04/06/30 食品に関するリスクコミュニケーション(食品中に残留する農薬、動物用 医薬品等のポジティブリスト制導入の取組に関する意見交換会)<議事録> 厚生労働省医薬食品局食品安全部                           平成16年6月30日(水)                           13:00〜16:30                            於 三田共用会議所講堂 1 開会 2 挨拶    ○厚生労働省食品安全部基準審査課長            中垣 俊郎 3 行政説明「ポジティブリスト制導入の取組に関する説明」    ○厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課課長補佐    宮川 昭二 4 ラウンドテーブルディスカッション    【コーディネーター】      厚生労働省食品安全部企画情報課課長補佐        広瀬  誠    【パネリスト】      全国消費者団体連絡会事務局長             神田 敏子      日本生活協同組合連合会安全政策推進室長        渡邉 秀一      (株)食品科学広報センター代表            正木 英子      (財)食品産業センター技術部長            高野  靖      農薬工業会専務理事                  玉川 寛治      全国農業協同組合連合会大消費地販売推進部次長     原  耕造      (株)ジーピーエス                  高橋 宏通      (社)日本乳業協会生産技術委員会委員         松島 一清      反農薬東京グループ                  辻 万千子      全国農協青年組織協議会参与              原  拓生      (財)実験動物中央研究所学術顧問            林  裕造      (社)緑の安全推進協会会長              梶原 敏宏      厚生労働省食品安全部基準審査課長            中垣 俊郎      厚生労働省食品安全部基準審査課課長補佐         宮川 昭二      厚生労働省食品安全部基準審査課課長補佐         鶴身 和彦      厚生労働省食品安全部監視安全課係長           土井 研治      農林水産省消費・安全局農産安全管理課農薬対策室長    横田 敏恭      農林水産省消費・安全局衛生管理課薬事・飼料安全室長  境  政人 5 意見交換 6 閉会 <議事録> 1 開会 ○広瀬企画情報課課長補佐(厚生労働省)  それでは、時間となりましたので、ただいまから「食品に関するリスクコミュニケー ション(食品中に残留する農薬、動物用医薬品等のポジティブリスト制導入の取組に関 する意見交換会)」を開催したいと思います。  私は、本日コーディネーターを務めさせていただきます厚生労働省医薬食品局食品安 全部企画情報課の広瀬と申します。よろしくお願いいたします。  初めに配布資料の確認をさせていただきたいと思います。お手元の資料の中に議事次 第というものがあるかと思いますが、それに沿って説明させていただきます。配布資料 といたしましては、下の方に配布資料一覧ということで、資料1「食品中に残留する農 薬、動物用医薬品等のポジティブリスト制導入の取組」、資料2「パネリストからのポ ジティブリスト制導入の取組に対する意見」、これは本日パネルディスカッションに御 参加いただいている方から要旨ということで事前に御提出いただいたものでございま す。それから、資料3「食品に関するリスクコミュニケーションにおける事前意見・質 問について」、こちらは、本日この意見交換会に参加するに当たって、参加希望者の方 から事前に御提出いただいている意見及び質問についてでございます。簡単な回答を付 けさせていただいております。  それから参考資料ということで、参考資料1「食品中に残留する農薬等へのポジティ ブリスト制の導入」、参考資料2「食品中に残留する農薬等の暫定基準(第1次案)に ついて」、それから参考資料3といたしまして、「暫定基準(第1次案)に対して寄せ られた主なご意見について(未定稿)」というものでございます。  もし不足等がございましたら、事務局もしくは外におります受付の方までお申し出い ただければと思います。  続きまして、簡単に本日の議事進行を紹介させていただきます。  まず、厚生労働省医薬食品局食品安全部の中垣基準審査課長より御挨拶を申し上げた 後、基準審査課、宮川補佐より「ポジティブリスト制の導入の取組に関する説明」を40 分程度させていただきます。ここで10分間の休憩をいただき、午後2時をめどにラウン ドテーブルでのディスカッションに移らせていただきます。大体の目安といたしまし て、ラウンドテーブルのディスカッションの方は3時30分ぐらいまでと考えておりま す。その後、会場との意見交換というふうに考えております。なお、会場の都合上、午 後4時30分ごろには終了させていただきたいと思いますので、あらかじめ御了承いただ けますようお願いいたします。  それでは、中垣基準審査課長よりお願いいたします。 2 挨拶 ○中垣基準審査課長(厚生労働省)  基準審査課長の中垣でございます。本日は雨の中にもかかわらず、「食品中に残留す る農薬、動物用医薬品等のポジティブリスト制導入の取組に関する意見交換会」に御参 加いただきまして誠にありがとうございます。  農薬あるいは動物用医薬品等の使用や販売を所管しておられます農林水産省と食品中 の残留農薬の、あるいは動物用医薬品等の食品としての規制をやっております厚生労働 省が本日は共催で開催するものでございます。  既に御存じのとおり、昨年、食品安全基本法が制定され、あるいは私どもで申し上げ ますと食品衛生法を改正し、さらには農林水産省におきましても、農薬取締法でござい ますとか、薬事法でございますとか関連する法規を改正されたところでございます。そ の一環といたしまして、消費者、事業者などの関係者で情報や意見の交換を行うリスク コミュニケーションを推進することとしておりまして、昨年は厚生労働省、農林水産 省、内閣府の3府省で連携をし、全国各地で32回リスクコミュニケーションの機会を設 けたところでございます。また、本年も栃木県や大分県で既に意見交換会を開催したと ころでございます。  本日のテーマは食品中に残留する農薬、動物用医薬品などのポジティブリスト制導入 の取組を挙げておりますけれども、そのテーマのもとで意見交換の機会を設けさせてい ただこうというふうに考えているわけでございます。  ポジティブリスト制の導入につきましては、昨年5月の食品衛生法改正におきまし て、3年以内、具体的に申し上げますと18年5月までに、これを導入することとされて おりますので、その導入に向けて取組を進めているところでございます。昨年10月には 暫定基準案を公表し、本年1月まで意見募集を行い、提出された主な意見に対する考え 方について、審議会において議論をしているところでございますし、一律基準等ポジ ティブリスト制の導入に必要ないろいろな事項について、審議会における議論を進めて おるところでございます。  そういう中で本日は、消費者、事業者などの代表的な方にお集まりいただいておりま す。ポジティブリスト制導入の取組についての御質問、期待、あるいは御意見などを含 め活発な御議論をお願いしたいと考えております。  簡単ではございますけれども、開会に当たっての挨拶に代えさせていただきます。あ りがとうございました。 ○コーディネーター  ありがとうございました。それでは、早速ですが、「ポジティブリスト制導入の取組 に関する説明」に入らせていただきたいと思います。宮川補佐よりお願いいたします。 3 行政説明「ポジティブリスト制導入の取組に関する説明」 ○厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課課長補佐    宮川 昭二 ○宮川基準審査課課長補佐(厚生労働省)  お手元にあります資料1にスライドの印刷物として配布をさせていただいておりま す。今、映し出しますが、それに従ってお話をしたいと思います。  私の方からお話しするのは、大きく分けて3つのパートに分かれています。最初にポ ジティブリスト制度の制度そのもの、どういうものであるのか、どういうものが対象に 規制されるのか、どういったものがこの新たな制度として加わるのか、そういうあたり のお話をさせていただいて、2つ目に食品の残留基準でありますとか、このポジティブ リスト制度を施行するまでに、今現在、準備をいろいろ行っていますので、その話をさ せていただこうと思っています。それから3番目に今後の予定でありますとか、それ以 外の細々とした話を幾つか補足をしたいというふうに思っています。  事前にいただいた御意見というか、御質問が資料3という形で載っておりまして、そ の資料3に、私どもの厚生労働省でありますとか、農林水産省でありますとか、関係の ところが回答をつくっております。このあたりの点も、そのスライドの中で簡単に触れ ていけたらというふうに思っています。 (スライド)  それでは、お手元にあります資料1、ちょっとスライドが小さくて見にくい部分があ りますが、まず、1枚目をめくっていただきまして左側の下、ちょうどスライドの各コ マごとに1番、2番、3番というふうに右下に番号が付いてございますので、そのスラ イド番号に従いましてお話をしていきたいと思います。 (スライド)  まず、スライドの番号が2番目のところ、1ページ目の左の下になります。こちらが 「ポジティブリスト制とは?」というところで、私どもところで、その制度を簡単に言 うとどうなるかというのがこの文章にあるとおりです。基準が設定されていない農薬等 が一定量以上含まれている食品の流通を原則禁止する制度であるということです。これ は先ほど中垣の方からの挨拶の中にもありましたが、昨年の5月30日に公布されました 「食品衛生法等の一部を改正する法律」に基づいて導入される制度だということになり ます。それでポジティブリスト制というのは、ここであるように、添加物なんかとはち ょっと違って、このものを使っていいかどうかという話ではなくて、一定量以上含まれ たもの、基準がないものについて一定量以上含まれている食品の流通を禁止するもので ある。こういう制度だというふうに理解をしていただけるとありがたいと思います。 (スライド)  次にスライドの3、右側の上の方の図になります。少し細かな図になりますが、左側 の真ん中といいますか、スライドの左側3分の1ぐらいに線が入っていると思います が、その線の左側が今現在、食品衛生法で規制をしているやり方であります。右3分の 2が今後新たなに行おうとしている制度の例として示しているものです。  一番大きな違いは、カラーのスライドで出てくると大変わかりやすいんですが、この スライドは後で図が出たときにもう一度触れるとして、規制の対象物質がその次のスラ イドの4になります。 (スライド)  先ほど申し上げました農薬等というところでありますけれども、規制の対象となるも のは、ここに書いてございます3つのものが対象となります。この3つものというの は、1つが農薬、それから動物用医薬品、それから飼料添加物、この3つの種類に該当 するものが食品中に残留しているもの、これが規制の対象物質ということになります。 この後、以降は3つとも言うのは少しややこしくなりますので、「農薬等」というふう に簡単に言わせていただけるとありがたいですが、その次の規制の対象食品、規制を受 ける側というのは、加工食品までを含めてすべての食品がこの規制の対象になります。 例えば、農薬が残留している畜産物、乳の中から家畜の餌を経由して牛乳の中に残った 農薬、そういうものがあるとすれば、これについても規制の対象になるということで す。 (スライド)  この資料は参考資料の1という図が入っていると思います。これと全く同じもので す。左側のこちら側にありますのが、現在行っている規制です。上にかいてあります青 い線で斜めに線がかかっているところは、残留基準が現在あって、これを超えるものに ついては流通が禁止をされているというものです。ただ、基準のないものについては規 制がかからないと、これが現在の制度になります。それがポジティブリスト制度になり ますと、基準のないものは黄色い色がかかっているところ、すべて一定量を超えた場 合、農薬等が残留する食品の流通が禁止されます。それから、それ以外、基準のあるも のは従来と同じように基準を超えた場合は流通の禁止がされる。  制度としては、例えば農薬の中には、天敵だとか、食品なんかが農薬として使われる 場合もございますから、そういうものを一部抜くというのがありますけれども、基本的 に食品に残留する農薬、動物用医薬品、それから飼料添加物について一定量を超えて残 留するものは、基準のあるものを除いたすべてが規制の対象になるというふうに変更さ れます。 (スライド)  繰り返しになりますが、規制の対象はこの3つの物質です。これは定義として日本の 農薬取締法で農薬に該当するものは規制の対象になっているということですので、海外 でそれが農薬であるかということで、海外の農薬の定義で農薬に当たるかどうかじゃな くて、その使い方が我が国の農薬に該当するものであれば、それは規制の対象になると いうことです。繰り返しになりますが、規制の対象は加工食品を含めたすべての食品と いうことになります。 (スライド)  最初のところで申し上げたように、一定量以上残留をしたものは流通を禁止するとい うことですが、どういうことかというと、法律的には、「人の健康を損なうおそれのな い量として厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定める量」というふう に規定をしています。要するに、その量を超えなければ、人の健康を損なうおそれがな いという量を決めて、それを超えたものについては、基準がないものはすべてこの規制 をかけるということになります。この数字は恐らくゼロという数字にはならなくて、人 の健康を損なうおそれがないというある一定の数字を設定するということを考えており ます。 (スライド)  それから規制の対象とならないもの、これは法律では、「人の健康を損なうおそれが ないことが明らかなものとして厚生労働大臣が定める物質」というふうに規定をしてい ます。これも先ほど例として申し上げた食品でありますとか、もともと食べるようなも のにくっついてこないような天敵でありますとか、そういうようなものであれば、恐ら くこういうものから外れてくる。こういうふうに考えられるのではないかというふうに 考えます。 (スライド)  これは法律の条文そのものを写しているものであります。非常に読みづらいものです から、スライドを見ていただくより後ほど文章で確認をしていただければと思います が、先ほどお見せをした参考資料1の図を法律の文章にするとこういうようなものにな るということです。農薬、それから飼料添加物−−飼料に添加するもの、それから動物 用医薬品について、人の健康を損なうおそれがないことが明らかなものを除いて一定量 を超えた食品は、販売の用を供するために製造、輸入、加工、使用、調理、保存、販売 してはならないという規定になっています。ただし、基準のあるものはこの限りではあ りませんという規定になっています。 (スライド)  この規制はいつから始まるのかというと、18年の5月までに実施をするということで 今現在準備をしています。法律の方の附則でこのように規定されていまして、今後、政 令で基準を定めるという予定にしております。 (スライド)  以上がポジティブリスト制度の枠組の部分です。それで、これからは施行に当たって 準備をする、その準備の中で一番今大きな作業となっている暫定基準のことについて、 少し説明をしていきたいと思います。 (スライド)  こちらのスライドは、現在食品衛生法で設定している基準の数、それから、国際的な 基準でありますコーデックスで基準が定められているものの数、それから農薬取締法で 登録されている農薬の数、そういうものをそれぞれどのぐらいづつカバーしているのか というのをあらわしたものです。食品衛生法で残留基準が設定されている農薬は現在241 ございます。このうち、農薬取締法で使用が認められている農薬350 ございますが、そ れについて基準が定められているものは、194 基準がございます。残りの間、およそ150 ぐらいについては基準が設定されていないという状況にあります。  それからもう一つ、コーデックスの基準でございますが、これも増減がございますか ら変わるわけですけれども、現在130 ぐらいあると私どもの方で数えておりますけれど も、このうち、食品衛生法で残留基準が設定されているものは、およそ80ぐらいあると いうことになります。それ以外にもコーデックスで設定されていないもの、それから国 内で使用がないけれども、海外で使用されているものなどを考えますと、おおよそ国際 的に食用農産物に使用が認められている農薬は700 ぐらいあるのではないかと私どもの 方では推計をしておりまして、このうちの240 にしか基準が設けられていないという状 況です。 (スライド)  したがいまして、今のままポジティブリスト制度に移行いたしますと、例えば食品の 流通の阻害をする。日本で登録されていて使用が認められている農薬、農薬取締法で使 用が認められている農薬を使ったにもかかわらず、食品衛生法でしかるべく基準が設け られていない。出荷をした農産物の流通がとまってしまうという事態が起こり得ること になりますし、それから海外で使用が認められている農薬であって輸入食品として日本 に入ってきた場合に、海外でちゃんと安全性も確認されて使用されているような農薬で あっても、我が国の流通がとまってしまうという問題があります。したがって、何らか の形で残留基準の設定というものを考えていかなければならない。ただ一方でその基 準、残留基準というものを設定したとしても、食品衛生法の目的は食品を介した危害の 防止、国民の健康の保護というのが最大の目的ですので、そういうことが達成できる基 準でないといけない。この2つポイントに合致したものを暫定基準として設定をしてい こう。こういうふうに考えているものでございます。この基準は暫定基準という名前に しておりますが、科学的な根拠に基づいて定める基準を参考にして、食品衛生法第11条 第1項に基づく規定として告示により定めるというやり方をしていこうというふうに考 えています。  その具体的なやり方というのがこれから述べるところであります。 (スライド)  参考とする基準というのは、資料で申し上げますと、お手元にお配りをしている参考 資料2というものを少し見ていただけるとありがたいですが、参考資料2ですが、これ は昨年の10月に暫定基準の第1次案というものを私どもの方で公表いたしました。その 際に、その暫定基準のつくり方、法律的な背景でありますとか、そういうものを含め て、どうのように暫定基準をつくってきたかという説明の文書として公表しているもの です。  