(別添1)

「食品による窒息の現状把握と原因分析」調査について

1.調査の概要

■平成19年度 厚生労働科学特別研究事業

■研究実施期間:平成20年1月〜3月

■研究班員:

主任研究者:向井美恵(昭和大学歯学部口腔衛生学教授)

分担研究者:才藤栄一(藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学教授)
大越 ひろ(日本女子大学家政学部食物学科教授)
市川光太郎(北九州市立八幡病院副院長、小児科救急センター長)
堀口 逸子(順天堂大学医学部公衆衛生学 助教)

2.調査の内容

■消防本部及び救命救急センターを対象として、事故事例機関を平成18年1月1日からの1年間とし、実施した。

消防本部は全国18ヶ所を対象として13ヶ所から回収できた。救命救急センターは、平成19年11月現在登録されている204ヶ所を対象とし、75ヶ所から回収できた。

■質問内容は、発生日時、年齢、性別、原因物質(食品)、窒息時の状況、バイスタンダー(家族など)による応急処置の有無、基礎疾患の有無の7項目を基本とした。

消防調査では傷病程度、呼吸停止状態の有無(心肺停止含む)の有無、救急隊による救急救命処置の有無、の3項目を加えた10項目、救命救急センター調査では転帰、基礎疾患の有無の2項目を加えた9項目である。

3.結果概要

■消防調査は、全人口の約22%をカバーし、724例の事故が発生し、そのうち65例(8.9%)が死亡例であった。

■救命救急センター調査では603例の事故が発生し、半数以上の378例(62.7%)が死亡していた。

消防隊の処置によって死に至らなかった場合に一般病院に搬送され、重症例が救命救急センターに搬入されると思われ、救命救急センター調査では死亡例が多いと考えられた。

年齢では、特に高齢者に多く65歳以上で顕著であった。乳幼児(0〜9歳)まででは1〜4歳までが最も多かった。

人口動態統計で、不慮の事故の種類別にみた年齢別死亡数・構成割合の「その他の不慮の窒息」での「気道閉鎖を生じた食物の誤嚥」報告は、死亡例ではあるが同様の傾向を示した。

原因食品を見ると、両調査とも「もち」が最も多く、次いで「ご飯」「パン」などの穀類が多かった。

原因食品が判明している事例では、消防調査(432例)は、「もち」77例、次いで「ご飯」61例、「パン」47例であった。救命救急センター調査(371例)は、「もち」91例で「パン」43例、「ご飯」28例であった。

穀類に次いで、菓子類が多く、そのほか、魚介類、果実類、肉類など、その原因となる食品は多岐にわたった。

菓子類については、消防調査では62例、救命救急センター調査44例であり、その内訳は、「飴」、「団子」などが挙げられた。

「カップ入りゼリー」は、消防調査8例、救命救急センター調査3例であり、両調査とも高齢者が乳幼児よりも多かった。

餅の温度低下や「カップ入りゼリー」の冷温保存の上食することは、咀嚼機能の未熟な小児や咀嚼機能の低下を来した高齢者にとって、窒息の一つの要因になることが示された。

■リスクの高い食品を食べる場合には、充分に咀嚼して食品を粉砕するとともに狭い咽頭を通過しやすいように唾液と充分に混和することが窒息を予防する点から重要である。食品の窒息事故のリスクを広く周知することが重要である。


トップへ