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3.介護給付の適正化等について

(1)介護給付適正化の取組みについて
 介護保険制度の施行状況をみると、サービス利用は急速に拡大しており、老後を支える基礎的な社会システムとして着実に定着している一方で、提供される介護サービスが真に所期の効果をあげているかとの観点、不適正・不正な介護サービスはないかとの観点から改善の余地があるものと考えている。
 介護保険制度において、介護給付の適正化は喫緊の課題であり、常に提供された介護サービスが要介護者の「自立支援」に繋がるものとなっているか否かという視点から、介護給付の適正化を考えていく必要がある。このような状況を踏まえ、昨年10月から全保険者を対象とした「介護給付適正化推進運動」を実施することとしたところであり、平成17年度においては、保険者をはじめ、国・都道府県・国民健康保険団体連合会が連携を強化しながら、より一層積極的に取り組んで行くことが必要である。

 ア 現状の把握、分析等
 介護給付の適正化に取り組むための前提として、それぞれの地域における介護保険の財政状況の分析や介護給付の動向等的確な把握が不可欠である。各保険者において、第2期介護保険事業計画における見込みと実際のサービス給付状況に乖離が生じていないかについて、継続的に把握するとともに、要介護度別、サービス種類毎の介護給付に関する動向等の把握及び分析に努めるよう、各都道府県においても配慮されたい。



第1号被保険者1人当たり支給額

※第1号被保険者1人当たり支給額は、平成16年7月サービス分である(1号支給額÷1号被保険者)。
対前年同月比は、平成15年7月サービス分と平成16年7月サービス分との比較である。

第1号被保険者1人当たり支給額のグラフ
(出典:介護保険事業状況報告)



第1号被保険者に対する認定者数(第1号被保険者)の割合

 第1号被保険者及び要介護(要支援)認定者数は、平成16年9月末現在の数値である。
 対前年同月比は、平成15年9月末現在と平成16月9月末現在の認定者数(第1号被保険者)の比較である。

第1号被保険者に対する認定者数(第1号被保険者)の割合のグラフ
(出典:介護保険事業状況報告)



    イ 国民健康保険団体連合会との連携
 各都道府県国民健康保険団体連合会(国保連)において、昨年、保険者等が介護費用適正化対策のために活用できるよう、認定者や事業所の状況に関する各種情報を提供する体制が整備されたところである。
 今後、このシステムをさらに充実強化することとしており、各都道府県におかれては、管下保険者がこの国保連のシステムを引き続き積極的に活用するよう、配慮されたい。
 また、システムによる事業者情報の活用とともに、国保連が現在行っている苦情処理業務における苦情等に基づき、個々の事業者等に関する情報を収集し、都道府県や保険者に対し迅速に提供しており、都道府県や保険者の給付適正化の取り組みを支援しているところであり、今後とも、より一層、国保連との連携強化を図っていただきたい。

    ウ 「介護給付適正化推進運動」の推進
 介護給付費については、依然として10%程度の高い伸びが続いている。各保険者においては、介護給付の適正化に積極的に取り組んでいる保険者の効果的な事業実施例などを参考にしながら、地域の特性を踏まえ、ターゲットを絞り創意工夫を活かした「介護給付適正化推進運動」を行い、介護給付費の1%程度の抑制を運動の目標の目安として引き続き取り組んでいただきたい。
 また、取組の成果については、都道府県において管下保険者の成果を含めて取りまとめていただくこととしており、別途、都道府県から厚生労働省がヒアリングを行うこととしている。

《具体的な取り組み》
 ○ 不正請求、不適切な請求への対応
 不正請求や事業所の取消事例が増加していること等を踏まえ、適切な介護給付を行うため、サービス提供事業者等の保険給付について調査(照会)等を行うこととする。
【優先的に調査等を行う事業所の選定基準】
 (1)国保連合会の適正化システムにより特異な傾向を示している事業所に対する調査(照会)
 (2)大規模事業所等への指導監査
1)介護報酬支払額の上位事業所
 次に掲げるサービス種別ごとに介護報酬支払額が大きい事業所を優先し、介護報酬支払額が最大である事業所に対しては当該給付内容について指導監査を行っていただきたいこと。








◇在宅サービス
 (1)訪問介護、(2)通所介護、(3)通所リハビリ、
 (4)ショートステイ、
 (5)痴呆性高齢者グループホーム、
 (6)福祉用具貸与
◇施設サービス
 (1)特別養護老人ホーム、(2)老人保健施設、
 (3)療養型医療施設








2)複数の事業拠点を展開している事業所同一法人が多数の事業拠点を展開あるいは特別な関係にある法人間で多方面にわたる複数の事業拠点を展開している形態の事業所、施設から優先的に指導監査を実施していただきたいこと。