参考とした基準については、その参考資料2の2ページ目の上のところに作成方法と して示しているものであります。それを簡単に書くと、このスライドの部分になりま す。  1つは国際基準であるところのコーデックスの基準です。これはFAOとWHOの専 門家の会議によって、安全性の評価が行われて、曝露評価なんかもされて基準が決めら れるというものです。  それから、国内で使われている農薬については、農薬取締法で使用の規制が行われて いるわけですが、環境大臣が登録保留基準といって、人でありますとか、動物に危害を 及ぼす影響がある場合に、登録を保留するための基準というものが定められております ので、これも科学的な毒性の評価などに基づいてものですから、こういうものも参考に できるだろう。それから、動物用医薬品については、薬事法で承認をしておる際に、承 認に当たっては基本的に定量限界をもって、その承認を行っているということがありま すので、その残留したものでの定量限界を参考にする。  それとこれだけではコーデックスでは130 ぐらいしかございませんし、国内のものは 350 ぐらいしか農薬ではございませんので、残りのもの、例えば、海外で使われている ものについてカバーするものとしてJMPR、これはコーデックスの農薬の評価をする 国際機関です。JECFAというのは動物用医薬品の安全性を評価をする、このコーデ ックスの基準のもとになる評価を行う機関ですが、ここで評価をするに当たって必要と される資料に基づいて設定している諸外国の基準を参考にしています。  これは参考資料2ページにも少し触れておりますけれども、この国を選ぶに当たって は、私どもの方から東京にあります大使館に対して、基準の設定にするに当たってどの ような資料に基づいているのか、国際的に必要とされる資料に基づいて、試験結果に基 づいて設定しているのかということについて確認をして、それから資料の提供、実際の 評価に当たって毒性などの資料の提供ができる国、そういうことに答えられる国はない かというふうに問い合わせて、その要請に応じてくれた国ですけれども、アメリカ、カ ナダ、欧州連合、オーストラリア、ニュージーランドの5つの国と地域がその要請に応 えてくれたわけですが、これを参考にして基準を決めるという流れにしています。 (スライド)  それで実際に、この暫定基準をつくっていくに当たってどのようにしたかというとこ ろですが、参考資料2の中には、6ページのところに残留基準案の設定に関するフロー チャートがついてございます。これはやや込み入っていますので、簡単に言いますと、 このように3つの段階で判断をしています。  まず、国際的な合意がありますし、安全性の評価も行われているという観点でコーデ ックスの基準を1つ目の選択肢とします。コーデックスの基準がない場合は、国内の登 録保留基準を選ぶ、コーデックスの基準もない。それから、登録保留基準もない。こう いうものについては、先ほど申し出のあった5つの国の地域の基準を参考にするとい う、この3つのステップを基本の考え方にしています。例えば、国内で全く生産がされ ていないようなもの、ほとんどが輸入に頼っているようなもの、それから、実際の農薬 の使用実態などを勘案して、国内の基準を選択する。コーデックスの基準ではなくて、 国内の登録保留基準を選択する。それから海外の基準を選択するとか、そういうような 場合も幾つか選ぶということも選択をしようというふうにしています。 (スライド)  実際の暫定基準のイメージとして示したものです。農薬Aというものがあったとし て、小麦には現在基準があるということを頭に思い浮かべてください。それ以外に、例 えばみかん、お茶、それから牛肉、牛乳、こういうものに作物といいますか、農産物が あったとして、例えばこのAという農薬は、みかんで国内で使うことができて、登録保 留基準が設定をされているとすると、その数字をそのまま暫定基準値として設定をす る。現行基準は、そのまま当然いじらないで残しておくわけですが、このようにする。 それから例えばコーデックスの基準として、牛肉のこの農薬の残留基準が設定されてい たとしたら、この基準を持ってくる、それから海外でどこかの国で、アメリカであると か、ヨーロッパの国で牛乳に基準が設定をされているとすれば、その基準を持ってく る。そのようにAという農薬について、それぞれ登録保留基準から持ってくる。それか らコーデックスから持ってくる。海外から持ってくるという形で、これを最終的な残留 基準として設定をしていく。最終的な姿にしていこうというふうにします。  この場合、暫定基準と言われている部分は、この3つの部分になるわけですが、残留 基準自身は現行の基準と暫定的につくった基準が入り乱れてあるというような形になり ます。ただ、法施行後はこれがすべて一体になった形で施行されていくという形になり ます。  ちょうどここにお茶が抜けていますが、これは基準のない農薬という例になります。 したがって、仮に、このAという農薬がお茶から検出をされたということであれば、そ れは食品衛生法の規定で一定量以上という量を超えていれば、ここのお茶の流通は認め られないということになります。  みかんであれば0.1 、小麦であれば0.5 という基準が設定されているわけですが、こ のお茶については基準がないわけですから、その一定量を超えていた場合は、このお茶 は残留のあるものについては、流通ができなくなるということになります。それから全 くこういう表ができないような農薬も当然ありますので、例えば農薬のBというもので あれば、どこにも基準が入らないようなものもありますから、それがすべて一律といい ますか、一定量以上残留していたものは規制がかかるということになります。  国内的に申し上げると、国内で使われている農薬はすべてこういうものでカバーされ ますし、現行の基準にプラスアルファされますので、そういうふうにカバーをされてい くということになって、少なくとも国内で生産される農産物について、農薬取締法で使 用が認められているものについては、このような形ですべて反映をしていくという流れ になろうと思います。 (スライド)  この暫定基準なんですが、さすがに安全性の評価がされているコーデックスの基準が あるといっても、それからまた、海外でいろんな毒性の評価がされた上で基準が設定を されるといっても、暫定的に決めた、よそから借りてきた基準であるというのは間違い ありませんので、その安全性の確認について一定の手続を設けようと考えています。そ れがここの部分でマーケットバスケット調査、国内で消費されるいろんな食品から農薬 を取り込んでいる量について厚生労働省は毎年調査をしておりますが、そういう調査を 行って、農薬などの摂取量の実態調査を行う。それに基づいて優先順位を付けて、農薬 の取込み量が多いものについては、その順番に従って安全性試験の成績を求めて、それ でこのいろんな変えてきた基準を使って決めた基準を見直そうというふうに考えていま す。  それとは別に暫定基準自身の更新という手続も行っていこうというふうに考えていま す。例えばコーデックスであれば、コーデックスの基準がなくなる、それから新たにつ くられるということが行われるわけですし、日本でも海外でも新しく使われるようにな った農薬というのは出てまいりますので、暫定基準については施行後5年ごとに参考と した基準の変更について、例えばコーデックスの基準が変われば、コーデックスの基準 がなくなったものは落とすし、新たに追加されたものは追加をする、このように5年ご とぐらいの周期で参考とした基準が変わったものについては、見直しを行っていこうと いうふうに考えています。安全性の確認をする一方で、参考とした基準の変更について も対応していこうというふうに考えています。 (スライド)  これは昨年食品安全委員会ができて以来もう既に行われている話ですが、国内で新た に農薬が登録されるに当たっては、厚生労働省が残留基準をつくるのと同時に、つくっ た後でないと農薬が登録されないという制度になりました。したがいまして、今後新た に日本で農薬の登録が新規に行われる。それから登録の拡大が行われるということにな れば、この流れの中でやっていって、ちゃんと安全委員会での毒性の評価をしてもらっ て、私どもの薬事・食品衛生審議会で残留基準の検討を行って、それで残留基準を定め た上で農薬が登録されるということになります。ですから、暫定基準の見直しには、こ のような流れで見直されたものは暫定基準の見直しという流れの中に入っていけるんだ というふうに思っています。 (スライド)  それから、海外で使用される農薬、農薬でありますが、動物用医薬品については、日 本にない病気でありますとか、日本でない作物、日本では生産されないような作物もご ざいますから、その国その国で農薬の使われ方、それから必要とされる農薬の種類なん かも異なってくると思いますので、これらについては我が国に輸出が想定される畜産物 に残留するものもあろうと思いますので、海外で新たに使用が認められているようなも のについて残留基準の設定でありますとか、改正が必要だと考えられている方がいらっ しゃれば、国外から要請ができるという制度を設けることにしています。これは既に今 年の2月に、今度ここにあります通知でお示しをしているんですが、この中で基準を改 正するに当たっては、毒性でありますとか、残留性でありますとか、日本で農薬を登録 するのに必要な資料、それと同じ資料を提出してもらう、提出してその資料が安全委員 会での評価、それから、厚生労働省での審議会での評価で問題がなければ、基準を設定 するということにするわけですけれども、そういう資料とともに提出をして基準を設定 していくということを考えています。したがって、これも暫定基準として示したものを 見直していくという作業の中で、これも活用していくということになろうと思います。  以上が農薬の暫定基準に関してのつくり方、それからその見直しなどについての流れ でです。 (スライド)  先ほど説明をした一定量以上というものについて、現在、私どもの審議会で、実は昨 日も審議会の方で議論をいただいたところなんですが、それについて説明をしていきた いと思います。 (スライド)  一律基準というものの検討ですが、現在、これは先ほど最初のスライドでお示しした ように、人の健康を損なうおそれのある量として定める量ですけれども、これについて 法的な背景、それから安全性での評価、それからポジティブリスト制を採用している諸 外国の事例などについて、現時点での知見をまとめるという作業を今行っております。 これは最終的には安全委員会の方に、食品安全基本法に基づいて食品健康影響評価を依 頼する予定としております。  法的背景はどういうものが規制の対象になるかということですが、安全性について は、化学物質として人の健康を損なうおそれがない量というのは、どういう管理措置で あれば安全性に問題が生じないのか、このようなものについて文献などを用いて検討し ているということになります。諸外国の事例は次のスライドです。 (スライド)  諸外国の事例について申し上げると、欧州委員会、これは欧州域内各国でそれぞれ今 までは、農薬の登録とか残留規制なんかをしてきたわけですが、域内の統合が行われた 関係で、現在、新たにそのEU域内全体にまたがる規制の法案を審議しているところに なります。この中では使用対象外の作物に残留するとか、安全性に関する資料がないよ うなものについては、0.1 ppm を超えるレベルで残留するのを禁止するという提案がな されています。それからニュージーランドについては、これはやや古いんですけれど も、0.1ppmの基準というのが設定をされています。ドイツについては0.01ppm 、それか らアメリカについては、この一律の数字というものは定められていませんが、運用上と しておよそ0.01から0.1ppmで判断をしている、こういうような事例があるという状況で あります。いずれの国に関しても、何らかの形で安全性などのベースになるものを考え ているということになります。 (スライド)  一律基準が対象となるのは、ここに書いてあるもの以外ということになります。先ほ どの暫定基準の説明の中で使った表のように、すっぽり抜けているところが対象になる わけですが、ここにない類型のものが一律基準の適用になります。1つは農薬ごと、作 物ごとに定めている基準がないもの。登録されている農薬であっても、その作物に使用 が認められていないものであれば、それは基準がないですから、そういうものに適用さ れる。それからADIが設定できないとして「不検出」という基準が与えられたもの、 これ以外のものに適用される。それから抗生物質では「含有してはならない」という基 準を設定しているんですが、こういうものにどれにも当てはまらないものに一律基準が 適用されるということになります。 (スライド)  対象外物質のことですが……。 (スライド)  これも今、ちょうど昨日私どもの審議会の方で議論したものですが、まだよく考え方 を整理するところに至っていませんが、例えば、今、農薬取締法の規定で特定農薬、特 定防除資材とも言われますけれども、そういうようなものとして指定されている、この 食酢でありますとか重曹のようなもの、それから天敵のようなものについては、これは 恐らく規制の対象外というものになりましょうし、それから現在、登録保留基準であり ますとか、海外で基準を設けないでいいようなものの中で、この定義に当てはまるよう なものについては、この対象外物質として組み入れていってはどうか、そういうような 議論を行っています。 (スライド)  だんだん残り時間が短くなってきましたので、少し駆け足になるかもしれませんが、 次に加工食品の取扱いです。 (スライド)  加工食品などの話の中で1つ、先ほどちらっと出てきましたけれども、「不検出」と する農薬のものですが、例えば、こういう基準を設けるものも今回の暫定基準の中でつ くっています。それは遺伝毒性を有する発がん物質であるなど閾値が設定できないも の、これについては「不検出」とするという規定を設けて、それで不検出のものという ものを定めて、これを基準として取り締まっていくというものになります。 (スライド)  それから、抗生物質の取扱いは従来と同じ、現行の基準のまま残すんですが、今だ と、「食品は、抗生物質を含有してはならない。」それから「食肉、食鶏卵及び魚介類 は化学的合成品たる抗菌性物質を含有してはならない。」ということですので、この2 つを組み合わせた形のものが規定として設けようというふうに考えています。 (スライド)  加工食品の取扱いですが、加工食品については、残留基準に適合した、この残留基準 の中には暫定基準も含まれるわけですけれども、適合した原材料を用いて製造又は加工 された食品については、流通を可能とします。具体的に言うと、次のスライドになりま す。 (スライド)  例えば、りんごジュース、りんご10%の果汁というものがあったとして、それからA 農薬が0.05ppm 見つかったということがあったとします。これについては、りんごにA 農薬が0.2ppmという基準があれば、10%果汁ですので10倍希釈をされているわけですか ら、判断基準としては、これに10分の1までは恐らく認められるだろう。つまり0.02ppm であれば、その判断基準に、この原料の範囲であれば大丈夫だろうというふうに考える わけです。検出された値が0.05であれば0.02を超えているわけですから、これは違反 だ。こういうような判断をしていこうというふうに考えています。うどんの例もありま すけれども、これは配合割合なんかを用いて考えるということです。加工食品について は、多種多様な加工食品があって、その個別に基準を設定していくというのは、これは なかなか難しい問題です。それから加工の度合いというのも、加工によってその農薬の 量がどのように変化するのか、これも実際に実験をしてみて決めていかないといけない わけですけれども、具体的に一つ一つの種類の加工食品について基準を決めていくとい うのはかなり大変な作業になります。したがいまして、この加工食品の取扱いについて は、コーデックスで基準を設けられているもの以外については、このような、例えば希 釈の割合、それから原料の割合、こういうものを判断に目安にして、それで違反であ る、違反でないというような判断をしていこうというふうに考えています。もとの基準 に合致している範囲であれば、その流通を認めると、このような考え方でいこうという ふうに考えています。  以上が現在までに行われている作業で、考え方として、第1次案などで考え方を示し ているものになります。参考資料の2の7ページ、それから8ページのところに規則 (案)というのが出ていますが、例えば、抗生物質については、7ページの1にあるよ うな規定を設けることによって、先ほど説明をしたような対応ができるのではないか と。それから「不検出」のところは、それぞれに書いてあるものになります。あと加工 食品については、8ページの6のところで基準の定められているもの以外は食品の製造 に使用してはならないという規定を設けて、加工食品についても基準に適合しているも の以外は使ってはなりませんよ、加工というような規定にしていこうというふうに考え ています。  それで今後の予定について最後に簡単に説明をしておきたいと思います。 (スライド)  これまで行ってきたのは、このように昨年の10月に第1次案をお示しをして、その前 に審議会で設定方法などの議論を行っていただいたんですが、1次案について、3か月 間の間に226 団体からおよそ1,2000余りの御意見をいただいています。これらの意見に ついて、現在審議会の方で審議をしているところです。 (スライド)  4月から今まで3回やりまして、来月も行う予定にしていますが、この審議会の方で 審議を行って、8月ぐらいに第2次案、その中には一律基準の案でありますとか、対象 外物質の案を含めて2次案をお示しして、これも先ほどの1次案と同様に3か月ぐらい の意見募集をしていこうと。この中には、海外からの意見の募集というようなものも行 っていこうというふうに考えています。その後、最終案をとりまとめて、国際条約上義 務が課せられておりますのでWTO通報、それからパブリックコメントという通常の政 府が新たに基準を設ける際の手続を行って、これを17年、来年の初めぐらい、ちょっと 時期は今の段階で正確にはあれですけれども、17年に入って行う。それらの結果を踏ま えて、私どもの審議会の答申という形でまとめていただく。恐らくどこかで食品安全委 員会の方での御審議というものもいただくということになります。 (スライド)  野則とも18年の5月までに施行するということですが、その前におよそ6か月間の周 知期間を入れて、遅くとも17年の11月までには暫定基準、それから一律基準、対象外物 質を含めて厚生労働省の告示としてお示しをするという形にしていきたいというふうに 考えています。 (スライド)  資料の3の御意見とか御質問をいただいている中に幾つかございました点を申し上げ るとすると、分析法の開発の件がございます。今現在、暫定基準を設定しようとしてい るおよそ600 ぐらいの農薬がございますが、この農薬の幾つかカバーできる範囲という のはまが限りがあるんですけれども、医薬品食品衛生研究所の方で検討を進めていま す。