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疾病対策課

1.エイズ対策

(1 )エイズ対策の総合的な推進について
 後天性免疫不全症候群(エイズ)は、性的接触による感染を中心に、依然として増加傾向にあり、さらなる対策の充実・強化が必要となっている。
各都道府県、政令市、特別区(以下「各都道府県等」という。)においては、利便性の高い平日夜間や休日における検査・相談の実施により、青少年や同性愛者等の個別施策層がより検査等を受けやすい体制を確保するなど地域の実情を踏まえたエイズ対策を今後も積極的に推進していただくようお願いする。
 また、平成15年11月には、親のHIV感染を理由として、保育園において幼児の通園を拒否するという大変遺憾な事案が報道されたところである。
 厚生労働省としては、HIV感染者に対する偏見や差別をなくすため、正しい知識の普及啓発が重要であると考えており、各都道府県等においても、一層の取り組みをお願いする。


(2 )先天性血液凝固因子障害等治療研究事業について
 血友病患者等に対する治療研究事業である「先天性血液凝固因子障害等治療研究事業」については、患者等からの申請時に、医師の診断書、特定疾病療養受療証の写し等を提出させることとしているところであるが、事業のより適正かつ円滑な実施のため、引き続き御配慮いただくようお願いする。


.難病対策

 難治性疾患に関する調査・治療研究の推進により原因の究明や治療法の確立等を目指すとともに、難病相談・支援センターの整備の推進など難病患者のニーズを踏まえたきめ細かな保健医療福祉施策の充実連携を図ることとしている。
 また、引き続き重症難病患者に対する入院施設確保事業や在宅療養支援の着実な推進、クロイツフェルト・ヤコブ病等神経難病患者の診断支援の実施、難病患者等居宅生活支援事業及び難病情報センター事業等を推進することとしている。

(1 )特定疾患治療研究事業について
 本事業については、他の難治性疾患や障害者医療との公平性の観点等も踏まえ制度の見直しを行い、低所得者への配慮など所得と治療状況に応じた段階的な一部自己負担へ再構築するとともに、事業評価制度を導入することとし、昨年10月に施行したところである。この改正により、毎年10月の更新にあたり申請時には患者の生計中心者の所得状況を確認できる書類及び臨床調査個人票の添付が必須となるが、事業の対象者が難病患者であることに鑑み、必要以上に過度の負担とならぬよう引き続き特段の御配慮をお願いする。
 また、更新手続きが円滑に行われるよう、患者数を勘案した都道府県特定疾患対策協議会の審査体制や難病患者認定適正化事業(国庫補助事業)を活用した体制の整備も図られたい。

(2 )難病特別対策推進事業について
 患者等の療養上、日常生活上での悩みや不安等の解消を図るとともに、患者等のもつ様々なニーズに対応したきめ細かな相談や支援を通じて、地域における患者等支援対策を一層推進するため、平成15年度において難病相談・支援センター事業を創設したところである。本事業については、概ね3ヶ年計画により各都道府県で整備して頂くようお願いしているところであるが、その実施に当たっては公共職業安定所等の各種公共関係機関や地域患者会などとも十分な連携を図ることにより、地域の実情に応じた支援対策を講じて頂くようお願いする。
 また、センター整備に当たっては、施設・設備整備国庫補助事業も十分活用されたい。

 クロイツフェルト・ヤコブ病等診断の困難な神経難病の早期確定診断を行うとともに、当該神経難病患者等の療養上の不安を解消し、安定した療養生活を確保するため、一般診療医の要請により都道府県等に配置した専門医による在宅医療支援チームの派遣体制の整備をお願いする。なお、特にクロイツフェルト・ヤコブ病については、平成13年度より各都道府県に専門医を配置しているのでその積極的な活用を引き続きお願いする。

 また、平成13年度より、特定疾患治療研究事業の申請時に必要な臨床調査個人票を電子化し全国的に統一することで、難病研究の促進及び対象患者の認定業務の省力化等を図っており、引き続き、都道府県ごとに対象患者の判定の基礎となる調査票の電算処理(入力及び厚生労働省への登録)を的確にお願いする。

 さらに、難病患者の適時・適切な入院受け入れを行うため、都道府県ごとに拠点・協力病院による難病医療体制を確保する事業を推進しているところであり、未整備の都道府県にあっては、引き続き整備促進に御協力をお願いする。

 同じく難病患者の生活の質の向上を図るため、患者ごとに在宅療養支援計画の策定・評価や重症患者への訪問相談事業の実施など、在宅療養支援事業を推進しているが、各都道府県にあっては、引き続き地域の実情に応じた積極的な支援について特段の御配慮をお願いする。

(3 )難病患者等居宅生活支援事業について
 介護保険法、老人福祉法及び身体障害者福祉法等の施策の対象とならない難病患者及び関節リウマチ患者に対するホームヘルプサービス等の介護サービスについては、新障害者プランにおいても引き続き推進しているところであり、各都道府県にあっては、事業の実施にあたり、保健所等を通じ管下市町村に対し積極的に協力を行うなど、本事業の実効ある実施について引き続き特段の御配慮をお願いする。

