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病院会計準則の見直しについての調査

 
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U.病院会計準則の見直しについての調査

1.病院会計準則の改正経緯
 病院会計準則は、病院の経営成績と財政状態を適正に把握し、病院経営の改善向上に資することを目的として昭和40年10月に制定され、病院における会計実務のための基準として広く利用されることとなった。病院経営の実態を把握するため、企業会計方式を導入し、共通の基準のもとで財務諸表を作成することによって、種々の経営指標に照らした判断を可能ならしめるとともに、病院の財務的基盤を整備することに貢献した。その後、病院経営を巡る環境が変化し、また「企業会計原則」の改正等、諸般の情勢を踏まえて、昭和58年に財務諸表体系、各種原則及び勘定科目等を抜本的に見直し、整備するという全面的改正を経て、現在に至っている。

2.見直しの必要性
前回の改正から既に20年を経過し、病院を取り巻く経営環境は著しく変化してきている。医療施設の機能が類型化し、介護保険制度が創設され、医療サービスに係わる構造変化も進んできた。
 この間、企業会計原則の2度にわたる改正、さらには連結財務諸表制度、金融商品に係る会計基準、退職給付に係る会計基準等、企業に対しては新たな会計基準が導入されるとともに、社会福祉法人会計基準の制定、公益法人会計基準(案)の公表等、非営利組織会計制度も見直されつつあり、さらに、独立行政法人会計基準、国立大学法人会計基準等、公的部門に対して新たな会計基準が制定されてきている。最近では公私間の経営状況の比較への要望も寄せられつつある。このような環境変化を受け、病院会計準則の見直しの必要性は各方面から指摘されてきた。

3.見直しに対する基本的認識
今回の見直しにあたり、病院会計準則は、すべての病院開設主体が病院の経営実態を把握し、その改善向上を図ることを基本目的として掲げている。従来の会計準則の考え方を踏襲したものである。基本目的が病院経営に有用な会計情報を提供することであることを確認した上で、必要とされる財務諸表体系と会計情報、新たな会計処理の導入について検討を重ね、病院会計準則改正版に係る研究報告書を作成した。今後、「国民に信頼される医業経営の担い手として、効率的で透明な医業経営」を確立するためには、病院会計準則の適用を推進し、病院経営の効率性と透明性を高めるとともに、病院会計準則と整合する開設主体別の適用方法を確立し、その一環として医療法人会計基準を制定することが必要である。

4.主たる内容
施設会計としての性格を前提に、財務諸表の体系の中にキャッシュ・フロー計算書を導入する一方、施設としての病院には配当等、利益の処分が予定されないので、利益処分計算書を除外した。この結果、貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書を基本財務諸表とし、情報利用者の理解を促すため、表示科目等について集約化を図り、一覧性を確保すると同時に、本部費明細と配賦基準の記載を含め、必要な会計情報を確保するために附属明細表を充実させた。
また、企業会計をはじめ近時の会計制度の改革にかんがみ、リース会計、研究開発費会計、退職給付会計等を導入し、財務諸表によって病院経営の実態をより適切に把握できるよう配慮を行うとともに、必要な脚注等を充実させて、会計情報を補完し、利用者の理解を図ることを意図して、その前提となる非会計情報についても記載することとした。
さらに、施設単位としての個々の病院の経営実態を明らかにするという性格を前提に、貸借対照表の資本の部を純資産の部とし、一括して記載するとともに、損益計算書との連繋を明らかにするため、当期純利益又は当期純損失を内書きで表示した。

5.病院会計準則の性格と位置付け
今回の病院会計準則(改正案)では、施設を会計単位とし、個々の病院毎に財務諸表を作成する際の会計基準という性格を明示した。いわば、開設主体の異なる各種の病院の財政状態及び運営状況を体系的、統一的に捉えるための「施設会計」であり、それぞれの病院の経営に有用な会計情報を提供することを目的とするのである。個々の病院に焦点を向けた会計基準とすることによって、経営の効率化を図るため、異なる開設主体間の会計情報の比較可能性を確保する。
病院会計は、非営利を原則とする施設会計であるが、経営の健全性を高めるため、企業会計の最新の基準を適用可能なかたちで導入し、病院経営の効率化と透明性を図ることとした。
なお、病院会計準則を施設会計と性格付けしたことによって、法人全体の会計情報作成にあたっては、別途、法人を対象とした会計基準が必要となる。これらは開設主体毎に法人制度に照らして設計されるべきであるが、現在、医療法人に対して適用される会計基準が未整備のため、別途、医療法人会計基準が必要となる。医療法人会計基準は、病院会計準則ではカバーされてない連結会計、セグメント情報、剰余金計算書等について、医療法人を対象とした法人会計としての性格を持つことが期待される。

6.今後の取り扱い
 病院会計準則はすべての開設主体が採用し、これに準拠した財務諸表を作成することが期待され、普及を図るためのインセンティブを準備することが望ましい。その一方で、法人の財政状態等に著しい影響を与えることも予想され、その適用にあたっては、小規模法人を中心に、経過措置等、所要の措置を用意すべきである。
今回の見直しは当面対処すべき課題に応えるものであり、今後予想される急激な環境変化に対して、機動的に対処すべきであり、必要に応じて、随時、見直しがなされるべきである。



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