照会先 厚生労働省健康局結核感染症課
特定感染症係 清水(内線2379)
  松嶋(内線2386)


海外で注意すべき感染症について
-大型連休(いわゆるゴールデンウィーク)を前にして-


 4月29日から5月7日までの期間(大型連休、いわゆるゴールデンウイーク)中は、海外へ渡航される方も多いことから、安全で快適に旅行し帰国するために、現在海外で注意すべき感染症について情報提供します。
 特に、鳥インフルエンザの家きん等での発生が世界的に拡大し、発症事例も増加しておりますので、あらためて注意喚起をいたします。

 鳥インフルエンザ
 鳥インフルエンザは、東南アジアから欧州、アフリカと拡大し、ヒトへの感染事例も増加しています。2003年(平成15年)12月以降、現時点までに、世界で204名(うち死亡者数113人)の発症事例が報告されています。
 一般的に感染した鳥と濃厚に接触した方が感染します。生きた鳥が売られている市場や養鶏場にむやみに近寄らないようにするとともに、手洗いやうがいの励行に心がけましょう。
 また、各検疫所においてポスターの掲示等により各国の発生状況について情報提供するとともに健康相談にも応じております(別紙1)ので、帰国時、体調等に不安を生じた場合にはご相談下さい。

 一般的に海外で注意しなければならない感染症(別紙2
 渡航先(国および地域)や活動内容によって、罹(り)患する可能性のある感染症は大きく異なりますが、最も多いのは食べ物や水を介した消化器系の感染症です。
(1)  食べ物、水を介した感染症
 A型肝炎、コレラなどは、発展途上地域では広く発生する感染症です。生水・氷・サラダ・生の魚介類等の飲食は避けるようにしてください。
(2)  蚊を介した感染症
 マラリア、デング熱は熱帯・亜熱帯地域で広く流行している感染症です。
 マラリアは全世界で年間3億〜5億人の患者、150万人〜270万人の死者が報告されています。デング熱は通年、全世界で年間数千万人の患者が発生しており、さらに昨年来より広い地域で大流行が頻発しています。
 予防法として、長袖・長ズボン着用や虫除けスプレーなど、蚊に刺されないための対策が必要です。
 なお、各検疫所ではポスターの掲示等による注意喚起及び帰国時の健康相談を実施しております(別紙3)。
(3)  動物を介した感染症
 狂犬病は、我が国では昭和32年以降発生はみられませんが、依然として世界中の国々で発生しています。犬だけではなく、他の哺乳動物(ネコ、アライグマ、キツネ、スカンク、コウモリなど)からも感染し、発症すると有効な治療方法はありません。野犬をはじめとする野生動物との接触を避けることが大切です。(別紙4

 正しい予防知識(別紙5
 海外で感染症にかからないようにするためには、感染症に対する正しい知識と予防方法を身につけることが必要です。特に、飲料水、虫刺され(蚊やダニなど)、動物との接触には注意が必要です。
 感染症には潜伏期間があり、帰国後しばらくたってから、具合が悪くなることがあります。したがって、その際は早急に医療機関を受診し、渡航先、滞在期間を必ず申し出ることが重要です。
 空港や港の検疫所では健康相談を行っており、帰国時に具合が悪かったり、不安に思うことがあったりした場合には、積極的に利用してください。

 海外の感染症に関する情報の入手(別紙6
 出発前に旅行プランに合わせた情報を入手しておくことが大切です。厚生労働省検疫所及び外務省では、ホームページにより海外各国の安全に関する情報を提供しています。また、空港内検疫所においても、リーフレット等を配置し、情報提供を行っておりますので、積極的にご利用下さい。



別紙1


鳥インフルエンザの流行について

下記地域で高病原性鳥インフルエンザが確認されています。
2003年12月以降、H5N1型鳥インフルエンザ ヒト患者が報告されている国
タイ
ベトナム
インドネシア
カンボジア
中国
トルコ
イラク
アゼルバイジャン
エジプト
図
高病原性鳥インフルエンザとは?
 高病原性鳥インフルエンザとは、鳥インフルエンザの中でも、ニワトリ、カモなどが死亡してしまう重篤な症状をきたすものをいいます。
 ヒトへの感染は稀ですが、感染した鳥との密接な接触、と殺等から、ヒトが感染した事例が報告されています。

予防方法
(1) 養鶏などの鳥を扱っている農場や市場を訪れない
(2) 弱った鳥や死んだ鳥に触れたりしない
(3) 日常的に手洗い、うがい等で清潔を保つようにする。

