アスベスト問題への当面の対応


平成17年7月29日
アスベスト問題に関する関係閣僚による会合

1.対応策

(1)今後の被害を拡大しないための対応

  ○建築物の解体時等の飛散予防の徹底(厚生労働省、国土交通省、環境省)
 建築物の解体現場、解体後の廃棄物(廃アスベスト(石 綿))等について、アスベストの飛散を予防するための措置の 徹底を図る。

ア.建築物の解体現場等における措置
 ・建築物の解体作業等におけるアスベストばく露防止措置、大気環境への飛散防止措置を徹底する。(7月12日及び15日、都道府県労働局、関係業界等に通知)
 ・大気環境への飛散防止措置の対象となる解体・補修作業の規模要件等を撤廃する。(来年2月までに関係規定を改正)
 ・建築物の解体現場に対する重点的な監督指導等を実施する。(重点指導月間8〜10月)
 ・アスベストばく露防止対策に関する相談窓口を設置する。(7月8日、建設業労働災害防止協会に設置。)
 ・併せて、建設業等における関係法令の遵守を徹底する。(7月14日以降、順次関係業界に通知)
 ・都道府県を通じて、解体工事等を行う者へアスベストの取扱いについて注意喚起を行う。(7月14日、都道府県に通知)

イ.解体後の廃棄物(廃アスベスト)に対する措置
 ・廃アスベスト等の適正処理の徹底を指示する。(7月12日、都道府県等に通知)
 ・廃アスベスト等の直近の排出量調査を実施する。(7月25日、調査を開始。10月末までに調査結果公表)
 ・産業廃棄物処理業者に対し、規制の周知徹底、作業従事者の安全確保徹底について注意を喚起する。(7月28日、業界団体等に通知)
 ・廃アスベスト等の適正処理を確保するため、関係する産業廃棄物処理業者に対する立入検査の強化、不適正処理事例への迅速な対策を指示する。(7月28日、都道府県等に通知)
 ・解体作業の発生箇所等情報が、関係部門より廃棄物処理業者に確実に伝達されることを確保するための方策について検討する。(8月までに検討)
 ・併せて、建設業等における関係法令の遵守を徹底する。(7月14日以降、順次関係業界に通知)

ウ.製造工場等における措置
 ・製造工場等におけるアスベストばく露防止措置、大気環境への飛散防止措置を徹底する。(7月12日及び15日、都道府県、都道府県労働局、関係業界等に通知)
 ・大気汚染防止法の規制対象事業所の名称及び場所について集計・公表する。(8月までに公表)
 ・アスベストばく露防止対策に関する相談窓口を設置する。(7月8日、中央労働災害防止協会に設置。)

  ○製造・新規使用等の早期の全面禁止(厚生労働省、経済産業省)
 既にアスベストの製造等を原則として禁止しているところであるが、例外的に用いられているアスベスト含有製品について、遅くとも平成20年までに全面禁止を達成するため代替化を促進するとともに、全面禁止の前倒しも含め、さらに早期の代替化を検討する。

 ・7月21日、「石綿の代替化に関する緊急会議」を開催し、関係20団体に代替化の促進を要請した。
 ・7月26日、業界団体に対し、在庫品の販売を直ちに禁止するよう要請した。
 ・アスベスト含有製品の適正な表示及び文書交付の徹底を改めて要請する。(7月中に要請)
 ・8月に代替化の促進のための検討会を発足させ、早期代替化に向けた対策を早急に確立するとともに、所要の代替化促進策を検討する。
 ・アスベストの代替化の推進により影響を受ける中小企業者に対して政府系三金融機関、信用保証協会において相談体制を整備し、状況に応じて事業転換等の支援に適切に対応する。

  ○学校等におけるアスベストばく露防止対策(文部科学省、消防庁)
ア.学校等における対策(文部科学省)
 ・学校施設等に吹き付けられたアスベストの適切な維持管理と飛散予防について、教職員及び児童生徒等に周知徹底する。(7月29日、都道府県教育委員会等に通知)
 ・学校で使用されているアスベスト含有製品(アルコールランプ使用時に用いるアスベスト付き金網、学校給食調理時に使用する耐熱手袋、その他実験機器等)を、アスベストを含有しない製品に代替するよう努める旨を周知する。(8月上旬を目途に、都道府県教育委員会等に通知)

イ.消防隊員に関する対策(消防庁)
 ・アスベストを使用している建築物において消防活動を行う場合の消防隊員のアスベストばく露防止のため、防塵マスク等の着用等を徹底する。(7月27日、都道府県に通知)


