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水道課

1. 水道施策の推進

(1)  今後の水道施設整備の基本的考え方
 全国の水道普及率は約97%に達し、水道は国民生活の質の向上や経済活動に直結する基盤施設として必要不可欠なものとなっている。
 しかしその一方で、水道原水の悪化に伴う異臭味、消毒副生成物の有害性、塩素耐性を持つ新たな病原性微生物問題への対応や地震あるいは渇水に強い水道を構築するなど、次世代に継承するにふさわしい質の高い水道として整備することが要請されている。
 平成17年度予算案における水道施設整備費は、他府省計上分を含めて、1,233億円(対前年度比92.6%)を確保し、簡易水道施設整備においては、「水道未普及地域解消事業」、「地方の生活基盤となる簡易水道の整備・近代化」、上水道施設整備では、「安全で安心できる生活を支える水道の整備」、「水道の広域化・運営基盤の強化、災害対策等の充実」をより一層促進するため、事業の一層の効率化に努めるとともに、緊急性の高い事業に予算配分の重点化を行ったところである。
 また、簡易水道再編事業の促進に向けて、遠隔監視システムの整備や、耐塩素性病原性微生物対策として、ろ過施設の整備に代替して開発する水源の整備、更に、水道原水の水質改善のために必要な高度浄水施設に代替して設置されるバイパス管等の整備や、災害対策の充実に向けて、災害時に給水優先度の特に高い重要給水拠点施設(基幹病院など)への配水を確保するための、耐震機能を有する配水管の整備を補助対象に加えること等を通じて事業の推進を図ることとしたところである。
 ついては、都道府県において、これらの補助事業の積極的な活用を図るとともに、水道整備の課題を踏まえた基本構想及び広域的水道整備計画の策定・改定などによって、計画的な水道整備の推進が行われるよう水道事業者に対する指導等に努められたい。
 また、昨年発生した新潟県中越地震や各地に見られた台風、豪雨等の災害による被害を踏まえ、緊急時給水拠点確保、水道広域化施設整備等の国庫補助制度を活用しつつ、震災時の広域的応急対策計画の策定、水道施設の耐震化の計画的・効率的実施等について水道事業者等を指導されたい。
 地震・渇水対策を推進するため、引き続き利用者への節水PR、漏水防止、広域化を促進するほか、事業計画の認可等に際し、水資源開発の適正な規模についての検討をされたい。

(2)  平成17年度予算(案)の概要

  ○  政策の目標
安全で良質な水道水の安定供給
水道広域化及び統合化の推進
水道の運営基盤の強化

  ○  内容

 (1)  水道施設の整備(公共事業関係)
1,233億円(他府省計上分を含む。)
(単位:百万円)
区分 平成16年度
予算額
平成17年度
予算額(案)
対前年度
増△減額
対前年度
比率(%)
水道施設整備費 133,138 123,286 △9,852 92.6
   (簡易水道) (36,658) (34,823) (△1,835) (95.0)
   (上水道) (96,480) (88,463) (△8,017) (91.7)
  厚生労働省計上分 96,375 90,038 △6,337 93.4
 (簡易水道) (30,052) (29,449) (△603) (98.0)
 (上水道) (66,323) (60,589) (△5,734) (91.4)
他府省計上分 36,763 33,248 △3,515 90.4
 (簡易水道) (6,606) (5,374) (△1,232) (81.3)
 (上水道) (30,157) (27,874) (△2,283) (92.4)

 [国庫補助制度の拡充](平成17年度予算(案)に新たに計上したもの)

