまりハードルを高くしない形で条件付特保としてまず一段広げまし た。今理事長が言われた部分につきましては、もうちょっと様子を見て、より必要だと いうことであれば考える必要があるだろうと思いますし、状況としてはそういう状況で あります。決してやる気がないわけでなくて、様子を見ているというところでありま す。 ○広瀬補佐  ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。 ○質問者D  消費者協会に所属しております。田中先生に1つ質問させていただきたいと思いま す。サプリメントという言葉というかお話の中で、医薬品それから健康食品、そして一 般の食品、今度、健康食品の説明の後で保健機能食品というところが幾つかに分かれ、 そのときは健康食品は今度は一般食品の中に含まれるという図だったと思うのです。ご ちゃごちゃして私がわからないのは、サプリメントという範疇ですが、サプリメントも 食品であると思っているんですが、その概念でよろしいでしょうか。 ○田中理事長  大きく分けて医薬品、一番右側に通常の食品、真ん中に健康食品があります。法律的 には健康食品は食品なんです。その健康食品の中で厚生労働省が安全性と有効性とを認 めて、そして構造や機能に関する表示、例えばおなかの調子を整えるとか、コレステロ ールの高めの方に適しているというものを特定保健用食品としたわけです。  もう1つはビタミン、ミネラル、これは必ずしもカプセル、錠剤でなくてもかまいま せんが、一定の基準を満たしておれば、栄養機能食品と名乗ってよろしいと。ですか ら、健康食品の中に特定保健用食品と栄養機能食品とその他の健康食品があると、この ように考えていただいていいです。法律的には「いわゆる健康食品」は広い意味の食品 に扱っているということです。  サプリメントという言葉は、もともとはアメリカから出てきたのです。そのときにア メリカではダイエタリーサプリメントという「ダイエタリー」という形容詞がつくんで す。これをどう訳すかというのも論争のあるところですけれども、多くの場合は栄養補 助食品と訳しているようです。おもしろいことに、アメリカやヨーロッパもそうです が、健康食品というのは錠剤、カプセル状のものを指しているんですね。通常の食品の 形態のものはあまり区別して健康食品と言っていません。例えば日本ですと、先ほどの 説明で申し上げましたように、ヨーグルトは通常の食品ですよね。言い換えれば加工食 品ですかね。それも特定保健用食品にしているんです。中にはラーメンも特定保健用食 品にしているんです。皆さん方のお手元のボトルはどうか知りませんが、そういう水や お茶も当然通常の食品ですね。それも日本は特定保健用食品に含めているんですね。通 常多くの場合、アメリカやヨーロッパでは錠剤、カプセルのみを健康食品と言っている ようです。形態的には医薬品と変わりはないものというような感じで、それでサプリメ ントと言っているようです。日本の場合はかなり広くとっております。通常の形態のも のも入っている。そういう意味ではやや混乱するのかもしれません。 ○質問者D  もう1つよろしいでしょうか。今、若い人からお年寄りの人までこんがらがっている というのは、健康食品という言葉、健康食品であるからそれを1品でも食べれば健康に なるんだという感じを与えるんですね。ですから私は、そこのところが非常に危険で、 初めに先生が惑わされないようにということはおっしゃったんですが、健康食品という ネーミングにもともと問題があるんじゃないかと思っております。 ○田中理事長  おっしゃるとおりですね。もっと戻って言いますと、通常の食品こそ健康な食品です よね。それプラス健康の維持・増進を表示するようなものを慣習的に健康食品と言って いるわけです。だから、これは消費者に惑わして、名前自身が問題であるというのは厚 生労働省の専門家の会合でもしばしば出てまいります。ですからどういう言葉を使って ていったらいいのかということで、健康補助食品という言い方を使っておられる研究者 もあります。それから先ほど言いましたように、栄養補助食品という言葉を使っておら れることもあります。場合によってはここで募集して、いい名前を探し出すのも一つか もしれません。おっしゃるとおりです。