07/11/01 母子福祉関係団体と厚生労働大臣との意見交換会 議事録 母子福祉関係団体と厚生労働大臣との意見交換会 平成19年11月1日 厚生労働省 雇用均等・児童家庭局 ○藤井家庭福祉課長  それでは早速始めさせていただきます。  本日は「児童扶養手当の一部支給停止措置」に関しまして、母子福祉関係団体の皆さま と舛添厚生労働大臣との意見交換の場を設けることとなりました。各団体の皆さま方にお かれましては、ご多用中のところご出席いただきまして誠にありがとうございます。それ ぞれのお立場から忌憚のないご意見をいただければありがたいと存じます。  それでは、本日ご出席の母子福祉関係団体をご紹介申し上げます。  財団法人全国母子寡婦福祉団体協議会、ハンド・イン・ハンドの会、NPO法人ウィンク、 NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ。以上4団体の方々にご出席いただいておりま す。  本日の進め方でございますが、まず財団法人全国母子寡婦福祉団体協議会、ハンド・イ ン・ハンドの会、NPO法人ウィンク、NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむの順に、 各団体5分間ずつ意見を述べていただきたいと思います。なお、ご発言は着席のままで結 構でございます。 ○舛添厚生労働大臣  皆さま、今日は誠にありがとうございます。 今日は皆さま方のご意見を賜って、しっ かりと行政の場に反映させていきたいと思っています。  大変重要な分野でございます。毎日、C型肝炎とか年金問題等で走り回っておりますが、 この問題もしっかりと取り組みたいと思っておりますので、どうか忌憚のないご意見を賜 ればと思います。どうかよろしくお願いいたします。ありがとうございます。 ○藤井家庭福祉課長  それでは早速でございますけれども、まず財団法人全国母子寡婦福祉団体協議会からお 願いいたします。 ○財団法人全国母子寡婦福祉団体協議会  財団法人全国寡婦福祉団体協議会でございます。代表として川崎市、大阪市、鳥取県、 佐賀県からまいっております。私どもの加盟団体は全国の都道府県、政令指定都市に56 ございますけれども、本年も全国7地区ブロックにおいて母子寡婦福祉研修大会を開催し て終了したところです。その場での決議において、ぜひ、児童扶養手当につきましては、 一部支給停止をやめていただいて、できるだけみんなの生活が滞りなくできるようにお願 いしたいということでございます。そして、議員立法である母子家庭の母の就業の支援に 関する特別措置法につきましても来年3月で期限がまいります。ぜひ、延長していただき たいということを特にお願いいたしております。 ○財団法人全国母子寡婦福祉団体協議会  本当に、母子家庭の母親はとにかく、子どもを健全に育てたいということで一生懸命や っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。 ○藤井家庭福祉課長  それでは次に、ハンド・イン・ハンドの会からお願いいたします。 ○ハンド・イン・ハンドの会  前もって準備しました原稿を読ませていただきます。  1981年に発足したハンド・イン・ハンドの東京の会の世話人をしています。ハンドの会 は、他にも大阪府・愛知県等で定期的に例会を開いて離婚に関する勉強会や情報交換の場 となっています。私は現在56歳で17年前に中3長女・小4次女・小1長男を引き取り離 婚しました。離婚理由は夫が生活費を入れないということでしたので、養育費も全く期待 できず、取り決めもしませんでした。婚姻中は、転職しながらもずっと仕事を続けていて、 離婚時の私の手取り収入は約22万円で、2DKのアパートの家賃が11万円でした。離婚 前の何年かはほとんど私の収入だけで、貯金を取り崩して生活していましたので、貯金残 高も2、30万円あった程度ですから、児童扶養手当・育成手当をあてにして離婚したのも 事実です。でも、児童扶養手当は、すぐにはもらえませんでした。当時の年収が総額で400 万円ぐらいだったと思いますが、離婚前に子どもたちが、私の扶養家族でなかったからか もしれません。受給できるようになったのは約1年後からです。  また、離婚してすぐ勤めていた会社を止むを得ない事情で辞めることになりました。当 時39歳で自力ではすぐに仕事を見つけることができず、人のつてで就職しました。収入 はかなり減りましたので、土曜日は以前働いていた会社でアルバイトをすることにしまし た。私の母は高齢でしたし、兄弟も疎遠でしたので、土壇場になるまでは頼ろうと思わな かったからです。