その検討の中身は、一斉分析法をできるだけ採用する、そういう形で高感度でかつ 実用可能な方法というものを条件に現在進めています。標準品についても、この試験法 の開発と併せて整備をしていくというようなことで現在準備をしております。まとまっ たものについては、これは毎年度事業費として厚生労働省で行っておりますので、昨年 度のものについては、まとまり次第公表していくというような形にしていこうと思って おります。  それから少なくとも告示日、遅くとも17年の11月ぐらいまでには、その施行は6か月 後になるわけですけれども、とりまとめて分析法を公表する形にしようというふうに思 っております。 (スライド)  違反品の取扱いについても、これも御質問をいただいているところですが、これは今 年の2月に食品安全部の企画情報課長の通知として、東京都の疑義照会に答える形で出 しておるわけですが、アンダーラインしていますが、これは今7条と書いていますけれ ども、当時7条で現在11条になっておるわけですが、その残留基準なんかを定める規定 ですが、こういうものの基準に合わない方法については、その原料を使用したものであ っても、最終食品等の食品衛生上の危害を求められていない場合については、その行政 処分を規定している22条の対応ですけれども、それから、行政処分をとる必要はないと 認められる場合もあるという点を示しています。つまり、食品衛生法違反であるけれど も、行政的な対応が必要でない場合もありますよと、そういう場合もあるという考え方 を示しています。ですから、このような考え方に基づいて運用される例も出てくるので はないかというふうに考えております。 (スライド)  これはお手元の資料にないんですが、急遽、追加をさせていただきました。6月21日 の日に私どもの方で公表いたしました残留農薬の実態の調査結果です。毎年公表する予 定にしておるものなんですが、ちょっとここに2年ぐらい滞っておったので、2年分ず つに出ておりますが、まず最初は農薬の一日摂取量調査です。これをなぜ今の段階で申 し上げるかというと、実際のポジティブリスト制度が施行された後であっても、恐らく 農薬の使い方とか、食品の輸入の度合いというのは、現状よく見ればどのぐらいのイン パクトがあるのかというあたりがある程度想像ができるのではないかなというふうに思 っています。  例えばマーケットバスケット調査ですけれども、21農薬で摂取量の調査をしておりま す。13年度はADIとの比率を数字で表しておるんですが、ADIというのは許容一日 摂取量として、一生涯にわたって摂取しても問題のない量ですけれども、それに占める 割合として示しているのは0.19から31.04 です。この31.04 というのは、実際に食品か らの検出はなかったんですが、検出限界の20%で残留していたと仮定をして計算をしま しょうというルールを当てはめています。厳密に申し上げると、アルジカルブなんです が、それの数字を使っているんですが、検出限界値の20%ずつ足し合わせていくと、A DIの3割になったと。ですから、これは見かけ上の数字であろうかと思います。それ から14年度は0.04から1.69と、これも21農薬調べているんですが、これぐらいだと。で すから、実際に農薬として通常の食事から摂取している量というのは、これぐらいの量 におさまっている、推計されているというのが私どもの直近の調査です。 (スライド)  加工食品についても調べておりますが、13年度はフライドポテト、発泡酒・ビール、 250 農薬について総検査数で言いますと、農薬の数を掛けていますから検体の数は余り 多くないんですが、1万4,985 件を調べていて、このうち31件0.2 %から農薬が検出さ れている。検出されている量は4農薬でこれぐらいの幅ですが、この2.1 というのは、 冷凍ポテトから出たクロルプロハムなんですが、馬鈴薯の基準で言うと50ppm の基準が 設定されていますから、それから考えても、この冷凍フライドポテトとしては極めて低 い量でおさまっていると。それから14年度は乾燥野菜について、このようなものを297 農薬について調べておりまして、これぐらいの数字0.008 から0.25ppm ぐらい検出され ているというものになります。今まで果汁、ベビーフード、パン、果実の缶詰、それか ら食用油、冷凍食品、パスタ、トマト加工品、こういうものを順次調査をしてきたわけ ですが、大体今までもそれほど農薬がこういう加工食品から検出されたと、そういうよ うな事例が少ないということになります。 (スライド)  これは最後のスライドですが、農産物の残留農薬の検査結果ですが、これは検疫所が 行った検査、それから都道府県が行った検査、基準がないようなものについては、私ど もの方から予算を出して検査をしてもらったもの、そういうものを全部まとめたもので す。農薬の数と検体数と掛け合わせていますから、総検査数というのは実際の検体数で はありませんけれども、大体50万件ぐらい毎年行っております。この中で検出されたも のというのは、0.6 %、2,800 件ぐらい。この中で基準があって基準を超えているもの は0.03%、13年度は0.01%、極めて低いレベルになっていると。当然基準を超えるもの もでてきて、これは違反として処分をされているものになりますけれども、このような 実態があるということです。  ポジティブリスト制度のインパクトを押しはかる上で、こういうような形のものの調 査の結果も参考にしていただければということで、ちょっと資料を付けておりません が、御紹介をさせていただきたいと思います。  最初にいろいろトラブルがありまして、おわかになれなかった部分があったかもしれ ないです。その点は、また後ほど御質問なりをしていただければと思います。  以上で私の方からの最初の説明とさせていただきます。ありがとうございました。 ○コーディネーター  ありがとうございました。それでは、ここで10分程度休憩を設けさせていただきたい と思います。ラウンドテーブルのディスカッションの方、2時10分をめどに開始したい と思います。それでまでにお席の方へお戻りいただけますよう、お願いいたします。                   (休憩) 4 ラウンドテーブルディスカッション ○コーディネーター  時間となりましたので、ラウンドテーブルでのディスカッションに移らせていただき たいと思います。  最初にパネラーの紹介をさせていただきます。  ホームページ、それからプレス発表等で4団体をパネラーとして公募させていただき ましたが、募集予定内でございましたので、御応募いただいた方すべての方に参加いた だいております。  まず正面に向かって左手の方から、紹介させていただきたいと思いますが、一番左手 の御予定の、全国消費者団体連絡会事務局長の神田様は、本日体調不良ということで御 欠席の連絡をいただいております。  そのお隣が日本生活協同組合連合会安全政策推進室長の渡邉様でございます。  そのお隣が株式会社食品科学広報センター代表の正木様でございます。  そのお隣が財団法人食品産業センター技術部長の高野様でございます。  そのお隣が農薬工業会専務理事の玉川様でございます。  そのお隣が全国農業協同組合連合会大消費地販売推進部次長の原様でございます。  そのお隣から並んでいただている方が公募で応募いただいた方でございます。株式会 社ジーピーエスの高橋様でございます。  それから、社団法人日本乳業協会生産技術委員会委員の松島様でございます。  そのお隣が反農薬東京グループの辻様でございます。  そのお隣が全国農協青年組織協議会参与の原様でございます。  続きまして、学識経験者ですが、こちら私の左手、一番奥が財団法人実験動物中央研 究所学術顧問の林先生です。  そのお隣が社団法人緑の安全推進協会会長の梶原先生になります。  最後に事務局になりますが、私の右手から基準審査課長、中垣課長でございます。  そのお隣が同基準審査課、宮川補佐でございます。  そのお隣が同じく基準審査課の鶴身専門官でございます。  そのお隣が監視安全課の土井係長でございます。  そのお隣が農林水産省消費・安全局農産安全管理課農薬対策室長の横田室長でござい ます。  そのお隣が農林水産省消費・安全局衛生管理課薬事・飼料安全室長の境室長になりま す。  よろしくお願いいたします。  それでは、まずこのラウンドテーブルでのディスカッションを行うに当たりまして、 お手元の資料2にございますが、パネラーの方から意見を提出いただいております。こ れは本日の資料とかを配布する以前に提出いただいているものでございますので、若干 今回の資料1の説明の中でも触れられているものもあるかと思います。  それでは、お時間が短くて非常に恐縮ですけれども、まず、それぞれパネラーの方か らお一人3分以内で簡潔に御発言をお願いしたいと思います。  なお、最初予定しておりました神田様は今日御欠席ということですので、私の方から 御提出いただいた意見を読み上げさせていただきたいと思います。  お手元の資料2の方をおめくりいただければと思います。1ページ目になります。 (○ 神田氏(全国消費者団体連絡会事務局長))  食品衛生法の改正により、いわゆるポジティブリスト制の導入が決められました。導 入にあたり、食品衛生法の目的である「食品の安全確保と国民の健康保護」をべ一スに 進められることを、改めて最初に確認させていただきたいと思います。  これまでは、残留基準の定められていない農薬等については、いくら残留していて も、基本的には流通規制はできませんでした。消費者団体はポジティブリスト制を導入 するよう求めてきたところです。本制度の導入により、農薬・動物用医莱品・飼料添加 物など647 の物質が対象とされたことは食品の安全性を確保するための視点からは前進 したと考えます。  しかし、暫定基準設定に当たっては、登録保留基準、コーデックス基準、外国の基準 が条件によって採用されているにも関わらず、各種既存の基準を採用するにあたっての 考え方を示した図は、薬事・食品衛生審議会の資料中に埋もれています。また、暫定基 準、一律基準、対象外物質の設定等の説明についても分かりにくさがあります。消費者 をはじめ、関係者相互問の理解とリスクコミュニケーションを充実させるためにも、こ のような図表や説明資料については、「暫定基準に関するQ&A」と共に判りやすくし た資料として公表することが必要です。  また、薬事・食品衛生審議会の資料では、一律基準値の設定についてはその設定の考 え方について、食品安全委員会にリスク評価を依頼する旨の記載がありますが、暫定基 準設定に関してはその旨の記載がありません。リスク分析手法の原則論に立って暫定基 準設定の考え方についても、食品安全委員会に対してリスク評価を依頼する事が必要と 考えます。  なお、この制度が国民の健康保護を目的とするなら、農薬等はまず、毒性資料に基づ くADIの設定を行い、その結果に基づき基準が決められるべきだと思います。そして 国内における農薬等の登録、承認・申請に基づきリスク評価や残留基準設定を行うべき だと思います。残留の可能性がある輸入食品については、できるだけの資料提出を求め たうえで、基準設定をして欲しいと思います。  この制度は流通を規制するものであり、生産現場での使用を規制するものではありま. せんが、検査で全て検証するのはむずかしいと思います。信頼度を上げるためにも、生 産現場での使用管理の強化が必要になります。また今後に向けて、分析法の開発や整備 の促進も望みたいと思います。  という御意見でした。  それではお二方目の日本生活協同組合連合会渡邉様からお願いいたします。 ○渡邉氏(日本生活協同組合連合会安全政策推進室長)  日本生活協同組合連合会の渡邉と申しますが、読み上げる形で意見を表明させていた だきます。  1.本来あるべき手続き    農薬、動物用医薬品は、まず毒性資料に基づくADIの設定(暴露評価など一連   の安全性評価を含む) をおこない、その結果に基づき、各種農作物、畜産動物、水   産養殖魚等にMRLSが設走されるべきと考える。  2.暫定基準を設定することは食品安全の立場からは前進と評価できる。    現行の食品衛生法における食品の成分に係る規格として、229 農薬、29動物用医   薬品に残留基準値が設定され、この基準を超えた食品の流通を禁止している。一方   食品の成分に係る規格(残留基準値) が定められていなものには農薬等が残留して   いても基本的に流通規制はされていなかった。    本制度の導入により農薬、動物用医薬品及び飼料添加物として724 物質(暫定基   準適用647 物質、「不検出」基準適用13物質、従来基準適用64物質) に残留基準が   設定され規制が実施されることは、食品安全の立場からは前進と考える。  3.暫定基準からリスク評価に基づくMRLs設定を促進させるべきである。    国内における農薬の登録、動物用医薬品、飼料添加物の承認・申請に基づき、リ   スク評価及びMRLs設定をおこなう。輸入食品での残留の可能性のある農薬等に   ついては、「基準設定要請制度」に基づく資料の提出を最大限求め、MRLs設定   を促進させるべきである。  4.ポジティブリスト制の導入を広く理解させる努力が必要である。    本制度の導入にあたり、まず「国民の健康保護」を目的であることを確認し、そ   の上でステークホルダー(利害関係者) グループに対して、理解を深める努力が必   要である。暫定基準、一律基準、対象外物質の設定等。  5.今後の課題   ・暫定基準が施行された後の監視とその対応(行政、食品企業、消費者等)が努力    しなければいけないだろうというふうに考えております。   ・消費者に対する情報提供などリスクコミュニケーションの推進ということで、一    層の取組が必要というふうに考えております。   ・分析法(標準品の入手を含む) の開発と整備   ・検査で全て検証できるものでないということから、保証のためには生産現場の管    理   ・強化ということが必要であろうということ。  以上でございます。 ○コーディネーター  ありがとうございました。それでは、食品科学広報センターの正木お願いします。 ○正木氏((株)食品科学広報センター代表)  正木でございます。それではお話をさせていただきます。  我が国は、WTO条約の加盟国の一員なので、SPS協定に沿って、コーデックス基 準がある場合には原則としてそれを採用することになっていますので、コーデックス基 準を優先的に取り入れたことは、基本的には、適切であると考えます。ADIについて は、JMPRが毒性試験の結果に基づいて安全性を評価して設定しているのですから、 これは問題がないと思います。ただ、CCPRが設定している残留基準については、い ささか気になります。よく管理された農場で、しかもGAPに従って実施された農薬の 残留データを基礎としているということですけれども、病害虫の種類や防除に必要な農 薬の使用量、使用方法、それから収穫前何日まで散布できるか等の農業の使用基準、そ れに気象条件も国によって必ずしも同じとは限りません。したがって、残留基準を設定 する過程において、こうした各国の状況がどの程度反映されているのかなと思います。  それに曝露評価に必要なフードファクターは、国によって食生活が違うので、当然異 なります。ですから、これと、農産物ごとの作残試験によって得られた農薬の残留量を 掛け合わせたEDIも違ってくると思います。でも、食品衛生法に基づいて厚生労働省 が実施している残留農薬基準の設定の過程で、コーデックス基準のあるものについては 6割ぐらいは同じにしていると。ただ、2割は例えば日本人が、お米とか、みかんなど たくさん食べるものについては厳しい基準を、また、ハウス栽培が多い、そういうもの については、農薬の使用方法が違う等から、あとの2割はやや緩い基準になっていると いうことですから、日本の状況も考慮しつつ、コーデックス基準を採用することは妥当 であるというふうに思います。  外国基準にばらつきがあるのも、こうした理由によるのではないかと思いますので、 平均値をとることは余り問題がないような気がいたします。  一応これだけにしておきます。 ○コーディネーター  すみません、お時間の関係もありますので、ありがとうございました。  それでは、食品産業センターの高野部長お願いいたします。 ○高野氏((財)食品産業センター技術部長)  高野でございます。食品産業センターというのは、120 ほどの加工食品の業種別団体 と190 ほどの企業を会員として抱えております食品産業のとりまとめをやっている団体 でございます。  今、食品の原料・製品、どこからでも入ってくるボーダレスな状態になっておりまし て、その段階で科学的なデータをベースに国際的ハーモナイゼーションを考慮して農薬 等のポジティブリスト制を導入することは、食品の安全性確保と食料資源の安定的な確 保、この両面を充実させるということからどうしても必須だろうというふうに思ってお ります。消費者への的確な品質の食品を安定的に供給することが役目であります私ども 食品事業者として次のような要望を述べさせていただきます。  1番目は、正木先生とは若干異なるかもしれませんが、海外の基準等でいずれも科学 的な方法で設定されているということは明らかでございますので、それらの最大値を基 準とするということの方が貿易の支障を最小限にするという観点から妥当なのではない かというふうに考えております。  2番目は、特に申しませんが、一律基準が適用される品物であっても、後で科学的な 方法のデータによって基準値が設定すべきと判断したときには、速やかにその措置をと っていただきたい。  3番目、輸入時も含めて食品の監視・指導に用いられる食品中の農薬の残留値の試験 法、これを統一的なものにして食品事業者にも方法を明示していただきたい。これはそ のように先ほど宮川補佐からも御説明あったと思いますが、決してこれは我々が法逃れ をしたいということではございませんで、自ら管理するためにどうしても必要でありま す。また、「不検出」、「含有してはならない」とされる物質についても、ある機関で 適法とされたものが後々別の機関で違法とされるような混乱がないように御配慮をいた だきたいというふうに思っております。  4番目、加工食品については、これも先ほど来、厚生労働省の方からの意向が示され ておりまして、規格基準に適合した原材料を用いて製造・加工された食品は流通可能と いうふうに言っていただいておりますけれども、この運用に当たって、例えば、どこか の段階で流通を保留する等の措置が起きますと、いたずらに原料ですとか、製品を我々 廃棄せざるを得ない。事業者の信用を失墜する、はたまた膨大な量の分析を強いられる というような混乱が起こる、こういうことが考えられますので、そういうことがないよ うにお願いをいたしたい。  それから5番目に申し上げていますのは、先ほどお話のあった生産地での管理という のが大事なので、その辺をぜひ諸外国、あるいは他のリスク管理部門とも協働をしてい ただきたい。  さらにポジティブリスト制の導入という、あるいは暫定基準の設定というのが国民の 健康保護を前提に科学的方法でなされている。