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行政版Q&A

(平成13年11月7日現在)

1 予防接種法改正について

(問1)今回の法律改正の背景を教えてください。

(答)
 平成6年の予防接種法改正において、施行から5年後を目途とした検討規定が設けられました。

(参考)
平成6年改正法附則第2条
政府は、この法律の施行後5年を目途として、疾病の流行の状況、予防接種の接種率の状況、予防接種による健康被害の発生の状況その他第1条の規定による改正後の予防接種法(以下「新予防接種法」という。)及び第2条の規定による改正後の結核予防法(以下「新結核予防法」という。)の規定の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、新予防接種法及び新結核予防法の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

 厚生省(現厚生労働省)は、この規定に基づき、公衆衛生審議会(現厚生科学審議会)において、予防接種をめぐる諸問題について審議を行ってきたところです。
 その結果、近年、高齢者がインフルエンザに罹患し、死亡又は重症化する事例が社会問題化していることに対応するため、

(1) 高齢者を対象としたインフルエンザの予防接種を行うため、予防接種法の対象疾病にインフルエンザを追加すべきである。
(2) インフルエンザを法に位置付けるに当たっては、インフルエンザの予防接種は、個人予防目的に比重を置いて行われるもので、集団予防目的に比重を置いて行われる現行の予防接種と予防接種の目的等を異にすることから、現行の予防接種の対象疾病と異なる類型を規定すべきである。
等の意見が平成12年1月提出されました。
 今回の法律改正は、このような公衆衛生審議会の意見等を踏まえて、高齢者を対象としたインフルエンザの予防接種を促進するため、インフルエンザを対象疾病に加える等の措置を講じたものです。

(問2)インフルエンザ予防接種は「二類疾病」となるそうですが、一類、二類の考え方について詳しく教えてください。

(答)
 従来の予防接種法に基づく7疾病は、いずれも疾病の社会全体における流行の阻止又は疾病による致死率が高いことによる重大な社会的損失の防止を図ることを目的としており、集団予防目的に比重を置いて予防接種を行うものであるため、これらについて国民は接種を受けるよう努めなければならないという規定が置かれています。
 インフルエンザ予防接種は、従来の対象疾病と異なり、個人予防目的に比重を置いて、個人の発病・重症化防止とその積み重ねとしての集団予防を図ることを目的とするもので、接種の努力義務はありません。
 このような趣旨から、今回の改正においては集団予防目的に比重を置いた一類疾病と、個人予防目的に比重を置いた二類疾病に類型化し、従来の7疾病を一類疾病に位置づけ、インフルエンザを二類疾病に位置づけることとしました。

(問3)接種対象年齢は何歳ですか。

(答)
 接種の対象者は、(1)65歳以上の者、及び、(2)60歳以上65歳未満の者であって、心臓、じん臓若しくは呼吸器の機能又はヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害を有するものとして厚生労働省令で定めるものです。
 なお、65歳の誕生日の前日から法定の接種の対象者となります。(平成15年10月修正)

(問4) 予防接種法が改正されることで、高齢者のインフルエンザの予防接種は全て法定予防接種になるのでしょうか。

(答)
 法定予防接種の対象者は、(1)65歳以上の者、及び、(2)60歳以上65歳未満の者であって、心臓、じん臓若しくは呼吸器の機能又はヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害を有するものとして厚生労働省令で定めるものです。ただし、当日の健康状態等により接種できない場合があります。また、市町村が指定する接種期間以外での接種及び本法に準じない接種は法定外の接種になり、これらは従前どおりご本人と医療機関との契約による「任意接種」であるため、費用は全額本人負担であり、健康被害が生じた場合も予防接種法の対象となりません。

(問5)インフルエンザについての定期の予防接種を原因とする健康被害救済は、どのように行われるのでしょうか。

(答)
 健康被害の原因が法定の予防接種である場合には、予防接種法による被害救済の対象となります。健康被害の認定の申請は市町村が窓口となり、市町村長が設けた予防接種健康被害調査委員会での検討を経て、厚生労働省の疾病障害認定審査会(感染症・予防接種審査分科会)における審議に付されます。認定された場合には医療費、医療手当、障害年金、遺族年金、遺族一時金又は葬祭料が支給され、支給額は医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法に準じた額になります。予防接種法に基づく救済であることから、手続は従来からの一類疾病と同じですが、給付の水準が異なっています。