(2)国民の有する不安への対応

  ○国民への積極的な情報提供(総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、環境省)
 アスベストによる健康被害の状況把握について、労災認定に係る個別事業場名の情報開示、製造・使用企業別に実施された調査(アスベスト既製造企業、造船等運輸関連企業)の結果公表を通じて、積極的な情報提供に努める。(別紙1「アスベストによる健康被害に関する実態把握について」参照)

  ○労働者、退職者、家族、周辺住民を対象とした健康相談窓口の開設等(厚生労働省、環境省)
ア.健康相談窓口の設置等(厚生労働省、環境省)
 ・7月8日、保健所、産業保健推進センター、労災病院等に労働者等に対する健康相談窓口を開設した。
 ・7月12日、保健所において環境経由の健康被害の相談も受け付けるよう通知した。
 ・7月15日、保健所に対して、健康相談の参考となるQ&Aを作成し送付した。

.アスベストによる健康被害を発生させている事業場の周辺住民の不安解消のため、専門家による臨時の相談窓口を各地に開設する。

.アスベスト関連疾患の診断・治療の中核となる医療機関として労災病院の診療体制の充実を図るため、診断・治療体制が整備された労災病院に「石綿疾患センター」(仮称)を設置するとともに、アスベスト関連疾患の症例の収集、他の医療機関から診療相談等他の医療機関の支援を行う。(9月までに実施)

.専門家チームにより、リスク評価に基づく健診対象やアスベストばく露者に対する健康管理の方法の検討を行う。

  ○国民の一般的不安・疑問に応えるためのQ&Aの作成・公表(文部科学省、厚生労働省、国土交通省、環境省等)
 ・7月29日、Q&Aを関係省庁ホームページに掲載する。


(3)過去の被害に対する対応

  ○労災補償制度等の周知徹底等(厚生労働省、国土交通省、消防庁等)
ア.アスベスト関連事業場で働いていた人への対応(厚生労働省)
 ・健康診断の受診を広く呼びかけるとともに、アスベストによる疾病に関する「労災補償」及び「健康管理手帳」の周知徹底を図る。(7月15日、都道府県、関係業界等に通知。)
 ・厚生労働省の通知を受け、国土交通省から関係業界等に対し労災補償制度、健康管理手帳制度等の周知を実施する。(7月22日以降、順次関係業界等に通知)
 ・アスベストによる疾病の労災請求についてはアスベストばく露等の事実確認が困難な場合があることから、事実認定に係る事務処理の具体的な方法を指示し、事務処理の迅速化、適正化を図る。(7月27日、都道府県労働局に通知)
 ・健康管理手帳の要件等アスベスト作業従事者の健康管理の在り方について、8月から研究班を組織し早急に検討を行う。

イ.船員であった人への対応(厚生労働省、国土交通省)
 ・健康診断の受診を呼びかけるとともに、アスベストによる疾病に関する「船員保険の職務上の給付」の周知徹底を図る。(7月20日、関係業界等に通知)
 ・健康管理制度(無料健康診断を含む)を導入する。(平成17年中に実施)

ウ.消防職員への対応(消防庁)
 ・消防活動の際にアスベストばく露の可能性があることについて周知を図る。(7月中に通知)

  ○労災補償を受けずに死亡した労働者、家族及び周辺住民の被害への対応については、十分な実態把握を進めつつ、幅広く検討して、9月までに結論を得る。(厚生労働省、環境省等)
 ・7月12日、都道府県等に対し、保健所等における健康相談事例の情報収集と報告を依頼した。(随時、集約を行う)
 ・周辺住民のアスベストの健康影響に関する分析等を行うため、アスベストの健康影響に関する検討会を開催する。(第1回:7月26日)。


(4)政府の過去の対応の検証

  ○政府の過去の対応について、アスベストに関連するこれまでの通知・通達(別紙2「アスベストに関する過去の各省庁の通知・通達の一覧」参照)、行政文書、研究結果等についての関係省庁での調査を踏まえ、8月までに検証する。(厚生労働省、環境省等)


2.実態把握の強化

  ○吹付けアスベスト使用実態調査等の実施・早期公表(国土交通省、総務省、文部科学省、厚生労働省等)
 公共住宅、学校施設等、病院、その他公共建築物、民間建築物における吹付けアスベストの使用実態等について、調査を実施し、早期に公表する。
 調査結果については、解体作業への指導等に有効に活用するため、各地方公共団体において関係部局で情報共有に努める。