離婚後の生活では、経済を安定させることを優先していました。  子どもたちの精神面までは頭がまわらず、子どもたちが学校での愚痴を私に話そうとし ても私は聞く耳持たずでした。養育費をくれない元夫への怒りや掛け持ちの仕事など、自 分のことだけで精いっぱいだったのです。あのころは、子どもを育てているのではなく、 ご飯を食べさせ住む所を与え学校に行かせていただけでした。そのこともあり、私は子ど もたちの思春期に復讐されることになりました。  児童扶養手当は育成手当と合わせて年間6、70万円を3年間受給しました。また運良く 抽選で都営住宅に入れることになり家賃が3万円台になったのは本当に助かりました。離 婚して1年以内に2回も転職したのですが、2年ぐらいで経済的にほっとできるようにな ったと思います。それまでは精神的にも不安定でプラットフォームに立っていても近づい てくる電車に吸い込まれそうになり、ふとわれに返ることが何度かありました。本来なら ほっとできるようになって、まともな生活が送れるようになるはずでしたが、そのころか ら末っ子が不登校気味になり家庭内暴力も出てきて離婚時よりももっと悲惨な状態になり ました。ピークは中学生になってからで、家族間の殺人事件に発展しかねないほどでした。 何とか家族から離さなければいけないと思い、不登校の子どもを受け入れてくれる施設を 探しました。公的な支援は役に立ちませんでした。カウンセリングは平日の昼間のみだし、 児童相談所も結局断られました。ようやく民間の施設を探して1カ月10万円掛かりまし たが、命には代えられないという思いで。そこで子どもは6カ月ぐらい生活し、自分の意 思で家に戻りました。家庭内暴力が一気に解決したわけではありませんが、馬をはじめ動 物の世話をしたり家族から離れることで何か悟るものがあったようです。休みがちではあ りましたが中学校にも行くようになりました。後に息子の話を聞いてくれた人によると、 私に暴力を振るったことを長く気にしていたようで、息子が心の清算ができたのはその人 のおかげです。子どもは今、全員成人し、正社員として働き、この7、8年ぐらいは穏や かな生活ができています。  結婚後も出産後も仕事をしていたこと、児童扶養手当が受けられたこと、安い家賃の公 営アパートに入れたことが離婚後の再出発の上で大きなプラス要因でした。もし、これら が何もなかったらと想像するのも恐ろしいですが、家族が離れ離れで暮らさなければなら なかったでしょうし、子どもたちは自分たちの不幸を恨んで、その恨みを社会に向けてい たかもしれません。  私の友人の場合はDVで精神的にも肉体的にもボロボロになり出産直後に離婚が成立し ました。でも両親の離婚に対する無理解のため、離婚しても実家に戻ることができなかっ たです。彼女は乳飲み子を抱えて養育費・児童扶養手当・生活保護を受けながら暮らして いましたが、赤ん坊をおんぶしてマンションの屋上に上がり下を見下ろすこともあったそ うです。少し働けるようになってから母子寮に入り、1年ばかり住んでから都営住宅に入 ることができました。小学校のいじめのために中学受験をして元気になったと思ったのも つかの間、今は不登校気味とのことです。  来年4月から子どもの年齢が8歳を下限に児童扶養手当が5年で半分までカットされる と聞きました。最近の全国学力テストで親の収入が低いほど子どもの学力が低いという結 果が発表されています。母子家庭の平均年収は162万円。月額にして13万5,000円です。 憲法第25条「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」は守ら れているでしょうか。児童扶養手当の改悪は絶対にやめていただきたいです。  また、児童扶養手当から就労支援にシフトするとのことですが、母子家庭が求めるよう な形で支援されるのでしょうか。就労支援で、せっかく仕事を見つけたとしても、小さな 子どもがいるのに残業が課せられるのでは長続きしませんし、場合によっては在宅で子ど もの顔が見える場所で仕事をしたい人もいると思います。ぜひ、実情に合った就労支援に していただきたいと思います。  また、母子家庭だけの問題ではありませんが、莫大な利益を得ている大企業がその利益 を一部の役員や株主だけに還元し、収入の低い人がさらに収入を減らされていると聞いて います。偽装請負などモラルの低い企業のニュースを見聞きするたびに悲しくなります。 こんな時のために国民を守ってくれる政治をお願いします。利用しやすい保育園や学童保 育の充実、安くて通勤に便利な公営住宅への入居のあっせん等できめ細やかな政策をお願 いします。 ○舛添厚生労働大臣  ありがとうございます。 ○藤井家庭福祉課長  それでは、NPO法人ウィンクの方、お願いします。 ○NPO法人ウィンク  NPO法人ウィンクでございます。お手元のピンクのパンフレットが団体概要になります。 あまり時間がないようなので、ポイントだけお伝えしていきたいと思います。  まず一つは、現状制度はぜひ凍結していただいて、私は制度全体の見直しが必要だと思 っています。まず現状の、なぜ5年で削減するのかというところの根拠が見えていなくて、 当事者からのヒアリングによると、離婚して5年後というのは、実はとても生活が厳しく なっているのです。確かに収入は上がります。それはゼロからのスタートなので平均値が 上がるのは当たり前です。ただ、2、3年してやっと仕事が認められて会社の中で重要な存 在になってくると残業を強いられて、やむなくベビーシッターにお金を使うので必要経費 が増えます。そんな中で、残業が増えて子どもとの時間が取れなくなり、それで体をこわ すぐらい頑張って、最後には、例えば保育園の先生に「どうしてもっとお子さんとの時間 が取れないの」などといろいろ言われて、体だけではなく心も病んでしまう。それが訪れ るのが、多くが5年後だと思っています。  実際にそういう話を聞いていますし、私自身は去年結婚して母子家庭ではないのですが、 今日連れて来ているのは19歳になる娘です。この後、娘の方からも少しだけ話をしても らおうと思っているのですが、児童扶養手当は子どもの権利だということで彼女から話を してもらいます。 ○NPO法人ウィンク  よろしくお願いします。今私は19歳ですけれど、18歳まで児童扶養手当をもらって育 ってきました。母子家庭で育った子どもが感じる気持ちとしては、寂しい、それから、う ちは貧乏なのではないかと親に聞いたり、習い事をしたくてもなかなか言い出せなかった り、お小遣いをちょうだいと言いづらかったりで。もし児童扶養手当が減ったら、そうい う子どもがもっともっと増えてしまうのではないかと思います。もしも児童扶養手当を減 らすのなら、養育費の支払いの義務を法律化してほしいと思います。  15歳のときに初めて養育費をもらったのですけれども、もらい始めて1年で、また途絶 えてしまって、今ももらえていない状態で、やはり自分でメールなどをして養育費をくだ さいと言わなくてはいけないのは嫌なので、そういうことをしなくても、当たり前に子ど もに養育費がもらえる制度が必要だと思います。そうすれば児童扶養手当がなくても暮ら していける家庭がもっと増えると思います。よろしくお願いします。 ○藤井家庭福祉課長  ありがとうございました。では最後にNPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむの方か ら、お願いします。 ○NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ  しんぐるまざあず・ふぉーらむでございます。資料はそのピンクの冊子と「ワーキング プア・母子家庭の実情を知ってください」という3月の院内集会の資料も持ってまいりま した。時間がないようですので、母子家庭がいかに苦労して働いているかということを、 話していただきます。お願いします。 ○NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ  現在10歳、8歳、6歳の3人の子どもを育てています。私は、元夫の借金その他諸々の 理由で離婚することになりました。離婚直後は何とかして一人で食べていこうと思い、通 信講座の医療事務の資格を取ろうと思いました。しかし養育費も元夫からはもらっていな いので、昼間のパート代だけではどうしても生活ができなかったので、夜子どもを寝かせ た後に働きに出ていました。4年前の話ですけれども、当時まだ7歳の長男が泣きながら 「ママ、どこにいるの」と携帯電話にかかってきて。「ごめんね、ごめんね」と胸の中で 思いながら働いていました。しかし、一日3、4時間の睡眠しか取れないことや、夜中に 仕事が終わってからの通信講座の勉強とで疲れが溜まったせいもあって3カ月ほどで体を こわし、やむなく通信講座を断念せざるを得なかったのです。どうしても、学ぶ意欲があ っても就労支援制度を使うことができませんでした。当時は就労支援制度があることすら も知らなかったです。そして私自身がうつ病を発症してフルタイムや正社員では働けない から体になってしまいましたので、今はパートで10時〜4時までの時給800円で働いて いて、月収としては最大で8万円。子どもの具合が悪くて休めば、少ないときは4万〜6 万円程度なので、児童扶養手当を含めた諸々の手当があるおかげで何とかぎりぎりの生活 を保っている状態です。