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(3)新たなサービス体系の確立

 (1)地域密着型サービスの創設


要介護者の住み慣れた地域での生活を支えるため、身近な市町村で提供されることが適当なサービス類型(=地域密着型サービス)を創設する。

地域密着型サービスの創設の図



 ア 小規模多機能型居宅介護のイメージ

基本的な考え方:「通い」を中心として、要介護者の様態や希望に応じて、随時「訪問」や「泊まり」を組み合わせてサービスを提供することで、在宅での生活継続を支援する。

小規模多機能型居宅介護のイメージ



 イ 夜間対応型訪問介護のイメージ

基本的な考え方:在宅にいる場合も、夜間を含め24時間安心して生活できる体制の整備が必要
  →定期巡回と通報による随時対応を合わせた「夜間専用訪問介護類型」を創設

利用対象者300〜400人程度を想定



人口規模にすれば20万〜30万程度
まずは都市部でのサービス実施を想定




夜間対応型訪問介護のイメージ



(2)地域包括支援センターの創設
 ア 地域支援事業の実施
 市町村は、以下の地域支援事業を行うこととなる。((1)(2)参照)
(a) 必須事業
 高齢者に対する健康教育、健康診査その他の介護予防事業
 介護予防事業のマネジメント
 被保険者の実態把握と総合相談・支援
 多職種協働による包括的・継続的ケアネジメントの支援
→ この3事業を「包括的支援事業」という。
(b) 任意事業
 介護給付の適正化事業
 虐待防止を含む権利擁護事業
 介護者の支援事業
 その他の事業
 イ 地域包括支援センターの設置
 地域支援事業のうち包括的支援事業を一括して行うための施設として、地域包括支援センターを創設する。
 市町村は、包括的支援事業を実施するために、自ら地域包括支援センターを設置することができるほか、地域の多様な資源を有効活用する観点から、様々な主体に包括的支援事業の実施を委託することができることとする。市町村から委託を受けた者は地域包括支援センターを設置できるものとする。
 ウ 地域包括支援センターにおける介護予防マネジメントの実施
 また、地域包括支援センターにおいては、包括的支援事業を実施するほか、新予防給付に係る介護予防マネジメントを行うこととし、そのための事業者指定を受けることとする。
 これにより、要介護状態等となることを予防するための介護予防事業のマネジメントと、新予防給付のマネジメントが地域包括支援センターにおいて統一的・総合的に実施されることとなる。
 エ 地域包括支援センター運営協議会(仮称)の設置
 各市町村においては、行政機関、介護保険サービス事業者、その他の保健医療福祉関係者、居宅介護支援事業所等で構成する「地域包括支援センター運営協議会(仮称)」を設置し、センターの運営全般について協議するとともに、関係団体、関係事業者等からの派遣によるセンター職員の確保を図るなど、センター運営の公平・中立性を図ることとする。
 オ その他の事項
 地域包括支援センターに関してさらに定めるべき事項については、追ってお示ししたい。



(4)負担の在り方・制度運営の見直し
(1) 保険者機能の強化について


I 保険者による給付等のチェック機能の強化

  立入権限の付与
現行では、保険者はサービス事業者に対し関係書類等の提出を求めることができるにとどまっているが、見直しにより、事業者に対する報告、帳簿書類の提出命令や事業所への立入検査ができることとする。

  指定取消要件に合致した指定サービス事業者の通知
指定サービス事業者について指定の取消要件等に合致していると市町村が認めた場合は、その旨を都道府県へ通知するものとする。

II サービス供給への関与強化

  地域密着型サービスの創設
 市町村が事業者の指定、指導監督等を行う
 市町村介護保険事業計画による必要利用定員総数を上回る場合等においては指定の拒否ができる
 市町村は一定の範囲内で指定基準及び報酬の変更を行うことができる

