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9.児童福祉施設等の整備及び運営について

(1)児童福祉施設等の整備について

 ア  施設整備費については、特別養護老人ホーム等の介護関連施設、待機児童解消のための保育所、在宅福祉サービスの基盤となる障害者施設等の整備を推進するため、平成16年度予算(案)として1,304億円が計上され、これら施設の整備の着実な推進を図ることとしている。

 イ  国庫補助基準単価の改定
 国庫補助基準単価については、公共工事コスト縮減や建設単価の動向等を総合的に勘案し、公立文教施設並びにより▲3.5%の改定を行うこととし、平成16年度予算(案)から改定する。
 なお、平成15年5月に策定された「公共工事コスト構造改革プログラム」は、公共事業の全てのプロセスをコストの観点から見直すものとして、平成15年度から平成19年度までに15%のコスト縮減を目標とされているところであり、社会福祉施設整備費もこれに例外なく適用され、国及び各都道府県市における積極的な取組みが要請されているものであることから、各都道府県市はもちろんのこと、社会福祉法人等に対しても積極的な取組みについて指導願いたい。
 また、平成16年度事業分のうち、平成15年度以前からの継続事業については、当該事業開始年度の基準単価を適用することとするが、平成16年度以降に渡る継続事業については、該当年度の基準単価を適用することとするので了知願いたい。

 ウ  社会福祉施設等設備整備費
 社会福祉施設等設備整備費については、施設整備費と設備整備費の国庫補助申請事務の一本化により施設設置者等の事務負担軽減等を図るため、初度的な設備整備費を施設整備費に統合することとしたところである。
 統合にあたっては、施設と一体的に整備され、かつ、施設に固定されるもの及び設備を整備することにより施設の設計に影響を及ぼすものについて、施設整備に統合することとしたところである。

 エ 児童福祉施設等の整備について
 (ア )地域小規模児童養護施設の整備について
 被虐待児等を家庭的な環境の中で養護する地域小規模児童養護施設の運営費については平成12年度に創設されたが、今後、その推進を図るため、平成16年度から施設整備費の対象とするので、積極的な整備の推進に努められたい。
 なお、この場合の単価は、本体施設と同様の補助基準単価を適用する予定である。

 (イ )虐待を受けた児童の受入体制整備の推進について
 社会福祉法人が児童養護施設の改築等や情緒障害児短期治療施設、児童家庭支援センターの創設の際の費用を独立行政法人福祉医療機構から借り入れた場合の借入金の無利子及び融資率の特例措置については、虐待を受けた児童の受入体制を整備する観点から、引き続き平成16年度末まで実施することとなったので、管内市町村及び社会福祉法人への周知方をお願いしたい。

 オ  平成16年度の整備方針等
 社会福祉施設等施設整備費は、ここ数年、補正予算と当初予算により各都道府県からの整備需要に応じた予算額が確保されてきたところであるが、平成15年度においては政策的な観点からの補正予算が編成されなかったことから、平成16年度は、当初予算のみでの対応となり、さらに、平成15年度からの継続事業が予算額の約5割強を占めていることから、新規事業の国庫補助の採択は極めて厳しい状況にある。
 平成16年度においては、限られた財源を効率的かつ有効に活用する見地から、施設整備の事業内容及び整備計画等を十分精査した上で、真に必要な施設の整備に厳選願いたい。
 なお、原則として、次の内容のものを優先的に整備する。
 (ア )施設利用者に対するサービス提供にとどまらず、広く地域に開かれた在宅福祉の推進拠点としての機能を果たすもの。
 (イ )土地の有効活用等を図るもの。
 特に、都市部における用地取得の困難性から施設の高層化を図るなど、高齢者等が利用する社会福祉施設を中心市街地等の利用しやすい場所に整備を図るものや、文教施設等の利用も含め各種施設の合築、併設を行うもの。
 (ウ )過疎、山村、離島等において、適切な入所者処遇と効率的な施設運営が確保できるもの。
 (エ )地すべり防止危険か所等危険区域に所在する施設の移転改築整備を行うもの。
 (オ )木材の積極的活用を図るもの
 入所者等の精神的なゆとりと安らぎのある生活環境づくりや資源循環型社会の構築に寄与していくため、施設の木造化、内装等への木材の利用や木製品の利用等その積極的な活用を行うもの。

