(1) | 新予防給付の創設 新予防給付の対象者の選定方法やサービス内容等については、平成16年8月に立ち上げた「介護予防サービス評価研究委員会」の下に「介護予防スクリーニング手法検討小委員会」、「介護予防サービス開発小委員会」及び「市町村モデル事業支援小委員会」を設置し、検討を進めてきたところであるが、平成16年12月に開催された第2回介護予防サービス評価研究委員会において、各小委員会の検討状況が報告された。 介護予防スクリーニング手法検討小委員会では中間取りまとめにおいて、原則として「要支援」及び「要介護1」と判定された者を新予防給付の対象者とした上で、(1)疾病や外傷等により、心身の状態が安定していない状態、(2)認知機能や思考・感情等の障害により、十分な説明を行ってもなお、新予防給付の利用に係る適切な理解が困難である状態、(3)その他、心身の状態は安定しているが、新予防給付の利用が困難な身体の状況にある状態の者を除外する手法により、対象者の選定を行うことが提言されている。また、これに併せて、認定調査票及び主治医意見書の記載方法並びに様式について、介護予防の観点も踏まえた内容にする方向で見直しを行う必要があり、具体的な内容については別途検討することとしている。 介護予防サービス開発小委員会では、(1)適切な介護予防ケアマネジメントの実施、(2)既存サービスの見直し(介護保険法に基づく既存の居宅サービスを再評価・再編成し、新予防給付に組み入れる)、(3)新たな介護予防サービスの開発(一部の市町村において実施されている筋力向上、栄養改善等の取組のうち、介護予防の有効性が認められるものを新予防給付に組み入れる)の3つの課題について検討をし、中間取りまとめを行った。 介護予防ケアマネジメントについては、利用者とサービス提供者による生活機能向上の目標の共有、利用者の主体的なサービス利用の推進、将来の改善の見込みに基づいたアセスメント、明確な目標設定を持ったプランづくりなどのポイントを示した上で、適切な実施の徹底を求めている。今後は、介護予防ケアマネジメントの各過程に標準様式の項目の追加や新たな内容の追加を検討し、介護予防を重視した標準的なアセスメントツールの開発やガイドライン等を策定することとしている。 既存サービスの見直しについては、訪問介護、通所サービスについて、提供されるサービス要素に分解し、利用者の状態像とサービス提供の目的との関係を標準化していくべきとし、予防訪問介護(仮称)、予防通所介護(仮称)、予防通所リハビリテーション(仮称)として新たに設定すべきとしている。また、福祉用具・住宅改修については、不適切な利用による生活機能低下の危険性も大きいことを十分に認識し、「介護保険における福祉用具の選定の判断基準について」(平成16年6月17日老振発第0617001号厚生労働省老健局振興課長通知)で示された判断基準による適正使用の促進を徹底すべきとしている。そのほか、訪問看護、訪問リハビリテーション及び居宅療養管理指導については、医学的必要性の観点からサービスを提供することを求めるなど、既存サービスの見直しの方針が示された。 新たな介護予防サービスの開発については、介護予防の有効性に係る科学的根拠について、国内外の文献を評価・検討した結果、新予防給付への導入が適当であると認められるものは、「運動器の機能向上」、「栄養改善」、「口腔機能の向上」であるとし、痴呆、うつ、閉じこもり等の予防については、地域支援事業において実施することが適当であるとしている。また、サービスプログラムの開発や個別サービスごとの利用者のスクリーニング方法、サービスの評価方法等については、引き続き検討していくこととしている。 なお、市町村モデル事業支援小委員会については、現在も、市町村モデル事業を実施中であり、事業結果については、まとまり次第、介護予防サービス評価研究委員会報告される予定である。
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(2) | 地域支援事業の創設 総合的な介護予防システムの確立の観点から、要支援・要介護状態になる前からの介護予防を行うとともに、要介護状態等となった場合も地域において自立した生活が継続できるようにするため、現行の老人保健事業、介護予防・地域支え合い事業及び在宅介護支援センター運営事業を再編し、地域支援事業として介護保険法に位置付けることとしている。 地域支援事業は、市町村が実施主体となって行うものであり、次の事業は必須事業として行うことが求められる。
(ア) | すべての高齢者を対象にした健康診査等と、要介護・要支援になるおそれのある高齢者(高齢者人口の5%程度)を対象とした運動器の機能向上、栄養改善、閉じこもり予防等を含めた総合的な介護予防事業(いわゆる「水際作戦」の実施) |
(イ) | 要介護状態等となることを予防するための介護予防事業のマネジメント |
(ウ) | 被保険者の実態把握と総合相談・支援 |
(エ) | 多職種協働によるケアマネジメントの後方支援等の包括的かつ継続的ケアへの取組 |
