ダイオキシン類による健康影響等の調査結果について
―大阪府豊能郡美化センター等廃棄物焼却施設関係労働者―
厚生労働省は、中央労働災害防止協会に「清掃作業従事者のダイオキシンばく露による健康影響に係る調査研究委員会（ダイオキシン健康影響調査委員会：委員長 高田 勗）」を設置し、廃棄物焼却施設労働者の健康影響について調査を実施している。
今般、平成1６年度に実施された大阪府豊能郡美化センター関係労働者の追跡調査及び全国４施設の廃棄物焼却施設労働者の血液中ダイオキシン類濃度の分析結果等を報告する。また、平成１６年度においては、ＲＤＦ製造・焼却施設２施設の気中ダイオキシン類の実態調査も実施したので、併せてその結果も報告する。
| 1 | .豊能郡美化センター関係労働者の血液中ダイオキシン類濃度は、調査を始めた平成１０年度の値から年々減少してきており、平成1６年度調査の値は平成１０年度調査の値の40.7%となっている。 |
| 2 | .全国４施設の廃棄物焼却施設労働者66名の血液中ダイオキシン類濃度は平均「15.8pg-TEQ/g脂肪」で、平成12年度に環境省が行った一般住民の測定値と同程度であった。 |
| 3 | .医師による皮膚視診等の結果からは、豊能郡美化センター関係労働者及び全国４施設の廃棄物焼却施設労働者のいずれもダイオキシン類のばく露によると疑われる所見は認められなかった。 |
| 4 | .ＲＤＦ製造・焼却施設２施設７単位作業場所のうち、６単位作業場所が第1管理区域であり、１単位作業場所が第３管理区域であったが、当該第３管理区域の作業場所は通常労働者が立ち入る場所ではない。 |
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（参考）
| ○ | ダイオキシン類とは、ポリ塩化ジベンゾ‐パラ‐ジオキシン（PCDDs）、ポリ塩化ジベンゾフラン（PCDFs）及びコプラナーPCBをいう。 |
| ○ | 1pg（ピコグラム）とは、1グラムの1兆分の1の質量である。 |
| ○ | TEQとは、測定されたダイオキシン類の量を、最も毒性が強い2,3,7,8-TCDD（四塩化ジベンゾ‐パラ‐ジオキシン）の毒性に換算して表したものである。 |
| ○ | ＲＤＦ（Refuse Derived Fuel）とは、ごみ固形化燃料をいう。 |
| ○ | 第1管理区域とは、当該単位作業場所のほとんどの場所で気中ダイオキシン類の濃度が、濃度基準（2.5pg-TEQ／m3）を超えない状態の区域をいい、第３管理区域とは当該単位作業場所の気中ダイオキシン類濃度の平均が濃度基準を超える状態の区域をいう。 |
照会先：労働基準局安全衛生部化学物質対策課（内線：５５１５，５５１６）
（別添）
調査結果概要
| １ | 豊能郡美化センター関係労働者の追跡調査（平成16年度）
| （１ | ）調査対象者
豊能郡美化センター関係労働者のうち、焼却炉関連設備内に立ち入って作業に従事する者（13名）及び焼却炉関連設備内作業の支援は行うが焼却炉関連設備内には立ち入らない者（12名）のうち本人が希望した者15名を調査対象者とした。これは、平成10年度の調査でこれらの作業従事労働者の血液中ダイオキシン類濃度が高かったためである。
なお、焼却炉関連設備とは、焼却炉、電気集じん機、湿式洗煙塔等をいう。 |
| （２ | ）血液中ダイオキシン類濃度
調査対象者15名の血液中ダイオキシン類濃度は、平均107.3pg-TEQ/g脂肪（最小値29.8 pg-TEQ/g脂肪、最大値440.1 pg-TEQ/g脂肪）であった。平成10年度から継続して調査対象となっている13名の血液中ダイオキシン類濃度の平均値は、平成10年度277.7 pg-TEQ/g脂肪から年々減少してきており、平成16年度調査の値は113.1pg-TEQ/g脂肪で、平成10年度調査の値の40.7%となっている。
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| （３ | ）医師による問診及び皮膚視診
平成10年度から継続して実施している医師による問診や、皮膚視診等の結果からは、ダイオキシン類のばく露によると疑われる所見を有する者は認められなかった。 |
| （４ | ）血液・血清生化学検査等
血液・血清生化学検査及び免疫機能検査の結果、血糖等、基準値の範囲を超える検査項目が認められたが、血液中ダイオキシン類濃度との関連からは、ダイオキシン類ばく露による影響とは判断できなかった。 |
| （５ | ）まとめ
