生活習慣病対策室

1. 栄養施策について

   栄養・食生活は、多くの生活習慣病と関連が深く、また生活の質との関連も深いことから、健康・栄養状態の改善を図るとともに、良好な食生活を実現するための個人の行動変容を促すこと、及び個人の行動変容を支援する環境の確保が必要である。
 そこで、栄養・食生活に関する知識の普及啓発、科学的根拠に基づく栄養施策の推進、管理栄養士等による栄養指導の実施、管理栄養士等の人材育成を柱として栄養施策を推進している。

 ( 健康づくりのための食育の推進について)
 近年の国民の食生活をめぐる環境の変化にともない、国民が生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性をはぐくむための食育を推進することが課題となっていることから、食育に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、食育に関する施策の基本となる事項を定める食育基本法(平成17年法律第63号)が、平成17年7月15日に施行されたところである。
 国においては、食育推進会議において食育推進基本計画を策定しているところであるが、都道府県及び市町村における食育推進基本計画の策定にあたっては、健康増進計画等との整合性を図っていただきたい。

 厚生労働省においては、生活習慣病対策のポピュレーションアプローチの一環として、具体的に「何を」「どれだけ」食べれば良いかといった、食事選択の場面でわかりやすい情報提供を行い、個々人の行動変容に結びつけるための啓発媒体として、平成17年6月に農林水産省と共同で作成した「食事バランスガイド」の普及啓発を図ってきており、各自治体においても、農政担当部局、教育担当部局と連携した施策を推進するとともに、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、飲食店等と連携した取組の充実強化をお願いする。
 また、成人期の生活習慣病予防のためには、子どもの頃からの健全な食生活や運動の習慣化などが重要であることから、平成18年度予算(案)において若年期からの肥満予防対策の推進に必要な経費として64百万円を計上しているところである。

 ( 管理栄養士等による栄養指導の実施について)
 各自治体において、生活習慣病予防のための食生活に関する正しい知識の普及啓発のための栄養指導(一次予防)、健康診査の結果等に基づく個々人の状況に応じた適切な栄養指導(二次予防)が実施されているところであるが、内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)の概念に対応した保健指導を推進するため、今後、健診・保健指導のガイドラインを策定することとしている。

 ( 管理栄養士等の人材育成について)
 地域における行政栄養士の業務について平成15年10月に健康局長から通知しているほか、管理栄養士の配置について地方財政措置を講じているところである。「健康日本21」の推進、介護予防事業の推進、都道府県及び市町村における栄養指導業務の企画・立案・評価、国民健康・栄養調査の実施及び特定給食施設の栄養管理指導等の業務の重要性にかんがみ、行政栄養士の配置の促進による専門性を活かした体制の整備に特段の御配慮をお願いする。(平成17年7月現在、行政栄養士未配置の市町村は32.7%)
 また、管理栄養士国家試験については、第20回の試験が平成18年3月26日に実施されることから、各種事務手続の速やかな実施とともに、受験者及び養成施設への指導等をお願いする。

 ( 国民健康・栄養調査について)
 毎年11月に実施している国民健康・栄養調査については、「健康日本21」の中間評価を始めとして、各種健康増進施策の基礎資料に活用されるものであることから、今後とも調査の実施について御協力願いたい。


2. 運動施策について

   糖尿病を始めとする生活習慣病の予防には、バランスのとれた栄養・食生活と適度な運動を生活習慣として定着させていくことが重要である。
 このため、科学的根拠に基づく施策の推進、運動習慣の定着に必要な知識の普及、運動実践の場の提供及び運動実践を支援する人材の育成という4本の柱を中心に、施策を推進しているところである。

