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2. 食品に関する基準の策定について

(1) 食品添加物の指定等について
 (1)  国際的に安全性が確認され、かつ、汎用されている添加物の指定について
 平成14年7月、諸外国で食塩に固結防止の目的で食品添加物として使用されるフェロシアン化物(当時、未指定添加物)が含まれた食品に対する食品衛生法上の対応を検討する中で、添加物の規制に関し、国際的に安全性評価が確立して広く使用されているものについては、国際的な整合性を図る方向で、我が国の指定制度のあり方についても見直しを行ったところである。
 具体的には、(1)FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)で一定の範囲内で安全性が確認されており、かつ、(2)米国及びEU諸国等で使用が広く認められていて、国際的に必要性が高いと考えられる添加物については、企業からの要請がなくとも、指定に向け、個別品目毎に安全性及び必要性を検討していくとの方針が、平成14年7月26日の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会において了承された。
 上記選定基準を満たすものについて調査したところ、香料を除き、46品目あり、これらにつき優先順位を付した上で情報収集等を行っている。
 これらのうち、ステアリン酸カルシウムについては、平成16年12月に食品添加物として指定をしたところである。また、亜酸化窒素及びヒドロキシプロピルセルロースについては、食品安全委員会の食品健康影響評価を終えて、現在、薬事・食品衛生審議会において検討を進めているところである。さらに、平成15年10月にポリソルベート20、同60、同65、同80、ナイシン、ナタマイシンの新規指定について、平成16年11月に11種類の加工デンプンの新規指定について、食品安全委員会へ食品健康影響評価について依頼をしているところである。
 この結果、平成17年1月現在、指定済みの1品目、審議会での検討中の1品目、食品安全委員会でのリスク評価中の18品目の合わせて20品目となり、対象46品目の食品添加物のうちほぼ半数について対応したことになる。今後とも、資料の収集を図り、食品安全委員会への評価依頼など諸手続を進めていくこととしている。
 香料については、平成15年11月、香料安全性評価法検討会(座長:井上 達 国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター長)において、「国際的に汎用されている香料の安全性評価方法について」の案が取りまとめられ、これに基づいて、優先順位を付した上で資料を収集し取りまとめ、食品安全委員会へ食品健康影響評価を依頼している。
 イソブタノール、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン及び2-エチル-3,6-ジメチルピラジンの混合物並びに2,3,5,6-テトラメチルピラジンの3品目については、平成16年12月に食品添加物として指定したところである。また、プロパノールとイソプロパノールについては、食品安全委員会の食品健康影響評価を終えて、現在、薬事・食品衛生審議会において検討を進めているところである。さらに、平成15年11月にアセトアルデヒドの新規指定について、平成16年11月にイソアミルアルコール、2,3,5-トリメチルピラジン及びアミルアルコールの新規指定について食品安全委員会へ食品健康影響評価を依頼したところである。

 (2) その他の食品添加物の新規指定等について
 グルコン酸亜鉛及びグルコン酸銅について、平成16年12月に食品、添加物等の規格基準(昭和34年12月28日厚生省告示第370号。以下「規格基準告示」という。)に定められている使用基準を改正し、保健機能食品(特定保健用食品及び栄養機能食品)への使用を可能としたところである。また、亜塩素酸ナトリウムについて、食品安全委員会の食品健康影響評価を終えて、現在、薬事・食品衛生審議会において使用基準改正の検討を進めているところである。このほか、平成16年10月に酢酸α-トコフェロールの新規指定について、食品安全委員会に食品健康影響評価を依頼したところである。
 今後とも、「食品添加物の指定及び使用基準改正に関する指針」(平成8年3月22日衛化第29号厚生省生活衛生局長通知)等に基づき、食品安全委員会の意見の聴取、薬事・食品衛生審議会における検討等を進めていくこととしている。

(2) 既存添加物の安全性確認について
   長い食経験等があり、安全性上問題があるとの情報もないこと等から、平成7年の食品衛生法改正時以降特例的に使用が認められている既存添加物については、速やかに安全性の確認を行うことが求められている。また、平成15年5月の同法改正において、安全性に問題があると判明した、又は既に使用実態のないことが判明した既存添加物については、既存添加物名簿からその名称を消除し、使用を禁止することができることとされた。これら既存添加物の安全性確認については、継続的に実施してきたところであるが、これまで以上に迅速かつ計画的に進めていくこととしている。
 平成16年7月には、国立医薬品食品衛生研究所で実施しているアカネ色素の発がん性試験において、腎臓に対し発がん性が認められたとの中間報告があり、これを受けて、食品安全委員会及び薬事・食品衛生審議会における評価を踏まえ、アカネ色素を既存添加物名簿から消除し、10月9日から適用されたところである。
 平成16年12月には、流通実態が認められない38品目の既存添加物を消除する既存添加物名簿の改正を行ったところである。この改正については、平成17年2月25日に適用されることから、関係事業者等への周知方よろしくお願いする。
 なお、平成15年度に、平成15年5月に可決・成立した改正食品衛生法に基づく消除予定添加物名簿の公示に先立ち、既存添加物の販売等の実態につき調査を実施したところ、販売等の実態があるとされた品目でもその後販売等の流通実態が確認できない品目があったことから、平成17年も同様の調査を実施することとしているので、関係者の御協力をお願いする。