2006年4月○日○○検疫所



別紙2 海外で注意しなければいけない感染症
主な
感染源
注すべき病気 主な発生地域 滞在地域 主な症状 予防方法
リゾート
観光地
都市部 地方の
町や村
森林・原野 発熱 下痢 その他 予防接種 その他
食べ物
★A型肝炎 発展途上地域     倦怠感
黄疸
十分火の通った食べ物を食べる
生水は飲まないようにする
★赤痢 発展途上地域  
ときに血便
激しい腹痛   十分火の通った食べ物を食べる
生水は飲まないようにする
★腸チフス 発展途上地域  
持続する高熱
  倦怠感
比較的徐脈
  十分火の通った食べ物を食べる
生水は飲まないようにする
★コレラ 発展途上地域    
大量の水様
嘔吐
下痢による脱水
  十分火の通った食べ物を食べる
生水は飲まないようにする
事故
ケガ
★破傷風 世界各地     飲み込みにくい
しゃべりにくい
野生動物との接触を避ける
転倒やケガに注意する
★マラリア 熱帯
亜熱帯地域

夜間

夜間

高熱・周期的
悪寒
冷汗
予防薬(飲み薬) 夜間外出を控える
虫除けローションの使用
長袖・長ズボンの着用
★デング熱 熱帯
亜熱帯地域

日中

日中

日中
 
高熱
  目の奥の痛み
筋肉・関節痛、発疹
  虫除けローションの利用
室内での蚊取り線香の使用など
▲日本脳炎 アジア    
高熱
  昏睡
意識障害
水田地帯など田舎に出かける人は予防接種を実施する
■黄熱 アフリカ
南アメリカ
   
日中

日中

高熱
  頭痛、筋肉痛
悪寒、嘔吐

発生地域では必須
虫除けローションの利用
長袖・長ズボンの着用
▲ウエストナイル熱 北アメリカ   頭痛、筋肉痛
倦怠感
  虫除けローションの利用
長袖・長ズボンの着用

動物
■狂犬病 世界各地   頭痛、嘔吐
倦怠感
野生動物との接触を避ける
▲鳥インフルエンザ 東南アジア       頭痛、筋肉痛、下痢
その他カゼ症状
  鳥類との接触を避ける
手洗い、うがいの励行
沼や湖
河川
▲レプトスピラ症 世界各地         悪寒、頭痛、筋痛
腹痛、結膜充血
  淡水(川や湖)での水浴びを控える
  ★寄生虫症 世界各地         衛生的な食堂での食事
こまめな手洗い
最も注意をしなければいけない病気
渡航先、活動内容によって注意しなければいけない病気
その他
感染する機会が多いので十分に注意
感染する機会は少ないが注意が必要
動物と接触する機会の多い場合には十分に注意
よくみられる症状
ときにみられる症状
予防接種は、渡航期間、地域、活動内容により、医師と相談の上考慮する。
 



別紙3


デング熱にご注意!
━━━━━━━━━━

 デング熱は蚊が媒介する感染症です。
 現在、熱帯・亜熱帯地域の各地でデング熱が流行しています。
 虫除け、蚊取り線香、厚手の長袖・長ズボンなどを利用して、蚊に刺されないように注意してください。

デング熱を媒介するヒトスジシマカの写真

デング熱を媒介するヒトスジシマカ


デング熱が見られる地域の図
デング熱が見られる地域
International travel and health 2005(WHO)

【デング熱の症状】
 3〜15日、通常5〜6日の潜伏期(蚊に刺されてからウイルスが体内で増えるまでの期間)を経て、突然の発熱ではじまります。熱は38〜40℃程度で5〜7日間持続し、激しい頭痛、関節痛、筋肉痛、発疹を伴います。この発疹は風疹と同じような小さな紅斑で、痒みや痛みはありません。また、軽い皮下出血が足腿部、腋下、手のひらに発熱期の最後や解熱後に現れます。

厚生労働省の検疫所では、デング熱の検査を無料で行っています。
旅行中、上記のような症状があった方は帰国時に検疫官に申し出てください。



別紙 4


海外における狂犬病の発生について


 狂犬病は、日本やオーストラリアなどの一部の国、地域を除き、世界中で発生している感染症です。
 狂犬病が発生している国や地域で、犬やその他の野生動物(哺乳類)に咬まれたり、引っ掻かれたりした場合は、速やかに医療機関を受診してください。

