厚生労働省


酸素欠乏症・硫化水素中毒災害の防止について

酸素欠乏症や硫化水素中毒は、死に至ることもあるたいへん危険なものですが、作業環境測定、換気、送気マスク・空気呼吸器等呼吸用保護具の使用などの措置を的確に実施すれば発生を防ぐことができるものです。

酸素欠乏等の危険のある場所には、井戸の内部や不活性気体を入れてあり又は入れたことのある施設の内部など数多くのものがありますので、そういった場所がないかどうか等を事前によく確認し、関係法令に定められた災害防止のための措置、作業方法の点検等を実施しましょう。

厚生労働省は、今般、平成19年に全国で発生した休業4日以上の酸素欠乏症等による労働災害の発生状況をとりまとめました。発生原因は、いずれも対策が十分でなかったことにあります。

これを参考に、酸素欠乏症等防止対策の徹底を図ってください。

平成20年7月1日付け基安労発第0701001号「酸素欠乏症等の労働災害発生状況の分析について」
(↑平成19年に発生した酸素欠乏症等の災害発生状況はこちらに掲載しています。)

http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/040325-3.html
(↑リーフレット「なくそう!酸素欠乏症・硫化水素中毒」)

http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/html/hourei/contents.html
(↑労働安全衛生法及び酸素欠乏症等防止規則等はこちらに掲載しています。)

(照会先)労働基準局安全衛生部労働衛生課物理班(内線5498)


基安労発第0701001号

平成20年7月1日


都道府県労働局労働基準部
労働衛生主務課長 殿

厚生労働省労働基準局
安全衛生部労働衛生課長
 ( 公 印 省 略 )

酸素欠乏症等の労働災害発生状況の分析について

今般、酸素欠乏症等防止規則における酸素欠乏症又は硫化水素中毒(以下「酸素欠乏症等」という。)の労働災害発生状況について分析した結果を別添1に、また、平成19年に発生した酸素欠乏症等の発生事例を別添2に、それぞれ取りまとめたので、業務の参考にするとともに、引き続き関係事業者等に対し、酸素欠乏症等の防止対策の徹底を図るよう指導されたい。

なお、酸素欠乏症等防止規則における硫化水素中毒とは、酸素欠乏危険場所において発生したものであることを念のため申し添える。


別添1

酸素欠乏症等の労働災害発生状況の分析

1 酸素欠乏症等災害の発生状況の推移 (昭和63年〜平成19年)(表1、図1〜3)

休業4日以上の酸素欠乏症又は硫化水素中毒(以下「酸素欠乏症等」という。)による労働災害の発生件数は年間20件前後、被災者数は30名前後で推移していたが、最近5年間をみると平成18年は増加したものの、発生件数は年間10件前後、被災者数は12名前後で推移している。

しかし、酸素欠乏症等による被災者の約4割が死亡する結果となっており、被災者に占める死亡者の割合が高い傾向にあることに変わりはない。

なお、平成19年においては、酸素欠乏症等による労働災害の発生件数が10件、休業4日以上の被災者数が12名と、発生件数、被災者数ともに平成15年に次いで低くなっているが、被災者に占める死亡者の割合は42%と、依然として高い状況である。

表1 休業4日以上の酸素欠乏症等災害の発生状況(昭和63年〜平成19年)

63 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
酸素欠乏症 被災者数 22 26 23 30 20 17 22 23 22 25 28 9 21 15 10 5 11 9 12 11 361
死亡者数 9 9 10 16 12 8 8 14 10 8 9 3 10 7 7 3 2 4 9 5 163
発生件数 14 14 16 20 13 13 16 14 13 15 17 7 17 12 7 5 10 8 11 9 251
硫化水素中毒 被災者数 7 6 10 2 11 8 12 8 13 5 7 13 7 7 18 2 4 3 3 1 147
死亡者数 3 2 1 1 2 7 2 1 4 0 2 6 6 1 15 0 3 0 2 0 58
発生件数 3 4 5 2 6 3 6 4 8 3 5 6 3 5 7 2 2 2 3 1 80
合  計 被災者数 29 32 33 32 31 25 34 31 35 30 35 22 28 22 28 7 15 12 15 12 508
死亡者数 12 11 11 17 14 15 10 15 14 8 11 9 16 8 22 3 5 4 11 5 221
発生件数 17 18 21 22 19 16 22 18 21 18 22 13 20 17 14 7 12 10 14 10 331

備考  被災者数は死亡者数を含む。

図1 酸素欠乏症等災害の発生状況(昭和63年〜平成19年)
図2 酸素欠乏症災害の発生状況(昭和63年〜平成19年)
図3 硫化水素中毒災害の発生状況(昭和63年〜平成19年)

2 酸素欠乏症等災害の発生原因(平成10年〜19年)(図4)

最近10年間における酸素欠乏症等による労働災害発生件数139件について、その発生原因について見ると、酸素濃度等の測定の未実施が原因の一つとなっているものが94件、換気の未実施が72件、空気呼吸器等の未使用が66件と他の原因に比べて突出している。