しかし、手当を減らされてしまうと、その減った分を補うために また仕事の時間を増やしたり、他の仕事をしなければいけなかったり、食費や生活費も減 らすしかないので、それではどんどん自立するチャンスも全然なくなってしまい、このま まではいつまでたっても何も変わらないと思っていますので、やはり手当の削減を凍結し ていただきたいと私は心から願います。 ○NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ  DV被害者の女性のことについてお願いします。 ○NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ  私は15歳、14歳、5歳、4歳、2歳の5人の子どもを抱えています。長年夫からDVの 被害に遭っていましたが、昨年やっと逃げ出すことができて、今年5人の子どもを引き取 りまして、やっと離婚が成立しました。けがの後遺症の他にも、親子でDV家庭で育って しまったので親子でPTSDの症状に悩みながら、それでも生活のために仕事を続け離婚調 停を続けてまいりました。出勤途中で、夫によく似た背格好の男性を見かけると足がすく んで動けなくなってしまって、仕事を休まざるを得ないということもありました。そのた め収入も不安定です。一般的に、DVの被害者の回復というのは、DVを受けた年数と同じ 期間が掛かるといわれています。  離婚は成立しましたが、養育費も慰謝料ももらえない中で、児童扶養手当は、本当に私 たちの綱渡りのような生活の中で、本当に大きな支えになっています。ですから、ぜひ削 減の凍結を。強く希望します。よろしくお願いします。 ○NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ  一言申し上げたいのですが、大臣は日本の母子家庭の就労率をご存じでしょうか。約 85%で、たぶん世界一の就労率です。これは、他の支えがないから働かざるを得ないとい うことです。それから、児童扶養手当を就労阻害要因のようにおっしゃる方がいらっしゃ います。つまり手当があることで働かないと。そんなことは全くなくて、それは社会学研 究でも「児童扶養手当は就労の促進要因になっている」という分析があります。それから、 児童扶養手当があるから、生活保護基準以下でも今お話を聞いたように、何とか暮らして いる方がたくさんいます。もし手当がなくなれば、生活保護受給者がどっと増えるでしょ う。それで行政がやっていけるかどうかです。  それから、一言だけ言いたいのですが、4年前に厚生労働省は母子家庭向けの非常勤の 仕事をたくさん出しますからそれで就職してくださいと発言されました。それで私どもの 会員も行きましたが、他の若者と競わされたので、結局就職には至りませんでした。厚生 労働省の非常勤職員の中で母子家庭の方をどれぐらい雇っていらっしゃるのでしょうか。 自分の足元から、どんどん母子家庭の就労を増やすと、その当時の大臣は大きくおっしゃ ってくださったのです。社会保険庁など関係の団体でも雇うとおっしゃいました。でも実 際には、そんなことはなかったのではないでしょうか。やはり、それはとても私たちは残 念に思っています。養育費についても抜本的な改革が必要ですので、ぜひ。舛添厚生労働 大臣に期待しております。 ○舛添厚生労働大臣  どうも皆さん、ありがとうございました。  今日は、貴重なご意見を皆さま方からいただきました。また現場の声もいただきました ので、これをしっかりと受け止めました。そして今、与党のワーキングチームで一生懸命、 何とかこの問題を解決できないかという形で精力的にやってもらっております。議院内閣 制ですから与党そして政府がしっかりスクラムを組んで、皆さま方の思いが実現できるよ うに全力を上げたいと思います。また、いろいろ側面からもご支援を賜り、そしてまた声 を上げていただきたいと思います。  また、皆さま方のお声を賜って頑張っていきたいと思います。本当に、しっかり賜りま したので。まだいろいろ思いの丈があると思いますし、ご要望もあると思いますので、ど うぞ、お伝えいただくと。  どうか皆さん、しっかり頑張っていただくように、こちらもしっかり頑張ります。どう もありがとうございました。失礼いたします。 ○藤井家庭福祉課長  本当に申し訳ございません。それでは引き続き、それぞれの団体に大変短くお話をいた だきましたので、まだ言い足りないところやもっと付け加えたいことがございましたら、 私ども雇用均等・児童家庭局のスタッフで承りたいと思いますので、よろしくお願いいた します。 ○大谷雇用均等・児童家庭局長  ご挨拶が遅れましたけれども、雇用均等・児童家庭局長の大谷です。私は先ほど与党の PTのときも、一緒に後ろにおりましたので、一通り伺っておりますけれども、その場に いなかったスタッフもおりますから、ぜひお話をいただきたいと思います。私も参加させ ていただきますので、舛添厚生労働大臣は退席されましたが、時間の許す限り、引き続き よろしくお願いします。 ○財団法人全国母子寡婦福祉団体協議会  全国母子寡婦福祉団体協議会でございます。20年3月末までの時限立法を踏まえまして、 全国母子寡婦福祉団体協議会では去年、児童扶養手当減額率緩和請願の署名運動をいたし ましたところ、全国で104万人の署名を集めました。そして、そのとき母子家庭に伺いま したら母親たちが「これから子どもを高校へやれるだろうか」という声があちらこちらか ら挙がりました。  どうぞ子どもたちが安心して、せめて高校ぐらいは出られますようにしてあげたいと思 います。それには、やはり児童扶養手当は子どもが使うお金です。このままの状態で出し ていただけたら結構だと思います。よろしくお願いいたします。 ○財団法人全国母子寡婦福祉団体協議会  母子家庭の母が就業するための最低限、ある程度高度な技術であるパソコン等を習うに しても、習得時間がちょっと短いと思います。子育てをしながらということは、どうして も一般の方の2倍の時間を取ってもらわなければ就業には結びつかないと思うのです。母 子家庭の母が自助努力をするためにも、やはり教育の面で、いろいろな支援や補助的な仕 組み、高度な技術を習得するといっても介護だけの世界ではなくて、私ども川崎では、改 めて簿記検定のための講習とかを実施しております。私も簿記の資格を持って生きてきま したので、まだまだパソコン等での経理といっても、元々の基礎の経理能力とかそういう ものがなければ正確な仕事に結びつかないのです。しっかりとしたそういう基礎的な勉強 があって初めてパソコンにも突入できるのであって、その様な基礎的な知識を得る養成講 座にも補助的に出してもらいたい。単に介護とか福祉とか、そういうことだけではなくて、 もう少し女性でいえば美容師などもあると思います。広い目でいろいろな見識を持ってい ただけるような講座、資格を取ろうと思える制度にしていただけると助かります。もう少 し夢が持てるような制度にしていただきたい。同じ講習を受けても、広い範囲の中から選 べば、夢が持てるのではないかと思います。よろしくご理解のほどお願いしたいと思いま す。 ○NPO法人ウィンク  何年か前、総理大臣になる前の安倍さんにお会いしたときに、この児童扶養手当のこと をお話ししたら「不正受給が困るんだよね」と一言言われて、とてもがっかりした覚えが あります。もしかしたら多くの政治家やお役人はそういうふうに思っているのかと、ここ まで不正受給については触れなかったのですが、一つだけ。  前回の改正から、児童扶養手当の申請に養育費が8割算入されるようになりました。こ れを申請しなかったら不正受給にあたるわけです。そういうことで、当事者間のたたき合 いというものが結構あって、私どもにもメールや手紙などで、実際に養育費を受けている のに申告していない不正受給があるという意見がたくさんあります。これを不正受給とい うのであれば、ぜひ児童扶養手当の申請から養育費の自己申告というのはやめてほしいと 思います。そもそも養育費というのは、離れている親が子どもが健全育成されていくため に支払うお金であり愛情だと思っているので、それを生活費に含めて換算するのは、また 違うのではないかと思います。不正受給と言われるような制度にしておくのではなくて、 手当の中に算入するのであれば、もらっている人と払っている人をきちんと管理するシス テムができてこそ制度に組み込まれてもよいのではないかとは思うのですが、それがなく て自己申告というのは間違っていると思います。 ○NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ  厚生労働省が発表している白書などを見ると、就労支援がうまくいっているというよう な印象を受けるようなデータをお出しになっていらっしゃいますが、実際に、時給いくら の仕事に就けたのか。パートだったのか、給料が上がったのか、雇用期間はどうなのかと いったことが何もわからないまま、就職ができている人が増えているとか、相談件数が増 えているとか、やっている自治体が増えているという数字のみを掲げています。  それで、この前メディアで実績の数字が出たら非常に悪かったわけですよね。