医師の臨床研修に関する修了等の基準に関する御意見募集の結果について


平成17年10月19日
厚生労働省医政局医事課
医師臨床研修推進室



 医師の臨床研修に関する修了等の基準について、平成17年7月12日から7月29日まで厚生労働省のホームページを通じて御意見を募集したところ、121件の御意見・御質問等を電子メール及びファクシミリによりいただきました。
 お寄せいただいた主な御意見・御質問等とそれらに対する厚生労働省の考え方について、以下のとおりとりまとめましたので、公表いたします。お寄せいただいた御意見・御質問等のうち、既に「医師の臨床研修における修了等の基準に関する提言」に明記されているもの、単なる感想等につきましては、適宜省略させていただいておりますことを御了解下さい。
 今回御意見・御質問等をお寄せいただきました方々の御協力に厚く御礼申し上げます。

 「2.修了の評価・認定についての基本的な考え方」について

 1  現状は各要件を経験したと認められれば一律に修了認定を受ける方向だが、研修医のモチベーションを高めるために、修了認定時に「優・良・可」等の評価を行うことを検討してはどうか。
(回答)
 今回の提言においては、各項目について一定の水準(安全・安心な医療を提供)を達成すれば研修を修了したと認めるものであり、達成水準の優劣を競うものではありません。なお、病院が修了認定とは別に評価を行うことは差し支えありません。

 2  各研修病院内で、修了の評価・認定が完結してしまうようになっているが、各項目の自己評価・指導医評価、提出されたレポート等を資料として評価を行う、各研修病院外の第三者的評価機構が、全国の研修レベルを一定以上に保つためにも必要ではないのか。
(回答)
 現行制度においても、研修管理委員会が研修期間の終了に際し、研修医の評価を行うことになっています。当該委員会には、臨床研修関連施設以外に所属する医師や有識者等を構成員に「含むこと」と変更する(現在は「含むことが望ましい」としています。)予定であることから、第三者的な視点による評価は確保できるものと考えます。また、全国の研修レベルを一定以上に保つための取組として、提言をもとに通知を定めることとしており、さらに臨床研修指導ガイドラインの作成を現在進めているところです。

 「3.評価・認定等における関係者の役割」について

<3−1.指導医等>

 3  指導医は「医師・看護師その他の職員」による評価ばかりでなく、患者や家族による研修医評価も勘案して評価すべきであることを文言として残してはどうか。
(回答)
 提言において「患者に不安を与えずに」等の文言が入っていること等から、評価においては当然患者や家族による評価も勘案すべきものと考えます。

 4
 ・  今後、研修医による指導医評価及びその基準の提出もしくは届出を求めることは考えているのか。
 ・  研修医からの評価(プログラム、指導医など)も考慮するべき。
 ・  研修医による指導医の評価は公平性が保たれることが前提であり、この点、実施は慎重に行われるべきだと思う。
 ・  研修医による指導医評価は、「実施することが望ましい」としてあるが、「原則として実施する」とすべきであろう。
(回答)
 研修医による指導医の評価については、あくまでも病院の指導医の資質向上のために行うことが望ましいという医師臨床研修部会の御指摘を頂いたものであり、それぞれの実情に応じた方法で行うべきものであることから、現時点ではすべての臨床研修病院に実施を義務付けることは考えていません。今後、制度の定着に伴って、このような評価が、研修プログラムの充実度の評価につながるものと考えます。

<3−2.プログラム責任者>

 5  省令では副プログラム責任者の役割が述べられていたが、この提言では副プログラム責任者についての記述がないので、明記する必要がある。
(回答)
 プログラム責任者の受け持つ研修医の数が1人当たり20人を超える場合には副プログラム責任者を置くこととしているだけで、基本的に正・副同じ役割と考えていることから、特に示していません。

 6  プログラム責任者の資格についても触れるべきで、「プログラムの作成、研修を一定水準に保ち、その平等な効果を得るべきで、第三者団体による研修を修了して、認定されるべき」という項目を入れるべきである。
(回答)
 現在臨床研修協議会においてプログラム責任者養成講習会が実施されているところであり、これにより資質の向上が図られるものと考えています。