(4 )難病情報センター事業について
 難病患者やその家族、並びに医療関係者が求めている最新の医学・医療情報の提供を図る本センター事業については、平成8年度の創設以来、順次内容の充実を図ってきており、今年度においては月平均約65万件のアクセスがなされているところである。各都道府県にあっては、管下保健所等を通じ本事業の積極的な活用をお願いするとともに、インターネットの活用が困難な難病患者への情報提供についても特段の御配慮をお願いする。


.リウマチ・アレルギー対策

 リウマチ、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症等のリウマチ・アレルギー疾患を有する患者は、国民の30%にのぼると言われており、放置できない重要な問題となっていることから、平成2年度からリウマチ疾患について、平成4年度からアレルギー疾患についての研究事業を開始し、病因及び病態の解明、治療法等の研究の推進を図っているところである。
 これらの研究成果として、免疫アレルギー疾患の診療に関するガイドライン等を随時作成するなど、医療関係者に対する適切な診断・治療法の普及に努めているほか、保健師等を対象にした相談員養成研修会の実施、研究成果等普及啓発事業の実施等、各種事業の実施に努めているところである。

(1 )リウマチ・アレルギー相談員養成研修会について
 本事業については、各都道府県等の保健師等職員を対象に、リウマチ・アレルギー疾患についての必要な知識を修得させ、地域における相談体制を整備することを目的として、平成13年度より実施(平成15年度までは「四疾患相談員養成研修会」として実施)しているところである。平成16年度においても、本研修会を引き続き開催することとしているので、各都道府県等にあっては、研修会への職員の派遣について特段のご配慮をお願いする。

(2 )リウマチ・アレルギー疾患に関する正しい情報の普及について
 リウマチ・アレルギー疾患については、民間療法も含め膨大な情報が氾濫し、正しい情報の取捨選択が困難な状況にあり、地域住民に対する正しい知識の伝達が重要な課題となっていることから、各都道府県等にあっては、上記研修会の成果を活用する等により、地域の実情に応じた各種の普及啓発事業の積極的な展開をお願いする。


4.ハンセン病対策

(1 )ハンセン病問題の経緯について
 厚生労働省においては、平成8年のらい予防法廃止後においても、入所者対策、入所者親族対策、在宅治療対策及び普及啓発対策を各都道府県と連携しながら、引き続き実施するとともに、平成10年3月より社会復帰者支援事業を実施してきたところである。
 しかしながら、平成10年に「らい予防法」に基づく施設入所施策に対して国家賠償請求訴訟が提起され、平成13年5月の熊本地裁判決で国が敗訴したところであり、この判決に対して、同23日に内閣として控訴しないことを決定し、同25日に内閣総理大臣談話及び政府声明を発表したところである。
 また、総理大臣談話に基づき、ハンセン病問題の早期かつ全面的な解決を図るため同年6月15日に議員立法として「ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律」が成立し、同22日に公布・施行するとともに、各種施策を実施している。
 遺族原告及び入所歴なき原告については、平成14年1月28日に基本合意書を締結し、順次和解を進めている。

(2 )ハンセン病問題の全面的な解決に向けた新たな施策について
 厚生労働省においては、ハンセン病問題の全面的な解決に向けて、退所者に対する住宅確保を支援するための施策として、国土交通省と協議の上、公営住宅法施行令の一部を改正することにより、らい予防法廃止までの間にハンセン病療養所に入所したことがある方は、単身者であっても公営住宅に入居できるようにしたほか(施行日平成13年12月28日)、平成13年6月に設けたハンセン病問題対策協議会における5回に及ぶ協議も踏まえ、平成14年度より従来の施策に加え、新たな施策として、退所後の福祉の増進をはかる観点から「国立ハンセン病療養所等退所者給与金」事業を、死没者の名誉回復を図る観点から、「国立ハンセン病療養所等死没者改葬費」事業を、ハンセン病患者・元患者の名誉回復を図る観点から、謝罪広告の掲載(平成14年3月及び5月)や、中学生を対象に啓発パンフレットの作成配布(平成15年1月)、ハンセン病問題に関する事実検証会議などを実施しているところである。
 これら施策の実施を含め、ハンセン病問題の全面的な解決のためには、厚生労働本省、国立ハンセン病療養所及び各都道府県の連携及び協力・支援等が不可欠であり、特段の御協力をお願いしたい。
 特に、(1)ハンセン病療養所退所者(以下、「退所者」という。)や退所希望者に対する医療や生活にかかる相談窓口の設置、(2)退所者に対する公営住宅の斡旋・優先入居、(3)ハンセン病療養所死没者(以下、「死没者」という。)の納骨、改葬に対する支援などについての御検討を引き続きお願いしたい。
 また、平成15年11月、熊本県のホテルにおいてハンセン病療養所入所者の方々の宿泊を拒否するという遺憾な事案が発生したところである。
 厚生労働省においては啓発普及を継続的に実施していくことが重要であると考えており、ハンセン病や患者・元患者に対する差別・偏見の除去に向けた啓発普及事業について、各都道府県において、より一層の取組をお願いしたい。


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