  都道府県の事業者指定に当たっての意見提出
都道府県は介護保険施設等の指定等をしようとするときは、市町村長の意見を求めるものとする。

III 保険者事務支援

  市町村事務受託法人制度の創設
要介護認定調査や保険給付に関するサービス担当者への文書提出依頼や照会等の市町村事務について、外部委託を可能とする制度を創設する。

IV 財政面での機能強化

  保険料について、負担能力をよりきめ細かく反映した設定方法の見直し
  特別徴収の見直し(遺族年金、障害年金への拡大)
  普通徴収の収納事務委託

V 要介護認定事務の一部見直し

  委託による認定調査の適正化
 要介護認定の認定調査については、市町村職員が実施することを原則化するとともに、申請者の入所している施設等への委託を制限する。

  認定申請代行の適正化
 要介護認定の申請代行については、代行を行うことができる者の範囲を大幅に限定することとし、具体的には、新規申請における代行の範囲等を限定する。



(2) 要介護認定事務の一部見直し
 要介護認定については、介護保険制度施行後4年9ヶ月余りが経過し、この間、平成15年度の一次判定ソフト等の見直しや平成16年度からの有効期間の見直しを行ったが、市町村における要介護認定事務は概ね順調に実施されているところである。
 また、社会保障審議会介護保険部会等において、特に認定調査の委託や認定申請の代行に係る公正性・中立性の観点からの問題点が指摘されており、これらの指摘を踏まえ、今般の介護保険制度改革において以下のような見直しを予定しているところである。このことについてご了知いただくとともに、当面は介護費用適正化緊急対策事業費等の活用により、一層の要介護認定事務の適正化に努められたい。
 なお、認定調査の委託や申請代行を含む要介護認定事務の実施状況について、本年2月に要介護認定実態調査を予定しているところであり、詳細については追って通知することとしているのでご了知いただくとともに、管下の市町村に対する周知方よろしくお願いいたしたい。
 ア 委託による認定調査の適正化
 要介護認定の認定調査については、市町村職員が実施することを原則化するとともに、申請者の入所している施設等への委託を制限する。
 イ 認定申請代行の適正化
 要介護認定の申請代行については、代行を行うことができる者の範囲を大幅に限定することとし、具体的には、新規申請における代行の範囲等を限定する。



(5)被保険者・受給者の範囲について

 (1) 介護保険部会における議論の経過

  ○ 社会保障審議会介護保険部会(以下、「介護保険部会」という。)において平成16年7月30日に取りまとめられた「介護保険制度の見直しに関する意見」の中で、「被保険者・受給者の範囲」の問題については、積極的な考え方と慎重な考え方の両論が併記され、引き続き議論を進めていくこととされた。

  ○ これを受け、平成16年9月以降5回にわたり、介護保険部会においてこの問題を精力的にご審議頂いた。







(1) 平成16年 9月21日(第17回) 「被保険者及び受給者の範囲について」
(2) 平成16年10月29日(第18回) 「給付と負担の在り方について」
(3) 平成16年11月15日(第19回) 「取りまとめに向けての議論」
(4) 平成16年11月29日(第20回) 「取りまとめに向けての議論」
(5) 平成16年12月10日(第21回) 「報告の取りまとめ」

 (2) 『「被保険者・受給者の範囲」の拡大に関する意見』の要旨

 第21回介護保険部会において、「被保険者・受給者の範囲」の問題について、『「被保険者・受給者の範囲」の拡大に関する意見』(平成16年12月10日)が取りまとめられた。
 当該意見書の要旨は以下のとおりである。

  ○ 介護保険制度の将来的な在り方としては、要介護となった理由や年齢の如何に関わらず介護を必要とする全ての人にサービスの給付を行い、併せて保険料を負担する層を拡大していくことにより、制度の普遍化の方向を目指すべきであるという意見が多数であった。

  ○ 今後、被保険者・受給者の範囲の拡大に関連した制度改正を実施するとした場合には、相当な準備が必要である。また、制度の持続可能性を維持する観点から、現行の介護保険制度下においても給付の効率化・重点化などの改革に早急に取り組む必要がある。

