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5.介護関連事業の取組について

(1)在宅介護支援センター運営事業について

   平成17年度予算(案)等について

 在宅介護支援センター運営事業に係る補助金については、三位一体改革における国庫補助負担金の改革が求められる中で、平成18年度からの交付金化を前提に、平成17年度予算(案)においては、前年度とほぼ同額の補助金額を計上することができた。
 平成17年度における現行の在宅介護支援センターの運営については、平成18年度からの「地域包括支援センター」の創設及びその運営費に係る介護保険地域支援事業交付金制度の創設を視野に入れながら、昨年10月末に全国在宅介護支援センター協議会が作成した『在宅介護支援センター事業推進マニュアル』を活用し、適正な事業実施が図られるよう御配慮いただきたい。

   「高齢者虐待防止ネットワーク運営事業」の実施について

 在宅介護支援センターは、従前から地域の総合的な相談窓口や介護予防・生活支援サービスの利用調整等の機能を担っているが、今般、市町村及び地域関係機関等との連携強化を含めたネットワーク機能の強化を図りながら、早期発見・見守りのためのネットワークの整備、相談窓口体制の整備、虐待ケースへのマネジメント等を行うモデル事業として、平成17年度に「高齢者虐待防止ネットワーク運営事業」を創設したので、管下市区町村において、本事業が積極的に取り組まれるよう御留意いただきたい。

   在宅介護支援センター運営事業に係る補助金の適正な執行について

 本補助金については、会計検査院の実地検査において、複数か所の運営費を合算して、個々のセンターの超過・不足額を相殺するといった誤った方法により補助金の交付額の算定を行っていた等、度々過大交付に関する指摘を受けているところであり、今後一層厳正な執行が求められているところであるので、市町村への指導を徹底願いたい。


(2)介護予防・地域支え合い事業について

   介護予防事業の推進について

 介護予防対策については、生涯にわたり元気で活動的に生活できる明るく活力ある社会の構築を目指す「健康フロンティア戦略」の柱の一つである「介護予防10カ年戦略」として推進していくことが重要であるとともに、今般の介護保険制度の見直しにおいて「予防重視型システムへの転換」に取り組んでいくこととしている。平成17年度においてはその基礎づくりに取り組む観点から、介護予防・地域支え合い事業において次のメニューの追加等を行ったところである。

(ア)市町村介護予防試行事業

 平成18年度から実施予定の「総合的な介護予防システム」の円滑な導入のために、高齢者が要介護となる主な原因である「生活機能低下」等を防ぐため、介護予防対策の実施体制を整備し、効果的な介護予防サービスの実施と評価・検証を行う試行事業をできるだけ多くの市町村で実施することとする。

(イ)「介護予防10カ年戦略」推進のための啓発等事業

 「介護予防10カ年戦略」を推進し、平成18年度から実施予定の「総合的な介護予防システム」を円滑に導入し実施していくため、市町村が行うその啓発等のための各種事業を重点的に支援する。

(ウ)介護予防従事者研修事業

 各都道府県において、介護予防事業の実施に携わるスタッフに対する研修を実施し、もって介護予防事業の実施体制の整備を図る。

 上記(ア)〜(ウ)の事業については平成18年度からの制度改正に向けて重点的に取組む必要があり、平成17年度の介護予防・地域支え合い事業に係る補助金の執行においては、こうした観点からの優先配分を考えているので、御留意願いたい。
 また、介護予防事業に携わる人材の養成については、新規に創設される次の2つの事業と一体的な実施を図る予定であるので、留意されたい。

介護予防研究・研修センター運営事業

 総合的な介護予防システムの確立を図るための中核機関として、(財)長寿社会開発センター(※老人福祉法第28条の2に基づく、老人健康保持事業に関する事業を促進するための厚生労働大臣指定法人)に、「介護予防の取組等についての実例を収集・集積し、科学的に分析・検証した根拠(エビデンス)に基づく、効果的な介護予防プログラムの開発研究」、「質の高い介護予防プログラムを提供していくための専門知識・専門技術を有する人材養成」等に取り組む「介護予防研究・研修センター」を設立する。

