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11. 麻薬・覚せい剤等対策

(1) 第三次覚せい剤乱用期と薬物乱用対策推進本部

現状

 ○  我が国における薬物事犯は、覚せい剤事犯が最も多く、その検挙者数は平成15年において14,797人(前年:16,964人)と依然高い水準で推移している。また、覚せい剤の大量押収も頻発するなど、依然として「第三次覚せい剤乱用期」の深刻な情勢が続いている。
 また、最近では、大麻事犯やMDMA等の錠剤型合成麻薬事犯の急増など、乱用薬物の多様化が進んでいる。

 ○  覚せい剤事犯における未成年の検挙者数は、平成15年は528人(前年:749人)、(うち、中学生16人、高校生36人)(前年:中学生44人、高校生66人)と、減少傾向にあるが依然として高い水準にあり、また、薬物の入手可能性等の社会環境は改善されておらず、青少年の薬物乱用状況は、依然として厳しい情勢にある。

覚せい剤事犯検挙者数の年次推移のグラフ
 ○  薬物乱用対策推進本部が平成15年7月に策定した「薬物乱用防止新五か年戦略」に基づき、関係省庁が連携し、各種の薬物乱用対策を進めており、厚生労働省においても、取締りの強化、啓発活動の充実、再乱用防止対策の推進、国際協力の推進などの各種施策の充実強化に努め、引き続き総合的に取り組んでいる。

 ○  また、政府の犯罪対策閣僚会議が平成15年12月に策定した「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」に基づき、誰もが安心して暮らせる安全な社会の実現のため、関係省庁が薬物犯罪を含む各種犯罪の予防、取締り等対策に取り組んでいる。

都道府県への要請

 ○  各都道府県に設置されている薬物乱用対策推進地方本部においても、国の取組を踏まえて、取締りの徹底、啓発活動の充実、再乱用防止対策の推進等、一層効果的
積極的な取組をお願いする。


(2) 麻薬・覚せい剤等の取締りと医療用麻薬等の適正使用の推進

現状

 ○  最近の薬物事犯の特徴は、従来の暴力団に加え、イラン人等外国人犯罪組織による組織的密売の増加や検挙者の国籍の多様化のほか、携帯電話やインターネットを用いた密売など、複雑かつ巧妙化している。

 ○  地方厚生局麻薬取締部においては、これら薬物密売組織や末端乱用者に対する徹底した取締りを行うため、平成16年度に東海北陸厚生局麻薬取締部及び九州厚生局麻薬取締部に新たに捜査第二課を設置し、麻薬取締官10名を増員した。
 また、平成17年度においては、インターネットを用いた薬物密売事犯に対応するため、全国の麻薬取締官14名を増員して、取締体制の更なる強化を図ることとしている。

 ○  病院・診療所及び薬局における向精神薬の盗難・所在不明事故件数は、平成15年は53件(前年:73件)であり、麻薬、向精神薬、覚せい剤原料等の製造業、卸売業者、医療施設、研究施設等に対する各都道府県の麻薬取締員等による立入検査等は、正規薬物の不正ルートへの横流れを防止する上で重要となっている。

都道府県への要請

 ○  各都道府県に置かれている麻薬取締員について、麻薬取扱者等への立入検査に加え、麻薬等事犯の取締りについても積極的な対応をお願いする。

 ○  麻薬取締官が行う犯罪捜査についても引き続き協力をお願いする。

 ○  都道府県の麻薬取締員等により実施されている薬局、医療機関等の麻薬取扱者等への指導監督にあたっては、一層の管理徹底の周知をお願いする。

 ○  薬剤師による医療用麻薬等の大量持ち出し、譲り渡し事件、看護師による自己施用事件など、医療関係者による事件も起きており、医療機関等への指導強化とともに、麻薬取締員による取締りの徹底についてあらためてお願いする。

 ○  (財)麻薬・覚せい剤乱用防止センターが各都道府県をはじめ関係団体の協力を得て、医療関係者や麻薬担当行政職員等を対象とする、がん疼痛緩和と医療用麻薬の適正使用推進のための講習会を各地で開催しているところであるが、引き続き関係団体への周知や担当者の積極的な参加をお願いする。


(3) 啓発活動の充実

現状

 ○  薬物乱用の多くは、薬物に対する正しい知識が不十分でその恐ろしさを知らないことに起因しており、特に青少年に対しては、できるだけ早い時期から薬物乱用防止に関する啓発を行うことが重要である。