ア.民間建築物、公共住宅等(国土交通省)
 ・7月7日以降、順次都道府県等を通じ調査を開始した。(9月までに調査結果公表)

イ.国の機関の建築物(各府省(国土交通省とりまとめ))
 ・7月29日、各府省において調査を開始した。(9月までに調査結果公表)

ウ.学校施設等、病院・社会福祉施設等(文部科学省、厚生労働省)
 ・学校施設等につき、調査を行う。(7月29日、都道府県教育委員会等に対し通知。11月までに調査結果公表。9月までに調査の状況について中間経過を報告)
 ・病院・社会福祉施設等につき、8月上旬までに調査を開始する。(11月までに調査結果公表)

エ.その他の公共建築物(関係省庁)
 ・地方公共団体所有の施設における使用実態調査を実施する。(11月までに調査結果公表)

  ○事業場への立入調査(厚生労働省)
 ・健康被害が発生したことがある事業場への立入調査等を実施する。(7月15日、都道府県労働局に通知)

  ○アスベスト製品製造事業所周辺地域等における大気中アスベスト濃度の実測調査を行う。(環境省)

  ○アスベストによる中皮腫、発がんリスク等に関する研究(厚生労働省)
 中皮腫の実態調査にかかる研究、アスベストばく露に関連した職種別リスクに関する研究を実施する。

ア.中皮腫の実態調査に係る研究
 ・人口動態統計に登録されている中皮腫で死亡した878名(平成15年)や療養中の者について、職歴、初期症状、検査所見、確定診断方法、治療法、生存期間等に関する調査研究を実施する。(7月から実施)

イ.アスベストばく露に関連した職種別リスクに関する研究
 ・職場の健康診断で撮影した胸部レントゲン写真における胸膜プラークの有無について職業・職種別に検討すること等により、アスベストばく露のリスクについて検討を行う。(8月から実施)

ウ.労働者健康福祉機構における研究等
 ・独立行政法人労働者健康福祉機構は、上記ア、イの研究に協力するとともに、これまで全国の労災病院で診断・治療がなされたアスベストにばく露した者の肺がん及び悪性中皮腫の症例及び今後の症例を収集し、業務上のアスベストばく露との関連等について分析・研究を開始し、この後の適切な診断等に役立てる。(平成16年度研究計画策定、今年度より実施)

.国立がんセンターにおいて、中皮腫の早期診断や治療方法に関する研究に取り組む。

  ○都道府県・市町村における適切な情報把握を促進する。(関係省庁)


.引き続き各省が緊密に連携し、スピード感をもって対策を実施していくとともに、国民に対する情報提供に努める。


別紙1
別紙1−(1)
別紙1−(2) (PDF:89KB)
別紙1−(3) (PDF:86KB)
別紙2 (PDF:190KB)


アスベスト問題に関する関係閣僚による会合
厚生労働省:03−5253−1111(代表)
労働基準局安全衛生部化学物質対策課(内線5514)
労働基準局労災補償部補償課職業病認定対策室(内線5572)
健康局 地域保健室(内線2336,2395)
:1の(2)中の保健所における健康相談体制について



別紙1
アスベストによる健康被害に関する実態把握について


 アスベストによる健康被害について、現時点で関係省庁において把握した結果及び把握の状況は以下のとおりである。

.労災保険及び船員保険の認定状況からの把握〔厚生労働省〕
 アスベストばく露による肺がん及び中皮腫の労災認定件数(平成11年度〜16年度)は合計で534件、死亡者は404名(別紙1−(1)(7月29日公表))
 平成10年度以前についての追加調査を行い、8月中旬を目途に公表する。

.アスベスト関連業種についての個別企業に対する調査
(1) アスベスト含有製品の製造企業等89社からの情報提供により把握した結果は健康被害462名(うち死亡者は374名)〔経済産業省〕(別紙1−(2)(7月15日公表))
 なお、経済産業省の所管に係るその他の企業に対しても、業界団体等を通じてアスベストによる健康被害について自主的な情報開示を要請した。
(2) 造船関係業界団体の傘下会員(1986社)を対象として調査を行った結果、健康被害104名(うち死亡者は85名)。〔国土交通省〕(別紙1−(3)(7月21日公表))
(3) その他運輸関連の企業についての調査を実施中であり、8月を目途に取りまとめ、公表の予定。〔国土交通省〕

