臓器移植対策室

1. 臓器移植対策について

 (1) 移植医療の普及啓発について
 臓器移植法においては、臓器提供の要件として、心停止下での腎臓及び眼球の提供を除き、本人が生前に臓器提供の意思を書面により表示していることを定めており(臓器移植法第6条第1項)、「臓器提供意思表示カード」や医療保険の被保険者証又は運転免許証に貼付することのできる「臓器提供意思表示シール」の普及を図ることが重要な課題となっている。
 しかしながら、平成16年8月に行われた世論調査においては、臓器提供意思表示カードの周知度は7割程度、所持率は1割程度となっており、また、臓器提供意思表示シールの周知度は1割程度と低迷している状況にある。
 各都道府県におかれては、医療保険の被保険者証のカード化及び被保険者証の更新時等、適当な機会をとらえ、関係機関・団体の協力を得ながら、これらのカード及びシールの普及について一層の御協力をお願いしたい。
 なお、カードの配布状況や移植の件数等については、社団法人日本臓器移植ネットワークホームページ(http://www.jotnw.or.jp)又は、日本アイバンク協会ホームページ(http://www.j-eyebank.or.jp)を参照されたい。

 移植医療に関する広報については、各地方公共団体においても各種の活動に御尽力いただいているところであるが、国民への移植医療の理解を深めていくことは国及び地方公共団体の責務であることが法律上も明文化されている(臓器移植法第3条)ところでもあり、引き続き移植医療に関する普及啓発に御尽力いただきたい。
 また、毎年10月を「臓器移植普及推進月間」として、全国一斉に移植医療の普及啓発活動を行っているところであるが、平成17年度においては昨年10月15日に兵庫県神戸市で全国大会が開催された。来年度は、10月22日に福島県で全国大会を開催する予定である。各都道府県におかれても、地域の実情に応じた普及啓発活動に御協力をお願いしたい。

 (2) 臓器移植の実施状況について
 平成18年1月10日現在、臓器移植法に基づく脳死下での臓器提供事例は全国で40例行われている。また、平成16年度の移植実施件数は脳死下及び心臓停止下における提供を合わせて、心臓は8名の提供者から8件の移植が、肺は6名の提供者から6件の移植が、肝臓は4名の提供者から4件の移植が、腎臓は90名の提供者から166件の移植が、膵臓は5名の提供者から5件の移植が、角膜は882名の提供者から1,442件の移植が行われている。引き続き、臓器提供施設の整備等関係機関の御協力をお願いしたい。

 (3) 臓器提供に関する関係医療機関の理解及び協力の確保について
 脳死下での臓器提供については、「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針(ガイドライン)」において提供可能な施設を限定している。平成17年12月31日現在、提供可能な施設は468施設であり、そのうち、厚生労働省の照会に対して臓器提供施設としての必要な体制を整えていると回答した施設は310施設(公表について同意した施設304施設)である(なお、心停止下での腎臓提供については、提供可能な施設は限定していない)。

 また、腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準については、平成14年より、従来の「HLA型の適合度」に加え「待機日数」、「搬送時間(阻血時間=地域要件)」を総合的に加味するよう変更され、その結果、それぞれの地域における臓器提供の件数に応じて、各都道府県内の移植数が影響を受けることとなるので、改正の趣旨・内容について十分理解を深められたい。

 このような状況のなか、各都道府県の臓器移植連絡調整者(都道府県臓器移植コーディネーター)については、引き続き、都道府県内の関係医療機関の医療従事者等に対し、臓器移植に関する普及啓発活動を行い、臓器提供のための体制を整えていただくなど、各都道府県内の臓器提供体制の拡充に努めていただくとともに、心停止下での腎臓提供も含め、臓器提供にご協力いただいている施設等を定期的に巡回し、臓器提供に対する一層の理解及び協力が得られるよう、よろしくお願いしたい。
 なお、都道府県連絡調整者設置事業に係る経費については、平成15年度より一般財源により措置することとされたが、このように、本事業の必要性はますます強くなってきていることから、引き続き本事業の推進を御願いしたい。
 また、都道府県臓器移植コーディネーターが、社団法人日本臓器移植ネットワークの指示に基づき、あっせん活動を行う際の活動費については、臓器移植ネットワークへの補助対象事業としているので、活用されたい。