 ○  「『ダメ。ゼッタイ。』普及運動」、「麻薬・覚せい剤乱用防止運動」の全国的な展開、薬物乱用防止キャラバンカー(8台)の学校、地域の場への派遣等を通じて、啓発活動の推進を図っている。
 また、地域の中心的な指導員を養成するための研修会の開催や講演等に活用できるCD−ROMの作成とともに、指導員が主体となった地域での対話集会の開催等を通じて、薬物乱用防止指導員による地域における啓発活動の一層の推進を図っている。

 ○  平成17年度より、近年、特に青少年によるMDMA等の錠剤型合成麻薬や大麻の乱用が問題となっていることに対応した啓発活動の強化を図ることとしている。

都道府県への要請

 ○  全国の各地域で、薬物乱用防止キャラバンカーや啓発用読本等の啓発資材を活用するとともに、薬物乱用防止指導員による活動や麻薬・覚せい剤乱用防止運動等の実施に当たり、効果的な啓発活動の取組をお願いする。

 ○  薬物乱用防止指導員に対する研修事業については、各都道府県における薬物乱用防止指導員の積極的な参加について、引き続きご協力をお願いする。


(4) 再乱用防止対策の充実

現状

 ○  薬物犯罪の大きな特徴は、再犯性が高いことであり、本人の再乱用を防止するのみならず、新たな薬物乱用者を作らないという意味においても、薬物依存の治療と社会復帰への取組を行い、再乱用の防止対策を充実することが必要である。

 ○  保健所の相談事業に加え、平成11年より、全国の精神保健福祉センターにおいて、(1)技術指導及び技術援助、(2)薬物関連問題に関する知識の普及、(3)薬物関連問題に関する家族教室の開催、(4)個別相談指導を行うことを内容とする「薬物関連問題相談事業」を実施している。

都道府県への要請

 ○  各都道府県及び薬物乱用対策推進地方本部におかれては、引き続き本事業の円滑な推進に努めるとともに、地方厚生局麻薬取締部、保健所、精神保健福祉センター医療機関、保護観察所、警察等の関係機関間における薬物乱用・依存に関する相談・指導業務ネットワークの整備・拡充をお願いする。


(5) 国際協力の推進

現状

 ○  「海外麻薬行政官研修」及び「開発途上国薬物乱用防止啓発活動研修」が開催されており、平成16年は東京都、大阪府に御協力をいただいたところ。

 ○  本年2月には、覚せい剤等の原料物質の輸出入管理の強化を図るため、昨年のフォローアップ及び情報の共有化のあり方等について、アジア地域の原料供給国及び米国関係機関、国連機関の担当者による国際フォーラムを日本で開催する予定である。


(6) 国の補助金等の整理及び合理化等(いわゆる三位一体の改革)について

 ○  いわゆる三位一体の改革の趣旨を踏まえ、地方6団体から提案された「麻薬取締員費交付金」及び「麻薬等対策推進費補助金」について、平成17年度から、廃止のうえ税源移譲することとなった。

 ○  しかしながら、これらの制度や事業は薬物対策の重要な柱であり、引き続き推進する必要があることから、都道府県におかれても、人員の確保や所要の予算確保について、ご配意願いたい。

 ○  厚生労働省としては、麻薬取締対策は、国と都道府県が緊密な連携の下で実施することが不可欠であることから、平成17年度予算において、新たに、都道府県の麻薬取締員に対する実務研修を実施し、薬物犯罪の取締り及び医療用麻薬等の正規流通に係る指導監督体制の充実を図ることとしている。

 ○  更に、薬物乱用に係る啓発活動については、全国的に一定レベルの水準で展開する必要があることから、平成17年度予算において、薬物乱用防止指導員の資質向上を図るための研修を実施する等、啓発活動の一層の推進を図ることとしている。

都道府県への要請

 ○  各都道府県におかれては、

麻薬取締対策として、
 ・ 麻薬取締員の人員確保及び旅費等の予算確保
 ・ 研修等への積極的な参加
薬物乱用防止対策として、
 ・ 麻薬中毒者相談員及び薬物乱用防止指導員の活動
 ・ 薬物関連相談事業の実施
のための予算確保

にご尽力いただき、引き続き、取締りの徹底や医療用麻薬の指導監督、麻薬中毒者 対策及び薬物乱用防止のための啓発活動の円滑な推進を図られ、薬物対策に遺漏な きを期すようお願いする。


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