.周辺住民についての実態把握
 保健所等による健康相談を通じて周辺住民の健康被害に係る情報を集約している。(随時、集約を行う)〔環境省〕

.その他
 地方公務員のアスベストに係る公務災害補償の状況について、現在調査を実施しており、8月を目途に取りまとめ、公表の予定。〔総務省〕
 消防職員の健康被害について調査し、8月を目途に取りまとめ、公表の予定。〔消防庁〕



別紙1−(1)
平成17年7月29日
厚生労働省

労災保険及び船員保険における石綿ばく露による肺がん及び中皮腫の認定状況

 石綿ばく露による肺がん及び中皮腫の認定状況
 平成16年度までに肺がん353件、中皮腫495件、あわせて848件を認定。
 ここ数年の労災認定件数は急増しており、平成16年度は肺がん59件、中皮腫127件となっている。

 石綿ばく露による肺がん及び中皮腫の業種別認定件数(平成11〜16年度)
 平成11年度から16年度までに肺がん及び中皮腫の認定がなされた事業場の業種別の件数。
 労災認定件数が最も多い業種は、石綿パッキング、石綿スレート等の石綿製品を製造する窯業又は土石製品製造業であり、次いで建築事業、船舶製造(修理)業の順となっている。

業種名 肺がん 中皮腫
窯業又は土石製品製造業 116件(21.7%)  51件(29.5%)  65件(18.0%)
建築事業  98件(18.4%)  34件(19.7%)  64件(17.7%)
船舶製造(修理業を含む)  80件(15.0%)  20件(11.6%)  60件(16.6%)
全業種計 534件 173件 361件

 石綿ばく露による肺がん及び中皮腫の都道府県別認定件数(平成11〜16年度)
 平成11年度から16年度までに肺がん及び中皮腫の認定がなされた事業場の都道府県別の件数。
 労災認定件数の多い都道府県は、兵庫、神奈川、大阪、東京、岡山の順となっている。

局名 肺がん 中皮腫
兵庫  89件(16.7%)  17件( 9.8%)  72件(19.9%)
神奈川  81件(15.2%)  34件(19.7%)  47件(13.0%)
大阪  53件( 9.9%)  18件(10.4%)  35件( 9.7%)
東京  53件( 9.9%)  28件(16.2%)  25件( 6.9%)
岡山  41件( 7.7%)  15件( 8.7%)  26件( 7.2%)
全国計 534件 173件 361件

※ 船員保険分を含む

注:個別の事業場リストは省略



労災保険及び船員保険における石綿ばく露による肺がん及び中皮腫の認定等業種別件数
(平成11年度〜16年度)


  認定件数 肺がん 中皮腫
(うち死亡) (うち死亡) (うち死亡)
《労災保険》 531 401 173 123 358 278
 建設業 計 176 125 62 41 114 84
  建築事業(既設建築物設備工事業を除く)
98 67 34 22 64 45
  既設建築物設備工事業
41 26 18 11 23 15
  機械装置の組み立て据え付けの事業
3 3 0 0 3 3
 その他の建設事業 34 29 10 8 24 21
 製造業 計 312 245 94 70 218 175
  食料品製造業(たばこ等製造業を除く)
1 1 0 0 1 1
  繊維工業又は繊維製品製造業
3 2 1 1 2 1
 化学工業 3 2 1 1 2 1
  ガラス又はセメント製造業
4 4 1 1 3 3
  窯業又は土石製品製造業
116 93 51 42 65 51
  金属精錬業(非鉄金属精錬業を除く)
8 6 4 3 4 3
  金属材料品製造業(鋳物業を除く)
4 4 0 0 4 4
  金属製品製造業又は金属加工業(洋食器、刃物、手工具又は一般金物製造業及びメッキ業を除く)
16 11 3 2 13 9
  機械器具製造業(電気機械器具製造業、輸送用機械器具製造業、船舶製造又は修理業及び計量器、光学機械、時計製造業を除く)
14 12 4 2 10 10
  輸送用機械器具製造業(船舶製造を除く)
19 16 0 0 19 16
 船舶製造(修理業を含む) 80 60 20 11 60 49
 上記外の製造業 44 34 9 7 35 27
 交通運輸業 1 1 0 0 1 1
 貨物取扱業 9 6 2 2 7 4
  電気、ガス、水道又は熱供給の事業
2 2 1 1 1 1
  倉庫業、警備業、消毒及び害虫駆除の事業
又はゴルフ場の事業
1 1 0 0 1 1
 その他の各種事業 30 21 14 9 16 12
 
《船員保険》 3 3 0 0 3 3
 
《総計》 534 404 173 123 361 281



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