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平成17年度の高齢者保健福祉施策の展開について
 1.介護保険制度改革について
  ○ 介護保険制度改革の全体像(案)〜持続可能な介護保険制度の構築〜
以下の改革案は、現在厚生労働省において検討中の案であり、今後、与党等における検討を経て、平成17年通常国会に関連法案を提出する予定です。
改革の全体像
 介護保険制度については、制度の基本理念である、高齢者の「自立支援」、「尊厳の保持」を基本としつつ、制度の持続可能性を高めていくため、以下の改革に取り組む(平成17年通常国会に関連法案を提出予定)。
改革の全体像の図

改革の概要

I.介護保険制度の改革

 1.予防重視型システムへの転換
〈平成18年4月施行〉
(1) 新予防給付の創設
 ○軽度者を対象とする新たな予防給付を創設する。
 ○マネジメントは市町村が責任主体となり、地域包括支援センター(仮称)等において実施。
 ○新予防給付のサービス内容については、
既存サービスを評価・検証し、有効なものをメニューに位置付け。
運動器の機能向上や栄養改善など効果の明らかなサービスについては、市町村モデル事業の評価等を踏まえ位置付けを決定。
(2) 地域支援事業(仮称)の創設
 ○要支援、要介護になるおそれのある高齢者(高齢者人口の5%程度)を対象とした効果的な介護予防事業を介護保険制度に位置付ける。
 ○事業実施の責任主体は市町村とする。

 2.施設給付の見直し
〈平成17年10月施行〉
(1) 居住費用・食費の見直し
※旧措置入所者の経過措置の延長は平成17年4月施行
 介護保険と年金給付の重複の是正、在宅と施設の利用者負担の公平性の観点から、介護保険3施設(ショートステイを含む)の居住費用や食費について、保険給付の対象外とする。
 但し、低所得者については、負担軽減を図る観点から新たな補足的給付を創設する。
 通所系サービスの食費についても保険給付の対象外とする。

〔補足的給付の水準〕
 それぞれの所得段階に応じ、「補足的給付の基準額」−「負担上限額」が補足的給付の額となる。

  居住費用 食費
補足的給付の基準額 個室 6.0万円 4.8万円
準個室 5.0万円
多床室 1.0万円
負担上限額
第1段階
(生活保護受給者等)
個室 2.5万円 1.0万円
準個室 1.5万円
多床室 0.0万円
新第2段階
(市町村民税世帯非課税かつ
年金収入が80万円以下など)
個室 2.5万円 1.2万円
準個室 1.5万円
多床室 1.0万円
新第3段階
(市町村民税世帯非課税かつ
新第2段階非該当者)
個室 5.0万円 2.0万円
準個室 4.0万円
多床室 1.0万円
(注1) 数字は1人当たり月額。
(注2) 「個室」はユニット型の個室、「準個室」は非ユニット型の個室及びユニット型で個室に準ずるものを含む。
(注3) 施設において設定している居住費用及び食費がこの基準額を下回る場合は、施設において設定している額と負担上限額との差額が給付額となる。

(2) 低所得者等に対する措置
 (1)高額介護サービス費の見直し
 保険料段階の「新第2段階」(年金収入が概ね基礎年金[=約80万円/年]以下など)については、現行の月額上限を引下げ(月額上限2.5万円→1.5万円)
 (2)旧措置入所者の経過措置(平成17年3月末で期限切れ)の延長等
 介護保険法施行前に、措置(=行政処分)により特別養護老人ホームに入所した者に対する利用者負担の経過措置の延長等を行う。
 (3)社会福祉法人による利用者負担の減免の運用改善

 3.新たなサービス体系の確立
〈平成18年4月施行〉
(1) 地域密着型サービス(仮称)の創設
 身近な地域で、地域の特性に応じた多様で柔軟なサービス提供が可能となるよう、「地域密着型サービス(仮称)」を創設する。
(地域密着型サービスの例)
小規模多機能型居宅介護、夜間対応型訪問介護、認知症高齢者グループホーム、認知症高齢者専用デイサービス、小規模介護老人福祉施設、小規模介護専用型特定施設

(2) 地域包括支援センター(仮称)の創設
 地域における総合的なマネジメントを担う中核機関として、@)総合的な相談窓口機能、A)介護予防マネジメント、B)包括的・継続的マネジメントの支援の機能を持つ「地域包括支援センター(仮称)」を創設する。