(3) 食品添加物の一日摂取量調査について
   食品添加物の安全性確保対策の一環として、従来から市販食品の分析による食品添加物一日摂取量実態調査(国民健康・栄養調査(健康局において実施)を基礎とするマーケット・バスケット調査方式)を実施してきたところであり、食品添加物の摂取量は、安全性の観点から問題ないことが報告されている。平成17年度においても実施することとしているので、引き続き関係者の御協力をお願いする。

(4) 食品添加物公定書策定について
   食品衛生法第13条に規定する食品添加物公定書については、食品添加物に関する製造・品質管理技術の進歩及び試験法の発達等に対応するため、従来から、おおむね5年ごとに見直しを行い、公定書の改訂を実施しているところである。現在の第7版食品添加物公定書は、平成11年度にまとめられている。
 平成15年8月より学識経験者による第8版食品添加物公定書作成検討会を開催し、公定書に収載する事項について取りまとめているところであり、平成17年度に第8版食品添加物公定書を告示するため、必要な手続きを進めることとしている。

(5) 農薬等の残留基準の設定について
 (1)  農薬等の残留基準の設定の現状について
 食品中に残留する農薬については、平成17年1月現在、244農薬について残留基準を設定している。また、食品中に残留する動物用医薬品及び飼料添加物については、31品目について残留基準を設定している。
 基準設定に当たっては、平成15年6月の農薬取締法等の改正により、農林水産省とより一層の連携を図り、農薬取締法に基づく登録等と同時に食品衛生法に基づく農薬、動物用医薬品及び飼料添加物(以下「農薬等」という。)の残留基準の設定(以下「同時設定」という。)を行っている。

 (2)  農薬等の残留基準に係る告示の形式について
 食品中に残留する農薬等の基準は、規格基準告示で定めているところであるが、ポジティブリスト制の導入や同時設定に伴い、平成16年9月2日に告示を改正し、これまでの食品毎に規定する形式を改め、農薬毎に規定する形式としたところである。
 併せて、残留農薬等の試験法については、科学の進展により見直されるものであること、また告示改正以前においても同等以上の性能を有する試験法の利用を認めていたことから、「不検出」とする場合を除き、告示で定める形式から、通知により定める形式に改めることとしたところである。

 (3)  ポジティブリスト制の施行準備について
 食品中に残留する農薬等については、平成15年5月に可決・成立した改正食品衛生法に基づき、ポジティブリスト制を法律公布後3年以内(平成18年5月まで)に導入することとしている。
 導入に当たっては、基準未設定の農薬等について国際基準等を参考に暫定基準を設定することとしており、平成15年10月28日に農薬等647品目について第1次案を示し、国内外から意見を求めたところである。また、平成16年8月20日には約670品目について第2次案を公表し、平成16年11月30日まで、第1次案と同様国内外から意見を求めるとともに、併せて、ポジティブリスト制導入に当たって定める必要のある「人の健康を損なうおそれのない量として厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定める量」(一律基準値)及び「人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質」(対象外物質)についても、現時点での知見を取りまとめ国内外から意見を求めたところである。今後、最終案を取りまとめ、所要の手続を経た後、遅くとも平成17年11月までに告示等を公布する予定である。
 また、暫定基準等の整備に併せ、平成15年度から地方公共団体関係者の御協力を得て、食品中に残留する農薬等の分析法の開発を実施しているところであり、引き続き御協力をお願いする。

(6) 農薬の一日摂取量調査等について
   国民が日常の食事を介してどの程度の農薬を摂取しているかを把握するため、従来より、厚生労働省からの委託事業として、都道府県及び保健所設置市の協力を得て、残留農薬の一日摂取量調査(国民健康・栄養調査を基礎とするマーケットバスケット調査方式)を実施しているところである。
 この調査は、実際の食生活における農薬の摂取量を把握するものであり、食品の安全性を確保する上で重要である。特に平成16年度からの3年間は、ポジティブリスト制施行後に行われる暫定基準の見直しに資する極めて重要な資料として、暫定基準を設定する農薬を対象に品目を増やして、広く調査を実施していくこととしている。
 調査には多くの地方公共団体の御協力が必要であるので、地方衛生研究所における業務計画等を調整していただき、平成17年度においては、平成16年度以上に、多くの地方公共団体が参画していただけるよう一層の御協力をお願いする。
 また、地方公共団体において実施されている残留農薬検査結果については、検疫所の検査結果等と合わせて取りまとめ、毎年度公表しているので、今後とも引き続き検査結果の集計資料の提供について御協力をお願いする。

