疾病対策課

1. エイズ対策

   エイズ予防指針の見直しを踏まえ、エイズ対策に係る以下の事項について、取り組まれるようお願いする。
 なお、詳細については、追って通知等でお示しする予定である。

(1) 「エイズ対策推進協議会」等の設置及び積極的な活用について
 都道府県、保健所設置市及び特別区(以下「地方公共団体」という。)で実施されているエイズ対策促進事業において、エイズ対策の推進を図る観点から、地域の実情を踏まえたエイズ対策の計画・立案を行う「エイズ対策推進協議会」等の設置・運営をお願いしているところである。
 今回のエイズ予防指針の見直しにより、わが国におけるHIV感染者・エイズ患者の増加や慢性化など疾患特性の変化に鑑み、今後は、基本的に地方公共団体が中心となって、エイズ対策の実施にあたることが求められている。このため、各地方公共団体においては、貴管内のエイズ対策が地域の関係団体との連携・協力により円滑に実施されるようエイズ対策推進協議会等の積極的な活用をお願いする。

(2) HIV抗体検査体制の強化について
 HIV抗体検査については、平成16年10月29日健疾発第1029003号「保健所におけるエイズストップ作戦関連事業の実施について」の改廃について(HIV抗体検査に係る迅速な検査方法の導入推進)及び同第1029004号「エイズ治療拠点病院におけるHIV抗体検査の実施について」の改廃について(HIV抗体検査に係る迅速な検査方法の導入推進)により実施されているところであるが、利便性の高い検査・相談体制(迅速検査、夜間検査、休日検査)の実施状況を見ると、平成16年の前回調査と比べて実施している地方公共団体の数は若干増加しているものの、現時点では一部にとどまっていることから、未実施の地方公共団体におかれては、地域の実状に応じて早急な対応をお願いする。
 当検査・相談体制の整備については、保健事業費等国庫負担(補助)金「特定感染症検査等事業」HIV抗体検査及びエイズに関する相談事業の補助対象となっていることを申し添える。
 また、平成16年度からより検査を受けやすい体制を整備するため、大都市において「利便性の高い場所」と「時間帯」に配慮した検査・相談室の設置をモデル事業として行っているが、来年度もこの事業を引き続き行っていくこととしている。
 なお、国や地方公共団体が行う検査・相談体制の充実を図る取組を強化し、国民のHIV/エイズに対する関心を喚起するきっかけとなるよう平成18年度からHIV抗体検査普及週間(仮称)を創設することとしており、世界エイズデーに併せて積極的に参加いただきたい。
(3) 施策の評価について
 従来、わが国におけるHIV感染者・エイズ患者の発生動向については、関東を中心として増加してきたが、平成12年以降は、地方の大都市においても感染者、患者が増加傾向を示しているところである。
 このため、地方公共団体は、重点的・計画的に取り組むべき施策の目標等を設定し、実施状況等を評価されたい。
 また、国においては、新規HIV感染者・エイズ患者の報告数が全国水準より高いなどの地方公共団体に対して重点的に助言を行うこととしており、連携方お願いする。


2. 難病対策

 難治性疾患に関する調査・治療研究の推進により、治療法等の確立と普及を図るとともに、難病相談・支援センター事業の充実により、地域における難病患者の生活支援等の推進を図ることとしている。
 また、CJD(クロイツフェルト・ヤコブ病)サーベイランス体制の強化を図ることとしている。

(1) 特定疾患治療研究事業について
 本事業は、原因が不明であって、治療方法が確立していない、いわゆる難病のうち、治療が極めて困難であり、かつ、医療費も高額である疾患について医療の確立、普及等を図るため、事業の実施主体である都道府県に対し、毎年の予算の範囲内でその事業費の2分の1を補助しているものである。
 本事業については、厳しい財政状況の中、平成15年度以降毎年増額を図ってきたところであるが、平成18年度予算案においても、対前年度比約10億円増(対前年度比104.3%)の約239億円を確保し、事業の適正化及び着実な推進に努めることとしている。
 また、事業の実施に当たっては、公費負担医療の効果的な実施を図る観点からも、対象医療の適正化を含め、「連名簿等を活用した事業評価への取組みについて」(平成16年3月19日付け健疾発第0319001号通知)に基づき、積極的な取組に努めるようお願いしているところであるが、公衆衛生関係行政事務指導監査における実施状況をみると、事業評価が十分に実施されていない自治体が散見されているところである。
 この取組みは、公費負担医療の適正な執行を図る関連からも重要であるので、引き続き適正な実施に努められるようお願いする。