  ○ 一方、政府の基本方針(「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」)においては、社会保障制度全般について一体的な見直しを開始し、平成17年度及び平成18年度の2年間を目途に結論を得ることとされているところであり、介護保険制度の普遍化については、こうした動向も十分に踏まえる必要がある。

  ○ したがって、介護保険制度の普遍化に関しては、これらの状況を踏まえ、円滑な制度改革を図ることが重要であり、社会保障制度の一体的見直しの中で、その可否を含め国民的な合意形成や具体的な制度改革案についてできる限り速やかに検討を進め、結論を得ることが求められる。



「被保険者・受給者の範囲」の
拡大に関する意見

(別紙1以下は省略)



平成16年12月10日
社会保障審議会介護保険部会



1.はじめに


 ○ 介護保険制度における被保険者・受給者の範囲の拡大については、本部会が本年7月30日にとりまとめた「介護保険制度の見直しに関する意見」において、これまでの経緯及び問題の所在について次のように整理したところである。

 「介護保険制度の見直しに関する意見」(平成16年7月30日)
一部省略等の上抜粋

これまでの経緯

(1)介護保険制度をめぐる議論
 ・ 介護保険制度において「被保険者・受給者の範囲」をどうするかは、当初から大きな論点の一つであった。

 ・ 審議会や与党内で、論議が重ねられ、その結果、最終的には「老化に伴う介護ニーズに応えること」を目的として、被保険者・受給者を「40歳以上の者」とする現行の枠組みがとりまとめられた。その理由としては、老化に伴う介護ニーズは高齢期のみならず中高年期にも生じ得ること、40歳以降になると一般に老親の介護が必要となり、家族の立場から介護保険による社会的支援という利益を受ける可能性が高まることがあげられた。

 ・ これと併せ、法施行後5年を目途として制度全般に関して検討を加え、必要な見直しを行うことを定めた介護保険法附則第2条において『被保険者及び保険給付を受けられる者の範囲』が検討項目の一つとして具体的に掲げられることとなった。

(2)障害者施策をめぐる動向
 ・ 介護保険法の制定にあわせ、身体障害者福祉法等の中に介護保険制度による給付と障害者福祉制度による給付との調整規定が設けられ、両者に共通するサービスについては、介護保険制度から給付されることとなった。
 これは、高齢障害者の介護サービスについては介護サービスに関する一般制度である介護保険制度を優先して適用するという趣旨であった。
 例えば、身体障害者については、約6割が65歳以上であるが、これらの高齢障害者の介護サービスは介護保険制度から給付され、重複するサービスは障害者福祉制度からは給付されない。その結果、高齢障害者の大半は介護保険制度のサービスを利用している状況にある。
 ただし、介護保険制度にはない「ガイドヘルプ(外出支援)サービス」などの障害者福祉サービスを利用できるほか、全身性障害者については、介護保険制度の支給限度額を超えるサービス利用分について、引き続き障害者福祉制度から必要なサービスを提供できることとされている。

 ・ 障害者施策においては、2003年(平成15年)4月から支援費制度が導入された。この支援費制度の施行に伴い、障害者の在宅サービスは急増し、初年度(平成15年度)の給付費は対前年度比で6割増となっている。こうした状況に対して、障害者の地域生活を支援する観点から評価する声がある一方、財源不足をはじめ、財政基盤をめぐる懸念が急速に高まっている。

 ・ 市町村でのサービス基盤の整備状況(平成15年4月)について見ると、障害者福祉サービスを未だに提供していない市町村が多数存在しており、全国的にみて普遍的にサービスが提供されている状況にはない。
 特に、精神障害者は、介護保険制度のみならず、支援費制度の対象にもなっておらず、在宅サービスをはじめサービス基盤の整備は大幅に立ち遅れているのが実情である。
 また、18歳未満の障害児の場合も施設サービスは、支援費制度の対象とはなっていない。このように未だ制度的には、障害種別に基づく縦割りの取扱いが残っている状況がある。