 「4.評価方法」について

<4−1.研修期間中の評価>

 7
 ・  研修医の自己管理(自分の到達目標)を責務として入れるべきと考える。
 ・  「研修期間中の評価」「研修期間終了時の評価」について、研修担当部署の指示のもとで、研修医自身が到達目標、自己点検を行うことを入れることが必要と思う。
(回答)
 研修医が研修を修了すべく自己管理するのは当然であり、あえて記述する必要はないと考えます。また、現行制度において作成することになっている「研修医手帳」により、研修医が目標の達成状況の自己点検を行うことは可能と考えます。

<4−2.研修期間終了時の評価>

 8
 ・  3月に修了者が出るという記載だが、3月中に修了判定及び修了証書授与を行うと解釈して良いか。この場合、3月に行う予定の研修については見込みで修了判定して良いか。
 ・  研修期間終了時の評価は具体的にいつ行うのか。研修修了後の進路の事を念頭におくと、研修期間中の3月(研修最終月)に行うのが妥当と考えるが、その際は、研修中であることからある程度修了見込みで判定することになると思われるが、こういった取扱いで差し支えないか。
(回答)
 3月末に研修期間が終了する場合、3月末に修了判定を行い、臨床研修修了証の交付を行うことが原則です。3月末より前に修了見込みで判定を行うことも可能ですが、もし期間終了時に修了基準を満たしていなければ、その判定は取消しとなります。そのような事態を避けるため判定日前に到達目標を満たしておく等、計画的に研修を実施すべきです。

 「5.臨床研修の修了基準」について

<5−1.研修実施期間の評価>

 9  正当な理由でない休止(例えば、無断欠勤など)の日数の取扱いはどうなるのか。
(回答)
 正当な理由がない休止の日数については、認められないことから、宿日直や研修期間の延長などにより補われるべきものと考えます。しかし、そもそも正当な理由でない休止は、医師法に定める研修専念義務に反するものであり、むしろ臨床医としての適性の評価基準に触れる可能性があります。

 10  平成16年度から研修医となった者は、医師国家試験の発表が4月下旬であったことから、5月の採用となっている場合が多い。この場合、平成16年度における研修期間(2年間)については、例外的に23ヶ月間とし、その中で休止期間の上限を90日とするという理解で良いのか。
(回答)
 医師法では2年以上の臨床研修が義務付けられており、あくまでも研修期間としては2年間が必要です。しかし、御質問のような特殊事情を勘案し、第一期生に限り経過措置として、その24月目の研修日数は、「その他正当な理由」で研修しなかったものとして、90日の休止期間に含めることも可能であると考えます。

 11
 ・  「各研修分野で求められている必要履修期間」というのは具体的にはどの期間を指すのか。臨床研修病院の基準で定められている各研修分野の最低期間の1月ということか。
 ・  休止期間の上限は90日とされているが、連続して90日でなく、欠勤した日の合計が90日という認識で良いのか。また、基本研修科目、必修科目で必要履修期間を満たさない場合と提示されているが、1ヶ月必修科目の場合、1日でも欠勤した場合、1ヶ月研修とみなされず、選択研修時期に再履修しなければならないのか。その場合、たとえば、地域医療で研修した施設が、再履修の際、別施設に変更となっても構わないのか。
(回答)
 各研修分野で求められている必要履修期間というのは、1年目は基本研修科目である内科6月、外科、救急(麻酔科を含む)それぞれ3月が目安となり、2年目の必修科目については各1月となります。必要履修期間1月について1日程度の欠勤であれば宿日直研修で補うことも考えられます。
 なお、休止期間の上限の90日は、連続した日数ではなく、合計の日数です。 また、地域保健・医療について再履修する場合については、基本的には同じ施設で再履修を行うべきですが、実際に実施することが難しい事例が生じた場合には個別に地方厚生局に相談してください。

 12  休止期間の上限90日は長すぎるのではないか。アメリカでは、出産しても、休みは3日程度である。
(回答)
 わが国では労働基準法において、産前産後の計14週は就業させてはならないと定められています。なお、「休止期間の上限90日」はあくまで研修実施期間の評価であり、到達目標の達成度の評価が得られるものでなければ、研修期間の延長が有り得る仕組みとしています。