2 インフルエンザワクチンについて

(問6)インフルエンザ予防接種は有効なのですか。根拠を示して下さい。

(答)
 欧米では、従来よりインフルエンザの予防接種が高齢者の発症防止や特に重症化防止に有効であるとされてきましたが、我が国独自の研究でも同様の結果が得られました。
 老人施設入所者の場合、予防接種を受けない場合を「1」とすると、予防接種を受けることにより、

死亡の危険を0.2
入院の危険を0.4〜0.5
発病の危険を0.6〜0.7
に下げることが証明されています。

(参考)神谷研究班の正式名称
厚生科学研究費補助金(新興・再興感染症研究事業)
「インフルエンザワクチンの効果に関する研究」(主任研究者:神谷齊)(平成9年度〜11年度)

(問7)接種後どれ位で免疫を獲得するのですか。

(答)
 インフルエンザの予防接種から2週間程度で免疫を獲得します。

3 予防接種の実施について

(問8)インフルエンザ予防接種の実施期間は国で定めるのですか。また実施期間についてはいつからいつまでが望ましいのでしょうか。

(答)
 予防接種の実施期間は市町村で定めることとされており、国から接種期間を指定することはありません。、
 一般的に、インフルエンザの流行時期、接種の効果等を考えると、地域により若干の差がありますが、10月半ば〜12月半ばまでがよいと考えられます。
 ただし、今年度は法律の施行が11月となりましたので、準備ができ次第接種を始めてください。

(問9)実施期間を定めた場合、期間外での接種は任意接種になるのでしょうか。

(答)
 市町村が定めた実施期間外の接種は、法に基づかない任意接種になります。

(問10)単価の設定や実施医療機関の確保など国で調整することは出来ないのでしょうか。

(答)
 薬品費、材料費、人件費等の単価の設定や実施医療機関の確保は各地域の実情が異なるため、国で調整を行うことは困難です。地方分権の趣旨に添って各地方公共団体においてそれぞれ調整していただくことになります。
 また、全国一律の価格を定めることは、独占禁止法にも抵触するおそれがあるものと認識しています。

(問11)予防接種済証の交付及び台帳の作成は必要でしょうか。また、様式は現行法と同じものになるのでしょうか。

(答)
 予防接種済証については予防接種を受けたことを証明するために必要ですので必ず交付して下さい。ただし、予防接種済証の用紙については、地方公共団体の自主的な判断により定めることができます。
 市町村の判断で保険証と同じサイズにしたり、用紙を小型化し、持ち運びに便利なような形式にすることも可能です。また、シール化して老人健康手帳に貼ることも可能です。
 予防接種台帳についても作成してください。

4 予防接種の実施手順について

(問12)主治医と接種医が異なる場合、主治医の意見書・診断書等の書類は必要ですか。必要であればどの様な書式になりますか。

(答)
 ご本人又は家族が十分な説明ができる場合はこのような書類は必須ではありませんが、健康や意思表示に問題がある等の事情のある方で、主治医以外の医師から接種を受ける場合は、主治医による意見書、診断書の発行を受けて、接種医が接種を行う前に確認することが望ましいと考えています。
 意見書・診断書等の様式については特に指定はありませんが、被接種者の基礎疾患等の病歴が的確に判断できるものが適当です。

(問13) 痴呆老人等の意思表示が出来ない方、意思表示は出来るが自署が出来ない方は、予防接種を受けることは出来ますか。

(答)
 予防接種法に基づくインフルエンザの予防接種は、対象者が接種を希望する場合にのみ接種を行うこととされており、本人の意思が確認しにくい場合は、ご家族やかかりつけ医の協力を得て本人の意思確認を行ってください。それでも意思確認ができない場合は、予防接種法に基づく接種を受けることはできません。また、意思は確認できるものの、肉体的事情等で自署ができない場合には、改めて意思確認を行ったうえで家族等による代筆を行って頂くなど、適切な運用に努めて下さい。(平成15年11月修正)

