精神保健福祉法関連の改正事項

(1) 地方精神保健福祉審議会の必置規制の見直しについて

 障害者自立支援法における精神保健福祉法の改正においては、平成14年の地方分権改革推進会議の意見を踏まえ、平成18年4月から、地方精神保健福祉審議会の必置規制が撤廃され、各都道府県及び政令指定都市の裁量(条例による任意設置)に委ねられることとなる。これに伴い、精神保健福祉法第19条の9第2項による指定病院の指定取消しの際の意見聴取について、地方精神保健福祉審議会が設置されていない場合には、医療法による都道府県医療審議会が担当することとなる。
 ついては、(1)地方精神保健福祉審議会を条例に基づき設置するか、(2)医療法による都道府県医療審議会を意見聴取機関とするかのいずれかに応じて所要の措置を講じていただく必要があるので、ご留意願いたい。
 なお、精神保健福祉法の改正については、精神医療審査会の委員構成の見直し、緊急時における入院等に係る診察の特例措置などの事項が、平成18年10月から施行されるが、関連政省令等は追って制定することとしている。

(2) 精神保健指定医のケースレポートの内容の改正について

 精神保健指定医の指定のために提出を求めているケースレポートの内容については、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第十八条第一項第三号の規定に基づき厚生労働大臣が定める精神障害及び程度」(昭和63年4月8日厚生省告示第124号)により規定されているところであるが、今後、「医療観察法入院対象者」を各症例に追加すべく作業を進めているところであるので、あらかじめご了知願いたい。

(3) 措置入院指定病院・応急入院指定病院の看護配置基準改正について

 「医療法施行規則の一部を改正する省令」(平成13年厚生労働省令第8号)によって、精神病院に係る看護職員の配置基準が見直された(看護師・准看護師の配置 6:1→4:1へ引き上げ)ところであるが、当該省令による経過措置として、平成18年2月28日までの間は従前どおりの配置でもよいこととされてきたところである。(ただし、看護師・准看護師の配置は5:1、看護補助者との合計で4:1でも可である旨の経過措置は「当分の間」のものとして存続。)
 今般、この経過措置期間が終了することを踏まえ、
(1)  措置入院に係る指定病院の指定基準「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第十九条の八の規定に基づき厚生労働大臣が定める指定病院の基準」(平成8年厚生省告示第90号)
(2)  応急入院に係る指定病院の指定基準「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第三十三条の四第一項の規定に基づき厚生労働大臣の定める基準」(昭和63年厚生省告示第127号)
のそれぞれについて、看護職員の配置を病棟単位で「入院患者:看護師・准看護師=3:1」とすることとしたところであり、近日中に官報告示を予定しているので、あらかじめご了知願いたい。
 なお、見直しから5年間は、医療法による看護職員に係る配置基準を満たしていれば可とする旨の経過措置を置くこととしているので、併せてご了知願いたい。


 精神科救急医療センターの整備の推進について

 都道府県・指定都市がそれぞれの実情に応じて、精神障害者の緊急時における適切な医療及び保護の機会を確保するため精神科救急医療システムを構築し、運営する事業については国庫補助事業としてきたところであるが、さらに、一般救急医療と同様に、精神科分野においても、センター機能を持つ中核的な救急医療施設を地域ごとに整備していく必要があるとの観点から、「精神科救急医療センター」の整備・運営を行うための予算を平成17年度から盛り込んでいるところである。
 精神科救急医療の充実・強化は、精神保健福祉施策を「入院医療中心から地域生活中心へ」という基本理念に立ちつつ推し進め、精神障害者が安心して生活できる地域づくりを進めるためにも必要不可欠なものと考えており、引き続き「精神科救急医療センター」の着実な整備の推進をお願いしたい。


 精神病院に対する指導監督等について

(1)  精神保健福祉施策の推進に当たっては、かねてより人権に配慮した適切な医療・保護の確保に努めていただいているところであるが、厚生労働省としても、近年の精神病院における人権侵害事案の発生等にかんがみ、より適正な入院患者の医療・保護の確保を図るため、都道府県知事等が精神病院に対して実施した実地指導等を検証する「精神病院実地検証」を実施しているところであるが、平成16年度に実地検証した結果、一部の精神病院において、いまだに法令等に従った隔離・身体拘束がなされていない事例が見られ、また、預かり金の管理が不適切な事例等が見られた。
 また、新聞報道等においても、職員の預かり金の着服、患者同士による暴行など、複数報告されている。


 精神病院入院者の適切な処遇の確保等については、都道府県知事等は、精神病院に対する実地指導後の措置として、改善計画書の提出を求め、若しくは提出された改善計画書の変更を命じ、これらの命令に従わない場合には医療の提供の全部又は一部の制限ができることとされてるところであり、各都道府県・指定都市においては、適正かつ効果的な指導監督に努められたい。
 なお、貴管内医療機関に対し実地指導等を実施する際には、精神保健福祉法及び関係通知(平成10年3月3日障第113号・健政発第232号・医薬発第176号・社援第491号厚生省大臣官房障害保健福祉部長、健康政策局長、医薬安全局長、社会・援護局長通知「精神病院の指導監督等の徹底について」等)の趣旨を踏まえ、一層の指導の強化を図るようお願いしたい。
 併せて、障害者自立支援法による精神保健福祉法の改正に伴い、平成18年10月より、改善命令等に従わない精神病院の公表制度、改善命令を受けたことがある精神病院に対する任意入院者の病状報告の導入などが行われるので、ご留意願いたい。