 13  90日については、国公立病院と私立病院、大学でも国公立と私立大学では、週休2日とそれ以外の差ができてしまう。土日、休日とそれ以外では、90日の扱いに差があるので、日数については、慎重な取扱いが求められる。全研修日程数の「24分の3」とするべきである。
(回答)
 各病院により休日の取扱いが異なることは事実ですが、逆にすべての臨床研修病院、研修協力施設の休日を考慮して日数を計算するとなると、各研修医のスケジュールごとに日数を計算しなければならず著しく複雑になってしまいます。そこで、評価の仕組みとしては、単に期間だけでなく到達目標の達成度の評価を併用することにより、公平を期しているところです。

 14  未修了者が不足する期間以上の期間の研修(補習)を行った場合には、修了と認められるのか。また、未修了者が不足する期間以上の期間の研修(補習)を行った後の資格は、2年修了者と同等か。未修了の場合は不足する期間以上の期間の研修が必要な旨が記されていますが、不足する期間以上の期間の研修を行った後の取扱いについて記載がないので、この点を明確にする必要があると考える。
(回答)
 単に不足している期間を履修すれば修了と認められるものではなく、到達目標を達成しなければ修了と認めるべきではないことから、達成が見込まれる期間の延長が必要になります。なお、仮に補習により一般的な研修医よりも長い期間研修したとしても、臨床研修を修了したことについては、通常の期間で研修を修了した場合と変わりはありません。

 15  追加研修期間はどのように設定するのか、具体的な基準等が必要である。
(回答)
 休止期間が、選択科目の期間等を利用しても補えない場合は、当該不足期間分の延長が必要となります。また、必要履修期間を満たしていても、到達目標に達していない場合は、達成が見込める期間分延長しなければならないということになります。

 16  その後の進路で他病院への就職が決まっている者が、研修終了日において実際に修了と認められない場合、今後の進路を考え、当該就職先病院が研修中の病院群ではないが臨床研修指定病院である場合、その病院で追加研修を行うという取扱は不可能か。就職日を変更させてまで同一プログラムで研修を行わなければならないか。
(回答)
 現在研修を実施している病院には、あらかじめ定められた期間内に研修を修了させる責務があり、基本的には他病院での追加研修を考えるべきではありません。また、研修修了が前提の就職ということであれば、当然、研修未修了者は就職できないこととなります。たとえ就職が内定していても、卒業していなければ、国家試験も合格できないし、卒業できたとしても、国家試験に合格しなければ、医師として就職できないのと同じです。

 17  未修了の場合、「原則として引き続き同一研修プログラムで当該研修医の研修を行う」が、この場合の身分は、正規の研修医と同等(給与その他の待遇)と考えて良いのか?また、未修了分の研修を引き続き行う際、新年度の途中で未修了分の研修が完了しても、途中から専門修練医など、上のクラスの臨床研修に編入するのは困難である。引き続き同一年度末までは、受入先の状況に基づき研修医として取り扱っても良いか。
(回答)
 研修医の待遇については、使用者である臨床研修病院が決定することです。本制度としては研修修了後の上位クラスの事情まで言及できるものではありませんが、未修了分の研修期間については、研修医と十分話し合い、納得が得られるようなものとすべきであると考えます。

<5−2.臨床研修の到達目標(臨床医としての適性を除く)の達成度の評価>

 18
 ・  すべての必修項目達成が修了認定の条件になっているが、経験の難しい手技、疾患などもあり、そのような経験にこだわる事で、研修が細切れになり、中途半端な研修になってしまう危険性があるのではないか。
 ・  必修項目は、本来すべての項目についての達成が求められるものであることは十分理解できるが、通常であればすべての研修項目について十分研修可能な研修施設であっても、偶然が重なってたまたま研修できない項目が生じる可能性がある。原則としてすべての必修項目について目標を達成することが求められることを明記したうえで、なし崩しにならないような配慮として、やむを得ない理由で達成できなかった場合の取扱いについて言及すべきだと考える(例:理由書を提出させる、地方厚生局に報告するなど)。
(回答)
 「必修」とは文字通り「必ず履修する」という意味であり、修了基準において、特段の方針変更があるわけではありません。臨床研修の到達目標における必修項目は、指定申請以前から示されており、各病院のプログラムは偶発的な事故をもある程度は想定して目標が達成できるよう作成されているものと考えます。
 なお、どうしても目標が達成できない場合には、選択科目の期間などを利用して目標を達成する必要があります。

