1   自殺対策の推進について

  我が国における自殺者は、平成9年までは2万5千人前後で推移していたが、平成10年に3万人を超え以後その水準で推移している。そうした中、平成18年12月には「自殺対策基本法」が施行されたところであるが、同法においては地方公共団体の責務についても規定されたことから、同法の基本理念・基本施策を踏まえ、各都道府県等においては、より一層の自殺対策の推進をお願いしたい。
  関係施策の推進にあたっては、平成18年3月31日障発第0331010号障害保健福祉部長通知「自殺予防に向けての総合的な対策の推進について」にご留意いただきたい。
  平成19年度予算(案)においては、平成18年度まで実施していた「こころの健康づくり地域関係者研修事業」及び「こころの健康づくり普及啓発事業」を見直し、新規事業の「地域自殺対策推進事業」を行うための所要経費を計上したところである。これは先進的な自殺対策に資する取組を実施しようとしている地区を選定し、それぞれの地域の実情等に適応した自殺対策を行い検証することにより、効果的な自殺対策を全国に普及させることを目的とした事業であり、詳細については追ってお示しすることとしている。
  また、平成18年10月に、国立精神・神経センター精神保健研究所内に自殺予防総合対策センターが設置されたところであるが、同センターにおいては、各自治体における自殺対策の推進に資するよう情報収集・提供を強化していくこととしていることから、各自治体が取り組んでいる自殺対策についても同センターに対する情報提供に御協力いただきたい。
  さらに、平成19年度からは、従来から国立保健医療科学院で行っている地域の実態に応じた自殺対策の企画立案に資することを目的とした「地域精神保健指導者(自殺・こころの健康問題)研修」に加え、自殺予防総合対策センターにおいて新たに「自殺関連相談員の研修事業」を行うこととしており、これらの研修に対して、関係機関に所属する職員の派遣を行うなど、特段の配慮をお願いしたい。
  このほか、平成18年12月から「自殺未遂者・自殺者親族等のケアに関する検討会」を実施しているところである。


2   発達障害者の支援について

  「発達障害者支援法」が平成17年4月に施行され、厚生労働省においては、発達障害対策戦略推進本部を設置し、発達障害者の乳幼児期から成人期までの各ライフステージに対応する一貫した支援の推進を図る観点から医療施策、保健施策、福祉施策、就労施策等の制度横断的な関連施策の調整及び推進を図っているところである。
  障害保健福祉分野では、発達障害者支援センター運営事業を行ってきたところであるが、同事業については、平成18年10月から、障害者自立支援法における都道府県等の地域生活支援事業として位置づけられたところである。発達障害者支援センターについては、「子ども・子育て応援プラン」に基づき、平成19年度までに全都道府県及び指定都市に整備することとされていることから、未実施の自治体におかれては、早期の実施をお願いしたい。
  このほか、平成19年度は、「発達障害者支援体制整備事業」を引き続き行うほか、発達障害者への有効な支援手法の開発・確立のための「発達障害者支援開発事業」を新規に行うこととしており、各自治体におかれては、事業実施について積極的な検討をお願いしたい。
  また、障害者自立支援法の「児童デイサービス」については、障害児の早期療育に着目した制度であって、早期支援が必要な障害児にとって、有効な施策の一つであることに鑑み、市町村の保健相談事業等と連携を図り積極的に活用されたい。


3   高次脳機能障害者の支援について

  高次脳機能障害者の支援については、障害者自立支援法に基づく地域生活支援事業において、都道府県が行う専門的な相談支援として高次脳機能障害支援普及事業を実施しているところである。しかしながら、その取組状況は一部の都道府県にとどまっているところである。高次脳機能障害は傷病によって住民に身近に発生する課題であることから、未実施の都道府県におかれては、高次脳機能障害支援普及事業の早期実施について検討されたい。
  また、国立身体障害者リハビリテーションセンターを通じ、技術的支援として地方支援拠点機関等全国連絡協議会や研修会等を開催しているところであり、関係職員の資質の向上のため、自治体職員や支援拠点機関等関係機関に所属する職員の派遣について、特段の配慮をお願いしたい。