(2) 難病特別対策推進事業について
 難病相談・支援センター事業については、難病患者等の療養上、日常生活上での悩みや不安等の解消を図るとともに、様々なニーズに対応したきめ細やかな相談や支援を通じて、地域における難病患者等支援対策を一層推進するため、平成15年度から事業を実施しているところである。
 本事業は、各都道府県関係者のご努力により、既に38の都道府県において実施されているところであるが、未実施の県におかれては、本事業の趣旨をご理解いただき積極的な事業実施に努めていただくようお願いする。
 また、事業実施に当たっては、公共職業安定所等の各種公共関係機関や地域患者会などとも十分な連携を図ることにより、地域の実情に応じた支援対策を講じられたい。
 なお、難病相談・支援センター設置に当たっては、これまで、施設整備費、設備整備費及び運営費について、それぞれ国庫補助を行ってきたところであるが、このうち、設備整備費については、平成18年度より国庫補助制度を廃止し、税源移譲対象事業としたところであるのでご留意願いたい。

 重症難病患者入院施設確保事業については、重症難病患者に対し、適時・適切な入院施設の確保等が行えるよう、都道府県ごとに拠点・協力病院による難病医療体制の整備等を図ることとしているところであるが、未整備の都道府県にあっては、引き続き整備促進に御協力をお願いする。

 神経難病患者在宅医療支援事業については、クロイツフェルト・ヤコブ病等診断の困難な神経難病の早期確定診断を行うとともに、当該神経難病患者等の療養上の不安を解消し、安定した療養生活を確保するため、一般診療医の要請により都道府県等に配置した専門医による在宅医療支援チームを派遣する体制を確保することを主な目的として実施しているところであるが、平成18年度より、CJDの確定診断(剖検)に要する経費を新たに国庫補助対象に追加することとしているので積極的に活用されたい。
 また、保健衛生施設等設備整備費において実施している重症難病患者拠点・協力病院設備整備事業においても、CJD確定診断(剖検)支援の一環として、平成18年度より電気メス及び電気鋸を新たに国庫補助対象設備に追加することとしている。
 これらの制度を活用しつつ、可能な限りCJDの確定診断(剖検)に努め、CJDサーベイランス体制の強化を図られたい。

 難病患者地域支援対策推進事業については、難病患者の生活の質の向上を図るため、患者ごとに在宅療養支援計画の策定・評価や重症患者への訪問相談事業の実施など、在宅療養支援を推進することとしているところであるが、各都道府県にあっては、引き続き地域の実情に応じた積極的な支援について特段の御配慮をお願いする。

 難病患者認定適正化事業については、特定疾患治療研究事業の対象患者の認定業務の効率化を図るとともに、難病患者動向等を全国規模で把握することを目的として実施しており、これまでも、的確な調査票の電算処理(入力及び厚生労働省への登録)をお願いしてきたところであるが、厚生労働省への登録件数が未だに低い状況にある。
 厚生労働省に登録されるデータは、難治性疾患克服研究における貴重なデータとして活用されるという趣旨を御理解いただき、的確な調査票の電算処理に努めていただくよう重ねてお願いする。

 難病患者等居宅生活支援事業については、地域における難病患者等の日常生活を支援することにより、難病患者等の自立と社会参加を促進することとしてきたところであり、これまで市町村等に対する補助事業として実施してきたが、平成18年度より本事業を市町村(政令市、特別区を除く。)への都道府県による補助事業に対する国庫補助として、難病特別対策推進事業の中のメニュー事業として実施することとしているので、御留意願うとともに、本事業の実施の促進について特段の御配慮をお願いする。

  ( 参考)