 19  必修項目の中には全国的にも達成度が低い項目(例えば白血病)があり、EPOC(オンライン臨床研修評価システム)等による解析で達成度の低いものは経過措置として除外することが望ましい。初年度より厳格な要求をすると、不正確な認定が行われ実態が把握できなくなるのではないか。
(回答)
 現行制度において、全国統一的に示している目標であり、現時点で特定項目を除外するなどの経過措置を設けることは、逆に現場の混乱や研修内容のレベル低下を招くことにつながるのではないかと考えます。なお、白血病は必修項目には入っていません。

 20  今回具体的に触れられていない経験項目の必須条件について明確な修了要件の説明をお願いしたい。 (「〜が望ましい」等の表現部分についての補足説明を含む)その具体例として、
1.  経験すべき症例に関しては、88項目のうち70%以上となっているが、組合せ等は無条件で62項目以上を経験すればよいのか。
2.  特定の症状・疾患に関して30件、外科で1件、CPCで1件の計32件のレポートが求められているが、これはすべて必須なのか。
(回答)
 1については、経験が求められる疾患・病態88項目のうち、
  (1)  A疾患とされている10項目については、必ず入院患者を受け持ち、症例レポートを提出する必要があり、
  (2)  B疾患とされている38項目は、必ず外来診療又は受け持ち入院患者で自ら経験する必要があり、
  (3)  (1)(2)以外で14項目以上を経験する必要があります。
 2については、お考えのとおりです。

 21  達成度は、研修医の能力だけによるものではないので、今後の後期研修で、確実に達成できれば、研修修了(予定)としてもよいものと考える。
(回答)
 医師法に基づく臨床研修の修了基準であり、それに続くいわゆる後期研修をも考慮することは矛盾しています。臨床研修の目標は2年間の研修プログラムにより達成することが前提であり、達成できなければ期間を延長してでも修了させる必要があります。

 22
 ・  患者は「研修医」というだけで不安を感じる場合があり、『患者に必要以上の不安を与えずに』と変更したほうが望ましい。
 ・  「患者に不安を与えずに行うことができる」か否かの判断は不可能と考える。
(回答)
 医師臨床研修部会の議論において、臨床研修の到達目標(臨床医としての適性を除く。)の達成度の評価において、手技などの巧拙を具体的に判断し評価するよりも、一定の判断基準として「患者に不安を与えずに行うことができる」とする方が適切であるとされたものです。不安の程度ですが、特に名指しで苦情が寄せられたり、担当替えを求められるような状況でなければ、問題はないものと考えます。

 23  「医療安全を確保し、かつ、患者に不安を与えずに行うことができる場合」という基準は明確でなく、判定は難しい、と感じる。これは、研修修了時に「単独で」安全・安心な診療をできることを指すのであれば、かなり基準としては高く「専門医や指導医の監督下に」診るのであれば、基準としては低い。例えば、2年間の研修で正常分娩を単独で診療できるように全研修医を育成することは、経験数の上から困難を生じる研修プログラムもあるのではないか、と危惧するものである。
(回答)
 必修項目に「自ら」と書かれているものは基本的には単独での実施を目指すものですが、御指摘の正常分娩のように急変の可能性のあるものについては、少なくとも指導医が直ちに対応できる体制の下で診ることができれば良いと考えます。