4   精神科救急医療体制の整備の推進について

  精神障害者の緊急時における適切な医療及び保護の機会を確保するため、都道府県・指定都市におかれては、以下のような点に留意しつつ、それぞれの実情に応じて、精神科救急医療体制を整備されたい。
精神科救急情報センターや休日・夜間対応の輪番制病院等を内容とした精神科救急医療システムを国庫補助事業を活用し、24時間体制により構築
・中核的なセンター機能を持つ救急医療施設を地域ごとに整備していく「精神科救急医療センター」の整備・運営を行うため国庫補助事業を活用した着実な整備
医療保護入院等のための移送体制の整備
医療及び保護の確保に急速を要する精神障害者について必要不可欠な応急入院指定病院の指定


5   精神科病院に対する指導監督等について

  精神保健福祉施策の推進に当たっては、かねてより人権に配慮した適切な医療・保護の確保に努めていただいているところであるが、厚生労働省としても、近年の精神科病院における人権侵害事案の発生等にかんがみ、より適正な入院患者の医療・保護の確保を図るため、都道府県知事等が精神科病院に対して実施した実地指導等を検証する「精神科病院実地検証」を実施しているところであるが、平成17年度に実地検証した結果、一部の精神科病院において、いまだに以下のような事例が見られた。
病室が男女混合
専用の面会室がない
電話の使用時間等が制限されている
預り金の管理が不適切
任意入院・医療保護入院時の診察・告知行為が診療録等で確認できない
隔離・身体的拘束の際の診察・告知行為が診療録等で確認できない
  また、新聞報道等においても、患者同士による暴行、隔離処遇中の患者の死亡など、複数報告されている。
  精神科病院入院者の適切な処遇の確保等については、都道府県知事等は、精神科病院に対する実地指導後の措置として、改善計画書の提出を求め、若しくは提出された改善計画書の変更を命じ、これらの命令に従わない場合には医療の提供の全部又は一部の制限ができることとされてるところであり、各都道府県・指定都市においては、貴管内医療機関に対し実地指導等を実施する際には、精神保健福祉法及び関係通知(平成10年3月3日障第113号・健政発第232号・医薬発第176号・社援第491号厚生省大臣官房障害保健福祉部長、健康政策局長、医薬安全局長、社会・援護局長通知「精神科病院の指導監督等の徹底について」等)の趣旨を踏まえ、一層の指導の強化を図るようお願いしたい。
  併せて、障害者自立支援法による精神保健福祉法の改正に伴い、平成18年10月より、改善命令等に従わない精神科病院の公表制度、改善命令を受けたことがある精神科病院に対する任意入院者の病状報告、任意入院患者の退院制限、医療保護入院及び応急入院に係る特例措置の導入などが行われたところであり、その適切な運用について御協力をお願いしたい。

6   精神医療審査会の適切な運営等について

  精神医療審査会は在院患者の人権確保の観点から極めて重要な役割を果たすものであるが、退院請求・処遇改善請求等の処理に要する平均日数が1か月を超える自治体があるなど不適正な状況が引き続き見受けられる。中には2か月を超える自治体があるなど極めて不適正な状況も散見されている。
  各都道府県・指定都市におかれては、平成12年3月28日障第209号厚生省大臣官房障害保健福祉部長通知「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第12条に規定する精神医療審査会について」に基づき、精神医療審査会の適正な運営を図るように徹底されたい。
  また、先般の精神保健福祉法の改正に伴い、平成18年10月より審査会の委員構成の弾力化が図られ、現行の「医療委員3名、法律委員1名、その他学識委員1名」から「医療委員2名以上、法律委員1名以上、その他学識委員1名以上」に改正されたので、適正な運用をお願いしたい。


7   心神喪失者等医療観察法指定入院医療機関の整備等について

  心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律第2条第5項の指定入院医療機関の整備については、平成17年10月28日障発第1028002号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律の指定入院医療機関の整備について(依頼)」に基づき進めているところであり、現在9か所が開棟し、平成19年度末までには、国立病院等の医療機関としては合計14か所の整備が完了する予定であり、また、都道府県関係としては、4か所が建設中あるいは整備予定となっている。
  引き続き、各都道府県においては、対象者の円滑な社会復帰の促進を図るため、可能な限り各地域で医療が受けられるようにすることが重要であることに鑑み、人口規模にかかわらず、都道府県立病院による指定入院医療機関の整備について十分に検討するとともに、現状において整備困難である場合は、将来の整備に向けて、建て替え整備計画、医療計画への具体的な記載について対応を検討願いたい。
   また、指定通院医療機関及び鑑定入院を引き受ける医療機関の確保についても、更なる充実が図れるよう、引き続きご協力願いたい。


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