    エ 介護費用適正化緊急対策事業等の活用
 介護費用の適正化のための取組みについては、本来、保険者をはじめとして関係者自らが取り組むべきものであるが、「介護給付適正化推進運動」の円滑な実施を確保する観点から、国においても、17年度予算(案)において、介護費用適正化緊急対策事業費として7億円を確保し、介護費用適正化に真に資する事業を対象として支援していくこととしている。
 本事業の実施に当たっては、今年度と同様に費用対効果を示していただき審査の上、交付対象とすることとしており、各都道府県におかれては、本事業の積極的な活用や既存補助事業等の活用により、管下保険者等において、給付適正化に向けた積極的な取組が引き続き図られるよう、配慮願いたい。



(2)保険者指導、事業者指導について

ア 保険者(市町村)指導について
 ○ 最近の介護給付の動向等を踏まえ、昨年10月から「介護給付費適正化推進運動」を実施することとしたところであるので、平成17年度における保険者指導に当たっては、「(1)介護給付適正化の取組みについて」に掲げた事項に重点をおいた技術的助言をお願いしたい。
 ついては、各保険者の介護給付の動向や平成16年度における介護給付費適正化推進運動の実施状況を把握した上、給付分析や適正化への取り組みが低調であると思われる保険者を対象に実地指導を行っていただきたい。

 ○ なお、低所得者の保険料に関し独自の施策を講じている保険者のうち、(1)保険料の全額免除、(2)資産状況等を把握しない一律の減免、(3)保険料減免分に関する一般財源の繰り入れ、或いはこれらと同等の結果となる取扱いをしている保険者がみられるが、国民皆で制度を支える介護保険法の本旨に照らすと適切でないので、これらの方法により保険料の減免を行っている保険者に対しては今後とも指導方お願いしたい。
 また、利用料の減免についても、保険者の独自の判断により負担能力に関係なく全額を免除し、又は一律に軽減している保険者が認められる。介護保険の利用者負担は負担の公平性や適切なコスト意識の喚起の観点から設けられたものであるので、制度の趣旨を踏まえ節度を持った対応について指導方お願いしたい。

 指定事業所に対する指導について
 これまで指定取消処分等の対象となった指定事業所(介護保険施設を含む。)は、別紙のとおり39都道府県287事業所に及んでいるが、このような不正行為を行っている者が見逃されたまま存続し続けることがないよう、効果的な指導監査の実施が求められているところである。
 また、指定取消処分に至らないものの介護報酬の過誤請求も相当数指摘されていること、さらに身体拘束等の劣悪なケアに関する苦情も寄せられていることを踏まえ、平成17年度は次に掲げる事項に留意して指定事業所の指導に当たられたい。
(ア)実地指導対象事業所の選定
 「介護給付適正化推進運動の実施について」において示している「具体的な取組」に沿って対象事業所を選定願いたい。
(イ)指導・確認のポイント
 事業所に対する実地指導に当たっては、(1)介護報酬算定に関する告示を適切に理解した上、加算・減算等の基準に沿った介護報酬の請求であるか、(2)人員、設備及び運営に関する基準に定める職員の資格及び員数を満たしているか、(3)医師など名義借りによる架空職員を捏造しているおそれはないか、(4)有資格者により行うべきサービスが無資格者により行われていないか、(5)個別サービス計画の作成、見直し、記録等が個々の実態に即して処理されているか、(6)身体拘束の防止に向けた努力がなされているか、(7)苦情、事故があった場合にどのような対応を行っているか、などについて重点的にチェックする方向での取組みをお願いしたい。

 また、国保連合会「介護給付適正化システム」を活用することにより特異的な傾向を示している事業所を選定した場合は、そのような給付内容となっている理由及びその適否について調査確認をお願いしたい。

支援事業所別認定者の要介護度の変化
各支援事業所単位の要介護度の改善状況の把握ができる
ケアマネージャー1人当たり作成ケアプラン
支援事業所単位のケアマネジャー1人当たり平均ケアプラン作成件数の把握できる
支援事業所別支給限度額割合
支援事業所単位で、支給限度額に対して、どのくらいのサービス量のケアプランを作成しているかを把握できる
支援事業所とサービス事業所との同一法人割合(単位数)
各支援事業所が同一法人のサービスをどのくらい組み込んでいるか把握できる
訪問介護事業所別ヘルパー1人当たりのサービス提供時間
ヘルパー1人当たりのサービス時間が極端に長い場合は、給付費の請求誤りの疑いがあったり、サービス運用体制に問題があるケースがある
事業所別定員に対する利用割合
ショートステイ、グループホーム、入所施設等の定員数に対する利用者割合の把握



指定取消処分のあった介護保険事業所の内訳
平成12年4月から 平成16年12月累計
作成 介護保険指導室
【指定取消状況による分類】
  件数 都道府県数 事業者数 事業所数 施設数
指定取消処分が行われたケース
166 39 162 243 14
 