 ○   改正後概要

難病患者等居宅生活支援推進事業(仮称)
  難病患者等ホームヘルプサービス事業、短期入所事業、日常生活用具給付事業
(a) 実施主体 都道府県
  補助率 国2/3、都道府県1/3
 都道府県は市町村の居宅事業費の3/4を補助するため、実質補助率は国1/2,都道府県1/4,市町村1/4となる。

(b) 実施主体 政令市、特別区
  補助率 国1/2,政令市、特別区1/2

  難病患者等ホームヘルパー養成研修事業
  実施主体 都道府県、指定都市
  補助率 国1/2、都道府県、指定都市1/2

(3) 難病情報センター事業について
 難病患者やその家族、並びに医療関係者が求めている最新の医学・医療情報の提供を図る本事業については、平成8年度の創設以来、順次内容の充実を図ってきており、今年度においては月平均約110万件(4月〜12月)のアクセスがなされているところである。各都道府県にあっては、管内の保健所等を通じ本事業の積極的な活用をお願いするとともに、インターネットの活用が困難な難病患者への情報提供についても特段の御配慮をお願いする。
ホームページアドレス http://www.nanbyou.or.jp/)
  ( 参考)

 ○   難病情報センターホームページ月平均アクセス件数の過去5カ年の状況
 平成13年度   374,192件  
 平成14年度   506,143件  
 平成15年度   653,976件  
 平成16年度   849,356件  
 平成17年度   1,099,662件 (4月〜12月)


3. リウマチ・アレルギー対策

 リウマチ及びアレルギー対策を総合的・体系的に実施するため、厚生科学審議会疾病対策部会リウマチ・アレルギー対策委員会等における議論を経て、昨年10月にリウマチ・アレルギー対策委員会報告書が取りまとめられたところである。これを受け、厚生労働省としては、「リウマチ対策の方向性等」及び「アレルギー疾患対策の方向性等」を策定し、昨年10月31日付通知したところであるため、各都道府県等においては、これらを踏まえ、今後のリウマチ・アレルギー対策を推進されるよう取組みをお願いする。

(1) リウマチ・アレルギー相談員養成研修会について
 本事業については、各都道府県等の保健師等職員を対象に、リウマチ・アレルギー疾患についての必要な知識を修得させ、地域における相談体制を整備することを目的として、平成13年度より実施しているところである。平成18年度においても本研修会を引き続き実施するとともに、研修対象者を福祉関係職員にも拡充させることとしているので、各都道府県等にあっては、研修会への職員の派遣について特段のご配慮をお願いするとともに、当研修会の成果を活用する等により、地域の実情に応じた各種普及啓発事業の積極的な展開をお願いする。

(2) リウマチ・アレルギー疾患に関する正しい情報の普及について
 リウマチ・アレルギー疾患については、病因・病態が未だ不明で根治療法がない状況下において、民間療法も含め情報が氾濫していることから、正しい情報の普及を強化することを目的として、「食物アレルギー診療の手引き」等の各種ガイドラインを随時、厚生労働省ホームページに掲載する等の情報提供に加え、平成18年度においては、新たにパンフレットの配布、シンポジウムの開催を全国2ヵ所で開催することとしている。シンポジウムの開催にあたっては、開催地の都道府県等のご協力をお願いしたい。

(3) 喘息死ゼロ作戦(仮称)について
 喘息に関連した死亡は未だ年間4,000人程度を占めているが、この原因として患者側の認識不足や不定期受診等の問題、診療側の診療ガイドラインの利用度の問題等が挙げられている。これに対し喘息死ゼロを目指すため、かかりつけ医における診療ガイドラインの普及、患者カード携帯による患者自己管理の徹底、救急時対応等における病診連携の構築を図り、さらに、喘息の診療に携わるかかりつけ医の情報を地域住民に提供する等の事業を平成18年度より実施することとしている。

(4) 花粉症対策について
 昨年は花粉飛散量の増加が予測され、各都道府県等においては相談体制の整備等ご尽力いただいたところであるが、昨年の状況を踏まえ、また、アレルギー疾患対策の方向性等に基づき、本年も引き続き花粉症対策を適切に推進されたい。