健康食品というのはネーミングは惑わされるそ のものである。ご指摘のとおりだと思いますね。じゃ、どういう名前にしようかといっ たときには悩ましいところですね。  そして、もう1つ、今言いましたように英語がありますから、日本の国だけでいかな いこともあります。健康食品から保健機能食品が出てきたのは市場開放とか貿易問題に よることもあったんですね。だから、外国でダイエタリーサプリメントと言っているの をどう訳すか。食事補助食品、何かおかしいなともなりますし。ダイエット(diet)とい うのはもともと食事という意味から来ていますので、なかなかネーミングもご指摘のと おり難しいです。しかし今は一応総括的に健康食品というのが広がっているから、仕方 がないだろうなというのが本音かもしれませんね。おっしゃるとおりです。ありがとう ございました。 ○広瀬補佐  ありがとうございました。それでは、右の列の後ろの方。 ○質問者E  消費生活アドバイザーという立場で参加させていただきました。  健康食品ということとちょっと外れるかもしれませんが、きょうお伺いして私たちが 今一番気になっているのは表示が合っているかとか、それが生産されて実際にどういう 形で入っているかというのが一番不安で、食の点では問題でないかと思います。そうい うもののチェック体制といいますか、食肉なんかですと、それをコンピューターに入れ るとそれの履歴が全部わかるという新しい試みをされていると思いますが、それでも間 で本当にそのようにやっているのかという不安もあるわけです。  それと、先ほど雪印という話がありましたが、私なんかですと、雪印はああいうこと を絶対しない会社だというふうに思っていたのですが、ああいうことになったというこ とです。これはひとえにチェック体制がないからじゃないかと思うんです。ですから、 そういうチェック体制が、我々が安心してこういうふうにしていますよという体制に持 っていけるのかというのを一つお聞きしたいと思います。  それからもう1つ、先ほど食育という話がありましたが、食育というのはこういうふ うに皆さん食しなさいよ、そうするといいですよという教育だと思うのです。それにも う1つ加えて、チェック体制、今ここでお聞きして思いついたのですが、チェックする ときに、小学生、中学生、高校生、あるいは大学も含めていいと思いますが、そういう のを調べる体制に入れたらどうか。小学生だったら表示がどうなっているかをみんなで 調べるというぐらいもできると思いますし、中学生ぐらいになったら科学部とかになれ ば分析もできると思います。地方の大学でしたら、最近は地域に貢献すると言っており ますので、そういうのを組み込んでいただければ、そういうのもかなりできると思いま す。予算ということがきっと出てくると思いますので、そういうふうにしてもっとチェ ックをしたらどうかと思いますが、そのへんについてお聞きしたいと思います。 ○広瀬補佐  まず、都道府県での取り組みということで名越さんからも説明いただいて、あと農水 のほうでも表示ウォッチャーの取り組みがあるかと思いますので、ちょっとご説明いた だければと思います。 ○名越主幹  業者の表示なり製品に対するチェック体制ということでございますが、簡単に申しま したら、食品衛生管理指導計画に基づいて監視なり検査を行っているという一言でござ いますが、食品安全基本法あるいは食品衛生法に基づきましても、食品と事業者は自分 の食品について安全をチェックし確認しておく必要があるということでございます。何 も公務員ばかりが検査をして確認するということではございません。それは必要に応じ て行えばいいということで、私どももそれなりの事業所に行きますと、自分で検査をす るような体制をつくりなさい。それなりのものでないところには他へ委託して検査をす るようにということで指導しているわけでございます。徐々にではございますが、厚生 センターなりあるいは検査機関への依頼検査の件数も増えてきていると思われますし、 あるいは農業団体等の出荷前の自主検査というものもかなり進んできているというふう に理解しております。 ○中山補佐  農林水産省でございます。