図4 酸素欠乏症等災害の発生原因別発生状況(平成10年〜19年)

※ 1件につき複数の災害発生原因があり災害発生件数の合計とは一致しない。

3 酸素欠乏症等災害の管理面での問題点(平成10年〜19年)(図5)

最近10年間における酸素欠乏症等による労働災害発生件数139件について、管理面の問題点について見ると、作業主任者未選任が原因の一つとなっているものが67件、特別教育未実施が65件とそれぞれ発生件数の約5割を占めている。

なお、平成19年においては、酸素欠乏症等災害件数10件のうち、特別教育未実施が9件、作業主任者未選任が8件と、酸素欠乏危険作業に係る特別教育未実施と作業主任者未選任の問題が顕著であった。

図5 酸素欠乏症等災害の管理面での問題点別発生状況(平成10年〜19年)

※ 1件につき複数の災害発生原因があり災害発生件数の合計とは一致しない。

4 酸素欠乏症等災害の発生形態別発生状況(平成10年〜19年)(図6、7)

(1)最近10年間における酸素欠乏症による労働災害発生件数103件について、酸素欠乏空気の発生形態について見ると、無酸素気体に置換されたことによるものが62件と最も多くなっている。
 その無酸素気体による置換について、その無酸素気体の種類別に見ると、窒素が28件と最も多く、次いで、二酸化炭素が10件等となっている。

(2)最近10年間における硫化水素中毒による労働災害発生件数36件について、硫化水素の発生形態について見ると、し尿、汚水・汚泥等からの発生が27件と大半を占めている。

図6 発生形態別発生状況(平成10年〜19年)
図7 置換した無酸素期待の種類別発生状況(平成10年〜19年)

5 酸素欠乏症等災害の月別発生状況(平成10年〜19年)(図8)

最近10年間における酸素欠乏症等災害の月別発生件数について見ると、酸素欠乏症は冬季より夏季に多い傾向は見られるものの、特定の月に特に多く発生する傾向は認められないが、硫化水素中毒は冬季にはほとんど発生せず、夏季の月において多く発生する傾向がみられる。

図8 月別発生状況(平成10年〜19年)

6 酸素欠乏症等災害の業種別発生状況(平成10年〜19年)(図9〜10)

最近10年間における酸素欠乏症等による労働災害発生件数139件について、業種別について見ると、製造業で48件と最も多く、次いで建設業で35件、清掃業で21件となっている。

主要業種について見ると、製造業では、食料品製造業及び化学工業において比較的多く発生しており、また、建設業ではマンホール、ピット、タンク等、清掃業ではし尿・汚水・汚泥等の槽といった狭くて通風が不十分な場所において、酸素欠乏症等による労働災害が多く発生している。

図9 酸素欠乏症等の業種別発生状況(平成10年〜19年)
図10 主要業種の発生場所別発生状況(平成10年〜19年)

7 まとめ

酸素欠乏症等の労働災害は、酸素濃度等の測定、十分な換気の実施、空気呼吸器等の使用等、酸素欠乏症等防止規則に定めた基本的な措置を適正に実施すれば、発生を防ぐことができるものである。

また、被災者を救出しようとした者に係る二次災害も発生している。

このため、平成19年に発生した酸素欠乏症等の発生事例も踏まえ、事業者等に対して次の事項を特に指導する必要がある。

(1)事業者が率先して酸素欠乏危険作業のリスクの洗い出しを行い、作業場所が、窒素ガス等の無酸素気体に置換していることやし尿、汚水・汚泥等からの硫化水素が発生しやすい酸素欠乏危険場所であること等の情報を作業者に確実に伝達すること。

(2)第1種酸素欠乏危険作業にあっては酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習修了者又は酸素欠乏危険作業主任者技能講習修了者から、第2種酸素欠乏危険作業にあっては酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習修了者から「酸素欠乏危険作業主任者」を確実に選任して、その者に酸素欠乏症等防止規則に定める職務(労働者の指揮、酸素濃度等の測定、換気装置の点検、空気呼吸器等の使用状況の監視)を行わせること。

