年度更新手続上の留意点


 「年度更新」と「労働保険料」
 労働保険の保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間(これを「保険年度」といいます。)を単位として計算することとなっており、年度当初に保険料を概算で(これを「概算保険料」といいます。)申告・納付し、翌年度の当初に確定申告の上保険料を精算(これを「確定保険料」といいます。)することとなっています。これを労働保険の「年度更新」といい、平成18年度については、4月1日から5月22日までの間に前年度の確定保険料と当年度の概算保険料を併せて申告・納付していただくこととなっています。
 この場合に申告・納付していただく労働保険料の額は、その事業で使用されるすべての労働者(一般保険料のうち雇用保険分については、被保険者に該当しない者と後述する「免除対象高年齢労働者」を除きます。)に支払った「賃金総額」(支払うことが確定している賃金を含みます。)に、その事業に定められた「保険料率」を乗じて算定します。

 「年度更新」の手続
 次に「年度更新」の具体的な手続についてですが、「労働保険概算・確定保険料申告書」(以下「申告書」といいます。)を作成し、その申告書に保険料を添えて、金融機関(注1)、所轄都道府県労働局、所轄労働基準監督署(注2)のいずれかに4月1日から5月22日までの間に提出していただくこととなります。
 この申告書は、あらかじめ労働保険番号、事業の所在地、名称、保険料率等が印書され、3月下旬から4月上旬頃に各事業主あて送付されますので、そちらを使用してください。
 なお、労働保険適用徴収関係手続については、電子申請及び電子納付を行うこともできます。年度更新につきましては、申告書を電子申請した場合にのみ電子納付をすることができますが、申告書を電子申請していない場合であっても、延納(分割納付)を申請した場合の2期分以降については電子納付が可能です。
 詳しい電子申請等の方法については、労働保険適用徴収・電子申請お知らせページを御覧ください。
 (注1) 日本銀行の本店、支店、代理店及び歳入代理店(全国の銀行、信用金庫の本店又は支店、郵便局。)。
 (注2) 黒色と赤色で印刷してある申告書は所轄都道府県労働局又は所轄労働基準監督署へ、ふじ色と赤色で印刷してある申告書は所轄都道府県労働局へ提出してください。
 なお、納付書(領収済通知書)の金額を訂正した場合、金融機関等での納付はできませんので所轄都道府県労働局に御連絡ください。
 また、全国の社会保険事務所内に設置された社会保険・労働保険徴収事務センターにおいても、申告書の受付を行っております。

 賃金総額の適正な把握
 労働保険料は、その事業に使用される全ての労働者に支払った賃金(支払うことが確定している賃金を含みます。)の総額に、その事業に定められた保険料率を乗じて算定しますので、適正な労働保険料を算定し申告するためには、この「賃金総額」を正確に把握しておくことが必要です。
 この場合の「賃金」とは、賃金、給与、手当、賞与など名称の如何を問わず労働の対償として事業主が労働者に支払うすべてのものをいい、一般的には労働協約、就業規則、労働契約などにより、その支給が事業主に義務づけられているものです。ただし、退職金(退職を事由として支払われるものであって、退職時に支払われるもの又は事業主の都合等により退職前に一時金として支払われるものに限ります。)、結婚祝金、死亡弔慰金、災害見舞金など、労働契約等によりその支給が事業主に義務づけられていても、賃金に算入されないものもありますので注意してください。
 ところで、労働保険料のうち雇用保険に係る保険料を計算する際には、
 (1) パートタイム労働者のうち、
 ア 1週間の所定労働時間が20時間未満である。
 イ 1年以上引き続き雇用されることが見込まれない。
のいずれかの要件に該当する労働者
 (2) 昼間学生
 (3) 4ヵ月以内の期間を予定して行われる季節的事業に雇用される者
等の雇用保険の被保険者とならない労働者と、
 (4) その保険年度の初日(4月1日)において満64歳以上の者であって、雇用保険料を免除される労働者(これを「免除対象高年齢労働者」といいます。)
に係る賃金は賃金総額には含まれません(なお、労災保険に係る保険料の計算に際しては、(1)〜(4)の労働者分の賃金も賃金総額に含みます。)。したがって、この場合には、雇用保険に係る保険料と労災保険に係る保険料とを区別してそれぞれ算定したものの合計が労働保険料となります。
 また、法人の取締役などの地位にある者は、原則として労働者とはなりませんが、
 (1) 労災保険については、業務執行権のない者で業務執行権のある取締役等の指揮監督を受けて労働に従事し賃金を得ている者
 (2) 雇用保険については、取締役であっても同時に部長、支店長等、従業員としての身分を有している者で、報酬等の面からみて労働者的性格の強い者
は、一般的に労働者として取扱われます。