 また、「社会福祉法人の認可について」(平成12年12月1日障第890号、社援第2618号、老発第794号、児発第908号)、「社会福祉法人の認可等の適正化並びに社会福祉法人及び社会福祉施設に対する指導監督の徹底について」(平成13年7月23日雇児発第488号、社援発第1275号、老発第274号)等を踏まえ、協議対象施設の選定及び法人審査についても万全を期されたい。

 カ  社会福祉施設整備の再点検
 平成9年3月31日に取りまとめた「施設整備事業等の再点検のための調査委員会報告書」で明らかにしたとおり、補助金交付対象施設の明確化、各都道府県市が行う公共工事に準じた契約手続、一括下請負の禁止などを補助金の交付の条件とすることによる建設工事の適正化等の措置を講じ周知徹底を図っているところである。
各都道府県市におかれては、施設整備業務の更なる再点検、都道府県部課長会議等での指導の徹底や未然防止策の検討など再発防止対策に万全を期されたい。

 キ 社会福祉施設の防災対策について

 (ア )社会福祉施設の防災対策の取り組み
 社会福祉施設の防災対策については、入所者の安全確保の観点から、「社会福祉施設における防火安全対策の強化について」(昭和62年9月18日社施第107号社会局長、児童家庭局長連名通知)等の趣旨を踏まえ、管内社会福祉施設に対し指導を願っているところである。
 施設の運営上、入所者の安全確保は最重要課題であることを再認識いただき、スプリンクラー及び屋内消火栓設備の整備、夜間防火管理体制の整備など、施設における具体的・効果的な防災対策に万全を期すよう管内社会福祉施設に対する指導の一層の徹底に努められたい。
 施設整備費においても、入所者の防災対策及び処遇の改善の観点から、防災対策に配慮した整備を優先的に採択することとしており、また、防災対策に関する事業の拡充等を図っているので、積極的な活用を図られたい。

 (イ )地すべり防止区域等に所在する社会福祉施設の防災対策について
 地すべり防止区域等災害発生のおそれがあるとして指定されている地域等に所在している社会福祉施設については、「災害弱者関連施設に係る土砂災害対策の実施について」(平成11年1月29日社援第212号)をもって、関係省庁と連携して、社会福祉施設の立地状況を踏まえた総合的な土砂対策を講じるよう通知しているところであるが、各都道府県市におかれても、関係部局との連携を強化し、指定区域等に所在する社会福祉施設の防災対策に留意されたい。

 (ウ )被災施設の早期復旧
 社会福祉施設等災害復旧事務の取扱いについては、「社会福祉施設災害復旧費国庫負担(補助)の協議について」(平成7年3月30日社援施第76号社会・援護局長、老人保健福祉局長、児童家庭局長連名通知)に基づき、災害発生後速やかに社会・援護局福祉基盤課に報告をお願いするとともに、早期現状回復に努め、施設運営に支障が生じないよう指導の徹底をお願いしたい。

 ク  児童福祉施設等の木製遊具の整備について(林野庁との連携施策)
 林野庁との連携により、児童福祉施設等において、木材の特性を生かした遊具を整備する場合、木造公共施設整備事業(林野庁)により、補助対象とするので活用されたい。

(2)児童福祉施設等の運営について 

 ア  適正な運営管理の推進について
 児童福祉施設等の運営費の運用及び指導については、従来から適正な指導をお願いしているところであるが、運営費の不正使用などの不祥事により社会福祉施設に対する国民の信頼を損なうことのないよう、指導監査の結果を踏まえた運営の指導にあたる等、指導監査担当課等との連携を図り、適正な施設運営について引き続き指導を願いたい。

 イ  安全管理及び事故防止等について
 児童福祉施設等における児童の安全確保については、従来より種々ご尽力頂いているところであるが、昨年京都府などにおいて小学校などを狙った事件が発生したことに関連し、あらためて「児童福祉施設等における児童の安全確保・安全管理の一層の徹底について」(平成15年12月24日雇児総発第1224001号)によりお願いしたところである。ついては、事故の発生の予防や発生した場合の迅速的確な対応が図られるよう「児童福祉施設等における児童の安全の確保について」(平成13年6月15日雇児総発第402号)により、引き続き管内市町村及び児童福祉施設等に対する指導をお願いしたい。
 また、近年の公園等に設置される遊具での事故報告を踏まえ、「児童福祉施設等に設置している遊具での事故の調査結果について」(平成13年10月26日雇児総第49号)や「児童福祉施設等に設置している遊具の安全確保について」(平成14年3月18日雇児総発第0318001号)により、引き続き、遊具の安全点検の実施のため、公園等の関係機関との連携強化に努められたい。

