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(指導課)

 1 .医療計画の見直しについて

(1 )医療計画制度の見直しについて
 今後の医療計画制度の在り方については、質の高い効率的な医療提供体制の構築、国民の安心できる医療の確保等が課題となっており、昨年8月に取りまとめられた「医療提供体制の改革のビジョン」においても、当面進めるべき施策等に位置づけられているところである。
 このため、昨年8月に「医療計画の見直し等に関する検討会」を設置し、医療計画制度について評価を行うとともに、基準病床数の算定方式など医療計画制度の課題に対処するとともに、さらに、今後の医療計画制度の在り方について検討すべく、議論を開始したところである。今後、本年12月末を目途として報告書の取りまとめを行うこととしている。

(2 )都道府県医療計画の見直しについて
 都道府県医療計画の見直しについては、平成13年3月の第4次改正医療法施行以降、今年度末までに42都道府県で見直しが終了する予定となっている。まだ見直しを行っていない県におかれては、できる限り早急に医療計画の見直しを実施していただくようお願いする。

(3 )医療計画作成指針の改正について
 地域における公的病院等を含めた医療機関の役割と連携の確保については、全国的な見地から各公的医療機関の担うべき機能と各医療圏ごとに求められている診療機能等を調整しながら、その在り方等を医療計画に記載することが望ましいため、昨年5月に「医療計画について」(平成10年6月1日健政発第689号通知)の一部改正を行ったところであり、直近の医療計画の見直しの機会を捉えるなど、各都道府県の実情に応じできる限り早期に措置されたい。



 2 .医療法人について


(1 )医業経営の近代化・効率化について
 平成15年3月に「これからの医業経営の在り方に関する検討会」最終報告において、「非営利性・公益性の徹底」、「効率性の向上」、「透明性の確保」、「安定した経営の実現」といった視点から、今後の医業経営改革につき具体的な提言を受けたところである。
 この最終報告における提言を踏まえ、これまで公益性の高い「特別医療法人」の普及を図るため要件を緩和するとともに、実施できる収益業務の拡大を図った(平成15年11月省令改正)ほか、医療法人の非営利性の確保・徹底方策に関する検討の場として「医業経営の非営利性等に関する検討会」を平成15年10月に設置し、検討を行っているところである。また、新たな病院会計準則の制定等や医療機関債の発行等による資金調達手段の多様化など医業経営の近代化・効率化に向けて取り組んでいるところであり、今後とも具体的な方針が取りまとまり次第適宜実施に向けてご連絡するので、ご承知おき願いたい。

(2 )医療法人の指導監督について
 医療法人の指導監督については、その制度の趣旨を踏まえ、関連部局と連絡を密にして、十分な指導監督をお願いする。特に、法人運営に第三者が関与、あるいは法人が主体的に運営を行っていない等の疑いが生じた場合には、法人への立入調査を実施するなど積極的な指導をお願いする。
 また、決算書は、適正な法人運営がなされているか判断する上で重要な資料であることから、届出もれのないよう適切な対応をお願いする。
 医療法人の設立認可については、医療法第65条により医療法人が病院等をすべて休止又は廃止した後、正当な理由なく引き続き1年以上病院等を開設又は再開しないときは、設立認可を取り消すことができることとされている。休眠医療法人の整理については、医療法人格の売買などを未然に防ぐ上で重要なものであり、実情に即して設立認可の取り消しを検討するなど厳正な対処をお願いしたい。