このことを広く国民に理解されるよう に、これは私ども食品事業者の責任でもありますが、理解されるように御努力をいただ きたい。  以上でございます。 ○コーディネーター  ありがとうございました。それでは、農薬工業会、玉川専務理事お願いいたします。 ○玉川氏(農薬工業会専務理事)  まず初めに、食の安全確保の観点から申し上げますと、今回の食品衛生法の改正に基 づきます本ポジティブリスト制度の導入というのは、非常に有効な手段であるというこ とで高く評価できるのではないかというふうに考えております。  しかしながら、我が国における食料の供給といいましょうか、こういうものの実態を 考えるときに、御案内のとおり自給率が40%、言ってみれば海外依存度が60%だという 実態を考えますと、私が声高に申し上げることではないかもしれませんけれども、基準 値が決められ、安全性が確保される大変結構なことでございますけれども、この制度を 有効に活用する、機能するというためにはきめ細かいルールといいましょうか、食料供 給の実態への配慮が必要ではないかというふうに考えるわけでございます。  具体的には、先ほどの説明にもございましたけれども、暫定基準値の設定に際しまし ては、5か国といいましょうか、5つの地域と言いましょうか、こういう基準値を活用 しているというふうなことでございますけれども、単純に平均値を採用するというのが いいかどうかという議論をはじめといたしまして、食料の輸入の実態、農薬の使用実 態、あるいは安全性評価の実態等々を考えながら、きめ細かく基準値を設定するという ことが必要ではないかというふうに思うわけでございます。  2番目といたしましては、先ほどの5か国、あるいは5地域以外の国からも食料がか なり多く輸入されているという実態があるわけでございまして、主要な当該国、輸出国 でございますが、これらにおける農薬の登録、使用の実態あるいは基準値、こういうも のがどうなっているかというふうなことを十分に考慮しながら、きめ細かく設定してい く必要があるだろうというふうに思うわけです。  3番目といたしましては、最初の話、2番目の話、それ以外のところは、いわゆる一 律基準値というふうな考え方になるわけでございますけれども、この数字につきまして は、いたずらに小さい数字をとるということではなくて、先ほど来申し上げております ように、この制度が食の安全の確保のために有効に機能するというふうなことを考えま すと、膨大な量の分析、つまり、農薬の数、あるいは作物の数、それらを組み合わせた 形での分析、これらのことを実際こなして問題のあるものを即座にチェックして流通禁 止するというふうなことの実効性をあらしめるためには、この分析作業の実効性の問 題、分析精度の問題、あるいはコンタミの排除の問題等々、技術的な問題がかなりある わけでございますので、この技術的な問題についての開発ももちろんでございますけれ ども、これらのことを踏まえて、一律のところに入れてくるものというのは極力排除す るととともに効果の上がるレベルにしていただきたいと思います。  最後になりますけれども、これらのシステムの中でいろいろな要素の状況が変更にな った場合には、速やかに基準値等の見直し、設定、改定をすべきであるというふうに考 えるわけでございます。  以上でございます。 ○コーディネーター  ありがとうございました。続きまして、全国農業協同組合連合会の原次長からお願い いたします。 ○原 耕造氏(全国農業協同組合連合会大消費地販売推進部長)  全農の原です。よろしくお願いします。  全農は、いわゆるいろんな立場があるんですけれども、ここに書いてある文章を読み ながら説明をしたいと思います。  対象物質は、いわゆる農薬の部分なり、飼料添加物の部分なり、動薬の部分の3種類 あるんですけれども、どちらかというとやはり議論の中心は、人間の口に直接入る農産 物の農薬というようなことを議論として展開されてきたんじゃないのかなというふうに 思います。  そしてなおかつ、ここで欧米の基準を参考にして一律基準という問題、先ほど来から 諸先生方がおっしゃっていることなんですけれども、この科学的根拠という部分、まさ に皆さんも一緒に考えてほしいんですけれども、ここで集まって議論している問題は、 実は安全の問題なんですよね。安心の問題ではないんです。安全の問題というのは、基 本的には、数字なり公共性の問題なり科学的根拠の問題、みんなが納得をすると。100 人いれば100 人が納得をするのが安全の問題であって、100 人が百様に違う答えを持っ ているのが安心の問題だと。ここら辺をきっちりと整理した上で議論しなければいけな いのかなと。そうすると先ほどの説明の最後のところで、法律違反でも、食品衛生法違 反でも、許可されることがあるというのはどういう意味なのか私自身が非常に理解に苦 しむというふうなところです。そういう意味では、まさに生産者だけではなくて、消費 者にとっても命と健康を守る安全基準として考えたときに、ちょっと議論が不足し過ぎ ているのではないのかなと、そんなふうに感じます。  それからあともう一点、人間の口に入るということについて、この文章には書いてい ないんですけれども、先ほど来から出ているように、生産基準としての生産条件として の気候と風土の違いが言われていますけれども、さらに違うことは何なのかと。いわゆ る被曝量の問題もひっくるめた上で、ゲルマン人と日本人の体格を考えてみてくださ い。私、ヨーロッパに住んでいて風邪を引いて薬屋さんに行って大人の量を薬を飲むと ひどい目に遭います。子どもの量で飲まないといけないわけです。ですから、気候と風 土の問題は、生産の問題だけではなくて、人間の問題にも大きく関係をするというよう なところの視点から見なければいけないのではないのかなと思います。  それからさらに、今回畜産別経由のポジティブリスト制の問題がここにあるんですけ れども、基本的には直接口に入るのではなくて、飼料の問題等で家畜の体内に蓄積され たもので、それが畜産物として人間の口に入ってくると。要するに現時点で、例えばの 話、牧草から始まって様々な自給飼料の問題、そういうものについては当然残留農薬の 基準はないわけですから、そのまま食べるものではありませんので。そんなふうなこと については、きちんとした議論の中でやっていかないと混乱が起きるのかなと。なおか つ今度は家畜の体内の部位の問題なり、脂肪の問題なり、そういうようなところにどこ に滞留するんだというふうなこと、これは非常に難しい問題ではないのかなというふう に思っています。  そんなようなことで、基本的には命と健康を守るという今まで日本人が余り考えてこ なかったような問題をもう一度きちんと考えて、ここに書いてありますとおり、この問 題はただ単に消費者の健康という問題だけではなくて、生産のあり方、消費のあり方、 流通のあり方々、全般の中で議論しないと、ここに書いてあるとおり、自給率はさらに 下がると。そういう問題も招来しかねないのではないのかなというふうに思います。  以上です。 ○コーディネーター  ありがとうございました。それでは株式会社ジーピーエスの高橋様お願いします。 ○高橋氏((株)ジーピーエス)  私どもは首都圏コープグループとして全国の生産者と環境保全型農業を推進しておる 立場で意見を言わせていただきます。  まず最初に、この間農薬取締法や薬事法の改正などにより、非常に国内の生産者には と厳格な適用をお願いしています。一方で増大する輸入農産物につきましては、実際に 国内出禁止されている農薬を使っていても、現状ではどんどん輸入されてきているとい う実態があります。今回ポジティブリストが作成されたとしても、国内では使ってはい けないけれども、海外は基準地以下であれば、どんどん輸入できるよという実態である ならば、明らかに国内の生産者に対して、いわゆる規制が強化されているという実態に なります。一方、消費者については、そのものが国産品であろが、海外品であろうが、 同様のレベルで安全性が担保されるというのが常識ですし、現実にそのように思ってお られる消費者が多いわけで、基本的にはその差異をきちんと埋めて、そのことをコミュ ニケーションしていただきたいということをひとつお願いします。  2つ目は、農薬と言ってもいろんな種類があり、その安全性も様々です。特に農薬等 の化学物質の一番の大きな特徴は、その使用者が非常に多岐にわたっており、老若男女 問わず、また専門的知識がないものが普段使っているということを前提に、このポジテ ィブリスト性によって評価された内容を使用者にわかりやすく、例えばこれは使用して はならない、これは場合によってはハザードを起こす可能性があるよという具合に、ま ず使用者がわかる情報でこのリスクをコミュニケーションしていただきたい。特に食の 安全という観点で言えば、使用者がきちんと理解できるということが食の安全性の前提 になるのではないか、そういう観点でコミュニケーションなり、数値評価を公表してい ただきたいと思います。  以上です。 ○コーディネーター  ありがとうございました。それでは、日本乳業協会、松島様お願いいたします。 ○松島氏((社)日本乳業協会生産技術委員会委員)  それでは、私どもいわゆる食品メーカーという立場から少しお話しさせていただきた いと思います。  先ほど原さんがおっしゃったとおり、私ども畜産物をそのまま処理するようなメーカ ー団体でございますけれども、基本的に私どもメーカーの段階ですと、実際に農薬な り、動物薬品なりというものがどういうふうに使われているかという実態がわかってい ないといった方がいいのか、わかりにくいといいましょうか、そういうのが見えていな いような状況の中で、実際には消費者の皆さんから説明を求められることがあるという 中で、その見えないという部分に関しては、1番目のところに書いてありますが、原則 的にはそれらは生産段階で使われる、あるいは飼育段階で使われるという中では、逆に そちらの段階でのチェックなりを効果的にやっていただいた方が我々も説明しやすい し、皆さんが納得しやすいのではないかということを書いてございます。  2番目の中では、逆にそうすると、そられの仕組みというのが今どうなっているのだ ろうかということにつきまして、基本的には国なり地方公共団体、いわゆる行政の段階 で農畜産物の生産者のチェックをするような機能というのを基本的な段階の確立をして いただければありがたいなと。逆に我々輸入食品も使っているわけですが、輸入食品に つきましては、モニタリングという中で残留実態の情報をいただいているものもありま すが、それは速やかに公開していただきたいというところじゃないかなと思います。情 報が提供されると、我々メーカーとしますと、本来なすべき製造工程中の微生物制御で すとか、あるいは安全管理ですとかということに傾注できるという中では、より安全な 食品を皆様に御提供できるのではないかというようなことを考えています。  我々食品メーカーというのは、どうしても消費者の皆さんと近いところにおるもので すから、特に加工食品においては、消費者の皆様から説明を求める、悪い言葉で言えば ターゲットになりやすいというところもあるのでしょうけれども、そこに対して一方式 な責任がかかってくる場合が結構多い、説明責任を求められるということになるんでし ょうけれども、そのとき、我々としても説明できないジレンマがあるという中では、今 回このポジティブリストがなされて、薬品の数が700品、六百何品ということで上程さ れる中では、そういう制度を充実させていただければ大変ありがたいなということでご ざいます。  最後に、これらの制度がスタートするにあたりましては、我々食品メーカーももっと 勉強しなきゃいけない部分が当然あると思うんですが、食品を口にされる消費者の皆様 に対する啓発というんでしょうか、そういう部分をどうやってしていくのかも重要なポ イントになるかと思います。いたずらにリストを出して消費者の皆さんがどうなのどう なのということではなくて、それらに対して、だから安全なんだよという説明ができる ような啓発をすることが非常に重要でないかなというふうに考えております。  以上でございます。 ○コーディネーター  ありがとうございました。それでは、反農薬東京グループの辻様お願いいたします。 ○辻氏(反農薬東京グループ)  反農薬東京グループの辻と申します。  農薬というのは、できるだけその摂取を減らしていくことが必要だというふうに思う わけです。そのために、ポジティブリスト制ができたんじゃないかと思うんですけれど も、厚労省の第1次案には、国民の健康の保護というようなものは忘れておられて、書 いてあったのは、流通を混乱させないということが非常に強調されていたわけです。そ このところが非常に私は疑問に思ったわけなんです。世界じゅうからいろんな基準を集 めてきて、コーデックスはそのまま、5か国の違う基準のものは、その平均値というふ うな形でどんどん当てはめていって、そこでは、独自のリスク評価というのがなされて いないわけなんですね。その結果、724 種類の農薬等が決められているわけです。それ は例えばアメリカだったら、厚労省の資料によりますと、動物薬と農薬と含めても450 ぐらいじゃないかと思うんですね。それ以外のものはアメリカの場合は0.1 から0.1ppm  以下ならよろしいというふうな形でなっているとおっしゃるんですね。ですけれど も、724 も決まっていないわけです。こんなにたくさん決めているのは日本だけじゃな いでしょうか。本当にどうやってこんなのを分析するんだというふうに思います。  そしてポジティブリストの場合、例えばアメリカではこうだ、ヨーロッパ、EUでは 0.01になるんじゃないかというふうなお話がありましたけれども、オーストラリアでは もう検出されてはならないとなっているわけですね。それも厚労省の資料にちゃんと書 いてあるんですけれども、先ほどの御説明では、オーストラリアはこうなっているとい うことは言ってくださらなかったわけです。ですから、必ず一律基準があるというわけ じゃないわけですよね。一律基準について、私たち非常に疑問に思うのは、毒性が評価 されていないようなもの、それから海外にもどこにも基準がないようなものは一律の基 準を決めるという話なわけです。そうするとリスク評価は要らないじゃないですか。食 品安全委員会にADIを決めてもらう必要はないんじゃないかと思うんですね。本来な ら、そのような物質こそ不検出にすべきだというふうに思うわけです。  もう一つ一律基準でわかりにくいところは、例えば一律基準が0.1 から0.01の間に決 まるんじゃないかというふうに言われておりまして、私たちはどうしても決めざるを得 ないなら0.01にしてほしいと思いますけれども、現在13種類の不検出農薬があります が、それの検出されてはならないという農薬の検出限界がありますよね。それで見ます と、例えばダミノジットなんかでしたら0.5 ですよ。そうすると検出されてはならない というのは実質的には0.5 以下ならいいということになるし、ほかの一律基準が0.1 あ るいは0.01ならば、それ以下にしなきゃいけないわけでしょう。だから、こういう点で は一律基準とか不検出農薬、それから基準なし、これらのものが実際のところ、どうい うふうに運用されるのか、ダミノジットは検出されてはいけないけれども、0.5 以下な らいいというふうな話だったらおかしいじゃないかということです。 ○コーディネーター  ありがとうございました。それでは、全国農協青年組織協議会参与の原様お願いいた します。 ○原 拓生氏(全国農協青年組織協議会参与)  農協青年部の原と申します。農協青年部といいますのは、全国の農業者、概ね45歳ぐ らいまでの農業生産者の団体であります。私自身も、和歌山県で梅と柑橘を生産してお ります。先日の台風6号で直撃を受けまして、ちょっとへこんでおりますが、頑張って いきたいと思います。  農薬につきましては、当然、生産者自身が一番被爆するものですから、できるだけ使 いたくありませんし、安全性にかかわるものですから非常に神経を使ってやっておりま す。ただしかし、必要な量を確保して消費者の方々の求める品質の農産物をつくろうと 思えば、現状では、最低限の農薬は使っていかざるを得ないのではないのかというふう に思っております。特に安定的に供給するという観点からも、多少は使っていかなきゃ いけないのではないのかと。ただやはりそのためには、使用する場合は特に使用基準を きっちり守ると、そしてその使用を記録しておくと、生産の履歴を示すということは生 産者にとって当然のことだろうというふうに思っております。  さて、ポジティブリストの件でありますけれども、一定基準というのを検討されてい ると聞いておりますが、生産現場としては、そういう欧米の基準を一律に採用するので はなくて、高温多湿、また日本の現場では多種多様な農産物を小量多品目つくっており ますので、ぜひそういう現場の意向を踏まえて配慮しながら基準を設定していただきた いというふうに思っております。  もちろん食品の安全性は最優先で確保しなきゃなりません。しかし安全で安心で多様 に富んだ農産物を供給する我が国の農業を守り発展させていくこと自身も、また同様に 消費者の方々にとっての利益にかなうものだというふうに思っております。ですので、 一律基準の設定に当たっては、安全性を確保しつつ、かつ農業生産を守り発展させる観 点から欧米の基準の整合性をとるだけではなくて、我が国の農業実態を十分に配慮し て、そしてまた科学的根拠に基づいて検討を進めていただくことをお願いしたいという ふうに思っております。こちらにも出ておられますけれども、ぜひ厚生労働省と農林水 産省としっかりとコミュニケーションをとって生産現場が混乱を招かないような方法で 実施をしていただきたいというふうに思っております。  以上です。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  それでは、非常にたくさんのご意見をいただいているところですが、またお時間が短 かったこともありまして、また御発言し足りないこともあるかと思いますが、すべてを 意見交換として取り上げるのも難しいかと思いますので、皆様から今回御表明いただい た意見につきまして、大きく5つに絞って議論をさせていただければと思います。ま た、後ほど時間が少しありましたら、自由に御発言いただく時間を設けたいと思いま す。  まず5つのテーマとして非常に多かった意見として、暫定基準とか、一律基準の決め 方について、科学的に妥当なのかどうかとか、そういったことがございましたので、ひ とつ基準設定方法についてということで議論してみたいと思います。  それから2つ目といたしまして、暫定基準はあくまでも暫定ですので、これを決めた 後の基準設定についてどうするのかというような御意見があったかと思います。  それから3つ目といたしまして、ポジティブリスト制施行後の取組ということで、こ れはいろいろ生産とか、製造、輸入とかでどんな取組が必要なのかとか、もっとお知ら せで必要があるんじゃないかといった分析法その他についてのテーマがあったかと思い ます。  それから4つ目のテーマといたしまして、ポジティブリスト制の理解、こちらは消費 者等の方になるのではないかと思いますが、理解の促進についてどうすべきかみたいな 御意見があったかと思います。