(3) 居住系サービスの充実
 ○介護を受けながら住み続けることのできるケア付き居住施設の充実を図る。
 ○入居者保護の観点からの有料老人ホームの見直し

(4) 医療と介護の連携の強化
 医療と介護の連携を強化する観点から、介護予防における医療との連携、介護施設やグループホームにおける医療機能の強化を図る。

 4.サービスの質の向上
〈平成18年4月施行〉
(1) 情報開示の標準化
 ○すべての介護サービス事業者に事業所情報の開示を義務づける。

(2) 事業者規制の見直し
 ○指定の更新制の導入、指定に当たっての欠格要件の見直し等

(3) ケアマネジメントの見直し
 (1)包括的・継続的マネジメントの強化(地域包括支援センター(仮称)の創設)
 (2)ケアマネジャーの資質の向上(資格の更新制の導入等)
 (3)独立性・中立性の確保(1人当たり標準担当件数の見直し等)

(4) 人材育成
 ○介護職員については、将来的には「介護福祉士」を基本とする。
 ○ホームヘルパー等の資質の向上のため、研修の充実等を図る。

 5.負担の在り方・制度運営の見直し
〈平成18年4月施行〉
(1) 第1号保険料の見直し
 (1)設定方法の見直し
新第2段階(年金収入が概ね基礎年金以下など)の創設と保険料負担の軽減
 (2)徴収方法の見直し
特別徴収の対象となる年金を遺族年金、障害年金に拡大。
普通徴収における生活保護からの代理納付、収納の私人委託(コンビニ委託等)

(2) 市町村の保険者機能の強化
 ○都道府県知事の事業者指定に当たり市町村長の関与を強化する。
 ○市町村長の事業所への調査権限を強化する。

(3) 要介護認定の見直し
 ○委託調査の適正化(申請者の入所している施設への委託の禁止等)
 ○代行申請の適正化(初回認定時の代行申請の範囲の限定等)

(4) 介護サービスの適正化・効率化
 ○平成18年4月に予定されている介護報酬の改定等において対応。


II.介護サービス基盤の在り方の見直し

 1. 地域介護・福祉空間整備等交付金(仮称)の創設
〈平成17年4月施行〉
(1) 市町村整備交付金(市町村対象)
 ○市町村内の生活圏域を単位として、地域密着型サービス拠点、介護予防拠点等の整備を内容として市町村が定める市町村整備計画が、国が定める基本方針に照らして適当なときは、市町村に対して交付金を交付する。
 (対象となる事業)
地域密着型サービス拠点、介護予防拠点、地域包括支援センター など

(2) 施設環境改善交付金(都道府県対象)
 ○特別養護老人ホーム等の整備や既存施設の個室・ユニット化等を内容として都道府県が定める施設環境改善計画が、国が定める基本方針に照らして適当なときは、都道府県に対して交付金を交付する。
 (対象となる事業)
特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、ケアハウス(特定施設入所者生活介護の指定を受けるもの)、養護老人ホーム など



介護保険制度の見直し案について


以下の改革案は、現在厚生労働省において検討中の案であり、今後、与党等における検討を経て、平成17年通常国会に関連法案を提出する予定です。


平成17年1月



介護保険制度改革の経緯・スケジュール

  平成 9年12月   介護保険法成立
(法附則において施行後5年後の見直しを規定)

第1期 平成12年 4月 介護保険法施行

第2期 平成15年 4月 第2期事業計画期間開始(〜17年度)
1号保険料の見直し、介護報酬改定
平成16年 制度見直し案作成作業
(社会保障審議会・介護保険部会) 
平成15年5月   介護保険部会設置
平成16年7月30日 介護保険部会意見取りまとめ
12月10日 被保険者・受給者の範囲について意見
とりまとめ
平成17年 制度改正法案を通常国会に提出
  ↓ ※平成18年4月施行(一部は17年度中に施行)

第3期 平成18年 4月 第3期事業計画期間開始
1号保険料の見直し

介護報酬・診療報酬の改定



見直しの基本的視点

見直しの基本的視点の図



介護保険制度改革の主な内容

[具体的内容]
予防重視型システムへの転換
新予防給付の創設、地域支援事業(仮称)の創設
施設給付の見直し
居住費用・食費の見直し、低所得者等に対する措置
新たなサービス体系の確立
地域密着型サービスの創設、地域包括支援センターの創設、居住系サービスの充実(有料老人ホームの見直し等)、医療と介護の連携の強化、地域介護・ 福祉空間整備等交付金(仮称)の創設
サービスの質の向上
情報開示の標準化、事業者規制の見直し、ケアマネジメントの見直し
負担の在り方・制度運営の見直し
第1号保険料の見直し、市町村の保険者機能の強化、要介護認定の見直し、介護サービスの適正化・効率化
被保険者・受給者の範囲
→社会保障制度の一体的見直しの中で検討・結論
 ※ 施行:平成18年4月(但し施設入所費用の見直しについては平成17年10月施行)



