障害者の就労支援について

 就労は、障害者が地域で自立した生活を送るうえで大変重要である。
 本年4月から施行される障害者自立支援法においては、障害者の就労支援を大きな柱の一つとしており、福祉サイドからの就労支援を充実強化するため、
 (1)  就労を希望する障害者に対し、就労に必要な知識及び能力の向上等のため、必要な訓練等を行う「就労移行支援」や、
 (2)  一般の事業所で雇用されることが困難な障害者に対し、就労の機会等を提供する「就労継続支援」
 等の事業を創設したところである。
 さらに、福祉分野と雇用・教育分野との連携を強化し、障害者がその適性に応じて、より力を発揮して働ける社会を目指すこととしたところであり、平成18年度においては、これらの事業の推進に加え、下記の事項についてご留意いただきたい。

(1) 福祉施策と雇用施策の一体的推進(障害者就業・生活支援センター事業)
 本事業は、18年度予算(案)において、新規増分として20か所を計上し、全国110か所で実施できることとしたところであるので、新規に事業を実施する都道府県にあたっては、労働部局と協議の上、積極的に活用願いたい。

(2) 地方自治体が随意契約をすることができる範囲に授産施設が追加された件について
 地方自治法施行令が16年11月に改正され、地方公共団体等が随意契約をすることができる範囲に授産施設等から物品等を調達する契約をする場合が追加されたところであり、厚生労働省としても、同月「地方自治法施行令等の改正に伴う留意事項について」を通知し、官公需の促進について積極的な取り組みをお願いしているところである。
 なお、先般、各都道府県に対し、都道府県内の授産施設等が生産している授産品目等に関する一覧表の作成をお願いしたところであるが、本表は、現在最終的な整理しているところであり、改めて配布することとしているので、本表を活用した官公需の促進に引き続き特段のご配慮をお願いする。

(3) 小規模作業所への支援
 小規模作業所においては、地域の障害者の働く場、創作活動の場、社会参加の場として、重要な役割を果たしていることから、貴都道府県におかれては、「就労移行支援」や「就労継続支援」の事業のほか「地域活動支援センター」等の法定事業への移行を積極的に推進していただきたい。
 なお、「地域活動支援センター」においては、小規模作業所の運営実績等一定の要件を満たす場合に機能強化事業費として国庫補助を行うこととしており、これに伴い民間団体への補助という形で行ってきた小規模作業所に対する運営費補助は、平成17年度で廃止することとしたのでご配慮願いたい。

(4) 福祉分野と雇用分野・教育分野との連携について
(1)  障害者自立支援推進本部による取組
 障害者の就労支援を推進するにあたり、福祉分野と雇用、教育分野との連携は非常に重要である。このため、昨年12月、本省内に、厚生労働事務次官を本部長とする「障害者自立支援推進本部」が設置され、特に障害福祉サービスと障害者雇用施策の連携推進に取り組むため、本部幹事会に「連携推進チーム」が設置されたところである。
 本チームは、厚生労働省内の連携推進のみならず、教育分野とも積極的に連携を図るための検討を精力的に行っているところである。
(2)  福祉・雇用・教育分野の連携による各種会議の開催について
 昨年12月27日、28日、本省講堂において、企業関係者及び教育関係者を対象とした障害者の自立支援会議を開催した。特に28日の会議は、文部科学省と共催し、多くの関係者の関心を集めたところである。
 なお、福祉・雇用・教育・建築・防災等障害者施策関係部局間のさらなる連携に資するため、内閣府が主催する平成17年度障害者施策総合推進地方会議が、平成18年2月8日、9日に沖縄県において、また平成18年2月23日、24日に仙台市において開催される予定である。本会議の出席についてご検討いただくと共に、都道府県においても障害者施策に関する関係部局間のさらなる連携について強化していただきたい。


 発達障害者の支援について

 発達障害に対する国民の理解の促進や、発達障害者に対する包括的な支援体制の構築を図ることを目的とした「発達障害者支援法」が、平成17年4月に施行されたところである。
 発達障害については、できるかぎり早期に発見し、適切な発達支援を行うことが特に重要であることから、今年度より、発達障害者の乳幼児期から成人期までの各ライフステージに対応する一貫した支援体制の整備を図るため、保健・医療・福祉、教育、雇用などの関係者がチームを組んで問題を解決する「発達障害者支援体制整備事業」を実施し、地域における発達障害者支援の体制強化に取り組んでいるところである。今後、本事業の結果等を踏まえ、発達障害者に相応しい福祉サービスの在り方を検討することとしているので、特に今年度未実施の都道府県・指定都市においては、事業の積極的な取り組みをお願いしたい。
 なお、「発達障害者支援センター運営事業」については、「子ども子育て応援プラン」に基づき、全都道府県・指定都市に計画的に整備することとしているので、未実施の都道府県・指定都市においては、事業実施について具体的に検討されたい。