都道府県介護予防指導者研修事業

 各都道府県・指定都市において、介護予防マネジメント等について専門的な立場からの助言・指導等を行うとともに、各市町村域における介護予防従事者に対する研修の講師としての役割を担う、介護予防指導者を養成する。なお、研修実施機関としては、「介護予防研究・研修センター」を活用する予定である。

   その他のメニューの追加

 上記アに加えて、次のメニューの追加を行うこととしている。

(ア)認知症高齢者をかかえる家族に対する地域支援事業<市町村事業>
 身内が認知症になった初期の段階から、同じような経験を持つ者が、交流集会や電話相談などを通じて、認知症の知識や技術の面だけでなく精神面も含めて、家族を支えることにより、認知症高齢者の行動障害の緩和や症状の進行を抑え、在宅生活を続けていくことができるようにする。

(イ)苦情・事故事例活用研修事業<都道府県事業>
 介護サービス事業者の管理者等を対象として、苦情や事故の背景となる要因を解明し、サービスの質の向上を図るための組織的な対応手法について、事例を活用した研修を実施する。

   三位一体改革による補助金廃止・税源移譲について

 本事業のうち、次の事業については、事業創設以来相当年数が経過し、多くの市町村において実施されており、市町村の事業として同化・定着していると考えられることから、補助金を廃止し、税源移譲を行うこととしたところである。
 なお、これらの事業については、高齢者が住み慣れた地域で安心して生活し続けていくために、今後とも必要性は高いと考えられることから、各市町村が地域の実情に応じて適切に取り組んでいくことが期待される。
○緊急通報体制等整備事業
○高齢者等の生活支援事業
  ・外出支援サービス事業
  ・寝具類等洗濯乾燥消毒サービス事業
  ・軽度生活援助事業
  ・訪問理美容サービス事業


(3)ユニットケアの推進について

 ユニットケアは、特別養護老人ホームにおいても在宅に近い居住環境の下で、入居者一人一人の個性や生活のリズムを尊重し、また、入居者相互が人間関係を築きながら日常生活を営めるように介護を行うものである。
 しかしながら、ユニットケアに取り組み始めた施設の中には、建物の中を仕切ることや入居者を分けることで目的を果たしたと誤解し、実際には従来と変わらないケアを行っている事例もある。
 そこで、平成15年度から新たに研修事業を予算化するなど、ユニットケアの適切な普及のための施策を講じているところであり、各都道府県・指定都市におかれては、次の諸点に御留意願いたい。

   ユニットケア施設研修等事業

(1) 管理者研修
 本研修については、高齢者痴呆介護研究・研修東京センターが平成15年度から開始し、昨年末までの累計で418名が受講している。
 しかしながら、その都道府県・指定都市別の内訳を見ると、受講者の推薦が低調なところがある。
 ユニットケアを導入する上で管理者(施設長)の果たす役割には極めて大きいものがあることから、管内で「小規模生活単位型特別養護老人ホーム」の管理者に就任する予定の者を始め、改修等により「一部小規模生活単位型特別養護老人ホーム」となる予定の既存施設の管理者など、該当者が必ずこの研修を受けることができるよう配慮願いたい。
 なお、本研修については、平成17年度以降も、引き続き高齢者痴呆介護研究・研修東京センターが実施することとしている。

(2) ユニットリーダー研修
 本研修についても、高齢者痴呆介護研究・研修東京センターが平成15年度から開始し、本年度は全国15か所の実地研修施設の協力も得て実施しているところであり、昨年末までの累計で491名が受講している。
 ユニットケアを導入する上では、管理者とユニットリーダーが共通の理解に立ち、共に牽引車の役割を果たしていくことが不可欠であることから、上記(1)の該当施設においては、管理者研修のみならず、ユニットリーダー研修を必ず受講するよう配慮願いたい。