それから最後になりますが、ポジティブリスト制導入と いうことで国内農業への影響、こういったものがあるのではないかという意見をいただ いていたかと思います。この5点で最初に議論を進めさせていただきたいと思います。  まず1点目でございますけれども、暫定基準や一律基準の設定方法についてというこ とでございます。基準については、第1部のところで宮川補佐からも御説明いただいた ものの中にもいろいろ働いているところはあるかと思いますが、今回提出いただいた中 には、そもそも暫定基準そのものを設定しないで「検出されない」というような基準を 設定すべきではないのかというような厳しい御意見などもいただいているところでござ います。この基準設定の考え方、方法について議論してみたいと思います。どなたか御 意見ある方いらっしゃいますでしょうか。中垣課長お願いいたします。 ○中垣基準審査課長  中垣でございます。この暫定基準の設定方法の議論に入る前に、今パネラーの方々か ら幾つか御質問みたいな話がございましたので、それに答えていきたいと思います。  1つは、違反食品の取扱いについての御照会がございました。資料の1の9ページの 一番最後のスライドのことだろうと思っております。ここで述べておりますのは、決め られた基準に合わない方法を原材料として使った食品であっても、「最終食品等に食品 衛生上の危害が認められない場合等にあっては、同法22条に基づく対応」ですから、例 えば回収命令ですね。回収命令をするとか等の措置をとる必要がないと認められる場合 もあるのではないかということを言っておるわけでございます。  どういうことかと申し上げますと、例がいいかどうかわかりませんが、ぶどうを生産 するときに農薬がたくさんかかってしまった。違反のぶどうが仮にできてしまったとし ます。それからワインをつくる、ワインからリキュールをつくる、そこでつくられたリ キュールをケーキにほんのちょっと香りづけに使う。このケーキ回収命令をかけるかど うかというような議論でございます。  具体的例として考えていただくとおわかりいただけるだろうと思いますが、法理論的 に申し上げると、違反からつくられたものは違反という違反の連鎖がどこまでも続くわ けでございますけれども、そこは食品衛生法の本来の趣旨にのっとって考えるべきでは ないかというのがこの通知の趣旨だろうと思います。  また、2番目の議論として、オーストラリアの話がございました。オーストラリアは よくよく調べてみると、ポジティブリスト制をとっていないということがわかりました ので、そういう意味で途中で資料を変更したのだろうと思います。  また、3番目の問題として、不検出農薬の問題がありました。具体的にダミノジット という話がありまして、さすが辻さんよく調べてあるなと思っておるわけでございます が、我々もその問題は実は気がついておりまして、一律基準については、皆さん方から も発言がございましたように、あるいは担当からも説明しましたように、0.1 から0.01 ppm ぐらいを検討していただいておるわけでございますけれども、そのような事態、仮 に0.01になった事態においても、不検出農薬の検出限界との齟齬が生じないよう、実は 研究開発に入っております。この施行までには、ダミノジットの検出限界についても、 0.01を下回るのだろうと考えております。それは仮に一律基準が0.01にならない場合に あっても、不検出農薬の検出感度を上げるというのは意味があることだろうと考えてお りまして、そのような努力をしております。  その上で司会者の意に沿って暫定基準の設定方法について話をしたいわけでございま すが、まず1番目の大前提として御理解願いたいと思っておりますのは、国内での取扱 いでございます。国内は、ここに農林水産省の方、室長お二人座っていただいておりま すけれども、農薬だと農薬取締法、動物薬だと薬事法のもとで、その使用、販売が規制 されておるわけでございます。この国内で使用が認められておるものについては、すべ て必要があれば残留基準をつくる。もちろん残留しないものもあるかと思いますけれど も、要するに国内での齟齬がないようにするというのが大前提の一つでございます。  また、原則論から申し上げますと、いろいろな御意見を当然のことながら賜っており まして、参考資料の3の10ページを御覧いただきたいと思います。暫定基準の設定とい うのは、昨年10月に暫定基準の案を公表いたしまして、千何百の意見をいただいたわけ でございますけれども、そのうち一番多いのが暫定基準の設定方法でございます。参考 資料3の10ページの問4−1というところを御覧いただきますと、(1))はコーデッ クス登録保留基準、外国の基準の中で一番低いのにしろと、(2))も同様の御意見、 (3))は、国内基準がなくて、外国基準がある場合の外国基準の中で一番低くすべき (4))は、今度は逆に一番高くすべきと。(5))が十分な配慮をしてほしいというよ うな御意見であって、いろんな立場からいろんな意見が交わされておるところでござい ます。  この回答案のところを御覧いただきますと、一応原則を整理しております。その整理 は、10ページの一番下から始まるんですけれども、我が国は、WTO条約に加盟してお るわけでございまして、WTO条約の中で国際基準を基本とするということがうたわれ ておるわけですから、そこに基本を置くというのが国会の御意思だろうと考えます。11 ページに入りまして、その国際基準がない場合、コーデックス基準がない場合にどうす るかということでございますが、先ほど大前提として申し上げた国内の齟齬が生じない ようにするということから申し上げて、国内の基準、登録保留基準等を採用するんだと いうことが2番目のところに書いてあって、「また」から始まる段落ですが、コーデッ クスもなく我が国の基準もない、この場合には外国、欧米の基準を参考にさせていただ きます。その欧米の基準をどうするか、この場でもいろんな御意見があるのだろうと思 いますが、例えば、Aという国が0. 1、Bという国が0.3 だったということが当然のこ とながらあり得るわけでございます。0.1 にすべき、0.3 にすべきという御議論もある わけでございますが、いずれの国も国内産品ではなくて、輸入品についても同じ規制を 課しておるというようなことを考えていきますと、その真ん中というのが、国際的にも 国内的にも受け入れられるのではなかろうかというのがここでの考え方でございます。  その考え方を原則とした上で、当然のことながら、個別にはいろんな事情というのが あるのでしょうし、いろんな科学的なデータというのも当然あるのだろうと思うわけで ございます。その原則から外れるものについては、透明性をもって広く資料を公開しな がら、その例外というのも当然あり得るのだろうというふうに考えておるわけでござい ます。  以上でございます。 ○コーディネーター  ありがとうございました。辻様どうぞ。 ○辻氏  今中垣さんからお話があったんですが、先ほどのぶどうの例で言いますと、ケーキは 回収しないというのはわかるんですが、リキュールはどうなんですか。 ○コーディネーター  中垣課長お願いいたします。 ○中垣基準審査課長  個別に申し上げると、どれぐらいぶどうに残っていたのか、ぶどうからつくったワイ ンに残っていたのか、ワインからつくったリキュールに残っていたのかということの前 提を抜きに、辻さんの質問に答えるというのはなかなかつろうございます。 ○コーディネーター  よろしいでしょうか。 ○辻氏  ケース・バイ・ケースということですね。 ○中垣基準審査課長  個別具体的に考える必要があるのだろうと思っております。 ○辻氏  わかりました。もう一つお聞きしたいんですが、先ほどダミノジットの検出限界は 0.01に下げるというふうにおっしゃったんですけれども、ほかのものも当然そういうふ うに下がると思いますが、ただ、0.01だと、一律基準が0.01になる可能性もあるわけで すから、そうすると、不検出農薬と一律基準とはイコールになってしまうのではない か。 ○コーディネーター  中垣課長どうぞ。 ○中垣基準審査課長  0.01にするとは、私、申し上げたかもしれませんが、仮にそうだとすると、それは間 違いでございまして、0.01を下回るようにしたいと考えております。その結果として、 現在の科学的なレベルで0.01しかできないのであれば、皆さんにそういう説明をし、わ かってもらう努力をする必要があると思います。0.01よりも下になるのであれば、それ にこしたことはないし、また一律基準の方も0.01に決まったわけでもございませんか ら、ただ、それに向けた努力、準備はしているということでございます。 ○コーディネーター  渡邉様どうぞ。 ○渡邉氏  不検出の農薬というのは、ヨーロッパなどは基本的には使わせたくないという立場で の規制は行っていると。要するに、食品の規制だけではなくて、農薬の規制として登録 をさせないという方向、こういうことも併せて考えていくということが必要なのではな いかというふうに考えております。 ○コーディネーター  ほかに御発言のある方はいらっしゃいますか。 ○中垣基準審査課長  今の渡邉さんの意見については農水省の方からお答えいただいたらどうかと思うんで すが、私が理解している範囲では、この不検出の農薬等については、国内では使用を禁 止されておる、登録がないということで理解しております。ただ、世界にはいろんな国 があります。そこから輸入されてくるというのも当然考えられるわけでございます。そ ういう意味で水際の規制として我々はやっていかざるを得ないというふうに考えており ます。 ○コーディネーター  横田室長お願いします。 ○横田農薬対策室長(農林水産省)  農水省の方からということでございましたので。基本的な使わせたくないというの か、実際上問題があるというものについては、農薬の方で登録は当然しないことになり ますし、また途中で科学的にも安全性に問題があるといった場合には職権で執行させま して、場合によっては、回収もさせるということも考えておりますので、そういう面で の安全性の担保ということは考えているところであります。 ○コーディネーター  ありがとうございました。ほかに御発言のある方は。 ○正木氏  コーデックスでADIが約200 ぐらいあるような気がしたんですけれども、日本の基 準と違うものが若干あります。先だってEPNの見直しをなさったときに、ADIを変 更なさったものもありましたけれども、今後も、こういった見直しがかなり行われるの か、それは科学の進歩によって新たな視点からの試験や試験の精度が高まったためなの でしょうか。 ○コーディネーター  中垣課長お願いします。 ○中垣基準審査課長 個別具体論にすぐ対応できるほど頭の中にデータベースがありませんから、一般論で勘 弁していただきたいと思いますけれども、ADIの見直しというのは食品安全委員会に お願いをして、少しずつでも進めていきたいと考えております。もちろん業務全体の優 先順位、あるいは利用可能なデータの範囲等々の制限がございますから、今直ちにお約 束できるような状況ではございませんが、たしか平成11年ごろからADI、あるいは基 準値の見直しというのを進めてきておりますし、昨年の半ばぐらいからこの暫定基準、 あるいは一律基準の検討等のポジティブリスト制の導入に向けた作業に集中しておりま すので、ちょっと一休みの感もありますが、基本論から申し上げると、正木さんのおっ しゃるとおり、科学技術の進歩に応じてADI、あるいは基準値というのは見直される べきものというふうに考えています。 ○コーディネーター  正木様よろしいでしょうか。 ○正木氏  はい、結構です。そうすると、ADIの見直しによって当然残留基準も違ってまいり ますよね。そういう作業は結構これからもたびたび行われる可能性はありますか。 ○中垣基準審査課長  まさしくおっしゃるとおりで、ただ、人とかデータとかの限界もあります。とにかく 危険度が高いというのか、そういうものは見逃さずにやっていく体制が省全体あるいは 政府全体として求められているのだろうと考えていますいろいろな制約の中でそこはプ ライオリティを付けて考えていく必要があるのだろうと考えております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。ほかに発言のある方いらっしゃいますでしょうか。 ○正木氏  さっき時間がなくなって、事前に提出した意見を積み残しましたので。マーケットバ スケット調査では、大人だけのメニューではなくて、子ども向けのメニューもつくって いただいて、子どもたちがどういった農薬をどれだけ摂取しているか、そのADI比な どをデータで示して欲しいと思います。RfD(Reference dose)の問題もありますの で、ぜひ御検討いただきたい。 ○コーディネーター  中垣課長どうぞ。 ○中垣基準審査課長  マーケットバスケットというのは、加工食品あるいは農産物をマーケット市場から買 ってきて、それを分析して、国民調査で求めた国民の食品の摂取実態に合わせて計算し 直して、一日に国民の方が摂取している農薬や添加物などの量を調べる調査をしている ものでございます。  そういう点から申し上げますと、正木さん御指摘のとおり、幼小児は食べるのが、例 えばお菓子であるとか、あるいはジュースの類であるとか、そういうものに偏るのだろ うと私も思います。しかしながら一方で申し上げますと、マーケットバスケット調査に しても、あるいは農産物を分析した結果にしても、先ほど担当の方から最後に御紹介を し、今厚生労働省のホームページに掲載されておりますので、ぜひそれを御覧いただけ ればとは思うんですが、例えば検出される農薬というのは、50万件検査をして2,000 件 程度に過ぎません。またマーケットバスケット調査を平成3年からやっておるわけでご ざいますが、分析法の問題で検出限界がどうしても下がらずに見かけ上のADI比が高 くなったものもありますけれども、それを除くと数%以内にとどまっております。  それから考えてみると、試算をしていく上で幼小児の試算というのは当然やっていく べきだろうと思っておりますが、マーケットバスケット調査自体をそういう形に組みか えていくというのは、負担の点から申し上げますと、暫定基準で600 ぐらいの農薬をつ くる基準をつくっていく方向である、それについてもっと調べてみたいというようなこ とからいうと、どちらを選んだらいいのか、全体の作業がある程度制約がある中でどう したらいいのかというふうに考えておる次第でございます。  またRfDの問題も御指摘されました。RfDというのは、急性毒性の参照用量と言 われているものでございまして、例えば、米とか小麦とかこういう粒が小さいものとい うのは、農薬も分析しますし、食べる上でも1杯の茶碗に米粒が何粒あるのか私正直言 って知りませんけれども、粒数にするとたくさんになりますから、そういう急性毒性み たいなものは実は報告されていないんですが、すいかであるとか、りんごであるとか、 そういう粒が大きなもの、要するに1個食べるという、あるいはすいかですと1切れな んだろうと思うんですが、たまたまた農薬が集中的に残留するということがあって、そ ういった急性毒性的なものを考えるべきだということが今取り上げられつつあるところ だと思っております。  厚生労働省としては研究班でどのような取り上げ方があるのか、それと基準との関係 をどうするのか等々今研究してもらっているところでございますから、来年の今ごろに は、研究班の報告が出てくるものだろうと思いますし、そのようなことをしつつ、この 急性毒性的なものについても取り組んでいきたいと思っております。 ○正木氏  コーデックスでも取り上げているようですので、その辺もどうぞ注目していただきた いと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。  それではお時間の方もございますので、次の2つ目のテーマの基準設定後の暫定基準 が終わった後の本格的な基準設定についてということで少し意見を交換していただけれ ばと思います。  1つはマーケットバスケット調査のようなもので優先順位を付けたらいいのではない かという御意見や、それから適切な時期にどんどん基準をつくっていただきたいという ような御意見をいただいていたかと思います。御発言どなたかございますでしょうか。 ○辻氏  マーケットバスケット方式による農薬の摂取量なんですけれども、先ほどちょっと正 木先生の方からお話が出ていましたが、やっぱり乳幼児の食事というのは全然違うわけ ですよね。フードファクターというのを厚労省の方で発表していますけれども、特に牛 乳だとかそういったようなものというのは、大人の平均よりもずっと多くなっているわ けですから、そういう意味で言ったら、やっぱりどうしても子どもの基準というのが必 要になってくると思うんですね。子どもとか胎児も含めて。そういうふうな研究は優先 順位が低いみたいなことを中垣さんおっしゃっていましたけれども、子どもの方が化学 物質に対する感受性というのは大人よりもずっとするどいし、しかも不可逆的な影響を 受ける可能性もあるわけですよね。これから子どもが少なくなるし、キレやすい子ども がいるなんていうふうなことが社会問題になっております。できるだけ化学物資を少な くしなきゃいけないし、大人よりも少なくしなきゃいけないのに、その大人の基準でい ってしまうというところはどうしても納得できません。やはり子どもの食べる献立、マ ーケットバスケット方式以外に陰膳方式というのが昔ありましたけれども、そのような 方式でも、農薬摂取量というのは、子どものものはとれるのじゃないのかと思うんです ね。 ○コーディネーター  中垣課長お願いします。 ○中垣基準審査課長  まず2つに分けて議論をしていただいた方がいいのだろうと思います。子どもの安全 確保を二の次にするなんて私は一言も言った覚えがありません。むしろ子どもを曝露評 価の対象にする、例えば平成10年の食品衛生調査会の意見具申等々に携わってきたつも りですし、そのようなことは全く考えておりません。  2番目に、先ほどマーケットバスケットの中で子どもの試算を優先するかどうかとい う議論については、実態調査としていろんな農作物、あるいは加工食品を分析してみて も、非常に低い農薬の検出割合である。大人のマーケットバスケットもADIの数%程 度にとどまっておるというようなことから考えると、子どもでやったところで、いろん な今までの試算の経験から言うと、に公表しておりますので、皆さん方も御存じだろう と思いますが、大人と子どもでは、食品の摂取量そのものが子どもの体重キロ当たりで は多いということもあって、多いという試算が出ております。ただ、大人で数%に過ぎ ないものが子どもにしたら、例えば10倍あるというようなことはちょっと考えにくいの ではないかというようなことを申し上げたというふうに考えております。 ○コーディネーター  ただいまの説明で、辻様何か追加のコメント等ございますか。 ○辻氏  検査して検出率が非常に低いというふうにおっしゃっていますけれども、普通、検体 数ってありますよね。それに厚労省の方は検査農薬数を掛けて分母を大きくしているん ですよね。