(問14)インフルエンザ予防接種ガイドライン内に記載されている、「重篤でない急性の疾患、急性でない重篤の疾患」とは具体的にどの様なものをさすのでしょうか。

(答)
 同一の症状でも、個人差やその疾病の病期等によって、接種の可否について異なった判断となることもありますので、具体的な疾病名を列記することは困難です。最終的には、接種の可否は、主治医が対象者の状態を総合的に勘案して決定することになります。

5 費用負担について

(問15)国から補助金又は負担金はあるのでしょうか。

(答)
 定期の予防接種の費用については、予防接種は疾病から被接種者自身を予防するという個人の受益要素があることから、市町村の判断により経済的理由により負担できない方を除き、実費を徴収することができることとされています。このため市町村における実費徴収が困難な費用について地方交付税措置を講じられています。今年度のインフルエンザの予防接種のための費用も既に算定根拠に組み入れて地方交付税は措置されていますので、その他の補助制度はありません。

(問16)予防接種法第23条に規定される「実費」は地方自治法上の「手数料」に当たるのでしょうか。手数料にあたらないとすると、実費の徴収を医療機関に委託することは地方自治法令第158条に反しないのでしょうか。

(答)
 予防接種法上の「実費」は地方自治法上の「手数料」には当たりませんが、地方自治法(一般法)よりも予防接種法(特別法)が優先され、また、地方自治法とは異なる枠組みで徴収をするため、直接予防接種法に基づき、実費の徴収を医療機関に委託することは可能です。

(問17)予防接種法施行令24条で「実費」とあるが、どの範囲までを実費とみなせるのでしょうか。

(答)
 予防接種法施行令33条の「実費」とは、薬品費・材料費・予防接種を行うために臨時に雇われたものに支払う経費」とあり、ワクチン費や初診料、注射手技料等の医療に関する費用は実費とみなすことが出来ます。

(問18)インフルエンザ啓発資料には、「インフルエンザウイルスの型に大きな変異があった場合、2回接種することが必要です。」とあります。しかし、2回接種の2回目も公費負担されるのですか。

(答)
 このような記載は、新型インフルエンザなどを想定したものであり、通常の定期種では1回で十分な効果が期待できます。したがって、年度ごとに1回の接種が定期接種となります。

6 施設入所者について

(問19)老人施設入所者は定期接種の対象者になるのでしょうか。接種を実施する場合は、施設長の責任で実施するのでしょうか。市町村の責任で実施するのでしょうか。

(答)
 高齢者施設に入所している高齢者に予防接種法に基づく予防接種を行う場合には、インフルエンザ予防接種が個人の死亡や入院等の重症化防止に重点があることなどから、被接種者の意思に基づきその責任において行います。したがって、施設長が一律的に接種を行ってはならず、高齢者の接種希望の意思を確認した上で接種を行ってください。また、インフルエンザ予防接種は個別接種が原則ですので、施設内で接種を行う際には、一人一人の予診を十分に行い、プライバシーの保護に留意してください。

(問20)接種は、医療機関で個別接種するのが望ましいが、老人施設スタッフ等の関係で難しい場合は、嘱託医が施設で実施して差し支えないでしょうか。

(答)
 嘱託医が接種をする場合は、各入所者の主治医からの意見や診断書等を参考にすることが望ましく、さらに自ら予診及び診察を十分に行った上で接種を行って下さい。高齢者は、基礎疾患等がある方が多くおられるため、慎重に行う必要があると考えられます。
 また、インフルエンザ予防接種は個別接種が原則ですので、被接種者のプライバシーの保護に留意して下さい。

(問21)入院患者や老人施設入所者の多くの方は、入所先の施設等で接種を行うことになるが、住所地(住民基本台帳等に記載されている市町村)と接種地(施設等のある市町村)が異なる場合、どのように接種を行えばよいでしょうか。

(答)
 予防接種は、住所地である市町村が実施することとなっておりますので、基本的には当該市町村が指定する医療機関において実施することとなります。
 しかし、住所地以外の施設等の入所者に接種希望がある場合は、予防接種を受けることを希望する者の住所地(原住所地)を管轄する市町村長が医師あての依頼書を発行し、その依頼書により、予防接種を行った医師は市町村長に代わって接種を行ったものとする等の措置をとるなど、適切な運用に努めて下さい。
 また、長期に入所(院)している場合は、住所地を変更するよう御指導ください。


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