  ○ 簡易水道等施設整備

ア.  簡易水道の統合再編事業において、経営の一元化、管理の一体化等を図る場合の遠隔監視システムの整備を補助対象に加える。

イ.  生活基盤近代化事業において、クリプトスポリジウム対策としてろ過施設の整備に代替して開発する水源施設の整備を補助対象に加える。

  ○ 水道水源開発等施設整備

ア.  安全で清浄な水道原水を確保するためのバイパス管、伏流水取水などの施設の整備を補助対象に加える。

イ.  基幹病院など災害時において給水優先度の特に高い施設への配水を確保するための耐震機能を有する配水管の整備を補助対象に加える。

 (2)  水道ビジョンの推進等(非公共事業関係)
133百万円
 今後のわが国の水道のあるべき姿とその実現方策を明らかにした「水道ビジョン」に基づき、経営一体化、管理一体化等の「新たな概念の広域化」について検討し、「広域化計画策定指針」を作成するとともに、第三者への業務委託の導入、地方独立行政法人化など、地域の実情に応じた運営形態の最適化の推進手法を検討する。
 また、WHO(世界保健機関)が提唱した、水源から給水栓までの水質を一貫して管理するための「水安全計画」について、わが国の水道における計画策定のためのガイドラインを作成するとともに、小規模水道における管理水準の向上策の検討及び給水装置の劣化状況等その実態調査・解析と対応策の検討を行う。

 (3)  事業内容の概要

 ○  地方の生活基盤となる簡易水道の整備近代化
30,025百万円 → 29,440百万円

  (ア)  水道未普及地域解消事業の促進等
 水道未普及地域の解消を推進することにより、安全な水道水をどこでも誰でも利用できるよう簡易水道等の整備を促進する。

  (イ)  簡易水道再編事業の促進
 維持管理面、経営面等で脆弱性を有している簡易水道等の統合を促進する。

  (ウ)  生活基盤近代化事業の着実な推進
 水洗化、シャワーの普及等、現代の生活水準に対応できる簡易水道の整備を推進するとともに安全で安定的な水道水の確保を図る。

 ○  安全で安心できる生活を支える水道の整備
11,184百万円 → 10,315百万円

  (ア)  高度浄水施設等整備事業の積極的な推進
 異臭味被害、化学物質等による水源汚染、耐塩素性病原微生物による健康被害等を防止し、より安全で安心して飲用できる水道水を供給するため、高度浄水施設の整備を推進する。

  (イ)  水質検査施設等整備
 水道水質管理体制の強化を図るため、共同水質検査センター等の水質検査機器整備や水道原水の水質監視を行うための水道水源自動監視施設の整備を促進する。

  (ウ)  浄水場排水処理施設整備
 浄水場から排出される水による河川、湖沼等の水質汚濁を防止し、浄水場のろ過池洗浄水、沈澱池排水の処理に必要な施設の整備を推進する。


 ○  水道の広域化・運営基盤の強化、災害対策等の充実
55,075百万円 → 50,213百万円

  (ア)  水道水源開発施設整備
 渇水時においても国民の生活を守ることができるよう、安定的な水道水源の確保のための事業を促進する。

  (イ)  水道広域化施設整備
 水道水の需要の増加及び地震、渇水等災害に対応するため、水源を安定的に確保し、広域的な水運用及び水道施設の効率的利用を図るため、広域化施設の整備を促進する。

  (ウ)  ライフライン機能強化等事業
(1)  地震の被害が予想される地域において、配水管等管路を利用した貯留施設及び緊急遮断弁の整備推進を図る。
(2)  配水池容量の増大及び連絡管の整備を促進する。
(3)  水道管路からの漏水や折損事故等に対処するため老朽管等の更新を促進する。


 ○  水道施設整備事業調査費
64百万円 → 61百万円

   大規模地震等に対する水道における防災、災害対策として、広域的な連携による対応が求められている。
 このため、複数の水道事業者からなる連絡協議会の設置などにより、災害による断減水被害を最小化するための方策を検討し、地震等による施設被害の防止、必要な応急給水の確保、迅速な復旧のためのマニュアルの作成を行う。


 ○  産炭地域事業補助率差額
27百万円 → 9百万円


2. 水道水質管理について

(1) 新しい水道水質基準の円滑な施行について
 (1) 新しい水質基準について
 厚生科学審議会の答申を受け、平成15年5月30日に水質基準に関する省令を改正し(平成15年厚生労働省令第101号)、従前の46項目から9項目削除、13項目(トリハロメタン以外のハロ酢酸等の消毒副生成物や水道水のカビ臭の原因物質など)追加により、新たな水質基準50項目を設定し、平成16年4月1日から施行した。各都道府県においては、改めて、管内の水道事業者等への指導監督等により水質基準の円滑な施行について格段の配慮をお願いする。
 また、水質基準については常に最新の知見に照らして改正していくべきとの答申を受け、厚生労働省において専門家会議を設置して、必要な知見の収集及び調査研究を実施し、引き続き検討を進めているので、留意願いたい。
 なお、昨年、臭素酸が不純物として含まれる次亜塩素酸ナトリウムを浄水処理過程で使用したことにより、臭素酸の水質基準を大幅に超過する事案が発生しており、次亜塩素酸ナトリウム等水道用薬品の使用に当たっては、購入時の臭素酸濃度や貯蔵管理等に留意することが必要であることから、貴管内の水道事業者等への周知・指導等について格段の配慮をお願いする。