(7) 水銀を含有する魚介類等の摂食に関する注意事項について
   近年、国際的にメチル水銀の胎児期暴露における影響について評価が行われ、暫定的耐容週間摂取量(PTWI)を見直すとともに、妊婦等に対し食事指導が行われている。
 我が国においても、平成14年度に各都道府県等において実施された魚介類等に含まれる水銀の量に関する調査結果等を踏まえ、平成15年6月に薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品・毒性合同部会において検討がなされ、妊娠している方や妊娠している可能性のある方を対象に「水銀を含有する魚介類等の摂食に関する注意事項」が取りまとめられ、注意事項を正確に御理解いただくためのQ&Aと併せて、各都道府県等に通知するとともに、ホームページ上に掲載したところである。
 また、魚介類等の水銀濃度や摂食状況等の把握を厚生労働科学研究等により継続して行ってきたこと、国際専門家会議(JECFA)において、平成15年6月に従来のPTWI3.3μg/kg/週が1.6μg/kg/週に変更されたことなどを踏まえ、平成16年7月に食品安全委員会に食品健康影響評価を依頼するとともに、注意事項の見直しについて薬事・食品衛生審議会においても並行して議論していただいているところである。

(8) 米等のカドミウムに関する規格基準について
   食品中のカドミウムについては、平成15年7月に、食品安全委員会へ「食品からのカドミウム摂取の現状に係る安全性確保について」の評価依頼を行い、現在、同委員会において食品健康影響評価が行われているところである。今後、同委員会の健康影響評価結果を受けて、食品中のカドミウムに係る規格基準について、薬事・食品衛生審議会において議論を行う予定である。
 なお、国際的には、FAO/WHO合同食品規格計画(コーデックス委員会)の食品添加物・汚染物質部会(CCFAC)において、平成10年に、食品中のカドミウム最大基準値原案(精米については0.2ppm)が提案された。
 平成15年3月のCCFACにおいて、精米(0.2ppm)をステップ5に進めること等の決定がなされたが、平成15年6月末のコーデックス総会においては、一部の食品についてステップを進めるのは不適切とされ、基準値原案(精米(0.2ppm)等)は全ての食品についてステップ3として各国へコメントを依頼することとなった。
 平成16年3月のCCFACにおいて、精米の基準値案0.2ppmを0.4ppmに変更し、小麦、野菜等の基準値原案とともにステップ5として総会に諮ることが合意されたが、平成16年6月に開催されたコーデックス総会での検討の結果、精米(0.4ppm)についてはステップ3としてCCFACで更に検討することとされたところである。
 今後、平成17年2月のJECFAでカドミウムの暴露評価が行われ、その結果がCCFACに報告されることとなっている。

  JECFA(FAO/WHO食品添加物専門家委員会:Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives)】
   食品添加物、農薬、残留動物用医薬品、汚染物質の1日許容摂取量/1日耐容摂取量の検討等を行っている国際専門家機関。JECFAの評価は、コーデックスにおいて作成される食品添加物等の基準設定に反映されている。

ステップ(コーデックス規格作成の手続き)について】
   コーデックス規格(カドミウムの場合は最大基準値)の作成手続きは、以下に示す8つの段階から構成されている。
 ステップ1  総会が規格作成を決定
 ステップ2  事務局が規格原案の手配
 ステップ3  提案された規格原案について各国のコメントを要請
 ステップ4  部会が規格原案を検討
 ステップ5  規格原案について各国のコメントを要請。そのコメントに基づき、総会が規格原案の採択を検討
 ステップ6  規格案について各国のコメントを要請
 ステップ7  部会が規格案を検討
 ステップ8  規格案について各国のコメントを要請。そのコメントに基づき、総会が規格案を検討し、コーデックス規格として採択

(9) 食品用器具・容器包装及び乳幼児向けおもちゃの規格基準の改正について
   フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DEHP)については、平成14年8月に、溶出又は浸出して食品に混和するおそれがない場合を除き、油脂又は脂肪性食品を含有する食品に接触する器具・容器包装にフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DEHP)を含有するポリ塩化ビニルを用いてはならないこととする告示改正を行い、平成15年8月1日から適用したところであるので、引き続き関係営業者等への指導方、よろしくお願いする。
 また、おもちゃについても、平成14年8月に、おしゃぶり等乳幼児が口に接触することをその本質とする合成樹脂製のおもちゃには、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DEHP)及びフタル酸ジイソノニル(DINP)を含有するポリ塩化ビニルを用いてはならず、また、合成樹脂製のおもちゃには、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)を含有するポリ塩化ビニルを用いてはならないこととする告示改正を行い、平成15年8月1日から適用したところであるので、引き続き関係営業者等への指導方よろしくお願いする。
 また、平成13年度から15年度にかけて行われた厚生労働科学研究を受けて、食品用器具・容器包装等に関する試験法等の見直しを行うこととし、今後、必要な手続きを進めていく予定である。


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