常識的に考えれば、検出されているものが検出された数÷検体数でやってい けば、何らかの農薬が検出されたというのは20%近くあるんじゃないかと思うんです ね。ですけれども、厚労省のあれでいくと、もっともっと一桁も二桁も低い数値が出る わけです。農薬数まで掛けて分母を大きくしているじゃないかと思うんですよね。 ○中垣基準審査課長  確かに辻さんがおっしゃるように、検体数を分母にするやり方というのもあるんだろ う思います。統計のとり方としてそういうふうな数字も示せるかどうか、ちょっと将来 的に検討してみたいと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。ほかにこの設定後の基準設定について何か御議論のある方 は渡邉様お願いします。 ○渡邉氏  前提基準をつくらざるを得ないということについては理解をしておりますが、その後 どのように優先順位等をしていったらいいのかという議論でございますので、やはり私 の意見書の中にも書いてありますけれども、本来は、きちんとリスク評価をして基準値 を決めていくというのが筋ですから、国際的な基準が順次決まっていくというものにつ いては、やはりそれに合わせて基準値を再設定するということで、優先的に行うという ことであったり、それから5か国というのは先進地域でございまして、それ以外、例え ばアジアというのが端的だと思いますけれども、アジアから輸入農産物というのはかな り多いということからしますと、アジアで使われている農薬で、国際的な基準がないと いうものについては、やはり要請制度ということも使って、現地の農薬のメーカーなり が基準設定を要請するという制度はあるということなんですけれども、それを待ってい るとなかなかできないということもあろうかと思いますので、むしろ、そういうところ に積極的に基準をつくるべきだということなので、資料を出せというふうに日本政府か ら働きかけて、アジアで食べている食品の安全確保という観点からも、イニシアティブ を発揮して残留基準をどんどんつくっていくということもやっていただきたいなという ふうに考えております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。何かコメントのある方いらっしゃいますか。 ○辻氏  食品添加物の場合は、その加工品などにどういう添加物を使ったかというふうなのを 輸入するときに書類で出しますよね。農産物の場合も、国内ではトレーサビリティとい うのが非常に進んでいて、そういうふうな方向に行っているわけですよ。ですから、輸 入する農産物についても、これはどういう農薬を使っているのだというふうな書類を付 けさせるということが必要じゃないかと思うんです。そうしたら、分析するのはやりや すいし、すべてをこんなに分析する必要はないと思うんですね。 ○コーディネーター  もし誤解がなければ、国内のものでも、なかなかホウレンソウとかには付いていない かと思うんですけれども、コメントは何かございませんですか。 ○中垣基準審査課長  辻さんが何を言おうとなさっていることは、ある面でいくと理解できるんですけれど も、生産に携わっておられる方々、いかがでございましょうか。 ○原(耕)氏  これは別に法律で決まっているわけじゃないんですけれども、BSEの問題、それ以 前、無登録農薬の問題もひっくるめた上で、基本的には農薬が残留しないようにという ことで様々な取組をしているし、隣の高橋さんに物を売るときには、事前に全部残留だ とか、カドミから始まって、そういうふうなものも一応きちんと検査をしなきゃいけな いだとか、いわゆる取引条件の中にももう既にそういう部分が入っているものがかなり の割合で増えてはきております。  ですから、やはり一番のポイントは、残留農薬の検査にしても、サンプリングの手法 ですとか、そういうところがまだきっちり固まっておらないだとか、前作との関係、そ れから飛散の関係、正直言ってまだそこら辺のノウハウまではないし、なおかつコスト をどうするかで、我々のところでもそういうセンターがあるんですけれども、なかなか 人件費まで賄えるような料金がいただけないというふうな実態もあるものですから、そ このところは極端に言えば、統計数字としてきちんと安全性が担保できるようなサンプ リングは当然無理なものですから、だけれども、できる範囲内でやっておるというのが 実態です。もちろん、すべてではありません。 ○コーディネーター  ありがとうございました。農林水産省の方でも、実際農作物の生産に当たっては、記 録の記帳とかの取組など進められて思いますが、御発言いただいてもよろしいでしょう か。 ○横田農薬対策室長  特に農薬の方の話なんですけれども、私どもの方で使用基準というのを省令で、これ は環境省と一緒に定めておるんですけれども、その中で使用方法とか、そういうことに ついては罰則付きでかなり厳しい基準等を設けておるんですけれども、プラスアルファ であんまり注目はされないんですけれども、その中に記帳をきちんとしましょうと。た だ、これは100 %義務付けるとなるとなかなか難しい面がありますので、努力してやっ ていきましょうということをやっています。それにプラスアルファして、消費者の方々 からどういう農薬をいつ使っているんだという要望もかなり出ていますので、各地域の 方については、取組が進められているというふうには伺っております。 ○コーディネーター ありがとうございました。あと、農薬の専門の立場から梶原先生にも御出席いただいて いますので、ちょっとコメントをいただければと思います。 ○梶原氏(緑の安全推進協会会長)  梶原でございます。いろいろ御議論あるようでございますけれども、私どもとして は、実際にグローバルに考えて、これから食料をどういうふうに考えていくかというこ とになりますと、やはり病害虫による被害というのは非常に大きいからこれは何とかし なきゃいけない。その中でどういうふうな防除法を考えていくかということは、最近は なるべく農薬を使わないような形でという技術的な開発もされておりますけれども、や はりこれまでの実績から考えて、農薬というのは非常に大きな役割を果たしているとい うことは常に申し上げているところでございます。私どもの機関で実際に農薬を使わず に生産できるのかどうかということを試験した例もございますけれども、作物によって も違いますが、例えば穀類ですと大体35%は病害虫で被害を受ける。果樹やなんかに至 っては100 %に近いというふうなデータが出ているわけです。原さんも御指摘になって いるように、そういうことからすると、農薬というのは、適切に使っていくということ が基本であろうというふうに私どもも考えているわけでございます。  皆さんが御指摘になるように、最近は残留の問題とかいろんなことを農家の方も十分 留意されておりますし、行政の方も今御指摘にありましたように、十分留意してやって いるというふうなことでございますので、安心して使っていいんじゃないかというふう に私どもは言っているところでございます。農薬のメーカーさんの方も、特に不検出に 該当するような化合物というものは一切最近は使っておりませんので、国内の生産につ いては十分安心しておられていいんじゃないかというふうに思います。ただ、輸入品に つきましては、若干御指摘がありますように、国等によってはチェックをしていかなき ゃいかんところもあるんじゃないかというふうに私は考えているところでございます。  以上、お答えになったかどうかわかりませんが。 ○コーディネーター  ありがとうございました。高橋様、先ほど手を挙げられておられましたが。 ○高橋氏  先ほど辻さんの方で農薬情報の全部の公開と、これは基本的に先ほど農水の方も言わ れたとおり、義務化はされていないけれども、かなり進んでいると。ますますそうなる と、輸入農産物の情報面での公開でも一つはギャップが出てくるということと、それか らちょっと法律が変わるんですけど、公開するとなると、うそは言ってはいけない。正 確な表示、いわゆる表現を公開する問題と、それから今言った農薬データを一個一個全 部出すというのはまた別の問題になってくるわけで、今議論しているのは、どっちかと いうと、食品としての農産物としての安全かどうかという評価の問題になると。そうす ると、今回ポジティブリストの話になると、先ほども一番心配されているのは、どれだ け検査で担保できるんですかと。どんなに記帳した情報を見ても、それでは、今回出て いる数字は見えてこないわけですから。使ったかどうかはわかりますよ、だけど、そこ を担保できるのかどうかというのが一番心配になる。民間の検査センターが多くできて きます。多分検査ラッシュになるんじゃないかなと。そのときに民間の検査データの数 字というのは、例えばその数字を持って回収しますよとか、違反ですよとまず言えるの かどうか、あるいは公的に定めた検査法なり、公的機関の数値しか採用されないのかど うかといったところも含めて、その辺をどう担保されるのかということで、あくまでも 記帳というのは、この法律ではそれを補完するべきものとしてしか考えられないんじゃ ないかなと考えておりますが、その辺はどうでしょうか。 ○コーディネーター  コメントを、境室長お願いします。 ○境薬事・飼料安全室長(農林水産省)  動物用医薬品を例に申し上げますと、約定の規定に基づきまして、MRAで設定され た場合には、畜産物がその値が超えることがないように動物用医薬品の使用の規制に関 する省令において使用基準を定めています。具体的には、動物用医薬品ごとに使用でき る対象動物、それから使用量、それから出荷制限期間、それを決めておりますので、そ こをきちっと生産者が守れば、MRLを超えるような畜産物が出荷されることはないと いう仕組みになって、実効性が担保されるという仕組みになっております。この使用基 準につきましては、守らなかった場合には、薬事法上の罰則が規定されております。 ○コーディネーター  ほかにコメント何かございますか。 ○宮川基準審査課課長補佐  私もポジティブリストの検討をずっとやってきている中で、実際にこれが施行した後 にどのような形になるのかという問題があろうと思いますけれども、国内は国内で使用 の法律があって、それで食品の残留規制があるという、こういう二本立てになっている わけですけれども、恐らく海外でも主要な国では使っていい農薬、使い方、そういうも のも基本的にはルール化をされているんじゃないかというふうに考えています。ですか ら、恐らく考え方としては、まずその使い方というのを、それは国内品であっても、輸 入品であっても、ちゃんとそのルールに従って使っていただくと。その大前提のもと に、それがちゃんと行われているかどうかを客観的に考える上でモニタリングをする、 行政がモニタリングをするなり、そういうクロスチェックというような考え方になるの ではないかというふうに考えますけれども、その前提の使用のあたりがぐらぐらしてい るようなところだと、これは幾ら検査をしても、幾らやっても、幾らコストをかけて も、それは余り意味のない話でしょうから、その2枚の、国内でやられているように、 農薬取締法で使用の規制があって、使用される方もちゃんとその前提を守ってやってい って、初めて食品衛生法の残留基準、これが守られているかどうかをほかの人間が確認 をしていくという組み合わせというものが一番理想的なんだと思います。したがって、 輸入食品とかの監視のやり方なんかというのは、これからいろいろと厚生労働省の検疫 をやっている人間なんかも今後考えていく必要があるのではないかなと考えますけれど も。 ○コーディネーター  何か御意見等ございますか。 ○原(拓)氏  先ほど生産現場の履歴等についてお話があったので、私、唯一の農業生産者でありま すので、多少お話ししていきたいなというふうに思っております。  先ほどから農水省の方が言われていましたように、努力目標でありますけれども、実 質記帳していつでも公開できるような方法を持っていないとほとんど売れないというの が現状でありますので、そういう形で生産現場では必ず記帳をして、そして特にJAな んかでまとめていつでも公開できるような方法でやっているというのが現状です。当然 すべてではありませんが、そうでないところは安く取引されているという現状であろう というふうに思っております。  ただ、やはり先ほど全農の原さんも言われましたように、コンタミの問題であります とか、それと、マイナー農産物の農薬登録の問題等がありますので、それを早くクリア をしていただいて、生産現場が安心してできる中で今回のような基準が設定されるよう お願いをしたいというところであります。 ○コーディネーター  ありがとうございました。どうぞ松島様。 ○松島氏  ちょっと1点だけ。使用基準とか、さっき私も申し上げたんですが、使用実態がわか りにくい。私ども加工食品メーカーなので、農産物を買って加工して販売する。特に我 々の使っている牛なんかでいきますと、農産物、葉っぱとか果物ですと実際に農薬を使 う方が生産者ですので、実態というのは非常にわかりやすいんだと思うんですね。動物 用医薬品の話でいきますと、獣医さんという方が中に介在されちゃいますと、出荷する のは農家さん、出荷するもとは農協さんなんですが、獣医さんという方がいて、動物用 医薬品、注射を打ってくれるといった中で、その辺のところがちょっと見えにくい部分 が若干あるのかなという感じがしていたりします。もちろん、きちんと記帳されている 方もいますし、そうでない方も実際上はおられるんだと思うんですね。そんなことのあ る中では、さっきおっしゃったように、その辺のところをどうやってモニタリングして いくのか、あるいは使用基準を守っている部分をどうやってチェックしていくのかとい うのは、川下からどうやっているんですかと聞かれたときに、川上から大丈夫ですよっ て答えなきゃいけないという中では非常に大事なのかというふうに感じています。 ○コーディネーター  ありがとうございました。今の中で実際の施行されてからの担保とかかなり議論が入 ってしまっていますので、それも含めて議論をさせていただいたという整理をさせてい ただきたいと思うんですが、次に、ポジティブリスト制の理解を促進するためにどうし ていったらいいのかということについて少し御議論いただきたいと思います。制度全体 に対してまず消費者にも理解してもらう必要があるのではないかとか、輸入国での理解 の促進、これも先ほど話題に入っているかと思いますけど、事業者にどうやって理解を していってもらったらいいのかというようなことがあったかと思います。コミュニケー ションという観点なんかもございますが、林先生、何かコメント等ございませんでしょ うか。 ○林氏  林でございます。ポジティブリスト制を理解するためには、農薬そのものの理解が必 要です。先ほどのお話の中で意見が食い違っているところがありましたが、その背景に は農薬そのものについての理解の違いがあるように感じました。  実は私は退官して9年間、農薬から離れていますので、今回出席させていただくに当 たってEUUKにおける農薬の規制をインターネットで調べてみました。その結果、ロ ジックに従って追っていくと農薬の規制考え方がきちんとよくわかるように準備されて いることが分かりました。リスクコミュニケーションには必要とする情報の共有が大切 です。その意味でわかりやすく情報公開すること、特にポジティブリスト制の前に農薬 自身の問題の公開が大事じゃないかと考えました。 ○コーディネーター  ありがとうございました。リスクコミュニケーションについては、私どももこのよう な意見交換の場などを通じて、いろいろ消費者等への理解というのを促すような取組を 進めていきたいと思っております。またホームページなどを通じても情報提供等を進め ていきたいというふうには考えております。  農林水産省からも何かコメントございますか。 ○横田農薬対策室長  農薬そのものという話が出てまいりましたので、私どもの方でも昨年度あたり、そう いうリスクコミュニケーションをやってきまして、今年度も、今ちょっとドタバタして いるんですけれども、年度中にはまた一、二回ぐらいリスクコミュニケーションをやろ うかと思っています。あと私どものホームページの方も非常にわかりにくいという御指 摘がいろいろあったものですから、できるだけ具体的に問題ごとに、さっき原さんの方 からもマイナー作物の問題が出たんですけれども、マイナー作物でどういうものについ て、今実際試験計画があるのかとか、特定農薬については今どういう現状にあるのかと いうことをわかりやすく、できるだけ項目別に分けて中身が見えるようにしようという ことでいろいろ進めております。それでも、なかなか不十分でよく理解できないという 御批判がありますので、そういう意見をまたお寄せいただければ、できるだけ御要望に 応えていくような形にしていきたいと思っております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。コメントのある方いらっしゃいますでしょうか。 ○高野氏  人間の歴史なんて言ったら大げさですけれども、やっぱり医薬品が、幾つかの病気を 人類が克服してきたという歴史があるわけで、農薬を毛嫌いする風潮がある。なきゃい いんだ、少なきゃいいんだという論議があるのは、やっぱりどこかで排除しておかない といけないんじゃないかというふうに思うんですね。確かに使い過ぎたり、めちゃめち ゃなことをやっているのはやっぱりだめです。あるいは薬に頼ってはいけないというの は人間も同じことだと思うんです。我々の会員の中にも生産から食卓までということを 見渡すことによって、使わなくても済む農薬を減らそうという努力をしているメンバー がいます。食品業者がいます。でも、そのことは農薬がなくていいんだという話とは全 然違うと思うんですね。その辺の話がどうもずれる。  先ほど全農の原さんがゲルマンの子どもの風邪薬が我々にちょうどいいというお話も ありましたけれども、このベースになるADIの話なんかでも、無作用量の10倍の10倍 という話をしているあたりの理解があんまりできていない、共有されていないんじゃな いかと思うんです。林先生にお聞きしたいんですけれども、こういったものを無作用量 の10倍×100 倍、1,000 にするのがADIとして正しいんだというような論議というの はどこかあるんでございましょうか。 ○コーディネーター  林先生お願いします。 ○林氏  ADIについてですか? ○高野氏  例えばADIというのはどう決めるかなんていうときに、今の無作用量の10倍×10倍 の安全率を掛けてという、これじゃだめなんだという論議はあるのでございましょう か。 ○林氏  歴史的に見ますと、本来はADIというのは、食品添加物の安全性評価についての方 法です。多くの例では安全係数を100 倍にしていますけれども、その理由は、その物質 に対する反応の種差と個体差から100 倍以上になるというような例が非常に少ないんだ という経験則から出てきているんですね。ですから、経験則に合わないものというのは 十分にあり得るわけなんで、特に安全係数を大きく見積もりすぎているとの意見もあり ます。この方法が作られたのは、1956年か57年のころなんですね。