非常に自 治体間のばらつきもあったし、もう少し白書のつくり方というのは、実態に合ったものを おつくりにならなければ、母子家庭がいかに苦労しているかということが全くわからない のではないかと思うのです。あの白書を見ていると、本当にきれい事です。  それから、とても驚いたのですが、ヤクルトを「はたらく母子家庭応援企業」として表 彰していらっしゃいましたね。正社員で雇用された企業なのでしょうか。パート採用で7 万円〜8万円の収入ということです。そんな企業を表彰するよりも、もっと別にやること があるのではないかと、本当に恥ずかしい思いをいたしました。企業を表彰すると言って いて、十分な状況にないような所まで。一生懸命探して表彰されたのかもしれないのです が、とても私が赤面してしまうような内容だったと思います。  また、母子世帯調査ですが、今回の調査結果は、かなり発表まで時間があったと思うの ですが、前回の調査とずいぶん発表の仕方が違います。例えば、全体数の推計値が出てお りません。前回の平成15年の調査のときには122万5,400世帯であるというような推計 値を出して、母子家庭はこのぐらいの数だということを出しておられたのですが、今回は 何もないのでびっくりしました。いったい母子家庭の全体像がこれでわかるのかという感 じです。  それから、突然児童扶養手当についての、受給者の5年後の就労収入がいくらだという 調査を出しているのですが、これは母子世帯の調査でやっておられたのですか。これは質 問ですが。何か、突然入っているのも不思議でした。  それから、何度も申し上げていますけれども、母子家庭になった理由別の収入とか、第 一4分位とか中央値などの数などを必ず出していただきたいのですけれども、それをお出 しにならないので、別にいただくことしかできないのです。なぜお隠しになるのかわから ない。  いつも調査の発表の仕方については、とてもおかしいのではないかと言ってきて、4年 前でしたか、基本方針検討会にオブザーバー参加させていただいたときに、課長さんがこ れからの調査結果の発表については改善しますとおっしゃったけれども、全く改善しない どころか前回もちょっと変だったのですけれども、今回はもっと変だと私は思います。  要するに、厚生労働省の政策に適合されるところだけのクロス集計を出していらっしゃ る。私たちの方からは、ここのクロスを出してほしいと思っても出していらっしゃらない。 でも、それでもわかることは、健康を害していたり、小学生の親たちは、とても頑張って 収入を上げているのですが他の年代の親たちは全部下がっているとか。いろいろなことが、 それでもわかるのですが、もっとクロス集計をかければ深刻な結果が出ると思います。し かも発表の速度が遅い。公表してからデータをホームページに出すまでに1週間もかかっ ています。  私としては、いろいろな面で恣意的な調査結果だと思っております。ぜひ、改善してほ しい。これについては、お答えをいただきたいと思います。 ○藤井家庭福祉課長  基本的に、私どもは当然のことながら、決して何かを隠しているとか、今の制度に有利 なデータだけを出しているつもりは全くございません。そこは私も前回以前の経緯をよく 勉強していないのは申し訳ないのですが、具体的に「こことここのクロス集計をしたらよ いのではないか」と言っていただければありがたいと思います。 ○NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ  やっていただけるということでしょうか。 ○藤井家庭福祉課長  もちろん、できる限りのことはしたいと思いますが、如何せん、サンプル数の問題もあ りますし、クロス集計が統計的にどの辺まで意味があるものかということもありますので。 そこはリクエストベースで一つ一つ議論をさせていただければありがたいと思いますので。 そこはぜひ、やりましょう。 ○NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ  推計値を出さなかったのは。 ○藤井家庭福祉課長  推計値というのは母子世帯全体の数ですよね。それは出さなかったと言いますか、正直 申し上げて前回以前の推計というのは、かなり無理をしておりました。 ○NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ  では、無理のない調査をすべきですね。1,500人でやるのは無理なのです。 ○藤井家庭福祉課長  おっしゃる通りです。全国の母子世帯の推計値を出す目的で調査をするのであれば、率 直に申し上げて、別のやり方をしなければいけないと思っています。