食品表示につきましては、今ご質問のあった内容につきま しては、私どもの資料で今回特にご説明はさせていただいておりませんが、「食の安全 ・安心の確保について」に私どもの取り組みをまとめてございますので、参考にごらん いただければと思います。  11ページをお開きください。農林水産局の消費・安全局というところでございます が、こちらで食品表示のほうもやっております。この資料に書いておりますように、表 示は消費者の方が食品を選ぶ上で非常に重要視されているものでございますので、そう いったものがご指摘のとおり適正に行われるようにいろいろ対策をしているわけでござ います。私どもの消費・安全局というのが、リスク管理をする部門と農林水産省は生産 を振興しなければいけない省庁でございますので、もちろん生産振興をやっているわけ ですが、そういったところをきちんと分けようということで、一昨年の7月に新しく組 織改編をしてできた部署でございます。そういった中で食品表示もそこの部署で消費者 の安全・安心のためということでやっているわけですけれども、JAS法を改正して違 反業者の公表の迅速化とか、あとは罰則を厳しくしたりということをやっていたり、ま た先ほど申し上げました組織改編の一環としまして、地方農政局地方農政事務所が全国 47都道府県すべてにございます。こちらの富山も富山農政事務所というのがございま すが、そういったところに食品表示の監視業務の職員を2,000名配置しまして、監 視とか指導の強化をしているところでございます。  それから下のほうにいろいろ実施事例を書いてございますけれども、表示が欠落して いるものの調査であるとか、珍しいところではウナギの原料、原産地表示、中国産であ るか、国産であるか、そういったようなもの、例えばDNA分析などを活用して実際に 正しいものかどうかを確認するというような業務をやっているわけでございます。  おっしゃるとおり、いろんな制度をつくりましても、それが実際に適切に現場で行わ れているかということをチェックすることは非常に大切だというふうに認識して取り組 んでいるところでございます。  以上でございます。 ○広瀬補佐  ありがとうございました。あと小中学校とか大学とかでのチェックというお話もあっ たのですが、こういう話になってくると、なかなか農林水産省、厚生省だけでなくて、 文部科学省さんとかにもご協力いただいていかないと難しいのかなという感じはしてお ります。今のような形でよろしいでしょうか。  それではそのほか、真ん中の列の女性の方。 ○質問者F  富山アルペン乳業という牛乳屋でございます。今お話ありましたチェック体制のこと で、当社は去年の8月にHACCPシステムを全国では一番小さい会社ではないかと思 いますが、いただいたんです。これも消費者団体の方ではなくて、COOPとやまさん が私のところは新規取引としましたら、まことに細かいことをチェックなさったんで す。それも一つの要因でありますし、それと学校給食に牛乳を入れておりましたら、厚 生労働省か私ちょっと管轄はわかりませんが、これからはHACCPシステムを取って いないと学校の牛乳には参入できないということで一生懸命頑張りまして、丸5年でい ただいたのですが、今チェック体制ということをおっしゃったものですから、もし機会 がありましたら、当社がどのようにしてチェックしているのかということを見にきてい ただきたいと思います。  それともう1つ、学校給食とCOOPとやまさんの話も出しましたが、厚生労働省さ んのほうでHACCPを承認されるに当たって、これは牛乳メーカーがどんどん少なく なるんですけれども、一生懸命にうちみたいに20人ぐらいの少ない人数で頑張ってい る業者もあるにもかかわらず、これが消費者の方には反映していないような気がするん です。それで、厚生労働省さんはこれからどのようにしてHACCPを導入するように 指導なさるかというのが1つ。もう1つは消費者の方にですけれども、一生懸命HAC CPを取るには、当社にいたしますと当初5億ぐらいの設備投資をしたんです。ところ がやりましたが、現実の問題でスーパーさんに行きましたら、安い牛乳がどんどん入っ ていて、当社とすれば原価がどうやって安い牛乳が提供できるのかなと思っているんで すけれども、私も牛乳屋をする前は安い牛乳を買っていたんです。