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食品に関するリスクコミュニケーションにおける事前意見・質問について
(食品に関するリスクコミュニケーション(水銀を含有する魚介類等の摂食に関する注意事項の見直しについての意見交換会)

質問者 質問の内容 回答
1 食品等事業者 公表される魚介類中の水銀量のデータについては、魚種別にそれぞれのサンプルの漁獲場所(海域)等も分かる範囲でホームページ上に掲載して欲しい。 1.平成16年8月17日に開催された薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会において公表された「魚介類等に含まれる水銀の調査結果(まとめ)」には、水産庁、厚生労働省、地方自治体が実施した調査結果が掲載されているが、いずれもの魚種についても、漁獲水域に関する情報は記載されていません。
2.その理由は、(1)小売段階で販売されている魚介類を対象にサンプリングしたもの(地方自治体調査)については、水域が特定できないため調査項目に入れていないこと、(2)水域による傾向を示せるだけの十分な検体数がないこと(水産庁調査)、(3)マグロ類など十分な検体数がある場合でも、世界の大洋を回遊する高度回遊性魚類の場合、水域を特定する意味が薄いこと等によるものです。
3.8月17日開催の乳肉水産食品部会においても、漁獲海域とメチル水銀濃度の関係について検討する必要性が指摘されており、現在、水産庁において次回部会提出に向けた作業を進めているところです。その結果、リスク管理を行う上で、海域を公表することが必要であると判断される場合には、公表することといたします。
2 その他 耐容摂取量の設定には、消費者代表やNGOも議論のテーブルに就けることが重要と考えられます。水銀の影響を受けやすい胎児、乳幼児、児童、そして妊産・授乳婦への暴露を基本に据えた耐容摂取量の設定が必要であり、更に若い女性や妊婦、授乳婦への食事指導ができるような早急な体制づくりも必要です。次世代の日本の子供達の健康な生活を護るために、水銀からの害毒を根絶する国の厳然とした態度を期待しています。  耐容摂取量等の設定については、食品安全委員会において、科学的知見に基づき客観的かつ中立公正に評価が行われるものと考えています。食品安全委員会では専門委員会の審議結果について、通例、国民からの意見・情報の募集が行われています。なお、今回の水銀を含有する魚介類等の摂食に関する注意事項の見直しにあたっては、耐容摂取量の設定に加え、ハイリスクグループ(健康への悪影響を受けやすいグループ)についての議論も食品安全委員会に要望しています。
3 食品等事業者 日本での疫学的な分析調査データに基づく検討・フィードバックはなされているのでしょうか。  日本におけるメチル水銀の低濃度暴露に関する疫学的調査については、現在、実施中であると承知しています。なお、諸外国においてはロチェスター大学とセイシェル共和国政府の協力により実施された研究や、デンマークのオーデンセ大学がフェロー諸島で実施した研究が報告されています。
4 食品等事業者 「健康フロンティア戦略10ヶ年計画」の中で、生活機能低下を予防し、健康寿命を2年延伸させるためには、この「水銀」を含む重金属対策が重要となります。重金属対策に加えて、これら重金属をどのように除去するか、高齢化に伴う様々な老化現象の1つとして体内に入って来たり、滞留したりする水銀等重金属をどう排泄するのか。排泄能力の低下した高齢者からどうキーレートするのかも併せて考えたいところです。  耐容摂取量及びハイリスクグループについては、現在、食品安全委員会において検討されているところですが、現在議論されているような低濃度のメチル水銀の影響は、感受性の高い胎児に対するものです。また、体内に吸収された水銀の半減期は約70日と報告されています。
5 その他 水銀についてマグロなどもリスクについてしっかりと消費者に伝えてほしい。  ご指摘のマグロについても、水銀の検査結果等を既に公表しており、今回の妊婦等への注意事項の見直しに当たっても十分な議論をお願いすることとしています。
6 その他 平成13年度厚生科学特別研究「鯨類由来の有害化学物質によるヒト健康に及ぼす影響に関する研究」の水銀汚染調査は不十分である。十分な調査結果をもとにして妊婦への摂食注意の内容を考えていただきたい。9種類の歯クジラの肉が販売(マッコウクジラを加えると10種類)されているが。厚生労働省が調査したのはわずかにマッコウクジラを含めた5種類である。少なくとも、バンドウイルカと同じくらい汚染されているオキゴンドウやスジイルカの調査を行う必要がある。また分析資料も少なく、分析値にも問題がある。例えばイシイルカのメチル水銀濃度の4例中2例の分析値は明らかに低い。マッコウクジラは現在市場に流通していないので、特段の注意をしないほうがいい。魚介類の摂食を控えることは、栄養学的にマイナスと思う。毒性学と栄養学の重なった領域での議論が必要。ぜひ栄養学の研究者からの話を聞きたい。養殖・畜養マグロの安全性について十分な調査が必要。2000年1月に厚生労働省に問い合わせた際にはクジラ肉は魚介類の暫定規制値の適用除外にあたるとの説明であったが、最近、新聞記者からの話では適用と聞いている。いつから適用になったのか。  クジラ類については、平成13年度厚生科学特別研究において、一般市場に流通し、検体の入手が可能であったクジラ由来食品の大半を占めるヒゲクジラ、ハクジラの計7種につき調査し、結果を公表しています。
 分析方法はいずれも公定法を用いています。
 魚介類摂取の有用性については、現在、食品安全委員会において耐容摂取量と共に検討課題とされているものであり、今後、議論が行われるものと考えています。また、厚生労働省における注意事項の検討においても栄養学の専門家の意見も聴いて進めることとしています。
 今回、審議会の資料として公表したマグロの水銀含有量については、養殖を含めた結果となっています。
