障害者自立支援法の円滑な運営のための改善策について

 障害者自立支援法は、地域移行の推進や就労支援の強化など、障害者が地域で普通に暮らせる社会の構築を目指すものであり、この改革を着実に定着させていく ことが必要。

 しかしながら、本改革が抜本的なものであることから、さまざまな意見が存在。こうした意見に丁寧に対応するため、法の枠組みを守りつつ、3年後の見直しまでの措置とし て、以下の3つの柱からなるもう一段の改善策を講じる。

善策の規模:1,200億円(国費)】
(1)   利用者負担の更なる軽減 (19年度当初、20年度当初:計240億円)
(2)   事業者に対する激変緩和措置 (18年度補正:300億円)
(3)   新法への移行等のための緊急的な経過措置 (18年度補正:660億円)
  ※ (2)及び(3)は、18年度補正で都道府県に基金を造成し、20年度まで事業を実施



            1.利用者負担の更なる軽減             

現行制度の概要

   自立支援法においては、1割負担について、所得に応じた負担の上限額を設定。
   その際、通所・在宅利用者及び障害児に対しては、社会福祉法人が提供するサービス
  を利用する場合に、上限額を2分の1に引き下げる措置を実施(平成20年度まで)

  (参考1)1割負担の上限額と通所・在宅利用者に対する社会福祉法人軽減
  市町村民税課税世帯(一般)  月37,200円→上限額の引下げなし
  市町村民税非課税世帯(低所得2)  月24,600円→2分の1軽減→12,300円(通所の場合は7,500円)
  年間収入80万円以下(低所得1)  月15,000円→2分の1軽減→ 7,500円

 (参考2)通所(平均事業費14.9万円)の場合の食費を含めた実際の利用者負担額
     一般・・・・・・・・・29,200円/月(1割負担14,900円+食費14,300円)
     低所得1、2・・・12,560円/月(1割負担 7,500円+食費 5,060円)
現行制度の課題

   利用者負担を理由とする施設退所者は例外的な状況(※14府県のデータによれば、
 退所率は単純平均で0.39%)。しかしながら、現行の軽減措置には以下の課題あり。


(1)   在宅の場合、稼得能力のある家族と同居していることが多く、軽減の適用が少ない。
(参考)入所では軽減(個別減免等)の適用を受けている者が68%に上るのに対し、在宅では24%
(2)   授産施設など工賃収入のある利用者について、「工賃より利用料(自己負担)が大き い」等の指摘。
(参考)平均工賃額は15,000円(工賃額が数千円程度の利用者も多い。) 
(3)  障害児のいる世帯は、若年世帯が多く、在宅・施設を問わず、家庭の負担感が大きい。

軽減措置の内容
I 通所・在宅利用者

 
(1)   1割負担の上限額の引下げ(現行2分の1→4分の1)
 
 社会福祉法人による軽減という仕組みではなく、政令改正により、NPO法人の利用者などすべての利用者が負担能力に応じて軽減措置を受けられるようにする。
  この結果、軽減を行った 事業者の持ち出し(軽減額の一部を法人が負担していたもの)も解消される。

(2)   軽減対象世帯の拡大
 
収入ベースで概ね600万円まで(市町村民税の所得割10万円未満まで)拡大
 資産要件について、単身の場合は現行350万円から500万円まで、家族がいる場合は
1,000万円まで拡大
(参考1)1割負担の更なる軽減
市町村民税課税世帯(所得割10万円未満の場合) 月37,200円→4分の1軽減→9,300円
市町村民税非課税世帯(低所得2) 月12,300円【2分の1軽減】→4分の1軽減→6,150円
 (通所は月 7,500円【2分の1軽減】→4分の1軽減→3,750円)
市町村民税非課税世帯(低所得1) 月7,500円【2分の1軽減】→4分の1軽減→3,750円

(参考2) 通所(事業費14.9万円)の場合の食費を含めた実際の利用者負担額
  一般(所得割10万円未満の場合)・・29,200円/月→14,360円(※)






 
低所得1、2・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12,560円/月→ 8,810円(※)
いずれの場合も軽減により平均工賃15,000円を下回る負担に


II 障害児のいる世帯


  (1) 1割負担の上限額の引下げ(現行2分の1→4分の1)(通所・在宅利用児童)
    ※ 通所・在宅利用者に対する軽減措置と同様の内容

  (2) 軽減対象世帯の拡大(通所・在宅利用児童に加え、入所施設利用児童も対象)
収入ベースで概ね600万円まで(市町村民税の所得割10万円未満まで)拡大
資産要件については1,000万円まで拡大
【負担額の例】
 ○ 通所施設(事業費14.4万円)を利用する児童の場合(1割負担と食費)
  ・ 一般世帯(所得割10万円未満の場合)   28,700円 → 14,360円
  ・ 市町村民税非課税世帯              9,040円 →  5,290円