でも現実に牛乳屋を やってみましたら、とてもじゃないけど、こういうものでは皆さんに安全で安心できる 牛乳を提供できないというところがあったのですけれども、皆さんはどのようにして牛 乳を買い求められられるかというのをこれからの商売の参考にしたいと思います。 ○広瀬補佐  それでは、厚生労働省としてHACCP制度をどう考えているのかということを参事 官から説明いただければと思います。 ○松本参事官  厚生労働省といたしましては、できた製品を検査して安全かどうか確認するというこ とではなくて、その製造の各段階からきちっと管理をして、製品ができ上がったときは 十分安全だという仕組みが必要であろうと考えております。このHACCP方式につい ては業種がまだ少のうございますけれども、もっと広げていきたいと思っております。  ただ、たしかにおっしゃるように「HACCPって何?」というところがまだ十分浸 透しておりません。HACCPを取っているところとそうでないところはどう違うのと いうところがまだ十分伝えきっていないところがあります。HACCPを取っていると ころが大変安全な食品を提供しているところだということをもっとわかりやすく情報提 供して、消費者の方々が同じものを買うならば、HACCPを取っているところを選ん でいただくところまで認知されなければならないと思います。リスクコミュニケーショ ンや情報の提供を含めてそういう生産の段階から各段階、段階での衛生管理を通じての 食品安全に努めていくように、またそれを広げていきたいと考えております。 ○広瀬補佐  チェック体制を実際見に来てくださいというお話もありましたが、やはり企業と消費 者の方なのか、その他の方なのか、そういう方々のコミュニケーションの一つでもある と思います。実際、食の今の問題の中で大きな不安になっているようなことの原因の中 にも、お互いの誤解があったり、実際の状況がわかっていないことに基づくケースも多 いと思いますので、まずお互いに現場なり何なりを見ていただくなりしてコミュニケー ションをすることによって、その問題についての認識を深めていくというのが重要なの かなと思います。  それから、HACCPのときにかなりの金額の投資が必要だけれども、実際スーパー とかで並べて売ると安い牛乳が売れてしまうというお話もあったのですが、そのへんは どなたかご発言いかがでしょうか。金井様どうでしょう。 ○金井会長  実はきのう食品の品評会がございまして、豆腐1つでも3丁で100円から1丁250 円までの差がございます。それはもちろん使っていらっしゃる材料がみんな違います し、充填方法とか何とかにもいろいろ工夫がおありになるのだろうと思いますけれど も、私は別にアルプスさんとか何とかいうことは勘定に入れないで、近くのスーパーに 行って求めますときに、うちでヨーグルトをつくっておりますので、それをいただいて いるものですから無調整の牛乳を別に銘柄をどうこということなしにいただいておりま して、アルプスさんも時々入っておりますし、別にそういう区別はしていません。やは りチェック体制というものがあらゆるところに我々消費者にとっては本当に関係いたし ますね。ですから、この間も大阪の研究所からお見えになりましていろいろご説明なさ いましたが、人数も随分私どもひところ見学に行ってひどいなと思ったそのときからは ものすごく増えていて、そしてまた、その商品を輸入して豊かに製品として出していら っしゃる業者の方も、まことに上手に本当にだれが見てもふわふわの今とれたてのとい うことになっておりましたが、そのときにある新聞社の論説委員の方が、私はピーナッ ツが好きでピーナッツをいつも買うんだけれども、中国のは安いのに日本のを買おうと 思うと何倍の値段でとても手が出ないというお話が出ていまして、ひところのBSE以 来の偽装表示などで非常に消費者としては信用できない部分がたくさんあらわれてきま したので、今も私ども富山県ではウォッチャー制度を活用しまして、奥さん方に年間を 通じていろいろチェックしていただいておりますが、そのときに、これは疑問だと思う ものはすぐ県の食料政策課のほうへ伝達いたしまして、そしてそれを取り締まるような ことをしていただいておりますが、チェック体制というものがどの程度にどうなのか、 例えば健康食品としてお出しになるにしても、これは本当に安全だということのチェッ クができてからでないと、出すのに大変な費用がかかるということはわかっております が、私ども一般の消費者は非常に好ましいタレントとかそういう人が足がすぐ治ったと か、腰掛けていてもよくなったとか、そういうものにどうしても惑わされて、そのため の被害もたくさんあると聞いております。