<5−3.臨床医としての適性の評価>

 24  研修病院はあくまで2年間の研修を修了認定できるかどうかの判断のみをするべきで、臨床医としての適性の有無を研修病院に判断させるのは無理があるのではと考える。指導・教育をしたにもかかわらず改善が無く「研修医が医療の安全を確保できない、患者に不安を与える」場合には、「到達目標を達成していない」の判断を下すのみにとどめ、未修了の理由の詳細として「研修医が医療の安全を確保できない、患者に不安を与える」と記入すべきと考える。その上で、当該研修医から研修継続の要望があった場合は、厚生労働省が再教育を行い、臨床医としての適性を判断するべきである。
(回答)
 現行制度においては、医師としての人格涵養を基本理念に掲げ、到達目標にも医療人として必要な基本姿勢や態度を行動目標に設定しており、研修プログラムにおいてこれらを身に付ける研修が当然含まれているはずです。すなわち、臨床医としての適性の評価とは、到達目標の達成度の評価に含まれるものであり、当然臨床研修病院が判断すべきものです。ただし、単独の臨床研修病院において判断することは非常に困難なので、原則として少なくとも複数の臨床研修病院における臨床研修を経た後に評価を行うことが望ましいとしています。
 医師臨床研修部会でも議論になりましたが、筆記試験とは異なり、研修医の到達度等を正確に把握・評価できるのは臨床研修病院しかないという結論でした。したがって、地方厚生局は行政としての立場から相談に対応し、適宜、助言・指導等を行うものであり、臨床医としての適性の判断を行うものではありません。

 25  「当該臨床研修病院では研修不可能であるが、環境が整う他の臨床研修病院では研修可能な場合、病院を移ることを可能とすべきである」との表現について、この具体的な基準は示されるのか。
(回答)
 障害等の内容や程度は多様であり、個別に判断すべきと考えます。

 26  現在、全国の研修病院では、マッチング結果によって、自分の思う研修ができなくて研修中断の危険性がある研修医がいると聞いている。研修病院を途中で変更できるのであれば特に大学病院(母校)ではそういった研修医を何とか立ち直らせる方法を模索したいと考えているが、そのためにはこの具体的な基準を早く提示していただきたい。
(回答)
 マッチングでは、お互いに順位を付けた相手としか組合せは成立しないことから、互いにプログラムや研修医等を理解した上で契約を交わしたはずなので、中断を考える前に、まず病院と研修医との間で、継続の方策について十分に話し合うべきです。その上で、必要に応じて地方厚生局に相談してください。

 27  一番問題となるところだと思う。特に、チーム医療を乱しても、9時〜17時という研修医の権利を主張する場合には、「指導医・プログラム責任者・研修委員会等が指導・訓導・教育」し、改めない場合には、未修了もしくは中断とすべきである。この点を「やむを得ないものである」と婉曲に記載すべきでなく、はっきりと未修了・中断としたほうがよいと思う。
(回答)
 管理者は、責任をもって、受け入れた研修医について、あらかじめ定められた研修期間内に臨床研修が修了できるよう努めるべきで、安易に未修了や中断の扱いを行うべきではありません。そのため、結果的に未修了や中断の判断に至る場合においても、あくまでも「やむを得ない」との考え方になります。

 28  「臨床医としての適性に欠けるような場合には、当該研修医の評価を少なくとも複数の臨床研修病院で行うことが望ましい」となっているが、この場合、研修の修了はどのような状態あるいは期間を想定しているのか?この点を明確にすべきと考える。また、研修未修了者は、将来にわたって、継続して臨床を行ってはならない等の罰則規定が医師法に盛り込まれるのかどうか。
(回答)
 複数の病院における評価を踏まえた上で、臨床医としての適性に欠けるために未修了や中断と判断せざるを得ないような場合には、病院の管理者による適切な進路指導(臨床研修継続、それ以外の進路も含めて)を求めることとしています。研修継続の場合、期間は2年を超えることとなります。
 また、現時点において、未修了者に対する罰則規定を医師法に盛り込む予定はありません。なお、医療法の規定により、未修了者は、病院等の管理者となることができず、また、診療所を開設しようとするときは許可を受けなければならないこととされています。

 29  適性の評価を行うにあたり、臨床研修管理委員会で判断を下すことが適正かどうか疑問である。
(回答)
 研修管理委員会は臨床研修を統括管理する機関であり、病院管理者、すべてのプログラム責任者、協力型臨床研修病院及び研修協力施設の研修実施責任者により構成されており、さらに外部委員の参加も求めていることから、適性を評価するには、最も適切な機関であると考えています。

