障害者自立支援法の施行以来、各自治体におかれては、法の定着を図るための取組に御尽力いただいているところである。今後は、引き続きこれを全力で行うとともに、さらに、法の主旨に沿った、就労移行や地域生活移行などの新たな取組を育んでいくことが極めて重要である。
(1)新体系への移行促進について
就労は、障害者が地域で自立した生活を送るうえで大変重要である。
このため、障害者自立支援法においては、障害者の就労支援を大きな柱の一つとしており、福祉サイドからの就労支援を充実強化するため、「就労移行支援」及び「就労継続支援」を創設したところである。
また、これら新体系事業への移行を促進するための緊急的な措置を平成18年度補正予算(案)において講じるとともに、平成19年度予算(案)においては、工賃水準の向上を図るための「工賃倍増計画支援事業」を創設することとしたので、これらの事業の趣旨を踏まえ、積極的な就労支援の対応をお願いする。
(2)福祉施策と雇用施策の一体的推進(障害者就業・生活支援センター事業)について
本事業は、平成19年度予算(案)において、新規増分として25か所を計上し、全国135か所で実施することとしているので、新規に事業を実施する都道府県においては、労働部局と協議の上、積極的に活用願いたい。
なお、本事業は労働保険特別会計を財源とする雇用安定等事業と、一般会計(地域生活支援事業費等補助金)を財源とする生活支援等事業が一体となって実施するものであることから、都道府県におかれては、生活支援等事業における予算の確保に努められたい。
(3)精神障害者の地域生活移行支援について
受入条件が整えば退院可能な者の地域生活への移行を図るとともに、地域における支援体制の充実を図ることは極めて重要である。
このため、従来より精神障害者退院促進支援事業、居住サポート事業等の地域生活支援事業等を実施してきたところであるが、今般、平成18年度補正予算(案)において、精神障害者のより一層の地域生活への移行を進める観点から、以下の事業を「障害者支援対策臨時特例交付金」の対象としたので、既存事業とあわせ積極的に活用し、精神障害者の地域生活移行支援の促進を図っていただきたい。
【精神障害者の地域生活移行支援に関連する主な事業】
- 精神障害者地域生活支援センター等の円滑な新体系への移行を図るため、経過的な措置として運営費を助成する「デイサービス事業等緊急移行支援事業」や、新たなサービスへの移行のためのコンサルタント派遣や移行推進研修会を開催する「移行等支援事業」
- 相談支援体制の一層の充実強化を図るための特別アドバイサーの派遣や、相談支援事業の立ち上げに必要な設備整備の支援等を行う「相談支援体制整備特別支援事業」
- 精神障害者退院促進支援事業の強化を図るための退院支援に関する専門家の養成及び市町村職員や地域住民を対象とした退院促進に関する理解促進のための基礎研修を行う「精神障害者退院促進強化事業」
各都道府県におかれては、精神障害者の地域生活移行支援について、都道府県事業としての積極的な事業展開を図るとともに、市町村事業に係る広域調整及び技術的支援等について、より一層ご配慮いただき、精神障害者の退院促進が図られるよう格段のご支援をお願いしたい。
(1)平成19年度予算(案)
平成19年度予算(案)における社会福祉施設等施設整備費補助金については、障害者が地域で自立した生活を送ることができるよう、障害者の地域移行や就労支援に必要な「生活介護」、「自立訓練」、「就労移行支援」等の日中活動の場等の整備に必要な予算額を計上したところである。
(2)平成19年度整備方針
平成19年度の障害者関連施設に関する補助協議の基本方針については、別途詳細をお示しする予定であるが、限られた財源を効率的かつ有効に活用する見地から、新規事業の協議に当たっては、原則として単年度事業であるものに限定し、障害福祉計画を踏まえた整備内容になっているか等、十分に各都道府県市において精査した上で、真に必要な整備について協議を受けることとしている。
なお、平成18年度補正予算(案)において計上された「障害者自立支援基盤整備事業」と重複しないようご留意願いたい。
(3)国庫補助基準単価について
平成19年度の補助基準単価については、公共工事コストの縮減や建設単価の動向等を総合的に勘案し、平成18年度の基準単価から△1.7%の改定を行うこととしているのでご了知願いたい。