今回の調査の結果からは、ダイオキシン類ばく露によると思われる健康影響は認められなかった。 |
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| ２ | 全国の廃棄物焼却施設労働者の健康影響調査（平成16年度）
| （１ | ）調査対象者
一般廃棄物焼却施設２施設及び産業廃棄物焼却施設２施設の計４施設の労働者66名を調査対象とした。 |
| （２ | ）血液中ダイオキシン類濃度
廃棄物焼却施設労働者66名の施設ごとの血液中ダイオキシン類濃度は、平均15.8pg-TEQ/g脂肪（最小値4.9 pg-TEQ/g脂肪、最大値36.5 pg-TEQ/g脂肪）で、平成12年度に環境省が行った調査の一般住民の測定値と同程度であった。
全国４施設の施設ごとの労働者の血液中ダイオキシン類濃度（単位 pg-TEQ/g脂肪）
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対象者数 |
検査項目 |
平均値 |
最小値 |
最大値 |
| 施設A |
20名 |
ダイオキシン類合計 |
14.9 |
7.3 |
25.6 |
| PCDDs+PCDFs |
8.5 |
4.0 |
18.9 |
| (2,3,7,8-TCDD) |
(0.6) |
(0.5) |
(1.1) |
| コプラナーPCB |
6.4 |
2.2 |
14.6 |
| 施設B |
18名 |
ダイオキシン類合計 |
19.5 |
4.9 |
36.5 |
| PCDDs+PCDFs |
11.4 |
3.7 |
21.0 |
| (2,3,7,8-TCDD) |
(0.9) |
(0.5) |
(1.8) |
| コプラナーPCB |
8.1 |
1.3 |
16.3 |
| 施設C |
16名 |
ダイオキシン類合計 |
15.4 |
5.6 |
30.6 |
| PCDDs+PCDFs |
10.8 |
4.6 |
22.5 |
| (2,3,7,8-TCDD) |
(1.0) |
(0.5) |
(2.3) |
| コプラナーPCB |
4.6 |
1.0 |
8.0 |
| 施設D |
12名 |
ダイオキシン類合計 |
12.2 |
6.7 |
26.0 |
| PCDDs+PCDFs |
8.4 |
4.5 |
15.2 |
| (2,3,7,8-TCDD) |
(0.5) |
(0.5) |
(0.5) |
| コプラナーPCB |
3.9 |
1.6 |
10.8 |
| 全体 |
66名 |
ダイオキシン類合計 |
15.8 |
4.9 |
36.5 |
| PCDDs+PCDFs |
9.8 |
3.7 |
22.5 |
| (2,3,7,8-TCDD) |
(0.8) |
(0.5) |
(2.3) |
| コプラナーPCB |
6.0 |
1.0 |
16.3 |
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| * | ダイオキシン類合計の平均値は、PCDDs、PCDFs及びコプラナーPCBそれぞれの平均値の和である。 |
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| （３ | ）医師による問診及び皮膚視診
労災病院の医師による問診（既往歴、現病歴、自覚症状等）や、皮膚視診等の結果からは、ダイオキシン類のばく露によると疑われる所見を有する者は認められなかった。 |
| （４ | ）血液・血清生化学検査等
血液・血清生化学検査及び免疫機能検査の各項目と血液中ダイオキシン類濃度との関連を統計的に解析したところ、明らかな関係は認められなかった。 |
| （５ | ）まとめ
本調査の結果、調査対象者に焼却施設内作業に基づくダイオキシン類ばく露によると思われる健康影響は認められなかった。 |
（参考）
| ○ | 皮膚視診については、労災病院の皮膚科医師により次の点を中心に診察を行った。
| (1) | 過去の事例からダイオキシンによる皮膚症状として予測される「ざ瘡様皮疹」の有無 |
| (2) | 対象者から訴えのあった皮膚症状 |
| (3) | 露出部分に見られた皮膚症状 |
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| ○ | 血液・血清生化学検査については、以下の25項目について行った。