30
 ・  複数の臨床研修病院で評価を得るというのは疑問である。問題のある人を他の病院が受け入れてくれるのだろうか。
 ・  単独で研修医の適性を判断せずに複数の病院の評価(意見)を徴して、慎重に判断するということが主旨であることは十分理解できる。しかし、最初に臨床研修を行った病院において適性に難があると考えられる研修医を、他の臨床研修病院での研修に出すことには、受入先の病院の負担増を考えた時、現実的な方法とは思われない。
(回答)
 臨床医としての適性の評価は非常に困難であり、極めて慎重な検討が必要であるとの議論から、その程度が著しい場合を除き複数の臨床研修病院における評価を求めることとしています。なお、研修の中断の際には、管理者は、研修医の求めに応じて、他の臨床研修病院を紹介する等臨床研修再開のための支援を行う必要があります。

 31  「一般常識を逸脱する、就業規則を遵守できない、チーム医療を乱す等の問題に関しては、まず当該臨床研修病院において、十分指導・教育すべきである」とあるが、一般的な対応としては妥当であると考える。しかし、常軌を逸した危機的状況下では、反復教育するプロセスを経ることによって、医療安全の確保が脅かされることになる。本提言が公表され、定着されることによって、使用者である病院の懲戒権がますます制限されることのないよう望むものである。
(回答)
 研修医の適性を判断することの重大性を考えれば慎重な検討を行うことが当然ですが、適性に欠ける程度が著しい場合には最初の臨床研修病院において中断や未修了の判定を下すことを妨げるものではありません。ただし、そのことと病院が行う懲戒とは別のことです。

 32
 ・  この適性の評価がもっとも難しく、各施設の悩むところである。例示するなどして、より客観的な評価を得るための工夫がほしい。
 ・  具体的事例を挙げて、本人に告知すれば、中断は可とすると記述していただく。
(回答)
 適性の問題に関する事例は多様であり、現時点でお示しすることは困難です。

 「6.臨床研修の中断・未修了について」について

<6−1.基本的な考え方>

 33  未修了あるいは中断と評価されたときの対応だが、研修続行もしくは再開後の評価はどの時点で行うのか。
(回答)
 あらかじめ定められた研修期間の終了の際に、修了・未修了の評価を行いますが、未修了の場合は、未修了の理由により、到達目標が達成できそうな延長期間を設定し、当該期間の終了の際に再評価を行うことになります。また、研修を中断し、別の病院で再開した場合には、受け入れた研修プログラムにあらかじめ定められた研修期間の終了の際に、中断前の評価も踏まえて最終的な評価を行うことになります。

 34  研修医の評価の記録の提出は必要となるのか。必要となるのであれば、具体的にどのような項目を想定されているのか。
(回答)
 研修医の評価に係る記録については、各病院の管理者が、当該研修医の研修が修了又は中断された日から5年間保存しなければならないことになっていますが、現時点では、特に必要となる場合を除き、当該記録を提出していただく考えはありません。

 35  最初に研修を行った臨床研修病院には「修了させる責任がある」ことは当然である。しかし、中断においても未修了においても、研修医が他の病院での研修や他のプログラムでの研修を希望する場合は認める必要があるのではないか。
(回答)
 契約を交わした以上、研修医にはそのプログラムで修了しようと努める責任があり、安易な中断を求めるべきではありません。しかし、やむを得ない事情があれば、認めていないわけではありません。

 36  再開の申込みを受けた臨床研修病院が受入れを断ることは可能であると考えるのか。また、未修了とした場合、当該研修医を修了まで指導していく場合の最長期限を臨床研修病院で設けることは可能だと考えるのか。
(回答)
 再開の申込みを受けた場合、まず募集定員上の空きが必要となります。その上で、選考試験を行い、その結果に基づき各病院で判断するべきものと考えます。また、未修了に至るには様々な理由が考えられるので、現時点で最長期限を設けることは適当ではないと考えます。

 37
 ・  地方厚生局は、相談の立場をとっているが、もう一歩踏み込んで、仲裁、あるいは、裁定を下す役割を担っていただきたい。臨床研修審査官を中心に、外部有識者で構成する、仲裁(裁定)委員会を設置する。病院側からの申し出、または、研修医側からの申し出により、短期間の審議を行い、方針決定を行う。
 ・  「必要に応じて事前に地方厚生局に相談すべき」とあるが、地方厚生局は、適切に判断するだけの評価に精通したスタッフはいない。地方厚生局も加えて協議していくか、あるいは地方厚生局には報告するのみとする。
(回答)
 医師臨床研修部会でも議論になりましたが、筆記試験とは異なり、研修医の到達度等を正確に把握・評価できるのは臨床研修病院しかないという結論でした。したがって、地方厚生局は行政としての立場から相談に対応し、適宜、助言・指導等を行うものです。