 障害福祉関係施設の整備について

(1) 平成18年度予算(案)
 平成18年度予算(案)における社会福祉施設等施設整備費補助金については、下記のとおり補助対象施設を見直すとともに、障害者が地域で自立した生活を送ることができるよう、障害者の地域移行や就労支援に必要な「生活介護」、「自立訓練」、「就労移行支援」等の日中活動の場等の整備に必要な予算額を計上したところである。

(ア) 三位一体の改革に伴い公立施設について、その税源を地方公共団体へ移譲し、補助制度を廃止する。

(イ) 障害者関連施設の整備は、障害種別に係わりなく行うことから、保健衛生施設整備費の補助対象であった精神障害者社会復帰施設の整備について本事業に統合する。また、「設置主体が医療法人である障害者関連施設の整備」を新たに補助対象とする。

(ウ) 地域介護・福祉空間整備等交付金の補助対象であった民間立の補装具制作施設、盲導犬訓練施設、点字図書館及び聴覚障害者情報提供施設を新たに補助対象とする。


(2) 平成18年度整備方針
 平成18年度の障害者関連施設に関する補助協議の基本方針については、別途詳細をお示しする予定であるが、限られた財源を効率的かつ有効に活用する見地から、新規事業の協議に当たっては、原則として単年度事業であるものに限定し、障害者自立支援法による制度改正を踏まえた整備内容になっているか等、十分に各都道府県市において精査した上で、真に必要な整備について協議を受けることとしている。
 なお、新体系による整備のため、協議後においての設計変更も認めることとするので考慮されたい。


(3) 国庫補助基準単価について
 障害者関連施設については、1事業当たりの定額補助単価を設定することとしており、整備対象事業の範囲も含めて詳細は追って連絡する。
 なお、平成17年度以前からの継続事業に係る国庫補助基準単価については、平成18年度において、前年度比2.3%減の改定を行うこととしているのでご了知願いたい。


 障害者(児)福祉施設等における不祥事の発生防止及びその対応について

(1) 指定居宅支援事業者への指導監査の徹底等について
 15年4月の支援費制度発足以来、指定居宅支援事業者(以下、「事業者」という。)数が着実に増加している一方で、支援費の不正な受給による事業者の指定取消し処分の報告を受けているところである。
 このような状況を踏まえ、支援費制度及び障害者自立支援法の円滑かつ適正な運営を図るため、法令等に基づく適正な事業実施の確保に向けた取組の充実強化が切に求められているところである。
 ついては、貴都道府県市におかれましては、事業者に対するなお一層の適切な指導監査の実施に努められるようお願いする。また、管内市町村に対しては、請求内容と実際のサービス利用に差異が無いことを十分審査するのはもちろんのこと、虚偽のサービス提供実績記録表が作成されるようなことが無いよう事業者(基準該当事業者を含む)を指導いただくとともに、支給決定者への制度の周知を図られますようお願いする。

(2) 障害者(児)福祉施設等における不祥事の発生防止及びその対応
 人権侵害の防止等については機会あるごとに要請してきているところであるが、依然としてこれら不祥事が発生していることは、誠に遺憾である。
 ついては、以下のような事項に留意の上、管下社会福祉法人・社会福祉施設に対する指導監督に万全を期されたい。

(1)  人権侵害等の防止について
 社会福祉施設において、体罰等の人権侵害事例や入所者からの預り金の管理等について不適切な取扱いが行われていたという事案が依然として後を絶たず、この中には、刑事事件にまで及んでいる事案も見受けられることは、適切な施設運営に真摯に取り組んでいる同種施設までが社会の不信感を被ることとなり、看過し難い問題である。
 特に、支援費制度は、利用者と施設が対等の立場に立ち、契約により利用者本位のサービス提供が図られる仕組みであることに鑑みた場合、こうした状況は、制度の根幹を揺るがしかねない事態であるといわざるを得ず、施設関係者のみならず行政関係者も含め、厳粛に受け止めなければならないと考えている。
 各都道府県等にあっては、社会的に許容されない事案が発生した場合は、速やかに事実関係及び発生原因の究明を行うとともに、特別監査を実施し、当該不祥事の関係者はもちろんのこと、法人の責任者、施設管理者等の責任を明確にし、場合によっては、法人組織の再検討も視野に入れるとともに、関係者の社会的責任を明確にするために氏名の公表等も検討されたい。さらに、内容によっては、刑事告発の可否も検討されたい。
 また、再発防止への取組として、当該法人に対して、継続的に指導及び改善状況の確認を行うことに加え、事件の背景や事実関係を踏まえて管下同種施設への指導監督方法の見直しを行う、また、支援費制度対象の事業の場合には、あらかじめ関係市町村から支給決定障害者の支援状況に関する情報を徴した上で指導監査を行う等、都道府県等の指導監督の在り方を再点検し、今後の不祥事の未然防止を図られたい。