 ・ 加えて、65歳未満の者の中には、要介護状態であるにもかかわらず、公的サービスを受けられないケースが存在する。例えば、高次脳機能障害や難病に伴う身体等の障害、成人期以降に発生した知能の障害を有する者については、障害福祉各法による「障害者」と認められず、福祉サービスの対象とならない場合がある。介護を必要とする理由や年齢の如何を問わず普遍的に介護サービスを提供する制度が存在しないことから、こうした「制度の谷間」の問題が生じている。

問題の所在

(1)介護保険制度との関わりにおける問題
 ・ 今回の制度見直しで問われている問題は、現行制度では40歳以上の者とされている「被保険者・受給者の対象年齢」を引き下げるべきかどうかである。

 ・ まず、「被保険者の問題」と「受給者の問題」の関連についてであるが、両者は厳密な意味では異なるものの、介護保険制度においては、被保険者としての「負担」と、受給者としての「給付」は連動することが基本となることから、実際上は表裏の関係にあると言える。
 また、被保険者・受給者の対象年齢の引下げは、「老化に伴う介護ニーズ」への対応という、制度の基本骨格の見直しにもつながるものである。現行制度では、「40歳から64歳の者」である第2号被保険者が給付を受けられるのは、「老化に伴う介護ニーズ」として15の特定疾病により介護が必要となった場合に限られている。このため、交通事故や高次脳機能障害などに伴い介護が必要となった場合には、介護保険制度によるサービスを利用できない状況にある。
 さらに、保険財政や負担の面では、被保険者の範囲は保険料を負担する「制度の支え手」の在り方に関わっている。その対象年齢を引き下げることは、支え手を拡大することになり、財政的な安定性という面ではプラスに作用することを意味している。

 ・ なお、保険料負担の趣旨という点では、現行の第1号保険料は「同世代支援」の面が強いものの、第2号保険料は、自らの老親をはじめとする高齢者世代を支える「世代間扶養」ということが中心となっており、仮に若年障害者へ適用するとするならば、「同世代間支援」の面が強くなってくると言えよう。

(2)障害者施策との関わりにおける問題
 ・ 65歳以上の高齢障害者の場合、介護ニーズに関しては介護保険制度を優先して適用する仕組みが基本となっている。したがって、被保険者・受給者の対象年齢を引き下げるということは、制度論としては、64歳以下の若年障害者の介護ニーズについては介護保険制度を適用することを意味している。
 これは、両制度の基本的性格として、介護保険制度が「介護サービスに関する一般制度」であるのに対し、障害者福祉制度は介護ニーズに限らず、それ以外の就労支援等のニーズへの対応を含めた「広範なサービスを視野に入れた制度」であり、両者が重複する場合には前者がまず適用される関係となるからである。
 ただし、上記のような適用関係になるとしても、介護保険制度の対象とならない障害者ニーズに対応する仕組みは当然に必要である。現に、高齢障害者においても、介護保険でカバーしていないニーズ(介護ニーズ及び介護以外のニーズ)に対しては障害者福祉制度からのサービス提供を行うという「両制度を組み合わせた仕組み」が実際に運用されている。

 ・ 介護サービスの在り方に関しては、介護保険制度が今後目指す基本方向は、地域で高齢者が生活を継続できるような「地域ケア」であり、このことは障害者福祉サービスにも共通するものであると考えられる。住み慣れた地域での小規模多機能型のサービス提供を目指す基本方向において、両者の共通性はますます高まるものと考えられる。
 その上で、障害者の特性に対応した介護サービスの内容やケアマネジメントの在り方などが具体的な論点となってくると考えられる。特にケアマネジメントについては、介護サービスと介護以外の就労支援等の障害者に必要なサービスをいかに地域で一体的に提供できるようにするのかといった点について、十分な検討が必要である。

