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8.母子保健対策について

(1 )健やか親子21と今後の母子保健施策について
 健やか親子21について
 我が国の母子保健は、20世紀中の取組の成果として既に世界最高水準にあるが、妊産婦死亡や乳幼児の事故死など残された課題があり、思春期における健康問題や親子の心の問題の拡大、小児医療水準の確保など新たな課題も存在している。
 「健やか親子21」は、このような、子どもと親の健康の課題を整理し、21世紀の母子保健の取組の方向性と目標(値)を示して、関係機関・団体が一体となってこの目標達成に取り組む国民運動である。
 その達成のためには、国民をはじめ、教育・医療・保健・福祉・労働・警察等の関係者、関係機関・団体がそれぞれの立場から寄与することが重要である。
 具体的には、効果的な調整・推進を図り、関係機関・団体が一体となって各種取組を進められることを目的として、平成13年4月に「健やか親子21推進協議会」が設立され、平成16年1月現在で76団体が参加している。
 また、平成13年5月からホームページを開設し、健やか親子21に関する資料や母子保健・医療の関連データとともに、各地方公共団体・関係団体の取組状況などが掲載されている。更に、「健やか親子21」全国大会や公開シンポジウムなど普及啓発が行われている。
 なお、この国民運動計画の対象期間は、10年間とし、中間の年となる2005年(平成17年)に実施状況を評価し、必要な見直しを行うこととしている。

「健やか親子21」の概要
21世紀の母子保健の主たる課題を提示
  (1) 思春期の保健対策の強化と健康教育の推進
  (2) 妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保と不妊への支援
  (3) 小児保健医療水準を維持・向上させるための環境整備
  (4) 子どもの心の安らかな発達の促進と育児不安の軽減
各課題に関する2010年の目標(値)を提示
関係機関・団体等による国民運動の展開方法を具体的に提示

 次世代育成支援対策推進法に基づく地域行動計画の策定について
 昨年7月に成立した次世代育成支援対策推進法に基づき、都道府県及び市町村は、次世代育成支援対策の実施に関する行動計画を平成16年度中に作成することとなり、保健・福祉・教育等組織を挙げた取組が必要である。
 更に、行動計画策定指針において、「母性並びに乳児及び幼児の健康の確保及び増進」のための計画の策定に当たっては、「21世紀における母子保健の国民運動計画である「健やか親子21」の趣旨を踏まえたものとすることが望ましい。」とされており、今後は次世代育成支援対策の一環としても「健やか親子21」の推進が図られるようになるので、次世代育成支援対策担当課と十分に連携を取り検討を進めていただくようお願いしたい。

 児童虐待対策について
 「健やか親子21」では、主要課題の一つである「子どもの心の安らかな発達の促進と育児不安の軽減」において、児童虐待対策を母子保健の主要事業の一つとして明確に位置づけ、児童虐待の早期発見及び再発防止のために、地域保健と地域医療の協力した取組を進めるとともに、児童相談所や情緒障害児短期治療施設など福祉関係機関等との連携を積極的に図ることが重要である。このため「地域保健における児童虐待防止対策の取組の推進について」(平成14年6月19日健発第0619001号、雇児発第0619001号)により、母子保健活動を通じた児童虐待の発生予防に向けた積極的な取組や児童相談所との連携・協力等について通知しているところであり、より一層の取組をお願いしたい。

 神経芽細胞腫検査について
 神経芽細胞腫マススクリーニング検査は、昭和59年度より全ての乳児を対象として実施されてきたが、近年、その有効性に関して疑問が投げかけられ、日本においても本事業の実施が与える影響について検討する必要があった。平成15年5月には専門家等による「神経芽細胞腫マススクリーニング検査のあり方に関する検討会」を設置して、その有効性について御議論いただき、「検査事業の休止」が報告されたところである。厚生労働省としても、この検討会報告書を踏まえ、平成16年度から神経芽細胞腫検査費を廃止することとしたところである。

 予防接種について
 麻疹(はしか)の低年齢層での流行を減らすために、昨年11月に麻疹の標準接種期間が「生後12ヶ月から24ヶ月」から「生後12ヶ月から15ヶ月」に変更された。
 また、1歳6ヶ月児健診及び3歳児健診時には、麻疹以外の予防接種に関しても接種歴を確認し、未接種者に対して接種を受けるよう指導をお願いしたい。
 さらに、平成16年3月第1週には、日本医師会等の主催により、「子ども予防接種週間」が実施されることから、この機会を利用することなどにより、予防接種に対する正しい知識の普及啓発に積極的に努めていただきたい。