介護予防の推進

介護予防の推進の図



介護認定審査会における新予防給付対象者選定のイメージ

介護認定審査会における新予防給付対象者選定のイメージ


保険給付と要介護状態区分のイメージ

保険給付と要介護状態区分のイメージ



介護予防のメニュー

新予防給付のメニューには、デイサービスやホームヘルプサービスなどの従来からのサービスについても、内容の見直しを行い盛り込むとともに、筋力向上トレーニングなどの新しいサービスも新たに盛り込む予定。
 (1)既存サービスの評価・検証
 ⇒生活機能の維持・向上を積極的に目指す観点から内容・提供方法を見直し
訪問介護(ホームヘルプ)
通所介護(デイサービス)
通所リハビリテーション
福祉用具貸与
訪問看護
ショートステイ
グループホーム 等
→ 内容・提供方法を見直し
  ※単に生活機能を低下させるような家事代行型の訪問介護については、期間、必要性、提供方法等を見直し

 (2)新たなサービスの導入
 ⇒効果が明らかなサービスについて市町村モデル事業を踏まえ取り入れ
筋力向上
栄養改善
口腔機能向上
→
新たにメニュー化
既存サービスの中でも実施
  ※認知症(痴呆)予防、うつ予防、閉じこもり予防を地域支援事業において実施



施設給付の見直し

 施設における食費、居住費用は在宅と同様、保険外(利用者負担)とする
〈居住費用〉 個室:減価償却費+光熱水費相当
 多床室:光熱水費相当
〈食費〉 食材料費+調理コスト相当
 低所得者対策
  ・市町村民税非課税の世帯には、負担の軽減措置(介護保険制度で補足給付)
  ・基礎年金以下の層には特に配慮

施設給付の見直しの図



○ 諸外国の介護施設では、食費、居住費は自己負担が原則


  ドイツ イギリス フランス スウェーデン アメリカ
利用者負担 食費・居住費用、給付限度額を超える部分は、自己負担が原則(※)

低所得者については、州の社会扶助(公費)が支給される。
施設入所については、一定以上の所得・資産を有する者は全額自己負担。低所得者については、サービスを要する費用の全部又は一部を地方自治体が負担。

在宅については地方自治体により異なる。
施設における食費・居住費用は自己負担が原則

低所得者については社会扶助から支給。
施設における食費・居住費用は自己負担が原則。低所得者には家賃補助等を支給。 メディケアでは一定期間しか給付されず期間経過後は全額自己負担

自己負担できないと認められる場合はメディケイドで対応。

(※) 徴収額は施設により区々であるが900〜1,400ユーロ(1ユーロ=130円で12万〜18万円程度)



居住費用、食費の見直しに伴う利用者負担の変化

特別養護老人ホームの入所者における利用者負担の変化
(単位 万円/月)
特別養護老人ホームの入所者における利用者負担の変化の図
注1)表中の()内は、ユニット型の個室の場合
注2)要介護5・甲地のケース
注3)改正後の1割負担については現行の介護報酬を基に機械的に試算したものである。
注4)「例」には、収入が年金のみで他に課税されるべき収入がないケースを記載。



新たなサービス体系の確立
(地域密着型サービスの創設)

新たなサービス体系の確立の図



地域密着型サービスの創設

要介護者の住み慣れた地域での生活を支えるため、身近な市町村で提供されることが適当なサービス類型(=地域密着型サービス)を創設する。

地域密着型サービスの創設の図



地域再生のための新たな介護・福祉基盤の整備

地域再生のための新たな介護・福祉基盤の整備の図



有料老人ホームの見直し
−入居者の保護を目的とした定義等の見直し−

<現行の定義等>
常時10人以上の老人を入所させ、食事の提供その他日常生活上必要な便宜を供与することを目的とする施設で老人福祉施設でないもの
都道府県への事前届出が義務
都道府県は調査権を持ち、入居者の処遇に問題があるとき等は改善命令等の措置
→
見直し内容