4. ハンセン病対策

(1) ハンセン病問題の経緯について
 厚生労働省においては、平成8年のらい予防法廃止後においても、入所者対策、入所者親族対策、在宅治療対策及び普及啓発対策を各都道府県と連携しながら、引き続き実施するとともに、平成10年3月より社会復帰者支援事業を実施してきたところである。
 しかしながら、平成10年に「らい予防法」に基づく施設入所施策に対して国家賠償請求訴訟が提起され、平成13年5月の熊本地裁判決で国が敗訴したところであり、この判決に対して、同23日に内閣として控訴しないことを決定し、同25日に内閣総理大臣談話及び政府声明を発表したところである。
 また、総理大臣談話に基づき、ハンセン病問題の早期かつ全面的な解決を図るため、同年6月15日に議員立法として「ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律」(以下「補償法」という。)が成立し、同22日に公布・施行され、ハンセン病患者・元患者の名誉回復及び福祉増進を目的とした各種施策を実施している。
 遺族原告及び入所歴なき原告については、平成14年1月28日に基本合意書を締結し、順次和解を進めている。

(2) ハンセン病問題の全面的な解決に向けた新たな施策について
 厚生労働省においては、ハンセン病問題の全面的な解決に向けて、ハンセン病療養所退所者(以下「退所者」という。)に対する住宅確保を支援するための施策として、国土交通省と協議の上、公営住宅法施行令の一部を改正することにより、らい予防法廃止までの間にハンセン病療養所に入所したことがある方は、単身者であっても公営住宅に入居できるようにしたほか(施行日平成13年12月28日)、平成13年6月に設けたハンセン病問題対策協議会における5回に及ぶ協議も踏まえ、平成14年度より新たな施策として、退所後の福祉の増進をはかる観点から「国立ハンセン病療養所等退所者給与金」事業を、死没者の名誉回復を図る観点から、「国立ハンセン病療養所等死没者改葬費」事業を、ハンセン病患者・元患者の名誉回復を図る観点から、謝罪広告の掲載(平成14年3月及び5月)や、中学生を対象に啓発パンフレットの作成配布(平成15年1月から毎年実施)、ハンセン病問題に関する事実検証会議などを実施しているところである。
 また、平成17年度より、裁判上の和解が成立した入所歴のないハンセン病患者・元患者に対し、平穏で安定した平均的水準の社会生活を営むことができるように「国立ハンセン病療養所等非入所者給与金」事業を実施しているところである。
 これら施策の実施を含め、ハンセン病問題の全面的な解決のためには、厚生労働省、ハンセン病療養所及び各都道府県の連携及び協力・支援等が不可欠であり、引き続き特段の御協力をお願いする。
 特に、(1)退所者や退所希望者等に対する社会生活支援に関する相談事業の充実、(2)退所者に対する公営住宅の斡旋・優先入居、(3)ハンセン病療養所死没者の納骨、改葬に対する支援などについては、ご配慮をお願いする。

(3) ハンセン病問題に対する正しい知識の啓発普及について
 厚生労働省においては、ハンセン病に対する偏見・差別を解消し、ハンセン病患者・元患者の名誉回復を図るため、国民に対してハンセン病問題に対する正しい知識の啓発に努めるなど、普及啓発を継続的に実施していくことが重要であると考えており、普及啓発事業について各都道府県においても、より一層の取組をお願いする。
 なお、厚生労働省としては、平成16年度より、このような趣旨を踏まえ、「ハンセン病問題に関するシンポジウム」を全国各地で開催しており、平成18年1月25日に愛知県で開催することとしているところである。
 各都道府県においても、シンポジウム開催の趣旨等をご理解いただき、同様のシンポジウム開催などの取組や今後開催を予定している上記シンポジウムの共催について特段のご配慮をお願いする。

(4) ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の請求期限について
 厚生労働省においては、補償法に基づき、ハンセン病療養所入所者等に対する補償金を平成13年度から支給しているところであるが、補償金の請求については、補償法施行日から起算して5年以内(平成18年6月21日)に行わなければならないこととされており、その請求期限が残すところ約半年となったところである。
 そこで、ハンセン病療養所入所者等が補償金を円滑に受給できるよう、入所者等に対しあらためて周知を図る必要があるため、各都道府県においても、広報誌等を通じ、補償金の請求期限の周知について特段のご配慮をお願いする。

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