平成18年度診療報酬改定について



平成17年11月30日
中央社会保険医療協議会



 本協議会は、平成17年11月2日の調査実施小委員会並びに同月9日、16日、25日及び30日の総会の計5回にわたり、医療経済実態調査の結果、平成16年度診療報酬改定以降の賃金・物価の動向、薬価調査及び材料価格調査の結果等を踏まえつつ、平成18年度診療報酬改定について審議を行ってきたところであるが、その経過を以下のとおり整理したので、報告する。

1 医療経済実態調査の結果について

 ○ 本協議会は、医業経営の実態等を明らかにし、診療報酬に関する基礎資料を整備することを目的として、第15回医療経済実態調査を実施した。
 今回は電子的な方法による回答を可能としたことなどにより、低下してきた回答率を引き上げることができたものであるが、信頼度の高い調査との位置付けを高める観点から、今後とも一層の工夫が必要である。
 また、例年、調査の結果は11月下旬から12月上旬に公表され、12月中旬から下旬にかけての診療報酬改定の改定率の決定に当たっての議論の基礎資料とされてきたが、本年は、事務局の協力も得て、11月上旬にその速報結果を公表することとした。
 公表時期を早められたことにより、その結果の分析及び医業経営の実態に対する評価に係る議論に十分な時間をかけることができたとともに、今後の医療経済実態調査の実施に当たっての課題についても、一定の整理ができたものと考えている。

 ○ 支払側委員は、医療経済実態調査の結果について、医療機関の種別ごとにばらつきはあるが、全体としてみれば比較的堅調である、との意見であった。
 また、分析的にみれば、医療機関の種別や診療科の別ごとに収支差額の水準に格差が見られ、全体としての限られた原資の中で、如何にメリハリを付けた診療報酬改定を行っていくかが課題である、との意見であった。
 このほか、支払側委員からは、やはり医師の所得は高いのではないか、との指摘があり、この点について検証するためにも、診療側の協力も得つつ、所得を調査することも含めて検討するべきである、との意見もあった。

 ○ 診療側委員は、医療経済実態調査の結果について、単に医業収支差額のみに着目するのではなく、収入・費用の増減にも着目するべきである、との意見であった。特に個人立の医療機関においては、収入が大幅に減少したので、費用を大幅に節約している、との主張であった。
 また、医療経済実態調査は、医療機関の種別ごとの収支状況の変化を分析するためのものであって、収益構造の異なる個人立の医療機関と法人立の医療機関とを比較することはできない、との意見であった。
 このほか、診療側委員からは、今回調査の対象となった診療実日数は前回調査と比べて1日多いため、収入をマイナス補正すべきであるとの意見もあった。

 ○ 医療経済実態調査の結果の分析に当たっては、医業活動本体に係る収支の要素、投資に係る収支の要素及びそれぞれを如何なる財務手段で賄うかという要素の3つの要素があることに留意すべきである。個人立の医療機関の医業収支差額には、開設者の報酬以外に、退職給付引当金や、建物・設備について現存物の価値以上の改善を行うための内部資金も含まれてくるが、一方で、そのような投資的経費が適正であるかどうかについては、本調査が医療機関等の収支状況を中心に調査するものであり、資産やキャッシュフローまで把握するものでないことにかんがみると、分析に一定の限界があることにも留意が必要である。

 ○ また、今回の医療経済実態調査においては、様々な新たな試みを行っている。例えば、一般病院の医療従事者の平均給与月額については、今回調査で初めて、医師・歯科医師の別を調査したほか、賞与に係る調査も行った。給与の比較に当たっては、年齢による違いの要素も考慮しなければならず、医療従事者の給与の実態を如何に把握していくかは、継続的検討課題である。
 さらに、個人立の医療機関等の開設者の報酬は収支差額の中に含まれるものであるが、収支差額そのものが報酬であるとの誤解を解く上からも、調査項目を追加することも検討課題と考える。
 このほか、今回調査の新たな試みとして、借入金の状況の年間での把握の試みや定点観測的手法を用いた調査の試行等を行ったが、今後、長期借入金及び短期借入金に区分した当年借入金等についても精査するなど、更なる検証を行い、次回以降の調査設計に役立てていくことが必要である。

2 平成16年度診療報酬改定以降の賃金・物価の動向について

 ○ 平成16年度診療報酬改定以降の賃金・物価の動向は、人事院勧告による賃金の動向・消費者物価指数による物価の動向とも、平成16年度から平成17年度の2年間の増減率は、±0%であった。

3 薬価調査及び材料価格調査の結果について

 ○ 薬価調査の速報値として、薬価の平均乖離率は約8.0%であったことが、 材料価格調査の速報値として、特定保険医療材料価格の平均乖離率は約11.4%であったことが、それぞれ報告された。

4 平成18年度診療報酬改定について

 ○ 少子高齢化と経済の低成長が続く中で、国民の健康を守るため、将来にわたって国民皆保険制度を堅持していくことが必要不可欠であるという基本的認識、国民にとって分かりやすい診療報酬となるよう議論を進めるべきことについては、意見の一致を見た。しかし、如何に平成18年度診療報酬改定に臨むべきであるかについては、以下のような意見の違いがあった。

 ○ 支払側委員は、医療保険制度を巡る厳しい状況、社会経済等の動向、医療経済実態調査に基づく医療機関の収支状況、患者負担の軽減等とともに、将来にわたる制度の持続性も踏まえ、診療報酬引下げを断行し、メリハリの効いた財源配分・是正を行うべきであるとの意見であった。

 ○ 診療側委員は、良質かつ適切な医療を安定的に提供する体制を維持するためには、医業経営基盤の安定が不可欠であり、医療の安全確保、医療の質の確保、小児医療・産科医療等への対応等を保証するための診療報酬財源として、少なくとも3%以上が確保されるべきであるとの意見であった。

 ○ 本協議会としては、厚生労働大臣が本報告の趣旨を十分に踏まえ、平成 18年度予算編成に当たって、平成18年度診療報酬改定に係る改定率の設定について、適切に対応することを求めるものである。


【照会先】
 厚生労働省保険局医療課企画法令第1係
 代表 03−5253−1111(内線3288)

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