 ( 運動所要量及び運動指針について)
 科学的根拠に基づく施策の推進としては、健康を維持するために必要な運動量を示した「運動所要量」を平成元年度に策定し、普及啓発を行っているとともに、運動習慣の定着に必要な知識の普及として、運動所要量に基づいて誰もが気軽に運動を行えるよう「運動指針」を平成5年度に策定し、普及啓発を行っているとところである。
 「運動所要量」、「運動指針」ともに策定時に比べ科学的知見の蓄積が進んでいることから、現在、専門家等による検討会において見直し作業を進めているところである。今回の見直しの柱のひとつとしては、医療制度改革における生活習慣病対策としての身体活動・運動という観点からも見直しを進めており、できる限りのエビデンスに基づき、生活習慣病発症予防のために必要な健康づくりとしての身体活動・運動の方向性を指し示すものを提示する予定であり、どのような活動がどの位必要かという種類と量を身近な例を挙げながら示しつつ、専門家にも国民にも分かりやすい内容を目指して、今年度中には提示していきたい。

 ( 運動実践の場の提供及びそれを支援する人材の育成について)
 健康づくりのための運動を安全かつ適切に行うことができる施設を「健康増進施設」として認定するとともに、医学的基礎知識、運動生理学の知識等に立脚しつつ、個々人の身体状況に応じた運動プログラムの提供及び指導を行う健康づくりのための運動指導者(健康運動指導士及び健康運動実践指導者)の養成等を行っているところである。
 なお、健康づくりのための運動指導者の養成等については、現在、平成13年厚生労働省令第119号に基づき財団法人健康・体力づくり事業財団が行う健康運動指導士及び健康運動実践指導者の養成事業を認定しているところであるが、平成14年3月の閣議決定「公益法人に対する行政関与の在り方の改革実施計画」に基づき、同省令は本年度末をもって廃止となるため、その後の対応等については追って通知する。
 また、財団法人健康・体力づくり事業財団においては、健康運動指導士等の養成・普及定着方策について専門家等による委員会を設け、体育系大学を対象とする健康運動指導士指定養成校制度の創設や養成カリキュラムの充実強化等について検討を行っており、今年度中に取りまとめられる予定である。(別紙参考資料参照)


3. たばこ対策について

   たばこが健康に悪影響を与えることは明らかとなっており、がん、循環器病等の生活習慣病を予防する上で、たばこ対策を進めることは重要な課題である。
 このため、平成12年から推進している「健康日本21」において、
(1) 喫煙が及ぼす健康影響についての十分な知識の普及、
(2) 未成年者の喫煙の防止、
(3) 公共の場や職場での分煙の徹底及び効果の高い分煙についての知識の普及、
(4) 禁煙を希望する者に対する支援プログラムの普及
の4つを柱とし、総合的なたばこ対策を進めているところである。
 こうした中で、平成17年2月に発効した「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」の批准とともに、たばこ対策関係省庁連絡会議を設置し、関係省庁の密接な連携の下にたばこ対策を促進することとしたところである。
 昨年は、関係省庁連絡会議幹事会の下に設置した「未成年者喫煙防止対策ワーキンググループ」を開催し、(1)未成年者への喫煙防止教育、(2)たばこの入手方法に応じた喫煙防止、(3)喫煙習慣者への禁煙指導について議論を行ったところである。
 本年2月6日からは、たばこ規制枠組条約の第1回締約国会議が開催される予定となっているが、今後、締約国会議へ政府としての取組を報告しなければならないことから、こうした動向を踏まえ、関係省庁とも連携し適宜開催していくこととしている。
 また、たばこ税については、平成18年度与党税制改正大綱において、近年、国際条約の発効や国民の健康増進の観点から、たばこ消費を積極的に抑制すべきとの指摘も出てくるなど、たばこを巡る環境は変化しつつあり、たばこに関するあらゆる健康増進策を総合的に検討した結果を受けて、たばこ税等のあり方について、必要に応じ、検討することとされたところである。
 各地方公共団体においては、たばこ対策緊急特別促進事業を活用するなどして、公共の場所での分煙の徹底、禁煙分煙指導の強化をはじめ、禁煙、節煙を希望する者に対する禁煙支援等、地域の関係者と連携したたばこ対策の推進をお願いしたい。
 なお、より効果的な禁煙支援を推進するための禁煙支援マニュアルについては、今年度中に策定しお示しする予定である。