(3) ユニットケア指導者養成研修の創設
 (1)及び(2)の研修の実施に当たっての指導者が不足していることから、17年度からは、新たにユニットケア指導者養成研修を創設し、ユニットケアについて実践的に指導できる者を育成することにより、適切かつ効果的なユニットケアの普及を図ることとしている。
 本研修の実施に当たり、現在、対象者の選定方法、研修カリキュラム、研修の実施方法等について検討を行っているところであり、おってお示ししたい。
 なお、指導者養成研修も、高齢者痴呆介護研究・研修東京センターが実施することとしているので、御了知願いたい。

(4) 情報提供事業について
 ユニットケアの効果的な普及に資するため、冊子・ビデオ等を活用してユニットケアの取組みについての情報提供を行うこととしており、本年3月末の提供に向けて作業を進めているところであるので、御了知願いたい。

   既存施設の改修支援について

 各都道府県・指定都市・中核市においては、施設環境改善交付金(都道府県交付金)に係る「施設生活環境改善計画」において、個室・ユニット型の特別養護老人ホームの整備等を盛り込んでいただくこととなるが、平成25年時点においては特別養護老人ホームの個室・ユニット割合を7割とすることを目標としており、このため、既存施設に個室・ユニットケアを導入するための改修についても、本交付金による支援を行っていくこととしているので、積極的な活用を図られたい。
 また、既存施設の一部を改修して部分的に個室・ユニットケアを導入しようとする際に活用するための『ユニットケア導入のための施設改修の手引き』をお示ししたところであるが、今年度中に多床室を個室・ユニット化するための改修に係る手引きを作成することとしている。

   小規模生活単位型特別養護老人ホームにおけるサービス実態調査(平成16年度老人健康増進等事業)

 小規模生活単位型特別養護老人ホームは、制度創設以来3年目を迎えている。そこで施設を創設し、新たに運営を開始した施設等におけるケアの実態を調査し、各施設に共通する課題や問題点を把握するための調査が実施されているところであり、その結果がまとまり次第、情報提供を行うこととしている。

   ユニットケア型施設開設者コンサルティング事業(平成16年度老人健康増進等事業)

 ユニットケア型の施設の開設を計画する者に対し、ユニットケアについての正しい理解の下で設計が行われているかを審査し、助言・指導することを通じて、設計者等の理解不足の解消を図り、より良いユニットケアの実現に資するため、(社)医療福祉建築協会に検討委員会が設置されたところである。
 同委員会は、平成17年度以降に施設の開設やユニットケア型への改修を計画している法人等で希望するものに対してコンサルティングを実施することとしており、該当法人等が、積極的にこれを受けるよう御指導願いたい。


(4)認知症対策の推進について

 社会保障審議会介護保険部会報告書(平成16年7月30日)においては、今後の高齢化の進展に伴い、痴呆性(認知症)高齢者が増加することに対応するため、これまで中心であった「身体ケアモデル」を「身体ケアモデル+痴呆ケアモデル」に転換していくことの重要性が提言されている。
 こうした観点に立って、認知症に関しては、早期発見・早期診断や発症遅延(認知症予防)対策の推進、地域生活継続の支援策、ケアの質の向上、医療と介護の連携、人材養成、家族支援、権利擁護等の各般の施策を一層強力かつ総合的に推進していく必要があり、その中で、地方自治体が果たす役割は極めて大きい。
 平成17年度予算(案)においては、これまで以上に認知症対策を総合的に推進していくため、地域支援、人材養成等を柱とした事業を取りまとめ、「認知症対策事業」として実施することとしているので、各都道府県・指定都市におかれては、事業実施に遺漏なきよう準備願いたい。

   痴呆診療(認知症)サポート医養成研修等事業(都道府県・指定都市事業)

 認知症対策をこれまで以上に推進していくためには、医療サイドからのアプローチが必須条件であることから、各都道府県・指定都市において、認知症を有する患者への主治医(かかりつけ医)の日常診療活動を支援する医師(認知症サポート医)を養成するための研修やこれに関連する普及啓発事業を実施するための経費を平成17年度予算(案)に盛り込んだところである。
 詳細については、追ってお示しする予定であるが、各都道府県・指定都市におかれては、本事業に積極的に取り組むようお願いしたい。