<定義>

人数要件の廃止
提供サービス要件の見直し
→食事の提供のほか、介護の提供等を行う施設も対象

<入居者保護の充実>

帳簿保存、情報開示義務化
倒産等の場合に備えた
一時金保全措置の義務化
都道府県の立入検査権付与改善命令の際の公表
↑
<現状と課題>
入居者保護の必要性に人数による相違はない
外食・配食産業の進展により、食事の提供の外部化が相当程度可能
あえて定義にあてはまらないよう、食事を提供せず、介護の提供は行う事業者が存在
一時金について、使途に関する情報や倒産等の場合の備えが不足



ケアマネジメントの見直しの全体像

基本的な考え方: 「ケアマネジメントの徹底」
→ (1)包括的・継続的マネジメント  (2)ケアマネジメントの公正・中立  を確立

ケアマネジメントの見直しの全体像の図



要介護認定の見直し

 現行制度においては、市町村は指定居宅介護支援事業者や介護保険施設に、認定調査を委託することができることとなっており、新規申請の約5割、更新申請の約6割が委託となっている。
 委託による調査は、認定調査員研修を終了した介護支援専門員等が行うこととなっている。
 認定結果(平均要介護度)について、認定調査の委託を行った場合とそうでない場合を比較すると、施設の場合には、委託を行った方が平均要介護度が高くなる傾向が見られる。

【認定調査の委託率】
 ・ 新規申請・・・46%
 ・ 更新申請・・・59%

【調査種別毎の要介護認定結果(新規、更新申請)】
調査種別毎の要介護認定結果(新規、更新申請)のグラフ

↓

【見直しの方向性】
 委託調査の適正化
 (申請者の入所している施設への委託の禁止等)

 代行申請の適正化
 (初回認定時の代行申請の範囲の限定等)



被保険者・受給者の範囲
ー社会保障審議会介護保険部会意見(平成16年12月10日)より要約ー

○介護保険制度を普遍的な制度へと見直すことについて
 介護保険制度の将来的な在り方としては、制度の普遍化の方向を目指すべきであるという意見が多数
 一方、被保険者・受給者の範囲の拡大については、極めて慎重に対処すべきであるという意見があった

○今後の進め方
 政府の基本方針においては、社会保障制度全般について一体的な見直しを開始し、平成17年度及び平成18年度の2年間を目途に結論を得ることとされている
 介護保険制度の普遍化に関しては、社会保障制度の一体的見直しの中で、その可否を含め国民的な合意形成や具体的な制度改革案についてできる限り速やかに検討を進め結論を得ることが求められる。



財政試算

第1号保険料(全国平均・各期平均1人当たり月額)の見通し−ごく粗い試算−

第1号保険料(全国平均・各期平均1人当たり月額)の見通し−ごく粗い試算−のグラフ



介護給付費の見通し(各期平均・年額)−ごく粗い試算−

介護給付費の見通し(各期平均・年額)−ごく粗い試算−のグラフ



2.平成17年度の施策の展開

 ○介護給付の適正化の推進について
  ◇ 来年度予算(案)においては、依然として急増する介護給付費に対応する必要な予算の確保を行ったところである。一方、一部の保険者(市町村等)においては、既に第2期事業運営期間において介護サービス利用増に対する懸念が発生しているところが見受けられる。

  ◇ このような状況を踏まえ、制度の持続性の観点から、昨年10月から実施している「介護給付適正化推進運動」については、サービス利用の適正確保と保険者の保険財政の安定化を念頭において進められることが必要である。
 このため、保険者における正確な介護サービス利用の状況把握をはじめ、事業者からの介護報酬の請求状況の検証、不必要なサービス利用の抑制とともに真に自立支援に効果のあるサービス利用への重点化など、サービスの質の向上・給付費の適正化の両面にわたる実効性のある事業の実施を図っていただきたい。

  ◇ 老健局では一昨年2月に「介護給付適正化本部」を設置し、各種施策の推進を図っているところであり、さらに昨年2月からは、各都道府県国民健康保険団体連合会の審査支払システムにより、保険者等が要介護認定者や事業者等に関する詳細な情報を入手することができるようになったことから、引き続き各保険者がこれらの情報を積極的に活用して効率的、効果的な給付の適正化に取り組むよう配意願いたい。
 併せて、国民健康保険団体連合会が行っている苦情処理業務を活用し、事業者等に関する情報の収集・提供を通じて、都道府県、保険者における給付適正化の取組みを支援しており、今後とも、より一層の連携強化を図っていただきたい。


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