ですから今回は、そ ういう無理な推計はやめようと思ったのです。実際同じようなやり方で若干無理な推計を しましても、これまでの数字と整合性が取れない結果になりますので、今回は無理な推計 をしなかったというのが率直なところです。  そこもどういう調査のやり方をすればよいかということも改めて検討したいと思ってい ます。それから分位別のものは、私どもが発表した冊子の中で幾つか出ておりますが、そ れではなくて別のデータを分位別にした方がよいというご提言だと思えばよろしいですか。 ○NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ  分位別とは何ですか。 ○藤井家庭福祉課長  先ほど、所得の分位別のことをおっしゃっていたのではないですか。 ○NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ  母子家庭になった理由別の所得の分布、平均年収とか中央値、4分位など。 ○藤井家庭福祉課長  この辺りをもう少し細かく出せればということですか。わかりました。そこも先ほど申 し上げたように具体的に一つ一つ、どれが可能かということを。 ○NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ  それを公表してくださいということなのです。「個別にお出しします」ではないのです。 今、ホームページに出していますよね。そこに、ちゃんと加えてください。 ○藤井家庭福祉課長  もちろん、しかるべき分析をしてきちんとしたデータになるものであれば、それは皆さ んにお出しするだけではなくて外に出していけばよいと思います。  少なくとも皆さんにお出しするものと外にオープンするものが違うなどということは元 来あり得ないと思いますので。 ○NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ  毎回そうなのですよ。 ○藤井家庭福祉課長  前回どういう議論だったのかということが頭に入っていなくて申し訳ないのですが、そ こは、もしかしたら同じ議論の繰り返しになってしまうかもしれませんが。 ○NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ  基本方針検討会の議事録に課長の回答が入っているはずです。なぜそのときに約束され たことを、なさらないのか。今日は議事録をとるとおっしゃっているので、ここで声を大 にして言いたいのです。 ○藤井家庭福祉課長  まさに議事録をとっていますから。個々に一つ一つきちんと詰めて、やれる・やれない を判断していきたいと思います。前回までのことはともかく、今回はきちんとやりたいと 思います。 ○NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ  就労支援と児童扶養手当の運用について、お願いしたいことがあります。就労支援の結 果として各自治体等に支援センターができた。どれくらい正社員や非正規社員で就職した という率は出ているのですが、実際に各市区町村ごとに、どれだけ自立支援給付金を使っ たのか。それが母子家庭全体の総数の何%を使ったのかというデータを出さなければ就労 支援をやっているとは、外からは見えないと思います。都下のある市では、高等技能訓練 促進費を使った人はわずか2名。自治体ごとに予算の絡みもあってなかなか使えないとい う状況がありますので、その辺の改善をぜひ、お願いしたいと思います。  児童扶養手当の運用の問題で、毎年8月に「現況届」があります。その際に、私どもの 方に相談が寄せられるのですけれども、窓口で「恋人がいるか。付き合っている人がいる か」というような児童扶養手当の受給には関係のないような質問が窓口でされていると。  東京都の豊島区においては、受給者の皆さんに児童扶養手当が来年4月から削減されま すというものの下に、大きな字で「以下のような内容が事実婚となりますので、こういう 方がいますと支給が停止になります」という文書が全受給者のところへ行きました。その 内容は1980年に厚生労働省が通達を出している事実婚の認定とは違うのです。「男性の 定期的な訪問や生活費の援助(子の父からの養育費を除く)を受けている場合」としてい ますが、通達では「や」ではなくて「かつ」のはずです。違うことを平気で出して、脅し のように「こういうことがあったら遡及して返還してもらいます」としています。このよ うに法令を遵守しないような窓口があるということに対しては、都道府県を通じてぜひ、 母子家庭に不正受給だとかいろいろなことをおっしゃる前に、やはり窓口においては法令 を遵守するように指導をしてもらいたいと思います。  