 ・ また、知的障害者や精神障害者等について、現行の要介護認定によって介護の必要性を適切にとらえることができるかどうか検証し、その結果を踏まえた検討を行う必要がある。

 ○ 本部会では、こうした「これまでの経緯」と「問題の所在」を踏まえ、また、その後これまでの間に公表・提出された「給付の重点化・効率化を行った場合の給付費及び第1号保険料の見通しに関する試算」や「被保険者・受給者の範囲の拡大を行った場合の保険料の見通しに関する試算」等の資料も参考に、本年9月以降、5回(第17回〜第21回)にわたり議論を重ねてきた。

 ○ 議論の中では、(1)介護保険制度を要介護となった理由や年齢の如何を問わず介護サービスを提供する普遍的な制度へと見直すことについてどう考えるかという点と、(2)制度の普遍化に向けて被保険者・受給者の対象年齢を引き下げるとした場合にどのような制度設計上の検討事項があるかという点が、大きな論点となった。
 以下、この整理に沿って本部会での検討結果をとりまとめる。


2.本部会での検討結果


(1)介護保険制度を普遍的な制度へと見直すことについて

 ○ 現行の介護保険制度では、40歳未満の者についてはそもそも制度の対象外であるが、40歳から64歳までの者についても、保険料負担を高齢者と同等の水準で行いながら、給付は「老化に起因する疾病(特定疾病)」を原因とする場合に限定されており、65歳以上の者と比べて受給要件に差が設けられている。
 したがって、現行の制度は、給付面から見れば、65歳以上の介護ニーズと40歳から64歳までの老化に伴う介護ニーズに対応するものであり、実質的には「高齢者の介護保険」であると言える。

 ○ こうした現行制度に対し、介護保険制度の将来的な在り方としては、要介護となった理由や年齢の如何に関わらず介護を必要とする全ての人にサービスの給付を行い、併せて保険料を負担する層を拡大していくことにより、制度の普遍化の方向を目指すべきであるという意見が多数であった。

 ○ 普遍化の方向を目指すべきとする理由は、以下のとおりである。
(1) そもそも介護ニーズは高齢者に特有のものではなく、年齢や原因に関係なく生じうるものである。そうした「介護ニーズの普遍性」を考えれば、65歳や40歳といった年齢で制度を区分する合理性や必然性は見出し難い。
 ドイツ、オランダ、イギリス、スウェーデン等の欧米諸国においても、社会保険方式と税方式の違いはあるものの、年齢や原因などによって介護制度を区分する仕組みとはなっていない。特に、ドイツとオランダについては、全年齢を対象として介護サービスの保険給付を行っている。
(2) 特に、40歳から64歳までの者については、保険料を支払っているにもかかわらず、原因により保険給付を受けられる場合が限定されている。また、64歳以下の者の中には、「制度の谷間」にあって、いずれの公的な介護サービスも受けられないというケースも存在している。制度を普遍化することにより、こうした問題の解決を図ることができる。
(3) 介護保険財政の面では、対象年齢の引下げは制度の支え手を拡大し、財政的な安定性を向上させる効果がある。介護保険財政については、短期的な対応は別としても、長期的には、制度の支え手を拡大し財政安定化の対策を講じることを真剣に検討すべきである。そうすることにより、制度の持続可能性を高め、今後高齢化が急速に進展する時期を乗り越えていくことが可能となるものと考えられる。

 (なお、こうした理由や考え方については、7月30日の「介護保険制度の見直しに関する意見」においても整理しており、別紙1に再掲。)