(2)  今年度会計検査院が実施した精神障害者社会復帰施設に対する実地検査において、1施設について、不適切な経理事務が行われていたとして、国庫補助金が過大交付であると指摘された。
 不正・不明瞭な経理処理の事例により、社会復帰施設の信頼低下等の社会問題化も懸念されることから、各都道府県・指定都市においては、引き続き、適切かつ効果的な実地指導を行うなど、国庫補助金等の適正な執行に務められたい。
 また、管内社会復帰施設に対し実地指導等を実施する際には、平成12年3月31日障第248号厚生省大臣官房障害保健福祉部長通知「精神障害者社会復帰施設に係る指導監査の実施について」により、指導の一層の強化を図るようお願いしたい。
 なお、障害者自立支援法の施行に伴い、事業体系見直しに係る経過措置の対象となる社会復帰施設(精神障害者生活訓練施設、授産施設、福祉ホーム(B型)、福祉工場)については、経過措置期間中は、従前の例による運営ができることとされているが、その実地指導等についても、従前の例により行っていただきたい。


 精神医療審査会の適切な運営等について

 精神医療審査会は在院患者の人権確保の観点から極めて重要な役割を果たすものであるが、退院請求・処遇改善請求等の処理に要する平均日数が1か月を超える自治体があるなど、不適正な状況が引き続き見受けられる。
 各都道府県・指定都市におかれては、平成12年3月28日障第209号厚生省大臣官房障害保健福祉部長通知「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第12条に規定する精神医療審査会について」に基づき、精神医療審査会の適正な運営を図るように徹底されたい。
 また、今般の精神保健福祉法の改正に伴い、平成18年10月より審査会の委員構成の弾力化が図られることとなり、現行の「医療委員3名、法律委員1名、その他学識委員1名」から「医療委員2名以上、法律委員1名以上、その他学識委員1名以上」に改正されるので、適正な運用をお願いしたい。


 自殺予防対策の推進について

 我が国における自殺者は、平成9年までは2万5千人前後で推移していたが、平成10年に3万人を超え以後その水準で推移している。そうした中、平成17年7月、参議院厚生労働委員会において「自殺に関する総合対策の緊急かつ効果的な推進を求める決議」がなされ、自殺問題に関し総合的な対策を推進するため、関係省庁が一体となって取り組む体制の確保や、「自殺予防総合対策センター(仮称)」の設置等が求められた。
 このため、政府においては、同年9月に自殺対策関係省庁連絡会議を設置し、同年12月に「自殺予防に向けての政府の総合的な対策について」を取りまとめた。この取りまとめの内容、また、特に都道府県にご協力いただきたい事項(自殺対策連絡協議会の設置、公的機関・民間団体の確かな連携体制の確立等)については、近日中に各都道府県・政令指定都市に通知する予定としているので、積極的な取組みをお願いしたい。
 自殺と関連の強いとされるうつ対策においては、平成16年1月に各自治体へ配布した「都道府県・市町村向けうつ対策推進方策マニュアル」及び「保健医療従事者向けうつ対応マニュアル」をご活用いただきたい。さらに、平成16年度から、地域住民が抱えるうつ、ストレス等の心の健康問題に関する知識や対応方法を地域精神保健従事者に習得させるための研修会(地域精神保健指導者(自殺・こころの健康問題)研修)を実施しているところであり、関係機関に所属する職員について当該研修会への参加を積極的に図っていただきたい。
 また、平成18年度予算案においては、国立精神・神経センター精神保健研究所内に自殺予防対策センター(仮称)を設置するための所要経費を計上したところである。このセンターにおいては、情報の収集・提供、調査研究の支援、対策支援ネットワークの構築、関係団体等への支援、研修等を行うことを検討しており、各自治体における自殺予防対策の推進にも資するものとしたいと考えている。
 さらに、厚生労働科学研究において、平成17年度より新たに「自殺対策うつ戦略研究」を開始しているところであり、自殺の実体解明、地域における自殺率を低下させるための介入方法の研究、自殺未遂者の自殺企図再発率を低下させるための介入方法の研究等を引き続き推進し、その成果については各地域における取組みにご活用いただけるよう順次お示しすることとしている。


 心神喪失者等医療観察法指定入院医療機関の整備について

 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(以下「医療観察法」という。)第2条第5項の指定入院医療機関の整備については、平成17年10月28日障発第1028002号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律の指定入院医療機関の整備について(依頼)」においてお示ししたように、従来の整備方針を見直し、(1)国立病院等における整備病床数を当初予定していた240床から360床とし、国立病院等と都道府県立病院の整備割合が概ね1:1となるよう引き上げるとともに、(2)対象者の円滑な社会復帰の促進を図るため、可能な限り各地域で医療が受けられるようにすることが重要であることに鑑み、新たに14床以下の病床からなる病棟の規格を設け、原則として全ての都道府県で指定入院医療機関の整備を目指すこととしたところである。
 ついては、各都道府県においては、人口規模にかかわらず、指定入院医療機関の整備について十分に検討するとともに、現状において整備困難である場合は、将来の整備に向けて、建て替え整備計画、医療計画等への具体的な記載について対応を検討願いたい。
 また、指定通院医療機関及び鑑定入院を引き受ける医療機関の確保についても、更なる充実が図れるよう、引き続きご協力願いたい。

トップへ