不正請求や指定基準違反により指定取消処分が行われたケース
156 39 152 232 13
実態がなく、指定取消処分が行われたケース
10 10 11
指定取消を前提に聴聞通知書を発出後、廃止届が提出されたケース
18 10 18 28
その他、指定取消に相当する事例として公表したケース
平成12年4月から
合計 平成16年12月
185 39 180 272 15

一つの事業者が区分をまたがって指定取消をされているため、「事業者数」欄において各項目の単純な積み上げと合計が一致していません。

【サービス種別と法人種別による分類(事業所数)】
  法人種別 合計
営利法人 特定
非営利
活動法人
医療法人 社会福祉
法人
その他
116
事業者
15
事業者
21
事業者
18
事業者
10
事業者
180
事業者
サービス
種別
訪問介護 91 10   106
訪問入浴介護      
訪問看護     11
訪問リハビリテーション        
居宅療養管理指導      
通所介護 13   21
通所リハビリテーション    
短期入所生活介護        
短期入所療養介護        
痴呆対応型共同生活介護      
特定施設入所者生活介護        
福祉用具貸与 16         16
居宅介護支援 52 16 12   87
介護老人福祉施設          
介護老人保健施設          
介護療養型医療施設     11   15
合計 189 34 26 22 16 287



指定取消処分のあった介護保険事業所の出現率
平成12年4月から 平成16年12月累計
作成 介護保険指導室

【サービス種別と法人種別で見る指定取消事業者の出現率】
  法人全体 法人種別
営利法人 特定非営利活動法人 医療法人 社会福祉法人 その他の法人 地方公共団体 その他
サービス種別全体 0.21% 0.50% 1.12% 0.08% 0.06% 0.01% 0.04% 0.09%
サービス
種別
訪問介護 0.48% 0.75% 0.90%   0.07% 0.08%    
訪問入浴介護 0.11% 0.20% 5.00%          
訪問看護 0.13% 0.98%   0.05%       0.16%
訪問リハビリテーション 0.10%             0.41%
居宅療養管理指導 0.04%     0.07%       0.03%
通所介護 0.14% 0.32% 0.66% 0.08% 0.03%      
通所リハビリテーション 0.12%     0.05% 0.19%     0.78%
短期入所生活介護 0.04%       0.04%      
短期入所療養介護 0.03%       0.22%      
痴呆対応型共同生活介護 0.14% 0.22% 0.56%          
特定施設入所者生活介護 0.20% 0.26%            
福祉用具貸与 0.23% 0.27%            
居宅介護支援 0.31% 0.58% 2.35% 0.14% 0.15%      
介護老人福祉施設                
介護老人保健施設                
介護療養型医療施設 0.44%     0.44%     1.18% 0.38%

出現率とは、指定取消事業所数を指定事業所数で除したものである。
指定事業所数は、介護給付費実態調査月報(平成16年10月審査分)による。



訪問介護事業所、居宅介護支援事業所の主な取消事由等(16年12月分まで)

◎訪問介護事業所の主な取消等事由(重複該当あり)
不正の内容 具体例 該当数
架空、時間や回数の水増しによるサービス提供   56
無資格者によるサービス提供 無資格者が有資格者の名義を借りサービスを提供 30
虚偽の指定申請 勤務予定のないヘルパーを申請書に記載して指定を受けた 28
人員基準違反 サービス提供責任者が不在など 25
同居家族に対するサービス提供 利用者とヘルパーが同居家族であり、同居家族であるヘルパーが他のヘルパーの名義を使い請求 16
対象外サービスの提供 移送中の時間をサービス提供時間として請求 14
利用者負担の免除 利用者が支払うべき1割相当額を徴収していなかった 10
3級ヘルパーによるサービス提供 作為的に減算適用せずに請求 2
ケアマネ事業所に対する金銭供与 事業所の利用を斡旋依頼し金品を供与した 1

◎居宅介護支援事業所の主な取消等事由(重複該当あり)
不正の内容 具体例 該当数
無資格者によるケアプラン作成 ケアマネの名義を使い無資格者がケアプランを作成 43
架空、不適切なケアプランの作成 ヘルパー事業所等の架空請求を幇助するために架空のケアプランを作成していた 33
虚偽の指定申請 勤務予定のないケアマネの名前を借りて申請した 24
アセスメント、給付管理が未実施もしくは不適切 ヘルパー事業所等のサービス提供実績に基づき後付けで、ケアプラン・給付管理表を作成 13
人員基準違反 常勤のケアマネが不在など 13
要介護認定調査における無資格者の訪問調査 ケアマネでない者が訪問調査を実施していた 4
ヘルパー事業所からの金銭授受 ヘルパー事業所から紹介料的な金銭を受領した 1



介護保険事業所等の指定取消事業所数(都道府県別)
(平成16年12月末現在)
作成 介護保険指導室
介護保険事業所等の指定取消事業所数(都道府県別)のグラフ


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