 ウ  感染症予防対策について
 児童福祉施設等における感染症予防対策については、従来より特段の指導をお願いしているところであるが、今後も引き続き十分な対応を図ることが必要である。

 (ア )インフルエンザについては、近年、高齢者施設における集団感染、高齢者の死亡、乳幼児における脳炎、脳症の問題が指摘され、社会福祉施設においても十分な注意が必要であり、「社会福祉施設等における今冬のインフルエンザ総合対策の推進について」(平成15年10月28日事務連絡)により、防止対策について適切な指導を願いたい。
 また、「インフルエンザ施設内感染予防の手引き」(平成15年10月28日事務連絡の別添)を参考に各施設独自の院内感染防止の指針を事前に策定しておくことが重要であり、周知徹底を願いたい。

 (イ )レジオネラ症については、一部の入浴施設等において、集団感染により、多数の患者が生じており、社会福祉施設においても十分な衛生管理が必要であり、「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」(「社会福祉施設等におけるレジオネラ症防止対策の徹底について」平成15年7月25日社援基発第0725001号の別添)により、防止対策について適切な指導を願いたい。

 (ウ )食中毒については、集団給食施設等において、腸管出血性大腸菌O157等により多くの患者が生じており、社会福祉施設においても十分な衛生管理が必要であり、「大量調理施設衛生管理マニュアル」(「社会福祉施設における衛生管理について」平成9年3月31日社援施第65号の別添)により、防止対策について適切な指導を願いたい。

 (エ )なお、各社会福祉施設最低基準において、衛生管理と感染症予防について必要な規定の整備を行うため、児童福祉施設最低基準等の一部を改正する省令を公布、施行する予定でありますので、施行後適切な指導を願いたい。

 エ  入所児童等からの苦情への対応について
 児童福祉施設最低基準においては、その行った処遇に関する入所している児童及びその保護者等からの苦情に迅速かつ適正に対応するために、苦情を受け付けるための窓口を設置する等の必要な措置を講じなければならないとされており、これについては、平成13年度予算より、苦情解決対策のための経費として第三者委員会の開催に係る経費を措置費等に計上しているところである。
 今後ともその適正な実施について指導願いたい。

 オ  児童福祉行政指導監査について
 児童福祉行政指導監査については、児童の最善の利益や権利擁護を踏まえた処遇の確保、不詳事件及び保育料徴収事務などにおける不当事項等の未然防止の観点から、市町村の事務実施体制の整備、法人及び施設運営の適正化に十分配慮した指導監査を実施する等により、常時その実態を把握し、不詳事件等の発生防止に努められたい。

 カ  児童入所施設における暫定定員設定基準の変更と被虐待児受入加算について
 児童入所施設措置費等の定員払い制度は、定員に見合った事務費を支弁することで、適切な職員数の確保、広域・緊急入所の受け入れ体制の確保、入所児童数の変動に左右されない施設の安定的運営などを目的としている。
 ただし、定員と現員の開差の著しい施設についてはその是正を図るため、暫定的な定員を設定することになっており、その基準は昭和43年度に80%で導入された後、昭和47年度に83%に引き上げられ現在に至っている。
 今回、虐待を受けた児童の受入れやその負担に応じたケア体制の充実を図ることが急務であることから、暫定定員の設定基準を83%から90%に引き上げ、その財源を基に児童相談所で虐待を受けた児童として判定を受けた児童(母子生活支援施設については、福祉事務所による母子保護の実施理由が夫等からの暴力である世帯)の受入に応じて経費を加算する被虐待児受入加算の創設及び母子生活支援施設において障害のある親等処遇が困難な母子に対する支援を充実するための特別生活指導費加算について対象施設の拡大を図ることとしている。
 このため、これら加算の趣旨を踏まえ、都道府県等においては所要の予算の確保に努められたい。


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