 継続事業の場合の留意点
(1) まず最初に、年度更新手続を行うための申告書には、あらかじめ次の事項が印書されていますので、印書内容に誤りがないかどうかを確認してください。
(ア) 労働保険番号
(イ) 保険料率(一部の事業については印書されていない場合もあります。)
(ウ) 申告済概算保険料額
(エ) 事業主の住所・氏名
 これらの印書内容に疑問がある場合は、訂正しないで、まず、所轄都道府県労働局に照会してください。
 なお、平成18年4月1日から労災保険率等が改定されていますので、御注意ください。(PDF:4865KB)
(2) 申告書の記入に際しては、特に次の事項に御注意ください。
(ア) 「(8)保険料算定基礎額」欄は平成17年4月1日から平成18年3月31日までの間に使用したすべての労働者に支払った賃金総額(支払うことが確定している賃金を含みます。)を記入します。賃金総額に1,000円未満の端数がある場合は、その端数を切り捨てた額を記入します。
 なお、年度更新において雇用保険被保険者全員分の雇用保険料を納付しているにもかかわらず、雇用保険被保険者資格の取得がされていないケースも見受けられますので、特に前年度の途中で入社した労働者に係る雇用保険被保険者資格取得届の提出の有無について御確認ください。
 また、労働保険の対象とならない役員の報酬等が賃金総額に算入されるといったケースが多く見られますので、労働者の取扱いについて確認するとともに、労働者から労働保険の対象とならない役員となった者に係る雇用保険被保険者資格喪失届の提出の有無についても併せて確認を行っていただきますようお願いいたします。
(イ) 「(10)確定保険料額」欄は、(8)欄の「保険料算定基礎額」に(9)欄の「保険料率」を乗じた額を、「(14)概算保険料額」欄は、(12)欄の「保険料算定基礎額の見込額」に(13)欄の「保険料率」を乗じた額をそれぞれ記入してください。
(ウ) 「(12)保険料算定基礎額の見込額」欄は、平成18年度に使用する労働者に支払う賃金総額の見込額を記入します。ただし、平成18年度の賃金総額の見込額が平成17年度の確定賃金総額の100分の50以上100分の200以下である場合には、平成17年度の確定保険料額の「(8)保険料算定基礎額」をそのまま平成18年度の賃金総額の見込額として使用します。
(エ) 「(25)事業又は作業の種類」欄は、基本的には「労災保険率表」の事業の種類又は「第二種特別加入保険料率表」の事業若しくは作業の種類を記入することになっていますが、事業内容(製造工程、製品名等)についてもできるだけ具体的に記入してください。

 一括有期事業の場合の留意点
 建設の事業や立木の伐採の事業は、原則として個々の工事又は作業現場ごとに、有期事業として労働保険に加入することとなっていますが、「有期事業の一括」の適用を受けている事業は、単独の有期事業と異なり、継続事業と同様に年度更新の手続を行うことになります。ただし、建設の事業や立木の伐採の事業は「二元適用事業」ですので、申告書は労災保険に係る分と雇用保険に係る分とをそれぞれ別個に作成していただきます。
 その際の申告書の記入に当たっての留意点は、おおむね継続事業の場合に同じですが、労災保険に係る分については、次の点が異なります。
(1) 建設の事業については、原則として元請負人のみを当該事業の事業主として適用しますので、元請負人においては、自らが使用した労働者に支払う賃金の他に下請負人が使用した労働者に支払う賃金をも含めて保険料を算定することとなっています。
(2) 保険料の算定基礎となる賃金総額を正確に把握することが困難な事業については、労災保険分に限り賃金総額の特例(請負金額に事業の種類ごとに定められた労務費率を乗じた額を賃金総額とします。)による保険料の算定が認められています。
(3) 「有期事業の一括」の適用を受けている事業は、すべて「一括有期事業報告書」を併せて提出することになっています。更に建設の事業については、「一括有期事業総括表」も併せて添付することになっています。

 本年度についても、以上の点に留意の上、期限内に申告・納付を済ませていただきますよう、事業主の皆様の御協力をお願いいたします。

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