(2)  不正・不明瞭な経理処理の防止について
 社会福祉施設の経理処理に当たっては、社会福祉法及び関係通知等に基づき適正な記録と透明性の確保を図ることが重要であり、都道府県等においては、引き続き、指導監督の徹底に努められたい。

(3)  施設整備に係る不正の防止について
 社会福祉施設整備費に係る不正受給等の防止については、かねてから指導監督の徹底をお願いしているところであるが、引き続き、施設整備業務の再点検の強化と未然防止策の検討を行い、発生防止に努められたい。

(4)  苦情解決の取組について
 障害者(児)福祉施設の利用者等の権利擁護の観点から、障害者(児)福祉施設の最低基準において、苦情を受け付けるための窓口を設置する等の必要な措置を講じなければならないことを明記しているところである。
 利用者が苦情を申し出られない事態が、結果として権利侵害に至りうることを考えた場合、苦情解決の仕組みは、利用者の権利擁護を確立する上で極めて重要な位置を占めるものであることは、申し上げるまでもないことである。
 平成16年に実施された社会福祉施設等調査によると、未だに苦情解決体制が整備されていない施設が見受けられる。
 都道府県においては、各施設において苦情解決の仕組みが整えられることはもちろん、利用者やその家族に苦情解決の仕組みや窓口の存在(都道府県社会福祉協議会に置かれる運営適正化委員会の役割や各施設との関係も含めて)を分かりやすく具体的に周知できるよう、引き続き指導徹底を図られたい。

 (参考)障害者施設の取組み状況
施設種別 施設数
  うち、苦情解決の
ための取組あり
身体障害者療護施設 472 437(92.6%)
知的障害者更生施設 1,454 1,330(91.5%)
障害児施設 842 806(95.7%)
※「平成16年社会福祉施設等調査」より

(5)  施設・事業所のサービスに関する第三者評価について
 第三者評価事業については、15年度に全国社会福祉協議会において、福祉サービスの第三者評価事業等の見直し等について研究を行い、その結果等を踏まえ新たな「福祉サービス第三者評価事業に関する指針について」及び「施設種別の『福祉サービス第三者評価基準ガイドラインにおける各評価項目の判断基準に関するガイドライン』及び『福祉サービス内容評価基準ガイドライン』等について」を取りまとめ、お示ししているところであり、同事業の着実かつ円滑な普及・定着を図っているところである。
 障害関係施設・事業所においてもサービスの質を担保し、サービスの透明性を高め、不祥事防止を図る観点からも積極的に第三者評価を受けることが重要であることから、都道府県レベルにおける第三者評価の推進体制整備促進を図るとともに、管下施設・事業所に対して、第三者評価の実施を促すようご指導願いたい。


 独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園における取組みについて

(1) のぞみの園における地域生活移行への取組み
 のぞみの園における地域生活移行の具体的なあり方は、入所者本人等の意向や生活歴等を尊重しつつ、出身地域やその近隣地域への移行を基本に、個別に検討していくことが重要であり、現在、各自治体に対し具体的な取組みについて要請を行っているところである。ついては、その実現に向け協力方お願いする。
 なお、のぞみの園の地域生活移行への取組みは、障害者の地域生活を支援し、その自立や社会参加を実現するための実践的な取組みであり、これらにより得られた成果を全国に向けて還元して行こうとするものである点をご理解いただき、今後とものぞみの園への協力をお願いするとともに、市町村に対しても機会をとらえて周知を図られるよう、併せてお願いする。

(2) のぞみの園における養成・研修の実施について
 のぞみの園においては、調査・研究の成果を踏まえ、全国の知的障害者の支援の業務に従事する者に対し、専門的・体系的な養成・研修事業を下記のとおり実施することとしているので、管内の関係団体及び施設に対する周知方お願いしたい。

 (1) 「地域支援セミナー」
 〈開催月日〉   平成18年9月15日(金)〜16日(土)
 〈募集人員〉 300人
 〈研修内容〉 施設支援のあり方、自活訓練、施設から地域への移行支援、地域生活のケアマネジメント及びケアプランの作成方法、制度や社会資源の活用方法等

 (2) 「知的障害者の健康管理セミナー」
 〈開催月日〉   平成19年1月18日(木)〜19日(金)
 〈募集人員〉 50人
 〈研修内容〉 知的障害者の健康を守るための支援に必要な健康管理や医療についての最新の知識や技術

上記(1)及び(2)の募集対象者は、次のとおり
知的障害者の支援の業務に従事する者
 (生活支援員又は作業指導員、保健師又は看護師 等)

募集に関する窓口
  独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園
 企画研究部  企画研究課 養成研修係 (担当:山崎)
 TEL  027-320-1367  FAX  027-320-1368
 E-mail  yamazakit@nozomi.go.jp

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