 (2) 水質管理目標設定項目等
 平成15年10月10日の健康局長通知及び水道課長通知において、水道水質管理上留意すべき項目として水質管理目標設定項目を示しているが、各都道府県等においても、その策定する水道水質管理計画に位置付ける等、水質管理目標設定項目の知見の集積を図り、水道水質管理に活用できるように配慮されたい。
 なお、この水質管理目標設定項目の中には、水道利用者の関心の高い農薬類も位置付けられている。厚生労働省では、農林水産省の担当部局に対し、水道事業者等の農薬類に関する情報収集への協力について関係者への周知を依頼したところである。これら農薬類については、地域の使用実態を考慮し、優先的に水質検査を行うこととされていることから、各都道府県等においても、水道事業者等において地域の実情に応じて適正な検査がなされるよう格段の配慮をお願いする。
 この他、毒性評価が定まらない、水道水中での検出実態が明らかでないなど、水質基準又は水質管理目標設定項目に分類できなかった項目は要検討項目としている。国においても今後必要な情報・知見の収集に努めていくこととしており、都道府県においても情報・知見の収集にご協力いただきたい。

 (3) 水質検査方法について
 水質基準項目の検査方法については、公定法化を図るべきとの厚生科学審議会答申を受け、平成15年7月22日に水質基準に関する省令の規定に基づき厚生労働大臣の定める方法(平成15年厚生労働省告示第261号)を公布したほか、水質管理目標設定項目の検査方法についても、同年10月10日の水道課長通知により示した。
 また、水質検査技術の革新等に柔軟に対応できるようにするため、公定法と同等以上と認められる検査方法については、公定法と認める柔軟なシステムを工夫すべきとの答申を受け、厚生労働省に常設の専門家会議を設置し、逐次、公定法の見直しを図っていくこととしているので、留意願いたい。

 (4) 水質検査計画の策定について
 平成15年9月29日に改正された水道法施行規則(平成16年4月1日施行)では、水質検査においては各水道事業者等が過去の検査結果や原水の水質に関する状況に応じて、合理的な範囲で検査の回数を減じるか、又は省略を行うことができることとされ、水質検査の回数及び省略が可能な場合並びに項目ごとの採水場所についても規定している。
 また、水道事業者、水道用水供給事業者及び専用水道の設置者は、水質検査を実施するに当たり、毎事業年度の開始前に水質検査計画を策定することとされており、水道事業者及び水道用水供給事業者にあっては、さらに需要者に対して情報提供を行うことを規定している。水質検査計画は水道法第20条第1項の規定に基づく水質検査を対象としたものであるが、水質管理目標設定項目及び原水に係る水質検査についても、必要に応じて水質検査計画に位置付けることが望ましい。
 なお、水質検査計画の策定は平成17年度に実施する検査から義務付けられるため、水道事業者等は今年度中に水質検査計画を策定しなければならない。各都道府県等においては、管内の水道事業者、水道用水供給事業者及び専用水道の設置者への周知・指導等について格段の配慮をお願いする。

(2)  飲料水健康危機管理について
 最近においても、水源の水質汚染が原因となり給水停止に至る水質事故が発生しているところである。このため、水道水質の異常時における迅速かつ的確な対応のため、緊急時連絡体制の整備、水質異常時の対応指針の策定等が重要であるが、平成11年3月に「水質汚染事故に係る危機管理実施要領策定マニュアル」を配布しているので参考とされたい。

(3)  クリプトスポリジウム等耐塩素性病原微生物対策の強化について
 平成13年11月に「水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針」を改正しており、所要の対策が的確に講じられるよう水道事業者等への指導・支援をお願いする。特に、昨年8月、水道施設が原因はないものの、水系感染と考えられるクリプトスポリジウム症の集団感染事例が発生したところであり、水道におけるクリプトスポリジウム等耐塩素性病原微生物対策について改めて徹底をお願いする。
 なお、平成15年4月の厚生科学審議会答申ではクリプトスポリジウム対策の更なる強化が提言されているところであり、現在、提言の趣旨を踏まえ、円滑な施行のための制度のあり方等について検討を進めており、今後の動向について留意願いたい。