(2 )新たな小児慢性特定疾患対策について

 小児慢性特定疾患治療研究事業の見直しについては、そのあり方について、専門家や患者代表等による検討会を設置して御議論をいただき、将来にわたり安定的な制度として確立していくことを求める報告書(14年6月)が取りまとめられ、厚生労働省においても同報告の趣旨を踏まえ検討を進めていたところである。
 一方、与党においても、去る平成15年7月25日、次世代育成支援の観点から、小児慢性特定疾患をもつ患者に対する安定的な制度として法整備を含めた制度の改善・重点化を行うべきとの基本方針について合意されるとともに、11月19日の与党合意において「少子化対策の施策」の一環として「新たな小児慢性特定疾患対策の確立」を図ることとされたところである。
 厚生労働省としては、これらの与党合意を踏まえ、平成16年度予算案において、所要の拡充を図ったところである。
 また、児童福祉法を改正し、本事業の実施の根拠を法定化することとしており、法案の成立を待って、10月を目途に実施の予定である。
 さらに、これらの制度の拡充と併せて日常生活用具の給付などの福祉サービスを実施することとしている。
 具体的な制度見直しの主な内容は次のとおりである。
 重症者に重点化を図るとともに、対象疾患群を10疾患群から11疾患群に拡充
 入通院にかかわらず対象
 新規認定は18歳未満までとするが、18歳到達後もなお改善の傾向が見られない場合、疾患にかかわらず20歳到達まで対象
 低所得者層に配慮しつつ、無理のない範囲の自己負担を導入
 なお、制度内容の詳細については、適宜お知らせしたいと考えているので、ご協力をお願いしたい。

(3 )特定不妊治療費助成事業の創設について
 平成15年5月21日及び11月19日の与党合意を踏まえ、平成16年度予算案において、「少子化対策の施策」の一環として、医療保険が適用されず、高額な医療費がかかる配偶者間の不妊治療に要する費用の一部を助成することとしたところである。
平成16年度予算案 2,540百万円
給付内容 1年度当たり上限額10万円とし、通算2年間支給
所得制限額 650万円未満(夫婦合算所得ベース)
実施主体 都道府県・指定都市・中核市
補助率 1/2
 なお、本助成事業は、医学的な相談や不妊による心の悩みの相談などに対する相談体制である不妊専門相談センターと連携し、行っていくことが必要であることから、不妊専門相談センターの整備についても重ねてご配慮いただきたくお願いしたい。

(4 )不妊専門相談センター事業の整備について
 不妊に悩む方々に的確な情報を提供し、専門的な相談に応じられる体制を地域において整備することは重要であることから、平成8年度から「生涯を通じた女性の健康支援事業」の一環として、不妊専門相談センター事業を実施しており、平成16年度予算案においては、42か所から47か所に補助対象の増を図ることとしたところである。
 本事業については、新エンゼルプランの中で計画的に整備すべき重点施策として位置づけられていることから、引き続き都道府県等の積極的な実施をお願いしたい。
(16年度予算案) (16年度目標値)
47か所 47か所

(5 )周産期医療ネットワークの整備について
 妊産婦死亡、周産期死亡等のさらなる改善により安心して出産できる体制を整備するため、新エンゼルプランにおいて、総合周産期母子医療センターを中核とした周産期医療ネットワーク(システム)の整備を計画的に進めているところである。
 平成14年度における実績が人口規模の大きい都府県を中心に20都府県にとどまっていることから、昨年4月、人口規模の小さい県については、ネットワークの中核となる総合周産期母子医療センターの設置基準の緩和等を行ったところである。平成16年度が新エンゼルプランの最終年次となっており、計画的な整備について、なお一層の御配慮を願いたい。
 また、地域医療計画の改訂に際しては、周産期医療について計画に盛り込むとともに、平成16年度までに原則として各県に1カ所の総合周産期母子医療センターを整備し、これを中心とした地域周産期母子医療センター及び一般産科との母体及び新生児の搬送体制をはじめとする連携体制の整備をお願いする。
 更に、周産期医療ネットワークの整備については、一昨年末(平成14年12月24日)決定された障害者基本計画に沿った重点施策実施5か年計画(平成14年12月24日)においても整備を図ることとされているのでご留意願いたい。

(6 )乳幼児健康支援一時預かり事業について
 乳幼児健康支援一時預かり事業については、これまでも対象施設の拡大や施設整備への補助制度の創設などを行ってきたところであり、実施市町村は、306市町村(平成16年1月現在)となったところである。
 平成16年度予算案については、
 (1)  新エンゼルプランの着実な実施のためのか所数増
 (2)  国庫補助率の1/3から1/2への引き上げ
 (3)  賃貸で施設型で実施する場合の改修費の補助
を盛り込み、補助制度の充実を図ったので、地域の実情を把握した上で積極的な取り組みをお願いしたい。
 なお、産褥期ヘルパー事業については、平成16年度から育児支援家庭訪問事業に統合することとしたのでご了知願いたい。

(7 )「食育」等の推進について
 「少子化対策プラスワン」においても指摘されているとおり、(1)子どもの栄養状況の悪化、思春期やせに見られるような食生活の乱れなどの「食」に関する問題や、(2)10代の人工妊娠中絶、性感染症罹患率の増大などの思春期に関する問題、(3)不快なお産は、次の妊娠への障害につながるという指摘などの「お産」に関する問題に対しては、正しい知識の普及を図ることなどが重要であることから、平成15年度から実施しているところである。
 国においては、食育指導指針の作成や厚生労働科学研究による研究の推進、「食育」をテーマにしたシンポジウムの開催に対する補助を行うほか、地方自治体に対し、子どもの栄養改善と食を通じた心の健全育成(「食育」)や、妊娠についての悩みに見られるような思春期問題に関する理解の促進、安全で満足できるお産に関する知識の普及等に関し、先駆的・モデル的に実施する事業に対して予算補助を行うこととしているので、都道府県・市町村の創意・工夫をこらした事業の推進をお願いする。


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