先ほど申しました検疫所でも、本当に一生懸 命やっているということを聞きましたけれども、どうしてもホウレンソウのことなどが 頭をよぎって、私どもの日常買い物をするときに脳裏から離れないわけです。  それで、絶対に自給率がないのに外国から60%輸入しないことには今の私たちはや っていかれない、しかも先ほどの話ではありませんけれども、5年後にはその自給率を 45%ぐらいまで上げなければいけない。廃棄率のものすごさ、そういうことを考えま すと、私どもの食品の扱いが、食品に対する愛が足らなかったのではないかということ を反省して、先ほどそのことも申し上げましたけれども、外国から輸入するということ にすごく抵抗があります。おとといも向かいのスーパーへ行きましたら、中国産のどん このシイタケがふかふかになっていておいしそうに積んでありました。日本産はぺちゃ っとしてしなびているのに、それが非常に安く売っている。どうしようかなと思ったん ですけれども、「まあいいわ、私は私の歳だから」と思って買い求めてきまして、千切 りにして蒸したり煮たりいたしましたが、そういうことを払拭するのにチェック体制と して何かできないものかというのが私どもの強い願いだと思います。 ○広瀬補佐  ありがとうございました。ほかに会場の方どなたかいらっしゃいませんか。 ○質問者F  今ほどの件ですが、ありがとうございました。私は厚生労働省の方と、県の方、保健 所の方にすごく感謝しています。一生懸命HACCPを取れというご指導があったから 取れたことで、それにも増して先ほど特定の名前を出しましたが、COOPとやまの皆 さんが一生懸命後押しして現地を見にこられて、今のチェック体制が厳しかったから私 は今日があるのではないかと思います。これからは地産地消もありますし、食の安全も ありますので、チェック体制で皆さん消費者の方が工場に見に行かれたらどうかという のが提案です。本当にありがとうございました。 ○金井会長  私はおたくへ見学に行きまして大変安心して見てまいりました。 ○広瀬補佐  ありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。  ちょっとした話題提供という点では、つい先月になるかと思いますが、ある新聞で 「危険御三家」という記事がありました。「危険御三家」とは、農薬と添加物と輸入食 品らしいのですが、どうもそういう先入観ができてしまっているのが問題なのかなと。 実際、農薬とか添加物についても、きょう寺田委員長のところでリスク評価をしていた だいて、そういうリスクがないというレベルまで下がるように厚生労働省なりで基準を 決めて管理をしているところだと思うのですが、なかなか過去のいろいろ問題があった 事例などもありまして、皆さんの意識の中では危ないものと思われているのかなという 感じがします。  そのほか、健康食品だけに限ったことではなくて、食品安全行政一般についてでよろ しいかと思いますが、何かご意見等いかがでしょうか。  大体意見が出尽くしているようであればちょっと早めに終了したいと思います。  皆様のお手元にアンケートをお配りしております。アンケートの意見等は、今後、意 見交換会をしていく上で分析しながら改善を図る点や参考にさせていただいているもの ですので、忌憚のないご意見をお書きいただいて、お帰りの際に入り口のところに出し ていただければと思います。  ほかに申し足りないという方がいらっしゃればご発言いただければと思いますが、も しいらっしゃらないようであれば、これで終了したいと思います。  本日はお忙しい中、天気もあまりはっきりしない日だったようですけれども、食品に 関するリスクコミュニケーションということでお時間をとってご参加いただきまして、 また多数いろいろなご意見をいただきましてありがとうございました。これからもよろ しくお願いいたしたいと思います。どうも本日はありがとうございました。 (拍手)