 臓器移植法の規定による脳死判定(法的脳死判定)のための検査について、検査の方法が一部「法的脳死判定マニュアル」に準拠していなかった事例が判明したことから、昨年11月に、各臓器提供施設等に対して、マニュアルに準拠して法的脳死判定を実施するよう周知するとともに、脳死判定の記録の書式例を改定し、各都道府県に対しても通知しているので、改めて御了知願いたい。


2. 造血幹細胞移植対策について

 (1) 骨髄移植対策について
 白血病や重症再生不良性貧血等の血液難病患者に対する有効な治療法である骨髄移植の推進を図るため、平成3年12月から「日本骨髄バンク」事業を実施している。骨髄ドナー登録者数は平成17年12月末現在23万人を超え、骨髄バンクを介して行われた移植件数も累計で7,017例に上っている(ドナー登録者数等の詳細については、骨髄移植推進財団ホームページ(http://www.jmdp.or.jp)を参照のこと)。
 しかしながら、同事業を円滑に推進するためには骨髄提供者の確保が依然として最重要課題となっている。各都道府県におかれては、従前より普及啓発活動等により同事業の推進にご協力いただいているところではあるが、引き続き、「ドナー登録者30万人」の目標に向け、一人でも多くの方に骨髄移植の機会を提供できるよう一層の普及啓発等にご尽力願いたい。
 また、平成16年12月2日付け健臓発第1202005号臓器移植対策室長通知でお願いしたように、ドナー登録者30万人の目標に向けて、(1)献血併行型登録会及び集団登録会や、保健所窓口におけるドナー登録受付機会の拡大などについてご配慮をお願いするとともに、(2)関係者からなる連絡協議会を設置し、関係者間の情報や意見の交換、連絡調整を促進するなど、引き続き、各都道府県の実情に応じて、ドナー登録受付事業等の積極的な推進をお願いしたい。
 なお、ドナーの登録時の要件について、昨年3月より、(1)ドナー登録の受付年齢の下限を20歳から18歳へ引き下げ(骨髄提供年齢の下限は20歳のまま)、(2)ドナー登録時の家族の同意は不要とする、(3)一定の条件下での登録時の説明の簡素化、また、昨年9月より、ドナー登録の受付年齢の上限の50歳から54歳へ引き上げ(骨髄提供年齢の上限は55歳)を行ったほか、ドナー登録時のHLA型の検査方法について、血清学的検査からDNA検査へ変更を行っている。ドナー登録の要件緩和等について御了知頂くとともに、これにより、骨髄ドナーの登録機会が増大し、登録者の拡大が図られるよう、一層の御理解・御協力をよろしくお願いしたい。

 (2) さい帯血移植対策について
 さい帯血移植とは分娩後、通常は廃棄されていた胎盤及びへその緒に含まれているさい帯血を採取し、その中に含まれている造血幹細胞を移植して、造血機能を再生させる方法であり、白血病や再生不良性貧血等の血液難病の有効な治療法として行われている。我が国では平成17年11月末現在、日本さい帯血バンクネットワーク加入さい帯血バンクを介した非血縁者間移植は2,715例が実施されている。この移植は産後のさい帯と胎盤から採取するため、母体にも新生児にも影響はなく、必要なときに移植できる等の利点を有している。
 都道府県におかれては、一人でも多くの方にさい帯血移植の機会を提供できるよう普及啓発等に御協力願いたい。
 なお、さい帯血保存個数等の詳細については、日本さい帯血バンクネットワークホームページ(http://www.j-cord.gr.jp)を参照のこと。

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