2002年度の母子及び寡婦福祉法改正の国会論議で、よくある恋人がいるなどのトラブル に関しては、1980年の通達を踏まえると、はっきりとご答弁もいただいておりますので、 厚生労働省の方からも、その辺のご指導をしっかりお願いしたいと思います。 ○NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ  就労支援の話なのですが、各自治体によってやり方等が違うことは存じ上げております が、ある自治体では、特定の母子家庭をしっかりとガードしまして、この人とこの人とい うように就労可能な方々を、半強制的に支援プログラムに乗せている。年間で大体15、6 名〜20名を非常勤の自立支援就労プログラム策定員という職員を配置しまして、そのプロ グラムの下で半強制的にセミナーに参加させて就職に結びつける。ただ、その就職先が、 時給800円であったり。セミナーの内容は、本当にありきたりのハローワークでもやって いるような本を読んだり勉強すればわかるようなものであると。その就職も非正規雇用が 多く、半年後、1年後の追跡調査をお願いしましたところ、半年後には皆さん退職または 転職ということで、結局、定着するような就職先を見つけないで、とりあえず策定員が実 績を上げるために、無理やり就職させられている。その結果、就職先がうまくマッチング できていなかったために長い就労には結びつかないということがあります。ですから、そ の辺りも実績を上げるために無理やり脅かして就職させるということではなくて、しっか りしたカウンセリングなり、もっと専門的な知識の下でそういうプログラムを策定してい ただきたいと願います。  それから、養育費の問題なのですが、先ほども申しましたが10月から養育費支援相談 センターができました。私は養育費をもらっていないので、電話をかけて相談しました。 ところが、養育費をもらうにあたっての支援をする所であるにもかかわらず、法テラスを 紹介されまして、話は3分ぐらいで終わってしまいました。法テラスで相談ができるよう な内容であれば、わざわざ「養育費支援相談センター」と名乗って相談に乗ると大々的に 宣伝する必要があるのかどうかということが知りたいです。法テラス自体も実際の電話相 談の予定数を大幅に下回っていると聞いておりますし、その辺りの相談員の知識も全くな いと聞いております。もう少し、まわりのしっかりとした状況を整えた上でないと児童扶 養手当削減や自立支援なども全く進んでいかないのではないかと思っています。 ○NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ  私たちの団体では、宣伝してくださいと言われたので「相談してみましょう」と、プレ スセンターなどで呼びかけているのです。運営委員もさせていただいているので。ですか ら、少し頑張ってほしいと思います。 ○財団法人全国母子寡婦福祉団体協議会  調査の最後の所に「子どもについての悩み」ということで、教育・進学ということが出 ています。母子家庭の子どもたちが高校などへ進学した場合、確かに授業料の減免措置や 奨学金制度もあります。しかし、寮に入った場合に月3万円の負担があるのです。それに 生活費や交通費も要ります。そういうことで多重債務に陥った母子家庭もありますので、 この児童扶養手当は削減されては困るのです。ましてや地方の子どもたちは、寮に入らな ければならない者もおりますので、ぜひとも、これは削減しないようにお願いします。 ○財団法人全国母子寡婦福祉団体協議会  最終的に、受給者には離婚者が多いのですが、多種多様な事情で離婚をしております。 でも子どもの幸せのためには、とことん我慢してそういう結論になったのであって、決し て好きでそうなったわけではないということをご理解いただきたい。その様な事情から、 そういう児童扶養手当はぜひ生活費として必要だということをしっかりと根本をわかって いただいてお認めいただきたい。それが唯一のお願いでございます。 ○大谷雇用均等・児童家庭局長  だいぶ時間もまいりました。早くお帰りにならなければいけない方もあると思います。 舛添厚生労働大臣は先ほど中座いたしましたけれども、私どもが伺いまして、お答えでき るものも一部ありましたけれども、今日聞いた内容を十分内部で忖度して、特に先ほど与 党のPTもありましたから、よく相談していきたいと思います。調査など、いろいろ改善 する点もあると思いますが、よく相談して進めていきたいと思います。  今後とも、よろしくお願いしたいと思います。今日はありがとうございました。