(4)  飲用井戸の衛生確保のための対策の充実について
 茨城県神栖町で発生したヒ素による飲用井戸の汚染事例をはじめ、多種類にわたる有害物質等による地下水の汚染や水道法等の規制対象とならない水道の不適切な管理が見られること等を踏まえ、平成16年1月に「飲用井戸等衛生対策要領」を一部改正し、共同住宅等に係る一般飲用井戸(専ら自己の住宅に供給するものを除く。)においても水質検査を行うこと等、飲用井戸等の衛生対策の徹底を図ることにつき特段の配慮をお願いしたところである。
 また、水道ビジョンにも小規模施設の管理の充実が掲げられたところであり、飲用井戸等の衛生対策については更なる向上を図ることが重要であるので、各都道府県等におかれてもその衛生確保について対応をお願いするとともに、毒ガス弾等による被害の未然防止のための施策の推進のため協力をお願いしたい。また、貴管内の水道事業者等の水道水の水質管理についても同様の配慮をお願いする。


3. 水道計画指導について

(1)  水道事業者等への指導監督について
 水道事業者等への指導監督については、平成12年度からは国と都道府県それぞれが、水道事業の規模等に応じてその業務を実施しているところである。
 厚生労働省においては、平成13年度から厚生労働大臣認可に係る水道事業者等を対象に立入検査を実施しており、今年度は500事業(478事業者)の内112事業(109事業者)に対して、水道の管理体制の強化等に重点を置いて立入検査を実施したところである。(平成16年12月末現在)
 水質管理の複雑化・高度化、施設の老朽化やその更新、環境対策、テロ対策など、水道事業に要求される技術水準、施設水準、安全水準は非常に高くなっていることを踏まえ、より信頼される水道事業が進められるよう水道事業者等に対する指導監督体制の一層の充実を図っていくこととしており、都道府県においても管内の事業体の指導監督の充実をお願いする。
 また、平成14年度より、厚生労働大臣認可に係る水道事業等の水道技術管理者を対象として技術的な研修を実施しており、今後とも引き続き実施することとしている。
 さらに、国と都道府県それぞれの所管する事務の遂行のために必要な情報交換等についても重要と考えているので、引き続き各都道府県の協力をお願いしたい。

(2)  水資源開発基本計画について
 水資源開発促進法に基づく水資源開発基本計画(フルプラン)については、国土交通省水資源部が中心となり、水利用の安定性の確保、既存施設の有効活用等について十分な検討を行い、水需給上の必要性等を吟味した上で順次改定されることとなっており、吉野川水系について平成14年2月、木曽川水系について平成16年6月に全部変更されたのに引き続き、現在、利根川・荒川、豊川、淀川、筑後川水系について、国土審議会水資源開発分科会に各水系毎の部会が設置され審議されている。
 関係都府県においては、計画改定に必要な水の需給想定調査等についての協力をよろしくお願いする。

(3)  用途間転用等の水資源の有効活用について
 平成13年7月、総務省行政評価局より厚生労働省に対し、地域における利水関係者等間の情報の共有化による水の用途間転用の円滑な推進を図るため、補助に係る水資源開発等施設の水源の利用状況も踏まえた水利使用に関する情報交換の推進等、必要な条件整備を図るよう勧告がなされた。この勧告の趣旨を踏まえ、「健全な水循環系構築に関する関係省庁連絡会議」(厚生労働省ほか関係4省で構成)の場を活用するなどにより、水利使用に関する情報交換を推進している。
 具体的な転用事例としては、平成14年度には霞ヶ浦開発事業に係る茨城県の工業用水から水道用水への転用が実現し、平成15年度には、大阪臨海工業用水の一部を大阪府水道用水へ転用するため、正蓮寺利水施設事業等の施設管理規程に関して水量の変更等に係る手続きを実施したところである。
 関係都道府県においても、用途間転用等水資源の有効活用について検討するとともに、水利使用に関する利水関係者間の情報交換、関係者への情報提供をよろしくお願いする。


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