III 入所利用者等


(1)   入所施設について、工賃引上げに対する意欲を更に高めるため、工賃が年28.8万円(これを超えた部分の30%を含む)までは、定率負担と食費等の負担が全くかからないよう、工賃控除を徹底
   現行の工賃控除は1割負担について認められていたが、年間28.8万円(これを超えた部分の30%を含む)までは、食費等の負担もなくし、工賃全額が手元に残る仕組みとするもの。
  併せて、グループホームについても、年間28.8万円までの工賃控除を導入

(2)   入所施設利用者の個別減免の資産要件を現行350万円から500万円に拡大



2.事業者に対する激変緩和措置
激変緩和措置の考え方
  自立支援法の施行後も全体としてサービスは着実に増加。
  事業者への支払いは、自立支援法の下で、サービスの利用が なくとも一定額を月単位で支払う仕組みから、利用実績に応じて 日単位で支払う仕組みに変更。これにより、利用者は日々のサー ビスを選ぶことが可能に。
しかしながら、
  【給付費の伸び(4〜7月)】
  対前年同月比
居宅サービス +5.8%
通所(授産施設等) △6.0%
入 所 +2.7%
+1.6%
※ 6国民健康保険団体連合会によるデータ
(1)   通所事業者を中心に、報酬が日払いとなった結果、利用者が思うように確保できず減 収が大きい事業者の支援や、

(2)   法施行に伴い新体系に挑戦するも保障のない新体系移行事業者への支援が必要
措置の内容
(1)    旧体系において、従前報酬の80%保障を90%保障となるよう保障機能を強化する。
併せて、旧体系から新体系に移行した場合の激変緩和措置(90%保障)も新たに設
ける。

(2)    利用者が通所サービスをより利用しやすくするため、送迎費用を助成。

(3)    入所施設の利用者が入院した場合の保障措置を強化(現行6日分を1か月間→8日分
を最長3か月まで)する。




3.新法への移行等のための緊急的な経過措置
激変緩和措置の考え方
(1)  サービス体系が抜本的に見直される中で、直ちには移行できない事業者を経過的に支援
  ※   小規模作業所 (法定外施設)
  →  地域活動支援センター
デイサービス及び精神障害者地域生活支援センター
(本年9月までで廃止されたが、経過的な事業として平成18年度まで存続)
  →  生活介護などの新体系サービス

(2)  (1)を行う一方で、新法への移行についても丁寧に対応

(3)  地域移行等を理念とする新体系サービスが始まったことに伴う需要に緊急的に対応
措置の内容

(1)  新法に移行するまでの経過的な支援
  直ちに移行するのが困難な小規模作業所に対し、従前と同水準(定額110万円)の補助を実施
  従来のデイサービス精神障害者地域生活支援センターが移行する(平成20年度)までの間、経過的に支援




(2)  新法への移行のための支援
  ケアホームのバリアフリー化や既存施設が新法に移行する場合の改修、新体系における設備の更新、改修等<ハード面の支援>
  移行のためのコンサルタントの配置や専門家の派遣<人的支援>
  地域移行の推進(グループホームの立ち上げ経費への助成等)、重度訪問介護事業の人材確保等を含めた体制確保のための支援
  雇用、教育等との連携強化(就労支援のための実習受入れ先の開拓、就労支援ネットワークの構築等)<ソフト面の支援>

(3)  制度改正に伴う緊急的な支援
  障害児の早期発見・早期対応、障害児とその親のための交流の場の設置
  相談支援体制の充実強化のためのスーパーバイザー派遣
  オストメイト(人工肛門・人工膀胱造設者)の社会参加促進のための基盤整備
  制度移行期に係る事業コスト増に対する助成
  制度改正の周知徹底のための広報啓発費 等





            今後の取組             
 法の施行後、就労支援、地域移行などに関して、法の趣旨に沿った取組も見られるようになってきている。

 また、報酬の日払い化や1割負担の中で、利用者から選ばれるような事業展開を行う事業者も生まれつつある。
 19年度予算案においては、全体的に厳しい財政事情の中で、障害福祉サービスとして、4,873億円と、11.4%の増額を確保

 引き続き、障害サービスの充実を図りつつ、こうした好事例を育てていくことにより、法の定着を目指す。


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