今は関連学問が非常 に進歩しておりますから、ケース・パイ・ケースにそれぞれの科学的知見に基づいて安 全係数を求めることや行われていますし、時代に即した方法を考えていく必要があると 思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。高橋様お願いします。 ○高橋氏  まず、このリスクコミュニケーションの問題なんですけれども、1つは、農薬の残留 を測りますよね。今回も多分測って、このものは基準値以下だけども、これだけ農薬が 残留していますよと、何ppm ありましたよと。それを公表することは正しいと思うんで す。じゃ、こっちは測っていないだけで何も出ていない、それは別に基準値以上出たか もしれないし、出ていないかもしれない、ただ、測っていない。消費者は、そうする と、こっちが安全なように思えてしまうという、それは別に農薬情報でも同じなんです よね。  農薬を5回使いましたと、こういう農薬とこういう農薬と、その中には確かにものす ごく安全なものもありますけれども、こっちは何も表示していない。そうすると、表示 していない方がさも安全かのように見えてしまう、あるいはそういう世の中になってし まっているということをまず冷静に考えた上で、その中で消費者にもわかりやすい、数 字がひとり歩きしないようなコミュニケーション制度をきちんと考えないと、今現在で いうと、ある部分だけものすごく一生懸命やって、検査した部分だけ、あるいは使用実 態を一生懸命農家さんが記帳したものだけ公表しますと。そうすると正直者がばかを見 るというか、悪い意味でいけば、ひどい状況になったようなことも含めて、基礎知識も 含めて正しく消費者なり、使用者に理解できるようなコミュニケーションがまず前提に ないと、数字だけ出しても非常に大きな問題があるんじゃないかなと僕は考えます。 ○コーディネーター  背景も含めて理解が進むような形でのコミュニケーションをとっていきたいというふ うには思っております。辻様どうぞ。 ○辻氏  排除されちゃいそうなので、ここで言いますけれども、やはり農薬というのはもとも と生理活性物質であって、そして殺生物剤であるというふうに私たちは思っておりま す。そして今なぜこんなにしつこく言うのかというと、農薬による被害者、農薬以外の 例えば家庭用殺虫剤とか、そういうものもひっくるめて農薬といいますけれども、そう いうものの被害者というのがすごく増えているんですね。化学物質過敏症という病気の 人が増えているというのは実感しているわけです。しょっちゅう電話がかかってきま す。  とにかく増えています。今の人間というのは、すごく化学物質に過敏になっている、 敏感になっている、影響を受けやすくなっているという状況があると思うんですね。あ る一定のレベルを超えると過敏症になってしまって、ほんのちょっとのことで、例えば 呼吸困難に陥ったりとかいろんな被害が出てくるわけです。化学物質過敏症の人たち は、普通のスーパーで野菜を買って食べるということはできないんですよね。ですか ら、そういう人たちもいるんだし、そういう人たちが今現在増えつつあるというところ から、私たち小さい声ですけれども、一生懸命大きな声を出して排除されまいと頑張ろ うと思っておりますが。 ○コーディネーター  ありがとうございます。若干議論が広がってきてしまっています。玉川専務理事お願 いします。 ○玉川氏  今、辻さんの方からは農薬と家庭用殺虫剤の話がありましたけれども、今、司会の方 から話があったように、農薬でこんがらからないようにというまず前提を置いてお話し 申し上げたいというふうに思います。  御案内のように、農薬というのは農薬取締法の中で、先ほど農林水産省から説明があ りましたように、人体はもちろんでございますけれども、作物、環境等、これらに影響 のないように膨大な毒性試験等を実施いたしまして、それで登録になっていると。それ から先ほど梶原先生からお話がありましたように、現状農業については、農薬は不可欠 なものであるというふうなことを前提にいたしまして、私が初めに申し上げましたよう に、現状ポジティブリストを採用したということは大変評価できる話しだと、こういう ふうに申し上げました。ただ、実態として、日本の食料自給率が40%であるというこ と、逆に言えば60%が海外から入っているというふうな実態があるわけでございまし て、海外から60%入っているものに対してどうするかというところで厚生労働省も悩ん でいるのではないかというふうに思うんです。  その話はさておいて、国内の話で言えば、農薬取締法の中で特に、前回の農薬取締法 の改正で、使用方法というのがきっちり定められまして、これを守らなければ懲役3年 以下、罰金100 万円以下というふうな規定まで入ってきているということでございま す。現地におきましては、JA等を中心にしながらトレーサビリティ の運動を実施し ております。トレーサビリティがきっちりしているものについては、使用方法を守って いるということで、先ほど来現地の方からお話がございましたように、安全性という付 加価値を付けたという形でかなり有利な販売をしているというふうな実態もあるようで ございます。  いろいろお話を申し上げましたけれども、そういう中で言えば、まず国内のものにつ いては、先ほどお話がございましたサンプリングして農薬が出ていないものはいい、出 るやつはどうのというのがありましたけれども、これはあくまでもサンプリングではご ざいますが、実際、栽培方法や使用方法は同じでございますので、サンプリングであっ ても、そのサンプリングのものが一般的な生産現場での数値だというふうに理解して、 これは結構だろうというふうに思います。それはきちっとそういう使用方法を行わなけ れば、繰り返しになりますが、農薬取締法により3年以下の罰則、100 万円以下の罰金 と、こういうふうになりますので、それはきっちりやっていると、こういうふうに理解 していいのではないかと思います。  それから先ほど正木さんの方からお話があったと思うんですが、農薬についてよく知 らなきゃいけないということで、昨年から食品安全委員会の方でリスク評価をしていた だきまして、この結果を公表するというふうな話になっておりますので、農薬の中身の 問題についても、それぞれ皆さん方のお目にとまるという形で出てくるのではないかと いうふうに思っているわけでございます。  早口で申し上げましたけれども、農薬そのものの性質、それから使用方法、残留の実 態、食料の6割を輸入している、そういう中でポジティブリストをどういうふうにする のかというところが問題になってきているということを、皆さん方と私どももこれから いろいろなところでディスカッションしていかなければいけないというふうなことでご ざいます。というわけで、私も今日ここへ座っているわけでございますので、よろしく お願いしたいと思います。  国内の問題について今重点的にお話ししましたけれども、海外の問題については、繰 り返しになりますが、私のレジュメにも書いてございますように、海外での実態をよく 調査いただきまして、実態に合った形で安全性が実質的に確保できると、そういう仕組 み、システム、技術の開発も含めまして、これらはぜひお願いしたいというのが私の考 え方でございます。  以上でございます。 ○コーディネーター  ありがとうございました。農薬、それからケミカルその他のもの、いろいろ含めてい きますと非常に深まりのあるものですから御議論が尽きないことかと思いますけれど も、お時間の関係もありますので、ここで最後に、国内農業へのポジティブリスト制の 導入の影響についてちょっと御発言いただければと思うんですが、全農の原次長様、ま ずお願いできますでしょうか。 ○原(耕)氏  私はどちらかと言うと、反主流派みたいな仕事をしているので、全農全体の意見を代 表しておるかどうかはちょっと横に置きまして、今回のポジティブリストそのものは、 今日これだけ皆様から、また会場からも多分いろんな意見が出ると思います。そういう 意味では、農薬というものをきっちり、要するに善玉か悪玉かとかそういうふうなこと じゃなくて、自分たちの食生活と農薬というものがどういうような関係になっているん だと。  正直言って、あそこにいる原君だって、農薬を使いたくないに決まっているけれど も、使わないと自分の生計が立たないと。これは今ほとんどの生産者を代表する声だと 思っています。ですけれども、そういう中でも生産者はそういうのを使わないような努 力は日々しているのであって、それを今度農水省がギャップというような格好の中で、 衛生管理とは別にしながら、適正農業報道規範という形で具体的に消費者にわかるよう にしていかれるのだろうと、そんなふうに思っています。  ですから、私とすれば、今回のは正直言って僕の勉強不足もあったんですけれども、 何かスケジュール闘争みたいな感じになっちゃっていて、もう少し我々は我々で、たま たまこういうポジティブリスト、あと無登録農薬問題になっちゃうといわゆるネガティ ブが部分議論になっちゃうものですから、逆にそういう意味ではポジティブな議論がで きるような場をどんどんつくりながらやっていくのが逆に国内農業を支持してもらう方 々を増やしていくというようなことではいいのかなと。  あともう一つは、これは食品、要するに食品ということの残留にずっと限った議論な んですけれども、やはり私自身は別に農薬とか肥料を否定する派ではないんですけれど も、やっぱり生態系への影響ですとかそういうことは、今は一般的に皆さんが思ってい らっしゃることなので、それはまさに先ほどの先生の方からもヨーロッパの話も出まし たけれども、まさに土中残留の問題、また大気の問題、様々な自然環境に影響を与えて いるのか与えていないのか、与えない農法というのはどうなんだろうかというようなこ とを、ただ単に有機と緩効とか、そういうふうな単純な言葉で言うのではなくて、きち んと農薬の使い方もひっくるめた上で、例えば僕の知っている生産者なんか、いわゆる IPをがんがんやっているわけです。それは別に農薬を減らすとかというふうなことじ ゃなくて、そうすると、実は自分たちの消費者も知らなかったけど、今回のポジティブ リストの中でも、農薬ってこんなふうな仕組みになっているんだというようなことを認 識もするし、また生産者自身も再度無登録農薬の問題、特定農薬の問題、またさらにも う一歩自分たちの自身の頭で考えてみんなで議論していくと、そんなふうな意味では、 きっちりと議論する契機になくというようて意味でよかったといいますか、そういうふ うにしていきたいなというふうに思っています。 ○コーディネーター  ありがとうございます。どうぞ玉川様。 ○玉川氏  大切なことを忘れちゃったんですけれども、今議論になっている、ポジティブリスト 化の問題をどういうふうに広げていくかという話をしているわけですけれども、前提に なっているポジティブリストの問題、農薬についてお話し申し上げますと、安全性の問 題、それについては、ほかの先生方からもいろいろ意見が出ましたけれども、やはり動 物実験を基礎したADIの議論から出発していくというところを明確にしておかなけれ ばいけないと。そうしませんと、作物を分析した結果、残留農薬の数字が出てきたと、 農薬が残留していると、これはやっぱり問題なんだというふうな話になって、せっかく ポジティブリストというか、残留基準値を定めるという、基準値を定めることによって 安全性を確保する、そのこと自体が崩れてしまうのではないか。  ですから、残留基準値の持つ意味、ポジティブリストの持つ意味、これを非常にわか りやすく、先ほど林先生がおっしゃいました安全率の10倍、10倍の議論も含めまして、 よくわかるようにこれは国民の皆さんに訴えていかなければいけないというふうに思い ます。そうしませんと、たまたまサンプリングして残留農薬があったところの問題であ って、サンプリングしないところはNDとみなして、これは安全だみたいな何か間違っ た考え方が出てくるということで、この残留基準値の持つ意味、ポジティブリストの持 つ意味、非常に基本的な話ですけれども、これをわかりやすく地道に広げていくという ことが、回りくどいようですけれども、結局は手っとり早くポジティブリストの理解を 進めていくということになるのではないかというふうに思っております。  これが国内の話ですけれども、海外の話をどうするかという話はまた別途ありますの で、時間のあるときにまた申し上げることにさせていただきます。 5 意見交換 ○コーディネーター  ありがとうございました。いろいろ議論も尽きないところでございますが、会場の方 からも御意見をいただいてみたいと思いますので、それでは、会場からの意見交換に移 らせていただきたいと思います。  コーディネーターの方で指名させていただきますので、御意見のある方につきまして は挙手をいただけますようお願いいたします。マイクを持って係の者が伺いますので、 よろしければ、御職業とお名前をおっしゃって発言していただければと。 ○参加者1  私自身、文系の人間なんで科学的知識は全然ないんですが、先般、アメリカとイタリ アに行ったときに、現地の農業科学者及び農薬の専門家から聞いた話を報告させていた だきます。  まず1つは、先ほど農薬の種類自体を増やすのはいかがなものか、減らした方がいい んじゃないかという御意見もあったんですが、農薬の専門家の話によると、例えとして 昨今人間の病気もすごい増えている。毎年SARSだ、インフルエンザだと新しい病気 が増えているように、それに対応して人間に使う医薬品もどんどん種類が増えている。 農作物の世界でも農業に対する病害ですとか、それから虫害とかが非常に増えている し、種類も増えているし、かつ蔓延する地域も増えている。したがって、農薬もかなり 自動的に増えざるを得ない状況だと。先ほど700 ぐらい世界であるというふうな話もあ ったんですが、農薬の専門家の話によると確実に1,000 以上ある。実際に使われている のも1,000 以上あるだろうということです。  私はたまたま日本人だったからアメリカ人から言われちゃうんですけれども、新しい 農薬をガンガン出しているのは日本の農薬メーカーじゃないかよと私言われました。た だ、彼らが言うには、最近新しく出てきている農薬は、昔出てきた農薬に比べて、非常 に毒性が低い。毒性の高い農薬はどんどん使われなくなってきて、新しい毒性の低い農 薬は使われるようになっている。非常に毎年、毎年新しい農作物病虫害が出てきて、そ れに対応して新しい農薬が毎年出てきているという状況です。だから、農薬自身のポジ ティブリストに今回724 という数字が多いか少ないかいろいろ議論があると思うんです けれども、実際にはもっと増やすべきというか、どんどん増えていくものだということ を御理解いただきたい。  それに関連して、暫定基準値案も5年ごとに見直しということを先ほどちらっと聞い たような気がするんですけれども、ここら辺も昨今、私が聞いた話からすると、5年ご とではちょっとスローじゃないかなと。どんどん農薬が増えて、かつ、その一方で恐ら く使われなくなっている農薬も増えているはずなんです。だから、毎年というのはかな り厚生労働省さん、3人しかいない状況では厳しいとは思うんですが、せめて2年に1 遍ぐらいは改定する方向でやっていただければと思います。 ○コーディネーター  何かコメントのある方はいらっしゃいますでしょうか。 御発言なんですけれども、なるべく多くの方に発言していただきたいと思いますので、 お一人1回当たり3分ぐらいずつまででお願いします。それから、1回の発言はなるべ く1つのことについて御発言いただければと思います。梶原先生どうぞ。 ○梶原氏  これは横田室長からお答えいただいた方がいいのかもしれませんけれども、農薬にず っと携わった関係上申し上げますと、御説のように新しい農薬というのはどんどん開発 されてきておりますし、日本でもいい薬が出てきておりますが、全体的に毒性が非常 に、例えば殺虫剤の場合でも毒性が非常に低い、しかも効果が高いというふうな薬剤が 主流になってきておりますし、また、実際に登録をするまでには、いろんな登録をとる までに大変な試験をして、安全だというものが出てきているのが実情でございますの で、その点は少なくとも危ない農薬が使われているということは、まずないというふう にお考えいただいてよろしいんじゃないかと思います。  それから、実際には病害の数その他は特別に増えているというわけではないんです が、今まであった病害虫は顕在化してくるというようなことで、どうしても薬剤を使っ て防除していかなければいけないというような事態は世界各国で起きているということ も事実でございます。  いずれにしても、実際に日本で使われている薬剤については、最近は非常に厳格な検 査というか、登録条件をクリアして製品化されたものを、皆さんがお使いいただいてい るということでございます。少なくとも、7年もしくは8年はかかるというふうな状況 でございますので、農薬のメーカーさんも大変な思いをされているということも御理解 いただきたいとに思います。 ○コーディネーター  正木様お願いします。 ○正木氏  今、効果があって、毒性が低いというお話がありましたけれども、最近は、哺乳動物 にない作用機構をアタックするような農薬開発されてきているということです。例え ば、光合成を阻害するような除草剤、害虫が脱皮するときにキチン質を生合成させない で生育を阻害する殺虫剤など選択毒性をもつものに変わってきているので、哺乳動物に 対しては毒性の低いものになってきてるようです。 ○玉川氏  毒性が弱いということと、そうしますと作用する時期も短いということですから、い つまくかというのが非常に重要なポイントになるわけです。ただ、日本の場合は、ちょ っと話がずれますけれども、病害虫発生予測システムといって、コンピュータを使った 過去の病害虫の発生状況、それから作物の生育状況、天候状況等を入れまして、シミュ レーションをした結果によって、いつまけばいいかというふうなことがポイントになり ます。農薬は進化して毒性が低くて、農薬の働く期間、早く言えば分解が早く進んじゃ うということですから、分解しないうちに効果を発揮してもらわなきゃいけないと。そ ういう農薬に変わってきておりますので、いつまけばいいかというふうなことを的確に 予測するようなシステムがもうできております。あるいは最近いろいろなところで聞い ているんじゃないかと思いますがフェロモンというふうなお話を聞いていると思うんで すが、雌が雄を誘因して交尾を阻害するような、いろいろな形の農薬がたくさん出てお ります。そういう意味で、種類が多いというお話だと思うんですが、これまた、1つは グローバル化というようなことで……。 ○コーディネーター  余り長くなってもあれですので、大変恐縮です。 ○玉川氏 ということで変わっておりますので。 ○コーディネーター  ほかに意見のある方は、あちらの方お願いします。 ○参加者2  地方で衛生関係の行政をやっている者です。  農林水産省の方にちょっとお尋ねしたいんですが、使用基準が定まっている農薬に対 して、その使用制限を守って、その農薬の取扱いをやっているということで話を聞きま して理解をしたわけですが、衛生の関係なんかを見ますと、自主検査ということに重点 を置いていろいろやっておりまして、業者の方を指導しているわけですが、農林水産省 の方では、自主検査の取組というのはどんなような考え方で進めているか、全体的で基 本的な話ですが、その辺の話をお聞きしたいと、そんなように考えます。 ○広瀬企画情報課課長補佐  自主検査というか、生産での取組とか、指導とかになりますね。 ○参加者2  そうですね。生産で使用基準は決まっているんですが、自主検査の取組というのも必 要だと思うんですが、その生産段階の自主検査というものは、農林水産省の方ではどう いうような取組を指導しているか、その辺をお聞きしたい。 ○広瀬企画情報課課長補佐  横田室長お願いします。 ○横田農薬対策室長  おっしゃるように使用基準の遵守については、県とかあとは国の方で巡回しながら指 導を行っています。実際に生産された生産物の残留のチェックなんかを、今自主的にや っている部分があるんですけれども、これは県が指導する場合、市町村が指導する場 合、あとJA等が自主的にやっている場合もあります。この場合どうしても必要な施 設、機械なんかもありますので、私どもの方でも生産部局と連携をとりながら、必要な 部分だったら補助事業等でやっている分がございます。さらに農水省としても国の方で も、千葉の農家の御協力も得ながら残留のチェックなんかも行っております。 ○コーディネーター  原様お願いします。 ○原(拓)氏  うちのJAは自主検査について残留分析センターを持ってやっているんですが、うち のJAの場合は安全性確保のために、必ず記帳したものを提出しなければ農産物は受け 取らないということと、それと出荷された農産物からサンプリングして、それを冷凍保 存しながら、その中からもう一度サンプルしながら、残留分析センターでコンタミを含 めて残留分析を行うという体制をとってやっているんですが、問題はコストでありまし て、うちのJAは農産物売上100 億もないところで、そういうシステムと人、施設を持 っておりますので、コストは非常に高くついておりますが、それは当然、価格に転嫁で きるわけではありませんが、やはり、そういうことを進めていくということで、今後と も生産現場で広まっていくことだろうというふうに思っております。 ○コーディネーター  ありがとうございます。ほかにどなたかございますか。 ○参加者2  ちょっとその関連で、あと1分ばかりお願いしたいんですが、それで自主検査という ことで、その取組というのは非常によくわかりましたが、今、農林水産省で、例えば47 都道府県のうち、自主検査に手を付けているというような実態把握を行っているかどう か、その辺をお聞きしたい。 ○コーディネーター  横田室長お願いします。 ○横田農薬対策室長  今の明確に数字は出ませんけれども、一部のところについては、県なり、市町村な り、農協レベルでどこまでやっているかというのは、一部ですけれども、把握はしてい ます。あと、私どもでさっき言いましたとおり、生産部局と連携しながら補助事業なん かで、そういう分析施設の導入なんかもやっていますので、その分については、大体ど ういう地点に入っているかというのは把握しています。 ○コーディネーター  ありがとうございました。それでは、先ほどそちらで手を挙げておられた方。 ○参加者3  お忙しい中、宮川課長補佐にいろいろ教えを請うたりしたことがございますが、その ときにお願いしたことも含めて、1つと言わず、2つだけお願いしたいことがあるんで すけれども、私どもは輸入品が多く、かつマイナー作物といいますか、作物名が書いて ないものをたくさん輸入して商売をしております。そこで宮川課長補佐の方にお願いし てありますけれども、どの商品がどの作物に当たるかというのを施行までに明らかにし ていただけるように、ぜひお願いしたいと思います。  六百幾つ基準の農薬を出したとおっしゃっておりますけれども、作物ごとに見ます と、例えばお米にしか基準がないとかそういう農薬も多々ありますので、作物×農薬で 見ると、まだほんの3割も基準値は入っていないんじゃないかなと思う部分がある次第 です。  あともう一つ、一律基準についての考え方なんですけれども、法律に書いてあります のは、人の健康を損なうおそれのない量として厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の 意見を聴いて定める量ということになっているわけですから、人の健康を損なうおそれ のない量が、ADIも設定できないような危険な農薬と、ADIが非常に低くて安全な のに、みんな基準がないから全部一律基準で0.01ppm というのはとても無理があると思 うんです。パブリックコメントの中にもたくさん、これは何ppm にすべきだというのを 書いてありますけれども、その辺をよく考慮していただいて、ADI値が農薬を登録す るときに設定されていると思いますので、それをよく考慮して一律基準といわず、何律 基準かにしていただきたいと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございます。マイナー作物と一律基準についてのことですけれども、回答 をお願いしてよろしいですか。 ○宮川基準審査課課長補佐  おっしゃるとおり、スパイスとか、ハーブの類でありますとか、農産物というものに は非常に多種類のものがあるし、ましては輸入されるものにあっては、日本でないよう なものもあるでしょうし、それだけ多様なものがあるということです。従来にも通知な どで示した例がございますから、それを改正していくという形で、今回のポジティブリ ストで、どこにそのものが当たるのか、そういう考え方はちゃんと示していかないとい けないかなと。これは作業を順次やっているものですから、順番にできたものについて お示しをしていく。施行までにはお示しをしていくという形にしていきたいというふう に思っています。  あと一律基準の考え方ですが、これはポジティブリスト制のもともとの考え方の部分 に関連すると思いますけれども、確かに法律上の規定は、人の健康を損なうおそれのな い量という規定になるわけですが、ADIで摂取量が幾らでと、そういうような考え方 も一つあるわけですけれども、一律基準の考え方のペーパーの中にもありますが、もと もとその農薬がGAPに基づいて使われる、それで登録が認められているものが使われ ているというのが前提にスタートしているもの。つまり、その農薬の規制の仕方という のは、そういうものに基づいているものですから、直ちにADIがどうかというものだ けで、ADIが低いものはたくさん残ってもいいよと。一方でわからないものは厳しく と。そういうようなものでは恐らく違ってくる、考え方としては違うんじゃないかなと いうふうに思います。それはポジティブリスト制度の考え方そのものの部分だと思いま すので、これは審議会なんかの議論で深めていきたいというふうに思っております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。ほかにどなたか意見のある方はいらっしゃいますでしょう か。今の方は、ただいまのコメントで追加のコメント等ございますか。 ○参加者3  例えば、国内で登録のある農薬で、施行までには国内で登録ある部分は基準値に当て はめるよという話がどなたかからありましたけれども、例えば作物的には登録はないん だけれども、限りなく似たような作物があったとします。登録があれば数字が入ります から、1ppm とか2ppm の結構高い値が基準値として入ったんだけど、登録がないから あとは一律基準で0.01ppm ですよということになると、国内で生産される分には、それ で構わないんですけれども、海外から輸入される場合は、ほぼ似たような作物の場合は 似たような農薬を使われることが多々ありますので、例えば、トマトだったら2ppm で セーフだけど、ピーマンは全然基準がないから0.01ppm だよというようなことは、すご いギャップが大き過ぎるのではないかなという気がしますので、その辺をよく御考慮願 いたいなと思っています。 ○コーディネーター  中垣課長お願いします。 ○中垣基準審査課長  まず、国内からお話をしたいと思います。国内は登録されていないものに農薬を使う と農薬取締法違反なんですね。農薬取締法違反になるようなものを食品衛生法で認める かのような基準をつくるというのは、これは無理というのが国内的な整理です。また、 先ほど全農の原さんから、いわゆる国内の作物の農薬取締法上の扱いについて議論があ りまして、私ども農薬取締法で認められるのであれば、当然のことながら食品衛生法で それを認めるような基準をつくっていくということもお話したところです。  一方、国外でトマトとピーマンという話がありましたが、トマトとピーマンというの は、恐らく梶原さんに聞けばいいんだろうと思いますが、植物的には全然違っていて、 トマトにあるからピーマンという議論にはならないんだろうと思いますが、ポジティブ リスト制の最大の特徴、それはEUで議論されているのもそうですし、アメリカのポジ ティブリスト制もまさしくそうなんですが、トマトに基準があって、ピーマンになけれ ば、ピーマンからある一定の農薬が検出されたら、やはり違反になります。それがポジ ティブリストであって、そこをどうのこうのしようというのは正直考えていないところ でございます。 ○コーディネーター  ほかに会場の方からどなたかございますか。高橋様どうぞ。 ○高橋氏  今の関連の質問なんですけれども、国内の農薬の登録はかなり厳しくされていますの で、今後基準が出ると。問題は種苗開発なんですね。新しい品種の野菜が出てきたとき に、そのときに基準はどうなっているのと。多分、そのときには考慮されていないか ら、やはり農薬の基準もないし、今言ったポジティブリストの残留基準もない。そうす ると類推した似たような、例えばレタスに近い品種はレタスで見ようかとか、そういう あいまいな解釈になってしまっているのが現状だと思うんだけれども、その辺の農薬の 登録以外の品種などの登録についても、あるいは新しい種苗なり、新しい品種が出てき たときにどうするのかなと。いつも現場はそれで困ってしまうという実態があると思う んですけれども。 ○コーディネーター  中垣課長お願いします。 ○中垣基準審査課長  新しい作物の種苗を開発して、それが商品化される。その新しい作物に対して、その 農薬、ある特定の農薬を使えるかどうかというのは、先ほど来の話ですが、まず、農薬 取締法の問題があるわけです。そこでどうするかが決められる。我々も農薬取締法の取 扱いを準用して、食品衛生法上どの基準を当てはめるのか、当てはめないのかというよ うなことを議論しますが、いずれにしても齟齬がないように、そこはしていくというこ とになるんだろうと思います。 ○コーディネーター  辻様どうぞ。 ○辻氏  ちょっと関連なんですけれども、先ほどのトマトとピーマンの話でしたが、あれはク ロルピリホスで言えば、中国のホウレンソウが0.01で基準違反がばっと出ましたよね。 そのときのダイコンの基準が3ppm だったということで、ホウレンソウの基準の違反の 最高値でも、その当時はダイコンの方がまだ高かったというんですか、緩かったという 状況があったわけです。そのことは、この間の残留基準の改定で変えましたよね。日本 のダイコンも0.5 ppm ぐらいになっているんじゃないですか。その辺の整合性をとった んじゃないかと思ったんですが。 ○コーディネーター  中垣課長お願いします。 ○中垣基準審査課長  私もクロルピリホスのダイコンの基準値が今幾つかというところまでは覚えておりま せん。申し訳ありません。クロルピリホスの基準について、先ほど正木さんから御指摘 のあったようなADIの見直し、あるいは基準値の見直しをしたというのは御指摘のと おりでございます。ただ、基準値の設定、辻さんに言うのは釈迦に説法みたいな話にな りますから、辻さんに向かって言っているわけじゃないんですが、基準値で確かにホウ レンソウが例えば0.01、ダイコンが3ということは、これはあるわけです。中国からそ れは矛盾しているのではないか。ダイコンもたくさん食べるだろう。ホウレンソウ0.01 というのは、中国をいじめているのかというような議論をふっかけられたのも事実でご ざいますが、先ほどからギャップ、GAPと言われておりますけれども、その農薬を適 正に使用した場合にどれだけ残留するかという、適正農業規範とでも言うんでしょう か、試験をやった結果に基づいて基準を決めていく。逆に申し上げますと、どういう時 期に、どれだけの量を何のために使うかというのが、当然のことながら農薬ごとに決め られるわけですから、それに基づいて、実際の残留量の試験を行ってやっていきますの で、例えば、ホウレンソウで0.01、ダイコンで3とかという事態というのはあり得るわ けでございます。 ○コーディネーター  ありがとうございます。あと会場の方で御意見のある方いらっしゃいますでしょう か。 ○参加者4  食品メーカーの者ですけれども、メーカーとしては社品の安全性の確保というか、証 明のために社品の残留農薬検査をするわけですが、ポジティブリストで610 の基準値を 決められても、すべては検査できないということで、考え方として検査する農薬を絞 って、優先度の高い農薬から検査しなければいけないだろうというふうに考えていま す。  そのときの指標として3つ考えていて、1つは毒性の高いものをやらなければいけな いだろう。2つ目が先ほどのマーケットバスケット法とかでもありましたように、実 際、残留して検出されているという農薬は、やはり注意しておかなければいけないだろ う。3つ目が使う原材料のところで、使っていない農薬を調べても労力の無駄ですか ら、使っている農薬に絞ってということを考えています。  1つ質問、1つお願いですけど、コーデックスの基準値というのが、今、130 ぐらい あると言われましたが、そのコーデックスが残留基準値を決めようとして農薬というの は、毒性が高いから決めようとしたのか、それとも世界各国での使用量が多いから決め ようとしたのか、そもとも、どういう理由で130 を選んだのかということをひとつお聞 きしたいのと、もう一つは、3つ目の指標の使用履歴については、農水省の方にお願い ですけれども、ぜひ、生産のところで履歴をしっかりとってもらうようにしてもらいた いと思います。そうすると我々それを使う食品メーカーとしても、検査する農薬が絞れ るということでありますので、1つ質問、1つ要望ということでお願いします。 ○コーディネーター  それでは、質問の方の130 の根拠ということの方からお答えいただければと思いま す。 ○中垣基準審査課長  まず、御質問のあったコーデックスで基準をつくるという対象農薬ですけれども、確 たる条件が、例えば全世界で10か国売っていなきゃいかんとか、何万トン売っていなき ゃいけないとかというような確たる条件があるとは私承知しておりませんけれども、ま ず1つにはデータがそろう。そのデータを国際的な専門家の会議で評価していただくと いうことになりますので、データがあって、少なくとも国際基準をつくろうということ ですから、複数の国で売られておるというようなことが国際基準を議論していく上で重 視されていることなのだと思っております。 ○コーディネーター  会場にコーデックスの専門家の方もいらっしゃいますので、独立行政法人食品総合研 究所の山田研究官からコメントをいただければと思います。 ○山田研究官(独立行政法人食品総合研究所)  御指名いただきましたので、JMPRというコーデックスの基準値をつくる、基礎を つくっているところの委員をやっております山田と申します。  ちょっと御説明しますと、コーデックスでは、基準値をつくるというために、当然、 JMPRに評価をしてもらわないといけないんですけれども、そのために優先順位のリ ストというのをつくります。その優先順位に乗せるために各国政府が提案する、そのた めの基準というか、クライテリアというものがありまして、今、実は再検討している最 中なんですけれども、幾つあって全部覚えているかどうかわからないんですけれども、 農薬に関しては、コーデックスというのは、国際的に防疫されている食品について基準 とか企画をつくるということですので、まず、農薬については最低2か国か、それ以上 で登録されていること。だから、全く新しくて誰も知らない農薬ではいけない。それか ら消費者の健康に影響を及ぼす可能性があること。そして現在、防疫されている食品の 中に残留していると思われることという3つがあります。  食品の方も同じように、国際的に防疫されている食品であること。だから、その国で つくって、その国だけで食べてしまうというようなものではなくて、ある程度以上の量 で防疫されているということとか、それから、ある程度以上摂取されていること。それ で最後に、その基準値をつくるに当たっては、毒性の方のデータと、それから実際に使 用基準にのっとってやった残留試験のデータがあるかどうか、そういう基準のもとに行 われることになっております。 ○コーディネーター  ありがとうございました。農林水産省の方何かコメントございますか。 ○横田農薬対策室長  2点目の生産履歴の話なんですけれども、今の年度内目途なんですけれども、JAS 法に基づく生産情報の公表の準備を進めておりまして、これができれば、ある程度の情 報提供ができると思いますので、そのあたりをまた注目いただければと思います。 ○コーディネーター  ありがとうございました。それでは、そろそろ時間の方もございますので、最後の方 にしたいと思います。先ほど手を挙げられていた後ろの列の方。 ○参加者5  今日は大変有益なお話をありがとうございます。  私も消費者団体にかかわりまして、今回、ポジティブリスト制になるというので、と ても喜んで今日は出席いたしましたが、お話を伺っておりますと、ADIもないような 問題もあるとか、最大無作用量も何かいまいち聞いていてはっきりしないような中で、 一律に残留基準を決めていくようなお話がこの中でございまして、私は大変困惑をして 聞いておりました。こういう専門的なお話を消費者のサイドから頭の中に徹底的にたた き込むのは、私はまだ未熟でございますので、このようなお話は大変大切なことですの で、再度リスクコミュニケーションを開いていただいて、丁寧な御説明をお願いできた ら今度は少しはわかるんじゃないかと思いまして、ひとつ感想としてお話をいたしまし た。 6 閉会 ○コーディネーター  ありがとうございました。感想としてということでしたので、これからもいろいろリ スクコミュニケーションには取り組んでいきたいというふうには考えております。  それでは、皆様いろいろ御意見いただきましてありがとうございました。意見交換会 を終了させていただきたいと思います。  最後に1つお願いがございますが、お手元にアンケートをお配りさせていただいてお りますので、御記入の方をぜひよろしくお願いいたします。これはこれからのリスクコ ミュニケーションをよりよくする上で私どもの方で参考にさせていただいているもので ございます。ぜひ協力をお願いいたします。本日は御参集いただきありがとうございま した。  なお、傘の忘れ物がございませんように御注意いただきますよう、よろしくお願いい たします。どうもありがとうございました。