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1.次世代育成支援対策について

(1 )地方自治体における行動計画の策定等について
 平成14年1月に公表された「日本の将来推計人口」では、これまで少子化の主な原因とされていた晩婚化に加えて、新たに夫婦の出生力そのものの低下という現象が把握され、今後、少子化が一層進行する見通しとなり、平成14年の合計特殊出生率も過去最低の1.32となっている。
 このような中で、昨年3月には、少子化対策推進関係閣僚会議において、政府における「次世代育成支援に関する当面の取組方針」を取りまとめ、さらに、7月の通常国会において、今後の対策の基盤となる「次世代育成支援対策推進法」及び「改正児童福祉法」が成立したところである。すべての都道府県、市町村及び大企業等においては、この次世代育成支援対策推進法に基づき、平成16年度末までに、関係7大臣の連名により告示された「行動計画策定指針」に即して行動計画を策定することとされている。
 都道府県及び市町村の行動計画においては、特に、(1)全庁的な体制の下で、子育て家庭の多様なニーズ等に対応できる総合的な計画にすること(総合性の確保)、(2)保育・子育て支援事業に関する特定14事業についての定量的な数値目標の設定をはじめ、具体性を有する計画にすること(具体性の確保)、(3)子育て支援に関わる多くの地域住民等との協働作業として計画策定にあたること(計画策定プロセスの透明性の確保)の3点が重要であり、これらに留意しつつ、計画策定の取組や市町村に対する助言等を行っていただくようお願いしたい。
 なお、行動計画には、一般の子育て支援策を盛り込むことはもとより、児童虐待などの要保護児童やその家庭をめぐる諸問題に適切に対応できる具体的な取組を盛り込むことも重要であり、こうした点についても市町村に対する助言等をお願いしたい。
 また、現在、市町村においては、行動計画策定のためのニーズ調査が進められているところであるが、先般、計画策定に関する取組状況の調査を行った結果、全体として順調な対応がなされているものの、例えば、ニーズ調査を実施しない又は未定と回答したところが10.1%、全庁的な庁内検討組織を設置しないと回答したところが16.2%あるなど、一部の市町村において対応が不十分なところが見受けられたことから、各都道府県におかれては、該当する市町村に対して個別に早期の対応を図るよう必要な助言、要請等をお願いしたい。
 さらに、国においては、本年9月までに、都道府県を経由して各市町村から、特定14事業の数値目標について報告を受け、これを踏まえて、新エンゼルプランに代わる平成17年度からの新たなプランの策定を行うこととしているが、各市町村における行動計画に基づく取組が円滑に推進されるよう、都道府県におかれても、十分な財源の確保に努めていただくようお願いしたい。
 また、都道府県及び市町村等においても、働き方の見直しや子育てと仕事の両立支援等について、職員を雇用し、事務・事業を遂行しているという「事業主」の立場から、特定事業主行動計画を策定することとされているので、各自治体の人事担当部局等において、円滑な対応が進められるよう、必要な連携・協力をお願いしたい。
 一般事業主においても、一般事業主行動計画を策定することとされており、これについては、基本的には、都道府県労働局において法律の趣旨の周知をはじめ、計画策定・届出に向けた指導を実施しているところであるが、都道府県においても、行動計画策定指針に盛り込まれているとおり、都道府県労働局や市町村等と連携を図りながら、労働者・事業主・地域住民等を対象として、仕事と子育ての両立支援のための体制の整備、関連法制度等の広報・啓発を積極的に推進することとされているので、必要な取組をよろしくお願いしたい。

(2 )平成16年度における地域子育て支援事業等について
 新エンゼルプランの推進について
 平成12年度より進めてきた「新エンゼルプラン」については、最終年度となる平成16年度においても、引き続き着実な推進に努めることとしており、平成16年度予算(案)に、新エンゼルプラン関連経費として、2,469億円を計上しているので、積極的な取組をお願いしたい。