4. がん医療水準の均てん化の推進について

   「第3次対がん10か年総合戦略」及び「健康フロンティア戦略」でも重要な課題として取りあげられ、がん対策における重点課題の一つである、がん医療水準の均てん化を推進するため、厚生労働大臣の懇談会として、「がん医療水準均てん化の推進に関する検討会」を開催し、昨年4月、がん専門医等の育成、医療機関の役割分担とネットワークの構築、情報提供・普及、地域がん診療拠点病院制度の見直しの方向性等について報告がまとめられた。

 ( 地域がん診療拠点病院のあり方について)
   「がん医療水準均てん化の推進に関する検討会」からの提言を受け、地域がん診療拠点病院の役割を充実強化するため、昨年7月に「地域がん診療拠点病院のあり方に関する検討会」を設置し、ご議論いただいたところである。
 この検討会においては、地域がん診療拠点病院制度について、
  (1)  指定要件をできる限り数値を含めて明確化すること
  (2)  指導的な役割が期待できる特定機能病院の拠点病院への指定を促進すること
  (3)  拠点病院の役割分担を明確化するとともに、それを踏まえた診療連携、教育研修等のネットワークを構築すること
  (4)  がん患者及びその家族の不安や疑問に適切に対応するための医療相談室の機能を強化すること
  (5)  指定制度の更新制の導入等を中心に指定要件の見直しを行うこと
についての検討が行われたところである。

 ( 地域がん診療拠点病院の整備に関する指針の見直しについて)
   現在、「地域がん診療拠点病院のあり方に関する検討会」での意見を踏まえ、平成13年8月30日健発第865号厚生労働省健康局長通知の別添「地域がん診療拠点病院の整備に関する指針」の見直しを行っているところであり、近日中に新たな整備指針について各都道府県あて通知する予定である。
 なお、具体的な指定手続き等については、概ね次により行うこととしている。
  (1)  既指定の拠点病院の取扱いについて
 既に地域がん診療拠点病院の指定を受けている病院については、平成20年3月末までは、新たな整備指針に基づく指定を受けているものと見なすことになるが、平成20年3月末までに新たな整備指針への適用がなされなかった場合には、指定の効力が失われることになるので留意願いたい。
  (2)  新規指定の取扱いについて
 地域がん診療連携拠点病院(仮称)は、2次医療圏に1か所程度を目途に整備することとしていることから、新規指定の推薦を行う場合は、新たな整備指針に基づき、未整備の地域については、医療計画等との整合性を図りつつ、積極的な整備をお願いしたい。
 なお、推薦書類の提出手続き等については、別途連絡する予定である。
  (3)  都道府県がん診療連携拠点病院(仮称)の指定の取扱いについて
 新たな整備指針では、都道府県において中心的ながん診療機能を担い、主に地域がん診療連携拠点病院(仮称)の医師等への研修の実施や情報提供、症例相談や診療支援等の機能を担う、都道府県がん診療連携拠点病院(仮称)を各都道府県に1か所程度指定することとしているため、推薦する医療機関の検討をお願いしたい。
 また、既指定の拠点病院を都道府県がん診療連携拠点病院(仮称)として推薦する場合も、新規指定の取扱いとなるので留意願いたい。
 なお、推薦書類の提出手続き等については、別途連絡する予定である。

 ( 都道府県・地域がん診療連携拠点病院機能強化事業(仮称)について)
   地域がん診療拠点病院の整備に関する指針の見直しにあわせ、平成18年度予算(案)においては、
  (1)都道府県がん診療連携拠点病院(仮称)等を中心としたがん専門医等を育成するための研修の実施
(2)拠点病院間の連携を図るための連絡協議会の設置・運営
(3)拠点病院における院内がん登録の促進
(4)拠点病院におけるがん患者の療養上の相談、地域の医療機関やセカンドオピニオン医師の紹介等を行うためのがん相談支援事業
等、拠点病院において実施する事業に対要する経費として、9億6千万円を計上しているところである。

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