(3)作業者に対して特別教育を実施すること。

(4)単独作業時の災害が認められることから、監視人の配置等異常を早期に把握するために必要な措置を講じること。

(5)酸素欠乏症等にかかった作業者を救出する場合には、その救出者に、空気呼吸器を使用させること。


平成19年 酸素欠乏症 発生事例

  業種 被災者数 発生状況 主な原因
死亡 休業
1 清掃・と畜
4   1 被災者は、地下タンク内の汚泥を吸引するため、スコップ等を使用して当該タンク内の汚泥を吸引ホース口にかき寄せる作業に従事した。しかし、地下タンク内への送風機の換気能力不足等から酸素欠乏空気を吸引して被災し、作業終了後に体調不良を訴え5日間休業した。 (1)測定未実施
(2)空気呼吸器未使用
(3)換気不十分
(4)特別教育未実施
(5)作業主任者職務不実施
(6)作業標準不徹底
2 建設業 4 2   被災者2名は、汚水槽内において、のこぎりを使用して配管を切断していたが、意識を失い倒れているところを発見され、2名とも同日に酸素欠乏症で死亡した。 (1)測定未実施
(2)換気未実施
(3)空気呼吸器未使用
(4)作業主任者未選任
(5)特別教育未実施
(6)監視人配備なし
3 製造業 7 1   被災者は、アルミコイルを熱処理する炉の作業箇所の確認のため当該炉内に立ち入った。しかし、炉には酸化防止のためアルゴンガスが充填されていたことから、酸素欠乏空気を吸引して被災し、同日死亡した。 (1)測定未実施
(2)換気未実施
(3)空気呼吸器未使用
(4)ガス流入遮断せず
(5)連絡調整体制不備
(6)立入禁止措置不十分
4 製造業 7 1   被災者は、漁船の魚槽冷媒であるフロンガスが漏洩していたので補修のため、魚槽内に立ち入り補修の準備をしたが、その後魚槽内で倒れているところを発見され、同日酸素欠乏症により死亡した。 (1)測定未実施
(2)換気未実施
(3)空気呼吸器未使用
(4)ガス漏洩遮断不十分
(5)作業主任者未選任
(6)特別教育未実施
(7)監視人配備なし
(8)作業標準不徹底
5 その他の事
1   被災者は、暗きょ及び配管等の状況を確認するため、マンホール内のはしごを降りた。しかし、当該マンホールは換気等がなされておらず酸素欠乏状態であったことから、酸素欠乏空気を吸引し8日後に死亡した。 (1)測定未実施
(2)換気未実施
(3)空気呼吸器未使用
(4)作業主任者未選任
(5)特別教育未実施
(6)立入禁止措置不十分
(7)作業標準不徹底
6 農林水産業 9   2
(1)
被災者1名は、堆肥散布用のタンクローリー内に工具を落としたことから、工具を回収するためタンク内に立ち入ったところ、酸素欠乏状態になっていたため、酸素欠乏空気を吸引して倒れ、救出しようとタンク内に立ち入った別の作業者もタンク内で酸素欠乏空気を吸引し倒れた。先にタンク内に立ち入った被災者は2ヶ月休業し、救出しようとタンク内に立ち入った被災者は2週間休業した。 (1)測定未実施
(2)換気未実施
(3)空気呼吸器未使用
(4)作業主任者未選任
(5)特別教育未実施
(6)立入禁止措置不十分
7 その他の事
10   1 被災者は、排水溝内の塩化ビニール配管の高圧水洗の準備作業のため、一時的に排水溝内に立ち入ったが、自ら「酸素がない」と申し立て、その後は屋外の清掃作業に従事したものの、作業が終了した夕方の帰宅時に体調不良を訴え、17日間休業した。 (1)測定未実施
(2)作業主任者未選任
(3)特別教育未実施
8 貨物取扱業 10   1 被災者は、貨物船からのオイルコークスの荷揚げの準備のため、オイルコークスを積載した船そうのハッチのはしごを降りていた。しかし、オイルコークスが酸化して低酸素状態となっていたことから酸素欠乏空気を吸引して意識を失ってはしごから転落し、7日間休業した。 (1)測定未実施
(2)換気未実施
(3)空気呼吸器未使用
(4)作業主任者未選任
(5)特別教育未実施
(6)立入禁止措置不十分
(7)作業標準不徹底
9 製造業 11   1 被災者は、高圧ガス容器点検のため、当該容器内の昇降用ラダーを降りていた。しかし、当該容器は気密試験のため、その約20分前に窒素を封入しており、高圧ガス容器内に立ち入った被災者は残存窒素を吸引して意識を失ってラダーから墜落した。12日間休業(1名は不休)した。 (1)測定未実施
(2)換気未実施
(3)空気呼吸器未使用
(4)作業主任者未選任
(5)特別教育未実施
(6)立入禁止措置不十分

備考 1 被災者数の( )内の数は、二次災害での被災者数で内数である。

2 「休業」は、休業4日以上のものである。

別添2


平成19年 硫化水素中毒 発生事例

  業種 被災者数 発生状況 主な原因
死亡 休業
1
接客娯楽業 9   1 被災者は、温泉を溜めるタンクから供給される湯量が不足していたことから、当該タンク内のゴミを取り除くためタンク内に立ち入った途端、硫化水素ガスを吸入して倒れ、9日間休業した。 (1)測定未実施
(2)空気呼吸器未使用
(4)作業主任者未選任
(5)特別教育未実施
(6)作業標準不徹底
(7)立入禁止措置不十分

備考 1 被災者数の( )内の数は、二次災害での被災者数で内数である。

2 「休業」は、休業4日以上のものである。

別添2


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