<6−2.中断>

 38  留学等の諸事情が関連することもあり、研修中断については、再度、再開できる含みをもつことを明らかにしていく必要がある。
(回答)
 研修中断は、原則として病院を変更して研修を再開することを前提としており、研修医は自ら希望する病院に再開を申し込むことができます。ただし、事情によっては元の病院で再開することを妨げるものではありません。

 39  臨床研修病院は他施設での研修中断者が研修再開を希望するとき、これを受け入れる必要(義務?)があるということを明文化しておくほうが良いと思う。(中途からの研修が困難、定員オーバー等の理由で断られ、次の研修先がなかなか見つけられないという事態は起きないのだろうか。特に、本来の研修病院の廃院や指定取消しなど本人の責任でない理由で研修が続けられなくなったケース)
(回答)
 再開の申込みを受けた場合、まず募集定員上の空きが必要となります。その上で、選考試験を行い、その結果に基づき各病院で判断するべきものと考えます。なお、中断する病院の管理者に求めている「適切な進路指導」には、再開受入先の病院の状況を踏まえた上で研修医に当該病院を紹介していただくことも想定しています。

 40  他の研修病院で研修を再開できるのであれば、臨床医としての適性を欠くとの判断自体が間違いなのでは。本当に適性を欠くというのであれば、未修了とするべき。その場合でも適性を欠くという表現はふさわしくないと思うし、中断証や未修了証に安易に使うべき言葉ではないと思う。
(回答)
 適性を欠くという表現は安易に使うべきではないというのはお考えのとおりです。臨床医としての適性の評価は非常に困難であり、極めて慎重な検討が必要であるとの考えから、その程度が著しい場合を除き複数の臨床研修病院における評価を求めたものです。しかし、適性の判断基準にもあるように、「適性を欠く」中には可逆的なケースもあり、中断後に再開するという道は残しておくべきと考えます。また、逆に適性に欠け、臨床研修以外の道へ進む場合には、いたずらに2年間を費やして未修了とするより、早めに中断して新たな進路へ進む方が研修医、病院双方の利益になると考えます。

<6−3.未修了>

 41  2年間で研修が未修了となってしまった場合、追加研修を受けることになると思うが、その際は、「○月○日研修修了」と月単位で個別に修了証明書を受け取ることができるのか。
(回答)
 未修了として追加研修を受けることになった場合には、個別の修了日により修了証を交付するものと考えます。

 42
 ・  「臨床研修の修了基準を満たすための研修プログラムの提出は、研修プログラムの定員を超える場合のみ、地方厚生局に提出する必要がある」とすべきで、定員以内であれば、研修病院の裁量で研修を続行させてもよいのではないかと思う。
 ・  研修スケジュールを提出する必要があるのか。
(回答)
 医師臨床研修部会の議論においては、現在、中断や未修了の状況を地方厚生局が把握できていないことが問題とされ、これらを把握する仕組みを作るよう求められたことに対応して報告を求めることとしたものです。

 その他

 43  研修2年目の最後の月(3月)に、必修研修が設定されている研修医もいるので、最終的な到達評価(経験目標)は、早くとも3月中旬以降となる可能性もあり、その後、管理委員会で審議し、病院の管理者に報告する手順を踏むと修了認定は、研修修了ギリギリにされることになる。修了認定された研修医の厚生労働省への報告時期がいつになるのか早めに提示していただきたい。
(回答)
 修了認定された研修医の厚生労働省への報告時期については、今後具体的に示していきたいと考えていますが、臨床研修が修了した旨を医籍に登録する手続きの関係上、あらかじめ定められた研修期間の終了後1月以内ということになるのではないかと考えます。また、医籍登録の手続を速やかに行うために、期限内に必ず提出していただかなければなりません。
 なお、就職などの際には臨床研修病院の管理者が研修医に交付する臨床研修修了証によって暫定的に臨床研修を修了した旨を証明することができるものと考えます。

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