 ○ 一方、被保険者・受給者の範囲の拡大については、極めて慎重に対処すべきであるという意見があった。

 ○ 極めて慎重に対処すべきとする理由は、以下のとおりである。
(1) 家族による介護負担の軽減効果があるのは主に中高年層であることなどから、40歳以上の者から保険料負担を求める現行の制度については一定の納得感があるが、40歳未満の若年者にとっては、こうした面での納得感を得ることが難しい。
 また、若年者の介護保険料については、各医療保険の保険料に上乗せして徴収されることから、特に国民健康保険において保険料の未納や滞納が増えるおそれがある。
(2) 高齢者の場合と異なり、若年者が要介護状態になる確率は低く、しかもその原因が出生時からであることも多い。こうした分野の取組は、これまでどおり税を財源とする福祉施策において行われるべきであり、社会保険方式に切り換えることは、負担を安易に企業等へ転嫁するものである。
 また、支援費制度は、導入後間もない段階であり、制度の検証を行う前に介護保険に組み入れることについては時期尚早である。適正化・効率化など障害者福祉施策の改革を優先すべきである。
(3) 「制度の普遍化」の具体的内容について、十分な検討がなされていない。いずれにせよ、社会保障制度全般の一体的な見直しの中で、介護保険制度についても負担や給付の在り方等を検討し、結論を得るべきである。

 (なお、こうした理由や考え方については、7月30日の「介護保険制度の見直しに関する意見」においても整理しており、別紙2に再掲。)


(2)被保険者・受給者の対象年齢を引き下げるとした場合に制度設計上検討すべき事項について

 ○ 制度の普遍化に向けて被保険者・受給者の対象年齢を引き下げることとした場合に、今後検討すべき事項として、
 (給付に関する論点)
  ・給付対象者の年齢をどう考えるか。
  ・給付サービスの内容をどう考えるか。
 (負担に関する論点)
  ・保険料の負担者の年齢をどう考えるか。
  ・保険料負担の水準をどう考えるか。
 (施行方法・時期に関する論点)
  ・年齢の引下げを一括して実施するか、段階的に実施するかなど、実施方法をどう考えるか。
  ・実施時期をどう考えるか。
などがある。

 ○ これらについて、別紙3の「被保険者・受給者の範囲の拡大に関する制度設計上の論点」に基づいて論議を行った。各論点に関する意見は、概ね以下のとおりであった。

(給付に関する論点)
 ・ 「介護ニーズの普遍性」という観点を重視すれば、医療保険が全年齢を対象としていることと同様に、被保険者・受給者の対象年齢を0歳以上とすべきという意見があった。
 ・ また、対象者の暮らしに焦点を当てサービスの利用がどのように変わるのかを十分に検証すべきという意見や、上乗せや横出しのサービスを地方自治体の超過負担に任せるのではなく国が責任を持つべきという意見、最若年層の要介護認定や若年層のケアマネジメントについて検討する必要があるという意見があった。

(負担に関する論点)
 ・ 対象年齢については、「20歳以上」、「25歳以上」、「30歳以上」とする案を基に議論されたが、その中では、「20歳以上」とするのは未納や滞納の問題が懸念され、難しいのではないかという意見があった。
また、いずれの年齢とするにしても、若年層の介護保険料は各医療保険の保険料に上乗せして徴収されることから、特に国民健康保険において収納率を低下させるおそれがあり、保険料の収納に対する十分な配慮が必要であるという意見があった。
 ・ 保険料の負担水準については、40歳未満の若年層について、保険料水準を「40歳以上と同水準とする案」と「40歳以上の半分とする案」を基に議論されたが、その中では、40歳以上との間で介護リスクの差が余りなく、保険料に差を設けることに納得が得られるのかという意見がある一方、そもそも若年層は老親の介護に直面する状況が少なく、負担をすることに納得が得られないという意見があった。

(施行方法・時期に関する論点)
 ・ 制度の普遍化という基本的な性格の変更を伴う改正を行う場合には、施行までの間に、所要の準備や内容の周知を行うのに必要となる十分な時間を置くべきであるという意見があった。
 ・ 具体的な時期に関しては、円滑な準備を進めるために4年後の第4期(平成21年度以降)を施行時期として明確化すべきという意見がある一方、制度改正の具体化までには相当な準備が必要であることから施行時期を明確化するのは時期尚早であるという意見があった。
 ・ また、制度の普遍化の具体化には時間を要するとしても、「制度の谷間」の問題については早急に対応を検討すべきであり、特に40歳以上の末期がんで介護を必要とする者については介護保険による給付を受けられるようにすべきであるという意見があった。