 平成16年度における地域子育て支援事業について
 平成15年度税制改正における配偶者特別控除の廃止に関連して、昨年11月19日の与党合意に基づき、平成16年度において、国・地方を通じて総額2,500億円を、「少子化対策の施策」に充てることとされ、児童手当の支給対象年齢を平成16年4月より就学前から小学校第3学年修了までに引き上げるほか、(1)地域における子育て支援事業の充実、(2)児童虐待防止対策の充実、(3)不妊治療の経済的支援、(4)新たな小児慢性特定疾患対策の確立、(5)待機児童解消のための保育所の緊急整備などを行うこととしている。
 このうち、地域における子育て支援事業については、改正児童福祉法における子育て支援事業の法定化等を踏まえ、各種子育て支援事業の大幅な拡充を行うこととしたところである。
 具体的には、
(ア )子育て中の親子が気軽に集い、相談・交流できる「つどいの広場」の身近な場所での設置を推進するため、(1)箇所数の大幅増(85か所→500か所)、(2)補助率を1/3から1/2に引上げ、(3)従来、開設から3年までの補助としていた年数制限の廃止
(イ )病気回復期にある児童を保育所、病院等において一時的に預かる等の病後児保育の拡充(425市町村→500市町村)
(ウ )出産後間もない時期に様々な原因で養育が困難になっている家庭等に対して、子育てOB等による育児・家事の援助や、保健師、保育士等の専門職による具体的な育児に関する技術支援を行う「育児支援家庭訪問支援事業」の創設(957市町村)
(エ )市町村ごとに「子育て支援総合コーディネーター」を配置して、各種子育て支援事業に関する情報の収集・提供、ケースマネジメント及び利用援助等の支援を行う「子育て支援総合コーディネート事業」について、箇所数の大幅増(250市町村→500市町村)を図るとともに、市町村における新たな子育て支援事業の導入を支援するための経費を追加するなど、市町村における基盤整備を促進
(オ )全国的な子育て支援施策の取組の強化に資するため、先進的・総合的に子育て支援の取組を推進する市町村をモデル自治体として指定し、個別事業の優先採択を行うとともに、事業を推進するための計画策定、普及啓発セミナーの開催及び取組事例集の作成に必要な経費に対する補助を行う「子育て支援総合推進モデル市町村事業」の創設
など、子育て支援事業として総額111億円(平成15年度:43億円)を計上し、更なる推進を図ることとしているので、特に都道府県におかれては、市町村の要望等を十分踏まえ、予算化に努めていただくようお願いしたい。
 また、ファミリー・サポート・センター事業については、都市部を中心にニーズが高まっており、これを受け、平成16年度予算(案)においても19億6千万円を計上し、設置か所数も30か所増の385か所とし、設置促進を図ることとしている。
 各都道府県におかれては、労働担当部局がこの事業を担当している市町村も多いことから、連携を図りつつ、引き続き、市町村に対するさらなる設置に向けた積極的な取組をお願いしたい。

(3 )少子化への対応を推進する国民会議等について
 少子化への対応の推進に当たっては、国や地方自治体の施策のみならず、社会全体の取組として国民的理解と広がりをもって子育て家庭を支援することが求められている。
 このため、内閣総理大臣の主宰の下で関係団体等が参加する「少子化への対応を推進する国民会議」が設置され、関係団体がそれぞれの取組を推進するとともに、広く国民に向けた情報発信を行っているところである。今後、国・地方自治体・企業等による取組の推進と併せて、国民会議参加団体においても、もう一段の取組を進めていただくことが必要であることから、本年5月を目途に、平成12年に決定した「国民的な広がりのある取組みの推進について」を見直すこととされているので、ご承知おき願いたい。
 また、国民会議等が主催する少子化対応推進全国キャンペーンの一環として、平成15年度には、「男性を含めた働き方の見直し」をテーマとする意識啓発キャンペーンを実施し、「男性の育児参加キャンペーンポスター」(子育て層向け・管理職向け)及び小冊子「おとこの次世代育て−男性33人からのメッセージ−」を作成・配布したところであるので、これらを活用しつつ、企業等における働き方の見直し等のための意識啓発の推進にもご協力をお願いしたい。

(4 )少子化社会対策基本法について
 議員立法として提出され、先の通常国会において成立した「少子化社会対策基本法」に基づき、政府においては、本年5月を目途に、少子化に対処するための施策の大綱を定めることとされている。
 本基本法においては、地方公共団体の責務として、「基本理念にのっとり、少子化に対処するための施策に関し、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する」と規定されているとともに、少子化に対処するための8分野にわたる基本的施策を講ずるものとされており、都道府県及び市町村におかれては、その趣旨も十分踏まえ、行動計画の策定をはじめとする各種施策の推進に努められたい。


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