狂犬病とは
(1)  狂犬病の犬にかまれて感染することが多いので「犬」と名がついていますが、他の哺乳動物(猫、アライグマ、キツネ、スカンク、コウモリなど)からも感染します。特に犬や猫では、感染により異常行動(凶暴になる等)をとり、これらの動物に咬まれたり、引っ掻かれたり、傷口をなめられたりすることにより人に感染します。
(2)  日本では1957年以降発生はみられませんが、オーストラリアなど一部の国、地域を除き、欧米を含む世界の大陸で、現在も3万人以上の死亡患者が出ています。

症状
   ヒトの場合、潜伏期間は通常1〜3ヵ月程度で、発症するかどうかは咬まれた部位、傷口の大きさや体内に入ったウイルス量などで大きくかわります。発症すると有効な治療はなく、100%死亡します。
 症状は、潜伏期後、かまれた傷口の知覚異常、発熱、頭痛、全身倦怠、嘔吐などの不定症状で始まり、その後不安感、恐水症(水を飲む時に喉の筋肉に痙攣が生じる)、興奮や麻痺、錯乱などの神経症状が現れ、数日後に呼吸麻痺で死に至ります。

予防方法
   狂犬病が発生している国や地域において、野犬や野良猫、野生動物に手を出さないようにして下さい。渡航先で動物に接触する必要のある場合、または近くに狂犬病のワクチン接種可能な医療機関がない場合には、事前に狂犬病ワクチンを接種するようにして下さい。

咬まれた時等の対処方法
   狂犬病ウイルスを持っている恐れのある動物に咬まれたり、引っ掻かれた場合には、まず傷口を石鹸と水でよく洗い流します。次に、できるだけ早く病院で、傷口の治療を行い、狂犬病のワクチンを接種(複数回)します(狂犬病対策とともに、破傷風対策のため破傷風ワクチンの接種もお勧めします。)。
なお、ワクチンは出来るだけ速やかに接種することが重要です。

狂犬病の発生状況(2001年, WHO)

狂犬病の発生状況(2001年, WHO)の図



別紙 5


正しい予防知識

 旅行前に

 出発前から体調が悪いと抵抗力が落ちることから、出発前から体調を整えることは病気の予防にも大切なことです。

 旅行中に

 1.  水は必ず沸かして飲むか、ミネラルウオーター(有名なブランドのもの)を飲みましょう。

 2.  搾りたてのミルクやお手製の乳製品を口にするのはやめましょう。

 3.  川や湖、沼などの水辺には寄生虫が見られます。淡水での遊びやスポーツは、注意しましょう。

 4.  刺されてうつる病気は広くみられます。ダニ、ノミ、シラミも狙っています。服装に注意し、虫除けスプレーや線香も積極的に利用しましょう。
 特に熱帯地域では、蚊が媒介するマラリアやデング熱が流行しています。
 マラリアを媒介する蚊は、森林地帯を中心に夜間出没します。夜間の外出は要注意!
 デング熱を媒介する蚊は、日中、都市部にも出没します。時に家の中にもみられます。

 5.  こまめに手を洗いましょう。手についた細菌は、目、鼻、口などのいろいろな所から体に入ります。特にトイレの後や食事の前は重要です。


 帰ってきたら

 検疫所では、健康相談を受け付けています。マラリアやデング熱などの検査も行うことができますので、積極的に利用してください。

 かかってもすぐに症状が現れるとは限りません。帰ってしばらくしてから具合が悪くなることもあります。熱や下痢など具合が悪くなってきたら、速やかに医療機関を受診するか、検疫所に相談してください。
 その際には、旅行先や滞在期間を必ず申し出てください。



別紙 6


海外の感染症に関する情報提供サイト

1. 世界各地の感染症発生状況
厚生労働省検疫所(海外渡航者のための感染症情報)ホームページ
(https://www.forth.go.jp/)
外務省海外安全ホームページ>感染症関連情報
http://www.anzen.mofa.go.jp/sars/sars.html

2. 感染症別の詳細情報
厚生労働省検疫所(海外渡航者のための感染症情報)ホームページ>感染症別情報
(https://www.forth.go.jp/)
国立感染症研究所感染症情報センターホームページ>疾患別情報
(http://idsc.nih.go.jp/disease.html)

3. 予防接種に関する情報
厚生労働省検疫所(海外渡航者のための感染症情報)ホームページ
https://www.forth.go.jp/)
外務省ホームページ>渡航関連情報>在外公館医務官情報
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/index.html

4. 渡航先の医療機関等情報
外務省ホームページ>渡航関連情報>在外公館医務官情報
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/index.html

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