   認知症高齢者グループホーム管理者研修事業(都道府県事業)

 グループホーム運営の中心となる管理者及び計画作成担当者が受講しなければならない研修課程については、平成17年度以降、次のように改めるので、御了知願いたい。

研修課程の図

(※)管理者には、職員配置や勤務体制、管理者の役割、職員の研修体制など、グループホームを管理運営していくための知識・技術が必要となることから、別の研修課程を設けることとする。


(5)身体拘束廃止推進事業について

 各都道府県における身体拘束廃止の取組を支援するため、平成13年度から、身体拘束廃止推進会議や相談窓口の設置、相談員養成研修事業の実施や家族向けの講習会等を開催する経費に対して補助を行ってきたところであるが、施設における身体拘束廃止を含む入所者の権利擁護の問題については、一層の取組が求められている。(各都道府県ごとのこれらの取組状況の有無については、本年2月の全国高齢者保健福祉・介護保険関係主管課長会議で資料として配布する予定としている。)
 平成17年度予算(案)においては、身体拘束廃止の更なる取組の推進に向けて、新たに次の2つの事業を盛り込んだところである。

(1) 推進員養成研修事業
 施設長、介護主任など、身体拘束廃止の取組を施設内で指導的立場から推進することができる職員を対象として、講義・演習・自施設実習を通じて、身体拘束廃止に関する実践的手法を習得し、現場レベルで身体拘束廃止の取組を行う人材を養成する。

(2) 看護職員研修事業(看護指導者養成研修及び実務看護職員研修)
 施設等の看護職員を対象として、講義・演習を通じて、医療的な観点からの身体拘束廃止に関する実践的・専門的手法を習得し、身体拘束廃止の取組を行う人材を養成する。

 ○ 看護指導者養成研修
 各都道府県において看護の指導的立場にある者を対象として、医療的な観点から身体拘束廃止の取組を行うことができるよう、専門的な知識・技術を修得し、各都道府県で実施される実務看護職員研修の企画・立案に参画し、又は講師となる人材を養成する。

 本研修については、都道府県から(社)日本看護協会に委託して実施することを予定している。

 ○ 実務看護職員研修
 施設等の現場において、実際に身体拘束廃止を推進することができる看護職員(看護主任等の責任者クラス)を対象として、医療的な観点から身体拘束廃止の取組を行うための実践的な知識・技術を修得させる。

 本研修については、各都道府県の看護協会に事業を委託することも可能とする予定である。

 詳細については、追ってお示しする予定であるが、各都道府県におかれては、本事業に積極的に取り組むようお願いしたい。


(6)低所得者の利用者負担の軽減について

   法施行時の訪問介護利用者に対する利用者負担軽減措置事業について

 本事業は、介護保険制度施行時に低所得者であって現に訪問介護を利用していた高齢者に対して、激変緩和の観点から行われていた経過措置であり、創設当初から平成16年度までの措置とされてきたものである。平成17年度から本事業は廃止されるが、介護給付費の審査・支払はサービス提供月の翌月から翌々月において行なわれることから、平成17年3月サービス提供分に係る当該事業の費用を平成17年度予算(案)に計上しているところであり、管下市町村における事務処理に遺漏のないよう周知及び指導をお願いする。

   その他の利用者負担軽減措置事業について

 「障害者施策におけるヘルパー利用者等の支援措置事業」、「社会福祉法人による利用者負担の減免措置事業」、「離島等における利用者負担の軽減措置事業」については、平成17年度も引き続き実施することとし、所要の予算を計上しているところである。このうち、「社会福祉法人による利用者負担の減免措置事業」については、今般の介護保険制度改革における居住費用・食費の見直しに伴い、低所得者等に対する措置として創設される「補足的給付」(平成17年10月以降実施予定)に併せて、対象者の範囲、減免内容、助成の仕組み等を見直す必要があることから、実施要綱の改正を行う予定であるので、各都道府県におかれては、市町村において要綱改正を踏まえた適切な事業実施が行われるよう、指導願いたい。


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