 3 .救急・災害医療について

 (1 )救急医療体制の充実

 救急医療対策は、昭和52年度から初期、二次、三次救急医療施設及び救急医療情報センターからなる体系的整備を進めているが、社会環境の変化、人口構造の高齢化に伴う疾病構造の変化等に対応して質的な充実を図ることが重要である。
 平成16年度予算案においても各般の国庫補助事業について、所要額の確保に努めたところであり、これらも活用いただき、地域の医療提供体制の重要な項目として、引き続きその充実に取り組んでいただきたい。
 中でも、小児救急医療については、引き続き、小児救急医療支援事業及び小児救急医療拠点病院による小児救急医療体制の全国的な整備を推進するとともに、平成16年度予算案において、小児救急医療の充実に関する補助制度を新たに盛り込んだところであるので、積極的な活用をお願いしたい。
 なお、救急医療対策関係予算のうち、「在宅当番・救急医療情報提供実施事業」については、平成16年度から一般財源化を行い、その財源については、地方交付税により、都道府県分を含めて事業実施主体である市町村に措置される予定である。
 ついては、各都道府県において、管下市町村等関係機関への周知をお願いするとともに、在宅当番医制事業が初期救急医療体制の構築に引き続き重要な役割を果たすことに鑑み、予算の一般財源化後においても、当該事業の確保・推進が図られるようお願いする。
 また、「小児初期救急医療特別加算」については、在宅当番・救急医療情報提供実施事業の一般財源化に伴い、「小児初期救急医療推進事業」として名称の変更を行い、国庫補助の継続を行うので留意されたい。
 また、救急救命士の業務の適正化と向上を図るため、地域におけるメディカルコントロール体制の構築についての取り組みを引き続き推進いただくとともに、広域救急患者搬送体制の向上の観点から、特に離島を有する地域におかれては、ドクターヘリの積極的な導入をお願いしたい。
 なお、構造改革特区の提案を受けて、平成15年11月より「非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用のあり方検討会」を立ち上げ、救急蘇生から見た非医療従事者によるAEDの使用の条件のあり方や、国民の理解を促進し普及啓発を図る方策等について検討を行い、平成16年度前半を目途に結論を得ることとしている。

 (2 )災害医療対策について

(1)  平成8年5月10日健政発第451号「災害時における初期救急医療体制の充実強化について」に基づき、災害拠点病院の整備や広域災害・救急医療情報システムの整備などの災害医療対策の一層の推進に努められるようお願いしたい。特に、広域災害・救急医療情報システムの未導入県におかれては、早急に整備をお願いする。

(2)  災害拠点病院については、施設・設備の整備に加え、災害時に地域の災害医療の拠点として十分に機能するよう、防災マニュアルを作成し、地域の医療機関・行政機関等との連携を深めるとともに、運用面の充実に努めていただく必要があることから、各都道府県におかれては、各関係機関に対する一層の指導をお願いしたい。
 また、災害拠点病院として指定されながら、現状において指定要件を満たしていない施設については、指定の見直しも含めた検討をお願いする。

(3)  各都道府県におかれては、「建築物の耐震改修の促進に関する法律」に基づき、医療機関の耐震化の現状の把握、災害時等の医療を確保するための医療機関に対する耐震診断及び耐震改修について必要な指導、助言及び指示を行っているものと承知しているが、昨年決定された「東海地震対策大綱」等に医療施設の耐震化の実施が盛り込まれていることから、引き続き、医療機関の耐震診断及び耐震改修をより一層進めるための施策を講じていただくようお願いする。
 当課としても、平成16年度においても、
  ・ 「災害拠点病院」、平成7年に施行された地震防災特別措置法第2条に基づいて、都道府県知事が策定した五箇年計画に定められた「地震防災上緊急に整備すべき医療施設」の耐震化事業
  ・ 築後概ね25年以上経過した病院について一定の条件のもと建て替える事業
に対して補助を行うこととしている。各都道府県におかれても当該補助制度を利用し、医療機関の耐震化を推進していただきたい。



 4 .救急救命士業務拡大の進捗状況等について

 厚生労働省と総務省消防庁が合同で立ち上げた「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」(座長 松田博青 杏林大学理事長)報告書(平成14年12月11日・平成15年12月26日)に基づき、病院前救護体制の充実に向けて、救急救命士の処置範囲の拡大と業務の高度化を図るため、総務省消防庁との連携の下、以下の措置を講じることとしている。


 (1)除細動 救急救命士法施行規則等の改正を行い、平成15年4月1日より包括的指示化(医師の具体的指示無し化)。

 (2)気管挿管 平成16年7月からの実施に向け、講習、実習を行うための養成カリキュラム、実習ガイドラインの作成等、必要な準備を行っているところ。年度内に関係法令等の改正を予定。

 (3)薬剤投与 平成15年12月26日の同検討会報告書において、「現段階ではエピネフリン1剤に限定して、諸条件について整備、普及を図った上で、平成18年4月を目途に必要な諸条件を満たした救急救命士に使用を認めることとするべきである」とされたことから、今後、本報告書の内容を踏まえ、養成カリキュラムの見直し等、必要な準備を行うこととしている。