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赤血球数（万/ul）、白血球数（/ul）、ヘモグロビン（g/dl）、ヘマトクリット値（%）、血小板数（万/ul）、総蛋白(g/dl)、アルブミン(g/dl)、総ビリルビン(mg/dl)、GOT(IU/l)、GPT(IU/l)、乳酸脱水素酵素(IU/l)、アルカリフォスファターゼ(IU/l)、γ-GTP(IU/l)、ロイシンアミノペプチダーゼ(IU/l)、クレアチンキナーゼ(IU/l)、アミラーゼ(IU/l)、総コレステロール(mg/dl)、HDLコレステロール(mg/dl)、中性脂肪(mg/dl)、血清鉄(μg/dl)、尿素窒素(mg/dl)、クレアチニン(mg/dl)、尿酸(mg/dl)、血糖(mg/dl)、HbA1c(%)
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| ○ | 免疫機能検査については、リンパ球を分離し、PHAによるリンパ球幼若化検査、CON-Aによるリンパ球幼若化検査、NK細胞活性検査、モノクローナル抗体によるリンパ球表面マーカーの解析（CD3,CD4,CD8,CD4/CD8比、CD19,CD56）を実施した。
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| ○ | 一般住民の血液中ダイオキシン類濃度の測定結果例
| 大阪府能勢町地域及び埼玉県地域住民の血液中ダイオキシン類濃度 |
| （単位 pg-TEQ/g脂肪） |
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大阪府能勢町地域 |
埼玉県地域 |
| |
施設周辺地区 |
対照地区 |
施設周辺地区１ |
施設周辺地区２ |
対照地区 |
| 12年度 |
28 |
33 |
23 |
24 |
22 |
| 11年度（参考） |
29 |
30 |
27 |
27 |
- |
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| 平成12年度環境省調査より |
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| ３ | ＲＤＦ製造・焼却施設の気中ダイオキシン類の実態調査（平成１６年度）
| （１ | ）調査対象施設
ＲＤＦ製造・焼却施設２施設７単位を調査対象とした。 |
| （２ | ）調査時期
調査は２００４年１１月から２００５年１月に実施した。 |
| （３ | ）調査結果
作業環境測定を行った結果、第１管理区域が６単位作業場所、第３管理区域が１単位作業場所であった。
ＲＤＦ製造・焼却施設の作業環境測定結果
| 施設 |
対象作業場 |
A測定
点数 |
幾何平均値
pgTEQ/m3 |
最小
pgTEQ/m3 |
最大
pgTEQ/m3 |
幾何
標準
偏差
σ1 |
B測定値
pgTEQ/m3 |
管理
区域 |
施設
Ａ |
RDF製造工程
5階主反応機フロアー |
9 |
0.045 |
0.040 |
0.053 |
1.10 |
‐ |
１ |
RDF製造工程
2階成形機フロアー |
15 |
0.030 |
0.029 |
0.034 |
1.07 |
0.034 |
1 |
RDF焼却工程
RDF焚きボイラー |
‐ |
‐ |
‐ |
‐ |
‐ |
0.35 |
1 |
RDF焼却工程
灰溶融処理 |
12 |
0.55 |
0.55 |
0.55 |
1.00 |
11 |
3 |
施設
Ｂ |
RDF製造工程
乾燥作業場所 |
13 |
0.033 |
0.013 |
0.12 |
1.82 |
‐ |
1 |
RDF製造工程
RDF投入作業場所 |
15 |
0.009 |
0.004 |
0.022 |
1.65 |
‐ |
1 |
RDF焼却工程
飛灰固化作業場所 |
10 |
0.028 |
0.021 |
0.038 |
1.23 |
0.025 |
1 |
このうち、第３管理区域となったＲＤＦ焼却工程の灰溶融処理で扱う飛灰は、測定の結果、7.1ngTEQ/g-dryでありダイオキシン濃度が高かったことから、これを処理する過程でダイオキシン類が作業環境空気中に発散し、気中ダイオキシン類濃度が高くなったことが考えられるが、いずれの作業場所も、制御室で主に監視作業を行っており、通常労働者が立ち入る場所ではない。 |
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