3.今後の進め方


 ○ 本年9月以降、被保険者・受給者の範囲の拡大を巡り、本部会においては、精力的に審議を行ってきたが、その検討結果については、前述のとおりである。

 ○ 今後、被保険者・受給者の範囲の拡大に関連した制度改正を実施するとした場合には、相当な準備が必要である。また、制度の持続可能性を維持する観点から、現行の介護保険制度下においても給付の効率化・重点化などの改革に早急に取り組む必要がある。

 ○ 一方、政府の基本方針(「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」)においては、社会保障制度全般について一体的な見直しを開始し、平成17年度及び平成18年度の2年間を目途に結論を得ることとされているところであり、介護保険制度の普遍化については、こうした動向も十分に踏まえる必要がある。

 ○ したがって、介護保険制度の普遍化に関しては、これらの状況を踏まえ、円滑な制度改革を図ることが重要であり、社会保障制度の一体的見直しの中で、その可否を含め国民的な合意形成や具体的な制度改革案についてできる限り速やかに検討を進め、結論を得ることが求められる。



(6)都道府県、市町村における介護保険関係システム

 ○ 介護保険制度においては、事務の効率化を図るため、制度施行時に国が様式や事務フローを提示した上で、指定事業者の管理、被保険者の管理、介護報酬の審査支払業務など、事務の電子化が図られているところである。

 ○ 現在、介護保険制度施行後5年を目途とした見直しを行っているところであるが、将来にわたって制度の持続可能性を確保するため、給付内容等に変更が加えられる予定である。また、制度の理念を徹底し、より質の高いサービスを提供するため、保険者の機能・権限を大幅に強化することが検討されている。

 ○ このため、介護保険関係システムに対し、改正内容を反映させるための改修を行い、改正後の制度運営を適正かつ円滑に実施する必要がある。
 都道府県システムにおいては、都道府県が指定、台帳管理を行う事業者情報等の管理システムに関し必要な改修が必要となる。
 また、介護サービスの質の向上を図るため、サービス提供事業者の指定取消後の再指定の一定期間の禁止をはじめとして、居宅介護支援専門員の更新性の導入など新たな資格管理が予定されており、これらに係るシステム改修が必要となっている。
 保険者システムにおいては、市町村等が指定、給付を行う要支援・要介護認定者の受給者情報等の管理システムに関し必要な改修を行う必要がある。
国保連合会が行う介護報酬の審査支払業務の実施に必要な受給者情報、社会保険庁などの年金保険者が行う特別徴収業務の実施に必要な被保険者情報等の管理及び情報提供に係るシステム改修が必要となる。
 また、審査支払システムより作成された介護給付適正化データを活用し、適正化事業の推進に努めており、これら介護給付適正化データの授受に関するシステム改修も必要となる。

 ○ 主な改修項目
 【都道府県システム】
  ・居宅介護支援専門員の資格管理(更新制の導入等)
  ・指定取消事業者情報の管理(悪質事業者管理等)
  ・国保連との審査支払データ授受のためのインタフェース
 【保険者(市町村)システム】
  ・地域密着型サービスの導入(保険者による事業者の独自指定)
  ・特別徴収の見直し
  ・保険料設定の見直し
  ・国保連との審査支払データ授受のためのインタフェース

 ○ システム改修予算の概要
(1)都道府県システムの改修 【121百万円】
(2)保険者(市町村)システムの改修 【1,785百万円】
(3)審査支払システムの改修

【700百万円】
(実施主体・負担割合)
 都道府県 〔国 1/2 都道府県 1/2〕
 市町村・広域連合・一部事務組合 〔国 1/2 市町村等 1/2〕
 国民健康保険中央会 〔国 10/10(定額)


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