 5 .医療施設等施設・設備整備事業について

 (1 )医療施設等の整備にかかる平成16年度予算案については、非常に厳しい削減方針が示された中、施設整備費で約162億円、設備整備費で約26億円を確保したところであるが、その執行に当たっては、厳しい財政事情に鑑み、個別に説明をお聞きした上で、地域の特殊性、緊急性、補助効果等を考慮し、効率的な配分を行うこととするのでご承知おき願いたい。
 (2 )メニューについては、従来の事業に加え、施設整備の事業として、「医療機器管理室施設整備事業」、設備整備の事業として、「小児救急遠隔医療設備整備事業」、「臨床研修病院支援システム設備整備事業」を追加した。
 また、「へき地診療所」、「がん診療施設」については、その整備促進を図るため、施設整備・設備整備ともに、現行の公的医療機関に加え民間施設も補助対象に追加したところである。
 なお、補助事業の見直しを行った結果、「老人デイケア施設施設・設備整備事業」、「衛生検査精度管理施設設備整備事業」を廃止することとした。
 (3 )「医療施設近代化施設整備事業」については、過去に当該補助金の交付を受けた施設における増床は認めないこととしているところであり、改めて制度内容につき留意いただきたい。その上で、
(1)  患者の安全確保を図るため、増改築等の工事を行う医療施設から入院患者を受け入れるのに必要な病床についての増床であること。
(2)  増改築等の工事を行う医療施設と同一の医療圏、同一の開設者であること。
(3)  入院患者の受入れに必要な増床に伴う整備は、当該医療施設の負担により行うこと。
(4)  増改築等の工事が終了した場合、増床前の病床数に戻すこと。
の全ての条件に該当する場合に限っては、制度の趣旨に反しないことから一時的な増床ができるものとした。
 以上のメニューの追加、廃止、要件の改正等につき、関係者への周知方よろしくお願いする。
 (4 )施設整備における資材については、例年、林野庁から木材を使用した施設建築の促進について協力依頼がなされているところであり、厚生労働省としても、医療施設の建築資材としての木材利用は、患者の療養環境向上に資するため、その効果等について解説するとともに、木材利用を促すパンフレット「心と体にやさしい医療環境の創出−木材を利用した医療施設の整備−」を作成し、平成15年6月に各都道府県に配布したところである。
 現在、へき地診療所の整備を木造により行い、また、病院の床材・壁材・天井材・手すり等に積極的に利用していただいているものと承知しているが、より一層の木材利用が図られるよう指導方お願いしたい。



 6 .PFIについて

(1 )PFI(Private Finance Initiativeの略。)は、公共事業等に民間企業の資金とノウハウを活用し、公共サービスの提供を民間主導で行うことで、効率的かつ効果的な公共サービスの提供を図ることに意義がある。

(2 )PFIに関しては、PFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)の一部を改正する法律案が平成13年12月5日に可決成立し、行政財産である土地について、PFI事業者が当該事業と合わせて別事業を行う場合であっても貸し付けることができることとされ、事業活動の幅が拡充されたところである。また、公立病院におけるPFI事業を医療施設整備費補助金等の交付対象とするために補助金交付要綱の改正を平成14年度に行うとともに、民間資金活用等経済政策推進事業により、医療関係PFI事業の導入を円滑に実施するための調査研究を平成11年より毎年実施しているところである。

(3 )医療PFI事業については、建物等の設計、建築、維持管理並びに医療関連の周辺サービスについて一括委託すること等により、経費及びリスク管理の効率化が可能と考えられることを踏まえ、医療の非営利性等との関連に留意しつつ、公立病院への積極的導入について検討願いたい。



 7 .医療機能評価について

(1 )財団法人日本医療機能評価機構においては、病院の機能について、学術的な観点から中立的な立場で評価を行い、その改善を支援することを目的として、病院機能評価事業を実施している。

(2 )平成15年12月現在、1,100病院が認定されており、病院全体の12.0%を占めている。

(3 )病院機能評価の評価結果については、平成14年4月の広告規制の緩和の一環として、広告可能事項に追加されたところであり、また、評価機構においても、平成14年9月から認定病院の同意を得て、個別の医療機関の評価結果をインターネット上で公表するなど情報提供を進め、患者の選択を通じた医療の質の向上を図っているところである。

(4 )近年、問題となっている患者の安全確保について、医療機関の安全管理体制等が評価に反映されるよう、評価機構において評価の項目や手法の見直しを進め、審査手順の見直し等とあわせ、新評価項目を設定し、昨年度の申請分から実施しているところである。これまでの認定病院数は1,100病院のうち162病院となっている。