また、併せて、介護給付の適正化事業、虐待防止を含む権利擁護事業、介護者の支援事業その他の事業を行うことも可能とする。 市町村は、介護保険事業計画において、地域支援事業に要する費用、事業内容及び事業量の見込みを定めることとする。 それぞれの事業の具体的内容や財源のあり方等については、概ね次のとおりであるが、その詳細については追ってお示しすることとしたい。
○ | 地域支援事業に要する費用については、第1号被保険者の保険料、第2号被保険者の保険料及び公費(国、都道府県及び市町村)により賄うこととするが、その具体的な負担割合等については、現在検討中である。 |
○ | 第2号被保険者の保険料や公費による負担を行うことを踏まえ、地域支援事業全体の事業規模の範囲を決めておくことが必要であると考えており、現在検討中である。 |
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(3) | 老人保健事業の見直しについて
ア | 経緯 老人保健法に基づく医療等以外の保健事業(以下「老人保健事業」という。)については、国民の疾病の予防、治療、リハビリテーション等の一連のサービスを総合的かつ体系的に提供するために、昭和57年度以来、4次に及ぶ計画に基づき、20年余りの長期にわたり各種の事業を展開してきた。 この間、人口の急速な少子高齢化や食習慣等の生活様式の変化等を背景として、生活習慣病や要介護状態等になる者の増加が深刻な社会問題となるに至っており、老人保健事業においても、こうした社会・生活環境等の変化に対応した適切な役割を担っていくことが求められてきている。 また、今年度は、平成12年度を初年度とする保健事業第4次計画の最終年度という大きな節目の年に当たるとともに、21世紀の前半に迎える超高齢社会を目前に控え、介護保険制度の見直しも進められている。 こうした状況を踏まえ、これまでの老人保健事業の総括的な評価を行うとともに、平成17年度以降の新たな事業の在り方について専門的見地から総合的な検討を行うため、平成16年7月に老健局長の私的検討会として「老人保健事業の見直しに関する検討会」(座長:辻 一郎東北大学教授)を設置した。 検討会では、同年7月以降、6回にわたり、これまでの老人保健事業に関する総合評価、今後の本事業の在り方等について、関係者からの意見聴取も踏まえた討議を行い、その結果を同年10月25日に中間報告として取りまとめられた。 |
イ | 事業の意義、現状、課題及び見直しの基本的方向性 中間報告においては、老人保健事業が、(1)市町村での地域保健活動の拡大・推進、(2)保健関係職種の役割の定着や技術の向上、(3)いわゆる6事業による予防活動の体系化の推進等に意義があったこと、また、地域においてリハビリテーション活動を行う機能訓練や、対象者の自宅に出向いて保健指導を行う訪問指導の制度化により、地域保健活動の活性化等に資するとともに、高齢者に対するサービス提供の一つとして先駆的な取組となったと評価されている。 一方、(1)現行の老人保健事業は、壮年期からの健康づくりと生活習慣病の予防及び介護を要する状態に陥ることの予防を主眼として、市町村に居住する40歳以上者を対象としてきたことから、これまでは、老人保健事業の対象とならない40歳未満の若年期からの取組が不十分であること、(2)各制度を継続的に利用しにくく生涯を通じた健康づくりという観点から問題があること、(3)要介護状態となるおそれが大きい者に対する必要な支援が不十分であること等といった課題が指摘されている。 このため、見直しの基本的方向性として、高齢者の自立支援という観点から生活機能が自立し生きがいにあふれた「活動的な85歳」を新たな目標とすること、ライフステージに応じた多様な事業展開を行うこと、ケアマネジメント手法の導入など個別対応の重視等といった方向性が示されたところである。 |
ウ | 今後の取組 中間報告においては、国において、関連する制度等の改正も含め老人保健事業の見直しを全省的な取組として推進すること、介護予防対策については介護保険制度の見直しに関する進捗状況を踏まえ、老人保健事業との整合性を図り具体的な方策について検討すること等が求められているところであり、現在、今通常国会への改正法案の提出に向け、作業を行っているところである。 現在の検討状況としては、現行の老人保健事業のうち、65歳以上を対象とするものについては、平成18年度に介護予防・地域支え合い事業等とともに見直しを行い「地域支援事業(仮称)」として再編する予定である。 また、65歳未満を対象とする事業についても、現在、関係部局とともに制度的な見直しも含め検討しているところである。 今後とも、各都道府県においては、管内市町村及び関係団体等に対する周知並びに適切な指導を行い、新たな制度が円滑に導入できるよう、特段の御配意をお願いしたい。 |
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