 昭和48年の暫定的規制値については、対象が魚介類であることからクジラ類は含まれていません。
7 消費者 胎児に対する影響は絶対に避けなければならない。政策上の対策が強く望まれる。保健所などのタイアップが必要。一般には回遊魚に対する知識の普及と、気になる人には毛髪の検査を受けやすい方法を考えて欲しいと思う。  メチル水銀の耐容摂取量については、胎児に対する影響を含め、食品安全委員会において検討が行われています。厚生労働省としては、食品安全委員会の検討結果を受けて、妊婦等に対する注意事項の見直しを行い、その公表にあたっては、保健所を含む地方自治体、母子保健を含む関係団体等に注意事項の内容を通知し、妊婦等に対して、速やかに注意事項が周知されるよう努めることとしています。また、魚介類が含有する水銀に関しては、注意事項の公表と併せてQ&Aも公表して正確な御理解及び知識の普及に努めます。なお、自主的な検査を希望される場合にあっては、一部の民間検査機関で実施可能であると聞いています。
8 その他 今春、東京都からの委託で海外6ヶ国における当該テーマの取組実態を行ってきました。以下のような点が重要と考えます。(1)マスメディアの報道の仕方次第で、国民の受け止め方が変わりうること(2)自然由来の水銀含有などについて科学的裏づけが求められていること(3)「風評被害」についてキチンとした定量的把握がなされていないこと(4)天然物は安心といった「安全神話」が存在していること(5)国民一般か、乳児、妊産婦かターゲットを明確に表現すること  今回の妊婦等への注意事項の見直しに当たっては、ご指摘の点も参考としつつ検討を進めたいと考えています。
9 その他 マスコミは概して危機感を煽る報道が多いので対応は十分に行って頂きたい。マグロ漁業は経営が厳しい中、風評等により影響が出ると死活問題となる。  マスコミへの対応も重要であることはご指摘のとおりと考えます。
10 食品等事業者 日本の食生活という観点からすれば、水銀問題は誰でもが理解でき、納得できる形で結着すべき重大な事件だと思います。水産国として成り立つか否かの大きな分岐点という認識が必要です。ゆえに、業界の利益だけに終了しては何の真の解決にはならないのは当然ですが、一方で、科学的根拠が十分でない状況での公表ないし摂食指導も賛成できませんでした。食品の安全は疑わしきは喰わずということが前提なのはよくわかりますが、消費者に対する説明とスーパー等量販店が店頭において説明できる資料が不十分だったことは否定できません。  科学的知見に基づき、客観的かつ中立公正に健康影響評価が食品安全委員会において実施されるものと考えています。また、今回の見直しおいては、リスクコミュニケーションに一層の配慮をすることとしており、今回の意見交換会もそのような観点にたって開催したものです。
11 消費者 昨年の「注意事項」の発表に対して、消費者から多くの疑問が出ました。なぜマグロを摂食制限の対象からはずしたのかということがある。国民の平均摂食率を基準に対象を設定することは全く意味がない。摂食量は各人個々に異なり決して平均ではない。魚の水銀量の公表と注意が必要。許容摂取量の海外データによる見直し、妊婦のみでなく乳幼児、子ども、弱者(老人)への摂食制限設定など。  マグロについては、平均的なマグロ料理1回分(いわゆる1人前)の量に関する特別の調査を実施するなどの取り組みを行っているところであり、今回の見直しの検討においても議論の対象となると考えています。なお、魚介類等の水銀含有量の資料については、既に厚生労働省ホームページにて公表を行っておりますので、ご参照ください。また、耐容摂取量の設定及び注意事項の対象者となりうるハイリスクグループについては、現在、食品安全委員会において検討が行われているものです。
12 その他 海洋汚染とそれに関連して、海の生物への汚染物質の蓄積について私たちは水俣という非常に重い経験を持っています。一方で私たちは、魚介類を比較的よく食べる傾向があり、過去の経験を生かした消費者保護のためのリスクマネージメントをきちんと確立するための条件がそろっているといえるでしょう。この度、省庁間の連携で、世界に対しても恥ずかしくないマネージメントの整備ができることを期待しています。  今後とも、各省間の相互連携等を通じて食品の安全性の確保を図るとともに、今回開催している意見交換会などのリスクコミュニケーションにも努めることとしています。
13 その他 3点ご意見申し上げます。(1)JECFAにおける耐容摂取量の引き下げが何故なのか、我が国としてどのように評価し、2つのシナリオで暴露評価を行ったのかを明らかにすべき。(2)議論されるメチル水銀の健康影響については、対象とする暴露グループ等についての記述はあるが、具体的にどのような影響をエンドポイントとしているのか記述すべき。(3)マグロの摂食量データの変更について、定性的記述はあるが、多くの仮定に基づくものではありつつも、計算過程を示さないと理解が難しい。  第61回のFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)の会議においては、発育途上の胎児を十分に保護することを目的として耐容摂取量の再評価を実施し、従来の暫定的耐容週間摂取量(PTWI)である3.3μg/kg体重/週が1.6μg/kg体重/週とされました。我が国における耐容摂取量についてはJECFAのPTWIを採用するものではなく、食品安全委員会のリスク評価に基づき設定されるものであり、そこでエンドポイントについても議論されるものです。このようなことから、本年8月の審議会に提出した試算については、昨年の審議会で用いたPTWIと、JECFAの再評価後のPTWIの2つのシナリオを仮定して暴露評価を参考までに行ったものです。なお、マグロの摂食量データについては、国民栄養調査結果を特別に集計したものであり、マグロの摂食量を一定の年齢範囲で抽出したものとなっています。


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