(5 )また、病院機能評価の普及目標については、平成15年8月、平成18年度末までに2,000病院が受審する目標時期を、平成16年度末までに繰り上げたところである。厚生労働省としても、サーベイヤー養成事業への補助など、評価機構に対する様々な支援を通じて、この目標の達成を図ることとしている。

(6 )なお、規制改革推進3カ年計画(平成14年3月29日閣議決定)において、「国公立病院、特定機能病院、臨床研修病院等について積極的な受審を促進するとともに、これらの医療機関に対しては、評価結果、評価内容の公開をするように措置する。」とされ、病院機能評価の受診促進等についての通知を、平成15年3月31日に関係団体あて発出したところであるが、各都道府県におかれても、公立病院の受審促進等について御協力願いたい。
 併せて、第三者評価の重要性の周知等、民間病院も含めた受審の促進に向け御協力願いたい。



.院内感染対策について

(1)院内感染対策有識者会議の報告書について
 近年、院内感染対策については、適切な医療を提供していく上での重大な課題となっているところであるが、特に、平成15年春から初夏にかけての中国等における重症急性呼吸器症候群(SARS)のアウトブレイクでは、院内感染をいかに防ぐかが焦点となったことは記憶に新しい。こうした状況の中で、厚生労働省においては、院内感染対策について一層の充実・強化を図るため、「院内感染対策有識者会議」を設置し、平成14年7月以降、議論を重ねてきた。平成15年9月18日に取りまとめられた本有識者会議の報告書において、医療機関、自治体、国等がそれぞれの立場で取り組むべき課題について示されたことから、同年11月5日付けで各都道府県及び関係団体等に対しその内容を通知したところである。

(2)専任の院内感染対策担当者の配置について
 院内感染対策有識者会議報告書においては、特定機能病院及び第一種感染症指定医療機関に専任の院内感染担当者を配置し、これらの担当者は医療機関内で一定の権限と責任を与えられ組織横断的な活動を行うとともに、各地域の院内感染地域支援ネットワーク(仮称)に協力することとされた。これを受けて、平成15年11月5日付けで医療法施行規則の一部を改正し、特定機能病院においては専任の院内感染対策担当者を配置することとした。また、第一種感染症指定医療機関における専任者の配置については、合わせて、施設基準の改正を行うこととしている。

(3)院内感染地域支援ネットワーク(仮称)について(資料参照)
 院内感染対策有識者会議報告書においては、当面取り組むべき課題として、院内感染を予防するため、自治体(都道府県等)を単位として院内感染に関する専門家による相談窓口を設置し、医療機関が院内感染対策等について日常的に相談できる体制を整備することとされたところである。このため、平成16年度予算案において「院内感染地域支援ネットワーク」の構築や院内感染に関する総合的な企画立案等を行うための「院内感染中央会議」を国に設置し、院内感染対策の一層の推進を図ることとし、必要な経費を盛り込んだところである。



 9 .医療法第25条第1項に基づく立入検査について

 平成14年に北海道及び北海道社会保険事務局が実施した立入検査等において、道立札幌医科大学医局に在籍している医師のいわゆる「名義貸し」が発覚した件については、「平成15年度の医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査の実施について」(15.6.14局長通知)において、医療機関における医師の名義借りの実態把握に努めるとともに、名義借りの実態が判明した場合には当省へ情報提供いただくよう依頼しているところである。
 その後、北海道大学医学部や東北大学医学部等においても同様の「名義貸し」の実態が発覚したことから、文部科学省において全国の医科大学等の実態調査を実施し、現在、取りまとめ中であると聞いている。
 今後、文部科学省から調査結果等について情報提供を受けた際は、当省より関係都道府県に連絡するので、関係した医療機関の確認等各地方厚生局(医療監視専門官等)と連携を図りながら実態の把握に努め、医療法に基づく立入検査により「名義借り」が判明した場合、速やかに当省に情報提供いただくとともに適切な指導監督をお願いする。
 また、立入検査の実施にあたっては、診療報酬に関する監査を実施している社会保険事務局とも連携を図りながら進めていただくようお願いする。
 今回の件を契機に、改めて地域における医療提供体制のあり方が問われる事態ともなっていることから、各都道府県におかれては、医療法第25条第1項に基づく立入検査の適切な実施に努めていただき、実態の把握が円滑に進むよう協力願いたい。


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