3 障害者(児)福祉施設等における不祥事の発生防止及びその対応について
(1)指定居宅介護事業者等への指導監査の徹底等について
平成18年4月に障害者自立支援法が施行され、指定居宅介護事業者等(以下「事業者」という。)の数が増加している一方で、不正受給(支援費)による事業者の指定取消し処分等の報告を受けているところである。
このような状況を踏まえ、障害者自立支援法の円滑かつ適正な運営を図るため、法令等に基づく適正な事業実施の確保に向けた取組の充実強化が切に求められているところである。
ついては、貴都道府県におかれては、事業者に対するなお一層の適切な指導監査の実施に努められるとともに厳正な対応をお願いする。また、管内市町村に対しては、請求内容と実際のサービス利用に差異が無いことを十分審査するのはもちろんのこと、虚偽のサービス提供実績記録票が作成されるようなことが無いよう事業者(基準該当事業者を含む)を指導いただくとともに、支給決定者に対しても、制度の周知を図られるようお願いする。
(2)障害者(児)福祉施設等における不祥事の発生防止及びその対応
人権侵害の防止等については機会あるごとに要請してきているところであるが、依然としてこれら不祥事が発生していることは、誠に遺憾である。
ついては、以下のような事項に留意の上、管下社会福祉法人・社会福祉施設に対する指導監督に万全を期されたい。
また、社会福祉施設における不正・不明瞭な会計処理の防止や施設整備に係る不正の防止について、引き続き社会福祉法人等に対し指導の徹底を図られたい。
- [1] 人権侵害等の防止等について
社会福祉施設において、体罰等の人権侵害事例や入所者からの預り金の管理等について不適切な取扱いが行われていたという報告が依然として後を絶たず、障害者の人権が擁護され適切な支援がなされるべき施設においてこのような事件が起きたことは誠に遺憾である。また、これらの報告の中には、刑事事件にまで及んでいる事件も見受けられることは、適切な施設運営に真摯に取り組んでいる同種施設までが社会の不信感を被ることとなり、看過し難い問題である。
各都道府県等におかれては、このような事件を未然に防止するための対応及び発生した場合の対応にあたっては、「障害者(児)施設における虐待の防止について(平成17年10月20日障発第1020001号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)」を参考に適切に対応されたい。特に、虐待の行われた施設に対しては、指定の取消、事業停止等の適切な対応を図られたい。 - [2] 苦情解決の取組について
障害者(児)福祉施設の利用者等の権利擁護の観点から、障害者(児)福祉施設の最低基準において、苦情を受け付けるための窓口を設置する等の必要な措置を講じなければならないことを明記しているところである。
利用者が苦情を申し出られない事態が、結果として権利侵害に至りうることを考えた場合、苦情解決の仕組みは、利用者の権利擁護を確立する上で極めて重要な位置を占めるものであることは、申し上げるまでもないことである。
都道府県においては、各施設において苦情解決の仕組みが整えられることはもちろん、利用者やその家族に苦情解決の仕組みや窓口の存在(都道府県社会福祉協議会に置かれる運営適正化委員会の役割や各施設との関係も含めて)を分かりやすく具体的に周知できるよう、引き続き指導徹底を図られたい。 - [3] 施設・事業所のサービスに関する第三者評価について
第三者評価事業については、平成15年度に全国社会福祉協議会において、福祉サービスの第三者評価事業等の見直し等について研究を行い、その結果等を踏まえ新たな「福祉サービス第三者評価事業に関する指針について」及び「施設種別の『福祉サービス第三者評価基準ガイドラインにおける各評価項目の判断基準に関するガイドライン』及び『福祉サービス内容評価基準ガイドライン』等について」を取りまとめ、お示ししているところであり、同事業の着実かつ円滑な普及・定着を図っているところである。
障害関係施設・事業所においても、そのサービスの質を担保し、サービスの透明性を高め、不祥事防止を図る観点から積極的に第三者評価を活用することが重要である。都道府県におかれては、都道府県レベルにおける第三者評価の推進体制整備の促進を図るとともに、管下施設・事業所に対して、第三者評価の実施を促すようご指導願いたい。